説明

複合化酸化インジウム粒子およびその製造方法ならびに導電性塗料、導電性塗膜および導電性シート

スズ塩が溶解されたアルカリ水溶液に亜鉛化合物を混合し、インジウム塩の水溶液を添加し、得られたスズ、インジウム、亜鉛を含有する水酸化物あるいは水和物を水の存在下で110〜300℃の温度範囲で加熱処理する。次いで、ろ過、乾燥後、空気中300〜1000℃の温度範囲で加熱処理し、さらに還元雰囲気中150〜400℃の温度範囲で還元処理を行って酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム複合化粒子とする。これにより、粒子の平均粒子径が5nmから100nmの範囲にある酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム複合化粒子を得る。得られた酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム複合化粒子は、紫外線遮蔽性を併せ持つ透明導電性塗膜の形成に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとを含んでなる複合化酸化インジウム粒子とその製造方法、ならびに該粒子を用いた導電性塗料、導電性塗膜および導電性シートに関する。
【背景技術】
透明導電性塗料用の材料として、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子、スズ含有酸化インジウム粒子、アルミニウム置換酸化亜鉛粒子などが知られている。中でも、スズ含有酸化インジウム粒子は、その可視光に対する高い透光性と、その高い導電性から、静電防止や電磁波遮蔽が要求されるCRT(cathode−ray tube)画面、LCD(liquid crystal display)画面などに塗布して使用されている。さらに、この粒子を分散塗布したシートは、その透光性と導電性により、デイスプレイ用のみならずタッチパネル用など、広範囲での応用が期待されている。
しかしながら、スズ含有酸化インジウム粒子を用いた塗膜は、現状では、蒸着やスパッタ法で作製したスズ含有酸化インジウム膜に比べて、特性が劣り、塗布という比較的簡便で低コストの手段により作製できるメリットを十分に活かしきれておらず、限られた用途にしか適用されていない。また、スズ含有酸化インジウムは、その主原料であるインジウムが高価であるため、原材料費が高くつくという問題がある。
一方、紫外線遮蔽用あるいは高屈折率塗料用の材料として、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子、酸化鉄粒子などが知られている。中でも、酸化亜鉛粒子は、UV−A領域の紫外線に対して優れた遮蔽性を示し、特に可視光に対する透明度が高いため、紫外線遮蔽用の化粧料などとして応用され、さらに、その高い屈折率(屈折率2.1)から高屈折率材料としても応用されている。
これらスズ含有酸化インジウムや酸化亜鉛などの透明性粒子を結合剤中に分散させて塗布して使用する場合、高い可視光透明性を得るためには、通常、粒子径を光の波長の1/2以下にする必要がある。したがって、例えば可視光に対して透明にするためには、粒子径を200nm以下の微粒子にする必要がある。
このような微粒子の製造方法の一例は、特開昭62−7627号公報に記載されている。この方法では、塩化インジウムと塩化スズとの混合水溶液に、アンモニア水または炭酸アンモニウム水溶液などのアルカリ水溶液を加えて共沈水酸化物を作り、この水酸化物を加熱処理してスズ含有酸化インジウムとした後、機械的に粉砕して、微粒子を得る。特開昭62−7627号公報の例では、熱処理とさらに機械的粉砕により、平均粒子径が0.1μmのスズ含有酸化インジウム粒子が得られている。
特開平5−201731号公報では、特開昭62−7627号公報と同様の方法によりインジウムとスズとの共沈水酸化物を作製した後、焼成、粉砕してスズ含有酸化インジウム粒子とする際に、ナトリウムとカリウムの含有量を特定量以下にすることが、高い導電性を得る上で重要であるとの指摘がなされている。特開平5−201731号公報では、粉砕後に、粒子径が0.01〜0.03μmのスズ含有酸化インジウム粒子が得られている。
一方、酸化亜鉛の微粒子は、単独では凝集力が強く、分散させることが困難であることも知られている。酸化亜鉛微粒子の分散性を向上させるために、特開2002−201382号公報では、酸化亜鉛粒子内部に微量のシリコンあるいはアルミニウムの酸化物または水酸化物を含有させている。それにより、0.03μm以下の分散性の良い酸化亜鉛粒子が得られている。
上記のような透明導電性粒子や紫外線遮蔽・高屈折率粒子の用途としては、例えば帯電防止効果に優れた反射防止膜などが挙げられる。従来、この種の反射防止膜では、個々の機能を持つ膜を複数重ねられるが、近年、種々の機器の薄型化が進むにつれ、単層構造でありながら複数の機能を備えた膜が望まれている。そのような単層構造膜に関連するものとしては、例えば特開2002−167576号公報がある。その公報では、酸化インジウムや酸化スズを主成分とする導電性微粒子と、酸化チタンや酸化亜鉛を用いた高屈折率粒子とを、バインダ中に混合分散させて、高屈折率導電性材料を得ている。その際、膜の透明性と粒子の分散性を維持する上で、粒子サイズを0.2μm以下、塗布膜厚を20μm以下とすることが必要であるとされている。また、その実施例1では、スズ含有酸化インジウム粒子と酸化セリウム粒子とを混合分散して塗料を作製し、これを塗布することで屈折率1.68、表面抵抗値2.5×10Ω/□の塗布膜を得ている。
上述したような導電性粒子と非導電性粒子との混合分散系においては、混合分散により非導電性粒子が導電性粒子と導電性粒子との間に入り、導電性粒子間の接触が減少する結果として、塗膜の電気伝導度が低下しやすくなる。これは、この種の混合分散系における本質的な特徴である。帯電防止効果に限って言えば、表面抵抗率が約10Ω/□の塗布膜は十分な導電性を持つ、すなわち帯電防止機能を有する、と言えるが、さらなる機能として、電磁遮蔽性、あるいはタッチパネルなどに応用できる程度の優れた導電性が期待される。ところが、このような優れた導電性を得るためにはスズ含有酸化インジウム等の導電性粒子の含有量をできる限り多くする必要がある。しかし、導電性粒子の含有量を多くすると酸化亜鉛等の非導電性粒子の含有量が減少し、例えば酸化亜鉛の特長である紫外線遮蔽性はほとんど発現しなくなる。このように、導電性と紫外線遮蔽性はトレードオフの関係にある。
さらに、近年においては、清潔感を必要とする白衣やクリーンルームの内装、あるいは明彩色の塗料やプラスチック製品に対して、白色導電性粉末を用いた帯電防止用の塗料の需要が増大している。このような場合に用いられる白色導電性粉末としては、白雲母を核としてスズ含有酸化インジウムで被覆した白色無機顔料(特開昭60−253112号公報)、酸化亜鉛や酸化チタンなどの白色無機顔料粒子の表面に二酸化スズを被覆し、さらにその上からスズ含有酸化インジウムで被覆した白色導電性粉末(特開平06−338213号公報)などが挙げられる。これらの白色導電性粉末の中には、酸化チタンや酸化亜鉛等の紫外線遮蔽性を持つ白色顔料を核にし、その外側を導電性を持つ酸化スズやスズ含有酸化インジウム等で被覆したものがあるが、いずれも白色を呈すること自体が目的とされており、紫外線遮蔽剤として利用されているものではない。さらに、基体となる白色無機顔料の影響により、導電性塗料等に用いるのに必要な程度にまで体積固有抵抗率を低下することは困難である。
【発明の開示】
上記のような金属酸化物粒子を含んだ塗布膜を形成するには、一般に、この種の粒子を、無機あるいは有機バインダーを溶解した溶媒中に分散させ、得られた塗料を各種の基材上に塗布する。その際、塗膜の透明性を得るために、粒子が微粒子である必要があると同時に、粒子を塗膜中で均一に分散させる必要がある。しかしながら、微粒子にすると塗料中で粒子が2次凝集体を生成しやすく、均一な分散体を得ることが困難になる。このような凝集体が存在すると、塗膜の導電性が低下するのみならず、透明性も低下する。
本発明は、上記の事情に照らし、透明導電性と紫外線遮蔽性とを併せ持つ新規な塗布膜用の微粒子として、さらには、インジウム使用量を減少させることにより低コスト化を実現できる塗布型の透明導電膜用の微粒子として、分散性に優れた複合化酸化インジウム粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このような複合化酸化インジウム粒子を用いて、優れた透明導電性と紫外線遮蔽性とを併せ持った導電性シート等を実現することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、酸化亜鉛を核としてスズ含有酸化インジウムでこれを被覆して、実質的に酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとからなる平均粒子径5〜100nmの複合化酸化インジウム粒子とすることで、従来のスズ含有酸化インジウム粒子よりもインジウム使用量が少ないにもかかわらず、スズ含有酸化インジウム粒子に由来する透明導電性と、酸化亜鉛に由来する紫外線遮蔽性とを併せ持ち、しかも分散性にも優れる微粒子材料、すなわち塗布膜や塗布型透明導電膜に用いるのに適した微粒子材料が得られることを見出した。粒子の平均粒子径が5nm未満のものは、これを用いた塗料を作製する際に分散させにくいのみならず、製造が困難であり、100nmを超えた場合には、可視光に対して透明性を確保することが困難になる。
本発明の複合化酸化インジウム粒子においては、酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムがそれぞれの結晶構造を保持したまま、酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム復合化粒子となっていることが好ましく、圧力14.7MPa(150kgf/cm)下の圧粉体の体積抵抗率が10−3〜10Ωcmであることが好ましい。
また、本発明者らは、独自に見出した特定の手段を用いて、前記スズ含有酸化インジウムと酸化亜鉛の少なくとも一方の構成金属の一部を、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、タリウム等の3価の元素、中でも好ましくはアルミニウム、ガリウムにより置換して、含有させた複合化酸化インジウム粒子[化学式:{(Zn1−y)O}1−x{(ITO)1−z(式中、AはAl,Ga等の3価の元素を表す。)]とすることにより、より導電性を向上させることができることを見出した。
さらに、本発明者らは、従来の製造方法とは全く異なる新規な製造方法により、上記のような平均粒子径が5nmから100nmの範囲にある、酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとの複合化粒子である複合化酸化インジウム粒子を得ることに成功したものである。
すなわち、本発明の方法は、スズ塩を溶解させたアルカリ水溶液に、亜鉛化合物(またはアルミニウム、ガリウム等で元素置換された亜鉛化合物)を加え、さらに、スズ含有酸化インジウム相に対してアルミニウム、ガリウム等の元素置換を行う場合には、アルミニウム化合物、ガリウム化合物等を加え、アルカリ水溶液を調製し、このアルカリ水溶液にインジウム塩の水溶液を添加し、得られたスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物の沈殿物を含む懸濁液のpHが4〜12の範囲になるように調整した後、懸濁液を水の存在下で110〜300℃の温度範囲で加熱処理し、ろ過、乾燥後、さらに空気中300〜1000℃の温度範囲で加熱処理した後、還元雰囲気中150〜400℃の温度範囲で還元処理を行うことにより、上記の酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムの複合化粒子である複合化酸化インジウム粒子を製造するものである。
本発明の方法で得られた複合化酸化インジウム粒子は、透明性と導電性さらには紫外線遮蔽性を併せ持つという大きな特徴がある。これは、酸化亜鉛をスズ含有酸化インジウムで被覆することにより、電子は粒子表面に形成されたスズ含有酸化インジウムを伝って流れるため、スズ含有酸化インジウムの優れた導電性が発揮され、また光は粒子全体を通過するため、酸化亜鉛の優れた紫外線遮蔽性が発揮されるためであると考えられる。その結果、1種類の粒子で、透明性と導電性、紫外線遮蔽性を同時に実現することができる。
さらに、本発明の粒子は、インジウムの使用量が少ないため、低コストで製造できるという利点をも有する。すなわち、従来の透明導電性材料であるスズ含有酸化インジウム粒子は、高価であることが広範囲での普及を妨げる原因の一つになっていたが、本発明の粒子は、従来のスズ含有酸化インジウム粒子と比較して、導電性を同等以上に保ち、かつインジウムの使用量を20〜80%減少させることにより、低コスト化をも実現したものである。
このように、本発明によれば、酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとを複合化(より好ましくは、酸化亜鉛をスズ含有酸化インジウムで被覆)したことにより、スズ含有酸化インジウムが有する透明導電性と、さらに酸化亜鉛が有する紫外線遮蔽性および透明性とを併せもった微粒子を実現できる。この場合さらに酸化亜鉛およびスズ含有酸化インジウムの金属元素をアルミニウムやガリウム等の元素で置換することにより、透明性と紫外線遮蔽性を維持して、より高い導電性を得ることができる。これは、従来の透明導電性粒子と紫外線遮蔽性粒子とを混合した粒子では得られない、本発明の粒子を用いて初めて実現できるものである。本発明で得られた複合化酸化インジウム粒子は、紫外線遮蔽効果を併せ持った透明導電性塗膜用の導電性粒子として最適であり、その産業上の利用価値は極めて大きい。
以上のように、本発明の複合化酸化インジウム粒子においては、酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとを複合化(より好ましくは酸化亜鉛をスズ含有酸化インジウムで被覆して複合化)した。これにより、インジウムの使用量を著しく減少させることができ、その分だけ低コスト化を実現できる。しかも、本発明の複合化酸化インジウム粒子は、優れた導電性を維持しながら酸化亜鉛の特性である優れた紫外線遮蔽性をも有する。したがって、この粒子を用いた本発明の塗料や、これを用いて形成された本発明の塗布膜、さらには該塗布膜をシート状の透明な基材の表面に形成してなる本発明の導電性シートは、優れた透明性と導電性と紫外線遮蔽性とを併せ持ったものとなる。
本発明の製造方法によれば、粒子の平均粒子径が5nmから100nmの範囲にあり、スズ含有酸化インジウムで酸化亜鉛を被覆した上記のような複合化酸化インジウム粒子が得られる。このような複合化酸化インジウム粒子は、本発明により初めて開発した、新規な機能性粒子である。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で得た、酸化亜鉛濃度50mol%である酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム複合化粒子のX線回折スペクトルである。
図2は、実施例1で得た、酸化亜鉛濃度50mol%である酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム複合化粒子の透過電子顕微鏡写真(倍率30万倍)である。
図3は、実施例6で得た、酸化亜鉛濃度18mol%、アルミニウム濃度5.2mol%である酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム複合化粒子の透過型電子顕微鏡写真(倍率30万倍)である。
図4は、実施例5で得た、酸化亜鉛濃度45mol%、アルミニウム濃度7mol%である酸化亜鉛−スズ含有酸化インジウム複合化粒子の光透過率スペクトル(200〜2500nm)である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の製造方法では、まず第一工程として、あらかじめスズ塩を溶解させたアルカリ水溶液に、亜鉛化合物またはアルミニウム、ガリウムなどの元素で置換した亜鉛化合物を添加混合し、この亜鉛化合物含有スズ塩水溶液に、インジウム塩の水溶液を添加する。また、最終生成物である複合化酸化インジウム粒子中の、スズ含有酸化インジウム相をアルミニウム、ガリウム等の元素で置換する場合には、さらにアルミニウム化合物、ガリウム化合物等を混合し、アルカリ水溶液を調製し、このアルカリ水溶液にインジウム塩の水溶液を添加する。この工程により、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物が得られる。またインジウム塩を添加して、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物の沈殿物を含む懸濁液のpHを4〜12の範囲になるように調整することが好ましい。
次に、このスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物を、水の存在下でオートクレーブなどを使用して、110〜300℃の温度範囲で加熱処理することにより、目的とする形状、粒子径に整える。
その後、第二工程として、このスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物を空気中加熱処理し、水素還元処理することにより、粒子径分布が均一で、焼結、凝集が少ない複合化酸化インジウム粒子を得る。
このように酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムの複合化粒子である複合化酸化インジウム粒子を製造する工程において、形状、粒子径を整えることを目的とする工程と、その材料が本来有する物性を最大限に引き出すことを目的とする工程とを分離するという発想により、平均粒子径が5nmから100nmの範囲にある複合化酸化インジウム粒子の開発に初めて成功したものである。
このような工程により製造した本発明の複合化酸化インジウム粒子を用いた塗膜は、従来の導電性粒子を用いた塗膜では得られなかった、高い透明性と導電性、さらには紫外線遮蔽性を併せ持った優れた性能を発揮する。
以下に、本発明の複合化酸化インジウム粒子の製造方法を更に詳しく説明する。
(沈殿物の生成)
塩化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウムなどのインジウム塩を水に溶解させ、インジウムイオンを含有する水溶解液を調製する。これらインジウム塩のうち、微粒子の複合化酸化インジウム粒子を得る上で、塩化物が最も好ましい。
これとは別に、スズイオンを含有するアルカリ溶液に、亜鉛化合物または元素置換した亜鉛化合物を混合させた溶液を調製する。すなわち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水溶液などのアルカリを水に溶解した後、塩化スズ、硝酸スズ、硫酸スズなどのスズ塩を溶解させ、さらに水酸化亜鉛、酸化亜鉛などの亜鉛化合物、あるいは、アルミニウムやガリウムなどの3価の元素で置換された水酸化亜鉛、酸化亜鉛などの、元素置換した亜鉛化合物を混合し、アルカリ溶液とする。なお、前記スズ塩のうち、微粒子の複合化酸化インジウム粒子を得る上で、塩化物が最も好ましい。
ここで、前記アルカリ溶液に水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物、あるいは水酸化ガリウム、酸化ガリウムなどのガリウム化合物等を混合してもよい。このようにすると、最終生成物である複合化酸化インジウム粒子中において、そのスズ含有酸化インジウム相中のスズまたはインジウム原子の一部が、アルミニウム、ガリウム等の3価の元素で置換され、粒子の導電性をさらに向上させることができる。
また、最終生成物の複合化酸化インジウム粒子の導電性および紫外線遮蔽効果を向上させる上で、混合させる亜鉛化合物の濃度は、複合化酸化インジウム粒子中、酸化亜鉛濃度が5〜70mol%、より好ましくは10〜50mol%となるように調整するのが好ましく、スズ含有酸化インジウム相中のスズ濃度は好ましくは3〜30mol%、より好ましくは5〜15mol%とする。
さらに導電性を向上させるために、酸化亜鉛相にアルミニウムやガリウム等の3価の元素を含有置換させる場合には、含まれる3価の元素濃度は、複合化酸化インジウム粒子中30mol%以下が好ましい。具体的には、酸化亜鉛相に含まれる3価の元素濃度は、酸化亜鉛に対して0〜30mol%、より好ましくは2〜15mol%であり、スズ含有酸化インジウム相に含まれる3価の元素濃度は、スズ含有酸化インジウムに対して0〜10mol%、より好ましくは2〜5mol%である。なお、本明細書および請求の範囲において「0〜Xmol%」と記載するときは、特に断らない限り、下限値である「0mol%」を含まず、上限値であるXmol%を含むものとする。
すなわち、一般式:{(Zn1−y)O}1−x{(ITO)1−zで表される複合化酸化インジウム粒子について、酸化亜鉛あるいは元素置換酸化亜鉛の濃度(上記式中、「1−x」で表される)が5〜70mol%、置換する元素Aがアルミニウム、ガリウム等の3価の元素であり、酸化亜鉛およびスズ含有酸化インジウムに置換含有された元素Aの総含有量が30mol%以下、かつ、酸化亜鉛中の元素Aの濃度(上記式中、「y」で表される)が0〜30mol%、スズ含有酸化インジウム中の元素Aの濃度(上記式中、「z」で表される)が0〜10mol%であり、ITO中のスズ濃度は3〜30mol%であることが好ましい。この場合、酸化亜鉛濃度(1−x)が前記範囲より低いと、導電性には影響を与えないが紫外線遮蔽性が低下し、これより高いと、紫外線遮蔽性には影響を与えないが、逆に導電性が著しく低下する。さらに、導電性を向上させるために添加する3価の元素の総含有量が前記範囲より高いと、逆に導電性が低下したり、置換しきれずに分離し、最終生成物において例えば酸化アルミニウムなどが生成して混合物となってしまったりする。また、スズ含有酸化インジウム中のスズ濃度が前記範囲より低いと充分な導電性が得られず、これより高いと逆に導電性を損ねる結果となる。
前記3価の元素を含有させる場合には、内部の酸化亜鉛と表面に形成されたスズ含有酸化インジウムの少なくとも一方の酸化物に置換含有させることができるが、より導電性を向上させるためには両方の酸化物に置換含有させることが好ましく、また3価の元素としては、アルミニウムを含有させることがより好ましい。
前記アルカリ溶液にはオキシアルカリアミンを加えても良い。オキシアルカリアミンは、アルカリ領域でのpH緩衝剤であると同時に結晶成長制御剤としても作用する。この場合のオキシアルカリアミンとしては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソブタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられるが、中でも微粒子を得る上で、結晶成長抑制剤となるモノエタノールアミンが最適である。
次に前記アルカリ溶液中に前記インジウム塩水溶液を滴下して、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物(沈殿物)を生成する。この沈殿物を含む懸濁液のpHを4〜12の範囲に調整し、この懸濁液を10〜50℃の温度範囲において10〜100時間熟成することが好ましい。このpH調整および熟成は、この後の工程の水熱処理工程において、比較的低い処理温度で複合化酸化インジウム粒子を得る上で効果的である。熟成時間は、10時間より短いと、熟成の効果は小さく、一方、長い場合は、特に悪い影響は与えないが、熟成の効果が飽和するため、あまり意味がない。
(水熱処理)
スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物を含む懸濁液に対し、オートクレーブ等を用いて水熱処理を行う。この水熱処理において、上記の沈殿物を含む懸濁液を水洗することにより、上記沈殿物以外の生成物や残存物を除去し、その後、NaOHなどにより再度pH調整しても良い。この時のpHの値は4〜12とすることが好ましい。このpHより低いと水熱処理時に水酸化スズが再溶解したり、また、高すぎると粒子径分布が広くなったり、再溶解することによりスズと亜鉛とインジウムさらにはアルミニウムなどが複合化せずに化合物となってしまうことがある。
水熱処理温度は、110℃〜300℃の範囲とすることが好ましい。この温度より低いと、十分な結晶成長ができず、またこの温度より高いと発生圧力が高くなるため、装置が高価なものとなり、メリットはない。
水熱処理時間は、1時間から4時間の範囲が好ましい。水熱処理時間が短すぎると、粒子の結晶成長が不十分になり、水熱時間が長すぎても特に問題となることはないが、製造コストが高くなるだけで、意味がない。
(加熱処理)
水熱処理後のスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物は、ろ過、乾燥した後、加熱処理を行うが、ろ過する前に、水洗によりpHを6〜9付近の中性領域に調整しておくことが好ましい。これは、水洗により水溶性のNaイオン、あるいは、オキシアルカリアミンを加えた場合であればアミン含有物質が除去されるためである。このようなNaイオンやアミン含有物質が残存した状態で、ろ過、乾燥し、加熱処理を行うと、得られた粒子の導電性が低下しやすいため、前記Naイオン等を極力除去しておくことが好ましい。
また、上記のスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物に、さらに珪酸ナトリウムなどの珪素化合物を添加して、シリカ処理を施こしても良い。このシリカ処理は、最終生成物である複合化酸化インジウム粒子を微粒子に保持する上で、効果的である。この処理により最終的に複合化酸化インジウム粒子の表面にシリカの被膜が形成されるため、微粒子状態を保持するためにはシリカは効果的であるが、シリカの被膜は複合化酸化インジウム粒子の導電性を低下させる傾向にあるため、前記珪素化合物の添加量としては、複合化酸化インジウム粒子に対して、0.1〜5重量%にすることが好ましい。
次に、ろ過、乾燥したスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された亜鉛化合物に対して加熱処理を行う。この加熱処理により複合化酸化インジウム粒子とすることができる。加熱処理時の雰囲気は、酸素濃度が10%以上であれば特に限定されないが、空気中加熱が、最も製造コストがかからないため好ましい。加熱処理温度は、300℃から1000℃の範囲が好ましい。この温度より低いと、被覆するスズ含有酸化インジウムにおいてスズが置換されにくく、酸化スズ、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物のような構造になったり、あるいは水酸化物の状態のまま酸化物へ変化しない場合があり、十分な電気伝導性が得られにくい。一方、加熱処理温度が高すぎると、粒子同士が焼結しやすくなるため、得られた粒子を用いて塗料を作製する際に十分な分散性が得られにくくなり、結果、該塗料を用いて塗膜を形成した場合に、塗膜の透明性が低下しやすくなる。
この加熱処理後の複合化酸化インジウム粒子を、還元雰囲気中150℃から400℃の温度範囲で還元処理を行うことにより、導電性を持つ黄灰色ないし青緑白色の複合化酸化インジウム粒子が得られる。
このようにして得られた複合化酸化インジウム粒子は、粒子径が5nmから100nmの範囲であり、透明導電膜用としては特に好ましい範囲である粒子径を有する。粒子径がこれより小さいと、粒子同士の凝集力が極端に強くなり、分散させることが困難となる。また、これより大きいと、分散・塗布した際に塗膜の透明性が低下してしまう。これらの理由から、複合化酸化インジウム粒子の平均粒子径は、5〜100nmが好ましく、10〜60nmがより好ましい。
(塗料・シートの作製)
本発明に係る導電性シートは、結合剤と溶剤とを含んだ溶液中に、上記のようにして調製された複合化酸化インジウム粒子を添加し、これらを混合・分散して導電性塗料を作製し、これをシート状の基材上に塗布することによって作製される。次に、この導電性シートの作製について述べる。
基材としては、例えば樹脂フィルムまたはシートを用いることができる。樹脂フィルムまたはシートは、例えば、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂等の樹脂を、押し出し成形、カレンダ成形、圧縮成形、または射出成形等により溶融成形する方法や、溶剤に溶解させてキャスティングする方法等の公知の方法により、製造することができる。基材の厚みは10μm〜5mm程度であることが好ましい。なお、これらの基材に、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。さらに、膜の密着性を向上させるために、基材表面に易接着層(プライマー)を設けたり、またはコロナ処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を行っても良い。
複合化酸化インジウム粒子と結合剤とを含んだ分散体を作製する際の分散機は、特に限定されるものではなく、三本ロールミル、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散等、公知の分散機が使用できる。
複合化酸化インジウム粒子と結合剤の比率は、塗料中の固形分の重量含率50〜99%が好ましく、より好ましくは70〜92%(すなわち、結合剤100重量部に対して、複合化酸化インジウム粒子が100〜9900重量部が好ましく、より好ましくは230〜1150重量部)である。重量含率が50%より低いと、粒子同士の接触確率が低下し導電パスの形成がなされにくいため、導電性が低下すると共に、粒子が膜中の十分な物理的体積を占めることができないために、紫外線遮蔽性も低下する。一方、重量含率が99%以上になると、結合剤と粒子の結着性が低下し、粉落ちや膜のひび割れが生じたり、塗膜と基材との密着性の低下が生じたりし、結果として塗膜としての導電性が低下する。また、複合化酸化インジウム粒子と共に、他の導電性物質(例えば、Au、Agなどの金属、金属コロイド、カーボンナノチューブ等)を、結合剤中に光学特性が低下しない程度に添加した場合でも、導電性物質の重量含率は、上記の範囲であることが好ましい。
結合剤(高分子バインダ)としては、分散を阻害しないのであれば水系、非水系を問わず、あらゆる結合剤を使用することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリブチラール等およびこれらの樹脂を共重合させた樹脂を使用することができる。また、必要に応じて官能基を有した結合剤や、ポリチオフェン誘導体(PEDOT)、N、N−ジ(ナフタレン−1−ニル)−N、N−ジフェニル−ベンジデン誘導体(NPB)、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1、4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)などの導電性高分子材料を使用することも可能である。また、塗料安定性を高めるために、光学特性および導電性に影響がない程度に公知の分散剤、界面活性剤、レベリング剤等を添加しても良い。
導電性塗料に使用する溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を挙げることができる。これらは単独で、もしくは任意の比率で混合して使用できる。
上記のような複合化酸化インジウム粒子と結合剤と溶剤とを含有してなる塗料をシート状の基材上に塗布することにより、紫外線遮蔽性をもった透明な導電性塗膜を表面に有する導電性シート(透明な基材を使用した場合には透明な導電性シート)が得られる。この場合の塗工法としては、公知の塗工法(ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、マイクログラビアコート)や印刷法(グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷)等を用いることができる。
塗膜の乾燥膜厚は、50nm〜15μmが好ましく、500nm〜5μmがより好ましい。乾燥膜厚が50nmより薄いと十分な導電性、紫外線遮蔽性が得られず、15μm以上になると、塗膜の可視光透過率が悪くなり透明性が低下したり、塗膜にひび割れが生じる恐れがあるため、好ましくない。
また、作製した塗膜に対してカレンダ処理を施すことにより、塗膜の導電性、可視光透明性を向上させることできる。その場合のカレンダ処理条件は、処理速度1m/分〜30m/分、熱処理温度は、樹脂(前記結合剤として使用した樹脂)のガラス転移温度(Tg)に対し、Tg±50℃の範囲内、加圧条件は面圧力9.8×10〜9.8×10Pa(1〜100kg/cm)の範囲である。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。なお、以下の実施例および比較例における「部」は、特に断らない限り「重量部」を示す。
【実施例1】
(複合化酸化インジウム粒子の作製)
15.4gの水酸化ナトリウムを800mlの水に溶解した後、このアルカリ溶液に3gの塩化スズ(IV)五水和物を溶解し、アルカリ水溶液を調整した。このアルカリ水溶液に、13gの酸化亜鉛粉末を混合した。これとは別に、35gの塩化インジウム(III)四水和物を400mlの水に溶解して、塩化インジウムの水溶液を作製した。前者のスズイオンと酸化亜鉛とを含むアルカリ水溶液に、後者の塩化インジウム溶液を滴下して、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された酸化亜鉛の沈殿物を作製した。このときのpHは8.8であった。さらに、このスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された酸化亜鉛の沈殿物を室温で懸濁液の状態で約20時間熟成させた。
次に、この沈殿物を含む懸濁液に水酸化ナトリウムの水溶液を添加して、pHを10.0に再調整し、オートクレーブに仕込み、180℃で4時間、水熱処理を施した。
得られた水熱処理生成物をpH7.8になるまでろ過洗浄し、90℃で空気中乾燥した後、乳鉢で軽く解砕し、空気中600℃で2時間の加熱処理後、250℃、水素雰囲気中で還元処理を行って酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとの複合化粒子である複合化酸化インジウム粒子とした。
得られた複合化酸化インジウム粒子について、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、粒子径が20〜30nmの粒子であることがわかった。この粒子の組成は、仕込み量から(ZnO)0.5(ITO)0.5で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の亜鉛およびスズの含有量はそれぞれ、50mol%および5mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
図1に、この複合化酸化インジウム粒子のX線回折スペクトルを示し、図2に該粒子を30万倍で撮影した透過型電子顕微鏡写真を示す。透過型電子顕微鏡写真による粒子形状が均一であるのに対し、X線回折スペクトルは酸化インジウムと酸化亜鉛との2相から構成されていることを示しており、スズ含有酸化インジウムが酸化亜鉛を被覆していることがわかる。
(塗膜作製)
次に、この複合化酸化インジウム粒子粉を用い、以下の塗布液成分を攪拌、混合した後、ペイントシェイカーを用いて 25分間分散させて塗布液を調整した。
・複合化酸化インジウム粒子 85部
・ポリメタクリル酸メチルアクリレート 15部
(三菱レイヨン(株)製BR113)
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
この塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)製の透明なシート状の基材に、バーコーターを使用して乾燥後の厚さが3μmになるように塗布し、乾燥させることにより、表面に紫外線遮蔽導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例2】
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、アルカリ水溶液に酸化亜鉛を混合せずに、亜鉛に対して10mol%のアルミニウムで置換されたアルミニウム置換酸化亜鉛を混合して、アルカリ水溶液を調整した以外は、実施例1と同様にして、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛を含有する沈殿を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から{(Zn0.9Al0.1)O}0.5(ITO)0.5で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、45mol%、5mol%、5mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところスズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛の2相になっていることがわかった。さらに、透過電子顕微鏡観察を行ったところ実施例1と同様、粒子径が20〜30nmの一様な粒子であったことから、実施例1と同様に、スズ含有酸化インジウムがアルミニウム置換酸化亜鉛を被覆していることがわかった。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例3】
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、24.7gの水酸化ナトリウムを800mlの水に溶解した後、このアルカリ溶液に4.8gの塩化スズ(IV)五水和物を溶解し、アルカリ水溶液を調整した。このアルカリ水溶液に、13gの酸化亜鉛粉末を混合する代わりに、亜鉛に対して10mol%のアルミニウムで置換されたアルミニウム置換酸化亜鉛を5g混合した。これとは別に、56.1gの塩化インジウム(III)四水和物を400mlの水に溶解して、塩化インジウムの水溶液を作製した後、実施例1と同様にして、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛を含有する沈殿を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から{(Zn0.9Al0.1)O}0.2(ITO)0.8で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、18mol%、2mol%、8mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところスズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛の2相になっていることがわかった。さらに、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、実施例1と同様、粒子径が20〜30nmの一様な粒子であったことから、実施例1と同じくスズ含有酸化インジウムがアルミニウム置換酸化亜鉛を被覆していることがわかった。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例4】
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、アルカリ水溶液に0.32gの水酸化酸化アルミニウムを混合し、アルカリ水溶液を調整した以外は実施例1と同様にして、スズ、インジウムおよびアルミニウムから成る水酸化物あるいは水和物に被覆された酸化亜鉛の沈殿物を作製した後、熟成、水熱処理を行い、ろ過洗浄、乾燥、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から(ZnO)0.5{(ITO)0.96Al0.040.5で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、50mol%、2mol%、4.8mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子径が20〜30nmの一様な粒子であった。さらに、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られ、アルミニウムに関するピークが独立して見られなかったことから、スズ含有酸化インジウム粒子がアルミニウムで置換され、アルミニウム置換スズ含有酸化インジウムで酸化亜鉛が被覆されていることがわかった。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例5】
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、アルカリ水溶液に酸化亜鉛を混合せずに、10mol%のアルミニウムで置換されたアルミニウム置換酸化亜鉛を混合し、さらに0.32gの水酸化酸化アルミニウムを混合し、アルカリ水溶液を調整した以外は実施例1と同様にして、スズ、インジウムおよびアルミニウムから成る水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛の沈殿物を作製した後、熟成、水熱処理を行い、ろ過、洗浄、乾燥、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から{(Zn0.9Al0.1)O}0.5{(ITO)0.96Al0.040.5で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、45mol%、7mol%、4.8mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例2と同様のスペクトルが得られ、アルミニウムに関するピークが独立して見られないことから、アルミニウム置換スズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛の2相になっていることがわかった。さらに、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子径が20〜30nmの一様な粒子であったことから、アルミニウム置換スズ含有酸化インジウムで被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛粒子が得られたことがわかった。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例6】
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、24.7gの水酸化ナトリウムを800mlの水に溶解した後、このアルカリ溶液に4.8gの塩化スズ(IV)五水和物を溶解し、アルカリ水溶液を調整した。このアルカリ水溶液に、13gの酸化亜鉛粉末を混合する代わりに、亜鉛に対して10mol%のアルミニウムで置換されたアルミニウム置換酸化亜鉛を5g混合し、さらに0.51gの水酸化酸化アルミニウム粉末を混合した。これとは別に、56.1gの塩化インジウム(III)四水和物を400mlの水に溶解して、塩化インジウムの水溶液を作製した後、実施例1と同様にして、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛を含有する沈殿を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から{(Zn0.9Al0.1)O}0.2{(ITO)0.96Al0.040.8で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、18mol%、5.2mol%であり、スズ含有量は7.7mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところアルミニウム置換スズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛の2相になっていることがわかった。さらに、透過電子顕微鏡観察を行ったところ実施例1と同様、粒子径が20〜30nmの一様な粒子であったことから、アルミニウム置換スズ含有酸化インジウムで被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛粒子が得られたことがわかった。この複合化酸化インジウム粒子の透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例7】
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、スズイオンと酸化亜鉛を含むアルカリ水溶液に塩化インジウム溶液を滴下して、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆された酸化亜鉛の沈殿物を作製し、これを室温で懸濁液の状態で約20時間熟成させる代わりに、90℃で懸濁液の状態で約20時間熟成させた。
次に、この沈殿物の懸濁液に水酸化ナトリウムの水溶液を添加して、pHを10.0に調整する代わりに13.0に調整し、オートクレーブに仕込み、180℃で4時間、水熱処理を施した以外は、実施例1と同様にして、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛を含有する沈殿物を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成、および蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量は、実施例1と同じであった。
この複合化酸化インジウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様、スズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛の2相になっていることがわかった。さらに、透過電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子径が50〜60nmの一様な粒子であったことから、スズ含有酸化インジウムがアルミニウム置換酸化亜鉛を被覆していることがわかった。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例8】
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、アルカリ水溶液に酸化亜鉛を混合せずに、10mol%のアルミニウムで置換されたアルミニウム置換酸化亜鉛を混合し、さらに0.32gの水酸化酸化アルミニウムを混合し、アルカリ水溶液を調整し、実施例1と同様にして、スズ、インジウムおよびアルミニウムから成る水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛の沈殿物を作製した後、懸濁液のpHを5.0に調整し、室温で20時間熟成を行い、pH5.0の条件下で水熱処理を行い、ろ過、洗浄、乾燥、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から{(Zn0.9Al0.1)O}0.5{(ITO)0.96Al0.040.5で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、45mol%、7mol%、4.8mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例2と同様のスペクトルが得られ、アルミニウムに関するピークが独立して見られないことから、アルミニウム置換スズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛の2相になっていることがわかった。さらに、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子径が40〜50nmの一様な粒子であったことから、アルミニウム置換スズ含有酸化インジウムで被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛粒子が得られたことがわかった。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
【実施例9】
実施例6の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、アルカリ溶液の温度を60℃に保ったままスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛を含有する沈殿物を生成させた後、懸濁液のpHを5.0に調整し、室温で熟成し、水熱処理を施した以外は実施例6と同様にして、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から{(Zn0.9Al0.1)O}0.2{(ITO)0.96Al0.040.8で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、18mol%、5.2mol%であり、スズ含有量は7.7mol%で、ITO中のスズ濃度は10mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところアルミニウム置換スズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛の2相になっていることがわかった。さらに、透過電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子径が40〜60nmの一様な粒子であったことから、アルミニウム置換スズ含有酸化インジウムで被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛粒子が得られたことがわかった。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
[比較例1]
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、あらかじめ塩化スズを溶解したアルカリ溶液に、塩化インジウム溶液を滴下し、スズとインジウムを含む水和物あるいは水酸化物を熟成後、水熱処理を行い実施例1と同様にして、ろ過洗浄、乾燥した後、加熱処理、還元処理して、スズ含有酸化インジウム粒子を作製した。
このスズ含有酸化インジウム粒子は、X線回折の結果から、スズ含有酸化インジウムとなっていることが認められ、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子径が40〜70nmの四角板状の粒子であった。また、蛍光X線分析法により調べたスズ含有量は10mol%であった。
次に、この粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
[比較例2]
53gの水酸化ナトリウムを640mlの水に溶解してアルカリ水溶液を調整した。これとは別に、90gの塩化亜鉛を320mlの水に溶解して、塩化亜鉛の水溶液を作製した。前者のアルカリ水溶液に、後者の塩化亜鉛溶液を滴下して、亜鉛の水酸化物あるいは水和物の沈殿物を作製した。このときのpHは12.3であった。さらに、この亜鉛の水酸化物あるいは水和物の沈殿物を室温で懸濁液の状態で約20時間熟成させた後、水酸化ナトリウムの水溶液を添加して、pHを12.5に再調整し、オートクレーブに仕込み、180℃で4時間、水熱処理を施した。得られた水熱処理生成物をpH7.8になるまでろ過洗浄し、90℃で空気中乾燥したのち乳鉢で軽く解砕し、空気中600℃で2時間の加熱処理を行って酸化亜鉛粒子とした。
次に、前記で得られた酸化亜鉛粒子と、比較例1で得られたスズ含有酸化インジウム粒子とを、モル比で1対1となるように混合し、酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムの混合粉を作製した。蛍光X線分析法で測定した構成元素量は、実施例1の結果と同様であった。
次に、この酸化亜鉛粒子とスズ含有酸化インジウム粒子との混合粉を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
[比較例3]
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、アルカリ水溶液に塩化スズを溶解せずに、アルカリ水溶液を調整した以外は、実施例1と同様にして、インジウムから成る水酸化物あるいは水和物に被覆された酸化亜鉛の沈殿物を作製した後、熟成、水熱処理を行い、ろ過洗浄、乾燥、加熱処理、還元処理して、複合化酸化インジウム粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から(ZnO)0.5(InO3/20.5で表されると考えられる。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛の含有量は50mol%であった。
この複合化酸化インジウム粒子について、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子径が20〜30nmの一様な粒子であった。さらに、X線回折スペクトルを測定したところ、酸化亜鉛と酸化インジウムの2相から構成されていた。
次に、この複合化酸化インジウム粒子を用い、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
[比較例4]
実施例1の複合化酸化インジウム粒子の合成方法において、酸化亜鉛の代わりに、40mol%のアルミニウムで置換されたアルミニウム置換酸化亜鉛を混合し、さらに3.2gの水酸化酸化アルミニウムを混合して、アルカリ水溶液を調整した以外は、実施例1と同様にして、スズとインジウムの水酸化物あるいは水和物で被覆されたアルミニウム置換酸化亜鉛を含有する沈殿物を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理、還元処理して、粒子を作製した。この粒子の組成は、仕込み量から{(Zn0.6Al0.4)O}0.5{(ITO)0.6Al0.40.5で表される。また、蛍光X線分析法で調べた粒子中の、亜鉛、アルミニウムおよびスズの含有量はそれぞれ、30mol%、40mol%、3mol%で、ITO中のスズ含有量は10mol%であった。
この粒子について、X線回折スペクトルを測定したところスズ含有酸化インジウムとアルミニウム置換酸化亜鉛に加えて、γ−酸化アルミニウムの構造が現れ、3相に分離していることがわかった。さらに、透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、実施例1と同様の粒子径が20〜30nmの粒子と、酸化アルミニウムと見られる粒子径40〜50nmの四角板状粒子との混合物であった。
次に、この粒子を用いて、実施例1と同様にして表面に乾燥後の厚さが3μmの導電性塗膜を有する導電性シートを作製した。
表1に、上記の各実施例および比較例で得られた粒子の構成をまとめて示す。

《評価》
(粉末体積抵抗率)
各実施例および比較例でそれぞれ得られた粒子について、体積抵抗率を調べた。体積抵抗率は、三菱化学株式会社製のロレスタPAシステム(MCP−PD41)を用いて、四端子法により測定した。測定条件は、粉体密度2.7g/cm・容器内径2cm・端子間距離3mmである。
(塗膜表面抵抗率)
各実施例および比較例でそれぞれ得られた導電性シートにおける導電性塗膜について、表面抵抗率(JIS K7194−1994準拠)を調べた。表面抵抗率は、三菱化学株式会社製のロレスタAPシステム(MCP−PD41)を用いて、四端子法により測定した。
(塗膜透過率)
光透過率の波長依存性を調べるため、実施例5で得られた導電性塗膜について、上記の表面抵抗率評価の際に用いた塗膜と同様のものを用いて、光の波長200〜2500nmの範囲における光透過率スペクトルを、分光光度計(日本分光社製「Ubest V−570型」)を用いて測定した。この光透過率スペクトルを図4に示す。
また、各実施例および比較例でそれぞれ得られた導電性シートにおける導電性塗膜について、上記と同様の測定を行い波長200〜2500nmの範囲における光透過率スペクトルを測定した後、その光透過率スペクトル中、波長350nmにおける透過率の値を読み取った。
表2に、以上の測定結果をまとめて示す。表2では、体積抵抗率の値が小さいほど、導電性が高いことを示しており、導電性塗膜として優れていることを示している。また、紫外線透過率(表2では「350nm透過率」と記載した)の値が小さいほど、紫外線遮蔽性に優れていることを示している。従って、体積抵抗率、紫外線透過率、共に値が小さいものが優れた特性を持つ。

表2から明らかなように、各実施例で得られた複合化酸化インジウム粒子は、比較例1で得られたスズ含有酸化インジウム粒子単体の場合と比べて、酸化亜鉛が含まれているために紫外線遮蔽効果が現れている。
また、各実施例で得られた複合化酸化インジウム粒子は、比較例2で得られたスズ含有酸化インジウム粒子および酸化亜鉛を単に混合した粒子や、比較例3で得られたスズを含有しない複合化酸化インジウム粒子、比較例4で得られた酸化アルミニウムと複合化酸化インジウム粒子との混合物に比べて、紫外線遮蔽性にについては大きな変化が見られないものの、導電性については飛躍的に高い値を示す。これは、比較例2においては、酸化インジウムと酸化亜鉛とが複合化することなく独立に存在しているために、絶縁体である酸化亜鉛が、粉末中の電気伝導を妨げ、各実施例における複合化酸化インジウム粒子の場合と比べて導電性が低下したと考えられる。
比較例3では、酸化インジウムにスズが置換されていないために、被覆体である酸化インジウムに導電性が現れず、そのため、生成した粒子においても導電性が現れていない。比較例4においては、置換するアルミニウムの量が多すぎたため、余剰アルミニウムが酸化アルミニウムとして析出し、導電性が損なわれる結果となっている。一方、各実施例の粒子においては、スズ含有酸化インジウムで酸化亜鉛を被覆することにより、異種粒子が電気伝導を妨げることもなく、表面のスズ含有酸化インジウムを伝い電気伝導が起こる。さらには、適量のアルミニウム置換により、従来のスズ含有酸化インジウム粒子単体(比較例1)の場合と同等以上の導電率を保つことが可能となった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5nm以上100nm以下である、スズおよび亜鉛を含有する複合化酸化インジウム粒子。
【請求項2】
平均粒子径が5nm以上100nm以下であり、酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとを含んでなる複合化酸化インジウム粒子。
【請求項3】
平均粒子径が5nm以上100nm以下であり、それぞれの結晶構造を保持した酸化亜鉛とスズ含有酸化インジウムとを含んでなり、圧力14.7MPa(150kgf/cm)下の圧粉体の体積抵抗率が10−3〜10Ωcmであることを特徴とする複合化酸化インジウム粒子。
【請求項4】
酸化亜鉛がスズ含有酸化インジウムで被覆されている、請求項2または3記載の複合化酸化インジウム粒子。
【請求項5】
酸化亜鉛の含有量が5〜70mol%である、請求項2〜4のいずれかに記載の複合化酸化インジウム粒子。
【請求項6】
スズ含有酸化インジウム相に含まれるスズの含有量が3〜30mol%である、請求項2〜5のいずれかに記載の複合化酸化インジウム粒子。
【請求項7】
酸化亜鉛およびスズ含有酸化インジウムの少なくとも一方に含まれる金属元素の一部がアルミニウムおよびガリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素により置換されている、請求項2〜6のいずれかに記載の複合化酸化インジウム粒子。
【請求項8】
アルミニウムおよびガリウムからなる群からら選ばれる少なくとも1種の元素の含有量が0〜30mol%である、請求項7記載の複合化酸化インジウム粒子。
【請求項9】
酸化亜鉛中の亜鉛原子の一部がアルミニウムおよびガリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素により置換されており、当該置換元素の含有量が、酸化亜鉛相中の亜鉛元素に対して0〜30mol%である、請求項7記載の複合化酸化インジウム粒子。
【請求項10】
スズ含有酸化インジウム中のスズまたはインジウム原子の一部がアルミニウムおよびガリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素により置換されており、当該置換元素の含有量が、スズ含有酸化インジウム相中のスズおよびインジウム元素の総量に対して0〜10mol%である、請求項7記載の複合化酸化インジウム粒子。
【請求項11】
溶解されたスズ塩を含むアルカリ水溶液に、亜鉛を主成分とする亜鉛化合物を加え、この亜鉛化合物含有スズ塩水溶液にインジウム塩の水溶液を添加し、得られたスズとインジウムの水酸化物あるいは水和物の沈殿物を含む懸濁液のpHを4〜12の範囲になるように調整した後、該懸濁液を水の存在下で110〜300℃の温度範囲で加熱処理し、ろ過、乾燥後、さらに空気中300〜1000℃の温度範囲で加熱処理し、次いで、還元雰囲気中150〜400℃の温度範囲で加熱処理することを特徴とする、複合化酸化インジウム粒子の製造方法。
【請求項12】
前記亜鉛化合物含有スズ塩水溶液にインジウム塩の水溶液を添加する工程において、さらにアルミニウム化合物およびガリウム化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を、亜鉛化合物含有スズ塩水溶液に添加する、請求項11記載の複合化酸化インジウム粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれかに記載の複合化酸化インジウム粒子と、結合剤と、溶剤とを含んでなる導電性塗料。
【請求項14】
請求項13に記載した導電性塗料を塗布し、乾燥してなる導電性塗膜。
【請求項15】
シート状の基材と、その上に塗布形成された透明な導電性塗膜とを有し、このうちの導電性塗膜に、請求項1〜10のいずれかに記載の複合化酸化インジウム粒子が含有されてなる導電性シート。

【国際公開番号】WO2004/089829
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505224(P2005−505224)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004655
【国際出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】