説明

複合化シート及び該複合化シートを含む製品

【課題】層間剥離が起こり難く、隠蔽性が均一であって、意図しない隠蔽斑に起因する濃淡模様がなく、適度な透湿または通気性を有し、連続生産性に優れた複合化シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維と、該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維とを混繊している目付10〜60g/mのメルトブローン不織布を中間層に配し、該熱可塑性樹脂(B)よりも高い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(C)が表面に露出した目付10〜60g/mの熱可塑性樹脂成形体を該中間層の上層および下層に配した複合化シートであって、熱可塑性樹脂(B)の熱溶融または熱軟化によって積層一体化しており、熱可塑性樹脂(C)は熱溶融または熱軟化しておらず、熱可塑性樹脂(B)が無機フィラーを含有する複合化シートによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合化シートおよびその製造方法に関し、更に詳しくは、混繊メルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体とが積層された多層構造シートに関する。該シートは、層間剥離し難く、隠蔽斑の無い均一で良好な隠蔽性と、適度な透湿および通気性を有するため、包装資材または濾過フィルターとして好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
メルトブローン不織布は構成繊維の繊維径が細く、ランダムに堆積し、高密度となるため、比較的低い目付に於いても、隠蔽性、耐水性および捕集性に優れており、包装資材または濾過フィルターなどに使用されている。しかし、メルトブローン不織布は生産性が低いにも関わらず、不織布強力を補うため、高目付にする必要から高コストとなる。
【0003】
そのため、メルトブローン不織布の特性を活かしながら、不織布強力を補う方法として、その他の熱可塑性樹脂成形体を積層する方法が一般的に知られている。その中でも安価に製造可能なスパンボンド不織布を積層した不織布が多く提案されている。
【0004】
特許文献1には、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを積層し、熱エンボスロールで熱融着した積層不織布が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、鞘芯型複合スパンボンド不織布と鞘芯型複合メルトブローン不織布とを積層し、両不織布の低融点樹脂の熱融着により一体化した、積層間の剥離強力が高い積層不織布が提案されている。
【0006】
特許文献3には、鞘芯型複合スパンボンド不織布と2種類の繊維が混繊したメルトブローン不織布とを一体化した、積層不織布が提案されている。特許文献3に記載の積層不織布は、メルトブローン不織布に高融点樹脂および低融点樹脂の2種類を使用することにより、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布との積層間の剥離強力が高く、通気性も確保された、優れた性能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−234967号公報
【特許文献2】特開平9−209254号公報
【特許文献3】特開平9−143853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の不織布は、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを構成する繊維として単繊維を使用しているため、熱処理加工における温度範囲が非常に狭く、高い目付の不織布では積層間の剥離強力が低いという問題がある。
【0009】
また、特許文献2の積層不織布には、熱処理加工の際、低融点成分の溶融により設備への巻付きまたは樹脂汚れが発生し易く、連続生産性に問題がある。また、鞘芯型複合メルトブローン不織布は、単一繊維のメルトブローン不織布に比べ、紡糸性に劣り、細繊化し難いという問題もある。
【0010】
さらに、特許文献3の積層不織布には、積層一体化する際の熱処理加工により、熱可塑性樹脂が溶融軟化して、フィルム状態となることで不織布表面に濃淡模様が発生し、隠蔽性の斑(隠蔽斑)があるという問題がある。
【0011】
したがって、本発明の課題は、上記従来技術の問題を解決し、層間剥離が起こり難く、隠蔽性が均一であって、意図しない隠蔽斑に起因する濃淡模様がなく、適度な透湿または通気性を有し、連続生産性に優れた複合化シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維と、該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維とを混繊している目付10〜60g/mのメルトブローン不織布を中間層に配し、該熱可塑性樹脂(B)よりも高い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(C)が表面に露出した目付10〜60g/mの熱可塑性樹脂成形体を該中間層の上層および下層に配した複合化シートであって、熱可塑性樹脂(B)の熱溶融または熱軟化によって積層一体化しており、熱可塑性樹脂(C)は熱溶融または熱軟化しておらず、熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維が無機フィラーを含む複合化シートは、前記課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
〔1〕熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維と、該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維とを混繊している目付10〜60g/mのメルトブローン不織布を中間層に配し、該熱可塑性樹脂(B)よりも高い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(C)が表面に露出した目付10〜60g/mの熱可塑性樹脂成形体を、複合化シートの表面層を形成するように、該中間層の上層および下層に配した複合化シートであって、当該複合化シートが、熱可塑性樹脂(B)の熱溶融または熱軟化によって積層一体化しており、熱可塑性樹脂(C)は熱溶融または熱軟化しておらず、当該熱可塑性樹脂(B)に無機フィラーを含む複合化シート。
〔2〕メルトブローン不織布が、熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維を10〜90質量%、熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維を90〜10質量%の割合で混繊している前記〔1〕に記載の複合化シート。
〔3〕メルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体とが、熱圧着されることにより、メルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維の熱軟化または熱溶融によって一体化しており、熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(C)は熱溶融または熱軟化していない前記〔1〕または〔2〕に記載の複合化シート。
〔4〕無機フィラーが二酸化チタンである前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の複合化シート。
〔5〕熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)が異成分樹脂である前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の複合化シート。
〔6〕熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)が融点の異なる同一成分樹脂である前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の複合化シート。
〔7〕熱可塑性樹脂成形体が、熱可塑性樹脂を用いて得られるスパンボンド不織布、フィルム、編物および織物から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の複合化シート。
〔8〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の複合化シートと、該複合化シート以外の他の不織布、フィルム、編物および織物から選ばれる少なくとも1種の物品とを積層した積層複合化シート。
〔9〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の複合化シートまたは前記〔8〕に記載の積層複合化シートを含む製品。
〔10〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の複合化シートまたは前記〔8〕に記載の積層複合化シートを含む包装資材。
〔11〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の複合化シートまたは前記〔8〕に記載の積層複合化シートを含む濾過フィルター。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複合化シートは、意図しない隠蔽斑に起因するシート表面の濃淡模様がなく、均一な隠蔽性を保持することで意匠性に優れている。また、層間剥離が起き難く、適度な透湿または通気性を有しており、脱酸素剤、乾燥剤若しくは除湿剤などの機能性を有する物品を包装する包装資材または濾過性能を有する濾過フィルターなどに好適に用いられる。また、均一な隠蔽性を有することから印刷適性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の複合化シートは、熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維と、該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維とを混繊しているメルトブローン不織布を中間層に配し、その上層及び下層に、前記熱可塑性樹脂(B)よりも高い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(C)が表面に露出した熱可塑性樹脂成形体が積層され、積層一体化した複合化シートである。
【0017】
〔メルトブローン不織布〕
本発明の複合化シートの中間層に用いるメルトブローン不織布は、熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維(以下、高融点繊維ともいう)と、該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維(以下、低融点繊維ともいう)とを混繊した不織布である。
【0018】
本発明の複合化シートはメルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)の熱溶融または熱軟化によって積層一体化しており、熱可塑性樹脂(B)によって不織布内層部が接着しているため、充分な不織布強力を有し、繊維の自由度も抑制することができる。更に、積層間の剥離を防止することもできる。
【0019】
熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維とは、熱可塑性樹脂(A)の含有量が90質量%以上、好ましくは93質量%以上、より好ましくは98質量%以上である繊維をいう。また、熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維とは、熱可塑性樹脂(B)の含有量が90質量%以上、好ましくは93質量%以上、より好ましくは98質量%以上である繊維をいう。
【0020】
熱可塑性樹脂(B)は、熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する。熱可塑性樹脂(A)の融点は、熱可塑性樹脂(B)の融点よりも、10℃以上高いことが好ましく、15℃以上高いことがより好ましい。
【0021】
本発明の複合化シートは、中間層に配するメルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性樹脂(B)が溶融軟化する温度では、熱溶融または熱軟化しないことから、繊維状態を保持することができ、細繊化された繊維本来の隠蔽性を活かすことができる。
【0022】
メルトブローン不織布は、熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維を10〜90質量%、熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維を90〜10質量%の割合で含有することが好ましい。メルトブローン不織布における含有割合を、熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維を10〜90質量%、熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維を90〜10質量%とすることにより、メルトブローン不織布の通気性が十分に得られ、熱可塑性樹脂成形体との剥離強力を向上することができる。
【0023】
メルトブローン不織布の繊維径は、平均繊維径が10μm以下であることが好ましい。平均繊維径を10μm以下とすることにより、隠蔽性を高めることができ、また、濾過フィルターとして使用した場合には捕集性能を向上することができる。高融点繊維と低融点繊維との繊維径は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0024】
メルトブローン不織布の目付は10〜60g/mの範囲である。メルトブローン不織布の目付が10g/m以下であると隠蔽性が低く、また、積層間の層間剥離強力が小さくなる。一方、60g/mを超えると隠蔽性は十分であるが、用途によってはコスト高となってしまう。
【0025】
本発明の複合化シートにおいて中間層に用いるメルトブローン不織布は、高融点の熱可塑性樹脂(A)とそれよりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)の少なくとも2種の熱可塑性樹脂を各々独立に溶融押出し、混繊型メルトブローン紡糸口金から、紡糸直後に高融点繊維と低融点繊維とが混繊するように紡糸し、更に高温高速の気体によって極細混繊流としてブロー紡糸し、捕集装置で混繊ウェブとし、必要に応じて熱融着処理することにより不織布としたものであることが好ましい。
【0026】
メルトブローン不織布に使用する樹脂は紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特別な制限はない。例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレンと他のオレフィンとの2または3元共重合体等のポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、フッ素樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネートおよびポリブチレンサクシネート等の生分解性の脂肪族ポリエステルからなる生分解性樹脂が挙げられる。
【0027】
熱可塑性樹脂(A)と該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)とは、異成分樹脂であることが好ましい。異成分樹脂とは、互いに異なる成分からなる樹脂の組み合わせであるか、または融点差のある互いに同一の成分からなる樹脂の組み合わせ(融点の異なる同一成分樹脂)であることをいう。
【0028】
熱可塑性樹脂(A)と、該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)との組合せ[熱可塑性樹脂(A)/熱可塑性樹脂(B)]としては、例えば、ポリプロピレン/高密度ポリエチレン、ポリプロピレン/低密度ポリエチレン、ポリプロピレン/直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレンと他のオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/プロピレンと他のオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体、ポリプロピレン/ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー/ポリオレフィンエラストマー、高密度ポリエチレン/ポリオレフィンエラストマー、高密度ポリエチレン/直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン、共重合ポリエステル/直鎖状低密度ポリエチレン、共重合ポリエステル/低密度ポリエチレン、共重合ポリエステル/高密度ポリエチレン、ポリエステル/共重合ポリエステル、ナイロン66/ナイロン6、ポリプロピレン/ポリ乳酸、ポリプロピレン/ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレン/ナイロン、ポリエチレン/ポリエチレンテレフトレートおよびポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、ポリプロピレン樹脂/ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂/ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂/ポリエステル樹脂、およびポリアミド樹脂/ポリアミド樹脂等の融点の異なる同一成分樹脂の組合せが、層間の接着効果が大きく、好ましい。
【0030】
これらの組み合わせの中でも、熱可塑性樹脂(A)の融点が、熱可塑性樹脂(B)の融点よりも、10℃以上高い熱可塑性樹脂の組み合わせが好ましく、15℃以上高い熱可塑性樹脂の組合せがより好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維または熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維には、本発明の効果を妨げない範囲内で、さらに酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤または親水剤を適宜必要に応じて添加してもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂(B)は、無機フィラーを含有する。熱可塑性樹脂(B)に無機フィラーが含まれることにより、熱可塑性樹脂(B)が溶融軟化してフィルム状となることによって透明性が生じてしまうような場合であっても、複合化シートとしては、隠蔽性を維持することが可能となる。
【0033】
このため、隠蔽性の低下の問題に制約されずに、熱可塑性樹脂(B)が溶融軟化しフィルム状となるほどの十分な熱処理を施すことができる。これにより、熱可塑性樹脂成形体とメルトブローン不織布とは強く積層一体化されて、その層間の剥離強力が高い複合化シートを得ることが可能となるのである。
【0034】
無機フィラーとしては、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、タルク、クレーおよび硫酸バリウムなどが挙げられる。これらの中でも、二酸化チタンは隠蔽性向上効果に優れるため好ましい。また、これらの無機フィラーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、楕円状、円錐状および不定形が挙げられる。
【0036】
無機フィラーの粒子径(平均粒径)は0.1〜0.4μmの範囲であることが好ましい。無機フィラーの平均粒径を0.4μm以下とすることにより、樹脂中での分散不良による糸切れの発生またはノズルフィルターでの詰まりを防止することができる。なお、無機フィラーの粒子径は、マイクロトラックHRA X−100(日機装社製)により測定することができる。
【0037】
熱可塑性樹脂(B)に無機フィラーを添加する方法としては、予め無機フィラーを高濃度に熱可塑性樹脂組成物中に分散させたマスターバッチを本発明で使用する熱可塑性樹脂(B)にブレンドし、任意の純分に調整する方法が一般的である。その際、無機フィラーを添加した熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性樹脂(B)とが同種の樹脂の場合、繊維中の分散性または溶融軟化した際の接着性に優れるため好適である。
【0038】
熱可塑性樹脂(B)における無機フィラーの含有量は、0.1〜10.0質量%であることが好ましい。熱可塑性樹脂(B)に対する無機フィラーの添加量を0.1質量%以上とすることにより、隠蔽性に効果を得ることができる。また、10質量%以下とすることにより、樹脂中での分散不良による糸切れの発生またはノズルフィルターでの詰まりを抑制することができる。
【0039】
本発明において、無機フィラーは、熱可塑性樹脂(B)に添加されているが、必要によって、さらに、熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(C)に添加されていてもよい。
【0040】
〔熱可塑性樹脂成形体〕
本発明の複合化シートにおいて、前記メルトブローン不織布を中間層として、その上下層に配する少なくとも2つの熱可塑性樹脂成形体は、互いに同一のものでもよく、互いに異なるものであってもよい。
【0041】
本発明の複合化シートに用いる熱可塑性樹脂成形体としては、メルトブローン不織布の熱可塑性樹脂(B)よりも融点または軟化点の高い熱可塑性樹脂(C)が当該熱可塑性樹脂成形体の表面に露出したものである。ここで、「表面に露出」とは、熱可塑性樹脂(C)が該熱可塑性樹脂成形体の最も外層部に配置されていることをいう。
【0042】
本発明の複合化シートにおいては、熱可塑性樹脂(C)の融点または軟化点は、熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点よりも高く、熱可塑性樹脂(C)の融点または軟化点が熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点よりも10℃以上高いことが好ましく、15℃以上高いことがより好ましい。
【0043】
本発明の複合化シートにおいて熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂(C)とメルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)とに融点または軟化点差を設けることにより、熱可塑性樹脂(B)の熱圧着による溶着時に熱可塑性樹脂成形体のダメージを極力抑え、更に積層間の熱接合が強固となり、これにより層間剥離が抑制され、高い不織布強力を有する複合化シートが得られる。
【0044】
つまり、前記メルトブローン不織布のみを単独で用い、熱可塑性樹脂(B)が溶融軟化しフィルム状となるほどに十分に熱圧着しようとすれば、溶融軟化した熱可塑性樹脂(B)がロールに巻き付いてしまい、複合化シートの安定生産は困難である。
【0045】
一方、前記メルトブローン不織布の上下層に熱可塑性樹脂(C)が表面に露出した熱可塑性樹脂成形体を配し、該熱可塑性樹脂成形体の表面に露出する熱可塑性樹脂(C)の融点または軟化点を、熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点よりも高く構成することで、ロールに接する熱可塑性樹脂(C)を溶融軟化させることなく、積層一体化に関与するメルトブローン不織布の熱可塑性樹脂(B)を溶融軟化させてフィルム状とすることができるほどに十分に熱処理することが可能となるのである。
【0046】
逆に、メルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点を、熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂(C)の融点または軟化点よりも高く設定した場合、熱可塑性樹脂(C)がロールに巻付かない程度の温度で熱処理したのでは、熱可塑性樹脂(B)の溶融軟化が不十分となり、複合化シートにおける積層間の剥離強力が低下することとなる。
【0047】
また、メルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点を、熱可塑性樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂(C)の融点または軟化点よりも高く設定した場合、熱可塑性樹脂(B)が溶融軟化する温度で熱処理すると、熱可塑性樹脂(C)の溶融軟化がそれ以上に進行することとなり、熱可塑性樹脂(C)がロールに巻付いてしまうこととなる。
【0048】
複合化シートの中間層に配するメルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)よりも融点または軟化点の高い熱可塑性樹脂(C)を中間層の上下層に配する熱可塑性樹脂成形体の表面に露出させることにより、メルトブローン不織布の熱可塑性樹脂(B)が軟化して接着する温度で複合化シートを熱処理加工した場合、少なくとも、熱可塑性樹脂成形体の熱可塑性樹脂(C)は溶融または軟化しない。
【0049】
本発明の複合化シートは、少なくとも3層からなる積層体の中間層部分に含まれている熱接着に関与する熱可塑性樹脂(B)が、上下層を構成する熱可塑性樹脂成形体の表面に露出する熱可塑性樹脂(C)よりも低い融点または軟化点を有する熱可塑性樹脂の繊維で構成されているため、熱可塑性樹脂(B)が軟化して接着する温度で複合化シートを熱処理加工しても、少なくとも、熱可塑性樹脂成形体の熱可塑性樹脂(C)は溶融または軟化しない。よって、複合化シートの表面部における熱可塑性樹脂成形体は熱による過剰なダメージを受け難く、圧密化による隠蔽性の低下を抑制することができる。
【0050】
したがって、本発明の複合化シートは、シート表面にダメージを与えない加工温度で加工しても、中間層部分に含まれている熱可塑性樹脂(B)が熱溶融または熱軟化することにより不織布内部が充分に接着し、十分な積層間の剥離強力を得ることができる。また、複合化シートを構成する熱可塑性樹脂の溶融による加工設備への樹脂汚れを抑制することができ、連続生産(操業性)が可能である。
【0051】
熱可塑性樹脂成形体の目付は10〜60g/mの範囲である。熱可塑性樹脂成形体の目付が10g/mより小さいと強力が低く、目付が60g/mを超えると強力は十分であるが、メルトブローン不織布との積層一体化の熱処理の際に該メルトブローン不織布に熱が伝わり難く、積層剥離が起こる可能性がある。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂(C)からなる単成分繊維、熱可塑性樹脂(C)を含む複数の熱可塑性樹脂が混合されてなる繊維、熱可塑性樹脂(C)からなる繊維と他の繊維とが混合されてなる混合繊維、または熱可塑性樹脂(C)と他の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維からなる熱可塑性樹脂成形体であってもよい。
【0053】
尚、本発明では、熱可塑性樹脂成形体が複数の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維からなる場合、複数の熱可塑性樹脂のうち最も融点または軟化点の低い熱可塑性樹脂を、熱可塑性樹脂(C)とする。
【0054】
複合繊維の複合形態としては、例えば、同心鞘芯型、偏心鞘芯型、並列型および多分割型等が挙げられる。熱可塑性樹脂(C)は、当該複合繊維の表面の少なくとも一部を形成している。
【0055】
熱可塑性樹脂成形体としては、例えば、スパンボンド不織布、透湿性フィルムおよびスパンレース不織布などが挙げられる。これらの中でも、特にスパンボンド不織布が生産性に優れ、安価であり、不織布強力も高いため最も好ましい。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂成形体に好適に用いられるスパンボンド不織布は、例えば、熱可塑性樹脂(C)からなる単成分繊維、熱可塑性樹脂(C)を含む複数の熱可塑性樹脂が混合されてなる繊維、熱可塑性樹脂(C)からなる繊維と他の繊維とが混合されてなる混合繊維、または熱可塑性樹脂(C)と他の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維からなるスパンボンド不織布であってもよい。
【0057】
熱可塑性樹脂(C)と他の熱可塑性樹脂で構成された複合繊維からなるスパンボンド不織布(複合スパンボンド不織布)としては、融点または軟化点に10℃以上差がある少なくとも2種の樹脂成分が複合スパンボンド法で紡糸されて、繊維の交点が熱融着された不織布であることが好ましい。
【0058】
複合スパンボンド法とは、一般的には、複数の押出機から複数の樹脂成分を溶融押出し、複合紡糸用口金から複数成分をその低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成するように複合された長繊維を紡糸し、紡糸された繊維をエアサッカー等の気流牽引型の装置等で引き取り、気流と共に繊維をネットコンベアー等のウェブ捕集装置で捕集し、その後必要に応じウェブを加熱空気または加熱ロール等の加熱装置を用いて融着等の処理をすることによる熱融着不織布の製造方法である。
【0059】
複合スパンボンド不織布を構成する少なくとも2種の樹脂成分のうち、最も融点または軟化点の低い樹脂成分[熱可塑性樹脂(C)]の融点または軟化点は、メルトブローン不織布の熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点よりも高く、熱可塑性樹脂(B)を溶融軟化する熱処理をした場合に熱ダメージを受け難くするため、10℃以上高いことが好ましく、15℃以上高いことがより好ましい。
【0060】
メルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体とを接着加工して一体化する方法としては、例えば、サクションバンドドライヤーまたはサクションドライヤー等による熱風接着法、および加熱された上下ロールの間にウェブを導入して加圧処理される熱圧着法等が挙げられる。これらの中でも、特に熱圧着法が好ましい。
【0061】
熱圧着法は熱風接着法と比べ、熱および圧による加工方法であるため、溶着する熱可塑性樹脂の融点または軟化点よりも低い温度で加工できる利点がある。すなわち、メルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体とを熱圧着法により積層一体化することにより、熱圧着時の熱によって引き起こされる熱可塑性樹脂成形体へのダメージを抑制でき、なおかつメルトブローン不織布の接着力を充分に発揮できる。
【0062】
熱圧着法には、上下ロールがフラットロールであるカレンダー加工法、並びに上下ロールがエンボスロールおよびフラットロールであるポイントボンド加工法がある。
【0063】
本発明の複合化シートのメルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体とを一体化する方法としては、カレンダー加工法が最も効果を発揮する。
【0064】
一般的なカレンダー加工法では、ロール表面がフラット形状であるため、ポイントボンド加工法と比べ、同じ圧力を掛けた場合、ロール全体に圧力が掛かるため、単位面積当たりの圧力が低くなり、積層間の剥離強力が低い傾向がある。そのため、熱処理温度を高くして、接着力を補う方法が取られる。しかし、高い温度を掛けた場合、シート表面にも過剰な熱が掛かり、樹脂汚れによるロール巻付きが発生する。
【0065】
しかし、本発明の複合化シートは中間層のメルトブローン不織布に含まれる熱可塑性樹脂(B)が上下層の熱可塑性樹脂成形体の表面に露出する熱可塑性樹脂(C)よりも融点または軟化点が低いため、該熱可塑性樹脂(B)を溶融軟化する温度以上の温度で熱処理しても、熱可塑性樹脂成形体には熱によるダメージを実質的に及ぼさない。
【0066】
熱処理温度は、メルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)が熱溶融または熱軟化によって積層一体化に関与し、熱可塑性樹脂(A)、および熱可塑性樹脂成形体の表面に露出する熱可塑性樹脂(C)が、熱溶融または熱軟化しない温度とすることが好ましい。
【0067】
具体的には、熱処理温度は、熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点よりも、10℃低い温度から、熱可塑性樹脂(A)および(C)のどちらか低い方の融点または軟化点よりも、5℃低い温度範囲とすることが好ましい。また、熱処理時のロール線圧は、10〜100N/mmの範囲とすることが好ましい。
【0068】
ポイントボンド加工法に関しては、融着区域の面積(点熱圧着面積率)は不織布総面積に対し、2〜30%であることが好ましく、より好ましくは4〜25%である。融着区域の面積を2%以上とすることにより不織布積層間の層間剥離を防止することができる。また、30%以下とすることにより、フィルム化された部分が多くなるのを防ぎ、隠蔽性を向上することができる。
【0069】
エンボスロールの凸部形状としては、様々な形状に彫刻されたものが使用できる。例えば、凸部先端面の平面形状が、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、菱形、三角形および六角形等の様々な形状のものが挙げられる。
【0070】
ポイントボンド加工法において、熱処理温度は、メルトブローン不織布の構成する熱可塑性樹脂(B)の熱溶融または熱軟化によって積層一体化においては、熱可塑性樹脂(A)、および熱可塑性樹脂成形体の表面に露出する熱可塑性樹脂(C)が、熱溶融または熱軟化しない温度であることが好ましい。
【0071】
具体的には、熱処理温度は、熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点よりも、15℃低い温度から、熱可塑性樹脂(A)および(C)のどちらか低い方の融点または軟化点よりも、5℃低い温度範囲とすることが好ましい。また、熱処理時のロール線圧は、10〜100N/mmの範囲とすることが好ましい。
【0072】
〔複合化シート〕
本発明における複合化シートは、2種類の繊維が混繊されたメルトブローン不織布が中間層に配置され、熱可塑性樹脂成形体が上下層に積層された少なくとも3層構造の物であればよい。
【0073】
本発明の複合化シートのメルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体の積層構成としては、例えば、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布、透湿性フィルム/メルトブローン不織布/透湿性フィルム、スパンレース不織布/メルトブローン不織布/スパンレース不織布、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/透湿性フィルム、またはスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンレース不織布等の組合せが挙げられる。
【0074】
本発明の複合化シートのメルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体との層間の剥離強力は、設備などとの摩擦によってその層間が剥離することによる製造トラブルを引き起こさないためには、0.5N/5cm以上であることが好ましい。
【0075】
本発明の複合化シートの剥離強力は、0.5N/5cm以上であることが好ましく、0.7N/5cm以上であることがより好ましく、1.0N/5cm以上であることがさらに好ましい。
【0076】
本発明の複合化シートは、その効果を妨げない範囲で、不織布、フィルム、編物または織物等を積層させ、積層複合化シートとすることができる。また、このとき使用する複合化シートは、単独で積層させてもよく、また、複数組合せて積層させてもよい。
【0077】
また、上記物品を構成する素材には制約が無く、工業的に利用できるものであればよく、基となる複合化シートと接着可能な素材か、または接着可能な素材を含むことがより好ましい。
【0078】
本発明の複合化シートおよび積層複合化シートは、層間剥離し難く、高い隠蔽性と適度な透湿性および通気性を有するために、脱酸素剤、乾燥剤、吸湿剤、脱臭剤、発熱剤または防虫剤等の機能性物品を包装する包装資材に好適に用いられる。また、コーヒー豆、お茶または紅茶など抽出成分を濾過する濾過フィルターとしても好適に用いられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例、比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中に示された物性値の測定法または定義を以下に示す。
【0080】
平均繊維径:ウェブまたは不織布から小片を10個切取り、走査型電子顕微鏡(日本電子社製 JSM−5410LM)で倍率100〜5000倍の写真を取り、計100本の繊維直径を測定し、平均値を繊維径(単位μm)とした。
【0081】
剥離強力:複合化シートを幅5cmに切り取り、カミソリで両層を切りながら剥離させ、引っ張り強度試験機(島津製作所社製 AGS−X)を用い、剥離強力を求めた。複合化シートの上層/中間層、下層/中間層、各々5個の合算値の平均値を剥離強力(単位N/5cm)とした。
【0082】
熱可塑性樹脂の融点:MP(℃):ティー・エイ・インスツルメント製示差走査熱量計DSC−Q10により、熱可塑性重合体を10℃/分で昇温したときに得られた融解吸収曲線上のピークに対応する温度をその熱可塑性重合体の融点とした。
【0083】
隠蔽度/標準偏差:色差計[SMカラーコンピューター、スガ試験機(株)]を用い、
白タイルの明度(LW)、黒タイルの明度(LB)、白タイル上に複合化シートを重ねた明度(LWN)、黒タイル上に複合化シートを重ねた明度(LWB)の値を下記式に用い、ランダムな10箇所を計測した平均値(単位%)と標準偏差を示した。単位%が高い程、隠蔽性があり、標準偏差の値が小さいほど、隠蔽性の斑がない。
【0084】
[(LW−LB)−(LWN−LWB)]/(LW−LB)×100
【0085】
透湿度:繊維製品の透湿度試験方法[JIS−L−1099(1985年)]A−1法(塩化カルシウム法)により評価した。5個の平均値を透湿度(単位g/m・24hr)とした。
【0086】
実施例1、比較例1
複合スパンボンド紡糸装置を用い、熱融着した同心鞘芯型複合スパンボンド不織布を製造した。鞘側として融点130℃、MFR22[JIS K 7210(1999年)(190℃、g/10分)]の高密度ポリエチレン(京葉ポリエチレン(株)製、グレード名M6910)を使用し、芯成分として融点164℃、MFR60[JIS K 7210(1999年)(230℃、g/10分)]のポリプロピレンホモポリマーを使用し、質量比が50/50、繊度が2.2dtex、目付が10g/mのスパンボンド不織布を得た。
【0087】
混繊メルトブローン紡糸装置を用い、メルトブローン不織布を製造した。この紡糸装置は、スクリュー(50mm径)、加熱体及びギヤポンプを有する2機の押出機、混繊用紡糸口金(孔径0.3mm、孔数501ホールが一列、異成分繊維が交互に一列に並んだ、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置、空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー並びに巻取り機からなる。
【0088】
熱可塑性樹脂(A)として、融点166℃、MFR82[JIS K 7210(1999年)(230℃、g/10分)]のポリプロピレンホモポリマーを紡糸温度285℃で、熱可塑性樹脂(B)として、融点120℃、MFR50[JIS K 7210(1999年)(190℃、g/10分)]の直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロン−L、グレード名M75)に二酸化チタン(平均粒径0.3μm)を0.2質量%添加したものを紡糸温度260℃で両成分のギヤポンプを熱可塑性樹脂(A)/熱可塑性樹脂(B)の質量比が80/20になる様に設定し、紡糸口金から単孔あたり0.3g/分間の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した圧縮空気を85kPa(ゲージ圧)の圧力で紡糸口金から25cmの距離に設定した捕集コンベアー上に吹き付け、捕集コンベアーの速度を調整することによって、平均繊維径が2.1μm、目付けが10g/mのメルトブローン不織布を得た。
【0089】
熱可塑性樹脂成形体として、前記複合スパンボンド不織布を上下層にメルトブローン不織布を中間層に積層し、カレンダー加工法により、上下ロール温度125℃(実施例1)または135℃として(比較例1)、線圧40N/mmで積層一体化した複合化シートを得た。
【0090】
実施例2、比較例2
実施例1のメルトブローン不織布の製造において、熱可塑性樹脂(A)として、融点165℃、MFR120[JIS K 7210(1999年)(230℃、g/10分)]のポリプロピレンホモポリマー、熱可塑性樹脂(B)として、融点100℃、MFR30[JIS K 7210(1999年)(190℃、g/10分)]のポリオレフィンエラストマー(The Dow Chemical Company製、商品名ENGAGE8402)に二酸化チタン(平均粒径0.2μm)を2.0質量%添加するか(実施例2)または二酸化チタンを添加せずに(比較例2)、熱可塑性樹脂(A)/熱可塑性樹脂(B)の質量比が50/50とした以外は同様の方法で、平均繊維径が3.7μm、目付けが20g/mのメルトブローン不織布を得た。
【0091】
熱可塑性樹脂成形体として、実施例1で得られたスパンボンド不織布を上下層に前記メルトブローン不織布を中間層に積層し、カレンダー加工法により、上下ロール温度120℃、線圧40N/mmで積層一体化した複合化シートを得た。
【0092】
実施例3
実施例1のメルトブローン不織布の製造において、熱可塑性樹脂(A)として、ポリ乳酸(ネイチャーワークス社製、商品名Ingeo、グレード名 6252D、融点165℃、MFR36[JIS K 7210(1999年)(条件D)]を紡糸温度230℃で、熱可塑性樹脂(B)として、ポリブチレンサクシネート(三菱化学製、商品名GSPla グレード名AZ61T、融点110℃、MFR30[JIS K 7210(1999年)(条件D)]に酸化チタン(平均粒径0.3μm)を4.0質量%添加したものを紡糸温度230℃で熱可塑性樹脂(A)/熱可塑性樹脂(B)の質量比が20/80とした以外は同様の方法で、平均繊維径が4.5μm、目付けが30g/mのメルトブローン不織布を得た。
【0093】
スパンボンド紡糸装置を用い、熱融着した単一成分のスパンボンド不織布を製造した。熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸(トヨタ自動車製、商品名U’z S−22、融点174℃、MFR20(JIS K 7210(条件D))を使用し、繊度が2.2dtex、目付が40g/mのスパンボンド不織布を得た。
【0094】
前記スパンボンド不織布を上下層に前記メルトブローン不織布を中間層に積層し、カレンダー加工法により、上下ロール温度150℃、線圧40N/mmで積層一体化した複合化シートを得た。
【0095】
実施例4、比較例3
熱可塑性樹脂成形体として、融点が125℃、目付けが25g/m、透湿度が8000(g/m・24hr)のポリエチレン透湿性フィルムを上下層に実施例2で使用したメルトブローン不織布を中間層に積層し、カレンダー加工法により、上下ロール温度110℃としたもの(実施例4)、上下ロール温度90℃としたもの(比較例3)、線圧50N/mmで積層一体化した複合化シートを得た。
【0096】
実施例5
実施例2で使用したメルトブローン不織布を中間層に実施例1で使用したスパンボンド不織布を上層に実施例4で使用した透湿性フィルムを下層に積層し、カレンダー加工法により、上下ロール温度120℃、線圧40N/mmで積層一体化した複合化シートを得た。
【0097】
実施例6
実施例2で得た複合化シートを脱酸素剤用の包材として使用したところ、内容物の酸化鉄が透けて見えることがなかった。また、表面に印刷を施したところ、文字が鮮明であった。
【0098】
比較例4
比較例2で得た複合化シートを実施例6と同様に脱酸素剤用の包材として使用したところ、内容物の酸化鉄が透ける部分が見られた。また、表面に印刷を施したところ、印刷の一部が見え難い箇所があった。
【0099】
各実施例および比較例の樹脂構成、複合化シートの物性並びに1時間の連続運転におけるカレンダーロールの汚れ度合い(ロール融着)について表1に示す。表1において、カレンダーロールに該不織布ロールが張り付きながら走行し、カレンダーロール表面に複合化シートを構成する熱可塑性樹脂の溶融物が付着した状態が見られた場合をロール融着「あり」、カレンダーロールへの貼り付き、および複合化シートを構成する熱可塑性樹脂の溶融物の付着が見られない場合をロール融着「なし」とした。
【0100】
【表1】

【0101】
表1に示すように、上下層に含まれる低融点熱可塑性樹脂[熱可塑性樹脂(C)]が熱加工により熱溶融または熱軟化していない実施例1の複合化シート(スパンボンド/メルトブローン不織布/スパンボンド)はロール融着がなかったのに対し、熱可塑性樹脂(C)が熱溶融または熱軟化している比較例1の複合化シートはロール融着があった。また、実施例1の複合化シートは、比較例1の複合化シートと比較して、隠蔽性斑がなく、隠蔽性にも優れていた。
【0102】
また、中間層を構成する熱可塑性樹脂(B)に二酸化チタンが含まれる実施例2の複合化シートは、該熱可塑性樹脂(B)に二酸化チタンが含まれない比較例2の複合化シートと比較して、隠蔽性斑がなく、隠蔽性にも優れていた。
【0103】
さらに、中間層を構成する熱可塑性樹脂(B)の融点以上の温度で熱加工された実施例4の複合化シート(透湿性フィルム/メルトブローン不織布/透湿性フィルム)は、熱可塑性樹脂(B)の融点よりも低い温度(この温度は、本願発明の複合化シートを得るための適正な熱処理温度範囲外である。)で熱加工された比較例3と比較して剥離強力が優れていた。
【0104】
これらの結果から、本発明の複合化シートは中間層に位置するメルトブローンの熱可塑性樹脂(B)が、上下層に位置する熱可塑性樹脂成形体の熱可塑性樹脂よりも融点が低いことから、熱圧着加工した場合、熱可塑性樹脂(B)が充分に溶融接着をしている温度に於いても、上下層に位置する熱可塑性樹脂成形体が熱による過剰なダメージを受け難く、カレンダーロールへの樹脂の融着(巻付き)が抑制され、また、積層間の層間剥離が高いことがわかった。
【0105】
更に、本発明の複合化シートは中間層に位置するメルトブローンの熱可塑性樹脂(B)には無機フィラーが添加されており、熱可塑性樹脂(B)が溶融軟化してフィルム状態になっても不織布全体で均一な隠蔽性が確保されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の複合化シートは、シート表面に濃淡斑がなく、均一な隠蔽性を保持することで印刷適正に優れている。また適度な透湿および通気性を有しており、脱酸素剤、乾燥剤または除湿剤などの機能性を有する物品を包装する包装資材または濾過性能が必要な濾過フィルターとして使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維と、該熱可塑性樹脂(A)よりも低い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維とを混繊している目付10〜60g/mのメルトブローン不織布を中間層に配し、
該熱可塑性樹脂(B)よりも高い温度で溶融または軟化する熱可塑性樹脂(C)が表面に露出した目付10〜60g/mの熱可塑性樹脂成形体を該中間層の上層および下層に配した複合化シートであって、
熱可塑性樹脂(B)の熱溶融または熱軟化によって積層一体化しており、熱可塑性樹脂(C)は熱溶融または熱軟化しておらず、熱可塑性樹脂(B)が無機フィラーを含有する複合化シート。
【請求項2】
メルトブローン不織布が、熱可塑性樹脂(A)を主体とする繊維を10〜90質量%、熱可塑性樹脂(B)を主体とする繊維を90〜10質量%の割合で混繊している請求項1に記載の複合化シート。
【請求項3】
メルトブローン不織布と熱可塑性樹脂成形体とが、熱圧着されることにより、メルトブローン不織布を構成する熱可塑性樹脂(B)の熱軟化または熱溶融によって一体化しており、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(C)は熱溶融または熱軟化していない請求項1または2に記載の複合化シート。
【請求項4】
無機フィラーが二酸化チタンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合化シート。
【請求項5】
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とが異成分樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合化シート。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とが融点の異なる同一成分樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合化シート。
【請求項7】
熱可塑性樹脂成形体が、熱可塑性樹脂を用いて得られるスパンボンド不織布、フィルム、編物および織物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合化シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合化シートと、該複合化シート以外の他の不織布、フィルム、編物および織物から選ばれる少なくとも1種の物品とを積層した積層複合化シート。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合化シートまたは請求項8に記載の積層複合化シートを含む製品。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合化シートまたは請求項8に記載の積層複合化シートを含む包装資材。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合化シートまたは請求項8に記載の積層複合化シートを含む濾過フィルター。

【公開番号】特開2013−103347(P2013−103347A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246486(P2011−246486)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(399120660)JNCファイバーズ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】