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複合半透膜の製造方法およびポリアミド複合半透膜
説明

複合半透膜の製造方法およびポリアミド複合半透膜

【課題】 実用的な透水量と塩排除率を有する半透膜で、さらに高い耐久性を併せ持つ半透膜とその製造方法を提供する。
【解決手段】 第一級アミノ基を含む分離機能層を有する半透膜を、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬に1秒以上60分以内接触させて、半透膜を改質する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状混合物の成分を選択透過分離するための高性能かつ高い耐久性が付与されたな改質半透膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法が利用されている。膜分離法に使用されている膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透膜などがある。さらに近年は、逆浸透膜と限外ろ過膜の境界に位置する膜(ルースRO膜あるいはNF「nanofiltration」膜)も現れ使用されるようになってきており、これら膜は、例えば海水、カン水、有害物を含んだ水から飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられてきた。
【0003】
現在市販されている逆浸透膜、ルースRO膜、NF膜の大部分は複合半透膜であり、多孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層とを有するものと、多孔性支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものの2種類である。中でも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透過性や選択分離性の高い逆浸透膜として広く用いられている。しかしながら、溶質の酸化除去や殺菌のために付与される過酸化水素、次亜塩素酸、オゾンなどの酸化剤と逆浸透膜とを長時間接触させると膜性能が低下することが知られており、耐久性の向上が望まれている。
【0004】
特許文献1には、第1級アミノ基またはその塩をジアゾニウム塩の前駆体とまたはジアゾニウム塩と反応性の基と反応させることによって、平均して少なくとも1つの第1級アミノ基もしくはその塩と少なくとも1つのジアゾニウム塩と反応性の基を持つポリマーから誘導される識別層を設け、高い溶質除去性と高い水透過性を持つ逆浸透膜が得られる旨が開示されている。しかしながら、この文献に具体的に記載される方法によれば、亜硝酸濃度、膜の予備湿潤、存在する第1級アミン基の濃度、および接触の起こる濃度の依存性を考慮しても処理時間が1〜72時間と長時間であり、短時間で効果を得るためには膜への試薬の拡散のために加圧が必要である。また、ジアゾ化反応試薬である亜硝酸水溶液は化学的に不安定であり、特に高濃度や加熱条件では有毒な一酸化窒素および硝酸を発生して急速に分解する(非特許文献1)。このため長時間での処理は亜硝酸濃度が安定せず、生産性に問題があった。さらに、処理によって溶質除去性と水透過性の向上が必ずしも同時に発現するとはいえず、この要件を満たす処理方法が望まれている。
【0005】
このように、半透膜には、依然として、各種水処理においてより安定した運転や簡易な操作性、及び膜交換頻度の低減などによる低コスト追求の観点と、各種の酸化剤、特に次亜塩素酸による洗浄、殺菌に耐えうる耐久性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−175604号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】岩波理化学事典第5版(岩波書店、1998年2月20日、96頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い溶質除去性と高い水透過性を有し、かつ高い耐久性を有する半透膜を提供すると同時に、高い生産性を実現しうる半透膜およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、下記(1)〜(5)の構成をとる。
【0010】
(1)多孔性支持膜上に多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によるポリアミドの分離機能層を形成させてなる複合半透膜の製造方法であって、前記複合半透膜を含水率5%以上の湿潤状態、かつ、分離機能層中に存在する、分子量300以下の第一級芳香族アミン量が500mg/m以下で、分離機能層中の第一級芳香族アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物を含む溶液と40℃以下で1秒以上2分以下の間で接触させる改質処理工程を有することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
【0011】
(2)前記化合物を含む溶液のpH、亜硝酸および/またはその塩の全モル濃度(mol/L)、反応時間(s)により算出されるEI値が0.005〜500の範囲内である、上記(1)に記載の複合半透膜の製造方法。
【0012】
(3)前記改質処理工程の前および/または後に、前記複合半透膜をpH4以下の酸性水溶液に接触させる工程を有する、上記(1)または(2)に記載の複合半透膜の製造方法。
【0013】
(4)前記第一級芳香族アミンがm−フェニレンジアミンである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
【0014】
(5)多孔性支持膜上に多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によるポリアミドの分離機能層を形成させてなるポリアミド複合半透膜であって、含水率5%以上の湿潤状態、かつ、分離機能層中に存在する、分子量300以下の第一級芳香族アミン量が500mg/m以下で、分離機能層中の第一級芳香族アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物を含む溶液と40℃以下で1秒以上2分以下の間で接触させる改質処理により得られ、波長450nmにおける光透過率が10〜95%の範囲内であり、かつ、フェノール性水酸基を有することを特徴とするポリアミド複合半透膜。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い水透過性と高い溶質除去性を併せ持ち、さらに高い耐久性を有した半透膜を高い生産性で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】亜硝酸の解離平衡定数を用いて算出した、非解離状態にある亜硝酸のモル分率とpHの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、第一級芳香族アミノ基を含む分離機能層を有する複合半透膜の性質を改良する製造方法である。ここで第一級芳香族アミノ基を含む分離機能層とは、少なくとも1つのアミノ基(−NH)を持つ芳香族化合物およびその塩が分離機能層中に存在することをいう。該化合物の種類は特に限定されず、分離機能層の構成成分であっても良いし、分離機能層と化学結合を伴っていなくともよい。
【0018】
本発明において複合半透膜は、実質的に分離性能を有する分離機能層が、実質的に分離性能を有さない多孔性支持膜上に被覆されてなり、該分離機能層は多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応によって得られる架橋ポリアミドからなるものである。ここで多官能アミンは脂肪族多官能アミンと芳香族多官能アミンの少なくとも1つの成分からなる。
【0019】
脂肪族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミンおよびその誘導体である。例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジンなどが例示され、性能発現の安定性から、特に、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジンが好ましい。
【0020】
また、芳香族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されるものではないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどがあり、そのN−アルキル化物としてN,N−ジメチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミンなどが例示され、性能発現の安定性から、特にメタフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
【0021】
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸の酸ハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロライドが好ましい。上記多官能酸ハロゲン化物は単独で用いることもできるが、混合物として用いてもよい。
【0022】
多官能酸ハロゲン化物を溶解する有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多孔性支持膜を破壊しないことが好ましく、架橋ポリアミドの生成反応を阻害しないものであればいずれであっても良い。代表例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられるが、オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性を考慮すると、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカンなど、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0023】
次に、半透膜の好ましい製造方法について説明する。半透膜中の実質的に分離性能を有する分離機能層は、例えば、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する、水とは非混和性の有機溶媒溶液を用い、後述の多孔性支持膜上で反応させることにより形成される。
【0024】
ここで、多官能アミンを含有する水溶液の濃度は、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量%である。
【0025】
多官能アミンを含有する水溶液や多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液には、両成分間の反応を妨害しないものであれば、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
【0026】
本発明において、多孔性支持膜は、架橋ポリアミドなどの分離機能層を支持するために使用される。多孔性支持膜の構成は特に限定されないが、好ましい多孔性支持膜としては布帛により強化されたポリスルホン支持膜などを例示することができる。多孔性支持膜の孔径や孔数は特に限定されないが、均一で微細な孔あるいは片面からもう一方の面まで徐々に大きな微細な孔を有していて、その微細孔の大きさは、その片面の表面が100nm以下であるような構造の支持膜が好ましい。
【0027】
本発明に使用する多孔性支持膜は、ミリポア社製”ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製”ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することができる。
【0028】
多孔性支持膜に使用する素材は特に限定されず、例えば、ポリスルホン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル等のホモポリマーあるいはブレンドしたもの等が使用できるが、化学的、機械的、熱的に安定性の高い、ポリスルホンを使用するのが好ましい。具体的に例示すると、ポリスルホンのジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に略一定の厚さに塗布し、ドデシル硫酸ソーダ0.5重量%DMF2重量%を含む水溶液中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有した好適な多孔性支持膜を得ることができる。
【0029】
多孔性支持膜表面への多官能アミンを含有する水溶液の被覆は、該水溶液が表面に均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、該水溶液を多孔性支持膜表面にコーティングする方法、多孔性支持膜を該水溶液に浸漬する方法等で行えばよい。次いで、過剰に塗布された該水溶液を液切り工程により除去する。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法等がある。液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の全部あるいは一部を除去してもよい。その後、多官能アミンを含有する水溶液で被覆した多孔性支持膜に、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布し、反応により架橋ポリアミドの分離機能層を形成させる。
【0030】
多官能酸ハロゲン化物の濃度は特に限定されないが、少なすぎると活性層である分離機能層の形成が不十分となり欠点になる可能性があり、多いとコスト面から不利になるため、有機溶媒溶液中で0.01〜1.0重量%程度が好ましい。反応後の有機溶媒の除去は、例えば、特開平5−76740号公報記載の方法等で行うことができる。
【0031】
そして、本発明では、上述の方法により製造した複合半透膜を、第一級芳香族アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物を含む溶液に含水率5%以上の湿潤状態で1秒以上2分以下の間で接触させることで改質半透膜を得る。複合半透膜に上記化合物を含む溶液を接触させる方法は特に限定されず、たとえば、複合半透膜全体を上記化合物を含む溶液中に浸漬する方法でも良いし、スプレーする方法でも良く、分離機能層と接触するならば、その方法は限定されない。
【0032】
ここで、前述の特許文献1によると、亜硝酸を膜の中に十分に拡散し、亜硝酸と第1級アミンとの反応を行って主に膜の水流量を増加させることが目的であるため、具体的には1〜72時間の反応時間が必要である旨説明されている。しかしながら、本発明者らは、ジアゾニウム塩生成反応を詳細に検討した結果、1秒以上2分以下の時間領域で、実用的な膜透水量および塩排除率の向上を同時に発現できるとともに、試薬の分解や有害物拡散を最低限に抑えることを見出した。詳しくは、膜透水量は試薬による処理直後から時間とともに上昇するのに対し、塩排除率は処理直後上昇するが時間とともに極大値を伴って下降をはじめ、60分で処理前の塩排除率と同等となり、それ以上では塩排除率が低下することを見出したのである。なお、試薬との接触は、十分に接触させることができればよいが、接触ムラを防ぐために1秒以上接触させることが必要である。
【0033】
本発明の、第一級芳香族アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物を含む溶液としては、亜硝酸およびその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、20℃で水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
【0034】
本発明において、膜と接触させる試薬中の亜硝酸や亜硝酸塩の濃度は、好ましくは20℃において0.01〜1重量%の範囲である。0.01%よりも低い濃度では十分な効果が得られず、亜硝酸、亜硝酸塩濃度が1%よりも高いと溶液の取扱が困難となる。
【0035】
そして、本発明において、亜硝酸塩濃度が0.5重量%以上の水溶液を試薬として用いるときは、「膜と亜硝酸塩の接触」と、「膜面に残存する亜硝酸塩と酸性溶液の接触による亜硝酸の発生」を分離することによって取扱いが簡便になり好ましい。すなわち、亜硝酸塩を含む水溶液に接触させる前および/または後に、半透膜をpH4以下の酸性溶液に接触させる。
【0036】
さらに、本発明においては、より高い効果を得るために、試薬と半透膜との反応時間、試薬のpH、亜硝酸またはその塩の全モル濃度とにより算出される値、EI値が0.005〜500の範囲内となるように処理することが好ましい。なお、EI値は、次のように定義される。
【0037】
EI(mol・s/l)
=(反応時間:s)・(亜硝酸塩濃度:mol/l)/(10pH−3.15+1)。
【0038】
さらに、試薬の温度は、熱による半透膜の変性を抑えるために95℃以下であることが好ましく、更には試薬の揮発や分解が低減する40℃以下であることが好ましい。
【0039】
また、上記化合物を含む溶液を接触させる複合半透膜が湿潤状態にないときは、処理前に水と必要な時間接触し十分な湿潤状態とする。ここで湿潤状態とは、複合半透膜中に水を含有することであり、含水率(=膜中の水分量/膜の全重量)で定量化できる。上記化合物を含む水溶液を接触させる複合半透膜の含水率は、5%以上である必要があり、さらに25%以上が好ましい。
【0040】
このような処理を施すにあたり、半透膜中には、ポリアミドの生成反応時に残存する未反応の分子量300以下の第一級アミンや、別途添加した分子量300以下の第一級アミン量が、膜面積1mあたり500mg以下しか存在しないことが好ましい。これを超えると十分な透水量が得られない。なお、第一級アミン量の測定は、半透膜を10×10cm切り出してエタノール50gに8時間浸漬し、エタノールに抽出された成分のクロマトグラフィーおよび質量分析で求められる。
【0041】
本発明により得られる改質半透膜の特徴として、着色された分離機能層が挙げられる。これは第一級アミノ基の反応により生じたジアゾニウム塩による結合生成によってアゾ化合物が生じるためと考えられる。アゾ化合物の吸収帯は化合物によって多様であるが、本発明においては450nmに特徴的な吸収が発現した。これは可視吸収スペクトル法の積分球測定法により定量することができ、450nmの光透過率が10%以上95%以下であり、好ましくは50%以上80%以下である。
【0042】
また、本発明により得られる改質半透膜は、反応条件により機能層に存在するアミノ基の一部が第一級芳香族アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物を含む溶液により、フェノール性水酸基に変換される。これは、生成したジアゾニウム塩の一部が水と反応したものとして理解できる。なお、化合物の同定はNMR法によって測定することができる。たとえば、基材上にポリスルホンからなる多孔性支持膜を形成した支持体上に分離機能層を有する液体分離膜について、NMR法により化合物を同定するにあたっては次のように行う。まず、支持体の一部である基材(ポリエステル繊維からなるタフタや不織布)を剥がし、ポリスルホンからなる微多孔性支持膜と架橋ポリアミドの分離機能層の混合物を得る。これを塩化メチレンに溶解した後ろ過を行って分離機能層を得る。この分離機能層を乾燥後密閉容器に採取し、6N水酸化ナトリウム水溶液を加えて120℃に加熱して溶解後、不溶物をろ過する。得られたろ液をNMRチューブに入れFT−NMR分析装置で分析を行い、得られたプロトンのδ値より化合物を同定する。
【0043】
そして、本発明によれば、一旦製造された半透膜を改質して、塩化ナトリウム濃度を0.15重量%に調整し、操作圧力0.75MPa、温度25℃、pH6.5の水溶液で評価したとき塩化ナトリウム除去率が98%以上、透過水量が1.0m/m・日以上の性能を有する半透膜を容易に得ることができる。
【0044】
本発明の製造方法で得られた半透膜を用いて、例えば、操作圧力0.1〜3.0MPaで原水中に含まれる無機物や有機物などの有害物質およびその前駆物質の除去を行うことができる
ここで、操作圧力を低くすると使用するポンプの容量が少なくなり電力費が低下する反面、透過水量が少なくなる傾向がある。逆に、操作圧力を高くすると前記の理由で電力費が増加し、透過水量が多くなる傾向がある一方、透過水量が高すぎると膜面のファウリングによる目詰まりを起こす可能性があり、低いとコスト高となる。したがって、コストを抑えて安定運転を行うためには、操作圧力を0.1〜3.0MPaの範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0MPa、さらに好ましくは0.1〜1.0MPaの範囲内である。また、同様の理由から、透過水量の範囲を、0.5〜5.0m/m・dの範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0m/m・d、さらに好ましくは0.8〜2.0m/m・dの範囲内である。
【0045】
また、効率的に供給水を処理して造水コストを下げるため、原水供給量に対する透過水量の割合、すなわち回収率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらには90%以上が良い。ただし99.5%を超えると膜面のファウリングによる目詰まりが起こす可能性があるので、99.5%を超えないことが好ましい。
【0046】
そして、本発明の改質半透膜は、上記のような透水性と塩化ナトリウム阻止性に加えて、優れた耐久性を併せ持つことができる。具体的には、pH7に調製した遊離塩素濃度700mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を含有する原水で、0.75MPaの操作圧力にて8時間連続運転を行ったとき、上記評価方法により得られる塩化ナトリウム透過率の変化率が、0.5以上5以下となる。
【0047】
なお、本発明において、半透膜の形態は限定されるものではなく、中空糸膜でも平膜でもよい。また、本発明により得られる改質半透膜は液体分離に用いる場合エレメント、モジュールを形成するが、その形態もモジュール型、スパイラル型など特に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例において除去率および透過率は次式により求めた。
・除去率(%)={1−(透過液中の溶質濃度)/(供給液中の溶質濃度)}×100
・透過率(%)={(透過液中の溶質濃度)/(供給液中の溶質濃度)}×100。
【0049】
また、透水量は単位時間(日)に単位面積(m)当たりの膜を透過する透過水量(m/m・d)で求めた。さらに、含水率は、予めよく水切りをした半透膜を温度120℃の熱風乾燥機で3時間乾燥し、重量変化量を乾燥前重量で除して求めた。
【0050】
<参考例AおよびB>
多孔性支持膜である布帛補強ポリスルホン支持膜(限外濾過膜)は、次の手法により製造した。すなわち、単糸繊度0.5および1.5デシテックスのポリエステル繊維の混繊で、通気度0.7cm/cm・秒、平均孔径7μm以下の、縦30cm、横20cmの大きさの湿式不織布をガラス板上に固定し、その上に、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒のポリスルホン濃度15重量%の溶液(2.5ポアズ:20℃)を、総厚み200μmになるようにキャストし、直ちに水に浸積してポリスルホンの多孔性支持膜を得た(これをPS支持膜と記す)。
【0051】
次に、この多孔性支持膜をm−フェニレンジアミンの2.0重量%およびε―カプロラクタムの2.0重量%を含む水溶液に2分間浸漬した後、デカンにトリメシン酸クロライドを0.1重量%になるように溶解した溶液を160cm/mの割合になるように塗布し、さらに過剰の溶液を除去して複合逆浸透膜を得た。このようにして得られた複合半透膜をpH6.5に調整した0.15重量%の塩化ナトリウム水溶液を原水とし、0.75MPa、25℃の条件下で逆浸透テストした結果、透水量は0.76m/m・d、塩化ナトリウムの除去率は99.0%であった(参考例A)。
【0052】
また、得られた膜を60℃で4分間乾燥した。この乾燥逆浸透膜の含水率は、2.8重量%であった。上記と同様の逆浸透テストの結果、透水量は0.40m/m・d、塩化ナトリウムの除去率は98.7%であった(参考例B)。
【0053】
<実施例1および2〜7、比較例1、2>
参考例Aで得られた膜を、0.07重量%の亜硝酸ナトリウムおよび0.1重量%の濃硫酸を含む水溶液により室温で処理した。ここで反応生成する亜硝酸の濃度は存在する亜硝酸塩が亜硝酸に転化するものとして決定できる。処理時間は2分で膜を亜硝酸水溶液から取り除いた後、直ちに水で洗い、室温にて保存したところ、膜は白色から黄色〜褐色に変化した。参考例と同条件で性能試験したところ、この膜の透水量は0.97m/m・d、塩化ナトリウムの除去率は99.5%であった(実施例1)。さらに、処理時間、亜硝酸ナトリウムの濃度、膜の含水量、膜中のm−フェニレンジアミン濃度を種々変化した結果(実施例2〜7、比較例1、2)の膜性能を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1〜2および比較例1、2の結果から、処理時間が2分を超えると、処理前の膜透水量および脱塩率を共には向上させることができず、処理が適用できないことがわかる。
【0056】
また、亜硝酸(HNO)は水中で水素イオンと亜硝酸イオンに解離する。この解離平衡定数(Ka)を用いて非解離状態にある亜硝酸濃度のpH依存性を算出することができ、グラフに表すと図1のようになるが、この図1と実施例1、5、6の結果から、pHが4より大きくなると亜硝酸が解離し、亜硝酸の濃度が亜硝酸と亜硝酸イオン全濃度の10%以下となり、性能向上の効果が低減することが明らかである。
【0057】
さらに実施例1,3,4,7の結果から、亜硝酸ナトリウムの濃度が0.01重量%より小さくなると膜性能を向上させることができるものの、その効果が低くなる。
【0058】
<比較例3>
参考例Aで得られた膜を、0.07重量%の亜硝酸ナトリウムおよび0.1重量%の濃硫酸を含む水溶液により室温で処理した。ここで反応生成する亜硝酸の濃度は存在する亜硝酸塩が亜硝酸に転化するものとして決定できる。処理時間は2分で膜を亜硝酸水溶液から取り除いた後、直ちに水で洗い、室温にて保存したところ、膜は黄色から褐色に変化した。参考例と同条件で性能試験したところ、この膜の透水量は0.65m/m・d、塩化ナトリウムの除去率は98.7%であった。
【0059】
<比較例4>
参考例Aで得られた膜を、pH7の500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。参考例と同条件で性能試験したところ、この膜の透水量は1.01m/m・d、塩化ナトリウムの除去率は99.7%であった。
【0060】
<実施例8>
実施例1で得られた膜と比較例4の膜をpH7の700ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液で8時間浸漬した。これらの膜を水で洗浄し、参考例と同条件で性能試験した結果を示す。
実施例1膜処理:
透水量1.84m/m・d、塩化ナトリウム除去率98.4%
比較例4膜処理:
透水量2.09m/m・d、塩化ナトリウム除去率97.1%
これより、実施例1の膜が耐久性に優れることが明らかである。
【0061】
<参考実施例>
実施例1で得られた膜からポリエステル不織布を剥がし、ポリスルホンからなる微多孔性支持膜と架橋ポリアミドの分離機能層の混合物を得た。これを塩化メチレンに溶解した後ろ過を行って分離機能層を得た。この分離機能層を乾燥後密閉容器に採取し、6N水酸化ナトリウム水溶液を加えて120℃に加熱して溶解後、不溶物をろ過した。得られたろ液を重水(DO)で希釈し、NMRチューブに入れFT−NMR分析装置で分析を行なった。ここで得られたプロトンのδ値より化合物を同定すると、δ=8.1(トリメシン酸),6.71−6.65(m−フェニレンジアミン),6.65−6.59(3−アミノフェノール)、5.98−5.88(m−フェニレンジアミン),5.81−5.70(3−アミノフェノール)となった。参考例Aおよび比較例4で得られた膜には、3−アミノフェノールに帰属できるシグナルは得られなかった。
【0062】
これより、ポリアミド中のアミノ基が試薬によりフェノール基に変換されたことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性支持膜上に多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によるポリアミドの分離機能層を形成させてなる複合半透膜の製造方法であって、前記複合半透膜を含水率5%以上の湿潤状態、かつ、分離機能層中に存在する、分子量300以下の第一級芳香族アミン量が500mg/m以下で、分離機能層中の第一級芳香族アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物を含む溶液と40℃以下で1秒以上2分以下の間で接触させる改質処理工程を有することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
【請求項2】
前記化合物を含む溶液のpH、亜硝酸および/またはその塩の全モル濃度(mol/L)、反応時間(s)により算出されるEI値が0.005〜500の範囲内である、請求項1に記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項3】
前記改質処理工程の前および/または後に、前記複合半透膜をpH4以下の酸性水溶液に接触させる工程を有する、請求項1または2に記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項4】
前記第一級芳香族アミンがm−フェニレンジアミンである、請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項5】
多孔性支持膜上に多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によるポリアミドの分離機能層を形成させてなるポリアミド複合半透膜であって、含水率5%以上の湿潤状態、かつ、分離機能層中に存在する、分子量300以下の第一級芳香族アミン量が500mg/m以下で、分離機能層中の第一級芳香族アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物を含む溶液と40℃以下で1秒以上2分以下の間で接触させる改質処理により得られ、波長450nmにおける光透過率が10〜95%の範囲内であり、かつ、フェノール性水酸基を有することを特徴とするポリアミド複合半透膜。

【図1】
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【公開番号】特開2011−125856(P2011−125856A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276760(P2010−276760)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【分割の表示】特願2004−313493(P2004−313493)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】