説明

複合半透膜の製造方法

【課題】本発明は、多孔性支持体上に、均一で欠陥のないスキン層を有する複合半透膜の製造方法、及び該方法によって得られる複合半透膜を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、多孔性支持体を親水化処理する親水化処理工程、多官能アミン成分を含む水溶液を親水化処理した多孔性支持体の表面に接触させる水溶液接触工程、及び前記水溶液を接触させた多孔性支持体の表面に多官能酸ハライド成分を含む有機溶液を接触させて多官能アミン成分と多官能酸ハライド成分とを界面重合させることにより、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む複合半透膜の製造方法であって、前記親水化処理工程時及び/又は前記水溶液接触工程時に、親水化処理に用いられる水溶液、多官能アミン成分を含む水溶液、又は多孔性支持体に直接又は間接的に20秒間以上の振動を加えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂を含むスキン層とこれを支持する多孔性支持体とからなる複合半透膜の製造方法に関する。かかる複合半透膜は、超純水の製造、かん水または海水の脱塩などに好適であり、また染色排水や電着塗料排水などの公害発生原因である汚れなどから、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去・回収し、排水のクローズ化に寄与することができる。また、食品用途などで有効成分の濃縮、浄水や下水用途等での有害成分の除去などの高度処理に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
現在、複合半透膜としては、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなるスキン層が多孔性支持体上に形成されたものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献2には、疎水性多孔質膜を、異物質による汚染を招くことなく、しかも簡易に膜を親水化するために、多孔質膜を脱気された水に浸漬することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、液体分離膜中の未反応残存物を除去するために、液体中に浸漬した分離膜を超音波で洗浄することが記載されている。
【0005】
特許文献4には、芳香族ポリスルホン多孔質膜の透水速度を改善するために、芳香族ポリスルホン多孔質膜を有機溶剤中にて超音波照射することが記載されている。
【0006】
しかし、従来の複合半透膜の製造方法では、多孔性支持体上に形成したスキン層に欠陥が生じて塩阻止性が低下するという問題が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−79372号公報
【特許文献2】特開平5−208121号公報
【特許文献3】特開2005−66464号公報
【特許文献4】特開平2−139021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多孔性支持体上に、均一で欠陥のないスキン層を有する複合半透膜の製造方法、及び該方法によって得られる複合半透膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、下記製造方法により多孔性支持体上に、均一で欠陥のないスキン層を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、多孔性支持体を親水化処理する親水化処理工程、多官能アミン成分を含む水溶液を親水化処理した多孔性支持体の表面に接触させる水溶液接触工程、及び前記水溶液を接触させた多孔性支持体の表面に多官能酸ハライド成分を含む有機溶液を接触させて多官能アミン成分と多官能酸ハライド成分とを界面重合させることにより、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む複合半透膜の製造方法において、
前記親水化処理工程時及び/又は前記水溶液接触工程時に、親水化処理に用いられる水溶液、多官能アミン成分を含む水溶液、又は多孔性支持体に直接又は間接的に20秒間以上の振動を加えることを特徴とする複合半透膜の製造方法、に関する。
【0011】
本発明者らは、従来の製造方法で多孔性支持体上にスキン層を形成した場合にスキン層に欠陥が生じる原因が、親水化処理に用いられる水溶液及び多官能アミン成分を含む水溶液に含まれる気泡や、前記水溶液を多孔性支持体表面に接触させた際に多孔性支持体表面に発生する気泡にあることを見出した。詳しくは、当該気泡が残存したまま多孔性支持体上にスキン層を形成すると、当該気泡部分でスキン層が浮いた状態で形成され、このような浮き部分でスキン層の破れが生じてスキン層に欠陥が生じやすくなると考えられる。
【0012】
本発明のように、親水化処理工程時及び/又は水溶液接触工程時に、親水化処理に用いられる水溶液、多官能アミン成分を含む水溶液、又は多孔性支持体に直接又は間接的に20秒間以上の振動を加えることにより、前記気泡を効果的に除去することができる。その結果、スキン層に浮き部分が生じ難くなり、多孔性支持体上に均一で欠陥のないスキン層を形成することができる。振動を加える時間が20秒間未満の場合には、前記気泡を十分に除去することができないため、スキン層に欠陥が生じやすくなる。
【0013】
加える振動は超音波振動であることが好ましい。超音波振動は、物理振動に比べて短時間で効果的に前記気泡を除去することができる。
【0014】
親水化処理工程は、多孔性支持体をアルコール含有水溶液中に浸漬する工程であることが好ましい。予め、多孔性支持体をアルコール含有水溶液中に浸漬して親水化しておくことにより、均一なスキン層を形成しやすくなる。また、多孔性支持体を親水化処理すると共に、アルコール含有水溶液に20秒間以上の振動を加えることにより(多孔性支持体にも振動が伝わる)、アルコール含有水溶液を多孔性支持体表面に接触させた際に、多孔性支持体表面に発生する気泡を効果的に除去しておくことができる。その結果、多官能アミン成分を含む水溶液を多孔性支持体表面に接触させた際に、多孔性支持体の表面凹凸部分に気泡が発生しにくくなる。
【0015】
多孔性支持体の平均孔径は0.01〜0.4μmであることが好ましい。また、多孔性支持体の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.6μm以上であることが好ましい。本発明の製造方法を採用すると、多孔性支持体の表面孔径が大きい場合や、多孔性支持体の表面凹凸が大きい場合であっても、多孔性支持体上に均一で欠陥のないスキン層を形成することができる。
【0016】
また、多孔性支持体の形成材料はエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂は、化学的、機械的、熱的に安定であるため、多孔性支持体の形成材料として好適である。
【0017】
また、本発明は、前記製造方法によって得られる複合半透膜、に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によって得られる複合半透膜は、多孔性支持体上に均一で欠陥のないスキン層を有しているため、従来の複合半透膜に比べて優れた塩阻止性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1で得られた複合半透膜の欠陥部分の染色状態を示す写真である。
【図2】実施例2で得られた複合半透膜の欠陥部分の染色状態を示す写真である。
【図3】比較例1で得られた複合半透膜の欠陥部分の染色状態を示す写真である。
【図4】比較例2で得られた複合半透膜の欠陥部分の染色状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の複合半透膜の製造方法は、多孔性支持体を親水化処理する親水化処理工程、多官能アミン成分を含む水溶液を親水化処理した多孔性支持体の表面に接触させる水溶液接触工程、及び前記水溶液を接触させた多孔性支持体の表面に多官能酸ハライド成分を含む有機溶液を接触させて多官能アミン成分と多官能酸ハライド成分とを界面重合させることにより、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む。
【0021】
多官能アミン成分とは、2以上の反応性アミノ基を有する多官能アミンであり、芳香族、脂肪族、及び脂環式の多官能アミンが挙げられる。
【0022】
芳香族多官能アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、N,N’−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0023】
脂肪族多官能アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、n−フェニル−エチレンジアミン等が挙げられる。
【0024】
脂環式多官能アミンとしては、例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、4−アミノメチルピペラジン等が挙げられる。
【0025】
これらの多官能アミンは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。高塩阻止性能のスキン層を得るためには、芳香族多官能アミンを用いることが好ましい。
【0026】
多官能酸ハライド成分とは、反応性カルボニル基を2個以上有する多官能酸ハライドである。
【0027】
多官能酸ハライドとしては、芳香族、脂肪族、及び脂環式の多官能酸ハライドが挙げられる。
【0028】
芳香族多官能酸ハライドとしては、例えば、トリメシン酸トリクロライド、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、ベンゼントリスルホン酸トリクロライド、ベンゼンジスルホン酸ジクロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。
【0029】
脂肪族多官能酸ハライドとしては、例えば、プロパンジカルボン酸ジクロライド、ブタンジカルボン酸ジクロライド、ペンタンジカルボン酸ジクロライド、プロパントリカルボン酸トリクロライド、ブタントリカルボン酸トリクロライド、ペンタントリカルボン酸トリクロライド、グルタリルハライド、アジポイルハライド等が挙げられる。
【0030】
脂環式多官能酸ハライドとしては、例えば、シクロプロパントリカルボン酸トリクロライド、シクロブタンテトラカルボン酸テトラクロライド、シクロペンタントリカルボン酸トリクロライド、シクロペンタンテトラカルボン酸テトラクロライド、シクロヘキサントリカルボン酸トリクロライド、テトラハイドロフランテトラカルボン酸テトラクロライド、シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、シクロブタンジカルボン酸ジクロライド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、テトラハイドロフランジカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。
【0031】
これら多官能酸ハライドは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。高塩阻止性能のスキン層を得るためには、芳香族多官能酸ハライドを用いることが好ましい。また、多官能酸ハライド成分の少なくとも一部に3価以上の多官能酸ハライドを用いて、架橋構造を形成するのが好ましい。
【0032】
また、ポリアミド系樹脂を含むスキン層の性能を向上させるために、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などのポリマー、ソルビトール、グリセリンなどの多価アルコールなどを共重合させてもよい。
【0033】
スキン層を支持する多孔性支持体は、スキン層を支持しうるものであれば特に限定されない。本発明の製造方法は、平均孔径が0.01〜0.4μm及び/又は表面の算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上である多孔性支持体を用いる場合に特に効果的である。算術平均粗さ(Ra)は、例えば、(株)キーエンス製のVK9700を用いて測定することができる。多孔性支持体の形成材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンなど種々のものを挙げることができるが、特に化学的、機械的、熱的に安定である点からポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0034】
以下、エポキシ樹脂からなる多孔性支持体(以下、エポキシ樹脂多孔性支持体という)を例に挙げて説明する。
【0035】
エポキシ樹脂多孔性支持体は、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有する。
【0036】
エポキシ樹脂多孔性支持体は、エポキシ樹脂、硬化剤、及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物から形成される。
【0037】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、複素芳香環(例えば、トリアジン環など)を含有するエポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂;脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂などの非芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらのうち、均一な三次元網目状骨格と均一な空孔を形成するため、また耐薬品性や膜強度を確保するために、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群より選択される少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂;脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の脂環族エポキシ樹脂を用いることが好ましい。特に、エポキシ当量が6000以下で、融点が170℃以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群より選択される少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂;エポキシ当量が6000以下で、融点が170℃以下である脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の脂環族エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
硬化剤としては、例えば、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなど)、芳香族酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸など)、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環含有アミン(例えば、トリアジン環含有アミンなど)などの芳香族硬化剤;脂肪族アミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンなど)、脂環族アミン類(イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品など)、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミンなどの非芳香族硬化剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
これらのうち、均一な三次元網目状骨格と均一な空孔を形成するため、また膜強度と弾性率を確保するために、分子内に一級アミンを2つ以上有するメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種の芳香族アミン硬化剤;分子内に一級アミンを2つ以上有するビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、及びビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンからなる群より選択される少なくとも1種の脂環族アミン硬化剤を用いることが好ましい。
【0041】
また、エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせとしては、芳香族エポキシ樹脂と脂環族アミン硬化剤の組み合わせ、又は脂環族エポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤の組み合わせが好ましい。これらの組み合わせにより、得られるエポキシ樹脂多孔性支持体の耐熱性が高くなり、複合半透膜の多孔性支持体として好適に用いられる。
【0042】
ポロゲンとは、エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができ、かつエポキシ樹脂と硬化剤が重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な溶剤をいい、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、及びポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
これらのうち、均一な三次元網目状骨格と均一な空孔を形成するために、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、分子量600以下のポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることが好ましく、特に分子量200以下のポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。
【0044】
また、個々のエポキシ樹脂又は硬化剤と常温で不溶又は難溶であっても、エポキシ樹脂と硬化剤との反応物が可溶となる溶剤についてはポロゲンとして使用可能である。このようなポロゲンとしては、例えば臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート5058」)などが挙げられる。
【0045】
エポキシ樹脂多孔性支持体の空孔率、平均孔径、孔径分布などは、使用するエポキシ樹脂、硬化剤、ポロゲンなどの原料の種類や配合比率、及び反応誘起相分離時における加熱温度や加熱時間などの反応条件により変化するため、目的とする空孔率、平均孔径、孔径分布を得るために系の相図を作成して最適な条件を選択することが好ましい。また、相分離時におけるエポキシ樹脂架橋体の分子量、分子量分布、系の粘度、架橋反応速度などを制御することにより、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの共連続構造を特定の状態で固定し、安定した多孔構造を得ることができる。
【0046】
また、エポキシ樹脂に対する硬化剤の配合割合は、エポキシ基1当量に対して硬化剤当量が0.6〜1.5であることが好ましい。硬化剤当量が0.6未満の場合には、硬化体の架橋密度が低くなり、耐熱性、耐溶剤性などが低下する傾向にある。一方、1.5を超える場合には、未反応の硬化剤が残留したり、架橋密度の向上を阻害する傾向にある。なお、上述した硬化剤の他に、目的とする多孔構造を得るために、溶液中に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0047】
エポキシ樹脂多孔性支持体の平均孔径は、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を形成する場合には0.01〜0.4μmであることが好ましく、そのような平均孔径に調整するためには、エポキシ樹脂、硬化剤、及びポロゲンの総重量に対してポロゲンを40〜80重量%用いることが好ましい。ポロゲンの量が40重量%未満の場合には平均孔径が小さくなりすぎたり、空孔が形成されなくなる傾向にある。一方、ポロゲンの量が80重量%を超える場合には平均孔径が大きくなりすぎて均一なスキン層を多孔性支持体上に形成することが困難になったり、塩阻止率が著しく低下する傾向にある。
【0048】
また、エポキシ樹脂多孔性支持体の平均孔径を0.01〜0.4μmに調整する方法として、エポキシ当量の異なる2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いる方法も好適である。その際、エポキシ当量の差は100以上であることが好ましい。
【0049】
また、多孔性支持体の厚み方向で孔径分布が変化する場合には、スキン層を形成する面の孔径(表面孔径)が重要である。エポキシ樹脂多孔性支持体の表面孔径の調整も上記と同様であり、表面孔径は、全体のエポキシ当量とポロゲンの割合、硬化温度などの諸条件を適宜設定することにより目的の範囲に調整できる。表面孔径も平均孔径と同様に0.01〜0.4μmであることが好ましい。
【0050】
また、エポキシ樹脂多孔性支持体の表面の算術平均粗さ(Ra)は、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を形成する場合には0.01〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.03〜1μmである。表面の算術平均粗さが小さすぎると透水性が著しく低下し、表面の算術平均粗さが大きすぎると欠陥のないスキン層を形成することが困難になる。特に、表面の算術平均粗さが0.6μm以上、さらには0.8μm以上の場合には、従来の製造方法ではスキン層に欠陥が生じやすくなるが、本発明の製造方法を採用するとスキン層に欠陥が生じにくくなる。
【0051】
前記エポキシ樹脂多孔性支持体は、例えば、以下の方法で作製することができる。
【0052】
1)エポキシ樹脂、硬化剤、及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布し、その後、塗布したエポキシ樹脂組成物を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際に、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートからポロゲンを洗浄除去し、乾燥することにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔性支持体を作製する。使用する基板は特に制限されず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、及び金属板などが挙げられる。
【0053】
2)エポキシ樹脂、硬化剤、及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布し、その後、塗布したエポキシ樹脂組成物上に別の基板を被せてサンドイッチ構造体を作製する。なお、基板間に一定の厚みを設けるために、基板の四隅にスペーサー(例えば、両面テープ)を設けておくことが好ましい。そして、該サンドイッチ構造体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際に、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートを取り出し、ポロゲンを洗浄除去し、乾燥することにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔性支持体を作製する。使用する基板は特に制限されず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、及び金属板などが挙げられるが、特にガラス基板を用いることが好ましい。
【0054】
3)エポキシ樹脂、硬化剤、及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を所定形状のモールド内に充填し、その後、加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させて、円筒状又は円柱状樹脂ブロックを作製する。その際に、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、該ブロックを円筒軸又は円柱軸を中心に回転させながら該ブロックの表面を所定厚みで切削して長尺状のエポキシ樹脂シートを作製する。そして、エポキシ樹脂シート中のポロゲンを洗浄除去し、乾燥することにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔性支持体を作製する。
【0055】
エポキシ樹脂組成物を加熱する際の条件は特に制限されず、使用する原料又は製法に応じて適宜調整すればよいが、例えば温度は20〜150℃程度であり、加熱時間は10分〜15時間程度である。加熱処理後にエポキシ樹脂架橋体の架橋度を高めるためにポストキュアを行ってもよい。
【0056】
得られたエポキシ樹脂シートからポロゲンを除去するために用いられる溶剤としては、例えば、水、DMF、DMSO、THF、及びこれらの混合溶剤などが挙げられ、ポロゲンの種類に応じて適宜選択する。
【0057】
ポロゲンを除去したエポキシ樹脂多孔性支持体の乾燥条件は特に制限されないが、温度は40〜120℃程度であり、乾燥時間は0.2〜3時間程度である。
【0058】
エポキシ樹脂多孔性支持体の厚さは特に制限されないが、強度、実用的な透水性及び塩阻止性の観点から20〜400μm程度であり、好ましくは50〜250μmである。また、エポキシ樹脂多孔性支持体は織布、不織布などで裏面を補強してもよい。
【0059】
以下、本発明の複合半透膜の製造方法の各工程を詳しく説明する。
【0060】
まず、多孔性支持体を親水化処理する(親水化処理工程)。多孔性支持体を親水化処理する方法としては、例えば、多孔性支持体をアルコールなどを含有する水溶液に接触又は浸漬する方法、大気圧プラズマで処理する方法などが挙げられる。
【0061】
アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、及びt−ブチルアルコールなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
アルコール含有水溶液中のアルコール濃度は特に制限されないが、3〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。
【0063】
多孔性支持体をアルコール含有水溶液に接触又は浸漬して親水化する時間は特に制限されないが、20〜1200秒間であることが好ましく、より好ましくは30〜600秒間であり、さらに好ましくは100〜400秒間である。
【0064】
その後、界面縮合法によりポリアミド系樹脂を含むスキン層を前記親水化処理した多孔性支持体の表面に形成する。当該界面縮合法は、多官能アミン成分を含む水溶液を親水化処理した多孔性支持体の表面に接触させる水溶液接触工程、及び前記水溶液を接触させた多孔性支持体の表面に多官能酸ハライド成分を含む有機溶液を接触させて多官能アミン成分と多官能酸ハライド成分とを界面重合させることにより、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む。かかる界面縮合法の条件等の詳細は、特開昭58−24303号公報、特開平1−180208号公報等に記載されており、それらの公知技術を適宜採用することができる。
【0065】
前記界面重合法において、水溶液中の多官能アミン成分の濃度は特に制限されないが、0.1〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4重量%である。多官能アミン成分の濃度が0.1重量%未満の場合にはスキン層にピンホール等の欠陥が生じやすくなり、また塩阻止性能が低下する傾向にある。一方、多官能アミン成分の濃度が5重量%を超える場合には、膜厚が厚くなりすぎて透過抵抗が大きくなって透過流束が低下する傾向にある。
【0066】
前記有機溶液中の多官能酸ハライド成分の濃度は特に制限されないが、0.01〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜3重量%である。多官能酸ハライド成分の濃度が0.01重量%未満の場合には、スキン層にピンホール等の欠陥が生じやすくなって塩阻止性能が低下する傾向にある。一方、多官能酸ハライド成分の濃度が5重量%を超える場合には、膜厚が厚くなりすぎて透過抵抗が大きくなり、透過流束が低下する傾向にある。
【0067】
前記有機溶液に用いられる有機溶媒としては、水に対する溶解度が低く、多孔性支持体を劣化させず、多官能酸ハライド成分を溶解するものであれば特に限定されず、例えば、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びノナン等の飽和炭化水素、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン等のハロゲン置換炭化水素などを挙げることができる。好ましくは沸点が300℃以下、より好ましくは沸点が200℃以下の飽和炭化水素である。これら有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記水溶液や有機溶液には、製膜を容易にしたり、得られる複合半透膜の性能を向上させるための目的で各種の添加剤を加えることができる。前記添加剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤、重合により生成するハロゲン化水素を除去する水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、及びトリエチルアミン等の塩基性化合物、アシル化触媒、特開平8−224452号公報記載の溶解度パラメータが8〜14(cal/cm1/2の化合物などが挙げられる。
【0069】
本発明においては、前記親水化処理工程時及び/又は前記水溶液接触工程時に、親水化処理に用いられる水溶液、多官能アミン成分を含む水溶液、又は多孔性支持体に直接又は間接的に20秒間以上の振動を加えることが必要である。振動を加える対象物は、欠陥要因を取り除くことができるものであれば特に制限されないが、前記水溶液又は多孔性支持体自体であることが好ましい。それにより、前記水溶液中に含まれる気泡又は多孔性支持体表面に生じた気泡、もしくはスキン層に欠陥を生じさせる異物などを効果的に除去することができ、多孔性支持体上に均一で欠陥のないスキン層を形成することができる。
【0070】
振動を加える方法としては、例えば、多孔性支持体をアルコール含有水溶液又は多官能アミン成分含有水溶液に接触又は浸漬している時に、超音波洗浄機などの超音波発生機を用いて前記水溶液に超音波振動を加える方法、もしくは超音波振動機を多孔性支持体自体又は多孔性支持体の搬送ロールに接触させて、多孔性支持体に直接又は間接的に超音波振動を加える方法などが挙げられる。なお、振動は、多孔性支持体を前記水溶液に接触又は浸漬させるのと同時に加えてもよく、所定時間接触又は浸漬させた後に加えてもよい。
【0071】
振動を加える時間は、20秒間以上であることが必要であり、好ましくは60秒間以上、より好ましくは100秒間以上である。また、得られる効果と製造効率を考慮すると10分間以下であることが好ましい。超音波振動を加える場合には、超音波の振動数は20〜200kHzであることが好ましく、より好ましくは35〜100kHzである。
【0072】
多孔性支持体の表面で多官能アミン成分を含む水溶液と多官能酸ハライド成分を含む有機溶液とを接触させた後、多孔性支持体上の形成膜を70℃以上で加熱乾燥してポリアミド系樹脂を含むスキン層を形成することが好ましい。形成膜を加熱処理することによりその機械的強度や耐熱性等を高めることができる。加熱温度は70〜200℃であることがより好ましく、特に好ましくは100〜150℃である。加熱時間は30秒〜10分程度が好ましく、より好ましくは40秒〜7分程度である。
【0073】
多孔性支持体の表面に形成したスキン層の厚みは特に制限されないが、通常0.05〜2μm程度であり、好ましくは、0.1〜1μmである。
【0074】
前記方法により作製された複合半透膜は、スキン層に欠陥がなく、従来の複合半透膜に比べて塩阻止性に優れるものである。
【0075】
また、複合半透膜の塩阻止性、透水性、及び耐酸化剤性等を向上させるために、従来公知の各種処理を施してもよい。
【実施例】
【0076】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0077】
〔評価及び測定方法〕
(エポキシ樹脂多孔性支持体の空孔率及び平均孔径の測定)
エポキシ樹脂多孔性支持体の空孔率及び平均孔径は、水銀圧入法により、(株)島津製作所製オートポア9520型装置にて測定した。なお、平均孔径は、初期圧7kPaの条件のメディアン径を採用した。
【0078】
(エポキシ樹脂多孔性支持体の表面の算術平均粗さの測定)
エポキシ樹脂多孔性支持体の表面の算術平均粗さ(Ra)は、(株)キーエンス製のVK9700を用いて測定した。
【0079】
(透過流束及び塩阻止率の測定)
作製した平膜状の複合半透膜を所定の形状、サイズに切断し、平膜評価用のセルにセットする。約1500mg/LのNaClを含みかつNaOHを用いてpH6.5〜7.5に調整した水溶液を25℃で膜の供給側と透過側に1.5MPaの差圧を与えて膜に接触させる。この操作によって得られた透過水の透過速度および電導度を測定し、透過流束(m/m・d)および塩阻止率(%)を算出した。塩阻止率は、NaCl濃度と水溶液電導度の相関(検量線)を事前に作成し、それらを用いて下式により算出した。
塩阻止率(%)={1−(透過液中のNaCl濃度[mg/L])/(供給液中のNaCl濃度[mg/L])}×100
【0080】
(スキン層の欠陥の評価)
前記透過流束及び塩阻止率の測定後、5重量%の染料(ダイレクトブルー、分子量:993)を含む水溶液を複合半透膜のスキン層上に滴下して染色の程度を評価した。染料で染まっている部分は、多孔性支持体が露出している部分であり、スキン層が欠損していることを示す。
【0081】
実施例1
(エポキシ樹脂多孔性支持体の作製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)、商品名「YD−128」、エポキシ当量:184〜194(g/eq))11.6g及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)、商品名「YD−011」、エポキシ当量:450〜500(g/eq))11.6gにポリエチレングリコール200(東京化成(株))60gを加え、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり練太郎」ARE−250)を用いて2000rpmで5分間撹拌し、溶解させてエポキシ樹脂/ポリエチレングリコール溶液を得た。次に、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(東京化成(株))5.2gをエポキシ樹脂/ポリエチレングリコール溶液に加え、自転・公転ミキサーを用いて2000rpmで10分間撹拌し、溶解させてエポキシ樹脂/ポリエチレングリコール/硬化剤溶液を得た。
【0082】
四隅に両面テープを設けたソーダガラス板上に、前記エポキシ樹脂/ポリエチレングリコール/硬化剤溶液を塗布し、その上に別のソーダガラス板を積層してサンドイッチ構造体を得た。その後、サンドイッチ構造体を乾燥機内に入れ、120℃で3時間反応硬化させた。冷却後にエポキシ樹脂シートを取り出し、これを水中に12時間浸漬してポリエチレングリコールを除去した。その後、50℃の乾燥機内で約4時間乾燥させてエポキシ樹脂多孔性支持体(厚さ:150μm、平均孔径:0.106μm、Ra:0.83μm)を得た。
【0083】
(複合半透膜の製造)
前記エポキシ樹脂多孔性支持体を、イソプロピルアルコールを30重量%含むアルコール水溶液で満たした超音波洗浄機(ULTRASONIC、型番CA4488Z)中に600秒間浸漬して親水化し、さらに600秒間超音波振動(振動数:38kHz)を加えた。次に、m−フェニレンジアミン3重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.3重量部、カンファースルホン酸8重量部、トリエチルアミン4重量部、イソプロピルアルコール10重量部、及び水84.8重量部からなるアミン水溶液を超音波洗浄機(ULTRASONIC、型番CA4488Z)に入れ、超音波振動(振動数:38kHz)を加えながら前記エポキシ樹脂多孔性支持体の表面を前記アミン水溶液に120秒間接触させた。余分なアミン水溶液を除去した後、該表面にトリメシン酸クロライド1重量%を含むイソオクタン溶液を塗布した。その後、余分なイソオクタン溶液を除去し、さらに120℃の熱風乾燥機中で3分間保持して、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を形成して複合半透膜を作製した。作製した複合半透膜を用いて透過試験、及び欠陥の評価を行った。結果を表1及び図1に示す。
【0084】
実施例2
m−フェニレンジアミン3重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部、カンファースルホン酸8重量部、トリエチルアミン4重量部、及び水84.8重量部からなるアミン水溶液を超音波洗浄機(ULTRASONIC、型番CA4488Z)に入れ、超音波振動(振動数:38kHz)を加えながらエポキシ樹脂多孔性支持体の表面を前記アミン水溶液に20秒間接触させた以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。作製した複合半透膜を用いて透過試験、及び欠陥の評価を行った。結果を表1及び図2に示す。
【0085】
実施例3
エポキシ樹脂多孔性支持体を、イソプロピルアルコールを30重量%含むアルコール水溶液で満たした超音波洗浄機(ULTRASONIC、型番CA4488Z)中に300秒間浸漬して親水化し、さらに300秒間超音波振動(振動数:38kHz)を加え、その後、エポキシ樹脂多孔性支持体の表面をアミン水溶液に20秒間接触させた際に超音波振動を加えなかった以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。作製した複合半透膜を用いて透過試験、及び欠陥の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
実施例4
(エポキシ樹脂多孔性支持体の作製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)、エピコート828)139重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)、エピコート1010)93.2重量部、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン52重量部、及びポリエチレングリコール200(三洋化成(株))650重量部を混合してエポキシ樹脂組成物を調製した。当該エポキシ樹脂組成物を円筒状モールド(外径35cm、内径10.5cm)内に高さ30cmまで充填し、その後25℃で12時間反応硬化させ、さらに130℃で18時間反応硬化(ポストキュア)させて円筒状樹脂ブロックを作製した。この円筒状樹脂ブロックを円筒軸を中心に回転させながら、切削装置(東芝機械社製)を用いて、該ブロックの表面を135μmの厚みで連続的にスライスして長尺状のエポキシ樹脂シート(長さ150m)を得た。このエポキシ樹脂シートを水中に12時間浸漬してポリエチレングリコールを除去した。その後、50℃の乾燥機内で約4時間乾燥してエポキシ樹脂多孔性支持体(厚さ:120μm、空孔率45%、平均孔径:0.101μm、Ra:0.81μm)を得た。
【0087】
前記エポキシ樹脂多孔性支持体を、イソプロピルアルコールを30重量%含むアルコール水溶液で満たした超音波洗浄機(ULTRASONIC、型番CA4488Z)中に180秒間浸漬して親水化すると同時に超音波振動(振動数:38kHz)を加えた。その後、実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。作製した複合半透膜を用いて透過試験、及び欠陥の評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
比較例1
m−フェニレンジアミン3重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部、カンファースルホン酸8重量部、トリエチルアミン4重量部、及び水84.8重量部からなるアミン水溶液を、実施例1で作製したエポキシ樹脂多孔性支持体の表面に塗布した。余分なアミン水溶液を除去した後、該表面にトリメシン酸クロライド1重量%を含むイソオクタン溶液を塗布した。その後、余分なイソオクタン溶液を除去し、さらに120℃の熱風乾燥機中で3分間保持して、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を形成して複合半透膜を作製した。作製した複合半透膜を用いて透過試験、及び欠陥の評価を行った。結果を表1及び図3に示す。
【0089】
比較例2
実施例1で作製したエポキシ樹脂多孔性支持体を、イソプロピルアルコールを30重量%含むアルコール水溶液で満たした超音波洗浄機(ULTRASONIC、型番CA4488Z)中に600秒間浸漬して親水化し、さらに10秒間超音波振動(振動数:38kHz)を加えた。次に、m−フェニレンジアミン3重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部、カンファースルホン酸8重量部、トリエチルアミン4重量部、及び水84.8重量部からなるアミン水溶液を超音波洗浄機(ULTRASONIC、型番CA4488Z)に入れ、超音波振動(振動数:38kHz)を加えながら前記エポキシ樹脂多孔性支持体の表面を前記アミン水溶液に15秒間接触させた。その後、実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。作製した複合半透膜を用いて透過試験、及び欠陥の評価を行った。結果を表1及び図4に示す。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の製造方法により得られる複合半透膜は、超純水の製造、かん水または海水の脱塩などに好適に用いられ、また染色排水や電着塗料排水などの公害発生原因である汚れなどから、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去・回収し、排水のクローズ化に寄与することができる。また、食品用途などで有効成分の濃縮、浄水や下水用途等での有害成分の除去などの高度処理に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性支持体を親水化処理する親水化処理工程、多官能アミン成分を含む水溶液を親水化処理した多孔性支持体の表面に接触させる水溶液接触工程、及び前記水溶液を接触させた多孔性支持体の表面に多官能酸ハライド成分を含む有機溶液を接触させて多官能アミン成分と多官能酸ハライド成分とを界面重合させることにより、ポリアミド系樹脂を含むスキン層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む複合半透膜の製造方法において、
前記親水化処理工程時及び/又は前記水溶液接触工程時に、親水化処理に用いられる水溶液、多官能アミン成分を含む水溶液、又は多孔性支持体に直接又は間接的に20秒間以上の振動を加えることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
【請求項2】
前記振動が超音波振動である請求項1記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項3】
前記親水化処理工程は、多孔性支持体をアルコール含有水溶液中に浸漬する工程である請求項1又は2記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項4】
多孔性支持体の平均孔径が0.01〜0.4μmである請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項5】
多孔性支持体の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.6μm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項6】
多孔性支持体の形成材料がエポキシ樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られる複合半透膜。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−55858(P2012−55858A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203331(P2010−203331)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】