説明

複合基板及びそれを用いた弾性波デバイス

【課題】圧電基板と支持基板とを樹脂製の接着層で接合した複合基板において、一度高温となった後に反りが残るのを防止する。
【解決手段】圧電基板11の裏面と支持基板12とを接合する絶縁樹脂製の接着層13に、圧電基板11の電荷を除去する導電性の除電粒子を含有させている。これにより、この複合基板10及びそれを用いて形成された弾性表面波デバイスが一度高温となった後に反りが残るのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板及びそれを用いた弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性波デバイスとして、携帯電話等に使用されるフィルター素子や発振子として機能させることができる弾性表面波デバイスや、薄膜共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などのバルク波デバイスが知られている。このような弾性波デバイスにおいて、導電率が1×10-13[Ω-1・cm-1]以上の圧電基板と導電率が5×10-12[Ω-1・cm-1]以下の絶縁体基板とを接着剤を介して張り合わせた複合基板を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。こうすることにより、圧電基板に生ずる焦電効果が抑制され、180℃の熱処理後においても複合基板の反り増加量を小さくできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−68484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば弾性波デバイスをプリント配線基板に実装する際のリフロー工程など、180℃よりも高い温度(例えば250℃以上)でのプロセスを経ると、特許文献1に記載の複合基板では焦電効果を抑制する効果が弱まり、熱処理後の反り増加量を十分小さくできない場合がある。また、特許文献1に記載の複合基板では、上記の導電率の範囲にある圧電基板及び支持基板(絶縁体基板)を使用する必要があるため、これらの材質が限定されてしまうという問題がある。さらに、圧電基板が焦電体でない場合には焦電効果の抑制は必要がないが、この場合でも、圧電基板と支持基板との熱膨張係数の違いにより高温時に生じた反りが常温で残ってしまう場合がある。反りが残ると、以降のプロセスで不具合が生じる場合があるため、特許文献1記載の手法以外の手法により熱処理後の反りを防止することが望まれている。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、圧電基板と支持基板とを樹脂製の接着層で接合した複合基板において、一度高温となった後に反りが残るのを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合基板は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の複合基板は、
弾性波を伝搬可能な圧電基板と、
前記圧電基板よりも熱膨張係数が小さい支持基板と、
前記圧電基板の裏面と前記支持基板とを接合する絶縁性の樹脂からなる接着層と、
を備え、
前記接着層は、前記圧電基板の電荷を除去する導電性の除電粒子を含有している、
ものである。
【0008】
この複合基板では、圧電基板の裏面と支持基板とを接合する樹脂製の接着層に、圧電基板の電荷を除去する導電性の除電粒子を含有させている。これにより、この複合基板が一度高温となった後に反りが残るのを防止することができる。なお、この理由は以下のように考えられる。複合基板が高温になると、圧電基板と支持基板との熱膨張係数の違いにより複合基板に反りが生じ、この反りにより生じた応力によって圧電基板の表面には電荷が生じる。また、圧電基板が焦電体である場合には、複合基板が高温になることで圧電基板の表面には焦電効果による電荷も生じる。そして、温度が常温に戻ってもこのような電荷が圧電基板中に存在し続けると、この電荷による逆圧電効果により圧電基板が反ったままとなってしまう。本発明の複合基板では、接着層に導電性の除電粒子が存在するため、圧電基板中の電荷が接着層中に移動することで圧電基板が除電されて反りが解消していると考えられる。なお、本発明の複合基板において、前記除電粒子はカーボン又は金属からなるものとしてもよい。
【0009】
本発明の第1の弾性波デバイスは、上述した本発明の複合基板を用いて形成され、前記弾性波を励振可能な電極を前記圧電基板の表面に備えたものである。この弾性波デバイスによれば、上述した複合基板で得られる効果と同様の効果を得ることができる。なお、弾性波デバイスとしては、例えば、共振子やフィルター,コンボルバーなどの弾性表面波デバイスや、薄膜共振子などのバルク波デバイスが挙げられる。
【0010】
本発明の第2の弾性波デバイスは、
弾性波を伝搬可能な圧電基板と、
前記圧電基板の表面に形成され、前記弾性波を励振可能な電極と、
前記圧電基板よりも熱膨張係数が小さい支持基板と、
前記圧電基板の裏面と前記支持基板とを接合する絶縁性の樹脂からなる接着層と、
前記圧電基板の側面に接着され、該圧電基板の電荷を除去する導電性の除電粒子を絶縁性の樹脂に含有させた除電層と、
を備えたものである。
【0011】
この弾性波デバイスでは、圧電基板の側面に圧電基板の電荷を除去する導電性の除電粒子を絶縁性の樹脂に含有させた除電層を備えている。これにより、圧電基板中の電荷が除電層に移動することで圧電基板が除電されるため、弾性波デバイスが一度高温となった後に反りが残るのを防止することができる。なお、本発明の複合基板において、前記除電粒子はカーボン又は金属からなるものとしてもよい。
【0012】
本発明の第2の弾性波デバイスにおいて、前記除電層は、前記圧電基板の側面を覆っているものとしてもよい。こうすれば、圧電基板の反りを防止する効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】複合基板10の斜視図である。
【図2】複合基板10の製造工程を模式的に示す説明図(断面図)である。
【図3】複合基板10を用いて作製した1ポートSAW共振子30の斜視図である。
【図4】1ポートSAW共振子30をセラミックス基板40に搭載し樹脂で封入し、プリント配線基板60に実装した様子を示す断面図である。
【図5】別の実施形態の1ポートSAW共振子70の断面図である。
【図6】評価試験1における比較例1の結果をプロットしたグラフである。
【図7】評価試験2における比較例2の結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態である複合基板10の斜視図である。この複合基板10は、弾性表面波デバイスに利用されるものであり、1箇所がフラットになった円形に形成されている。このフラットな部分はオリエンテーションフラット(OF)と呼ばれる部分であり、弾性表面波デバイスの製造工程において諸操作を行うときのウエハー位置や方向の検出などに用いられる。本実施形態の複合基板10は、圧電基板11と、支持基板12と、接着層13とを備えている。
【0015】
圧電基板11は、弾性表面波を伝搬可能な圧電体の基板である。圧電基板11の材質としては、例えば、タンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム,ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶,ホウ酸リチウム,窒化ガリウム,水晶などが挙げられる。圧電基板11の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、直径が50〜150mm、厚さが10〜50μmである。
【0016】
支持基板12は、接着層13を介して圧電基板11の裏面に貼り合わせられた基板である。この支持基板12は、圧電基板11よりも熱膨張係数の小さい材質からなるものである。支持基板12の材質としては、例えば、シリコン,サファイア,窒化アルミニウム,アルミナ,ホウ珪酸ガラス,石英ガラス,スピネルなどが挙げられる。中でもシリコンは半導体デバイス作成用として最も実用化されている材料であり、この複合基板10を用いて作製した弾性表面波デバイスと半導体デバイスとを複合化しやすくなるため好ましい。支持基板12の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、直径が50〜150mm、厚さが100〜500μmである。また、支持基板12の熱膨張係数は、例えば圧電基板11の熱膨張係数が13〜20ppm/Kの場合には、2〜7ppm/Kのものを用いるのが好ましい。なお、このように支持基板12を圧電基板11よりも熱膨張係数の小さい材質とすることで、温度が変化したときの圧電基板11の大きさの変化が支持基板12によって抑制される。すなわち、この複合基板10の温度特性が向上する。
【0017】
接着層13は、圧電基板11の裏面と支持基板12の表面とを接着するものである。この接着層13は、圧電基板11と支持基板12とを接着するための絶縁樹脂製の接着剤組成物に、導電性の除電粒子を含有させたものである。接着剤組成物の材質としては、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂が挙げられる。除電粒子の材質としては、例えば、カーボン又は金属(例えば銀など)が挙げられる。この粒子の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、直径が20〜200nmである。また、接着層13における粒子の量は、特に限定するものではないが、例えば接着剤組成物の5〜15wt%である。また、接着層13の厚さは、例えば0.1〜2μmとするのが好ましい。接着層13の厚さが2μmを越えると、複合基板10の温度特性を向上させる効果が十分得られなくなるため好ましくない。また、接着層13の厚さが0.1μm未満になると十分な接着強度が得られないため好ましくない。
【0018】
こうした複合基板10の製造方法について、図2を用いて以下に説明する。図2は、複合基板10の製造工程を模式的に示す説明図(断面図)である。まず、OFを有する所定の直径及び厚さの支持基板12を用意する。また、圧電基板11の研磨前の状態である圧電基板21を用意する(図2(a)参照)。そして、接着剤組成物に導電性の除電粒子を含有させたものを支持基板12の表面と圧電基板21の裏面との少なくとも一方に均一に塗布する。その後、両基板を貼り合わせ、接着剤組成物が熱硬化性樹脂の場合には加熱して硬化させ、接着剤組成物が光硬化性樹脂の場合には光を照射して硬化させる。これにより、除電粒子を含有した接着剤組成物が硬化して接着層13となり、貼り合わせ基板20(研磨前の複合基板10)が得られる(図2(b)参照)。その後、研磨機にて圧電基板21を研磨して所定厚さまで薄くし、さらに圧電基板21の表面を鏡面研磨することで研磨前の圧電基板21が圧電基板11となり、複合基板10が得られる(図2(c)参照)。
【0019】
こうして得られた複合基板10は、この後、一般的なフォトリソグラフィ技術を用いて電極を形成して、複合基板10を多数の弾性表面波デバイスの集合体としたあと、ダイシングにより1つ1つの弾性表面波デバイスに切り出される。複合基板10を弾性表面波デバイスである1ポートSAW(Surface Acoustic Wave)共振子30の集合体としたときの様子を図3に示す。1ポートSAW共振子30は、フォトリソグラフィ技術により、圧電基板11の表面にIDT(Interdigital Transducer)電極32,34(櫛形電極、すだれ状電極ともいう)と反射電極36とが形成されたものである。なお、得られた1ポートSAW共振子30は、次のようにしてプリント配線基板60に実装される。即ち、図4に示すように、IDT電極32,34とセラミックス基板40のパッド42,44とを金ボール46,48を介して接続したあと、このセラミックス基板40上で樹脂50により封入する。そして、そのセラミックス基板40の裏面に設けられた電極52,54とプリント配線基板60のパッド62,64との間に鉛フリーのはんだペーストを介在させたあと、リフロー工程によりプリント配線基板60に実装される。なお、図4には、はんだペーストが溶融・再固化したあとのはんだ66,68を示した。ここで、リフロー工程では、1ポートSAW共振子30が例えば260℃程度に加熱されるため、加熱中は圧電基板11と支持基板12との熱膨張係数の差により反りが生じる。そして、この反りによる応力によって圧電基板の表面には電荷が生じる。また、圧電基板11が焦電体である場合には、1ポートSAW共振子30が高温になることで圧電基板11の表面には焦電効果による電荷も生じる。しかし、本実施形態では、接着層13中の除電粒子にこれらの電荷が移動することで圧電基板11が除電される。そのため、リフロー工程後に1ポートSAW共振子30が常温に戻ったときには、圧電基板11には電荷による逆圧電効果が生じず、圧電基板11の反りは解消される。
【0020】
以上詳述した本実施形態の複合基板10によれば、圧電基板11の裏面と支持基板12とを接合する絶縁樹脂製の接着層13に、圧電基板11の電荷を除去する導電性の除電粒子を含有させている。これにより、この複合基板10及びそれを用いて形成された弾性表面波デバイスが一度高温となった後に反りが残るのを防止することができる。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0022】
例えば、上述した実施形態では、複合基板10において、絶縁樹脂製の接着層13に、圧電基板11の電荷を除去する導電性の除電粒子を含有させるものとしたが、複合基板10の接着層13には除電粒子を含有させないものとし、複合基板10を用いて形成された弾性表面波デバイスにおいて、圧電基板11の側面に圧電基板の電荷を除去する導電性の除電粒子を絶縁性の樹脂に含有させた除電層を接着させるものとしてもよい。この場合の1ポートSAW共振子70の断面図を図5に示す。なお、上述した実施形態における複合基板10及び1ポートSAW共振子30と同じ構成要素については、同じ符号を付すものとし、説明を省略する。この1ポートSAW共振子70は、圧電基板11の裏面と支持基板12とを接着層73により接着した複合基板において、圧電基板11の表面にIDT電極32,34(図示は省略)と反射電極36とを形成して作製したものである。接着層73は、接着層13とは異なり除電粒子を含有しておらず、接着層13の接着剤組成物と同様の絶縁性樹脂からなるものである。また、この1ポートSAW共振子70は、圧電基板11の側面に圧電基板11の電荷を除去する除電層74を備えている。この除電層74は、接着層13と同様、絶縁樹脂製の接着剤組成物に導電性の除電粒子を含有させたものである。除電粒子の材質としては、接着層13における除電粒子と同様に、例えばカーボン又は金属が挙げられる。この除電層74を、例えば複合基板から1ポートSAW共振子70を切り出した後、リフロー工程前に圧電基板11の側面に接着しておくことで、上述した複合基板10及び1ポートSAW共振子30と同様に、弾性表面波デバイス70が一度高温となった後に反りが残るのを防止する効果が得られる。なお、除電層74は、圧電基板14の側面の一部に接着されるものとしてもよいし、側面を覆っているものとしてもよい。側面を覆うものとした方が一度高温となった後に反りが残るのを防止する効果が高まるため好ましい。また、図5では、除電層74は圧電基板11の側面にのみ接着されているが、圧電基板11の側面に接着されていればよく、例えば、接着層73や支持基板12の側面にも接着されているものとしてもよい。さらにまた、除電層74だけでなく、接着層73についても接着層13と同様に除電粒子を含有させるものとしてもよい。
【0023】
上述した実施形態では、複合基板10を用いて作製する弾性波デバイスとして1ポートSAW共振子について説明したが、複合基板10を用いて他の弾性波デバイスを作製しても同様の効果を得ることができる。他の弾性波デバイスとしては、例えば、2ポートSAW共振子やトランスバーサル型SAWフィルター、ラダー型SAWフィルター、コンボルバーなどの弾性表面波デバイスや、薄膜共振子などのバルク波デバイスが挙げられる。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
実施例1として、図1に示した複合基板10を作製し、これを用いて図3に示した1ポートSAW共振子30を作製した。
【0025】
具体的には、まず、圧電基板11となる厚さが250μm,直径100mmのタンタル酸リチウム基板(以下、LT基板)と、支持基板12となる厚さ250μm,直径100mmのシリコン基板とを用意した。ここで、LT基板は、弾性表面波の伝搬方向をXとし、切り出し角が回転Yカットである42°YカットX伝搬LT基板を用いた。LT基板の体積抵抗率は5.0×1010Ω・cmであった。続いて、エポキシ樹脂系接着剤に除電粒子として平均粒径50nmのカーボン粒子をエポキシ樹脂系接着剤の15wt%の分量だけ混ぜた混合接着剤を用意し、これをシリコン基板の表面にスピンコートにより塗布した。なお、混合接着剤の比抵抗は2.0×10-4Ω・cmであった。そして、LT基板の裏面がシリコン基板の混合接着剤を塗布した側と接するように貼り合わせて160℃に加熱し、硬化後の接着層13の厚さが1μmとなる貼り合わせ基板を形成した。
【0026】
次に、この貼り合わせ基板を、研磨機にてLT基板の厚さが10μmとなるまで研磨した。研磨機としては、まずLT基板の厚みを薄くし、その後鏡面研磨を行うものを用いた。厚みを薄くするときには、研磨定盤とプレッシャープレートとの間に貼り合わせ基板を挟み込み、その貼り合わせ基板と研磨定盤との間に研磨砥粒を含むスラリーを供給し、このプレッシャープレートにより貼り合わせ基板を定盤面に押し付けながらプレッシャープレートに自転運動を与えて行うものを用いた。続いて、鏡面研磨を行うときには、研磨定盤を表面にパッドが貼られたものとすると共に研磨砥粒を番手の高いものへと変更し、プレッシャープレートに自転運動及び公転運動を与えることによって、LT基板の表面を鏡面研磨した。具体的には、まず、貼り合わせ基板のLT基板の表面を定盤面に押し付け、自転運動の回転速度を100rpm、研磨を継続する時間を60分として研磨した。続いて、研磨定盤を表面にパッドが貼られたものとすると共に研磨砥粒を番手の高いものへと変更し、貼り合わせ基板を定盤面に押し付ける圧力を0.2MPa、自転運動の回転速度を100rpm、公転運動の回転速度を100rpm、研磨を継続する時間を60分として鏡面研磨した。この結果、研磨前のLT基板が研磨後の圧電基板11になり、実施例1の複合基板10が完成した。
【0027】
続いて、作製した複合基板10に一般的なフォトリソグラフィ技術を用いてIDT電極32,34、反射電極36を形成して、4000個の1ポートSAW共振子30の集合体とした。そして、2000番のレジン系砥石を使用し、回転数29000rpmにてダイシングを行って1つ1つの1ポートSAW共振子30を切り出した。なお、IDT電極32,34は線幅が値0.55μm,周期λが値2.2μmとなるように形成し、反射電極36はストライプの線幅が値0.55μm,周期pが1/2λとなるように形成した。
【0028】
[比較例1]
接着層13をカーボン粒子を混ぜずにエポキシ樹脂系接着剤のみにより形成したした点以外は、実施例1と同様にして複合基板10を作製し、実施例1と同様に1ポートSAW共振子30を作製した。
【0029】
[評価試験1]
実施例1及び比較例1の1ポートSAW共振子30をそれぞれサンプルとして10個ずつ用意し、250℃に設定されたホットプレート上にサンプルをのせ、上方をSUS製の箱で囲んだ。この状態で3分間保持し、開放してサンプルをφ100mm,厚さ20mmのSUS板へ移して室温まで冷却した後に、圧電基板11の表面の反り量及び静電気量(電位)を測定した。なお、反り量はZygo社製光学測定器(NV5010)を用いて測定し、静電気量はKeyence社製の静電気測定器(SK-200)を用いて測定した。その結果、実施例1の1ポートSAW共振子30は10個全てにおいて反り量及び電位がゼロであった。一方、比較例1の1ポートSAW共振子30の反り量及び電位は図6のようになった。なお、図6ではプロットされた点は9個に見えるが、これは反り量が1μm,電位が220Vの1ポートSAW共振子30が2個あったためである。比較例1の反り量の平均値は1.19μmであり、電位の平均値は229.8Vであった。実施例1の結果及び図6の結果から、実施例1では、一度高温になった後の圧電基板11の電荷が除電粒子を含有する接着層13により除去されることで、圧電基板11の電位がゼロとなり、これにより反りが残っていないことがわかる。
【0030】
[実施例2]
実施例2として、図5に示した1ポートSAW共振子70を作製した。なお、1ポートSAW共振子70は、比較例1と同様にして1ポートSAW共振子を作製し、その後に圧電基板11の側面を覆うように除電層74を接着することで作製した。なお、除電層74は、エポキシ樹脂系接着剤に除電粒子として平均粒径50nmの銀粒子をエポキシ樹脂系接着剤の15wt%の分量だけ混ぜた混合接着剤を用いた。混合接着剤の比抵抗は5.0×10-5Ω・cmであった。この混合接着剤を綿棒にて圧電基板11の側面を覆うように塗布したのち160℃に加熱することで硬化させて、除電層74とした。
【0031】
[比較例2]
除電層74をカーボン粒子を混ぜずにエポキシ樹脂系接着剤のみにより形成したした点以外は、実施例2と同様にして1ポートSAW共振子70を作製した。
【0032】
[評価試験2]
実施例2及び比較例2の1ポートSAW共振子70をそれぞれ10個ずつ用意し、これらを評価試験1と同様の条件で加熱・冷却した後、評価試験1と同様に圧電基板11の表面の反り量及び静電気量(電位)を測定した。その結果、実施例2の1ポートSAW共振子70は10個全てにおいて反り量及び電位がゼロであった。一方、比較例1の1ポートSAW共振子70の反り量及び電位は図7のようになった。なお、比較例2の反り量の平均値は1.29μmであり、電位の平均値は229.9Vであった。実施例2の結果及び図7の結果から、実施例2では、一度高温になった後の圧電基板11の電荷が除電粒子を含有する除電層74により除去されることで、圧電基板11の電位がゼロとなり、これにより反りが残っていないことがわかる。
【符号の説明】
【0033】
10 複合基板、11 圧電基板、12 支持基板、13 接着層、20 貼り合わせ基板、21 圧電基板(研磨前)、30 1ポートSAW共振子、32,34 IDT電極、36 反射電極、40 セラミックス基板、42,44 パッド、46,48 金ボール、50 樹脂、52,54 電極、60 プリント配線板、62,64 パッド、66,68 はんだ、70 1ポートSAW共振子、74 除電層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波を伝搬可能な圧電基板と、
前記圧電基板よりも熱膨張係数が小さい支持基板と、
前記圧電基板の裏面と前記支持基板とを接合する絶縁性の樹脂からなる接着層と、
を備え、
前記接着層は、前記圧電基板の電荷を除去する導電性の除電粒子を含有している、
複合基板。
【請求項2】
前記除電粒子は、カーボン又は金属からなる、
請求項1に記載の複合基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合基板を用いて形成され、前記弾性波を励振可能な電極を前記圧電基板の表面に備えた弾性波デバイス。
【請求項4】
弾性波を伝搬可能な圧電基板と、
前記圧電基板の表面に形成され、前記弾性波を励振可能な電極と、
前記圧電基板よりも熱膨張係数が小さい支持基板と、
前記圧電基板の裏面と前記支持基板とを接合する絶縁性の樹脂からなる接着層と、
前記圧電基板の側面に接着され、該圧電基板の電荷を除去する導電性の除電粒子を絶縁性の樹脂に含有させた除電層と、
を備えた弾性波デバイス。
【請求項5】
前記除電粒子はカーボン又は金属からなる、
請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記除電層は、前記圧電基板の側面を覆っている、
請求項4又は5に記載の弾性波デバイス

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−10054(P2012−10054A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143414(P2010−143414)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】