説明

複合吸音材

【課題】中程度の領域周波数の吸音性に優れ、薄く、軽量で、形態安定性に優れ、自動車内装用などに好適な吸音性積層体およびその製造法を提供する。
【解決手段】
(1)少なくとも1枚層の緻密な構造の面材と、粗密な構造の基材とを接合してなる複合吸音材であって、該面材が、多層構造積層不織布であり、高融点成分の熱可塑性合成繊維層(A)、中間層としての極細繊維層(B)、高融点成分の繊維融点より30℃以上低融点である低融点成分の熱可塑性合成繊維を含む層(C)を、積層し熱圧着された積層不織布からなり、該積層不織布の目付けが20〜250g/m2、平均みかけ密度が0.15〜0.8g/cm3であり、該基材が、厚み5〜50mmであり、該複合吸音材の厚みが5〜50mm、目付け100〜1500g/m2、及び 周波数4000Hzの吸音率が50%以上であることを特徴とする複合吸音材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合吸音材に関し、特に面材と基材を接合させた吸音材で、中程度の周波数、特に周波数4000Hzの吸音性に優れ、薄く、軽量で、形態安定性に優れた、特に自動車用、住宅、家電製品、建設機械等の吸音に好適な複合吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車や住宅の内装には、吸音材として、グラスウール、ロックウール、アルミ繊維、多孔性セラミック、屑綿などが使用されている。しかし、これらの吸音材は、施工性、人体への障害、リサイクル、環境などの点で問題があるため、近年では不織布を用いた種々の吸音材が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、密度0.013〜0.05g/cm3 のメルトブローン極細繊維不織布を用いた防音シート材料が提案されている。しかし、このシート材料は厚みの変形が生じ易く、取扱性に劣り、さらに耐熱性が不足するなどの問題がある。
特許文献2には、融点差を有する2種以上の混綿繊維で構成された、難燃性を有する吸音材が提案されている。しかし、この吸音材は、難燃性、リサイクル性に優れるが、0.01〜0.1g/cm3 の密度で厚み変形が生じ易く、取扱性などに問題がある。
【0004】
特許文献3には、繊維径が6μm以下の極細繊維を含有し、目付け30〜200g/m2 の不織布と、繊維径が7〜40μmで目付け50〜2000g/m2 の短繊維不織布とを流体交絡法またはニードルパンチ法により一体化した吸音材が提案されている。しかし、このような方法で一体化処理を行うと極細繊維が切断され、穴が開いた構成となり、吸音性、形態安定性が低下し易いという欠点がある。
【0005】
特許文献4には、平均繊維径10μm以下、平均みかけ密度0.1〜0.4g/cm3 および目付け5〜30g/m2 のメルトブローン不織布と、みかけ密度0.01〜0.10g/cm3 および目付け50〜2000g/m2 の繊維集合体とからなる吸音材が提案されている。しかし、この吸音材は、メルトブローン不織布面の強度が低く、形態安定性、取扱性などに問題がある。
【0006】
さらに特許文献5には、繊維径6μm以下の極細繊維を含み、目付け20〜100g/m2 のメルトブローン不織布と、繊維径7〜40μm、目付け50〜2000g/m2 、厚み5〜30mm基布入り短繊維不織布とが積層一体化された吸音材が提案されている。しかし、この吸音材でもメルトブローン不織布面の強度が低く、形態安定性、取扱性、価格などに問題があった。
【0007】
特許文献6には、表素材として、連続長繊維層と少量のメルトブロー極細繊維層と合繊繊維層の積層不織布を有する吸音積層対が開示されているが、表面材と基材との接合性の改良については記載がない。
【0008】
このように従来技術では、表面材と基材の接合性に問題があり、接合性に優れ、かつ、低目付けでも吸音効果が高く、薄くて軽量な吸音材が望まれていた。またメルトブロー繊維を用いる場合、充分な吸音効果を得るためには大量の微細繊維が必要であり、通常その目付を50〜200g/m2 と大きくする必要があった。このため低目付でも吸音効果に優れ、かつ薄くて軽量な吸音材が望まれていた。
【特許文献1】特開平06−212546号公報
【特許文献2】特開平10−268871号公報
【特許文献3】特開2001−279567号公報
【特許文献4】特開2002−69824号公報
【特許文献5】特開2002−161464号公報
【特許文献5】特開2006−28708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、面材と基材の接合性を改良し、厚み変化が少なく、形態安定が良く、薄く、軽量で、広い周波数の範囲における吸音性が高い吸音材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、面材を多層積層不織布とし、その一部に低融点成分を含む繊維層を配置することで、面材と基材の接合性及び吸音性を高めることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
(1)少なくとも1枚の緻密な構造の面材と、粗密な構造の基材とを接合してなる複合吸音材であって、該緻密な構造の面材は、高融点成分を含む熱可塑性合成繊維層(A)、中間層としての熱可塑性合成極細繊維層(B)、該(A)の高融点繊維より30℃以上低融点である低融点成分を含む熱可塑性合成繊維を含む層(C)を、熱圧着して積層一体化した、目付けが20〜250g/m2、平均みかけ密度が0.15〜0.8g/cm3の積層不織布であり、前記粗密な構造の基材は、厚みが5〜50mm、平均繊維径が10〜30μm、平均みかけ密度が0.05〜0.5g/cm3である合成繊維不織布であり、かつ該複合吸音材の厚みが5〜50mm、および目付けが100〜1500g/m2であることを特徴とする複合吸音材。
(2)前記面材の(A)および(C)の平均繊維径が10〜30μmであり、(B)の平均繊維径が1〜7μmからなることを特徴とする上記(1)に記載の複合吸音材。
(3)前記(B)層の目付けが1〜20g/m2であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の複合吸音材。
(4)前記(C)層の熱可塑性合成繊維が、鞘芯型複合繊維であり、芯部が高融点成分、および鞘部が芯部より30℃以上低い低融点成分からなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合吸音材。
(5)前記(A)及び(B)の熱可塑性合成繊維層が、ポリエステル系繊維及び/又はポリエステル系共重合繊維からなることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の複合吸音材。
(6)前記基材の合成繊維不織布が、ポリエステル系短繊維またはポリエステル系共重合短繊維からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の複合吸音材。
(7)前記基材の合成繊維不織布が、熱融着繊維および/または熱可塑性樹脂を5〜50重量%含有していることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の複合吸音材。
(8)前記面材が2枚以上の積層不織布から構成されることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の複合吸音材。
(9)前記面材と基材との間に、接着繊維層およびホットメルト層を介在させたことを特徴する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の複合吸音材。
(10)前記面材と基材の接合力が0.1N/5cm以上であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の複合吸音材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合吸音材は、面材の一部に低融点成分を含む繊維層を配置することで、緻密な面材と粗密な基材との接合性を格段に高めることができ、優れた接合強力を有し、断裁などの取り扱い性、及び、厚みの保持性が優れているため、加工生産性に優れ、特に中音域の吸音性が優れ、安定した吸音性能が維持できる。従って、自動車分野、家電製品、住宅、建設機械等の遮音、吸音材に好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の複合吸音材において、第一の特徴は、面材の積層不織布の少なくとも一方の面に、低融点成分を含む繊維層を含む基材を配置することである。これにより面材と基材との接合時において、面材の低融点繊維が軟化又は融解して接着剤的働きをするとともに、面材と基材との熱接着性を向上させることができる。
【0013】
第二の特徴は、面材としての積層不織布において、比較的少量の極細繊維層(B)を設けたため、積層不織布の両面である(A)及び(C)層の比較的繊維径の太い熱可塑性繊維の間隙に(B)層の極細繊維が埋没し、被覆状態(薄い膜状)を形成しやすく、その結果、数μ以下の極めて小さい間隙を形成して音の振動の貫通を少なくでき、更に、音の振動が極細繊維層の薄膜に効率よく衝突し、熱エネルギーに変換できることである。特に、本発明では、(C)層に低融点繊維を配置し、面材全体を熱接着することにより、(B)層の極細繊維としての接着効果と、(C)の低融点繊維層としての接着効果が、互いに相乗的な接着効果として働き、音の振動に対し有効な遮蔽層を形成することができ、極めて優れた吸音効果を発揮する。
【0014】
第三の特徴は、本発明の面材と基材とを組み合わせることにより、吸音性を種々変えられることである。例えば、積層不織布の緻密な面材と、粗密な基材との組み合わせにより、厚み5〜20mmの薄板で2000〜4000HZの高周波領域で高い吸音性を有する材料を提供できるが、更に、面材の高目付け、高密度化、多層化すること、基材の厚みを大きくすること、高密度の繊維構成にすることなどにより、低周波領域の吸音性も高めることができることである。
【0015】
本発明に用いる面材は、例えば、スパンボンド法などから得られる長繊維不織布の積層不織布であり、繊維径が1〜7μmの極細繊維層(B)を中間層としてその両側に、繊維径が10〜30μmの太い熱可塑性合成繊維層(A)および(C)を積層させてなる、3層構造(A/B/C)の積層不織布である。
【0016】
該積層不織布の一方の面(A)層は、高融点成分の熱可塑性合成繊維層からなり、他方の面(C)層の低融点成分の繊維融点より30℃以上高融点であれば良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどのポリアミド繊維などである。
【0017】
本発明に用いる積層不織布の少なくとも一方の低融点成分を含む層(C)層は、低融点成分を含む熱可塑性合成繊維からなり、高融点成分の繊維融点より、30℃以上低融点であり、より好ましくは40℃〜150℃低融点である繊維を含む。すなわち、前記基材との接合時に、低融点繊維が、軟化または融解して、接着材として利用できる低融点繊維を含むことが必要である。
【0018】
(C)層に用いる低融点の合成繊維としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフイン繊維、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維、共重合ポリアミドなどの合成繊維が用いられる。これらの繊維は、単独でもよく、2種以上複合混繊してもよく、また、低融点と高融点繊維の複合混繊してもよい。更に、好ましくは、低融点成分を鞘部に有する、鞘芯構造の複合繊維が用いられる。例えば、芯が高融点成分で、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどであり、鞘が低融点成分で低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエステル、脂肪族エステルなどである。
【0019】
本発明の(A)層および(B)層に用いる熱可塑性合成繊維の平均繊維径は、10〜30μm、好ましくは12〜25μmである。すなわち、比較的大きい繊維径からなり、大きな繊維間隙から構成される。そのため、中間に極細繊維の(B)層を配置することで、太い繊維の支持体の間隙に極細繊維が被覆されやすく、また極細繊維層からなる薄い膜が形成されやすく、その結果、数μm以下の極めて小さい繊維間隙を形成することができ、優れた吸音性を生み出すことができる。
【0020】
本発明に用いる(C)層の極細繊維は、両側の合成繊維の間隙を数μm以下に被覆して、薄い膜状に形成することが必要であり、そのため極細繊維の平均繊維径は1〜7μm、好ましくは、1.5〜5μmである。
【0021】
極細繊維を製造する場合ポリマーとしては、低粘度で、メルトブロー方式で極細繊維が形成できる合成樹脂が用いられる。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフイン繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維、共重合ポリアミドなどの合成繊維等が用いられる。
【0022】
本発明の面材に用いられる積層不織布の目付けは、20〜250g/m2、好ましくは25g/m2〜200g/m2、平均みかけ密度が0.15〜0.8g/cm3、好ましくは0.2〜0.6g/cm3の、緻密な構造を有する積層不織布である。目付けおよび平均みかけ密度が小さすぎると、音の振動の貫通が多くなり、吸音性が低下する。また目付けおよび平均みかけ密度が大きすぎると、緻密性が高くなるが、剛性が増し、面材と基材の接着性、加工性が低下する。
【0023】
面材に用いる積層不織布には、着色、撥水性、難燃性などを付与する目的で、染色などの着色加工、フッソ樹脂などの撥水加工、りん系などの難燃剤加工などの機能付与加工ができる。
【0024】
本発明に用いる基材は、比較的粗密な構成からなり、特定厚みの保持ができ、音の振動を受ける空気層を形成でき、構成繊維の単糸が振動して、音の振動を熱エネルギーに変換できる空気層の部分を形成する。
【0025】
従って、基材としてはウレタン樹脂発泡体、ロックウール、ガラス繊維、合成繊維などが用いられるが、リサイクルなどの目的で面材、基材の同質素材を用いることが好ましい。基材に用いられる合成繊維としては、平均繊維径が10〜50μm、平均みかけ密度が0.05〜0.5g/cm3 、好ましくは、平均繊維径が14〜40μm、平均みかけ密度が0.1〜0.4g/cm3からなる合成繊維不織布が好適である。特に、基材の厚みの保持する目的では比較的太い繊維が必要であり、一方、吸音性を向上するためには、細い繊維構成が好ましい、従って、基材の繊維構成としては、太い繊維と細い繊維の混合繊維を用い、かつ低融点繊維を5〜50%含ませ、不織布を形成し、加熱処理で厚み調整が行うことが好ましい。
【0026】
本発明に用いる基材の厚みは5〜50mm、目付けが100〜1500g/m2、より好ましくは、厚みが7〜40mm、目付けが120〜1300g/m2である。この範囲においては、基材の空気層が形成でき、裁断などの加工等の取り扱い性、吸音性に優れる。厚みおよび目付けが小さすぎると、取り扱い性、吸音性が低下する。
【0027】
前記基材を構成する合成繊維不織布には特に素材に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフイン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル、芯がポリプロピレン、ポリエステルなどの組み合わせからなる芯鞘構造等の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの繊維などを用いることができる。これらの繊維は単独または2種以上混合して用いてよく、また偏平糸などの異型断面繊維、捲縮繊維、割繊繊維などを混合または積層して用いることができる。特に断熱性、難燃性などからはポリエステル系繊維が好ましい。
【0028】
前記基材の合成繊維不織布は、短繊維または短繊維と長繊維を積層して公知のニードルパンチ法などで交絡して得られる。また不織布の繊維相互の結合を行って剛性を付与させるために、例えば、熱融着性繊維、難燃性繊維または水分散性の合成樹脂接着剤を5〜50重量%、好ましくは7〜30重量%含有させるのが好ましい。また難燃性などの機能を付与するために、アクリル系難燃繊維、エステル系難燃繊維などの難燃繊維、またはリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、チオ尿素系難燃剤を5〜50重量%、好ましくは7〜30重量%含有させるのが好ましい。
【0029】
熱融着性繊維としては、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合エステルなどで、芯がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの複合繊維、低融点の共重合エステル繊維などが挙げられる。水分散性の合成樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、合成ゴム系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂などを単独でまたは難燃性樹脂と混合して用いられる。
【0030】
次に本発明の面材と基材の接合方式について、以下に述べる。
本発明の複合吸音材は、前述のように少なくとも1層の緻密構造の面材と、粗密な構造の基材を接合して得られるが、該面材と基材の接合は、例えば(1)熱接着法、(2)接着剤法、(3)接着性シート状物を介在させる方法、(4)機械交絡法などを、1種または2種以上組み合わせて行なうことができる。なお、接合時には面材に貫通孔を付与しないことや、または、小さい穴を少なくすることが、高い吸音性を得る上で好ましい。
【0031】
面材と基材との接合の具体例としては、(1)の熱接着法は、面材及び/基材の低融点繊維の軟化または融解する過熱雰囲気で、ネット、ロールなどで加熱、加圧して接着する方法、(2)の接着剤法は、面材及び/基材にホットメルト系の粉末、接着剤などを、スプレー式、ロール式などで塗布させ、加熱処理することなど接合する方法、(3)の低融点繊維を含む不織布、くもの巣状の不織布、テープヤーンクロス、ホトメルト系フイルム、メッシュなどのシート状物を介在させて接着する方法、(4)の機械交絡法は、ニードルパンチで機械交絡させて接合する方法が、好ましいものとしてあげられる。なお(4)の方法では、不織布にニードル針穴が空くが、熱ロールなどで加熱させて、低融点繊維を軟化または融解させて、針穴を塞ぐことが好ましい。
【0032】
本発明において、面材として、2枚以上の積層不織布を重ねることが好ましい。この場合、特に20〜50g/m2の低目付けの積層不織布を2枚重ね合わせることが好ましい。
【0033】
本発明において、面材と基材の間に、熱接着性繊維層、またはホットメルト層を介在させると、面材と基材の接合を高める上で、好ましい。例えば、低密度ポリエチレン等の網状不織布を10〜30g/m2程度、または、ポリエチレン系樹脂の粉末を面材に5〜20g/m2塗布することが好ましい。
【0034】
本発明の複合吸音材の基材と面材の接合強度は、0.1N/5cm以上、好ましくは0.15〜2N/5cm、特に好ましくは、0.5N〜5N/5cmである。接合強度が小さすぎると、裁断、輸送などの取り扱い性が低下する。
【0035】
本発明の複合吸音材は、面材を1層、または2層以上の多層にして基材と組み合わせ、また基材と面材との貼り合わせを多層にして用いることにより、比較的薄く、軽量で、かつ高い吸音性を有する吸音材を得ることができる。従って本発明の複合吸音材は、厚みが5〜50mm、目付け100〜1500g/m2、より好ましくは、厚みが7〜45mm、目付け110〜1400g/m2であり、このようにして音の周波数の比較的広い範囲において、高い吸音効果が得られる。例えば、中程度の周波数、1000〜6000HZの領域において、30%以上、好ましくは、35%〜95%、より好ましくは40%〜100%の吸音率が得られる。特に4000HZの周波数領域においては、50%以上、好ましくは55%〜100%の高い吸音率が得られる。
【0036】
さらに本発明の複合吸音材は、面材と基材の接合性に優れているため、巻取加工性、裁断加工性、重ね梱包や運搬時等の取扱性および経済性に優れている。従って、本発明の複合吸音材は、取り扱い時の端部や全体の厚みのへたりが少なく、施工後において安定した吸音性を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。なお、実施例における各特性値は、下記の方法により測定した。
1)目付け(g/m2 ) :JIS−1913に準ずる。
2)平均繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、10本の平均値で求める。
3)嵩密度(g/cm3 ):(目付け)/(厚み)から算出し、単位容積あたりの重量を求める。
4)厚み(mm) :JIS−L−1913−B法に準ずる。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、平均値で示す。ただし、表面材の厚みは、荷重20kPaで測定した。
5)吸音性(%) :JIS−1405に準じ、垂直の入射法の測定機で周波数1000〜6000HZを測定する。
6)接合強度 :基材と面材との180度剥離を引張試験機でタテ方向、ヨコ方向を3箇所測定しその平均値で示す。
【0038】
[実施例1]
面材に用いる積層不織布は、ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(A)を捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウエブ(目付け45g/m2、平均繊維径14μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm2/hrで糸条を直接に噴出させ、極細繊維ウエブ(B)(目付け10g/m2、平均繊維径2μm)を形成した。更に極細繊維ウエブの上に、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点130℃)芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)からなる複合長繊維ウエブ(C)(目付け45g/m2、平均繊維径18μm)を積層した積層ウエブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃/105℃、線圧300N/cmで部分熱圧着し、目付け100g/m2、平均みかけ密度0.25g/cm3、熱圧着率15%の積層不織布からなる面材を得た。
【0039】
基材としては、ポリエステル短繊維(繊維径25μm、繊維長51mm)70%と、共重合ポリエステル繊維(融点135℃、繊維径15μm、繊維長51mm)30%をカード法で開繊ウエブを形成、ニードルパンチ加工で交絡し、目付け200g/m2、厚み25mm、平均みけけ密度0.08g/cm3を用い、前記面材との接合を行った。接合は、メッシュ状のコンベアベルトに挟み、温度150℃の雰囲気中で加熱、加圧の熱処理で接合して本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様の積層不織布の構成であり、目付け50g/m2、平均みかけ密度0.22g/cm3に変えた以外は、実施例1と同様の方法で本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0041】
[実施例3]
接合としては、低密度ポリエチレンの網状不織布(目付け20g/m2)を面材と基材との間に介在させて、加熱、加圧の熱処理の接合を変えた以外は実施例1の面材と基材を用い本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0042】
[実施例4]
ポリエチレン系のホットメルト系樹脂の粉末を面材に塗布(10g/m2)させてから温度160℃雰囲気にて、加熱し、基材を重ねて接合を変えた以外は実施例1の面材と基材を用い本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0043】
[実施例5]
面材に用いる積層不織布は、ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(A)を捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウエブ(目付け40g/m2、平均繊維径12μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm2 /hrで糸条を直接に噴出させ、極細繊維ウエブ(B)(目付け20g/m2、平均繊維径2μm)を形成した。更に極細繊維ウエブの上に、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点160℃)芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)からなる複合長繊維ウエブ(C)(目付け40g/m2、平均繊維径16μm)を積層した積層ウエブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃/145℃、線圧300N/cmで部分熱圧着し、目付け100g/m2、平均みかけ密度0.25g/cm3、熱圧着率20%の積層不織布からなる面材を得た。
【0044】
基材としては、ポリエステル短繊維(繊維径25μm、繊維長51mm)70%と、共重合ポリエステル繊維(融点135℃、繊維径15μm、繊維長51mm)30%をカード法で繊維を開繊ウエブを形成、ニードルパンチ加工で交絡し、目付け200g/m2、厚み25mm、平均みけけ密度0.08g/cm3を用い、前記面材との接合を行った。接合は、メッシュ状のコンベアベルトに挟み、温度150℃の雰囲気中で加熱、加圧の熱処理で接合して本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0045】
[実施例6]
実施例5の面材を用い、基材としては、ポリエステル短繊維(繊維径25μm、繊維長51mm)30%、ポリエステル短繊維(繊維径12μm、繊維長51mm)30%、共重合ポリエステル繊維(融点135℃、繊維径17μm、繊維長51mm)40%の混合短繊維をカード法で開繊し、ニードルパンチで機械交絡して、目付け1000g/m2、厚み40mm、平均みかけ密度0.25g/cm3からなる基材と加熱加圧の熱処理により接合し本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0046】
[実施例7]
基材は、目付け500g/m2、厚み40mm、平均みかけ密度0.125g/cm3に変えた以外は実施例5と同様にして、本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0047】
[実施例8]
基材は、目付け375g/m2、厚み30mm、平均みかけ密度0.125g/cm3に変えた以外は実施例5と同様にして、本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0048】
[実施例9]
基材は、目付け250g/m2、厚み20mm、平均みかけ密度0.125g/cm3に変えた以外は実施例5と同様にして、本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0049】
[実施例10]
実施例2の面材と基材を用い、接合を、ニードル針40番で、深さ8mm、35回数/cm2で機械交絡させてから、温度150℃の加熱ロールで面材側を接触させて針穴を塞ぐように加工して本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
【0050】
[実施例11]
実施例2の面材を2枚重ねて、実施例1の基材を用い、接合を、ニードル針40番で、深さ8mm、35回数/cm2で機械交絡させてから、温度150℃の加熱ロールで面材側を接触させて針穴を塞ぐように加工して本発明の複合吸音材を得た。その特性を表1に記載した。
前記実施例1〜11においては、面材と基材の接着性が低融点成分を含む繊維構成であるため、熱処理工程で良好に接合できる。更に、本発明の積層不織布を面材に使用することで、優れた吸音性が得られ、且つ、基材との組み合わせで1000HZ〜6300HZの周波数領域において高い吸音性が得られる。
【0051】
[比較例1]
実施例1の面材を使用しない基材のみの特性を表1に記載した。
【0052】
[比較例2]
面材として、ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1 )を捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウエブ(目付け100g/m2、平均繊維径14μm)を熱圧着で目付け100g/m2、平均みかけ密度0.23g/cm3、熱圧着率15%の積層不織布からなる面材を得た。該面材と実施例1の基材とを実施例1と同様の接合加工したが接合できなかった。
【0053】
[比較例3]
実施例6の面材を使用しない基材のみの特性を表1に記載した。
比較例1〜2の基材のみでは、吸音性が低く、比較例3においては、低融点成分を含む繊維構成でないため、熱処理での接合ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の複合吸音材は、面材と基材との接合性に優れ、極細繊維を含む積層不織布を用いるため、優れた吸音性が得られる。また緻密で剛性を有する面材を用いるため、厚み変化が少なく、裁断性、取り扱い性などに優れている。従って、自動車部材、建築材料、家電製品、建設機械など吸音材として好適に用いられる。
【0055】
【表1】

【0056】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚の緻密な構造の面材と、粗密な構造の基材とを接合してなる複合吸音材であって、該緻密な構造の面材は、高融点成分を含む熱可塑性合成繊維層(A)、中間層としての熱可塑性合成極細繊維層(B)、該(A)の高融点繊維より30℃以上低融点である低融点成分を含む熱可塑性合成繊維を含む層(C)を、熱圧着して積層一体化した、目付けが20〜250g/m2、平均みかけ密度が0.15〜0.8g/cm3の積層不織布であり、前記粗密な構造の基材は、厚みが5〜50mm、平均繊維径が10〜30μm、平均みかけ密度が0.05〜0.5g/cm3である合成繊維不織布であり、かつ該複合吸音材の厚みが5〜50mm、および目付けが100〜1500g/m2であることを特徴とする複合吸音材。
【請求項2】
前記面材の(A)および(C)の平均繊維径が10〜30μmであり、(B)の平均繊維径が1〜7μmからなることを特徴とする請求項1に記載の複合吸音材。
【請求項3】
前記(B)層の目付けが1〜20g/m2であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合吸音材。
【請求項4】
前記(C)層の熱可塑性合成繊維が、鞘芯型複合繊維であり、芯部が高融点成分、および鞘部が芯部より30℃以上低い低融点成分からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合吸音材。
【請求項5】
前記(A)及び(B)の熱可塑性合成繊維層が、ポリエステル系繊維及び/又はポリエステル系共重合繊維からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合吸音材。
【請求項6】
前記基材の合成繊維不織布が、ポリエステル系短繊維またはポリエステル系共重合短繊維からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合吸音材。
【請求項7】
前記基材の合成繊維不織布が、熱融着繊維および/または熱可塑性樹脂を5〜50重量%含有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合吸音材。
【請求項8】
前記面材が2枚以上の積層不織布から構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の複合吸音材。
【請求項9】
前記面材と基材との間に、接着繊維層およびホットメルト層を介在させたことを特徴する請求項1〜8のいずれかに記載の複合吸音材。
【請求項10】
前記面材と基材の接合力が0.1N/5cm以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の複合吸音材。

【公開番号】特開2009−843(P2009−843A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162059(P2007−162059)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】