説明

複合効果糸およびそのファブリック

【課題】望ましい視覚効果、手触り、ならびに伸縮性のある編物あるいは織物とすることができる複合効果糸を対象とする。
【解決手段】一体化されて単糸を形成する複合糸および第2の糸を含む合成ポリマー糸が開示される。複合糸は第1成分および第2成分からできており、それぞれは繊維形成性ポリマーからなり、またそれぞれは嵩高効果をもたらすためにもう一方と異なる収縮性をもつ。例えば異なるポリマーあるいは相対粘度が異なる類似ポリマーを用いることで、この収縮性の違いを得ることができる。本発明の合成ポリマー糸は、有利にも、この糸を用いて製造された製品の視覚的性質を向上させるストラティフィケーション効果を含む改良された視覚効果を示した。さらに、この糸から製造されたファブリックの手触りおよび伸縮性が向上した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2000年3月1日に出願された米国仮出願60/186,294号の優先権を主張し、その全体を参照により組み込む。また、本出願は、特願2001−563660号の分割出願である。
【0002】
(発明の技術分野および産業上の利用可能性)
本発明はファブリックおよび衣類の製造に有用なポリマー糸、特に一体化されて単糸を形成する、複合糸(bicomponent yarn)および第2の糸を含むナイロンまたはポリエステル糸に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ナイロン糸は様々な編物および織物に用いられる。ソフトな手触りならびに伸縮効果のある見た目に美しいファブリックを得るための努力が継続しておこなわれている。1つの努力が複合糸の製造に導き、これは当技術分野において記載されてきた。例えば、米国特許第4,601,949号(特許文献1)および第4,740,339号(特許文献2)は、ポリアミド複合(conjugate)フィラメント、あるいは複合糸、およびインライン紡糸延伸法を用いてそれらを調製する方法を教示する。同様に、米国特許第3,671,379号(特許文献3)は、溶融紡糸、延伸、およびアニーリングにより調製される、ポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(トリメチレンテレフタレート)との複合糸を開示する。
【0004】
これらの特許に記載される複合糸の利点は、これらがストレッチ衣類の作製に有用な嵩高あるいは捲縮効果(crimping effect)を生み出すということである。例えば、これらの特許は、複合糸に収縮性の異なるポリマーを用いることにより、望ましい嵩高あるいは捲縮効果を得ることができるということを教示する。異なるポリマーを用いることにより、あるいは相対粘度が異なる類似のポリマーを用いることにより、この収縮性の違いを得ることができる。しかし、複合糸だけでつくられたファブリックには、望ましい視覚的効果、ソフトな手触り、ならびに伸縮のないことが多い。
【0005】
本発明は、複合糸と第2の糸を含み、望ましい視覚的効果、ソフトな手触り、ならびに伸縮の得られることが見出された複合効果糸(bicomponent effect yarn)に関する。コンポジット糸(composite yarn)が当技術分野で記載されているが、これら他の糸のいずれも本発明で望ましいとされるすべての性質はもっていない。コンンポジット糸は、例えば米国特許第6,020,275号(特許文献4)に記載されている。そこでは、コンポジット糸は、荷重支持糸(load bearing yarn)が融着糸あるいは嵩高糸と一体化されるものとして記載されている。しかし、この糸はそれにあるとされる強度のために接着糸向けであって、本発明の複合効果糸にあるとされる視覚効果およびソフトな手触りをもたない。
【0006】
別の特許、米国特許第6,015,618号(特許文献5)に、チェーンステッチ糸に挿入されたインレイ糸をもつチェーンステッチ糸を含むコンポジット糸が記載されている。この特許は、ストレッチ性ファブリックを得ることを対象としたが、水溶性糸および弾性糸を使用することが特に想定されている。他方、本発明の複合効果糸は、通常は水溶性糸を使用せず、さらに弾性ポリマーを使用することなくストレッチ性ファブリックを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,601,949号明細書
【特許文献2】米国特許第4,740,339号明細書
【特許文献3】米国特許第3,671,379号明細書
【特許文献4】米国特許第6,020,275号明細書
【特許文献5】米国特許第6,015,618号明細書
【特許文献6】米国特許第4,244,907号明細書
【特許文献7】米国特許第4,202,854号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ある応用では、ナイロン糸が、加撚あるいはエアージェットテクスチャリングのいずれかによりスパンデックス弾性糸をカバーするのに用いられてきた。結果として、これらの糸からつくられたいくつかのファブリックでは伸縮性は優れているが、本発明に備わる視覚的美しさのないことが多い。さらに、本発明の複合効果糸と異なり、スパンデックスはゴム状繊維であり、染料をよく吸収しない。また、スパンデックスはゴム状繊維であるため、本発明との比較で、それは望ましいソフトな感触あるいは「手触り」を与えない。
【0009】
したがって、本発明は、望ましい視覚効果、手触り、ならびに伸縮性のある編物あるいは織物とすることができる複合効果糸を対象とする。さらに、これらの織物は好ましくはナイロン糸から製造されるので、それらはまた染色性で堅牢でもある。本発明の糸から製造されたファブリックのテクスチャは、既知の他のファブリックに比べると滑らかでビロードのような手触りがある。
【0010】
米国特許第3,671,379号(特許文献3)はポリエステル複合短繊維と第2のポリエステル短繊維とのブレンドを記載する。例えば例XXVを参照。しかし、糸あるいは連続フィラメントの組み合わせは提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、一体化されて単糸を形成する、複合糸と第2の糸を含むポリマー糸に関する。複合糸は少なくとも第1の成分と第2の成分を含み、それぞれは繊維形成性ポリマーからなり、好ましくは、それぞれは嵩高効果をもたらす異なる収縮性を有する。例えば、異なるポリマーを用いることあるいは相対粘度が異なるポリマーを用いることにより、収縮性の違いを得ることができる。本発明のポリマー糸は有利にも、この糸を用いて製造された製品の視覚的性質を向上させるストラティフィケーション効果(stratified effect)を含む改良された視覚効果を示した。さらに、本発明のポリマー糸は、それから製造されたファブリックに予想外にソフトな手触りと優れた伸縮性をもたらすことが多い。ソフトな手触りは特に編物において特徴的であった。
【0012】
本発明の別の実施形態において、このポリマー糸を用いて製造された製品が記載される。特に、このポリマー糸を用いてポリマー糸を含むファブリックが製造される。さらに、このようなファブリックからつくられる衣類が教示される。
【0013】
さらに別の実施形態において、ポリマー糸の製造方法は、複合糸を第2の糸と一体化して単糸を形成することを含み、複合糸は少なくとも第1の成分および第2の成分を含み、それぞれは繊維形成性ポリマーからなり、それぞれは互いに収縮性が異なる。このプロセスには、前記一体化ステップの前に、その第1および第2フィラメント成分から複合糸を製造することをさらに含めてもよい。
【0014】
(図面の簡単な説明)
(図1)は、インターレースにより複合糸および第2の糸を用い、部分延伸された本発明のポリマー糸の一製造方法の概略図である。
(図2)は、複合糸および第2の糸がインターレースされており、記載されたロール配置を用いて十分に延伸された、本発明のポリマー糸の別の製造方法の概略図である。
(図3)は、複合糸の横断面が円形で第2の糸が円形の、3つの異なる部分での横断面を示す図である。
(図4)は、複合糸の横断面が円形で第2の糸がドッグボーン形の、3つの異なる部分での横断面を示す図である。
(図5)は、複合糸の横断面が円形で第2の糸がトライローバルの、3つの異なる部分での横断面を示す図である。
(図6A)は、2本の単一成分糸からつくられた、比較のためのコントロールファブリックの顕微鏡写真である。
(図6B)は、複合糸および単一成分糸の組み合わせからなるポリマー糸でつくられたファブリックの視覚効果を示す顕微鏡写真である。
(図6C)は、ナイロンが染色されポリ(エチレンテレフタレート)/ポリ(トリメチレンテレフタレート)の組合わせ糸が非常に薄い色のままである一試料の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書で用いられる場合、用語「合成ポリマー糸」あるいは「複合効果糸」は、複合糸と第2の糸とを組合わせて製造される本発明の単一糸を表す。合成糸には完全にあるいは部分的に合成物である実施形態が含まれる。用語「ストラティフィケーション糸および組合せ糸(combined yarn)」もまた以下で本発明の糸を記述するのに用いられることがある。
【0016】
この糸から製造されるファブリックには視覚、手触り、および伸縮効果があり、これらが本発明の目的である。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「複合糸」は、少なくとも2種の溶融紡糸繊維成分の複合体であって、長手方向に共延長をもつ少なくとも2種の異なるポリマーセグメントを有する複合体を表す。繊維成分は当技術分野で知られる適切な溶融紡糸繊維形成ポリマーのいずれかからなる。複合の第1および/または第2成分の適切な繊維形成ポリマーには、ポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、レーヨンなどのビスコースポリマー、およびアセテートからなる何らかのホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーが含まれる。用語「複合(bicomponent)」は2成分のみに限定しようとするものではなく、長手方向に共延長をもつ少なくとも3種以上の異なるポリマーセグメントを有する複合体を形成する、3種以上の成分を含むと見なされている。このような複合を多成分繊維と呼ぶことができる。
【0018】
好ましい複合繊維は、繊維の長手方向に沿って互いによく固着する1組のポリマーを含む繊維であり、繊維の横断面は、有用な捲縮を発現させることができる、例えばサイドバイサイド、偏心芯鞘あるいは他の適切な横断面である。また、好ましくはこの繊維はかなり嵩高い。
【0019】
用語「収縮性」は、本明細書で用いられる場合、湿熱に曝されたとき複合糸各成分の長手方向寸法が減少することを表す。複合糸成分間のこの収縮性の違いは通常、1つまたは複数のポリマータイプ、相対粘度などのポリマーの性質、結晶化特性、横断面、各ポリマーセグメントに存在する添加剤の量、あるいはこれらの性質の組合せにおいて異なる繊維形成ポリマーを選択することにより得られる。複合糸成分のこれらの違いは、長手方向に共延長する異なるポリマーセグメントの嵩高効果を発現させる収縮の違いをもたらす。例えばサイドバイサイドあるいは芯鞘配置に、複合糸の成分を望ましく配置することができる。最高の美的効果を与えるために、芯鞘は好ましくは偏心したあるいは非対称な芯鞘配置であるべきである。
【0020】
適切なホモポリアミドには、これらに限定はされないが、ポリヘキサメチレンアジポアミドホモポリマー(ナイロン66);ポリカプロアミドホモポリマー(ナイロン6);ポリエナントアミドホモポリマー(ナイロン7);ナイロン10;ポリドデカノラクタムホモポリマー(ナイロン12);ポリテトラメチレンアジポアミドホモポリマー(ナイロン46);ポリヘキサメチレンセバコアミド(sebacamide)ホモポリマー(ナイロン610);n−ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンとのポリアミドホモポリマー(ナロン612);ならびにドデカメチレンジアミンとn−ドデカン二酸とのポリアミドホモポリマー(ナロン1212)が含まれる。前記ホモポリマーを形成するために用いられるモノマーのコポリマーおよびターポリマーもまた本発明に適する。
【0021】
適切なコポリアミドには、これらに限定はされないが、前記ホモポリアミドを形成するために用いられるモノマーのコポリマーが含まれる。さらに、他の適切なコポリアミドには例えば、ナロン6、ナイロン7、ナイロン10、および/またはナロン12と接触させられよく混合されたナイロン66が含まれる。例示的なポリアミドにはまた、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、あるいはセバシン酸などのジカルボン酸成分;ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリ−2−メチルペンタメチレンアジポアミド、ポリ−2−エチルテトラメチレンアジポアミド、あるいはポリヘキサメチレンイソフタルアミドなどのアミド成分;ヘキサメチレンジアミンおよび2−メチルペンタメチレンジアミンなどのジアミン成分;および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなるコポリマーも含まれる。好ましくは、複合糸の第1の成分はポリ−2−メチルペンタメチレンアジポアミド(MPMD)と共重合されたナイロン66のコポリアミドである。このコポリアミドは通常、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、およびMPMDを合せて重合することにより製造される。最も好ましくは、複合糸の第1の成分は、ポリ−2−メチルペンタメチレンアジポアミドと共重合されたナイロン66のコポリアミドであり、第2の成分はナイロン66である。
【0022】
当技術分野において既知の方法を用いて前記コポリアミドを製造することができる。例えば、フレークあるいはポリマー顆粒の形の一定の割合の各ポリアミド成分を混合し、均一なフィラメントとして押し出すことにより、適切なコポリアミドを製造できる。別法としてオートクレーブで適当なモノマーを混合し当技術分野で既知のポリアミド化プロセスを実施することにより、コポリアミドを製造することができる。いずれのプロセスも本発明で用いられるコポリアミドを製造するのに適切である。
【0023】
前記のホモポリマーを形成するのに用いられるモノマーからなるターポリマーもまた本発明に適し、また当技術分野で既知のプロセスにより製造することができる。
【0024】
複合糸の繊維形成ポリマーはまた既知のいずれかのポリエステルでもよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが含まれる。ポリ(プロピレンテレフタレート)はまたポリ(トリメチレンテレフタレート)として、またポリ(ブチレンテレフタレー)はポリ(テトラメチレンテレフタレート)としても知られている。ポリエステルはこれらのポリエステルのホモポリマーあるいはコポリマーでもよい。当技術分野で既知のプロセスによりこれらのポリエステルを製造することができる。
【0025】
好ましいポリエステルが次に記載される。記号「//」は複合繊維を製造するために用いられる2種のポリマーを分けるために用いられている。「2G」はエチレングリコールを意味し「3G」は1,3−プロパンジオールを意味し、「4G」は1,4−ブタンジオールを意味し、また「T」はテレフタル酸を意味する。したがって、例えば、「2G−T//3G−T」は、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合繊維を表す。
【0026】
本発明の複合効果糸に用いられる複合ポリエステルの2種のポリエステルは、成分の異なる、例えば2G−Tと3G−T(好ましい)あるいは2G−Tと4G−Tであってよく、さらに好ましくは固有粘度が異なる。別法として、成分は同一、例えば2G−Tであって、固有粘度が異なっていてもよい。他の有用なポリエステルには、ポリ(エチレン2,6−ジナフタレート)、ポリ(トリメチレン2,6−ジナフタレート)、ポリ(トリメチレンビベンゾエート)、ポリ(シクロヘキシル1,4−ジメチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−シクロブタンジメチレンテレフタレート)、およびポリ(1,3−シクロブタンジメチレンビベンゾエート)が含まれる。ヒートセット後に大きな捲縮値を得るためには、ポリマーが固有粘度(「IV」)と成分の両方に関して異なっている、例えば、IVが約0.45〜0.80dl/gの2G−TとIVが約0.85〜1.50dl/gの3G−Tであると有利である。
【0027】
ポリエステル複合繊維の一方あるいは両方のポリエステルがコポリエステルであってよい。例えば、コポリエステルをつくるのに用いられるコモノマーが、イソフタル酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、1,3−プロパンジオール、あるいは1,4−ブタンジオールであるコポリ(エチレンテレフタレート)を用いることができる。コモノマーはコポリエステル中に約0.5〜15モルパーセントのレベルで存在しうる。コポリエステルの使用は、両方のポリエステルが他の点では同じ、例えば2G−T//2G−T/Iの場合に特に有益でありうる。(複数の)コポリエステルはまた、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの少量の他のコモノマーを、このようなコモノマーが本発明の有益な効果に悪影響を及ぼさなければ、約0.2〜5モルパーセントのレベルで含んでいてもよい。
【0028】
複合糸をつくるのに用いられるポリマーはどのような横断面形状であってもよい。断面形状には通常、例えば円形、楕円形、トライローバル、より多数の対称ローブ(lobe)をもつ形状、およびドッグボーン形状などが含まれる。
【0029】
本発明による複合糸あるいは第2の糸に用いられるポリマーは、ポリマーの性質を向上させるのに寄与する通常の添加剤を、さらなる成分として含むことができる。これらの添加剤の例には、帯電防止剤、抗酸化剤、抗菌剤、防炎剤、滑剤、染料、光安定剤、重合触媒および助剤、接着性向上剤、二酸化チタンなどの艶消剤、マット化剤、および/または有機ホスファイトが含まれる。
【0030】
複合糸の各成分は嵩高効果を得るのに必要な収縮の違いを生じるのに十分な量で存在し、既知の方法で得ることができる。例えば、違ったタイプのポリマー、相対粘度および結晶化特性などの性質が異なる成分を用いること、あるいは成分を異なった比率で用いることにより収縮の違いを得ることができる。例えば、複合糸の第1の成分を急速に結晶化する繊維形成ポリアミドで形成することができ、複合糸の他の成分は比較的結晶化が遅い繊維形成ポリアミドで形成される。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,740,339号(特許文献2)に教示されるように、結晶化の違いを、異なる終端速度距離をもつポリアミドを選択することにより実現することができ、これは高負荷捲縮試験値により示されるより大きな嵩高性を生ずる結果となる。
【0031】
他方、相対粘度の違いに基づいて複合糸の成分を選択してもよい。複合糸の第1の成分が複合糸の他の成分と同一の化学式の繰返し構造単位からなる場合、相対粘度が異なるポリマーを選択すると望ましい嵩高効果が得られる。複合糸の成分の相対粘度の違いは嵩高効果を得るのに十分な収縮の違いを生じるのに十分なものでなければならない。例えば、ポリマーセグメントを形成するのに相対粘度(RV)の異なるナイロン66ポリアミドが用いられる場合、RVの小さいナイロン66のRVが少なくとも20、例えば少なくとも50、あるいは少なくとも65であるとして、2つのナイロン66のRVの違いは少なくとも5、好ましくは少なくとも15、また最も好ましくは少なくとも30でなければならない。好ましくは、複合糸の成分は同一の繰返し構造単位からなるが、RVが異なる。
【0032】
別法として、複合糸の各成分の比率を変えること、あるいは各成分に異なるタイプのポリマーを使用することにより、収縮の違いを得ることができる。やはり、糸の各成分の量は嵩高効果を得るのに十分な収縮の違いを生じるのに十分な量でなければならない。
【0033】
「嵩高効果」は本明細書で用いられる場合、複合糸が捲縮する固有の能力を表し、複合糸の成分間に収縮性の違いをもたせることによりそれを実現することができる。これらのタイプの繊維を嵩高くするのに機械的な延伸加撚あるいはテクスチャリングプロセスを必要とせず、捲縮する複合糸固有の能力は有利にも複合糸が「自発嵩高性(self−bulking)」であることを可能にする。全体がこのタイプの繊維からなるあるファブリックは伸縮性をもち機械的テクスチャード繊維からのものと同様の感触をもつことがある。2G−T//3G−Tの複合が用いられた場合、テクスチャード繊維よりずっと大きな伸縮の得られることが多い。
【0034】
本発明に用いられる複合糸の捲縮ポテンシャル(crimp potential)および/または捲縮収縮(crimp shrinkage)を測定することにより、嵩高効果を客観的に確かめることができる。特に、捲縮ポテンシャルは湿熱に曝すことにより糸に発生する嵩高さの目安である。捲縮/嵩高化処理後の引き伸ばされた(あるいは荷重をかけた)長さと引き伸ばされていない(あるいは無荷重での)長さとの間の差が、引き伸ばされた長さのパーセントとして表わされる。他方、捲縮収縮は湿熱に曝されることにより引き起こされた糸の収縮の目安である。捲縮収縮は処理前の引き伸ばされた長さのパーセントとして表された、処理前後の引き伸ばされた長さの間の差である。捲縮ポテンシャルおよび捲縮収縮は互いに正比例する。別の言い方をすると、捲縮ポテンシャルが大きいほど捲縮収縮も大きい。適切な嵩高効果は、本発明の合成ポリマー糸の目指す最終用途に依存する。一般に、適切な嵩高効果は少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、また最も好ましくは少なくとも約45%の捲縮ポテンシャルがある複合糸を用いて得られる。さらに、適切な嵩高効果は通常、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、また最も好ましくは少なくとも約45%の捲縮収縮がある複合糸を用いて得られる。
【0035】
特に指摘されなければ、実施例で用いられるポリエステル複合繊維の捲縮(crimp contraction)レベル(「CCa」)は以下のようにして測定された。各試料を、約0.1gpd(0.09dN/tex)の張力でかせリールを用いて、総デニールが5000+/−5デニール(5550dtex)である糸束にした。この糸束を、華氏70+/−2度(21+/−1℃)および相対湿度65+/−2%で最低16時間保った。糸束を実質的にスタンドから垂直に吊るし、糸束の底部に1.5mg/den(1.35mg/dtex)となる重り(例えば5550dtexの糸束では7.5g)を吊るし、平衡長さに達するように荷重をかけられた糸束を放置し、そしてその糸束の長さを1mm以内の精度で測定し「Cb」として記録した。試験の続く間、この1.35mg/dtexの荷重は糸束に残された。次に、500グラムの重り(100mg/d;90mg/dtex)を糸束の底部から吊るし、そして糸束の長さを1mm以内の精度で測定し「Lb」として記録した。(この試験で以下で記載されるヒートセット前の)捲縮値(パーセント)、「CCb」は以下の式により計算される。
【0036】
CCb=100x(Lb−Cb)/Lb
【0037】
500gの荷重を取り除き、次に糸束をラックに吊るし、1.35mg/dtexの荷重はそのままで、オーブン中華氏約250度(121℃)で5分間ヒートセットし、その後ラックおよび糸束をオーブンから取り出し、2時間前記の条件に保った。このステップは、複合繊維に最終的な捲縮を発生させる1つの方法である工業的な乾燥ヒートセットを模倣するように工夫されている。糸束の長さを前記のように測定し、その長さを「Ca」として記録した。再び500gの荷重を糸束から吊るし、そして糸束の長さを前記のように測定し「La」として記録した。ヒートセット後の捲縮値(パーセント)、「CCa」を以下の式により計算した。
【0038】
CCa=100x(La−Ca)/La
【0039】
複合糸を、例えばサイドバイサイドあるいは非対称鞘−芯配置のいずれかに配置することが可能である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,601,949号(特許文献1)は、可能なサイドバイサイド配置を記載する。好ましくは、配置はサイドバイサイドである。
【0040】
複合糸を製造する方法は当技術分野で既知であり、既知の何れかの方法により形成することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,740,339号(特許文献2)は、フィラメント長手方向に沿ってサイドバイサイド形状になる紡糸延伸プロセスによる、異なる相対粘度を有する複合糸の製造方法を記載する。別の既知の方法が、いずれも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,244,907号(特許文献6)および第4,202,854号(特許文献7)に記載されており、単一成分の溶融流れが完全に固化する前に片側を冷却するかあるいは完全に固化した後直ちに片側を加熱し、次にフィラメントを延伸することにより、単一ポリマーを押出して単一成分の溶融流れを形成することによる複合糸の製造プロセスを処理することができる。複合糸の延伸は通常、糸を加熱あるいは蒸気に曝すことによるなどの既知の手段により、また次いで複合糸が嵩高くなれるように実施される。さらに、本発明の合成ポリマー糸の製造につながる連続方式で複合糸を製造してもよい。別法として、オフラインで複合糸を製造し、次に第2の糸と合せてもよい。
【0041】
合成ポリマー糸の他の成分は第2の糸であり、それは人造あるいは天然繊維からなる。第2の糸は、これらに限定されないが、ポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、レーヨンなどのビスコースポリマー、ならびにアセテート、あるいは前記のものの組合せを含む人造繊維形成ポリマーからなることができる。さらに、第2の糸には、コットン、ウール、および/またはシルクなどの天然繊維を含めることもできる。好ましくは、第2の糸は非弾性的である。また、好ましくはこの糸は溶融紡糸できるポリマーあるいは天然繊維からなる。用いられるポリマーはホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、およびこれらの組合せであってよい。第2の糸は単一延伸糸もしくはハード糸(hard yarn)、あるいは複合糸であってよい。前記のようにして複合糸を製造することができる。好ましい実施形態において、第2の糸は単一延伸糸である。
【0042】
第2の糸をつくるために用いられるポリマーはどのような断面形状でもよい。断面形状には、例えば円形、楕円形、トライローバル、より多数の対称ローブを持つ形状、ならびにドッグボーン形状などが含まれる。
【0043】
第2の糸が単一成分延伸糸である場合、破断伸びが約80%より小さい、好ましくは破断伸びが約60%より小さい、より好ましくは破断伸びが約50%より小さい糸が、本発明で特に有用であることが見出された。
【0044】
一体化される複合糸と第2の糸は、想定する用途に応じて最終製品に様々な比率で存在してもよい。最終製品の各成分の割合を、例えばその総デニールとフィラメント当たりのデニールにより評価することができる。総デニールあるいはフィラメント当たりのデニールが大きいほど、最終製品中のその成分の量が多い。これらの因子に基づいて成分を変更すると通常最終製品に異なる機能が付与される。例えば、最終製品で複合糸の割合をより大きくすることにより、より大きなストレッチを得ることができる。逆に、第2の糸が単一成分糸である場合、第2の糸の割合をより大きくすることによりストレッチの少ないファブリックを得ることができる。
【0045】
本発明のポリマー糸の典型的な断面が図3、4、5に描かれている。これらの図には、図1および2に描かれたインターレース法により製造された合成ポリマー糸の異なる3つの断面が描かれている。例えば図3には、複合糸と第2の糸が円形断面であるポリマー糸が描かれている。糸を互いにインターレースあるいは加撚することにより、フィラメント断面の異なる配列19、20、21を得ることができる。フィラメント断面のこれらの異なる配列は、独特の視覚、手触り、およびストレッチ効果を与えるということが示された。同様に、図4および5はフィラメント断面の異なる配列を示し、複合糸は円形であって、第2の糸はそれぞれドッグボーン形状21、22、23およびトライローバル24、25、26である。
【0046】
細かいファブリックを製造するのに低デニールの本発明のポリマー糸を用いることができ、一方比較的重いファブリックに高デニールの糸を用いることができるということが見出された。したがって、本発明の合成ポリマー糸はその最終末端用途製品に適するいかなる糸デニールでもありうる。細かいファブリックでは、この合成ポリマー糸は通常、約60より小さく、好ましくは約50より小さく、またより好ましくは約40より小さい、複合糸と第2の糸との組合わせを合わせたデニールを有する。中程度の重さのファブリックでは、合成ポリマー糸は通常、約50から約200の間、好ましくは約70と約150の間、またより好ましくは約70と約140の間のデニールを有する。最後に、荷重支持ファブリックなどの比較的重いファブリックでは、合成ポリマー糸は通常、約200から約2400の間、好ましくは約200と約2000の間、またより好ましくは約600のデニールを有する。本発明の合成ポリマー糸は、最も好ましくは、20デニールで13のトライローバル第2紡糸性糸と組合わせた、18デニールで8フィラメント、12デニールで3フィラメント、あるいは9デニールで3フィラメントからなる群から選択される総デニールと総フィラメント数をもつ自発嵩高性複合糸;あるいは70デニールで17フィラメントのトライローバルの第2の糸、40デニールで26フィラメントのドッグボーン形状の第2の糸、86デニールで68フィラメントの円形の第2の糸、ならびに85デニールで92フィラメントの円形の第2糸からなる群から選択される第2の糸と共に、70デニールで34フィラメントの自発嵩高性複合糸を用いる。
【0047】
本発明では、複合糸を第2の糸と合せて単糸を形成する。オフラインで独立にこれらの複合糸および第2の糸を製造し、次に最終の合成ポリマー糸を形成するために一体化するか、あるいはオンラインで一方あるいは両方を連続方式で製造することができる。撚り合わせ(plying)、コスピニング(cospinning)、エアジェットテクスチャリング、仮撚りテクスチャリング、およびカバリングを含む既知のいずれかの方法により、これらの成分を合せて単糸を形成することができる。例えばドローツイスタ(draw twister)で糸を撚ることにより、撚り合わせをおこなうことができる。1インチ当たりの回転数ならびに複合糸および第2の糸の割合を調節することにより、強い視覚効果を与えるストライエーション(striation)をこの方法により得ることができる。例えば1インチ当たりの回転数が大きいと、比較的短いストライエーションを得ることができる;1インチ当たりの回転数が少ないと、比較的長いストライエーションが得られる。通常、約0〜5tpi(0〜2t/cm)、好ましくは1/4〜1/2tpi(0.1〜0.2t/cm)で糸は撚られる。インターレース化ジェット中で糸を混ぜ合わせることにより、コスピニングをおこなうことができる。インターレース化ジェットで用いられるエア圧力を変更することにより、様々な視覚的効果を得ることができる。エアジェットテクスチャリング装置を通して様々な速度で芯糸および効果糸(effect yarn)を過剰供給することにより、エアジェットテクスチャリングをおこなうことができる。仮撚りテクスチャリング装置を用いて嵩高くすることができ、供給速度を変更することにより、糸は最終の糸の視覚的性質を変えることがある。一方の糸の回りを他方の糸で包み込むことにより、カバリングをおこなうことができる。2種の糸を一体化する前記方法の各々は既知である。本開示に基づいて、当技術分野の技術者は、望ましい視覚的性質を得るために、供給速度、1分間当たりの回転数などを変更する方法を理解するであろう。最後に得られるのが単糸であれば、2種の糸を一体化するためにいかなる方法あるいは装置を用いることもできる。
【0048】
さらに、任意の配置で複合糸および第2の糸を一体化させることができる。例えば、これらの成分が芯および効果糸として用いられる場合、芯糸として複合糸あるいは第2の糸のいずれでも用いることができる。カバリングにより糸が一体化される場合、複合糸あるいは第2の糸のいずれかをもう一方の糸を包み込むのに用いることができる。
【0049】
図1および2には、本発明のポリマー糸を製造する2つの実施形態が描かれている。複合糸を生成するように紡糸金口を設計することができ、溶融流れの形成に際しては、紡糸金口面で収束させて溶融流れを形成するようにそれぞれの溶融ポリマーを独立したキャピラリを通して押し出すか、あるいはポリマーを合流させ次に共通の紡糸金口キャピラリを通して押し出して溶融流れを形成することができる。さらに、第2の糸を複合糸と同時に形成するように、紡糸金口を設計することができる。図1は部分延伸合成ポリマー糸を製造する方法を示し、溶融ポリマー1、2、および3が独立したキャピラリ4を通して押し出され、紡糸金口面5下で収束する。溶融ポリマー2および3は紡糸金口面5のすぐ下で一体化されて複合フィラメント6を形成する。これらのフィラメント6は合せて束ねられて複合糸7を形成する。第2の糸と一体化される前あるいは後に、この複合糸は通常延伸され、そして複合糸が嵩高くなることができるように既知の手段により、例えば糸を加熱するかあるいは蒸気に曝すことにより処理される。
【0050】
再び図1を参照すると、第2の糸9をつくる溶融ポリマー1が独立したキャピラリ4を通して押し出されることによりつくられるフィラメント8が合せて束ねられて第2の糸9を形成する。前記のように、第2の糸は単一成分延伸糸あるいは複合糸である。図1では第2の糸が単一成分部分延伸糸として描かれている。次に、複合糸7および熱可塑性の溶融紡糸できる糸9は、通常フィラメントが広がること(splaying)を防ぐのに十分な圧力で運転される独立したインターレース化ジェット10および11に導かれる。広がりを制御するのに用いられるエア圧力は通常、選択されたインターレース化ジェットの特定のタイプに依るが、一般に約10psi(0.07Mpa)から80psi(0.55Mpa)、好ましくは20psi(0.14Mpa)から60psi(0.41Mpa)である。独立した糸12および13は一緒にされ、約10psi(0.07Mpa)から80psi(0.55Mpa)、好ましくは20psi(0.14Mpa)から60psi(0.41Mpa)、より好ましくは約30psi(0.21Mpa)の圧力で運転される別のインターレースジェット14で一緒に延伸される。次に、生成したポリマー糸15は、0.1〜0.4グラム/デニールの張力で運転され、約2000ypm(1829mpm)を超える速度でパッケージ16に巻き上げられる。
【0051】
図2には延伸糸を製造する方法が描かれており、ロール配置17および18が、インターレースジェットを通ってワインダ16に至る糸の張力を調節するのに用いられる。
【0052】
図1および2は、2種の糸がそれらが糸である状態で組み合わされるということを示しているが、糸が形成される前に、例えばフィラメントとして、あるいは紡糸金口内もしくはその前でそれらを組み合わせることも有益である。
【0053】
縦編み、丸編み、もしくはメリヤス編みを含む既知の手段によりファブリックを、あるいは不織布となるステープル製品を形成するために、合成ポリマー糸を用いることができる。
【0054】
強烈な視覚効果および独特の触覚特性をもつファブリックを製造するのに、合成ポリマー糸あるいは複合効果糸を用いることができる。特に、異常に強烈な効果が比較的小さいデニールの、あるいは比較的軽量のファブリックにおいて見出された。
【0055】
例えば、本発明のいくつかの複合効果糸はストラティフィケーションファブリックを提供することが示された。本発明の好ましい糸からなるファブリックにおいて、複合効果糸内の複合糸および第2の糸は、ファブリックの一方の表面あるいは反対表面を変化に富んだ仕方で分かれ、分離の度合いの変化が、他の方法では得られないストラティフィケーション(stratification)などの利点を視覚および触覚特性にもたらすと考えられている。好ましい複合効果糸はストラティフィケーションファブリックを提供する。
【0056】
好ましい糸は、複合糸の糸デニールが効果糸のデニールとほぼ同じであり、また複合糸の糸当たりのフィラメント数が効果糸の約半分であるものである。別の好ましい糸の変形形態は、複合糸デニールが効果糸の糸デニールの約2倍であり、またフィラメント数がほぼ同じであるものである。
【0057】
より好ましい糸の変形形態は、効果糸断面形状が円形(丸形)以外、例えばトライローバルあるいはドッグボーン形状であるものである。
【0058】
別の好ましい糸は、複合糸が6〜18フィラメントをもち15〜40デニールであり、また効果糸が(プロフィール化された断面の)10〜15フィラメントをもち18〜22デニールであるものである。
【0059】
図6に、単一成分ハード糸からなるコントロールファブリックと本発明の合成ポリマー糸からなるストラティフィケーションファブリックとの比較を示す。図6Aは、第1の糸の断面は円形で第2の糸の断面はトライローバルである、ナイロン66ホモポリマーからなる2種の糸が一体化された比較例Aの糸で編まれたファブリックを示す。図6Bは実施例3の糸で編まれたファブリックを示し、複合糸および第2の糸は本発明に従って一体化された。この図から、図6Bに見られる複合糸および第2の糸の組合せから作り出されたストライエーションが独特な視覚的美しさをもたらすということが明らかである。
【0060】
さらに、本発明の合成ポリマー複合効果糸からなるファブリックは優れた伸縮性をもつ。伸縮は、ファブリックを引張り、ファブリックが放されたときにファブリックがその元の形状に戻ることを観察することにより、本質的には評価される。最終の合成ポリマー複合効果糸における複合糸の割合をより多くすることにより、ファブリックのストレッチを得られることが見出された。
【0061】
ファブリックの「手触り」により、ファブリックの感触あるいは触感の良さを表す。本発明の合成ポリマー糸からなるファブリックは他の知られている製品に比べて滑らかであり、ピック(pick)の傾向が少ない。さらに、ファブリックにはソフトコットンのような手触りがあり、特に糸がナイロンの場合そうである。特に、本発明の糸でつくられた場合に、編物の手触りは予想外にソフトであった。例えば、本発明の糸でつくられた丸編みは最高にソフトな手触りでありさらに非常に優れた伸縮性があり、これは編物が複合繊維だけでつくられた場合に多く見られる「堅い」手触りと著しい対照をなす。
【0062】
さらに、本発明の糸は好ましくはナイロンポリマーからなるため、これらの糸およびファブリックを容易に染色することができまたより堅牢である。
【0063】
何らかの既知の方法により、捲縮ポテンシャル、捲縮インデックス収縮、および相対粘度の測定をおこなうことができる。例えば、収縮惹起処理前後の標準荷重のもとでの糸束の長さを測定することにより、捲縮ポテンシャルおよび捲縮インデックス収縮を求めることができる。しかし、方法および条件の選択は性質に影響を及ぼすことがあり、例えば捲縮ポテンシャル試験に異なる荷重を用いると異なる結果が得られる可能性がある。
【0064】
捲縮ポテンシャルは95℃の水に曝すことにより糸に生成した嵩高さの目安である。それは、捲縮/嵩高化処理後の引き伸ばされた(あるいは荷重をかけた)長さと引き伸ばされていない(あるいは無荷重での)長さの間の差である。
【0065】
長さ約112cm(44インチ)の糸束を与えるように、必要な回転数でデニールリールに1050デニールの糸束を巻いた。この糸束を回転マガジン(magazine)に吊るし、2.5グラムの荷重をかけて少なくとも30分間保った。次に吊り下げられた糸束に700グラムの重りを吊るし、糸束の初期長さ(L1)を測定した。次に700グラムの重りを2.5グラムの重りと取り代えて、1.2mg/デニールの引張り荷重を加えた。次いで、糸束が吊るされたマガジンを1.5分の間95±2℃の温度に制御されたウォータバスに沈めた。次に糸束/マガジンアセンブリをウォータバスから取り出し、少なくとも3.5時間放置して乾燥した。2.5グラム荷重下での捲縮した糸束の長さ(L2)を測定した。最後に、2.5グラムの重りを700グラムの重りに取り代えて、長さ(L3)を測定した。
【0066】
パーセントで表した捲縮ポテンシャル(CP)は以下のようにして計算される:
%CP=(L3−L2)/L2x100
【0067】
パーセントで表した捲縮収縮(CS)は以下のようにして計算される:
%CS=(L1−L3)/L1x100
【0068】
既知の方法のいずれかで相対粘度を測定することができる。用語「相対粘度」は、本明細書で用いられる場合、ポリマーを8.2+−0.2重量%含むポリマー溶液の粘度計における流下時間と溶剤自体の流下時間の比であり、溶剤は90重量%のギ酸である。
【実施例】
【0069】
本発明はこれより以下の非限定的実施例により例示されるであろう。
【0070】
実施例1
29本のフィラメントからなる総デニール57の合成ポリマー糸を、13本のトライローバルフィラメントからなる総デニール20の糸および37デニールで16フィラメントの自発嵩高性複合糸を、ドローツイスタで1インチあたり約1/4回転の速度で撚り合わせることにより作製した。トライローバル糸はナイロン66からなっていた。複合自発嵩高性糸は、高RV成分として30%のポリ−2−メチルペンタメチレンアジポアミド(MPMD)が共重合されたナイロン66、また低RV成分としてナイロン66で構成されていた。高RV成分は、アジピン酸、ジアミン、およびMPMDを合せて混合して塩とし共重合することにより合成した。複合糸の断面は楕円形であった。自発嵩高性糸の一方の成分のRVは約52であり、自発嵩高性糸の他方の成分のRVは約39であった。「デルタRV」は複合糸の各成分のRVの差である。15.2cm(6インチ)のチューブをつくるために合成ポリマー糸を75ゲージLAWSON編機で編んだ。同じチューブの組を編みポット染色した。チューブを沸点華氏212度(100℃)で15分間精錬して、次に最低華氏140度(60℃)で染料を使い切るように10分間染色し、放置して空気乾燥した。染色された編物チューブを視覚効果および手触りで評価し、コントロールの染色編物チューブに比較して優れていることが見出された。
【0071】
実施例2
21本のフィラメントからなる総デニール38の合成ポリマー糸を、20デニールで13本のトライローバルフィラメントからなる糸と18デニールで8本のフィラメントからなる自発嵩高性複合糸から、実施例1と同様にして製作した。トライローバル糸はナイロン66からなり、また複合糸は、60%が30%のMPMDが共重合されたナイロン66、40%がナイロン66で構成されていた。15.2cm(6インチ)のチューブをつくるために合成ポリマー糸を75ゲージLAWSON編機で編んだ。同じチューブの組を編みポット染色した。チューブを沸点華氏212度(100℃)で15分間精錬して、次に最低華氏140度(60℃)で染料を使い切るように10分間染色し、放置して空気乾燥した。染色された編物チューブを視覚効果および手触りで評価し、コントロールの染色編物チューブに比較して優れていることが見出された。
【0072】
実施例3〜19
実施例1で記載された方法と同様にして、表1に記載のデニールおよびフィラメント数、糸の構成、ならびに複合糸のデルタRVを有する合成ポリマー糸を作製した。ドローツイスタで糸を撚り合わせるのに用いられた速度は満足すべき結果を得るために様々であった。これらの合成ポリマー糸でファブリックを織り、手触り、伸縮性、および視覚的ストラティフィケーション効果を調べた。各ファブリックに対する結果を表1に示す。複合糸を含む各ファブリックはソフトなよい手触りであることが見出された。さらに、伸縮性に関しては、ストレッチは合成ポリマー糸の複合糸の量に依存して変化することが見出された。複合糸の割合が大きくなるほど、ストレッチは大きい。
【0073】
実施例16のファブリックにおいて、合成ポリマー糸は第2の糸と一体化された複合糸であって、複合糸と第2の糸の両方のデニールとフィラメントの比が同一であった。望ましい視覚効果を得るためにはフィラメント当たりのデニールに差異のあることが有利である場合が多いが、実施例16の糸は、デニールとフィラメントの比に差異がないという事実にもかかわらず強い効果を示した。
【0074】
さらに、実施例19のように2種の複合糸が組み合わされた場合、視覚効果は比較的少ないが、ソフトコットンのようでビロードのような手触りはやはり得られるということが注目された。
【0075】
比較例A〜B
表1に記載されたデニールとフィラメントを有する糸を用いて合成ポリマー糸を作製した。実施例1〜21に比べてこれらの糸で作製されたファブリックはストラティフィケーション効果、あるいは滑らかでシルクのような手触りをもっていなかった。
【0076】
実施例20
効果糸としてのナイロン66からなる86デニールで68フィラメントのダル円形(dull round)ナイロン66ホモポリマー糸とともに、MPMDが30%共重合されたナイロン66が60%、ナイロン66が40%で構成される、70デニール、34フィラメントのTactel(登録商標)Ispira(登録商標)複合糸を、エアジェットテクスチャードコンビネーション糸のコアとして用いて、156デニールで102フィラメントのエアジェットテクスチャード糸を作製した。エアジェットテクスチャリングコンビネーションは、効果糸を同じジェットに30%早い速度で供給しながらコア複合糸を約400〜600メートル/分の速度でエアジェットに供給することにより作製された。次に、一体化された糸を緯糸として、206デニールで68フィラメントの経糸と共に2x2の綾織物とした。この織物を複合糸が嵩高くなれるようなリラックス方式で染色した。次に、得られたファブリックをオーブン中でテンターに張ってファブリックを熱固定しファブリックを望ましい重量とした。このようにして製作されたナイロン100%のファブリックは、極めてソフトなコットンのような手触りだけでなく、緯糸方向に1段のコンフォートストレッチを備えていた。
【0077】
実施例21
ナイロン66からなる85デニールで92フィラメントの円形ナイロン66ホモポリマーのエアジェットテクスチャード糸とともに、MPMDが30%共重合されたナイロン66が60%、ナイロン66が40%で構成される、70デニール、34フィラメントのTactel(登録商標)Ispira(登録商標)複合糸を、エアジェットテクスチャードコンビネーション糸のコアとして用いて、155デニールで126フィラメントの糸を作製した。エアジェットテクスチャードコンビネーションは前記実施例20と同様にして作製された。この糸を単糸としてシームレスSantoni編機で編み、次に複合糸が嵩高くなれるようなリラックス方式で染色したとき、それは最高の伸縮性をもった、コットンのような優れたソフトな手触りであった。
【0078】
実施例22
60フィラメントからなる総デニール110の合成ポリマー糸を、1インチ当たり約1/4回転の速度で、総デニール70で34本の楕円形フィラメントからなる複合糸とナイロン66ホモポリマーのドッグボーン形状糸とを撚り合わせることにより製造した。複合糸は、60%がポリエチレンテレフタレートで40%がポリプロピレンテレフタレートからなる。15.2cm(6インチ)のチューブをつくるために75ゲージのLAWSON編機で合成ポリマー糸を編むことができる。次いで同じチューブの組を編みポット染色することができる。チューブを最低華氏212度(100℃)で15分間沸点で精錬し、次に最低華氏140度(60℃)で染料を使い切るように10分間染色し、次いで放置して空気乾燥する。染色された編物チューブを視覚効果と手ざわりで評価し、コントロールの染色編物チューブに比較して優れていることを見出した。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
実施例23
62フィラメントからなる総デニール110(122decitex)の複合効果糸を実施例1と同様にして作製した。各110デニールの糸は、合計で70デニール(78dtex)の28本のドッグボーン形状(バイローバル)、および合計で40デニール(44dtex)の自発嵩高性糸複合糸の34本のフィラメントを含んでいた。バイローダル糸はナイロン66ホモポリマーからなっていた。自発嵩高性複合糸(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーが市販)は、40wt%のポリ(エチレンテレフタレート)および60wt%のポリ(トリメチレンテレフタレート)からなり、捲縮レベルが約45%(華氏225度(107℃)のオーブンを用いてであるが、捲縮試験法により測定して)、また捲縮ポテンシャルが53%であった。15.2cm(6インチ)のチューブをつくるためにこの効果糸を75ゲージのLAWSON編機セットで編んだ。同じチューブの組を編み、ナイロンをよく染色しまたポリエステル複合糸をわずかに染色する酸性染料を用いてポット染色した。これらの染色される編物チューブを100℃で15分間精錬し、続いて最低124℃で染料を使い切るように10分間染色した。これらの染色チューブを放置して空気乾燥した。この染色編物チューブを視覚効果および手触りで評価し、コントロールの染色編物チューブに比較して優れていることが見出された。図6Cは、ナイロンが染色されポリ(エチレンテレフタレート)/ポリ(トリメチレンテレフタレート)の組合わせ糸は非常に薄い色のままである一試料の外観を示す。このファブリックチューブは最高の伸縮性、コットン風の手触りおよび非常に良好なストラティフィケーション効果を示した。
【0084】
実施例24
140フィラメントからなる総デニール134(149decitex)の複合効果糸を、実質的に実施例1と同じであるが、70%の捲縮レベルを有し、70フィラメント、34デニール(34decitex)の2G−T//3G−T 40//60ポリエステル複合糸(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーが市販)と70フィラメントで100デニール(111decitex)のポリ(エチレンテレフタレート)糸(Glen Raven,Inc.の「polyset」「textured set」)とから作製した。一体化された糸は1インチ当たり0.25回転(0.1回転/cm)のZ撚りであった。糸を実質的に実施例23と同じようして編み、Merpol(登録商標)HCS界面活性剤(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーの登録商標)を用いて沸点で精錬し、0.5wt%のC.I.Disperse Blue 60および0.1wt%のC.I.Disperse Orange 25(繊維重量に対して)の混合分散染料を用いて染め、そして空気乾燥した。染色された繊維のストラティフィケーション効果はまずまず乃至良好であった。
【0085】
実施例25
この実施例では、本発明のファブリックにより得られる、経緯両方向における回復ストレッチの増加を例示する。
【0086】
102フィラメントからなる総デニール450(500decitex)の複合効果糸を、約70%の捲縮レベルを有し、150デニール(167decitex)、34フィラメントの2G−T//3G−T 40//60ポリエステル複合糸(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーが市販)1本と約2wt%のカーボンブラックを含み、150デニール(167decitex)、34フィラメントのポリ(エチレンテレフタレート)糸2本を混ぜ合わせることにより作製した。混合は、部分延伸単一成分ポリ(エチレンテレフタレート)糸の延伸テクスチャリング、ならびにテクスチャリング作業の加熱および延伸の後のテクスチャ化された直後の単一成分糸と複合糸とを巻き取りステージに供給することによりおこなわれた。3x1の綾織物実施例ファブリックを、それぞれの緯糸として複合効果糸を、それぞれの経糸として約2wt%のカーボンブラックを含む、150デニール(167decitex)で102フィラメントのポリ(エチレンテレフタレート)延伸テクスチャード糸の3つよりを用いて作製した。経糸密度は76本/インチ(30本/cm)であった。1つのファブリックでは緯糸密度は40本/インチ(15.7本/cm)、別のものでは32本/インチ(12.6本/cm)であった。各ファブリックは良好なストラティフィケーション効果を示した。コントロールのファブリックを、1インチ当たり経糸76本、1インチ当たり緯糸40本で織ることにより調製した。このコントロールファブリックには、緯糸40本/インチで経糸76本/インチの実施例と同じ経糸が含まれており、緯糸が約2wt%のカーボンブラックを含む100%のポリ(エチレンテレフタレート)からなる相当するデニールの合撚糸からなること以外は同一の構造であった。このコントロールファブリックを2分間ボイルオフすることにより仕上げた。このコントロールファブリックには、ストラティフィケーション効果は全くなかった。コントロールファブリックおよび緯糸40本/インチで経糸76本/インチの実施例ファブリックについての手による伸張測定は緯糸方向でコントロールの2倍の回復ストレッチを示した。緯糸40本/インチで経糸76本/インチの実施例ファブリックの経糸方向では、回復ストレッチはコントロールファブリックの経糸方向ストレッチより約25%大きかった。実施例ファブリックにおいて認められたストラティフィケーションは、ファブリックの構造を開口させることおよびコントロールに比べて優れた回復ストレッチ性を付与する事に依ると考えられている。
【0087】
当分野の技術者は、本明細書における前記の本発明の教示から利益を得て、それに多くの変更を加えることが可能である。これらの変更は、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に含まれると解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合フィラメント糸および第2のフィラメント糸を含む複合効果糸であって、
複合フィラメント糸の成分が異なる収縮性を有し、複合糸に嵩高効果を生じるのに十分な量でそれぞれが存在し、
複合糸の第1成分がポリ(エチレンテレフタレート)およびそれらのコポリマーからなる群から選択され、複合糸の第2の成分がポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)からなる群から選択され、そして第2の糸がナイロン66、ナイロン6、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される1種または複数のポリマーからなり、
複合糸および第2の糸がそれぞれ連続フィラメントであることを特徴とする複合効果糸。
【請求項2】
複合糸を第2の糸と混ぜ合わせることを含む、複合効果糸の製造方法であって、
前記複合糸が互いに異なる収縮性を有する第1の成分および第2の成分を含み、
それぞれの成分が複合糸に嵩高効果を生じるのに十分な量で存在し、
前記複合糸の第1成分がポリ(エチレンテレフタレート)およびそれらのコポリマーからなる群から選択され、前記複合糸の第2の成分がポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)からなる群から選択され、そして第2の糸がナイロン66、ナイロン6、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される1種または複数のポリマーからなり、
複合糸および第2の糸がそれぞれ連続フィラメントであることを特徴とする複合効果糸の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の糸を含むことを特徴とする編物。

【公開番号】特開2012−46862(P2012−46862A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232856(P2011−232856)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2001−563660(P2001−563660)の分割
【原出願日】平成13年2月27日(2001.2.27)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジーズ エスアエルエル (81)
【Fターム(参考)】