説明

複合印刷版を製造する方法

【課題】複合印刷版を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、レリーフを形成することのできる単一前駆体とキャリアとから複合印刷版を製造する方法に関する。単一前駆体は、補強エラストマー層を有する単一感光性要素または単一レーザー彫刻可能な印刷要素とすることができる。単一前駆体は、キャリアのサイズの少なくとも70%のサイズを有する。単一前駆体は、前駆体を、位置合わせマーキングのないキャリア上に凡そ位置合わせすることによりキャリア上に配置される。単一前駆体の精密な位置合わせは、複合版上に位置合わせされた画像を形成するためにコンピュータから生成されたデジタル情報を用いて行われる。本方法は、特にレリーフ印刷用複合印刷版を製造するのに好適であり、特に波形基材のフレキソ印刷用複合印刷版を製造するのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合印刷版を製造する方法、特に、レリーフ印刷に用いる複合印刷版を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版は、波形カートンボックス、段ボール箱、紙の連続ウェブおよびプラスチックフィルムの連続ウェブをはじめとするパッケージング材料の印刷に広く用いられている。フレキソ印刷版は、インクが隆起画像表面から運ばれ、基材へ転写されるレリーフ印刷の形態である。フレキソ印刷版は、(特許文献1)および(特許文献2)に記載されているように、典型的に、エラストマーバインダー、少なくとも1つのモノマーおよび光開始剤を含む光重合可能なモノマーから製造することができる。感光性要素は、通常、支持体と、カバーシートまたは多層カバー要素との間に介挿された光重合可能な組成物の固体層を有する。
【0003】
段ボール箱およびレリーフ画像印刷版を用いて印刷されるその他の比較的大きな対象物は、全表面積のほんの一部にしか実際の印刷を含まないことが多い。当業者は、比較的大きな対象物は、複数のレリーフ画像印刷版を、一般的なキャリアシートにマウンティングすることにより製造される複合印刷版により印刷することが多い。しかしながら、個々の版は、実際に印刷の必要な対象物の部分に対応するキャリアの部分のみにマウントされる。ただし、構成レリーフ画像版をマウンティングするこのシステムは面倒なものであり、高品質印刷および多色再現のためにプレスに正確な位置合わせを確保しながら、版をキャリアに慎重に接着する必要がある。多色再現については、単一版を個々の色のそれぞれの印刷に用い、互いに版の正確な位置合わせが、特に重要である。
【0004】
複合印刷版を製造する他の方法は、構成光硬化性要素の正確な位置合わせを必要としない(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)および(特許文献7)等に示唆されてきた。概して、これらの方法には、少なくとも1つの光硬化性要素を、キャリアの表面に凡そ位置合わせして配置してから、要素の表面に対してコンピュータ生成ネガを転写することが含まれる。これらの方法には、光硬化性要素の位置を反映することを意図された印刷要素、すなわち、キャリアの目視認識される修正の位置合わせ情報を転写することが含まれる。ネガまたはマスクは、要素の表面にインクを噴射する、またはレーザー放射線を露光して、放射線不透過層を、要素表面から選択的に除去することにより生成することができる。
【0005】
段ボールおよびその他大きな対象物に印刷する他の方法は、対象物の全表面積に対応する表面積を有する単一のレリーフ画像版を製造することである。しかしながら、対象物の表面の一部のみを印刷する必要があるため、レリーフ画像版の僅かな部分しか、実際には、インク転写に用いない。版の残りは、未使用であり、レリーフ画像の部分を形成する際に、同時に洗い出し処理により除去される。しかしながら、未使用部分の除去によって、洗い出し装置およびレリーフ画像版に過度の応力がかかる。このように、広い未使用部分、すなわち、未画像形成部分は処理の前に切り取られる。
【0006】
段ボール印刷のある最終用途において、波形基材から形成された構成部品の全体のサイズに比べて、段ボールの比較的小さな領域のみを印刷する必要がある。このように、感光性要素は、キャリアの、印刷に必要な場所のみに選択的にマウントするのが望ましい。
【0007】
基材上の印刷画像を位置合わせするために、1つまたは複数のレリーフ印刷版の、印刷シリンダまたはキャリアへの正確な配置を確保するのが望ましい。レリーフ印刷版は、印刷が、印刷シリンダの軸に平行で、斜めにならないように、シリンダに配置されなければならない。多色印刷において、印刷される各色についてレリーフ印刷版は一列に並んで、異なる色の印刷画像が互いに位置合わせされるようにしなければならない。位置合わせエラーがあると、色の重なり、無色の空間、色ずれおよび/または画像細部の劣化が生じる。
【0008】
これらの従来の方法でも、複合印刷版を製造する別のプロセスが当該技術において尚必要とされている。特に、複合印刷版上での構成レリーフ画像印刷版の正確な位置合わせの別の簡便なプロセスが尚必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,323,637号明細書
【特許文献2】米国特許第4,427,759号明細書
【特許文献3】米国特許第5,846,691号明細書
【特許文献4】米国特許第6,312,871号明細書
【特許文献5】米国特許第6,312,872号明細書
【特許文献6】米国特許第6,399,281号明細書
【特許文献7】米国特許第6,472,121号明細書
【特許文献8】米国特許第5,262,275号明細書
【特許文献9】米国特許第5,719,009号明細書
【特許文献10】欧州特許第0 741 330 B1号明細書
【特許文献11】米国特許第5,506,086号明細書
【特許文献12】米国特許第5,607,814号明細書
【特許文献13】米国特許第5,766,819号明細書
【特許文献14】米国特許第5,840,463号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第0 891 877A号明細書
【特許文献16】米国特許第5,760,880号明細書
【特許文献17】米国特許第5,654,125号明細書
【特許文献18】米国特許出願第12/349608号明細書
【特許文献19】米国特許出願第12/401106号明細書
【特許文献20】独国特許出願公開第38 28 551号明細書
【特許文献21】米国特許第3,796,602号明細書
【特許文献22】米国特許第5,015,556号明細書
【特許文献23】米国特許第5,175,072号明細書
【特許文献24】米国特許第5,215,859号明細書
【特許文献25】国際公開第98/13730号パンフレット
【特許文献26】米国特許第5,279,697号明細書
【特許文献27】米国特許第6,797,454号明細書
【特許文献28】欧州特許出願公開第0 017927号明細書
【特許文献29】米国特許第4,806,506号明細書
【特許文献30】米国特許第5,798,202号明細書
【特許文献31】米国特許第5,804,353号明細書
【特許文献32】米国特許第6,757,216 B2号明細書
【特許文献33】米国特許第5,562,039号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Plastic Technology Handbook,Chandlerら編(1987年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、a)光重合可能な組成物の層と、光重合可能な層上に配置された赤外線感応層とを含み、平坦な領域を有する1つの感光性要素を提供する工程と、b)要素を、要素の配置のためのマーキングおよびインジケータのないキャリアに隣接配置する工程であって、ここでキャリアは平坦な領域を有し、1つの感光性要素の平坦な領域がキャリアの平坦な領域の少なくとも70%である工程と、c)要素をキャリア上に固定する工程と、d)赤外線感応層を、赤外線レーザー放射線により像様露光して、要素にマスクを形成する工程と、e)マスクを通して、要素を化学線に全体露光する工程と、f)e)の要素を処理して、キャリア上にレリーフ構造を形成する工程とを含む複合印刷版を製造する方法を提供する。
【0012】
本発明の他の態様によれば、a)補強エラストマー層を含み、平坦な領域を有する1つのレーザー彫刻可能な前駆体を提供する工程と、b)前駆体を、前駆体の配置のためのマーキングおよびインジケータのないキャリアに隣接配置する工程であって、ここでキャリアは平坦な領域を有し、1つの前駆体の平坦な領域がキャリアの平坦な領域の少なくとも70%である工程と、c)前駆体をキャリアに固定する工程と、d)補強層をレーザー放射線に露光して、補強層を深さ方向に選択的に除去し、キャリア上にレリーフ構造を形成する工程とを含む複合印刷版を製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、レリーフとキャリアを形成することのできる単一前駆体から複合印刷版を製造する方法である。単一前駆体は、感光性要素または補強エラストマー層を有するレーザー彫刻可能な要素とすることができる。本方法は、特にレリーフ印刷用複合印刷版を製造するのに好適であり、特に波形基材のフレキソ印刷用複合印刷版を製造するのに好適である。複合印刷要素は、キャリア上の前駆体の凡その位置を目視で推定することにより、1つの前駆体をキャリアの面にマウンティングし、前駆体をデジタル的に画像形成して、その印刷画像を印刷シリンダと位置合わせすることにより製造される。単一前駆体は、キャリアのサイズに相対的なサイズを有しており、前駆体の凡その位置の配置によって、デジタル画像形成で、前駆体に、複合印刷版により印刷される画像を確実に作製することができる。
【0014】
本発明は、複合印刷版を製造するのに、別個のレリーフ印刷要素を手で位置合わせする煩雑な要件を排除する方法を提供する。段ボール印刷のある最終用途において、波形基材から形成された構成部品の全体のサイズに比べて、波形基材の比較的大きな領域に印刷される。しかしながら、段ボール印刷においては、印刷シリンダは、印刷機から典型的に取り外さないため、印刷版の画像を印刷シリンダに位置合わせするのを難しくさせている。このように、印刷版は、段ボール印刷シリンダに直接マウントされず、代わりに、キャリアにマウントされて、印刷版の画像を、段ボール印刷シリンダおよび波形基材に位置合わせする能力が提供される。
【0015】
本発明の方法によれば、必要な好適なサイズの1つの前駆体を、凡その位置でキャリアにマウントし、基材に最終的に印刷される領域には位置合わせしない。1つの前駆体の正確な位置合わせは、コンピュータから生成されたデジタル情報を用いることによりなされて、複合版に位置合わせされた画像が形成される。ある実施形態において、1つの前駆体の正確な位置合わせは、感光性要素である前駆体、および複合版に対してコンピュータから生成されたデジタル情報を用いたマスク画像の形成により達成される。他の実施形態において、1つの前駆体の正確な位置合わせは、補強エラストマー層を有し、コンピュータから生成されたデジタル情報を用いて、彫刻する、すなわち、材料を深さ方向に層から除去して、複合版のレリーフ構造を形成するレーザー彫刻可能な要素である前駆体によりなされる。これによってまた、キャリアのマーキングと一列に並べるのに各感光性要素のレリーフ画像に位置合わせマーキングを含む従来の方法の複雑さも排除される。また、本発明は、複合印刷版の通常の製造プロセスに容易に取り込むことができる。本発明の方法を実施するのに、さらなる装置は必要ない。キャリア上の単一の印刷要素を凡そ位置合わせすることにより複合印刷版を製造する本発明の方法には、特に、キャリアに直接マークを付けて、感光性要素を配置する従来の方法に比べて、追加の利点がある。好適なサイズの前駆体をキャリアに直接マウンティングすることによって、消費される材料を節約し、複合印刷版を製造する材料のコストおよび/または時間を減じることができる。キャリアには、後の1つ以上の前駆体の配置を混同させるマーキングがないため、キャリアは、後の印刷版の製造に再利用することができる。
【0016】
一実施形態において、レリーフ印刷用複合印刷版の製造に用いる単一前駆体は、少なくとも1つの光重合可能な層を含む感光性要素である。たいていの実施形態において、レリーフ印刷用複合印刷版の製造に用いる感光性要素は、支持体と支持体に隣接した少なくとも1つの光重合可能な層とを含む。光重合可能な層は、バインダー、少なくとも1つのモノマーおよび光開始剤を含むエラストマー層である。版のレリーフ画像をキャリアにマウンティングする前に既に形成されたキャリアに版をマウンティングするいくつかの先行技術とは異なり、たいていの実施形態において、本発明の方法は、未硬化または「生」、すなわち、像様露光されていない1つの感光性要素をキャリアに固定する。一実施形態において、感光性要素は、デジタル情報に基づいてマスク画像を形成することのできる光重合可能な層(支持体の反対)の上に配置された赤外線感応層を含む。赤外線感応層は、感光性要素と一体化できる、または別個の要素と関連させて、組み合わせて集合体を形成することができる。赤外線感応層を有する未硬化の感光性要素は、本明細書において、デジタル感光性要素と呼ばれることがある。ある他の実施形態において、本発明の方法は、キャリアに、補強エラストマー層を有するレーザー彫刻可能な要素である1つの前駆体を固定する。場合によっては、レーザー彫刻可能な要素は、光化学的に補強された、すなわち、化学線に全体またはブランケット露光により硬化された感光性要素であるが、硬化した感光性要素は、未露光部分および露光部分またはレリーフ画像は含んでいない。レーザー彫刻可能な要素が光化学的に補強された実施形態において、補強エラストマー層はまた、本明細書では、デジタル感光性要素と呼ばれる。感光性要素およびレーザー彫刻可能な要素はまた、デジタル前駆体とも呼ばれる。
【0017】
本発明の方法は、キャリアの大部分をカバーするのに十分なサイズの単一前駆体を提供することにより、複合印刷版を製造するものである。1つ(すなわち、単一の)前駆体を、キャリアにマウンティングするのに好適なサイズとすれば、複合印刷版が、基材と位置合わせされて最終的に印刷されるよう、前駆体を凡その位置に配置するのに、キャリアにテンプレートまたは位置合わせマークは必要ない。1つの前駆体は、前駆体のサイズまたは平坦な領域を画定する長さおよび幅の寸法を備えた側端を有し、長さおよび幅はそれぞれ厚さより大きく、2つの実質的に平坦な対向する主面を有する。
【0018】
キャリアに固定された単一前駆体は、複合印刷版により印刷するのに好適なキャリアにレリーフ構造を形成する。キャリアのデジタル前駆体は、デジタル方法を実施することにより、複合印刷版、すなわち、レリーフ印刷構造をキャリアに変換して、正確な位置合わせを確保する一体化画像を前駆体に形成する。場合によっては、前駆体に形成された一体化画像は、感光性要素に関連したマスクであり、キャリアの感光性要素は一体化マスクを通して化学線に露光され、処理されて、未露光(すなわち、未硬化)部分が除去されて、レリーフが形成される。ある他の場合には、前駆体に形成された一体化画像が、レリーフ画像を形成する彫刻画像であり、複合印刷版に、印刷に好適なレリーフを形成するのに任意のさらなる工程を行う必要がない。デジタル方法は、コンピュータから生成されたテキストおよび画像を含むグラフィック情報(データファイル)を、複合印刷版の前駆体にデジタル処理により(すなわち、コンピュータ制御により)転写する任意の方法に係る。ある実施形態において、デジタル方法には、不透明領域と透明領域の一体化マスク画像として機能する感光性層上に配置され、感光性要素と一体化された画像の形成が含まれる。他の実施形態において、デジタル方法には、エラストマー層にレリーフ画像を直接形成することが含まれる。デジタル方法はまた、コンピュータ・トゥ・プレート(ダイレクト刷版)技術または方法とも呼ばれる。デジタル方法また、本明細書において、デジタル技術またはデジタグ画像技術とも呼ばれる。
【0019】
当業者に周知されているとおり、複合印刷版により印刷されるテキストおよび画像を含むグラフィック情報のデザインは、コンピュータソフトウェアに捕捉および操作されて、ページレイアウトデータを含むデータファイルが作成される。ページレイアウトデータは、グラフィック情報が「ページ」または基材に印刷される1つ以上の場所を表わすベクトルまたはビットマップデータに基づくものとすることができる。ページレイアウトデータを用いて、複合印刷版に必要な感光性要素の数およびサイズを決めることができる。ページレイアウトデータに基づいて、コンピュータは、典型的に、デジタル前駆体の切断ガイドを生成する。しかしながら、コンピュータまたはオペレータは、前駆体を2つ以上のセグメントへと切断するのが望ましくない、または必要ないと判断したら、キャリアに単一の前駆体を用いることを選択してもよい。前駆体を、別個にマウントするのに必要な2つ以上のセグメントへと切断するのに、材料および/または資源の使用が非効率的となるような性質を、画像のサイズおよび/またはグラフィック情報が有している恐れがある。本発明の複合印刷版は、1つのみのデジタル前駆体をキャリアに含む。それでも、前駆体は、用いるキャリアのサイズに対して好適なサイズへと切断することに留意しなければならない。前駆体は、コンピュータに接続された自動切断テーブルに配置され、ページレイアウトデータに基づいて好適なサイズへと切断することができる。特に好適な切断テーブルは、EskoArtwork製Kongsbergデジタル変換テーブルである。他の実施形態において、前駆体は、ページレイアウトデータに基づいて好適なサイズへと手で切断することができる。本発明において、複合印刷版は、キャリアのサイズ、すなわち、平坦な領域に対して、好適なサイズ、すなわち、平坦な領域を有する1つのみの前駆体を含む。
【0020】
本発明の複合印刷版について、前駆体の平坦な領域がキャリアの平坦な領域の少なくとも70%であるとき、1つの前駆体は、好適なサイズの印刷前駆体のサイズに少なくとも従ったサイズを有する。すなわち、キャリアの平坦な領域の少なくとも70%が、キャリアに固定されたとき、単一のデジタル前駆体によりカバーされている。キャリアの平坦な領域のパーセンテージとして表わされる単一前駆体の平坦な領域は、一部の増分を含め、約70%〜約99%の任意のパーセンテージの増分で生じ得る。ある実施形態において、1つの前駆体の平坦な領域は、キャリアの平坦な領域の約99%未満である。ある実施形態において、1つの前駆体の平坦な領域は、キャリアの平坦な領域の98%未満である。ある実施形態において、1つの前駆体の平坦な領域は、キャリアの平坦な領域の96%未満である。他の実施形態において、1つの前駆体の平坦な領域は、キャリアの平坦な領域の75%である。さらに他の実施形態において、1つの前駆体の平坦な領域は、キャリアの平坦な領域の約70%〜98%である。さらに他の実施形態において、1つの前駆体の平坦な領域は、キャリアの平坦な領域の約70〜96%である。キャリアの平坦な領域の70%〜約99%である平坦な領域を有する単一前駆体によって、ページレイアウトの画像がデジタル方法により前駆体に完全に形成されるようにするために、キャリアに位置合わせマークまたはその他インジケータを必要とすることなく、デジタル前駆体のキャリアの凡そ位置合わせが確保される。
【0021】
たいていの実施形態において、単一前駆体は、キャリアを完全にカバーしない。すなわち、前駆体の平坦な領域は、キャリアの平坦な領域の100%未満である。以下は、前駆体をキャリアに隣接して配置するときに、複合印刷版のオペレータまたは作成者が考慮すべき事項である。マウンティングバーを先端(leading edge)に取り付けることができるよう、キャリアには、前駆体によりカバーされていない少なくとも十分なオープンスペースが必要である。ある実施形態において、マウンティングバーを取り付けるために、キャリアの先端に、約1〜3インチ(2.54〜7.6cm)のオープンスペースが割り当てられる。たいていの実施形態において、前駆体の平坦な領域は、前駆体の長さが少なくともキャリアの長さより短くなるようなものである。ある実施形態において、前駆体の長さと幅の寸法の両方が、キャリアの長さおよび幅より少ないと、前駆体のないキャリアにオープンスペースの縁部を与える。前駆体に対するキャリアのオープンスペースの縁部は、要素の側端周囲で実質的に等間隔とする、または要素の側端周囲で等間隔としなくしてもよい。多くの実施形態において、前駆体の1つ以上の側端と一列に並べる、または隣接させて、キャリアの対応する側端と一致させるために、前駆体をキャリアと重ね合わせるべきではない。前駆体が感光性要素である実施形態においては特に、前駆体の端部カバー材料の適用のために、キャリアの前駆体周囲にある程度オープンスペースが必要である。多くの実施形態において、キャリアのオープンスペースの縁部は、前駆体を実質的に囲む。前駆体を囲むオープンスペースの縁部は、前駆体の側端の横領域に端部カバー材料を適用できるのに十分な大きさだけ必要である。端部カバー材料は、要素がキャリアにマウントされた後、前駆体の側端に適用され、それを用いて、側端での化学線による露光を遮断する。
【0022】
キャリアに隣接するデジタル前駆体の配置によって、ページレイアウトデータに基づく印刷画像を含むキャリアの凡その位置に要素が配置される。任意の位置合わせ情報を有する、または含むために、キャリア自体は修正されていないため、キャリアはマーキングまたはその他位置合わせ情報の存在を排除する平坦な表面を有している。たいていの実施形態において、マウンティングバーおよび前駆体の側端周囲のオープンスペースのためにキャリアの先端に必要なオープンスペースを考慮に入れて、前駆体は、キャリアの凡その位置の目視での推定により配置される。前駆体は、キャリアの1つ以上の側端に張り出さない。前駆体の平坦な表面積は、キャリアの平坦な領域の約70%〜約99%であるため、凡その位置の要素の配置によって、印刷される全画像が、像様露光中、デジタル前駆体で捕捉される。印刷画像は、デジタル方法の像様露光によりキャリアに位置合わせされる。たいていの実施形態において、前駆体は、感光性要素が、キャリアの実質的に中心または中心から外れた凡その位置で目視により推定することにより配置される。
【0023】
キャリアは、印刷用前駆体の位置を保持し、維持する。たいていの実施形態において、キャリアはシート形態にあるが、限定はされず、円筒形フォームを含むことができる。シート形態のキャリアは、キャリアのサイズまたは平坦な領域を決める長さおよび幅の寸法を備えた側端を有し、長さおよび幅は厚さより実質的に大きく、2つの実質的に平坦な対向する主面を有する。キャリアが円筒形の実施形態において、サイズは、1つの前駆体を固定する円筒形キャリアの外側表面の表面積を基準とする(円筒の末端表面は除く)。長さは、円筒キャリアの外側表面の周囲に匹敵し、幅は、円筒キャリアの高さに匹敵する。キャリアには、単一感光性要素の配置のためのマーキングまたはインジケータはない。本発明において、キャリアシートにはマークがないため、ある実施形態において、第1の複合印刷版のキャリアは再生できる、または1つの前駆体を第1の複合印刷版のキャリアから除去した後の第2の複合印刷版において再利用できる。(キャリアを再利用する場合には、キャリアに位置合わせインジケータを不可逆的にマーキングすると、第2の複合印刷版の前駆体のセグメントの配置に混乱をきたす可能性がある。)
【0024】
シートキャリアとして用いるのに好適な材料は、印刷シリンダ周囲を包む可撓性のあるもの、特に印刷中に変形や伸張に対する抵抗性のあるもの、および処理中の変形やサイズ変化に抵抗性のあるものであれば何でもよい。キャリアとして好適な材料としては、これらに限られるものではないが、ビニルプラスチック、リノリウム、金属およびポリマーフィルム、例えば、ポリエステルが例示される。キャリアの好適な厚さは、0.005〜0.185インチ(0.013〜0.47cm)である。多くの実施形態において、キャリアは、厚さ0.010〜0.030インチ(0.025〜0.076cm)のポリ塩化ビニル(PVC)またはポリエチレンテレフタレートのポリマーフィルムである。円筒形キャリアとして用いるのに好適な材料は、印刷スリーブと一般的に呼ばれる円筒形印刷版に用いられる任意の支持体とすることができる。スリーブまたは円筒支持体の種類は本発明により限定されない。スリーブは、可撓性材料の単層または多層から形成してよい。ある実施形態において、ポリマーフィルムでできた可撓性スリーブが好適である。他の実施形態において、ニッケル等の金属またはガラスエポキシのスリーブが好適である。スリーブの壁厚さは、10ミル(0.025cm)未満〜80ミル(0.203cm)以上である。キャリアシートの対向端部を、任意の適切な手段、例えば、溶融溶解、テープ留め、ステッチ、締め付け、ステープル留め、テープ留め、糊づけおよび縫製により結合して、円筒形キャリアを形成することができる。キャリアは、前駆体をキャリアシートに固定する前、好ましくは後に、円筒形へ形成することができる。
【0025】
キャリア(シート形態)は、少なくとも2つの開口部または穴のある先端または前縁を有する。少なくとも2つの穴が、先端近くに平行に列で間隔をあけて配置されている。穴のサイズ、形状および数(少なくとも2つの穴より多い)は、本発明においては特に限定されない。キャリアの先端に少なくとも2つの穴があると、キャリアを印刷シリンダと(およびレーザー露光装置において)位置合わせすることができる。キャリアの先端に少なくとも2つの穴を用いるとまた、マウンティングのためのマウンティングバーにキャリアを固定することもできる。キャリアの先端の穴は、従来の機器により機械加工、穿孔またはドリル加工することができる。従来の穿孔機器は、Stoesser、Burgess IndustriesおよびCarlson等の印刷業界のフィルムパンチのメーカーのものである。キャリアの各先端に穴を開けたら、単一感光性要素をキャリア近くに配置する。たいていの実施形態において、感光性要素はキャリアの上部に配置される。
【0026】
キャリアが円筒形の実施形態において、キャリアは、画像形成またはその他装置に関連した支持体シリンダに(予備)マウントされ、1つの感光性要素が円筒形キャリアに隣接して配置される。感光性要素の1つ以上の端部をキャリアにテープ留めまたはピン留めすることによりマウンティングしている間、感光性要素は、キャリアの定位置に保持することができる。
【0027】
単一デジタル前駆体はキャリアにマウントされ、デジタル方法により画像の位置合わせを可能とするキャリアの定位置に固定される。このように、1つのデジタル前駆体は、複合印刷版の作成者の目視による推定により凡その位置でキャリアにマウントされる。一実施形態において、赤外線感応層と反対の要素の側がキャリア上にある、すなわち隣接するように、前駆体としての感光性要素は、キャリアにマウントされる。たいていの実施形態において、感光性要素の支持体はキャリアに隣接する。要素の平坦な領域がキャリアの平坦な領域の約70%〜約99%をカバーするように、1つの前駆体は、キャリアに配置およびマウントされる。キャリアのマウントされた前駆体の外側表面(支持体の反対)への、グラフィック情報のコンピュータ制御されたデジタル転写により、複合印刷版に正確な位置合わせがなされる。
【0028】
1つの前駆体は、当業者に知られた多くの手段のいずれかを用いて固定またはマウントすることができる。たいていの実施形態には、両面接着テープまたはその他好適な接着剤または糊を、感光性要素、キャリアまたは両方に適用することが含まれる。前駆体をキャリアに固定するその他の方法が本発明に包含され、これらに限られるものではないが、ピン留め、ステッチおよびステープル留めが挙げられる。ある実施形態において、両面接着テープは、前駆体の支持体に適用される。他の実施形態において、支持体は前駆体から除去され、両面接着テープは、支持体が前にあった前駆体の表面に適用される。
【0029】
前駆体が感光性要素である実施形態において、感光性要素は、光重合可能な層の上に配置された赤外線感応層を含み、一体化マスクは、赤外線感応層からデジタル的に形成され、感光性要素に一体化マスクを通して化学線に露光し、処理すると、層の未露光部分が除去され、印刷に好適なレリーフが形成される。1つの感光性要素をマスクを通して化学線に露光するのに備えて、イン・サイチュのマスク画像をまず、支持体の反対の光重合可能な層の表面に形成、またはその上に配置する。イン・サイチュのマスクはまた、一体化マスク画像または一体化マスクとも呼ばれる。IR感応性層自体は、感光性要素の一体化マスキング層を形成する、または1つ以上の隣接する(放射線不透過)層と共に用いて、一体化マスク層を要素に形成することができる。マスクは、画像を形成する不透明な領域と「透明な」領域を含む。マスクの不透明な領域は、下にある光重合可能な材料が放射線に露光されないようにし、暗い領域にカバーされた光重合可能な層の領域は重合されない。マスクの「透明な」領域は、光重合可能な層を、化学線に露光して、重合または架橋する。光重合可能な層の像様露光に必要な画像は、任意のデジタル方法により生成することができる。キャリアの感光性要素にあるレリーフ画像の正確な位置合わせは、要素が凡その位置に配置され、キャリアに固定された後に実施されるデジタル技術により、要素に一体化マスク画像を形成することによりなされる。
【0030】
デジタル感光性要素は、赤外線感応層を含み、これは、ある実施形態においては、化学線不透過層としても機能し得、レーザー放射線を用いて、感光性要素のマスクを形成するデジタル画像技術に用いられる(従来のフォトツールフィルム画像の代わりに)。デジタル方法は、光重合可能な層に、イン・サイチュで、またはその上に配置されたマスク画像をレーザー放射線により形成する。マスク画像を形成するデジタル方法は、像様露光前に、感光性要素を作製するのに1つ以上の工程を必要とする。通常、イン・サイチュのマスク形成のデジタル方法は、放射線不透過層を、支持体の反対の感光性要素の表面から選択的に除去するか、またはそこへ転写するものである。黒色、例えば、暗い無機顔料、例えば、カーボンブラックおよびグラファイト、顔料、金属および金属合金の混合物である赤外線感応層の材料の存在は、赤外線感応材料と放射線不透過材料の両方として機能する。赤外線レーザー露光は、750〜20,000nmの範囲で放射する様々な種類の赤外線レーザーを用いて実施することができる。780〜2,000nmの範囲で放射するダイオードレーザーおよび1064nmで放射するNd:YAGレーザーをはじめとする赤外線レーザーが好ましい。イン・サイチュのマスク画像は、化学線への全体露光の後の工程のために、感光性要素に残る。
【0031】
感光性要素表面のイン・サイチュのマスクのデジタル形成に用いるある好適な赤外線レーザー露光装置は、CYREL(登録商標)Digital Imager(Gent,BelgiumのEskoArtworkより販売)である。従来、レーザー露光装置は、平坦な感光性印刷要素の一端を保持し、レーザー画像形成中、要素をドラムにしっかりとマウントするクランプを有する回転ドラムを含む。ドラムは、平坦な要素の反対の端部を保持する第2のクランプを有していてもよい。レーザー露光装置のドラムおよび/またはクランプを修正して、複合印刷版のマウンティングに適合させてもよい。一実施形態において、取り外し可能なマウンティングバーを、レーザー露光装置において複合印刷をマウンティングするのに用いることができる。取り外し可能なマウンティングバーは、ドラムのクランプの長さと同じ、または実質的に同じ長さを有する(すなわち、幅)。長さに沿って、マウンティングバーは、ドラムおよび1つ以上の隆起したピンを一列に並べて、複合印刷版をマウンティングバー(およびドラム)と一列に並べる1つ以上の開口部を有する。ドラムは、マウンティングバーの1つ以上の開口部と係合する。クランプまたはその近傍に1つ以上のピンを有するドラムピンとマウンティングバーの開口部の係合によって、マウンティングバーがドラム(およびレーザー)と位置合わせされる。マウンティングバーの隆起したピンは、キャリアの先端の穴に対応するように配置される。複合印刷版は、キャリアの先端の穴を、マウンティングバーの隆起したピンと係合し、キャリアの先端をクランプで捕捉することにより、ドラムに固定される。マウンティングバーおよび複合印刷版がクランプにより固定されるときは、その長さに沿って、クランプの一部を切り取って、マウンティングバーの隆起したピンに適合させてもよい。ある実施形態において、ドラムのマウンティングバーは、複合印刷版を印刷シリンダに固定するのに用いるマウンティングバーとは分離された別のものである。他の実施形態において、レーザー露光装置のドラムおよびクランプを修正して、複合印刷版を印刷シリンダに固定するのに用いるマウンティングバーと同じマウンティングバーに適合させてもよい。
【0032】
あるデジタル方法において、感光性要素は、最初、光重合可能な層の全表面をカバーする、または実質的にカバーする赤外線感応層を含んでいる。赤外線感応層に赤外線レーザー放射線を像様露光して、光重合可能な層、すなわち、イン・サイチュのマスクに、またはその上に配置された画像を形成する。ファンによる(特許文献8)および(特許文献9)、およびファンによる(特許文献10)に開示されているとおり、赤外線レーザー放射線は、赤外線感応層(すなわち、放射線不透過層)を、光重合可能な層から選択的に除去、例えば、アブレートまたは気化することができる。赤外線感応層に隣接する材料捕捉シートが、Van Zoerenによる(特許文献11)に開示されているとおり、感光性要素から除去される際に、材料を捕捉するために、レーザー露光中に存在していてよい。感光性要素から除去されなかった赤外線感応層の一部のみが、放射線不透過材料のイン・サイチュのマスクを形成する要素に残る。
【0033】
マスク形成の他のデジタル方法において、感光性要素は、赤外線感応層を最初は含んでいない。放射線不透過層として赤外線感応層を含む別の要素が、感光性要素と集合体を形成して、放射線不透過層が、典型的に、光重合可能な層である支持体の反対の感光性要素の表面に隣接するようにする。(存在する場合、光重合可能な層に関連するカバーシートは、集合体形成前に除去される。)別の要素は、デジタル露光プロセスを補助するために、放出層または加熱層等の1つ以上の他の層を含んでいてもよい。これらのその他の層も、赤外線感応層と考えられる。ここで、放射線不透過層も赤外線放射線に感応性がある。Fanらによる(特許文献12)、Blanchettによる(特許文献13)、(特許文献14)および(特許文献15)に開示されているとおり、集合体を、赤外線レーザー放射線により像様露光して、放射線不透過層を選択的に転写し、光重合可能な層に、またはその上に配置された画像を形成する。転写された放射線不透過層の一部のみが、イン・サイチュのマスクを形成する感光性要素にある。
【0034】
マスク画像を、別のキャリアに形成してから、熱および/または圧力を加えることにより、支持体の反対の光重合可能な層の表面に転写することも考えられる。光重合可能な層は、典型的に、粘着性で、転写された画像を保持する。任意で、別のキャリアを、像様露光の前に、要素から除去することができる。別のキャリアは、赤外線感応層を有していてもよく、これはまた放射線不透過層である、または放射線不透過層と関連するものであり、赤外線レーザー放射線に像様露光すると、放射線不透過材料を選択的に除去して、画像を形成する。別のキャリアのこのタイプの一例としては、Rexam,Inc.製LaserMask(登録商標)画像形成フィルムがある。この代わりに、放射線不透過材料の画像を別のキャリアへ、放射線不透過材料を有する他の要素からレーザー放射線により転写してよい。別のキャリアを、キャリアに隣接し、キャリアに固定された感光性要素と一列に並んだピンバーに配置するために、別のキャリアはその先端に沿って少なくとも2つの穴を有していてよい。
【0035】
赤外線レーザー放射線による像様露光は、750〜20,000nmの範囲で放出する様々な種類の赤外線レーザーを用いて実施することができる。780〜2,000nmの範囲で放出するダイオードレーザーおよび1064nmで放出するNd:YAGレーザーを含む赤外線レーザーが好ましい。赤外線レーザー露光して、感光性要素から化学線不透過層を像様除去するのに好ましい装置および方法は、Fanらによる(特許文献16)および(特許文献17)に開示されている。一体化マスク画像は、化学線への全体露光の後の工程のために、感光性要素に残る。
【0036】
本発明のプロセスの一実施形態の次の工程は、感光性要素を、化学線に、一体化マスク画像を通して全体露光する、すなわち、要素をデジタル的に形成されたマスクを通して像様露光することである。感光性要素は、マスクを通して、化学線に、好適な源から露光される。化学線露光時間は、数秒から数分まで、放射線の強度およびスペクトルエネルギー分布、感光性要素からの距離、所望の画像解像度、光重合可能な組成物の性質および量に応じて異なる。露光温度は、好ましくは、周囲かそれよりやや高い、すなわち、約20℃〜約35℃である。露光は、支持体または背面露光層、すなわち、フロアまで露光領域を架橋するのに十分な時間とする。像様露光時間は、典型的に、バックフラッシュ露光時間よりはるかに長く、数分から数十分に及ぶ。
【0037】
化学線源には、紫外線および可視光波長領域が含まれる。特定の化学線源の好適さは、開始剤の感光性および感光性要素を製造するのに用いる少なくとも1つのモノマーに左右される。レリーフ印刷の最も一般的な感光性要素の好ましい感光性は、それらが、良好な室内光安定性を与えるため、スペクトルのUVおよび遠UV領域にある。好適な可視およびUV源としては、カーボンアーク、水銀−蒸気アーク、蛍光ランプ、電子フラッシュユニット、電子ビームユニット、レーザーおよび写真フラッドランプが例示される。UV放射線の最も好適な源は、水銀蒸気ランプ、特に、太陽光ランプである。業界標準放射線源としては、Sylvania350Blacklight蛍光ランプ(FR48T12/350VL/VHO/180,115w)およびPhilips UV-A「TL」シリーズ低圧水銀蒸気蛍光ランプが例示される。典型的に、水銀蒸気アークランプまたは太陽光ランプは、感光性要素から約1.5〜約60インチ(約3.8〜約153cm)の距離で用いることができる。これらの放射線源は、通常、310〜400nmの長波UV放射線を放出する。これらの特定のUV源に感応性のあるフレキソ印刷版は、310〜400nmで吸収される光開始剤を用いる。
【0038】
イン・サイチュのマスクを有する感光性要素の化学線への像様露光は限定されず、大気中酸素の存在下または大気中酸素なしで、大気中より少ない制御された酸素量の雰囲気中で実施される。露光を真空中で実施するときは、大気中酸素は排除される。露光は真空中で実施して、その層で生じる重合反応に与える酸素の影響を最小にする。マスクは、イン・サイチュで、または光重合可能な層の放射線不透過材料を像様適用するため、露光は、大気中酸素の存在下で実施され、イン・サイチュのマスクとの密着を確保するのに真空は必要ない。複合印刷版を製造する方法のある実施形態において、全体露光工程は、真空なしで実施される、すなわち、感光性要素が大気中酸素の存在下にあり、イン・サイチュのマスクの上部に任意の追加の層がない。複合印刷版を製造する方法の他の実施形態において、全体露光工程は、不活性ガスおよび大気中酸素より少ない制御された量の酸素を有する雰囲気中で実施される。不活性ガスおよび190,000ppm(百万あたりの部)〜100ppmの範囲の制御された酸素濃度を有する環境において、デジタル感光性要素を全体露光する好適な方法は、2009年1月7日出願の(特許文献18)(代理人整理番号IM−1346)および2009年3月10日出願の(特許文献19)(代理人整理番号IM−1359CIP)に記載されている。
【0039】
本発明の方法は、通常、背面露光またはバックフラッシュ工程を含む。これは、感光性要素の支持体を通した化学線へのブランケット露光である。それを用いて、重合材料層またはフロアを光重合可能な層の支持体側に形成し、光重合可能な層を感光性にする。フロアは、光重合可能な層と支持体間の接着を改善し、ドット解像度を強調するのを助け、版レリーフの深さも定める。バックフラッシュ露光は、他の画像形成工程前、後または最中に行うことができる。全体(像様)化学線露光工程について上述した従来の放射線源のいずれかを、バックフラッシュ露光工程に用いることができる。露光時間は、通常、数秒〜数分である。背面露光工程は、キャリアおよびマウンティング手段が化学線を十分に透過するのであれば、1つの感光性要素をキャリアに固定した後、実施することができるが、たいていの実施形態において、背面露光は、感光性要素をキャリアに固定する前に実施される。
【0040】
マスクを通したUV放射線に全体露光した後、感光性要素を処理して、光重合可能な層の未重合領域を除去することによって、レリーフ画像を形成する。処理工程で、光重合可能な層の化学線に露光されなかった領域、すなわち、未露光領域または未硬化領域の少なくとも光重合可能な層を除去する。エラストマーキャッピング層を除き、典型的に、光重合可能な層に存在する追加の層は、光重合可能な層の重合領域から除去または実質的に除去される。一体化マスク画像を有する感光性要素については、処理工程でまた、マスク画像(化学線に露光された)および下にある光重合可能な層の未露光領域も除去される。
【0041】
感光性印刷要素の処理には、(1)光重合可能な層を、好適な現像剤溶液と接触させて、未重合領域を洗い出す「湿式」現像と、(2)感光性要素を現像温度まで加熱して、光重合可能な層の未重合領域を溶融、軟化または流動化して、吸収材料との接触により逃がす「乾式」現像が含まれる。乾式現像はまた、熱現像とも呼ばれる。
【0042】
湿式現像は、通常、ほぼ室温で実施される。現像剤は、有機溶剤、水溶性または半水溶性溶液および水とすることができる。現像剤の選択は、主に、除去される光重合可能な材料の化学的性質による。好適な有機溶剤現像剤としては、芳香族または脂肪族炭化水素、脂肪族または芳香族ハロ炭化水素溶剤またはかかる溶剤と好適なアルコールとの混合物が挙げられる。その他の有機溶剤現像剤は、(特許文献20)に開示されている。好適な半水溶性現像剤は、通常、水、水混和性有機溶剤およびアルカリ材料を含有する。好適な水溶性現像剤は、通常、水およびアルカリ材料を含有する。その他の好適な水溶性現像剤の組み合わせは、(特許文献21)に記載されている。
【0043】
現像時間は変えることができるが、好ましくは、約2〜約25分の範囲である。現像剤は、浸漬、スプレーおよびブラシまたはローラ適用をはじめとする任意の簡便なやり方で適用することができる。ブラシ助剤を用いて、要素の未重合部分を除去することができる。洗い出しは、現像剤および機械的ブラシ動作を用いて、版の未露光部分を除去して、露光画像およびフロアを構成するレリーフを残す自動処理ユニットで行うことができる。
【0044】
溶液中での現像による処理後、レリーフ印刷版は、通常、吸い取る、または拭き取って乾燥し、強制空気または赤外線オーブンにてより完全に乾燥する。乾燥時間および温度は変えてよいが、典型的に、版は、60〜120分間、60℃で乾燥される。支持体が収縮して、位置合わせに問題が生じる可能性があるため、高温は勧められない。
【0045】
要素の熱処理には、少なくとも1つの光重合可能な層(および追加の層)を有する感光性要素を、光重合可能な層の未硬化部分を軟化、溶融または流動化させるのに十分な温度まで加熱して、要素の最外表面を吸収材表面と接触させて、溶融または流動化部分を吸収または逃がすことが含まれる。光重合可能な層の重合領域は、未重合領域より高い融点を有するため、熱現像温度で溶融、軟化または流動化しない。フレキソ印刷版を形成するための感光性要素の熱現像は、Martensによる(特許文献22)、(特許文献23)、(特許文献24)およびWangらによる(特許文献25)に記載されている。
【0046】
「溶融」という用語は、高温を加えて、軟化させ、粘度を減じて、流動して、吸収材料による流動化および吸収を可能とする光重合可能なエラストマー層の未照射部分の挙動を説明するのに用いられる。光重合可能な層の溶融可能な部分の材料は、通常、固体と液体間で急峻な遷移のない粘弾性材料であり、このプロセスでは、吸収材料の吸収の閾値よりも高い任意の温度で、加熱した組成物層が吸収されるようにする。広い温度範囲を利用して、本発明について組成物層を「溶融」することができる。吸収は、プロセスの良好な操作中、低温だと緩慢に、高温だと早くなる。
【0047】
感光性要素の加熱および要素の最外表面を吸収材料と接触させる熱処理工程は、光重合可能な層の未硬化部分が、吸収材料と接触したときに、未だ軟性または溶融状態であれば、同時または連続して行うことができる。少なくとも1つの光重合可能な層(および追加の層)を、伝導、対流、放射またはその他加熱方法により、未硬化部分を溶融するのに十分であるが、層の硬化部分を変形させるほど高くない温度まで加熱する。光重合可能な層の上に配置された1つ以上の追加の層は、軟化、溶融または流動化して、吸収材料により吸収されてもよい。感光性要素は、光重合可能な層の未硬化部分の溶融または流動化のために、約40℃を超える、好ましくは約40℃〜約230℃(104〜446°F)の表面温度まで加熱する。吸収材料と、未硬化領域において溶融する光重合可能な層との密着を多少なりとも維持することにより、光重合可能な層から吸収材料への未硬化感光性材料の移動がなされる。さらに加熱状態で、吸収材料は、支持体層と接触している硬化した光重合可能な層から分離されて、レリーフ構造が露わとなる。光重合可能な層を加熱し、溶融(部分)層を吸収材料と接触させる工程のサイクルは、未硬化の材料が適切に除去されて、十分なレリーフ深さが形成されるのに必要な回数繰り返すことができる。しかしながら、好適なシステム性能のサイクル数は最少にするのが望ましく、典型的に、光重合可能な要素は5〜15サイクル熱処理される。吸収材料と光重合可能な層(未硬化部分が溶融している間)との密着は、層と吸収材料を一緒にプレスすることにより維持される。
【0048】
感光性要素を熱現像するのに好ましい装置は、Petersonらによる(特許文献26)およびJohnsonらによる(特許文献27)に開示されている。1つの感光性要素を有する複合印刷版を、熱処理を行うために、ドラムまたは平坦な表面に配置してよい。
【0049】
吸収材料は、光重合可能な層の未硬化部分の融点を超える融点を有し、同じ操作温度で良好な引き裂き抵抗を有するものを選択する。好ましくは、選択した材料は、加熱中、感光性要素を処理するのに必要な温度に耐えるものである。吸収材料は、空隙容量として、包含容量の事実上大部分を含む不織材料、用紙、繊維状不織材料、連続気泡発泡材料、多孔性材料から選択される。吸収材料は、ウェブまたはシート形態とすることができる。吸収材料はまた、溶融エラストマー組成物に対して高吸収性を有していなければならない。好ましいのは、不織ナイロンウェブである。
【0050】
感光性要素には、未硬化部分を十分に除去して、レリーフを形成するのに1つ以上の処理工程が行われるものと考えられる。感光性要素に、任意の順番で、湿式現像と乾式現像の両方を行って、レリーフを形成する。光重合可能な層の上に配置された1つ以上の追加の層を除去するには、かかる追加の層が、洗い出し溶液および/または加熱により除去できない場合には、予備現像処理工程が必要である。
【0051】
感光性要素は、化学線に均一に後露光すると、確実に、光重合プロセスが完了し、印刷および保管中要素が安定なままとすることができる。この後露光工程では、主たる全体露光と同じ放射線源を利用することができる。
【0052】
非粘着化は、感光性印刷要素の表面がまだ粘着性で、かかる粘着性が、後露光で通常除去されない場合に、適用できる任意の後現像処理である。粘着性は、臭素または塩素溶液による処理等、当該技術分野において周知の方法により排除することができる。(特許文献28)およびGibsonによる(特許文献29)に開示されているとおり、好ましくは、非粘着化は、300nm以下の波長を有する放射線源への露光によりなされる。
【0053】
本発明の方法の変形実施形態として、1つの前駆体は、レーザー放射線により彫刻して、印刷に好適なレリーフ表面を形成することのできる補強エラストマー層を有するレーザー彫刻可能な要素である。1つのレーザー彫刻可能な要素は、エラストマー層の補強前後にキャリアにマウントすることができる。1つのレーザー彫刻可能な要素は、レーザー放射線に選択的に露光して、複合印刷版にレリーフを彫刻する前に、キャリアにマウントされる。キャリア上の1つのレーザー彫刻可能な要素は、レリーフ画像を彫刻するために、デジタル情報を用いて、複合印刷版に変換される。たいていの実施形態において、1つのレーザー彫刻可能な要素は、感光性要素、すなわち、光重合可能な組成物の層を全体露光することにより補強されたキャリア上のデジタル感光性要素である。他の実施形態において、キャリア上の1つのレーザー彫刻可能な要素は、機械的または熱化学的に補強される。さらに他の実施形態において、レーザー彫刻可能な要素のエラストマー層は、光化学的、機械的および/または熱化学的補強の組み合わせにより補強することができる。レーザー彫刻可能な要素は、適切に補強したら、レーザー放射線に露光して、補強層の深さ方向に像様に彫刻または選択的に除去する。本明細書に参考文献として援用される(特許文献30)、(特許文献31)および(特許文献32)には、可撓性支持体上の補強エラストマー層をレーザー彫刻することにより、フレキソ印刷版を製造する好適なプロセスが開示されている。(特許文献30)および(特許文献31)に開示された方法には、可撓性支持体上の補強エラストマー層で構成されたフレキソ印刷要素の単層または多層の1つ以上の層を補強し、レーザー彫刻することが含まれる。熱化学的補強は、熱に晒すと硬化反応する材料を、エラストマー層に組み込むことによりなされる。機械的補強は、微粉砕微粒子材料等の補強剤をエラストマー層に組み込むことによりなされる。光化学的補強は、光硬化可能な材料を、エラストマー層に組み込んで、層を化学線に露光することによりなされる。光硬化可能な材料は、光開始剤または光開始剤系を有する光架橋可能および光重合可能な系を含み、本明細書に記載した感光性要素および使用方法に包含される。レーザー彫刻可能な要素のエラストマー層を熱化学的、機械的および/または光化学的に補強するのに好適な材料を適切に選択することは、当業者に周知されている。
【0054】
本明細書で用いる「レーザー彫刻可能」という用語は、レーザー放射線を吸収することのできる材料を指し、十分な強度のレーザービームに露光される材料のこれらの領域が、フレキソ印刷用途に好適な十分な解像度およびレリーフ深さを備えて、物理的に切り離される。「物理的に切り離される」とは、露光された材料が、真空クリーニングまたは洗浄による等任意の機械的手段により除去される、または表面にガスの流れを指向して、緩んだ粒子を除去することにより、除去または除去可能であることを意味する。
【0055】
本発明の方法は、キャリアの大部分をカバーするのに十分なサイズの単一レーザー彫刻可能な要素を提供することにより、複合印刷版を製造するものである。1つ(すなわち、単一)のレーザー彫刻可能な要素は、キャリアにマウンティングするのに好適なサイズとし、複合印刷版を基材に位置合わせして最終的に印刷するために、要素を凡その位置であっても配置するのに、キャリア上にテンプレートまたは位置合わせマークを必要としないものである。キャリア上のレーザー彫刻可能な要素は、レーザー放射線に選択的に露光して、補強エラストマー層を彫刻し、正確な位置合わせを確保するレリーフ画像を直接形成するデジタル方法により、複合印刷版に変換される。
【0056】
1つのレーザー彫刻可能な要素を、キャリアに固定した後、要素のエラストマー層をレーザー放射線により彫刻する。レーザー彫刻には、レーザー放射線、局所加熱および3次元での材料の除去が含まれる。本発明のレーザー彫刻方法には、マスクまたはステンシルの使用は含まれない。これは、レーザーが補強エラストマー層に当たって、その焦点スポットまたはその近傍で彫刻されるからである。このように、彫刻できる最小のフィーチャーは、レーザービーム自体により決まる。レーザービームおよび彫刻される材料は、互いに一定に動いて、版の各微細な領域(画素)に、レーザーが個々に向くようにする。画像情報は、この種類のシステムへ、ステンシルを介さずに、コンピュータからデジタルデータとして直接供給される。同じまたは異なる画像の単一画像または多数の画像のパターンを彫刻することができる。
【0057】
レーザー彫刻時に考慮すべき因子としては、これらに限られるものではないが、要素の深さへのエネルギー堆積、熱散逸、溶融、蒸発、酸化等の熱的に誘導される化学反応、彫刻されている要素表面の浮遊材料の存在、および彫刻されている要素からの材料の機械的放出が挙げられる。金属およびセラミック材料の集光レーザービームによる彫刻に関する調査の取り組みによって、彫刻効率(レーザーエネルギーの単位当たりで除去される材料の体積)および正確さが、彫刻されている材料の特性およびレーザー彫刻を行う条件と強く結び付いていることが分かった。エラストマー材料を彫刻するときは、かかる材料が金属およびセラミック材料と全く違うのにも係らず、同様の複雑さが出てくる。
【0058】
レーザー彫刻可能な材料は、通常、それより低いと、材料が除去されない、ある種の強度閾値を示す。閾値より低いと、材料の蒸発温度に達する前に、材料に堆積したレーザーエネルギーは散逸するものと考えられる。この閾値は、金属およびセラミック材料では極めて高くすることができる。しかしながら、エラストマー材料に関しては、極めて低い。この閾値より上では、エネルギー入力のレートは、熱散逸等の対立するエネルギー喪失機構と非常に良く競合する。照射した領域内ではなく、近くの散逸したエネルギーは、材料を蒸発させるのに十分なものであるため、彫刻されたフィーチャーがより広く、より深くなる。この影響は、低融点の材料だとより顕著である。
【0059】
レーザー彫刻は、波長が9〜12マイクロメートル、特に、10.6マイクロメートルの赤外線を放出する様々な種類の赤外線レーザーのいずれかにより実施することができる。レーザーによるエラストマー材料の除去は、レーザーにより生成された放射線エネルギーを吸収する補強エラストマー層中に、赤外線感応性の添加剤を存在させることにより補助することができる。レリーフ印刷用の補強エラストマー前駆体の彫刻に特に好適なレーザーは、10.6マイクロメートルの波長で放出する二酸化炭素レーザーである。二酸化炭素レーザーは妥当な費用で市販されている。二酸化炭素レーザーは、連続波および/またはパルスモードで操作することができる。両モードにおいてレーザーを操作できるのが望ましい。低または中放射線強度だと、パルス彫刻があまり効率的ではなくなるからである。材料を加熱、さらには溶融させるが、蒸発はさせず、物理的に分離させるエネルギーは失われる。一方、低または中強度での連続波照射は、与えられた領域に蓄積し、ビームはその領域近傍をスキャンする。このように、低強度の連続波モードが好ましい。パルスモードは高強度では好ましいモードである。ひと固まりの放射線吸収材料が形成されたら、パルス間での時間の間隔でそれが散逸されるときであり、固体表面へ放射線がより効率的に分配できるからである。
【0060】
キャリアに固定された1つのレーザー彫刻可能な要素は、レーザーに関連する回転ドラムの外側にマウントすることができる。レーザーは集光して、ドラムの要素に当たる。ドラムが回転し、レーザービームに対して平行移動するにつれ、要素は螺旋状にレーザービームに露光される。レーザービームは、画像データにより調節され、要素、すなわち、三次元要素へと彫刻されたレリーフを備えた二次元画像が得られる。レリーフ深さは、フロアの厚さと印刷層の厚さ間で異なる。交互に、レーザーを、ドラムの要素に対して動かしてもよい。
【0061】
レーザー彫刻により、エラストマー材料を深さ方向に除去し、印刷に好適なレリーフ表面が形成されるため、複合印刷版に、処理工程を行わなくてよいが、後露光および/または仕上げ露光は行うことができる。
【0062】
処理または彫刻後、このようにして製造された複合印刷版は、印刷シリンダにマウンティングする準備が整う。複合印刷版にマウンティングする方法は限定されない。レリーフ印刷版を印刷シリンダにマウンティングする1つの方法は、Foxらによる(特許文献33)に記載されているとおり、マウンティングバーを、複合印刷版の先端に、先端穴に挿入された取り外し可能なピンおよびマウンティングバーを介して取り付けるものである。
【0063】
感光要素
フレキソ印刷版を作製するのに用いる感光要素は、少なくとも1層の光重合可能な組成物を含む。「感光」という用語には、少なくとも1枚の感光層が、化学線に応答して、1つまたは複数の反応、特に、光化学反応を開始することのできる系が包含される。ある実施形態において、感光要素は、光重合可能な層のための支持体を含む。ある実施形態において、光重合可能な層は、バインダー、少なくとも1種類のモノマーおよび光開始剤を含むエラストマー層である。ある実施形態において、感光性要素は、支持体と反対側で光重合可能な層に隣接する化学線不透過材料としても機能する赤外線感応性材料の層を含む。
【0064】
別記しない限り、「感光要素」という用語には、化学線露光および処理をすると、印刷に好適な表面を形成することのできる印刷前駆体が包含される。別記しない限り、「感光要素」および「印刷版」には、これらに限られるものではないが、フラットシート、板、プレート・オン・スリーブおよびプレート・オン・キャリアをはじめとする印刷に好適な任意の版の要素または構造が包含される。感光要素から得られる印刷版は、フレキソ印刷および活版印刷等の凸版印刷のための最終用途印刷用と考えられる。凸版印刷は、印刷版が像領域から印刷する印刷方法であり、印刷版の像領域は隆起し、像領域以外は窪んでいる。
【0065】
感光要素は、少なくとも1層の光重合可能な組成物を含む。本明細書で用いる「光重合可能な」という用語には、光重合可能、光架橋可能または両方の系が包含されるものとする。光重合可能な層は、バインダー、少なくとも1種類のモノマーおよび光開始剤を含む組成物で形成された固体エラストマー層である。光開始剤は化学線に対して感受性がある。本明細書全体において、化学線には、紫外線および/または可視光が含まれる。光重合可能な組成物の固体層は1種以上の溶液および/または熱で処理されて、フレキソ凸版印刷に好適なレリーフを形成する。本明細書で用いる「ベタ」という用語は、体積と形状を定義し、その体積または形状を変化させる力に抵抗する層の物理的な状態を指す。光重合可能な組成物層は、約5℃〜約30℃の温度の室温でベタである。たいていの実施形態において、感光性要素の光重合可能な組成物の固体層は未重合であるが、光重合可能な組成物が、重合(光硬化)されている、または、重合(すなわち、フロア)および未重合の両方である実施形態を含むことができる。
【0066】
バインダーは限定されず、単一ポリマーまたはポリマーの混合物とすることができる。ある実施形態において、バインダーはエラストマーバインダーである。他の実施形態において、バインダーは、化学線露光の際にエラストマーとなる。バインダーとしては、共役ジオレフィン炭化水素の天然または合成ポリマー、例えば、ポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ブタジエン/アクリロニトリルおよびジエン/スチレン熱可塑性エラストマーブロックコポリマーが挙げられる。ある実施形態において、バインダーは、A−B−Aタイプのブロックコポリマーのエラストマーブロックコポリマーであり、Aは非エラストマーブロックを表わし、Bはエラストマーブロックを表わす。非エラストマーブロックAは、ビニルポリマー、例えば、ポリスチレンとすることができる。エラストマーブロックBとしては、ポリブタジレンおよびポリイソプレンが例示される。ある実施形態において、エラストマーバインダーとしては、ポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマーおよびポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマーが挙げられる。バインダーは、水溶性、半水溶性、水または有機溶剤洗い出し溶液中で可溶、膨潤性または分散性とすることができる。通常、洗い出し現像に好適なエラストマーバインダーはまた、熱処理に用いるにも好適であり、光重合可能な層の未重合領域が加熱により軟化、溶融または流動化する。
【0067】
レリーフ印刷に望ましい特性が得られるのであれば、単一エラストマー材料か、材料の組み合わせのいずれかを、エラストマー層に用いることができる。エラストマー材料の例については、(非特許文献1)に記載されている。多くの場合、エラストマー層を処方するのに、熱可塑性エラストマー材料を用いるのが望ましい。熱可塑性エラストマー層が光化学的に補強されているときは、層はエラストマーのままであるが、かかる補強後はもはや熱可塑性でない。これらに限られるものではないが、ブタジエンとスチレンのコポリマー、イソプレンとスチレンのコポリマー、スチレン−ジエン−スチレントリブロックコポリマー等のエラストマー材料が挙げられる。
【0068】
エラストマーバインダーに加えて、第2のバインダーを任意でエラストマー層に存在させてもよい。好適な第2のバインダーとしては、未架橋ポリブタジエンおよびポリイソプレン、ニトリルエラストマー、ポリイソブチレンおよびその他ブチルエラストマー、ポリアルキレンオキシド、ポリホスファゼン、アクリレートおよびメタクリレートのエラストマーポリマーおよびコポリマー、エラストマーポリウレタンおよびポリエステル、エチレン−プロピレンコポリマーおよび未架橋EPDM等のオレフィンのエラストマーポリマーおよびコポリマー、酢酸ビニルおよびその部分水素化誘導体のエラストマーコポリマーが挙げられる。
【0069】
光重合可能な組成物は、透明な曇りのない感光層が生成される程度、バインダーと相溶性のある付加重合可能な少なくとも1種類の化合物を含有している。付加重合可能な少なくとも1種類の化合物はまたモノマーとも呼ばれる。光重合可能な組成物に用いることのできるモノマーは当該技術分野において周知であり、これらに限られるものではないが、少なくとも1つの末端エチレン基を有する付加重合エチレン性不飽和化合物が挙げられる。組成物は、単一モノマーまたはモノマーの組み合わせを含有することができる。モノマーは、当業者であれば、好適なエラストマーおよびその他特性を光重合可能な組成物に与えるのに適宜選択することができる。
【0070】
光開始剤は、化学線に感受性があって、必要以上に停止することなく、1つまたは複数のモノマーの重合を開始するフリーラジカルを生成する任意の単一の化合物または化合物の組み合わせとすることができる。公知の種類の任意の光開始剤、特に、フリーラジカル光開始剤を用いてよい。あるいは、光開始剤は、化合物の1つが、放射線で活性化された増感剤によりフリーラジカルを与える化合物の混合物であってもよい。好ましくは主露光(および後露光およびバックフラッシュ)用の光開始剤は、310〜400nm、好ましくは345〜365nmの可視または紫外線に感受性がある。
【0071】
光重合可能な組成物は、望まれる最終特性に応じて他の添加剤を含有することができる。光重合可能な組成物への追加の添加剤としては、増感剤、可塑剤、レオロジー調整剤、熱重合阻害剤、着色剤、加工助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、染料およびフィラーが挙げられる。
【0072】
光重合可能な層の厚さは、望ましい印刷版の種類に応じて様々に異なり得る。ある実施形態において、感光性層の厚さは、約0.002インチ〜約0.250インチ以上(約0.051mm〜約0.64cm以上)とすることができる。光重合可能な層の典型的な厚さは、約0.010インチ〜約0.250インチ(約0.025cm〜約0.64cm)である。ある実施形態において、感光性層の厚さは、約0.107インチ〜約0.300インチ(約0.27〜約0.76cm)とすることができる。
【0073】
感光性要素は、典型的に、光重合可能な組成物の層に隣接する支持体を含む。支持体は、印刷版を作製するのに用いる感光要素に従来から用いられている任意の材料または材料の組み合わせで構成することができる。ある実施形態において、支持体は、化学線を透過して、支持体への「バックフラッシュ」露光に対応する。好適な支持体材料としては、付加ポリマーおよび鎖状縮合ポリマー、透過発泡体および布、例えば、ガラス繊維により形成されたポリマーフィルムが例示される。特定の最終用途条件下では、金属支持体は放射線を透過しないが、アルミニウム、鋼およびニッケル等の金属を支持体として用いてもよい。ある実施形態において、支持体はポリエステルフィルムである。一実施形態において、支持体は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。ある実施形態において、支持体の厚さは、0.002〜0.050インチ(0.0051〜0.127cm)である。他の実施形態において、シートフォーム支持体の厚さは、0.003〜0.016インチ(0.0076〜0.040cm)である。
【0074】
任意で、要素は、支持体と光重合可能な層の間に接着層を有し、光重合可能な層に隣接する支持体の表面が接着促進表面を有する。さらに、光重合可能な層の支持体への接着は、Feinbergらによる米国特許第5,292,617号明細書に開示されているとおり、要素に化学線を支持体を通して露光することにより調節することができる。
【0075】
当業者に周知されているとおり、感光性要素は、光重合可能な層に隣接する、すなわち、支持体と反対の光重合可能な層の側に、1つ以上の追加の層を含んでいてよい。所望の用途に応じて、追加の層は、化学線不透過または透過であってよく、感光性要素に対して1つ以上の機能を有する。追加の層としては、これらに限られるものではないが、剥離層、エラストマーキャッピング層、バインダー層、接着修正層、感光性要素の表面特性を変える層およびこれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の追加の層は、処理中に、全体または一部を除去可能である。1つ以上の追加の層は、感光性組成物層をカバーする、または部分的にカバーするものであってよい。所望の最終用途に応じて、光重合可能な層に追加の層を選択および作製することは当業者であれば分かる。
【0076】
一実施形態において、感光性要素は、支持体の反対の光重合可能な層の表面の上に配置された化学線不透過層でもある赤外線感光性層を含む。化学線不透過層は、表面を実質的にカバーする、または光重合可能な層の像様部分のみをカバーしてよい。化学線不透過層は、光重合可能な材料の感応性に対応して、化学線に実質的に不透過である。化学線不透過層は、バリア層あり、またはなしで用いることができる。バリア層を用いる場合、バリア層は、光重合可能な層と放射線不透過層の間に配置される。存在する場合、バリア層は、光重合可能な層と放射線不透過層の間の材料の移動を最少にすることができる。化学線不透過層はまた、不透過層を選択的に除去または移動することのできるレーザー放射線に感応性である。一実施形態において、化学線不透過層は、赤外線レーザー放射線に感応性である。化学線不透過層は、放射線不透過材料、赤外線吸収材料および任意のバインダーを含む。暗色無機顔料、例えば、カーボンブラックおよびグラファイト、顔料の混合物、金属および金属合金は、概して、赤外線感受性の材料と放射線不透過材料の両方として機能する。任意のバインダーは限定されないポリマー材料である。化学線不透過層の厚さは、感受性と不透過性の両方を最適化する範囲内でなければならず、通常、約20オングストローム〜約50マイクロメートルである。化学線不透過層は、化学線および下にある光重合可能な層の重合を効率的にブロックするために、2.0を超える透過光学密度を有していなければならない。
【0077】
本発明の感光性印刷要素は、要素の最上層の上部に仮のカバーシートをさらに含む。カバーシートの1つの目的は、感光性印刷要素の最上層を、保管および取扱い中に保護することである。カバーシートに好適な材料としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアミドまたはポリエステルの薄膜が例示され、これは剥離層を備えていてもよい。カバーシートは、ポリエステル、例えば、Mylar(登録商標)ポリエチレンテレフタレートフィルムから作製されるのが好ましく;最も好ましくはカバーシートは5ミルMylar(登録商標)である。
【0078】
感光性要素の露光(および処理)後の複合印刷版の感光性要素のデュロメータは約20〜約80ショアAである。ある実施形態において、複合印刷版の(露光および処理)感光性要素のデュロメータは、30〜50ショアAである。ショアデュロメータは、圧入に対する材料の抵抗性の尺度である。ショアAのデュロメータは、軟性ゴムまたはエラストマー材料に典型的に用いられる基準であり、高い値の方が、貫入に対する抵抗がより大きい。印刷版のデュロメータは、DIN53,505またはASTM D2240−00に記載された標準化手順に従って測定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)光重合可能な組成物の層と、前記光重合可能な層上に配置された赤外線感応層とを含み、平坦な領域を有する1つの感光性要素を提供する工程と、
b)前記要素を、前記要素の配置のためのマーキングおよびインジケータのないキャリアに隣接して配置する工程であって、前記キャリアは平坦な領域を有し、前記1つの感光性要素の前記平坦な領域が前記キャリアの平坦な領域の少なくとも70%である工程と、
c)前記要素を前記キャリアに固定する工程と、
d)前記赤外線感応層を、赤外線レーザー放射線により像様露光して、前記要素にマスクを形成する工程と、
e)前記マスクを通して、前記要素を化学線に全体露光する工程と、
f)e)の前記要素を処理して、前記キャリア上にレリーフ構造を形成する工程と、
を含む複合印刷版を製造する方法。
【請求項2】
前記キャリアが先端を有し、前記配置工程が、前記1つの要素の先端を、前記キャリアの先端からある距離をおいて配置することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記距離が、マウンティングバーを前記キャリアに取り付けるのに十分な距離である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
マウンティングバーを、前記キャリアの先端に取り付けることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記要素が、前記キャリアの長さおよび幅より短い長さおよび狭い幅を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記配置工程が、前記キャリア上に前記要素を囲むオープンスペースの縁部を提供することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリアの前記平坦な領域の70%〜約99%が、前記1つの感光性要素でカバーされている請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つの感光性要素の前記平坦な領域が、前記キャリアの平坦な領域の70%〜98%である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つの感光性要素の前記平坦な領域が、前記キャリアの前記平坦な領域の75%〜95%である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記キャリアの先端に少なくとも2つの位置合わせ穴を穿孔することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程d)の前に、前記キャリアの前記先端にマウンティングバーを取り付け、前記マウンティングバーを前記キャリアと共にレジスタのドラム上に像様露光までに固定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
像様露光工程d)が、前記赤外線感応層を、前記光重合可能な層からアブレートすることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程f)の後、前記要素を前記キャリアから除去し、工程b)〜f)に従い第2の感光性要素で第2の複合印刷版を製造するのに、前記キャリアを再使用することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
a)補強エラストマー層を含み、平坦な領域を有する1つのレーザー彫刻可能な要素を提供する工程と、
b)前記要素を、前記要素の配置のためのマーキングおよびインジケータのないキャリアに隣接配置する工程であって、ここで、前記キャリアは平坦な領域を有し、前記1つの要素の前記平坦な領域が前記キャリアの平坦な領域の少なくとも70%である工程と、
c)前記要素を前記キャリアに固定する工程と、
d)前記補強層をレーザー放射線に露光して、前記補強層を深さ方向に選択的に除去し、前記キャリア上にレリーフ構造を形成する工程と、
を含む複合印刷版を製造する方法。
【請求項15】
前記レーザー彫刻可能な要素は感光性要素であり、前記エラストマー層は化学線への全体露光により補強される請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2011−39516(P2011−39516A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−181593(P2010−181593)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】