説明

複合化粉末及びこれを含有するメーキャップ化粧料

【課題】メーキャップ化粧料に配合した場合に、上品な細かい点在感を感じさせる干渉光を与え、使用時の滑り性が損なわれない複合化粉末と、当該複合化粉末を含有するメーキャップ化粧料を提供すること。
【解決手段】平均粒径が1〜40μmの樹脂粉末粒子表面に、当該樹脂粉末粒子の粒径の1〜70%の平均粒子径となる板状粉末粒子を担持してなり、当該板状粉末粒子の屈折率が2.2以上である複合化粉末、並びに、当該複合化粉末を含むメーキャップ化粧料を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見いだした。当該複合化粉末は、好適には、上記樹脂粉末粒子及び板状粉末粒子に対し、摩擦力と衝撃力を与えることにより、当該樹脂粉末粒子の表面に、当該板状粉末粒子及び/又は当該板状粉末粒子の粉砕物を定着担持させることにより粉末粒子の複合化を行うことにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一に、使用性が良好で、上品な細かい点在感を感じさせる干渉光を持つ複合化粉末に関する発明であり、第二に、当該粉末を含有する化粧料に関する発明である。
【0002】
さらに詳しくは、上記複合化粉末は、特定粒径の球状樹脂粉末において、干渉光が強いパール剤を複合化した粉末であり、上記化粧料は、当該複合化粉末を、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート等のメーキャップ化粧料に配合することで得られ、使用性に優れ、かつ、細かい点在感を感じさせる干渉光を伴う、ポイントメーキャップに適した化粧料である。
【背景技術】
【0003】
メーキャップ化粧料、特に口紅、ネールエナメル等のポイントメーキャップ化粧料には、メーキャップ効果を付与するために、酸化チタン被覆雲母、ベンガラ被覆雲母等の、パール顔料と呼ばれる干渉光を伴う板状粉末が、しばしば配合される。
【0004】
例えば、これらのパール顔料を用いた意匠性を付与するために点在感を強調しようとすると、パール顔料の粒径をある程度は大きくする必要がある。しかしながら、この場合は、点在感は強調されるものの、上品な光輝性が失われてしまう傾向が強い。特に、ある程度高齢の消費者向けの製品に、パール顔料を使用するには慎重さが必要である。一方、上品さを醸し出すために、配合するパール顔料の粒径を小さくしたポイントメーキャップ製品も開発されているが、これらは製品中でのパール顔料の配向が揃ってしまい、極端に点在感が損なわれてしまう傾向にある。
【0005】
同様に、上品さを醸し出すことを目的として、パール顔料の輝度を抑制する方法も試みられている。例えば、パール顔料の上に微粒子を島状に被覆する、あるいは基盤に球状の粉末を揃えて用いることで、金属酸化物の干渉層を形成させる、等の手段が提供されている。
【0006】
また、特許文献1〜2には、無機粉末を球状樹脂粉末に被覆した粉末を配合したメーキャップ化粧料が記載されている。特許文献3には、球状シリカの表面に金属酸化物層を膜状に被覆することにより光干渉が顕れる、球状のパール顔料について記載されている。特許文献4には、樹脂粉末の中に、板状粉末を内包した複合粉末及びその配合化粧料に関する記載がされている。
【特許文献1】特開61-194010
【特許文献2】特開61-200845
【特許文献3】特開平11-236315
【特許文献4】特開2005-154649
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パール顔料の上に微粒子を島状に被覆した場合には、拡散光は強くなるものの、干渉光が散乱して正反射光が弱まり、粉末の使用による点在感の実質的な向上は困難であった。また、球状粉末を用いた干渉パール顔料においても、干渉彩度が弱くなってしまい、点在感は損なわれる傾向にあった。
【0008】
本発明の目的は、メーキャップ化粧料に配合した場合に、上品な細かい点在感を感じさせる干渉光を与え、使用時の滑り性が損なわれない複合化粉末と、当該複合化粉末を含有するメーキャップ化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題の解決に向けて鋭意研究を重ねた結果、干渉彩度(屈折率)の高いパール顔料を、球状粉末に担持させた複合化粉末が、メーキャップ化粧料に配合した際に、パール顔料の粒径が小さいにもかかわらず、点在感があり、上品な光輝性を与えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、平均粒径が1〜40μmの樹脂粉末粒子表面に、当該樹脂粉末粒子の粒径の1〜70%の平均粒子径となる板状粉末粒子を担持してなり、当該板状粉末粒子の屈折率が2.2以上である複合化粉末(以下、本発明の複合化粉末ともいう)、並びに、当該複合化粉末を含むメーキャップ化粧料(以下、本発明の化粧料ともいう)を提供する発明である。さらに、本発明は、当該複合化粉末の製造方法、すなわち、(1)平均粒径が1〜40μmの樹脂粉末粒子、及び、(2)平均粒径が1〜30μmであり、厚みの平均が0.1〜6μmの板状粉末粒子、に対し摩擦力と衝撃力を与えることにより、当該樹脂粉末粒子の表面に、当該板状粉末粒子及び/又は当該板状粉末粒子の粉砕物を定着担持させることにより粉末粒子の複合化を行う、本発明の複合化粉末の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)を提供する発明である。
【0011】
本発明において、「担持」とは、核粒子に対して何らかの状態で複合化粉末粒子が定着した状態を広く意味する用語である。すなわち、「担持」は、少なくとも「被覆」と「一部被覆」の両者を含む概念の用語とする。
【0012】
本発明において、「平均粒径」とは、一般的に用いられるレーザー回折・散乱法を用いた測定装置などで求められる体積平均径や個数平均径のうちの、体積平均径を指している。
【0013】
また、本発明において、板状粒子の「厚み」とは、ヘイウッド(Heywood)の定義による、平坦な場所へ粉末を静置させたときの高さを意味している。この厚みの測定は、例えば、走査型電子顕微鏡等による粉末粒子像を示す写真の目視による解析や、画像解析ソフトウエアを用いたコンピュータによる画像解析により、測定することが可能である。本発明においては、画像解析ソフトウエアによる粉末粒子の上記高さの算出処理を行い、粉末粒子を10個分以上サンプリングして、その平均値を、「厚み」として用いている。
【0014】
さらに、本発明において、「屈折率」は、空気に対する相対屈折率を意味することとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、メーキャップ化粧料に配合した際に、パール顔料の粒径が小さいにもかかわらず、点在感があり、上品な光輝性を与えることができる複合化粉末が、当該複合化粉末の効率的な製造方法と共に提供される。また、当該複合化粉末を配合することによって、上記の点在感と上品な光輝性が認められ、かつ、使用感も良好なメーキャップ化粧料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔複合化粉末〕
上述のように、本発明の複合化粉末は、核粒子となる樹脂粉末粒子表面に、高屈折率の板状粉末粒子が複合化粒子として担持されてなる、複合化粉末である。
【0017】
(A)樹脂粉末粒子(核粒子)
本発明の複合化粉末の核粒子となる、樹脂粉末粒子の形状は特に限定されないが、当該粒子自体を肌上で滑らした場合に、可能な限り滑らかな間隔を与える形状であることが好適である。よって、当該樹脂粉末粒子の形状は、球状であることが好適である。また、当該樹脂粉末粒子の粒径は、当該粒子自体を肌上で滑らした場合に、ざらついた感触を伴わない大きさであることが好適である。かかる意味合いから、当該樹脂粉末粒子の粒径(平均粒径)は、1〜40μmの範囲であり、好適には、3〜20μmの範囲である。さらに、当該樹脂粉末粒子の素材は、肌上での使用性が良好で、板状粉末粒子を複合化粒子として担持させやすい熱可塑性樹脂であることが好適である。具体的には、例えば、ナイロン、ウレタン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリエチレン又はポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。当該樹脂粉末としては、常法により製造することも可能であるが、市販品を積極的に用いることができる。例えば、ポリエチレン粉末粒子(住友精化社製球状ポリエチレンSS-1)、球状PMMA粉末粒子(松本油脂製薬社製マイクロスフェアM−100、M−330)、球状シリコーン樹脂粒子(GE東芝シリコーン社製トスパール145)、球状ウレタン粒子(東色ピグメント社製プラスティックパウダーD-400)等が挙げられる。
【0018】
本発明の複合化粉末の核粒子となる、樹脂粉末粒子には、その表面に担持させた板状粉末粒子の干渉光の発色を際立たせるため、当該樹脂粉末粒子の内部に、着色材を内包させることができる。すなわち、このような形態とすることにより、当該樹脂粉末粒子表面に担持させた板状粉末粒子の透過光が、当該樹脂粉末粒子に内包させた着色材により吸収され、複合化粉末粒子表面における干渉光を、さらに際立てることが可能となる。当該着色材は、特に限定されないが、例えば、酸化鉄、黄色酸化鉄、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム、あるいは赤104号、赤202号、黄色4号、青1号アルミニウムレーキのようなタール色素が好ましい。また、当該着色材の当該樹脂粉末粒子における内包量は、着色材を内包させた樹脂粒子粉末全体に対して0.2〜40質量%が好適である。当該内包量が0.2質量%未満では、着色材による透過光の吸収が弱く、積極的に着色材を内包させた目的を実質的に果たすことが困難である。また、同40質量%を超えると前記吸収が強すぎて、本発明複合化粉末における干渉光がくすむ傾向が顕著になり、また、当該複合化粉末を配合したメーキャップ化粧料の使用性に悪影響を与える傾向も認められる。
【0019】
(B)板状粉末粒子(複合化粒子)
本発明の複合化粉末の複合化粒子として用いる板状粉末粒子は、一般的に「パール顔料」として知られている板状粉末粒子の中で、高屈折率のもの、具体的には、屈折率2.2以上、好適には2.6以上の屈折率が認められるものが選択される。なお、当該屈折率は、板状粉末粒子自体が複合化粉末である場合には、その最外層において認められる屈折率を意味する。
【0020】
当該板状粉末粒子は、下記(1)あるいは(2)として選択される。
【0021】
(1)当該板状粉末粒子が、核粒子と他素材の被覆層からなる複合粉末粒子であり、当該核粒子の素材が、マイカ、合成マイカ、アルミナ、ガラス及びシリカからなる群から選ばれる1種以上であり、かつ、被覆層の素材が、ルチル型酸化チタン、酸化鉄及びシリカからなる群から選ばれる1種以上である。
(2)当該板状粉末粒子全体の素材が、酸化チタン、又は、酸化鉄である。この項目(2)の板状粉末粒子全体を構成し得る酸化チタンは、ルチル型酸化チタンであることが好適である。
【0022】
具体的には、例えば、ルチル型酸化チタン被覆マイカ(ENGELHARD社製FLAMENCO SUMMIT RED等:屈折率約2.5〜2.7)、酸化鉄被覆マイカ(MERCK社製COLORONA GLITTER ORANGE等:屈折率約3.0)、酸化鉄・ルチル型酸化チタン被覆マイカ(ENGELHARD社製DESERTREFLECTION SUNLIT CACTUS等:屈折率約3.0)、ルチル型酸化チタン被覆アルミナ、ルチル型酸化チタン被覆ガラスフレーク(日本板硝子社製メタシャインMC1080RR、ENGELHARD社製REFLECKS PINPOINT of Silver等:屈折率約2.5〜2.7)、板状酸化チタン(屈折率約2.5〜2.7)、板状酸化鉄(チタン工業社製AM-200等:屈折率約3.0)、ルチル型酸化チタン被覆板状シリカ(屈折率約2.5〜2.7)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。特に白色であるルチル型酸化チタン被覆マイカ、ルチル型酸化チタン被覆アルミナ、板状ルチル型酸化チタン、ルチル型酸化チタン被覆板状シリカ酸化ケイ素等が好適である。
【0023】
当該板状粉末粒子の平均粒径は、少なくとも、核粒子である樹脂粉末粒子よりも小さいことが好適であり、かつ、現実的である。また、当該樹脂粉末粒子に対する板状粉末粒子の担持量は、特に限定されないが、複合化粉末全量に対して5〜100質量%、好適には、同20〜50質量%である。当該担持量が5重量%未満では、発生する干渉光が不明瞭であり、本発明において所望の色彩効果や光輝性が十分に認められず、一方100質量%を超えることは非現実的である。仮に、同100質量%を超える構成で、本発明の複合化粉末を製造しようと試みると、樹脂粉末粒子に担持されずに単独で存在する板状粉末粒子が多くなってしまい、面的な干渉光が強くなりすぎ、点在感が認められ難くなる。
【0024】
本発明の複合化粉末は、好適には、後述するメカノケミカル的な製造方法にて製造されるが、その際に核粒子である樹脂粉末粒子に担持される板状粉末粒子の平均粒径は、複合化の際に与える衝撃力と摩擦力の時間積分量が大きいほど細かくすることができるが、好適には、概ね、樹脂粉末粒子の平均粒径の1〜70%程度、さらに好適には、同5〜40%程度になるように、投入する際の板状粉末粒子の平均粒径、厚み、及び、粉砕機により与えられる衝撃力と摩擦力の時間積分量を調整することが好ましい。当該板状粉末粒子の平均粒径は、1〜30μmの範囲であることが好適であり、同2〜10μmの範囲であることが特に好適である。さらに、当該該板状粉末粒子の厚みの平均は、0.1〜6μmであることが好適である。
【0025】
[製造方法]
本発明の複合化粉末は、上述のように、上記の板状粉末粒子を、同じく上記の樹脂粉末粒子の表面にメカノケミカル的に付着担持させることにより製造され得る、複合化粉末である。ここで、「メカノケミカル的に」とは、混在させた上記板状粉末粒子と上記樹脂粉末粒子に対して、衝撃力と摩擦力を与えることを意味する。この衝撃力と摩擦力の負荷手段としては、粉体製造の際に用いる「粉砕機」が例示される。当該粉砕機としては、例えば、ボールミル、ジェットミル、ビーズミル、ローラーミル等が例示されるが、ボールミルを用いるのが好適である。また、例えば、粉砕機としてボールミルを用いる場合の、当該粉砕機の作動時間は、粉砕対象物に与え得る衝撃力と摩擦力にも依存するが、概ね10分間〜1時間程度にて選択され得る。このようなメカノケミカル的工程を経ることによって、核粒子である樹脂粉末粒子の表面に、板状粉末粒子及び/又は板状粉末粒子の粉砕物が定着担持され、本発明の複合化粉末が製造される。
【0026】
[メーキャップ化粧料]
本発明の化粧料は、上記の本発明の複合化粉体を含むメーキャップ化粧料である。当該メーキャップ化粧料は、特に、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート等の体の特定部分へのメーキャップを行う、ポイントメーキャップ化粧料であることが、本発明の複合化粉体の優れた点在感と上品な光輝性を十分に発揮させることが可能であり、好ましい。
【0027】
本発明の化粧料における、本発明の複合化粉末の配合量は、好適には、化粧料全量に対して0.1〜30質量%、特に好適には、同0.5〜15質量%である。当該配合量が、化粧料に対して0.1質量%未満では、本発明の複合粉末を配合したことによる点在感を十分に発揮することが困難であり、30質量%を越えると、化粧料の使用の際に重量感が伴う傾向が強くなり、さらに、他の配合成分を含有させるための処方幅が狭くなり、粘度や硬度等の製品の物性調整も困難になる傾向が強くなる。
【0028】
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない程度に必要に応じて固体、半固体、液状の油分、水、水溶性高分子、多価アルコール、溶剤、界面活性剤、粉体、樹脂、有機変性粘土鉱物、高分子、紫外線吸収剤、保湿剤、防腐剤、殺菌剤、香料、酸化防止剤、美肌用成分、生理活性成分粉末、顔料、染料、ラメ剤、薬剤、保湿剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、充填剤、界面活性剤、金属石鹸等の一般に化粧料に配合される原料を適宜配合して、目的とする化粧料の種類に応じて、常法により製造することができる。
【実施例】
【0029】
本発明を、実施例を用いて、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例の記載事項により限定されるものではない。配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0030】
[試験方法]
本実施例において行った、点在感と光輝性、さらには明度(点在感の数値化)に関する試験方法と評価基準を開示する。
【0031】
(1)点在感
複合化粉末の点在感について、官能試験により評価した。試験は色調検査に携わる専門パネル(10名)が行い、方法はサンプルを黒紙上に適量塗布し、刷毛で伸ばした際の外観についての目視評価を行った。評価基準は下記のとおりである。
【0032】
<評価基準>
◎:8名以上が点在感を感じると判断
○:5〜7名が点在感を感じると判断
△:2〜4名が点在感を感じると判断
×:1名以下が点在感を感じると判断
【0033】
(2)光輝性
複合化粉末の光輝性について、官能試験により評価した。試験は色調検査に携わる専門パネル(10名)が行い、方法はサンプルを黒紙上に適量塗布し、刷毛で伸ばした際の外観についての目視評価を行った。なお評価基準は下記のとおりである。
【0034】
<評価基準>
◎:8名以上が光輝感を感じると判断
○:5〜7名が光輝感を感じると判断
△:2〜4名が光輝感を感じると判断
×:1名以下が光輝感を感じると判断
【0035】
(3)明度L*標準偏差(製剤中での点在感)
複合化粉末の点在感を数値的に評価するため、サンプルを油分中に入れた際の明度L*の標準偏差を測定した。方法としては、口紅グロスの汎用成分である高粘度油分のポリブテン中に、サンプル2%を配合したものを黒紙上に適量塗布し、その外観をCCDカメラで画像に取り込み、取り込んだ部分についての明度L*の標準偏差を測定した。つまりここでは明度L*の標準偏差が大きいほど、点在感が感じられることになる。
【0036】
以下に、実施例と比較例を開示し、これらの例に対して上記の試験を行った結果を示す。
【0037】
[実施例1] ルチル型酸化チタン積層マイカ被覆球状樹脂粉末の製造
50gのルチル型酸化チタン積層マイカ(エンゲルハード社製フラメンコサミットレッド:平均径約23μm、厚み約0.5μm)と50g球状ポリエチレン(住友精化社製ポリエチレンSS−1:平均径5〜15μm)、及び、100gの直径1.5cmのボールを、直径15cmのメノウ製蓋付き容器に入れ、15分攪拌することにより、物理的に板状粉末粒子を球状粉末粒子表面に付着担持させた、ルチル型酸化チタン積層マイカ被覆球状樹脂粉末(複合化粉末A)を得た。この複合粉末の電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0038】
[実施例2] ルチル型酸化チタン積層ガラスフレーク被覆球状樹脂粉末の製造
50gのルチル型酸化チタン積層ガラスフレーク(日本板硝子社製メタシャインMC1080RR:平均径約80μm、厚み約1.5μm)と50g球状ポリエチレン(住友精化社製ポリエチレンSS−1:平均径5〜15μm)、及び、100gの直径1.5cmのボールを、直径15cmのメノウ製蓋付き容器に入れ、15分攪拌することにより物理的に板状粉末を球状粉末上に付着させたルチル型酸化チタン積層ガラスフレーク被覆球状樹脂粉末(複合化粉末B)を得た。
【0039】
[実施例3] 板状酸化鉄被覆球状樹脂粉末の製造
50gの板状酸化鉄(チタン工業社製AM−200:平均径約15μm、厚み約0.3μm)と50gの球状ポリエチレン(住友精化社製ポリエチレンSS−1:平均径5〜15μm)、及び、100gの直径1.5cmのボールを直径15cmのメノウ製蓋付き容器に入れ、15分攪拌することにより物理的に板状粉末を球状粉末上に付着させた板状酸化鉄被覆球状樹脂粉末(複合化粉末C)を得た。
【0040】
[実施例4] ルチル型酸化チタン積層マイカ被覆黒色球状樹脂粉末の製造
ルチル型酸化チタン積層マイカ(エンゲルハード社製フラメンコサミットレッド:平均径約23μm、厚み約0.5μm)と50gの黒酸化鉄内包球状PMMA(ガンツ化成社製GM0801−B:黒酸化鉄約30%内包、平均径5μm)、及び、100gの直径1.5cmのボールを直径15cmのメノウ製蓋付き容器に入れ、15分攪拌することにより物理的に板状粉末を球状粉末上に付着させた板状酸化鉄被覆球状樹脂粉末(複合化粉末D)を得た。
【0041】
[比較例1] 小粒径ルチル型酸化チタン積層マイカ混合球状樹脂粉末の製造
50gのルチル型酸化チタン積層マイカ(メルク社製チミロンシルクレッド:平均径約12μm、厚み約0.5μm)と50g球状ポリエチレン(住友精化社製ポリエチレンSS−1:平均径5〜15μm)を、手攪拌により十分に混合させた混合粉末(混合粉末A)を得た。
【0042】
[比較例2] アナターゼ型酸化チタン積層マイカ混合球状樹脂粉末の製造
50gのアナターゼ型酸化チタン積層マイカ(エンゲルハード社製フラメンコレッド:平均径約23μm、厚み約0.5μm)と50g球状ポリエチレン(住友精化社製ポリエチレンSS−1:平均径5〜15μm)、及び、直径1.5cmのボール100gを直径15cmのメノウ製蓋付き容器に入れ、15分攪拌することにより物理的に板状粉末を球状粉末上に付着させたアナターゼ型酸化チタン積層マイカ被覆球状樹脂粉末(複合化粉末E)を得た。
【0043】
これらの実施例と比較例で得られた複合化粉末についての、上記試験の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、実施例1〜4にある複合化粉末は、官能評価において、十分な点在感と光輝性が認められ、また明度の標準偏差が大きいことから、数値的にも点在感が認められるものであることが確認された。一方、比較例1の複合粉末Aでは、板状粉末が樹脂粉末に担持されていないために、光輝性は認められるものの、点在感は認められないものであった。また比較例2の複合化粉末は点在感、光輝性どちらも弱い結果となった。
【0046】
次に、本発明の複合粉末を配合した、ポイントメーキャップ化粧料の実施例を挙げて評価する。評価項目としては粉末の場合と同じく、「点在感」と「光輝性」について、化粧品の品質検査に携わる専門パネル(10名)による官能的評価試験を行った。さらに、試験品の塗布時の使用性として、下記の官能試験を行った。
【0047】
(4)塗布時の使用性
各サンプルを配合した際の使用性について、官能試験により評価した。試験は化粧品の品質検査に携わる専門パネル(10名)が行い、サンプルを、唇上に適量塗布した際の使用性を以下の評価基準に準じて評価した。
【0048】
<評価基準>
◎:8名以上が使用性を良好と判断
○:5〜7名が使用性を良好と判断
△:2〜4名が使用性を良好と判断
×:1名以下が使用性を良好と判断
【0049】
〔実施例5〜7、比較例3〜4〕 口紅グロス
<製法>
下記表2の処方に基づく各組成物を、90℃付近にて均一に分散、混合して樹脂容器中に流し込み冷却することにより調製した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2に示すように、実施例5〜7で得られた口紅グロスは、点在感、光輝性、及び、塗布時の使用性も良好なものであった。一方比較例4では点在感、及び光輝性が全く認められず、比較例5でも点在感が認められない結果となった。
【0052】
以下に本発明の化粧料のその他の処方例を挙げる。
【0053】
[実施例8] 油性アイシャドー
配合成分 配合量(質量%)
複合化粉末A 3.0
セレシン 1.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 残量
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2.0
メチルフェニルポリシロキサン 5.0
マカデミアナッツ油 1.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン 2.0
合成金雲母 0.1
マイカ 30.0
黒酸化鉄被覆雲母チタン(パール剤) 適量
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
D−δ−トコフェロール 適量
群青ピンク 1.0
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 3.0
トリメチルシロキシケイ酸 3.0
香料 適量
<製法・結果>
各組成物を80℃で混合し、金型へ流し込んでプレスすることにより調製する。
【0054】
[実施例9] 粉末固形アイシャドー
配合成分 配合量(質量%)
複合化粉末B 15.0
ワセリン 2.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
メチルフェニルポリシロキサン 2.0
グリセリン 0.1
トリオクタノイン 1.0
植物性スクワラン 0.5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.0
アルキル変性シリコーン樹脂被覆ベンガラ 0.1
窒化ホウ素 2.0
雲母チタン 4.0
金雲母 4.0
合成金雲母 0.1
セリサイト 25.0
タルク 残余
マイカ 7.0
ミリスチン酸亜鉛 1.0
ステアリン酸アルミニウム 0.01
無水ケイ酸 4.0
フィトステロール 0.01
酢酸DL−α−トコフェロール 0.02
D−δ−トコフェロール 0.02
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.02
パラオキシ安息香酸エステル 0.2
ベンガラ 7.0
黒酸化鉄 2.0
合成ケイ酸ナトリウム/マグネシウム 0.1
香料 適量
リンゴ酸ジイソステアリル 5.0
トリイソステアリン 2.0
<製法・結果>
油分、ワックスを95℃に加熱して均一に攪拌し、一方油分以外の組成物を室温にて均一に攪拌する。そこへ加熱した油分類を添加して、金型に流し込みプレスすることにより製造する。
【0055】
[実施例10] スティック状口紅
配合成分 配合量(質量%)
複合化粉末B 3.0
マイクロクリスタリンワックス 2.0
セレシン 11.0
液状ラノリン 2.0
スクワラン 1.0
マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル 8.0
リンゴ酸ジイソステアリル 10.0
ジイソステアリン酸グリセリル 5.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 30.0
オキシステアリン酸イソステアリル 10.0
シリコーン被覆顔料 4.0
硫酸バリウム 4.0
ベンガラ被覆雲母チタン 0.1
フィトステロール 0.1
重質流動イソパラフィン 10.0
染料 適量
香料 適量
<製法・結果>
各組成物を95℃に加熱して均一に攪拌し、金型に流し込み冷却することにより製造する。
【0056】
[実施例11] マスカラ
配合成分 配合量(質量%)
複合化粉末B 3.0
軽質イソパラフィン 7.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
トリメチルシロキシケイ酸 10.0
メチルポリシロキサンエマルション 適量
1,3−ブチレングリコール 4.0
ジオレイン酸ポリエチレングリコール 2.0
ジイソステアリン酸ジグリセリル 2.0
炭酸水素ナトリウム 0.2
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
デヒドロ酢酸ナトリウム 適量
黒酸化鉄 7.0
海藻エキス 0.1
ベントナイト 1.0
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 6.0
ポリ酢酸ビニルエマルション 30.0
精製水 残量
<製法・結果>
常法により得られる。
【0057】
[実施例12] ネールエナメル
配合成分 配合量(質量%)
複合化粉末A 2.0
ブタノール 0.5
マカデミアナッツ油 0.1
酢酸エチル 7.0
酢酸ブチル 残余
ポリオキシエチレンアルキル(12−15)エーテルリン酸(2E.O.) 0.1
塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム 0.5
ステアリン酸カルシウム 0.05
クエン酸 0.01
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
黒酸化鉄 適量
赤色202号 適量
黄色4号 適量
青色404号 適量
ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレンイソフタレート積層末 0.5
(角八魚鱗箔社製NEWオーロラフレーク0.1:粒径150μm)
トリメリト酸系アルキッド樹脂 12.0
ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト 0.5
ベンジルジメチルステアリルアンモニウムベントナイト 1.0
ニトロセルロース 17.0
安息香酸ショ糖エステル 2.0
クエン酸アセチルトリブチル 5.0
<製法・結果>
常法により得られる。
【0058】
[実施例13] オーバーコート
配合成分 配合量(質量%)
複合化粉末A 2.0
ニトロセルロース1/4秒(30%IPA) 8.0
ニトロセルロース1/2秒(30%IPA) 2.0
微粒子シリカ(アエロジル#380S:粒径6nm,比表面積380m/g) 1.0
クエン酸アセチルトリエチル 5.0
イソプロピルアルコール 3.0
n−ブチルアルコール 2.0
酢酸ブチル 25.0
酢酸エチル 52.5
<製法・結果>
常法により得られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、屈折率の高い無機酸化物からなる干渉層を持つ板状粉末と樹脂粉末を複合化した粉末を、特に、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、ネールエナメルオーバーコート、ネールエナメルベースコート等のポイントメーキャップ化粧料に配合することにより、上品な点在感、さらには、鮮やかな有色外観を有し、また使用性の良いメーキャップ化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1のルチル型酸化チタン被覆球状樹脂粉末の電子顕微鏡写真図(50000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が1〜40μmの樹脂粉末粒子表面に、当該樹脂粉末粒子の粒径の1〜70%の平均粒子径となる板状粉末粒子を担持してなり、当該板状粉末粒子の屈折率が2.2以上である、複合化粉末。
【請求項2】
上記樹脂粉末粒子の素材が、ナイロン、ウレタン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選ばれる1種以上であり、当該樹脂粉末粒子が球状粒子である、請求項1記載の複合化粉末。
【請求項3】
上記樹脂粉末粒子が、無機又は有機の着色剤を内包し、当該内包量が樹脂粉末粒子に対して0.2〜40質量%である、請求項1又は2記載の複合化粉末。
【請求項4】
上記板状粉末粒子が、核粒子と他素材の被覆層からなる複合粉末粒子であり、当該核粒子の素材が、マイカ、合成マイカ、アルミナ、ガラス及びシリカからなる群から選ばれる1種以上であり、かつ、被覆層の素材が、ルチル型酸化チタン、酸化鉄及びシリカからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の複合化粉末。
【請求項5】
上記板状粉末粒子の全体の素材が、酸化チタン、又は、酸化鉄である、請求項1〜3のいずれかに記載の複合化粉末。
【請求項6】
酸化チタンが、ルチル型酸化チタンである、請求項5記載の複合化粉末。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の複合化粉末を含有する、メーキャップ化粧料。
【請求項8】
(1)平均粒径が1〜40μmの樹脂粉末粒子、及び、(2)平均粒径が1〜30μmであり、厚みの平均が0.1〜6μmの板状粉末粒子、に対し摩擦力と衝撃力を与えることにより、当該樹脂粉末粒子の表面に、当該板状粉末粒子及び/又は当該板状粉末粒子の粉砕物を定着担持させることにより粉末粒子の複合化を行う、請求項1〜6のいずれかに記載の複合化粉末の製造方法。
【請求項9】
摩擦力と衝撃力が、ボールミルにより与えられる、請求項8に記載の複合化粉末の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−173549(P2009−173549A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10631(P2008−10631)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】