説明

複合化高分子電解質膜

【課題】イオン伝導性、耐熱性、機械的強度に優れ、乾湿寸法変化が低減された複合化高分子電解質膜を提供する。
【解決手段】イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層を含み、該複合化層のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量が20重量%以上95重量%以下である複合化高分子電解質膜とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池等の電気化学装置に使用する複合化高分子電解質膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも高分子電解質型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
【0003】
高分子電解質型燃料電池は、たとえば、2つのセパレータの間に膜電極接合体を挟んでセルを形成し、複数のセルをスタックしたものである。膜電極接合体は、触媒層を有するアノードおよびカソードと、アノードとカソードとの間に配置される高分子電解質膜とから構成される。高分子電解質膜には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボンポリマー等のフッ素系イオン伝導性ポリマーが適用されており、将来の高分子電解質型燃料電池の普及期を見据え、低コスト、低環境負荷が期待できる点からスルホン酸基を有する芳香族ポリエーテルエーテルケトンや芳香族ポリエーテルケトンおよび芳香族ポリエーテルスルホンなどの炭化水素系イオン伝導性ポリマーについても活発に検討がなされてきた。そして、高分子電解質膜には、プロトン伝導性が高いことが求められている。
【0004】
この高分子電解質膜のプロトン伝導性を高めるためには、高分子電解質膜を薄くするか、イオン性基密度を高めることが好ましい。しかし、高分子電解質膜を薄くすると、該膜の機械的強度が低下し、膜電極接合体を製造する際に、加工しにくくなったり、取り扱いにくくなったりする。
【0005】
また、反応により生成した水や、燃料ガスとともに供給される水蒸気等により高分子電解質膜が膨潤し、高分子電解質膜は、セパレータ等で拘束されているため、高分子電解質膜の寸法増大分は局部的な応力集中の原因となる。そして、燃料電池の作動条件によっては逆に高分子電解質膜が乾燥収縮する。この膨潤・乾燥収縮のサイクル(乾湿サイクル)の寸法変化で高分子電解質膜が破損し発電性能の低下や故障の原因となる場合がある。ここで、イオン性基密度を高めた高分子電解質膜は、含水時に該膜の長さ方向に寸法が増大しやすい。
【0006】
また特に、自動車用燃料電池や家庭用燃料電池などは実用化に向けての低コスト化が検討されており、水管理システムの簡素化のために、80℃を越える高温で相対湿度60%以下の低加湿条件下で作動することが望まれており、高温・低加湿発電性能が要求されている。
【0007】
そこで、機械的強度と乾湿サイクルの寸歩変化抑制の観点から、特許文献1,2に開示されるように電解質膜をポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールからなる多孔質材料や繊維不織布で補強した複合化高分子電解質膜が提案されており、また、特許文献3にはスルホン化された高分子多孔体を使用した複合膜、特許文献4にはフッ素系多孔質フィルムに高イオン性基密度の高分子電解質を充填する複合膜の組み合わせ例が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−73495号公報
【特許文献2】特開2008−251314号公報
【特許文献3】特開2003−203648号公報
【特許文献4】国際公開第2010/082623号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは以下の課題があることを見出した。
【0010】
まず、特許文献1、2に記載の複合高分子電解質膜は高分子電解質以外の複合材料が、それぞれポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールからなる多孔質材料や繊維不織布であるため、複合高分子電解質膜としての耐熱性が不十分である。また、ポリビニルアルコールは酸により劣化しやすいため、高イオン性基密度の高分子電解質には適していない。
【0011】
また、燃料電池システム設計の観点からは発電性能が突然低下するより、徐々に性能が低下する方が好ましく、複合高分子電解質膜の劣化パターンが燃料電池セルの劣化パターンに関係が深いと考えているが、特許文献1、2記載の複合高分子電解質膜では発電耐久性試験において発電性能が突然低下する現象が起こりやすい。
【0012】
その原因としては、複合高分子電解質膜のピンホールが成長し燃料の遮断が不十分になった場合に、触媒と燃料の反応や熱の影響により高分子電解質が劣化し、さらにピンホールが成長し空気極と燃料極が短絡することが考えられる。特許文献1、2記載の複合材料は高分子電解質と同様に劣化することから発電性能の突然低下の防止が困難である。
【0013】
一方、特許文献3に記載は補強材としてスルホン化された高分子多孔体を使用することによって、イオン伝導抵抗の増大を防止し、かつ耐久性が向上する技術の提案がなされているが、明細書に記載されている材料では、例えば自動車用燃料電池や家庭用燃料電池などは実用化に向けての、80℃を越える高温で相対湿度60%以下の低加湿条件下で作動する燃料電池には発電性能が不十分であった。特許文献4では、明細書中にフッ素系多孔質フィルムに高イオン性基密度の高分子電解質を充填する複合膜の組み合わせ例が例示されているものの、具体的な複合化層の組成などが記載されておらず、低加湿条件下で作動する燃料電池の発電性能と耐久性の両立は困難と推測される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の複合化高分子電解質膜は、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層を含み、該複合化層のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量が20重量%以上95重量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
発明の複合化高分子電解質膜は、プロトン伝導性が優れ、乾湿サイクルでの寸法変化が小さく、機械的強度が向上できるため、高温・低加湿発電性能が優れ、発電耐久性に優れ、突然性能が低下することが起こりにくい燃料電池が実現できる。特に自動車用や家庭用燃料電池など80℃を越える高温で相対湿度60%以下の低加湿条件下で作動する燃料電池用途に最適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態の詳細を説明する。
【0017】
本発明の複合化高分子電解質膜は、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層を有するが、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料は複合化高分子電解質膜の高弾性率、高強度、高耐熱、高ガスバリア性を付与する役割を果たし、含フッ素高分子多孔質体は高靱性、寸法変化の低減の役割を果たす。
【0018】
また、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量が20重量%以上95重量%以下であることが必要である。該複合化層のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料を20重量%以上95重量%以下とすることで、はじめて、前記した両者の役割のバランスがとれ、プロトン伝導性と乾湿サイクルでの寸法変化が小さく、機械的強度が向上するとともに、燃料電池用に電解質膜として使用したときに、発電性能に優れ、かつ耐久性に優れた燃料電池が実現できる。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は30重量%以上が好ましく、また、75重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。
【0019】
また、自動車用や家庭用燃料電池など80℃を越える高温で相対湿度60%以下の低加湿条件下で作動する燃料電池用途には含フッ素高分子多孔質体がイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなることが、プロトン伝導性の観点から好ましい。
【0020】
また、本発明の複合化高分子電解質膜の膜構成として、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層の外側にイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料からなる層やイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる層を有することも好ましく、電極触媒層と複合化高分子電解質膜の界面抵抗を低減し、発電性能が向上する傾向にある。
【0021】
まず、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料について説明する。本発明のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料としては、イオン性基含有ポリフェニレンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリフェニレンスルフィド、イオン性基含有ポリアミド、イオン性基含有ポリイミド、イオン性基含有ポリエーテルイミド、イオン性基含有ポリイミダゾール、イオン性基含有ポリオキサゾール、イオン性基含有ポリフェニレンなどが挙げられる。これらは単独でも複数の混合でもよい。また、ランダム共重合体でもよいし、イオン性基を有するユニットと有さないユニットのそれぞれのユニット長を制御したブロック共重合体でもよい。イオン伝導性の観点からブロック共重合体が好ましい。ここでの、イオン性基については、負電荷を有する原子団であれば特に限定されるものではないが、プロトン交換能を有するものが好ましい。
【0022】
このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。かかるイオン性基は塩となっている場合を含むものとする。前記塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR(Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。
【0023】
好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Al、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、W、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、中でも、安価で、溶解性に悪影響を与えず、容易にプロトン置換可能なNa、Kがより好ましく使用される。また、イオン性基は金属塩以外にエステルなどに置換されていてもよい。
【0024】
これらのイオン性基は前記高分子中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、プロトンの乖離性が高く、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
【0025】
近年、自動車用燃料電池や家庭用燃料電池など本格普及のためには水管理システムの簡素化が重要と考えられ、発電条件が80℃を越える高温で相対湿度60%以下の低加湿条件下となる場合がある。従って、このような高温低加湿化で十分な発電性能を発揮するためには、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料のイオン性基密度は1.5mmol/g以上が好ましく、2.0mmol/g以上がさらに好ましい。
【0026】
特に好ましいイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料としては、80℃を越える高温での湿潤状態を想定した耐熱水性およびプロトン伝導性の観点から、イオン性基含有ポリエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルスルホン、イオン性基含有ポリフェニレンスルフィドを挙げることができる。
【0027】
上記イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料を溶液にして製膜する場合に使用する溶媒も特に制限はなく、上記イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料によって選択できる。例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられ、単独でも二種以上の混合物でもよい。
【0028】
また、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の粘度調整にメタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、パークロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化炭化水素系溶媒、水などの各種低沸点溶剤も混合して使用できる。
【0029】
また、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料が溶媒に溶けにくい場合、可溶性付与基を導入することも可能である。イオン性基含有ポリエーテルケトンを例に挙げて説明すると、ケトン部位をアセタールまたはケタール部位で置換し可溶性付与基とする方法、ケトン部位をアセタールまたはケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオアセタールやチオケタールで置換し可溶性付与基とする方法が挙げられる。該可溶性付与基は後で述べる酸処理や加熱処理で加水分解してケトンにもどし、イオン性基含有ポリエーテルケトンとする。
【0030】
次に含フッ素高分子多孔質体について説明する。
【0031】
本発明中の多孔質体とはイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と複合化できる形状であれば特に制限は無い。そのような形状としては、例えば、フィルム状、フィブリル状、織布状、不織布状、スポンジ状、粒状、ウイスカ状等がある。
【0032】
含フッ素高分子多孔質体の空隙率や厚みは特に制限はないが、空隙率30〜95%が得られた複合化高分子電解質膜のプロトン伝導性と強度のバランスの観点から好ましい。複合化高分子電解質膜の用途によって決めることであるが、5〜100μmが実用的に採用される膜厚である。
【0033】
含フッ素高分子多孔質体を形成する含フッ素高分子材料としては炭化水素のHがFに置き換わった部位があれば特に制限がないが、Hの50%以上がFに置き換わったポリマーが好ましい。例えば、テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、クロロトリフロロエチレン、パーフロロアルコキシビニルエーテルの如きパーフロロオレフィンの単独又は共重合体が例示される。
【0034】
その具体例としてはポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリテトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン(FEP)、ポリテトラフロロエチレン−パーフロロプロピルビニルエーテル(PFA)、ポリクロロトリフロロエチレン、ポリテトラフロロエチレン−パーフロロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール、ポリパーフロロブテニルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
また、これらにイオン性基を導入した含フッ素高分子材料も好ましく使用できる。含フッ素高分子材料にイオン伝導性を付与する方法は無水硫酸、発煙硫酸、発煙硫酸/リン酸トリエチル錯体、クロル硫酸、硫酸等で処理する方法が挙げられる。含フッ素高分子材料の中までイオン伝導性を付与するため加熱してもよい。イオン性基を導入は含フッ素高分子材料にイオン性基を導入後、多孔質体に成形してもよいし、含フッ素高分子多孔質体としてから上記方法でイオン性基を導入してもよい。
【0036】
例えば含フッ素高分子多孔質体がイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる多孔質フィルムの場合は後者の方が汎用品を使用できるのでコスト的に有利であり、イオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる平均繊維径10μm以下の不織布の場合は両者を選択でき、繊維径の制御等による空隙率の制御が多孔質フィルムより容易にできるため好ましい。
【0037】
イオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料を不織布として使用する場合は、直径10μm以下の繊維を主体とすることが好ましい。ここでの主体とは電子顕微鏡などで観察した場合、観察視野内の繊維の50%以上を占めるという意味である。10μm以下の繊維を主体とすることで複合化高分子電解質膜の薄膜化が可能でありプロトン伝導性の観点から好ましい。
【0038】
また、繊維径が10μm以上の繊維のみからなる不織布では、複合化高分子電解質膜を薄膜化するためには、繊維の重なりを減らす、すなわち単位面積あたりの繊維量を低く設計することになるが、必然的に繊維間の距離が広がり、最大孔径が大きくなり、膜厚方向でみると局所的に複合化されていない部分が生じる場合がある。その部分は、複合化高分子電解質膜の厚みによっては、複合化高分子電解質膜の劣化のトリガーとなる可能性があるので、この現象を防止する目的として、平均径10μm以下の繊維を主体とすることが好ましい。特に10μm以下の繊維を主体とする不織布が、複合化高分子電解質膜の厚みの増大によるプロトン伝導性の低下を抑制でき、かつ膜厚方向に複合化されていない部分を低減することができる。またプロトン伝導性の均一化の観点から5μm以下の繊維を含むことがより好ましく、1μm以下の繊維がさらに好ましい。
【0039】
例えば5μm以下のイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる繊維を主体とする不織布を製造する場合は、生産性の観点から電解紡糸で得られたイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる繊維をターゲット上に直接捕捉、集積する不織布化する方法が挙げられる。電解紡糸とは、紡糸原液に高電圧を印加することによって電気的に繊維を紡糸する方法である。
【0040】
イオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料の電解紡糸で使用する溶媒は、溶解性や取り扱い性の面からN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミドなどの有機極性溶媒、水やアルコール類、メチルセロソルブ類、テトラヒドロフラン、トルエンなどが挙げられる。また、紡糸原液の延伸性を付与する目的で、エチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールの添加も好ましい。上記紡糸原液を用いた電解紡糸工程は特に制限はなく通常公知の方法、設備が使用できる。通常の不織布設備を用いて直径5μm以下の繊維を主体とする不織布を製造することは、条件的にも厳しく、原料の粘度、延伸性等、多くの制約がある。一方、電解紡糸法は、紡糸原液を用いた紡糸法であるため、その乾燥過程において体積収縮が起こること、および紡糸原液が低粘度あるため、極細ノズルでの成形が可能であることにより、直径5μm以下の連続繊維を得やすい。
【0041】
得られたイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる繊維を不織布化する工程についても、電解紡糸工程においては、紡糸原液からの固化と延伸による紡糸とが同時に、または逐次的に起こるため、紡糸した繊維をターゲットに直接捕捉することで繊維同士が結合した不織布として得ることができる。 電解紡糸以外でも含フッ素高分子材料をレーザーで局所的に加熱しジェット気流や吸引によりで繊維を延伸補足して不織布とする方法も利用できる。
【0042】
また、得られた繊維を短繊維としフリースを形成し、通常の乾式方や水中に分散して抄紙工程など不織布化する湿式法で不織布化してもよい。その場合はフリースを結合する方法として、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法なども利用できる。
【0043】
また、イオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料として、市販のNafion(登録商標:米国Dupont社製)、Aciplex(登録商標:旭化成工業社製)、Flemion(登録商標:旭硝子社製)等を使用して、多孔質体や不織布に加工してもよい。
【0044】
また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ化ビリデンと六フッ化プロピレンの共重合体などの特定の有機溶媒に可溶な含フッ素ポリマーを電解紡糸や湿式凝固法などで、不織布や微多孔膜などの含フッ素高分子多孔質体とした後、フッ素(F)を含む気体と接触させ、少なくともポリマー中の水素の一部をフッ素に置換することで、溶媒に不溶な含フッ素高分子多孔質体とすることができる。
【0045】
例えば、PVDFをN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒に溶解する工程、該PVDF溶液を電解紡糸する工程、該電解紡糸した繊維を捕集しPVDF不織布とする工程、該PVDF不織布とFを含む気体を接触させる工程をこの順で含むことで、少なくともPVDFの水素の一部分がフッ素に置換された構造、つまりPTFE(ポリテトラフロロエチレン)を含む不織布を得ることができる。
【0046】
PTFEを含む不織布はN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒に対する耐性が向上し、前記イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料を溶液にして含フッ素高分子多孔質体と複合製膜する場合に好適に使用できる。
【0047】
PVDF溶液を電解紡糸して不織布化することで、平均繊維径10μm以下、より好ましくは1μm以下のナノファイバーからなるPVDF不織布の製膜が可能で、紡糸時間や電解紡糸のノズル数、捕集ライン速度の制御により空隙率や厚みのコントロールができ、かつ、連続した不織布の生産も可能である。このPVDF不織布を前駆体として、Fを含む気体を接触させるため、空隙率、厚みが制御された平均繊維径10μm以下、より好ましくは1μm以下のナノファイバーからなるPTFEを含む不織布が製造可能であり、さらに、従来では製造困難であった、平均繊維径10μm以下、より好ましくは1μm以下のPTFEナノファイバー不織布を得ることができ、本発明の含フッ素高分子多孔質体として特に好ましい材料である。
【0048】
また、前記方法で得られたPTFEナノファイバー不織布は本発明の用途以外、例えば各種フィルター類、二次電池セパレーター、再生医療用途、細胞増殖の足場材などにも使用可能である。 これらの、含フッ素高分子多孔質体とイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料を複合化する方法として、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の溶液、または分散液を含フッ素高分子材料に含浸させた後、乾燥するキャスティング法や、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体を熱溶融により成形する方法、具体的には平板プレス,真空プレス等のバッチ法や連続ロールプレス法等による連続法、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体を混合した後、押出し製膜する方法等が挙げられる。
【0049】
具体的には、含フッ素高分子多孔質体をフィラー、微粒子として複合化する場合はイオン性基を有する電解質膜材料の溶液に該フィラー、微粒子を混合して溶液製膜により製造しても良いし、押し出し機などで溶融混練しペレット化した後、溶融製膜で複合化高分子電解質膜を製造してもよい。
【0050】
また、含フッ素高分子多孔質体が不織布、抄紙、多孔質フィルムの場合は、該含フッ素高分子多孔質体の空隙にイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の溶液を含浸し溶媒を乾燥して複合化高分子電解質膜を製造してもよい。
【0051】
その場合、(1)引き上げながら余剰のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の溶液を除去して膜厚を制御する方法や、(2)含フッ素高分子多孔質体上にイオン性基を有する電解質膜材料の溶液を流延塗布する方法、(3)イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の溶液を流延塗布した別の基材上に含フッ素高分子多孔質体を貼り合わせイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料を含浸させる方法などが挙げられる。また、(1)および(2)の方法でも別の基材に貼り付けてイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料中の溶媒を乾燥する方法が、複合化高分子電解質膜の皺や厚みムラなどが低減でき、膜品位の点で好ましい。
【0052】
一般的に含フッ素高分子材料と芳香族炭化水素系材料は表面エネルギーの差で親和性が低く、含フッ素高分子多孔質体の空隙にイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料が上手く充填できない場合があるが、その場合は含フッ素高分子多孔質体に前述のイオン性基を導入したり、コロナ処理、プラズマ処理、親水コーティング処理などを実施したりして含浸性を高めることができる。特にイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる多孔質フィルムやイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる不織布がイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料との相性の点で好ましい。また、複合化時の含浸性などの製膜および品質の安定性からはイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる不織布や前記PTFEを含む不織布の使用が特に好ましい。
【0053】
複合化高分子電解質膜に使用する別の基材としては通常公知の材料が使用できるが、ステンレスなどの金属からなるエンドレスベルトやドラム、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホンなどのポリマーからなるフィルム、硝子、剥離紙などが挙げられる。金属などは表面に鏡面処理を施したり、ポリマーフィルムなどは塗工面にコロナ処理を施したり、剥離処理をしたり、ロール状に連続塗工する場合は塗工面の裏に剥離処理を施し、巻き取った後に電解質膜と塗工基材の裏側が接着したりするのを防止することもできる。フィルム基材の場合、厚みは特に限定がないが、30μm〜200μmがハンドリングの観点から好ましい。
【0054】
流延塗工方法としては、ナイフコート、ダイレクトロールコート、グラビアコート、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、バキュームダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、リバースコート、スクリーン印刷などの手法が適用できる。含浸時に減圧や加圧、高分子電解質溶液の加温、基材や含浸雰囲気の加温などを実施し含浸性の向上を図ることも、プロトン伝導性の向上や生産性の向上に有効である。
【0055】
本発明で得られる複合化高分子電解質膜の膜厚としては特に制限がなく、通常3〜500μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには3μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには500μmより薄い方が好ましい。膜厚のより好ましい範囲は5〜200μm、さらに好ましい範囲は10〜100μmである。この膜厚は、塗工方法により種々の方法で制御できる。例えば、コンマコーターやダイレクトコーターで塗工する場合は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができ、スリットダイコートでは吐出圧や口金のクリアランス、口金と基材のギャップなどで制御することができる。
【0056】
また、本発明の複合化高分子電解質膜は、スルホン酸基などのイオン性基が金属塩の状態で使用される場合、酸性水溶液と接触させ、金属塩をプロトン交換する工程を有することが好ましい。また、複合化高分子電解質膜を水や酸性水溶液に接触させることにより、製造過程で残留した、膜中の水溶性の不純物、残存モノマー、溶媒、残存塩などが除去可能であり、さらに前述の可溶性付与基を含むイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の場合はこの工程で除去できる。水、酸性水溶液は反応促進のために加熱してもよい。
【0057】
酸性水溶液は硫酸、塩酸、硝酸、酢酸など特に限定されず、温度、濃度等は適宜実験的に選択可能である。生産性の観点から80℃以下の30重量%以下の硫酸水溶液を使用することが好ましい。
【0058】
複合化高分子電解質膜が薄い場合は液体膨潤時の機械的強度が低下し製造時の膜の破断が発生しやすくなり、さらに水および/または酸性溶水液との接触後の乾燥時に皺が入り、表面欠陥が発生しやすくなる。例えば、乾燥時で厚み30μm以下の複合化高分子電解質膜を製造する場合は、基材から膜状物を剥離することなく水および/または酸性溶水液との接触を行なうことが好ましく、厚み20μm以下ではより好ましい。
【0059】
また、本発明の複合化高分子電解質膜中には機械的強度の向上およびイオン性基の熱安定性向上、耐水性向上、耐溶剤性向上、耐ラジカル性向上、塗液の塗工性の向上、保存安定性向上などの目的のために、架橋剤や通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、離型剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、無機微粒子、ポリエーテルケトンやポリフェニレンスルフィドのフィラーまたは微粒子などの添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
【0061】
A.イオン酸基密度
下記手順を5回行い、最大値と最小値を除いた3点の平均値をイオン酸基密度(mmol/g)とする。濃度の単位は重量%、重量の単位はgである。
(1)作製した電解質膜を5cm×5cmに切り取り真空乾燥機にて80℃12時間以上減圧乾燥後、重量(Wm)を正確(小数点下4桁)に測定した。
(2)蓋付きのサンプル瓶に約0.2wt%のKCl水溶液約30ml準備し、KCl水溶液の重量(Wk)とKイオン濃度(C)を測定した。Kイオン濃度は大塚電子製キャピラリー電気泳動装置”CAPI-3300”で測定した。測定条件は下記の通りである。
【0062】
測定方式:落差法(25mm)
泳動液:大塚電子製 陽イオン分析用泳動液5(α-CFI105)
測定電圧:20kV
(3)重量とKイオン濃度既知のKCl水溶液に上記電解質膜を2時間浸漬した。
(4)該KCl水溶液のKイオン濃度(C)を再度キャピラリー電気泳動装置で測定した。測定した値から、下記式に従いスルホン酸基密度を算出した。
スルホン酸基密度(mmol/g)=〔{Wk×(C−C)×1000}/39〕/Wm
B.繊維径の測定方法
光学顕微鏡または走査形電子顕微鏡(SEM)で含フッ素高分子多孔質体(不織布)を観察し、画面上の任意繊維の直径を20箇所計測した平均値で示した。また繊維径が計測困難な場合や複合化高分子電解質膜は下記方法で観察した。
【0063】
60℃で24時間減圧乾燥した複合化高分子電解質膜をカッターで切り出し、電顕用エポキシ樹脂(日新EM社製Quetol812)で包埋し、60℃のオーブン中で48時間かけて該エポキシ樹脂を硬化させた後、ウルトラミクロトーム(ライカ社製Ultracut S)で厚さ約100nmの超薄切片を作製した。
【0064】
作製した超薄切片を応研商事社製100メッシュのCuグリッドに搭載して、日立製透過型電子顕微鏡H-7100FAを使用し加速電圧100kVでTEM観察を行い、繊維径を測定した。
【0065】
C.膜厚
ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定した。
【0066】
D.寸法変化率
電解質膜を6cm×1cmの短冊状に切り出し、長尺側の両端から約5mmのところに標線を記入した(標線間距離5cm)。前記サンプルを温度23℃、湿度45%の恒温槽に2h放置後、素早く2枚のスライドガラスに挟み込み標線間距離(L)をノギスで測定した。さらに、同サンプルを80℃の熱水に2h浸漬後、素早く2枚のスライドガラスに挟み込み標線間距離(L)をノギスで測定し下記式に従い寸法変化率を算出した。
【0067】
寸法変化率(%)=(L−L)/L×100
E.複合化高分子電解質膜の湿潤時の引っ張り強度
JIS K7127に基づいてサンプル片はダンベル2号形の1/2サイズ(試料幅:3.0mm、試料長:16.5mm、つかみ具間40mm)を用い、装置としては恒温恒湿槽付き島津製作所製オートグラフAG-IS 100Nを使用し、200mm/minの速度で試験を行った。測定雰囲気としては80℃相対湿度94%で測定を行った。
【0068】
F.複合化高分子電解質膜を使用した膜電極複合体(MEA)の発電評価
(1)水素透過電流の測定
市販の電極、BASF社製燃料電池用ガス拡散電極“ELAT(登録商標)LT120ENSI”5g/mPtを5cm角にカットしたものを1対準備し、燃料極、酸化極として複合化高分子電解質膜を挟むように対向して重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、評価用MEAを得た。
【0069】
このMEAを英和(株)製 JARI標準セル“Ex−1”(電極面積25cm)にセットし、セル温度:80℃、一方の電極に燃料ガスとして水素、もう一方の電極に窒素ガスを供給し、加湿条件:水素ガス90%RH、窒素ガス:90%RHで試験を行った。OCVで0.2V以下になるまで保持し、0.2〜0.7Vまで1mV/secで電圧を掃引し電流値の変化を調べた。本実施例においては下記の起動停止試験の前後で測定し0.7V時の値を調べた。膜が破損した場合、水素透過量が多くなり透過電流が大きくなる。また、この評価はSolartron製電気化学測定システム(Solartron 1480 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency ResponseAnalyzer)を使用して実施した。
【0070】
(2)耐久性試験
上記セルを使用し、セル温度:80℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件:水素ガス60%RH、空気:50%RHの条件で試験を行った。条件としては、OCVで1分間保持し、1A/cmの電流密度で2分間発電し、最後に水素ガスおよび空気の供給を停止して2分間発電を停止し、これを1サイクルとして繰り返す耐久性試験を実施した。耐久性試験前と3000サイクル後に上記水素透過電流の測定を実施しその差を調べた。また、この試験の負荷変動は菊水電子工業社製の電子負荷装置“PLZ664WA”を使用して行った。
【0071】
(3)低加湿下での発電評価
上記燃料電池セルをセル温度80℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件;アノード側30%RH/カソード30%RH、背圧0.1MPa(両極)において電流−電圧(I−V)測定し、1A/cm2での電圧を読み取った。
G.イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量
光学顕微鏡または走査形電子顕微鏡(SEM)で複合化高分子電解質膜の断面を観察しイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層(複合化層)の厚みをT、複合化層の外側に別の層がある場合はそれらの厚みをT、T、およびそれぞれの層を形成するポリマーの比重をD、D、含フッ素高分子多孔質体を形成するポリマーの面積あたりの重量をW、複合化高分子電解質膜の面積あたりの重量をW、複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の面積当たりの重量Wとすると複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有率Y(重量%)は下式で求めた。
W3={W2−(T1×D1)−(T2×D2)−W1} (式1)
Y=W3/(W3+W1)×100 (式2)
〔合成例1;可溶性付与基を有するモノマー〕
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(G1)の合成
モンモリロナイトクレイK10(150g)、ジヒドロキシベンゾフェノン99gをエチレングリコール242mL/オルトギ酸トリメチル99mL中、生成する副生成物を蒸留させながら110℃で反応させた。18h後、オルトギ酸トリメチルを66g追加し、合成48h反応させた。反応溶液に酢酸エチル300mLを追加し、濾過後、2%炭酸水素ナトリウム水溶液で4回抽出を行った。さらに、濃縮後、ジクロロエタンで再結晶する事により目的の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランを得た。
【0072】
〔合成例2;イオン性基を有するモノマー〕
ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(G2)の合成
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO3)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。
【0073】
〔参考例1;高分子電解質溶液Aの製造例〕
撹拌機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた5Lの反応容器に、合成例1で合成した可溶性付与基を有するモノマー2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン129g、4,4’−ビフェノール93g(アルドリッチ試薬)、および合成例2で合成したイオン性基を含有するモノマーであるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン422g(1.0mol)を入れ、窒素置換後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3000g、トルエン450g、重合安定剤として18−クラウン−6 232g(和光純薬試薬)を加え、モノマーが全て溶解したことを確認後、炭酸カリウム304g(アルドリッチ試薬)を加え、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、200℃で1時間脱塩重縮合を行った。得られたポリマーのイオン性基密度は3.52mmol/gで、重量平均分子量は32万であった。
【0074】
次に重合原液の粘度が0.5Pa・sになるようにNMPを添加して希釈し、久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機(型番6930にアングルローターRA−800をセット、25℃、30分間、遠心力20000G)で重合原液の直接遠心分離を行った。沈降固形物(ケーキ)と上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので上澄み液を回収した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、ポリマー濃度が20重量%になるまでNMPを除去し、さらに5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターで加圧濾過して高分子電解質溶液Aを得た。
〔参考例2;高分子電解質溶液Bの製造例〕
撹拌機,温度計,塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけ、500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換後、25gのポリエーテルスルホン(PES)と濃硫酸125mlを入れた。窒素気流下,室温で一晩撹拌して均一溶液とした。この溶液に、窒素気流下、撹拌しながら滴下漏斗より48mlのクロロ硫酸を滴下した。滴下開始後、しばらくクロロ硫酸が濃硫酸中の水分と激しく反応して発泡するため、ゆっくりと滴下し、発泡が穏やかになった後は5分以内に滴下を終了させた。滴下終了後の反応溶液を25℃,4時間撹拌してスルホン化した。
【0075】
次いで、反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下し、スルホン化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と、吸引濾過による回収操作を濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃で一晩減圧乾燥した。得られたスルホン酸化ポリエーテルスルホンのイオン性基密度は2.0mmol/gであった。このスルホン酸化ポリエーテルスルホンをポリマー濃度が20重量%となるようにNMPに溶解し高分子電解質溶液Bを得た。
【0076】
〔参考例3;高分子電解質溶液Cの製造例〕
撹拌機,温度計,塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけ、500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換後、25gのポリフェニレンスルフィド(東レ製“トレリナ(登録商標)”)と濃硫酸100mlを入れた。窒素気流下,室温で一晩撹拌して均一溶液とした。この溶液に、窒素気流下、撹拌しながら滴下漏斗より48mlのクロロ硫酸を滴下した。滴下開始後、しばらくクロロ硫酸が濃硫酸中の水分と激しく反応して発泡するため、ゆっくりと滴下し、発泡が穏やかになった後は5分以内に滴下を終了させた。滴下終了後の反応溶液を25℃,4時間撹拌してスルホン化した。
【0077】
次いで、反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下し、スルホン化ポリフェニレンスルフィドを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と、吸引濾過による回収操作を濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃で一晩減圧乾燥した。得られたスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドのイオン性基密度は2.0mmol/gであった。このスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドをポリマー濃度が20重量%となるようにNMPに溶解し高分子電解質溶液Cを得た。
【0078】
〔参考例4;含フッ素高分子多孔質体A(不織布)の製造例〕
アルドリッチ試薬のNafion(登録商標)溶液(Prod.No.663492)100gにエチレングリコール10gを加えて紡糸原液とした。次ぎに、カトーテック社製エレクトロスピニングユニットを使用し、電圧35kV、シリンジポンプ吐出速度0.05cc/min、トラバース速度50mm/min、ドラム式ターゲット(直径100mm)の周速度0.8m/min、シリンジとターゲット間の距離100mmの条件で電解紡糸を実施した。
【0079】
得られた含フッ素高分子繊維の直径の平均は600nmであり、ターゲット上に繊維を捕集し厚み10μmのイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる不織布を得た。
【0080】
〔参考例5;含フッ素高分子多孔質体B(多孔質フィルム)の製造例〕
膜厚20μm、空孔率50%のポリテトラフロロエチレン多孔質フィルムを100℃、100%無水硫酸ガス中に24時間保持してスルホン酸化した。得られたフィルムを煮沸蒸留水で3回洗浄しイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる多孔質フィルムを得た。
【0081】
実施例1
参考例1の高分子電解質溶液Aを基材である125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布し、その上に、住友電工製“ポアフロン(登録商標)メンブレン”型番HPW−045−30(親水膜)を縦横方向に2倍延伸し、厚み15μm、空隙率70%に加工した、イオン性基を含有しないPTFEベースの含フッ素高分子多孔質体を貼り合わせて、含フッ素高分子多孔質体の空隙に高分子電解質溶液Aを含浸させた。
【0082】
次ぎに熱風乾燥機に投入し100℃で10分間、150℃で20分間、溶媒を乾燥除去した。次ぎに、PET基材にはりついたままの状態で40℃の10重量%の硫酸水溶液に30分間浸漬し高分子電解質のプロトン交換と可溶性付与基を除去し、洗浄水が中性を示すまで水洗を繰り返し、60℃で再乾燥後、PET基材から剥離し、複合化高分子電解質膜Aを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は59重量%であった。
【0083】
この複合化高分子電解質膜Aのイオン性基密度は2.4mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Aを使用し寸法変化率を測定したところ1.1%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は50MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Aを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.58Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.70mA/cmで評価後は0.85mA/cmであり耐久性が良好であった。
【0084】
実施例2
参考例1の高分子電解質溶液Aを基材である125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布し、その上に、参考例4で得た含フッ素高分子多孔質体A(不織布)を貼り合わせて、含フッ素高分子多孔質体A(不織布)の空隙に高分子電解質溶液Aを含浸させた。以後実施例1と同様に行い、複合化高分子電解質膜Bを得た。 イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は55重量%であった。
【0085】
この複合化高分子電解質膜Bのイオン性基密度は3.0mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Bを使用し寸法変化率を測定したところ2.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は40MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Bを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.62Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.6mA/cmで評価後は0.65mA/cmであり耐久性が良好であった。
【0086】
実施例3
実施例1の含フッ素高分子多孔質体の代わりに参考例5で得た含フッ素高分子多孔質体B(多孔質フィルム)に変更した以外は実施例1と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Cを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は30重量%であった。
【0087】
この複合化高分子電解質膜Cのイオン性基密度は2.9mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Cを使用し寸法変化率を測定したところ2.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は40MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Bを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.61Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.71mA/cmで評価後は0.77mA/cmであり耐久性が良好であった。
【0088】
比較例1
実施例2の含フッ素高分子多孔質体を使用せずに市販のポリオレフィン多孔質フィルム(“セルガード”(登録商標))を使用した以外は実施例1と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Dを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は40重量%であった。
【0089】
この複合化高分子電解質膜Dのイオン性基密度は1.4mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Dを使用し寸法変化率を測定したところ1.2%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は65MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Dを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.35Vであり発電性能が不十分であった。また、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.5mA/cmで評価後は10.2mA/cmであり耐久性も劣っていた。
【0090】
実施例4
参考例4の繊維の補集時間を調整し厚み10μmのイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる不織布を得た。これを用いて実施例2と同様に行い、複合化高分子電解質膜Eを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は95重量%であった。
【0091】
この複合化高分子電解質膜Eのイオン性基密度は3.3mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Eを使用し寸法変化率を測定したところ4.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は48MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Eを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.63Vであり、発電耐久性評価試験試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.5mA/cmで評価後は0.7mA/cmであり耐久性が不良であった。
【0092】
比較例2
実施例1の含フッ素高分子多孔質体を使用せずに住友電工製“ポアフロン(登録商標)メンブレン”型番PW−045−30(疎水膜)をそのまま使用した以外は実施例1と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Fを得た。親水化処理が施されていないのでNMPをはじき、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は15重量%であった。
【0093】
この複合化高分子電解質膜Fのイオン性基密度は1.2mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Fを使用し寸法変化率を測定したところ1.2%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は45MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Fを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.21Vであり発電性能が不十分であった。
【0094】
実施例5
参考例2の高分子電解質溶液Bを基材である125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布し、その上に、その上に、参考例4で得た含フッ素高分子多孔質体A(不織布)を貼り合わせて、含フッ素高分子多孔質体A(不織布)の空隙に高分子電解質溶液Bを含浸させた。次ぎに熱風乾燥機に投入し100℃で10分間、150℃で20分間、溶媒を乾燥除去し、PET基材から剥離して複合化高分子電解質膜Gを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は70重量%であった。
【0095】
この複合化高分子電解質膜Gのイオン性基密度は1.9mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Aを使用し寸法変化率を測定したところ1.1%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は55MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Gを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.55Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.75mA/cmで評価後は0.90mA/cmであり耐久性が良好であった。
【0096】
実施例6
高分子電解質溶液Bを参考例3の高分子電解質溶液Cに変更した以外は実施例4と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Hを得た。
【0097】
イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は70重量%であった。
【0098】
この複合化高分子電解質膜Hのイオン性基密度は1.8mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Hを使用し寸法変化率を測定したところ1.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は60MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Hを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.56Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.70mA/cmで評価後は0.85mA/cmであり耐久性が良好であった。
【0099】
実施例7
イオン性基を含まない、PVDF(呉羽化学社製#1100)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、固形分5wt%のPVDF溶液を得た。次ぎに、カトーテック社製エレクトロスピニングユニットを使用し、電圧35kV、シリンジポンプ吐出速度0.05cc/min、トラバース速度50mm/min、ドラム式ターゲット(直径100mm)の周速度0.8m/min、シリンジとターゲット間の距離100mmの条件で電解紡糸を実施した。
【0100】
得られたPVDF繊維の直径の平均は500nmであり、ターゲット上に繊維を捕集し厚み5μm、空隙率94%のPVDF不織布を得た。
【0101】
次にPVDF不織布を密封容器に入れ、5%Fを含む窒素ガスを常圧で供給し、60℃で30分間放置した。その後、処理した不織布を取り出し含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を得た。この含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンに浸漬したところ溶解しないことを確認した。
【0102】
なお、本出願での難溶性は以下の様に判断した。5cm角にカットした含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を80℃で8時間減圧乾燥した重量をWg、該含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を100mlの60℃のN−メチル−2−ピロリドンに2時間浸漬した後、取り出し80℃で8時間減圧乾燥した重量をYgとし、Y/W≧0.8である場合、難溶性と判断した。
【0103】
また、この含フッ素高分子多孔質体C(不織布)は全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)によりPVDFの水素がFに置換されたPTFE骨格を含む不織布であることが確認できた。
【0104】
この含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を実施例1の含フッ素高分子多孔質体の代わりに使用し、実施例1と同様に複合化製膜を行い複合化高分子電解質膜Iを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は85重量%であった。
【0105】
この複合化高分子電解質膜Iのイオン性基密度は2.6mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Iを使用し寸法変化率を測定したところ1.2%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は48MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Iを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.62Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.68mA/cmで評価後は0.805mA/cmであり耐久性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の複合化高分子電解質膜は、種々の電気化学装置(例えば、燃料電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等)に適用可能である。これら装置の中でも、燃料電池用に好適であり、特に水素やメタノール水溶液を燃料とする燃料電池に好適であり、携帯電話、パソコン、PDA、ビデオカメラ(カムコーダー)、デジタルカメラ、ハンディターミナル、RFIDリーダー、デジタルオーディオプレーヤー、各種ディスプレー類などの携帯機器、電動シェーバー、掃除機等の家電、電動工具、家庭用電力供給機、乗用車、バスおよびトラックなどの自動車、二輪車、フォークリフト、電動アシスト付自転車、電動カート、電動車椅子や船舶および鉄道などの移動体、各種ロボット、サイボーグなどの電力供給源として好ましく用いられる。特に携帯用機器では、電力供給源だけではなく、携帯機器に搭載した二次電池の充電用にも使用され、さらには二次電池やキャパシタ、太陽電池と併用するハイブリッド型電力供給源としても好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層を含み、該複合化層のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量が20重量%以上95重量%以下であることを特徴とする複合化高分子電解質膜。
【請求項2】
含フッ素高分子多孔質体が含フッ素高分子材料からなる多孔質フィルムである請求項1記載の複合化高分子電解質膜。
【請求項3】
含フッ素高分子多孔質体が含フッ素高分子材料からなる平均繊維径10μm以下の不織布である請求項1記載の複合化高分子電解質膜。
【請求項4】
含フッ素高分子材料がイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料である請求項2または3記載の複合化高分子電解質膜。
【請求項5】
含フッ素高分子材料がポリテトラフロロエチレン骨格を含む請求項2または3記載の複合化高分子電解質膜。
【請求項6】
イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料が2.0mmol/gを超えるイオン性基を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の複合化高分子電解質膜。
【請求項7】
イオン性基を含有する芳香族炭化水素系高分子材料がポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドから選択される1種、または2種以上のユニットを有する請求項1〜6のいずれかに記載の複合化高分子電解質膜。
【請求項8】
含フッ素高分子材料からなる平均繊維径10μm以下の不織布が下記工程を含む製造方法により製造されたものである請求項3記載の複合化高分子電解質膜。
(1)含フッ素高分子前駆体材料を溶媒に溶解する工程
(2)該含フッ素高分子前駆体材料溶液を電解紡糸する工程
(3)電解紡糸した繊維を捕集し含フッ素高分子前駆体材料不織布とする工程
(4)該含フッ素高分子前駆体材料不織布とFを含む気体を接触させ含フッ素高分子材料不織布とする工程
【請求項9】
含フッ素高分子前駆体材料が少なくともポリフッ化ビニリデンを含む材料である請求項8記載の複合化高分子電解質膜。

【公開番号】特開2013−62240(P2013−62240A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182033(P2012−182033)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 共同研究「固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発 基板技術開発 定置用燃料電池システムの低コスト化のためのMEA高性能化」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】