説明

複合内部相を含有するポリアフロン分散体

外部相と、内部相を有するポリアフロンとを含んでなるポリアフロン分散体であって、前記内部相は、(i)液体である第一相と(ii)液体または気体である第二相とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアフロン(polyaphron)分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアフロン分散体は、一般的に二液型発泡体としても知られている。この用語は、例えば、セバ(Sebba),F.(フェリックス(Felix))「発泡体および二液型発泡体、アフロン(Foams and biliquid foams,aphrons)」、1987年、ISBN:0471916854で知られている。二液型発泡体は、当技術分野では公知であり、以下の引用文献、セバ(Sebba)による「二液型発泡体」、学術雑誌コロイドおよび界面科学(J.Colloid and Interface Science)、40(1972年)468−474頁;および「水膜に被包された微小油滴の挙動(The Behaviour of Minute Oil Droplets Encapsulated in a Water Film)」、コロイド高分子科学(Colloid Polymer Sciences)、257(1979年)392−396頁に記載されている。
【0003】
米国特許第4,486,333A号明細書(セバ(Sebba))は、可溶性界面活性剤を含有する水素結合した液体を攪拌して、ガス発泡体を生成させ、ガス発泡体に、水素結合した液体と混和しない非極性液体を断続的に加えることにより、二液型発泡体を調製する特定の方法を記載している。上記界面活性剤を含有する水素結合した液体は、0以上の拡張係数を提供するように、選択される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のポリアフロン分散体は、単一の液体外部相と単一の液体内部相を含有する。本願発明者らは、内部相に追加の相を含有できるポリアフロン分散体と、それらを調製する方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、外部相と、内部相を有するポリアフロンとを含んでなるポリアフロン分散体を提供し、前記内部相は、(i)液体である第一相と、(ii)液体もしくは気体である第二相とを含んでなる。
【0006】
上記の通りに規定したポリアフロン分散体を調製する方法は、(a)内部相を形成する工程と、(b)外部相と工程(a)で調製した内部相とを含んでなるポリアフロン分散体を形成する工程とを含む。
【0007】
ポリアフロン分散体は、70〜95重量%の内部相と5〜30重量%の外部相、または連続相を含んでなるのが好ましい。外部相は、水性相であるのが好ましい。外部相は、さらに、水素結合を有する液体(例、グリセリン、プロピレングリコールおよび/またはエタノール或いは水とそれらの混合物)からなりうる。分散体を安定化する界面活性剤が、例えば、分散体の総重量を基準として、0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で、さらに、含まれてもよい。適切な界面活性剤は、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性または双極性イオン界面活性剤(例、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヒマシ油、エトキシ化オレイルアルコールまたはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油など)である。
【0008】
内部相は、少なくとも2つの液相または少なくとも1つの液相と1つの気相を含んでなる。内部相は、もちろん、追加の相(例、追加の液相、追加の気相または追加の固相)も含んでなりうる。
【0009】
内部相は、例えば、水性相および非水性相、エマルションまたは二液型発泡体(或いはポリアフロン分散体)を含んでなる。内部相は、単一の水性相と単一の非水性相を含んでなることもある。
【0010】
内部相が、エマルションを含んでなる場合、該エマルションは、例えば、油中水型エマルションである。そのエマルションの連続相は、ポリアフロン分散体の外部相と混和しない。そのエマルションは、例えば、10%〜80%の非連続相と20%〜90%の連続相を含んでなりうる。連続相と非連続相のいずれか一方または両方は、1種もしくは複数種の添加剤、特にポリアフロン分散体の外部相の成分と混和しない添加剤を含んでなりうる。適切な油相の例は、それがポリアフロン分散体である場合、国際段階に関して以下に記載される油相である。エマルションは、当技術分野で公知の標準の技法により(例えば、水性および非水性相が、高度の破砕装置により(例、「シルバーソン(Silverson)」型のロータステータ装置など)による最終の混合および乳化に先立って調製される一対の加熱容器の使用により)、調製されうる。
【0011】
内部相が、二液型発泡体またはポリアフロン分散体(それ自体、本発明の複合ポリアフロン分散体でありうる)を含んでなる場合、その外部相は、水性でも非水性でもよい。この内部相の外部相は、本発明のポリアフロン分散体の外部相と異なる。内部相は、10%〜80%の非連続相と90%〜20%の連続相を含んでなりうる。連続相と非連続相のいずれか一方もしくは両方は、1種もしくは複数種の添加剤、特にポリアフロン分散体の外部相の成分と混和しない添加剤を含んでなりうる。適切な油相の例は、室温(例えば、20℃)で液体である油(例えば、シクロメチコーン、ジメチコーン、ジメチコノール、ジメチコーンコポリオール、エモリエントエステル(例、イソプロピルステアレート、ラノラート、ミリステートまたはパルミテート、或いはオクチルパルミテートなど)、グリセリド(例、アボガドオイル、ヤシ油、大豆油もしくは向日葵油、またはカプリル/カプリントリグリセリドなど)、ラノリン油、鉱油もしくは天然油、またはオレイルアルコールから選択される1種もしくは複数種の油)、或いはいかなる目的に関してもエマルション中で使用されるのが公知である他の任意の油である。水不溶性溶媒(例、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、灯油、ディーゼル油および他の同様な溶媒など)ならびに水不溶性の有機液体も、油の定義に含まれる。二液型発泡体またはポリアフロン分散体は、当技術分野で公知の標準技法により、例えば本明細書に記載される技法により、調製されうる。
【0012】
内部相が、単一の水性相と単一の非水性相を含んでなる場合、内部相は、不安定エマルションもしくはポリアフロン懸濁液を形成することにより調製され、続いて、本発明のポリアフロン懸濁液が十分に形成されると、静置した状態で2つの成分に分離される。
【0013】
ポリアフロン分散体の外部相および/または内部相は、例えば、1種もしくは複数種の界面活性剤または他の添加剤を含んでなってもよい。二液型発泡体もしくはポリアフロンを形成し安定化するのに適切な界面活性剤は、例えば、国際公開第97/32559号パンフレットに記載されるリストから選択でき、或いは当業者は周知であろう。二液型発泡体を生産する方法(二液型発泡体がその後に形成されうる十分に大きな表面積を提供するための、ガス発泡体の予備形成を含む)は、米国特許第4,486,333A号明細書に記載されている。適切な攪拌機構が製造容器内に設けられているという条件下では、安定性二液型発泡体を製造するのに、ガス発泡体の事前形成が不要であることが見出されている。
【0014】
上記の装置は、攪拌ブレードが液体と空気の界面を破壊するスターラーを備えたタンクを含んでなり、生産プロセス全体を通じて二液型発泡体の全量にわたり、低破砕混合を提供する。送達器具が設けられており、それを介して、分散液の内部相(この場合、少なくとも2種の液体を含んでなる)が、タンクに送達される。送達器具の設計は、内部相流体の添加速度が生産プロセス中に制御および変更できるようになっている。生産プロセスの特徴は、十分な液滴が形成されて、新たな液滴のさらに迅速な形成のための大型の追加表面積を構成するまで、内部相が、攪拌された外部相に最初はゆっくりと添加されることである。この時点で、内部相の添加速度を上昇させてもよい。
【0015】
生産プロセスは、以下の工程を含むのが好ましい。
1.一方もしくは他方或いは両方の相(実験により事前に決定されている通り)に、選択された1種もしくは複数種の界面活性剤を添加する工程。
2.処理容器の底に外部相を装填する工程。
3.外部相の表面を攪拌するように、容器にスターラーを組み込む工程。
4.事前に設定したレベルに攪拌速度を調節する工程。
5.規定速度で攪拌を続けながら、内部相をゆっくり添加する工程。
6.規定量(通常、添加される総量の5%〜10%)が添加されると、内部相の添加速度を加速する工程。
【0016】
攪拌速度および内部相の添加速度は、可変であり、それらの値は、製造プラントの詳細な設計(具体的には、インペラの直径に対するタンク直径の比)、内部相の物理化学的特性および選択した界面活性剤の性質ならびに濃度によって、決まる。これらは、実験室またはパイロットプラントの実験により、事前に決定できる。
【0017】
ポリアフロン分散体の他の製造方法が、適切に使用されることは、当業者によって理解されるであろう。
【0018】
コロイド状の気体アフロンは、当技術分野では、例えば、「発泡体および二液型発泡体、アフロン(Foams and biliquid foams,aphrons)」、1987年、ISBN:0471916854にセバ(Sebba)により記載されるように、公知である。気体(例、空気、窒素、二酸化炭素など)または反応性気体(例、酸素もしくは水素など)を含有する上記のコロイド状の気体アフロンは、本発明の内部相を構成しうる。コロイド状の気体アフロンは、掲示した文献に記載される通りに、或いは散布プロセスによって、調製されうる。該散布プロセスは、多孔質材料の使用を含んでもよく、それを介して、気体が、界面活性剤を含有する適切に調製された水不溶性媒体に、注入される。代替的に、気体は、十分な粘性およびまたは降伏値を有する水不溶性媒体に注入されて、本発明のポリアフロン分散体が十分調製されるまで、個々の気泡の凝集を回避しうる。
【0019】
本発明の一適用例において、食品(例、濃厚でクリーム状のヨーグルトタイプの食品など)が生産され、その外部相は、水性であり、水溶性の香料、果物抽出物、または果物の小片、水溶性着色剤などを含有しうるが、その内部相は、食用油(好ましくは非脂肪性)(例、オリーブ油もしくは向日葵油またはアボガドオイルなど)と、80%程度の内部相の総濃度でありうる内部水相とを含んでなる。複合内部相の総濃度は、95%程度でありうるが、好ましくは、約90%であり、その濃度で、高濃度の内部相のため、食品は濃厚でクリーム状の外観を有し、風味がある。この方法において、約72〜80%の水相を含有する低脂肪、高い含水量の食品が、生産される。
【0020】
別の適用例において、混合された場合に、発熱反応を起こすことが可能である2種以上の化学物質(そのうち少なくとも2つの反応物が水溶性である)からなる自己発熱製剤が生成される。この適用例において、少なくとも1つの反応物が、内部相に含有され、もう1つが、外部連続相に含有される。その組成物は、反応物が混合しないので、使用中に2つの水性相が混合されるまで、発熱反応が起こらない。これは、化粧料もしくは医薬組成物などの自己発熱組成物(好ましくはクリームの形態で)が、反応物がヒトの皮膚に有害でないことを条件として、生産されることを意味する。
【0021】
さらなる適用例において、同一の液体外部相中に分散する異なる内部相を含んでなる2種以上の別々の異なる複合ポリアフロンを含んでなる組成物が生成される。外部相は、後の段階で重合されても重合されなくてもよい。この系は、多機能性生成物を生じ、それによって、各複合二液型発泡体が、種々の活性を含有し、様々な応力で異なるタスクを実施しうる。従って、例えば、冷却されると永久的に色を変え、加熱されると異なる色に変わる能力を有し、2種の不相溶の薬剤系を含有する、単一の配合物が、提供されうる。
【0022】
本願発明者らは、驚くべきことに、少なくとも1つの内部液相が、外部相と平衡であり、その結果、外部相が希釈されるならば、内部相が、制御された速度で、その中に含有される活性成分を放出し始めることを見出した。従って、例えば、水素結合した外部相を1つと水素結合した内部相を少なくとも1つ含有する組成物は、外部相を希釈することにより、内部相から酵素などの活性を放出させることができる。
【0023】
本発明の組成物は、例えば、室温でかつ低破砕で、作られることが可能であるので、酵素もしくは条件に敏感な活性に非常に有用でありうる。
【0024】
粘性改質剤による内部相と外部相の粘性プロファイル(viscosity profiles)の改変は、当業者に公知であり、製造中の液滴サイズおよびアフロン強度に影響するように調節することが可能である。
【0025】
使用されるまで2つの水性相に分離された反応種の使用のさらなる例として、水素結合した相(例、水性相など)の少なくとも1つが、適切な粘着性前駆体(例、ポリマーなど)と、もう一方の少なくとも1種の開始種とを含有する粘着性生成物の配合物が挙げられる。
【0026】
同様な方法で、本発明は、色変化反応(例えば、一方でpH感度のよい色素(例、ブロモチモールブルーなど)、他方で酸および塩基の溶液を用いる反応など)に使用されることが可能である。
【0027】
なおさらなる適用例において、2つの水性相は、使用時まで互いに不相溶である2つの材料を別々に維持するように、使用されうる。一緒に組み合わされると溶液から沈殿すると思われる2種の薬剤(例えば、一方の薬剤がアニオン性で他方がカチオン性である場合にありうることだが)の送達ビヒクルでありうる。
【0028】
本発明は、以下の実施例において、さらに説明されるだろう。
【実施例】
【0029】
油中水型エマルションの調製
調製例1(製剤1)
「油中水型」エマルションを以下の成分から調製した。
【0030】
成分 重量(g) %
水性相
脱塩水に溶かした1%の塩化ナトリウム 50 50

油相
ダウコーニング(Dow Corning)5200配合助剤 4.0 4.0
中粘度の白色鉱油 46 46

合計 100 100
【0031】
油中水型エマルションを直径6.5cmの250mLビーカー内で調製した。およそ2000rpmで、15分間、直径5.5cmのインペラで攪拌しながら、水性相を油相に加えた。
【0032】
調製例2(製剤2)
「油中水型」エマルションを以下の成分から調製した。
【0033】
成分 重量(g) %
水性相
脱塩水に溶かした1%の塩化ナトリウム 100 50.0

油相
ダウコーニング(Dow Corning)5225c配合助剤 7.40 3.70
フェニルトリメチコーン 92.6 46.3

合計 200 100
【0034】
油中水型エマルションを直径6.5cmの500mLビーカー内で調製した。およそ4500rpmで、10分間、ロータステータで攪拌しながら、水性相を油相に加えた。
【0035】
複合二液型発泡体の調製
実施例1
【0036】
成分 重量(g) %
製剤1 90 90
PEG40 ヒマシ油 1.0 1.0
脱塩水 8.9 8.9
メチルジブロモグルタロニトリル 0.1 0.1
(および)フェノキシエタノール(防腐剤)

合計 100 100
【0037】
PEG40ヒマシ油と防腐剤を250mLビーカー内で水に溶かした。次に、最初は350rpmの速度で、直径5.5cmのインペラで攪拌しながら、製剤1をビーカーに滴下して加えた。製剤1を全て添加し攪拌速度150rpmになるまで、加えた製剤1が増えるに従って、インペラの速度を下げ、添加速度を上昇させた。
【0038】
実施例2
【0039】
成分 重量(g) %
製剤2 180 90
ラウレス−7 1.8 0.9
ラウレス硫酸ナトリウム 2.0 0.1
脱塩水 17.8 8.9
ジアゾリジニル尿素、ヨードプロピニル、 0.2 0.1
ブチルカルバメート、プロピレングリコール(防腐剤)

合計 100 100
【0040】
ラウレス−7、ラウレス硫酸ナトリウムおよび防腐剤を水に加え、500mLビーカー中で、フラットブレードスターラーを用いて徐々に混合した。次に、最初は200rpmの速度で、製剤2をビーカーに滴下して加えた。より一層の製剤2を添加するに従って、攪拌速度を下げた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部相と、内部相を有するポリアフロンとを含んでなるポリアフロン分散体であって、前記内部相が、(i)液体である第一相と(ii)液体または気体である第二相とを含んでなるポリアフロン分散体。
【請求項2】
前記外部相が、水性である請求項1に記載のポリアフロン分散体。
【請求項3】
前記内部相が、少なくとも2つの液相を含んでなる請求項1または2に記載のポリアフロン分散体。
【請求項4】
前記内部相が、水性相と非水性相を含んでなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアフロン分散体。
【請求項5】
前記内部相が、単一の水性相と単一の非水性相を含んでなる請求項4に記載のポリアフロン分散体。
【請求項6】
前記内部相が、エマルションを含んでなる請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアフロン分散体。
【請求項7】
前記内部相が、ポリアフロンを含んでなる請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアフロン分散体。
【請求項8】
前記内部相が、さらに固相を含んでなる請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアフロン分散体。
【請求項9】
前記内部相が、少なくとも60重量%の水性相を含んでなる請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリアフロン分散体。
【請求項10】
前記外部相の成分は、前記ポリアフロンが粉砕または破壊されると前記内部相の成分と反応できる請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアフロン分散体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項で規定したポリアフロン分散体を調製する方法であって、
a.内部相を形成する工程と、
b.外部相と工程aで調製した内部相とを含んでなるポリアフロン分散体を形成する工程と、
を含む方法。

【公表番号】特表2007−531613(P2007−531613A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500282(P2007−500282)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000659
【国際公開番号】WO2005/082515
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506029037)ドラッグ デリバリー ソリューションズ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】