複合多勾配FMチャープ波形を用いた自動車レーダー
対象物体の距離及び速度を求めるのに用いられるマイクロ波センサーの搬送波周波数を変調するのに利用される波形の生成及び処理のためのシステム及び方法が開示される。本システム及び本方法は、結果として高レベルの干渉を有する環境における性能を改善する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体の距離及び速度を求めるのに用いられるマイクロ波センサーの搬送波周波数を変調するのに利用される波形の生成及び処理のための方法及び装置に関する。本方法は、限定ではないが特に、高レベルの干渉を有する環境において動作するように意図される自動車のマルチユーザーFMCWレーダーに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
自律的クルーズコントロール及び衝突警報/回避システムの需要が伸びたことが、周波数変調連続波(FMCW)自動車レーダーを開発する契機になった。開発中のレーダーの大部分は77GHz帯において動作し、その帯域はこれらの用途のために予約されている。
【0003】
FMCWレーダーの機能ブロック図が図1に示されている。このシステムは、三角波形発生器WFG101と、アップコンバーターとしての役割も果たす電圧制御発振器VCO102と、結合器CPL103と、シングルアンテナ動作を提供するサーキュレーターCIR104と、送信−受信アンテナTRA105と、直交混合器QMX107と、周波数分析器FAN108と、デジタルシグナルプロセッサDSP109とを備える。
【0004】
三角波形発生器WFGは、三角形を成すように、電圧制御発振器VCOの周波数を変更する制御信号CVを生成する。結果として生成され、アンテナTRAによって送信される波形TWは、一定の振幅を有するが、図2aに概略的に示されるように、その周波数は各掃引区間Ts中に帯域Δfにわたって掃引される。
【0005】
距離Rにある障害物OBS106からのエコーRWは、送信波形TWの減衰したコピーになり、τ=2・R/cだけ時間的に遅延している。ただし、cは光速である。
エコーRWは、直交混合器QMXにおいて、結合器SPLによって供給される送信波形TWの一部と混合される。
混合器QMXの出力信号QSは、周波数分析器FANにおいて分析され、障害物距離に正比例する振幅|fR|を有するビート周波数BFを生成する。
【0006】
【数1】
【0007】
ただし、|S|=|Δf|/Tsは周波数掃引の勾配である。
【0008】
反射波の周波数から問合せ波(an interrogating wave)の周波数を減算したものとして定義されるビート周波数fRは、周波数下り掃引(S<0)の場合に正であり、周波数上り掃引(S>0)の場合に負である。このため、
【0009】
【数2】
【0010】
である。
【0011】
従来技術から既知であるように、正のビート周波数と負のビート周波数との区別は、レーダーシステムが直交信号処理を利用するときに達成することができる。
【0012】
図2aは、送信波形及び受信波形両方の線形の周波数変動を概略的に示しており、結果として生成されるビート周波数も示している。図に示されるように、ビート周波数fRは、掃引の極限における大きさを除いて一定の大きさである(この影響は実際には無視することができる)。
【0013】
レーダーと障害物との間の視線速度(radial velocity)Vの相対運動によって、ビート周波数fR上にドップラー周波数シフト
【0014】
【数3】
【0015】
が重ね合わせられる。ただし、λ=c/fcは波長であり、fcはレーダー送信の搬送波周波数である。搬送波周波数fcは、周波数掃引が占める帯域Δfよりもはるかに大きいため、実際には、ドップラーシフトの値fvは周波数変調による影響を受けない。
【0016】
障害物が速度Vでレーダーに近づいてくる場合、ドップラーシフトfvは正であるのに対し、障害物がレーダーから遠ざかる場合、シフトfvは負となる。したがって、測定されるビート周波数fBは2つの周波数成分fR及びfvに起因して生じ、適切に結合されて複合ビート周波数が生成される。
【0017】
【数4】
【0018】
勾配S自体が負(下り掃引の場合)又は正(上り掃引の場合)になり得ることに留意されたい。
【0019】
図2bは、送信される波形に対して受信される波形が遅延し、ドップラーシフトする場合を示している。
【0020】
デジタルシグナルプロセッサDSPは、周波数分析器FANによって供給される、測定されたビート周波数値BFを使用して、障害物の距離R及び相対速度Vの両方を求める。距離R及び速度Vの推定値が、プロセッサDSPの出力RVにおいて生成される。正確な動作のために、シグナルプロセッサDSPは、波形発生器WFGから、各周波数掃引の開始及び方向を示す同期用パルスSCを受信する。
【0021】
自動車レーダーの分野では、要求される機能及び潜在的な性能をハードウェアで実証することに、研究開発の努力の大部分を集中してきた。しかしながら、相互干渉に対する耐性に関する重要な問題がほとんど無視されてきた。マルチユーザー干渉への耐性の問題が解決されるまで、自動車レーダーが商業的成功に至らないことは今や明らかである。
【0022】
自動車レーダーにおいて用いられる従来のFMパターン及び関連する信号処理技法は、マルチユーザー干渉による重大な影響を受け得る。干渉の形態によっては適切に設計されたシステムにおいて耐えられ得るが、抑制が不可能な干渉の形態が存在する。結果として、高密度の信号のマルチユーザー環境において動作する従来のFMシステムは、質の劣った障害物検出、並びに該障害物の距離及び速度の不十分な推定しか提供することができない。
【0023】
マルチユーザー干渉の負の影響は、周波数変調の不規則かつ非循環のパターンを利用することによって、或る程度緩和することができる。たとえば、欧州特許出願第07252352.5号は、送信機の周波数が、区分的に線形であるが依然として非決定論的でかつ不規則な「ジグザグ」状であり、割り当てられる周波数帯域の最大の広がりを利用するように配置される自動車レーダーシステムを開示している。欧州特許出願第07252352.5号の内容は参照により本明細書に含まれる。
【0024】
同じ領域内で動作すると共に同じ周波数帯域を共有する他のユーザーによって引き起こされる帯域内相互干渉の影響を、ランダム周波数ウォークを使用することによって低減することができる。しかしながら、ランダム周波数ウォークにおいて利用される方法のような、多勾配FMチャープ信号の最適な処理が可能な効率的な方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、特に自動車レーダーにおいて、結果としてマルチユーザー干渉に対する耐性を改善することになる、FM波形の設計及び生成のための方法及び装置を提供することが望ましい。
【0026】
複合多勾配FMチャープ波形(composite multi-slope FM chirp waveform)を用いると共に高密度の信号のマルチユーザー環境において動作することが可能な自動車レーダーにおいて検出された物体の距離及び/又は速度を求めるための方法及び装置を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の1つの態様によれば、物体を検出する方法であって、
有限の持続時間の変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、並びに
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めること、
を含み、
前記送信信号は、少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、
前記線形の周波数変動は各前記部分内で異なる勾配を有する、方法が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、及び
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、
を含み、
前記送信信号はK個の部分から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数はそれぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、ただしk=1,...,Kであり、
該方法は、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めることをさらに含む、方法が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える自動車レーダー装置であって、
前記送信信号が少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、前記線形周波数が各前記部分内で異なる勾配を有するような前記変動周波数信号を提供するように動作可能な信号発生器をさらに備える、自動車レーダー装置が提供される。
【0030】
本発明の別の態様によれば、
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号がK個の部分から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動するような前記変動周波数信号を提供するように動作可能である信号発生器と、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える、自動車レーダー装置が提供される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、及び
前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を求めること、
を含み、
前記送信信号は、K個の部分(k)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、
前記部分は、反対かつ/又は逆数の正規化された勾配Sk(opposite and/or inverse normalized slopes Sk)から成るK/2個の対で存在し、
該方法は、
前記ビート周波数(fBk)及び該ビート周波数のそれぞれの勾配(Sk)から前記物体の距離及び/又は速度をK/2回計算することであって、毎回、複数の前記対のうちの1つが該計算プロセスから除外される、計算すること、
或る対を用いた計算が、他の対の結果によって形成されるクラスターの外側に位置する結果を生成するか否かを判断すること、及び
前記結果によって与えられた前記距離及び/又は前記速度を出力すること、
をさらに含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来技術のFMCW自動車レーダーの簡略化された機能ブロック図である。
【図2】(a)は、送信波形及び受信波形の線形の周波数変動、並びにまた結果として生成されるビート周波数を概略的に示す図であり、(b)は、受信波形が送信波形に対して遅延しドップラーシフトする場合の、送信波形及び受信波形の線形の周波数変動、並びにまた結果として生成されるビート周波数を概略的に示す図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態による、マルチユーザー自動車FMCWレーダーシステムに適したチャープバーストの時間−周波数特性の一例を示す図であり、(b)は、本発明の一実施形態による、マルチユーザー自動車FMCWレーダーシステムに適したチャープバーストの電力−時間特性の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、時間−周波数平面及びそれぞれが異なる勾配を有する複数の周波数チャープを用いて照射された物体を象徴的に示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による、推定値分離を達成する勾配値の選択の一例を概略的に示す図である。
【図6a】本発明の一実施形態による、異なる順序で発生するが同じ6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示す図である。
【図6b】本発明の一実施形態による、異なる順序で発生するが同じ6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示す図である。
【図6c】本発明の一実施形態による、異なる順序で発生するが同じ6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に従って構築されたチャープ−バースト発生器CBGの機能ブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態による、6つの周波数チャープを含む選択された波形の周波数−時間特性の一例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に従って構築されたビート周波数プロセッサBFPの機能ブロック図である。
【図10】本発明の一実施形態に従って構築された、改善された自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。
【図11】(a)は、8つのビート周波のそれぞれが、ゼロ平均及び0.2kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている場合のシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図であり、(b)は、8つのビート周波のそれぞれが、ゼロ平均及び0.5kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている場合のシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図であり、(c)は、8つのビート周波のそれぞれが、ゼロ平均及び1kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている場合のシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図である。
【図12】壊滅的な干渉を引き起こす場合があるメカニズムの例を概略的に示す図である。
【図13】(a)は、距離60mにおいて現れ、110km/hの速度でシステムに近づいてくる物体について得られる散布図であり、(b)は、同じ外乱に加えて、1つのビート周波数が壊滅的な干渉による影響を受ける場合の、同じ物体について得られる4つの散布図である。
【図14】ビート周波数のセット内に「ローグ周波数(rogue frequency)」が存在する場合に得られる3つの散布図、及び「ローグ周波数」がセットから除外された場合に得られる1つの散布図である。
【図15】単一の壊滅的な干渉の影響を低減するための、本発明の一実施形態に従って設計された手順の流れ図である。
【図16】本発明の一実施形態に従って構築されたロバストな自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
高速道路のような対象監視領域を、周波数変調された(FM)波形を用いて照射することができる。FM波形は、複数の周波数アップチャープ及びダウンチャープ、すなわち信号の周波数が時間と共に線形に変動する変動周波数送信信号の部分を含んでいる。各周波数チャープ又は波形の部分は、その持続時間及びその線形の周波数変調則(frequency-modulation law)の勾配によって特徴付けられる。実際には、必須ではないが、同じ持続時間の周波数チャープを利用することが好都合である。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、図3aは、同じ持続時間であるが異なる勾配を有する複数の周波数チャープを含む複合照射波形の周波数−時間特性の例を示している。この場合、図3bに示すように、各有限のチャープシーケンス、すなわちチャープバーストの後に、電力が全く送信されない時間間隙が続く。
【0035】
対象物体は、時間−周波数平面(τ,fv)における点(τ0,fv0)で表される。ここで、τ0は照射波の往復遅延であり、fv0はドップラー周波数である。往復遅延は物体の距離を示し、ドップラー周波数は物体の視線速度を示す。
【0036】
距離R0において現れて視線速度V0で移動する物体が、勾配Skを有する周波数チャープで照射されるとき、観測されるビート周波数fBkの値は、以下のように表すことができる。
【0037】
【数5】
【0038】
ただし、τ0=2・R0/cであり、fv0=2・V0/λであり、ダウンチャープの場合Sk<0であり、アップチャープの場合、Sk>0である。
観測されるビート周波数fBkは、周波数成分fR0(距離のみに起因する)がドップラー周波数fv0だけシフト(アップシフト又はダウンシフト)されることに起因して生じる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、図4は、時間−周波数平面(τ,fV)、及び、各チャープが異なるビート周波数fBkを発生させるように、それぞれが異なる勾配Skを有する複数の周波数チャープを用いて照射される物体を象徴的に示している。物体は、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0によって特徴付けられることが想定される。
【0040】
未知の距離及び未知の速度を有する物体が、それぞれが勾配Skを有するK個の周波数チャープによって照射されたと想定する。すると、結果として生じるK個のビート周波数fBKは、K個の線を定義する。
【0041】
【数6】
【0042】
以下において、そのような線のそれぞれをアイソビート線(isobeat line)と呼ぶ。
【0043】
完全な周波数測定の理想的な場合には、K個全てのアイソビート線が単一の点(τ0、fV0)で交差し、物体の往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0を示す。したがって、異なる勾配を有する少なくとも2つの問合せ周波数チャープに応答して得られたビート周波数から、距離及び視線速度の両方を一意に求めることができる。
【0044】
雑音及び干渉の存在下では、ビート周波数測定は完全でない可能性があり、結果として生じるアイソビート線は、それらの通常の位置からランダムにシフトされる。距離及び速度を求めるために2つのみ以上の乱されたアイソビート線が使用される場合、全ての線交差の数は常に1より大きく、かつK(K−1)/2以下である。ただし、Kはアイソビート線の数である。たとえば、K=8の場合、全ての可能な交差点の数、したがって潜在的な解の数は、28に等しい。
【0045】
効率的な計算及び数字の安定性の目的のために、単位勾配の概念を導入することが好都合である。まず、たとえば、複数のK個の用いられる勾配の幾何平均として、平均勾配
【0046】
【数7】
【0047】
が計算され、したがって以下となる。
【0048】
【数8】
【0049】
このとき、上記の平均勾配は単位勾配となり、全ての勾配を正規化するのに使用される。平均勾配
【0050】
【数9】
【0051】
を計算するための代替的な方法も使用することができる。たとえば、算術平均を計算し、全ての勾配を正規化するのに使用することができる。
【0052】
たとえば、平均勾配が50MHz/ms(又は50kHz/μs)に等しいことがわかったと仮定する。観測される周波数を表す好都合な周波数単位が1キロヘルツであると想定する。すると、適切にスケーリングされた時間−周波数平面において1μsの時間遅延が50個の「新たな」時間単位に等しくされる場合、50kHz/μsの平均勾配は単位勾配を表す。したがって、1μs/50=20nsであるため、1つの「新たな」時間単位は20nsに等しくならなくてはならない。結果として、単位勾配のアイソビート線は、時間遅延軸τに対して45度の傾斜角(鋭角)、及び周波数軸fVに対して45度の傾斜角(鋭角)を成す。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、複数の用いられる周波数チャープは、各該チャープが正規化された勾配Skを有し、以下の3つのパラメーター
【0054】
【数10】
【0055】
によって特徴付けることができる。
【0056】
当業者であれば、様々なパラメーターを定義することができ、本発明に従って上記の式の変形を使用することができることは明らかである。
【0057】
所定の複数の周波数チャープに関して、上記のパラメーターは、チャープが複合照射波形において実際に送信される順序に依存しないことに留意することが重要である。したがって、勾配が予め定義される場合、これらの3つのパラメーターを測定の前に計算及び格納し、それによって計算効率をさらに改善することができる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、K個全ての測定されたビート周波数fBKは、各該周波数が、正規化された勾配Skを有するそれぞれのチャープに応答して得られ、以下の2つの量を求めるのに利用される。
【0059】
【数11】
【0060】
上記の2つの量は、複合照射波形を有する対象領域を問い合わせるプロセスによって提供される全ての情報を封入する。
【0061】
当業者であれば、異なる量を定義することができること、及び本発明に従って上記の式の変形を使用することができることが明らかである。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、検出物体の距離R0を示す往復遅延τ0及び/又は検出物体の速度V0を示すドップラー周波数fV0を、2つの一般方程式
【0063】
【数12】
【0064】
から求めることができる。
【0065】
当業者であれば、本発明に従って上記の式の変形を使用することができることが明らかである。
【0066】
所定の複数のチャープに関して、共通分母(common denominator)
【0067】
【数13】
【0068】
が正規化された勾配Sk値のみに依存し、チャープが複合照射波形において送信される順序には依存しないことに留意されたい。したがって、分母の値を測定の前に計算及び格納することができる。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、遅延及び/又はドップラー周波数を求めるのに必要な計算は、複数のK個の周波数チャープが、状態
【0070】
【数14】
【0071】
を満たす、すなわちドップラー周波数推定値から時間−遅延推定値を分離するように選択される場合に、大幅に単純化することができる。
【0072】
そのような分離が達成されると、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0は、2つの単純化された式
【0073】
【数15】
【0074】
から推定することができる。
【0075】
上述したように、所定の複数の周波数チャープに関して、パラメーターGK及びHKは、チャープが実際に送信される順序と無関係であり、したがって、これらの2つのパラメーターは、測定の前に計算及び格納することができる。
【0076】
2つの単純化された式を等価形式で表すことができる。
【0077】
【数16】
【0078】
ただし、
【0079】
【数17】
【0080】
ただし、
【0081】
【数18】
【0082】
時間遅延推定値
【0083】
【数19】
は、個々の遅延要素の重み付けされた平均(−fBk/Sk)である。重み関数
【0084】
【数20】
【0085】
は、対応するチャープがより急な勾配|Sk|を有する場合に、遅延成分によって成された相対的寄与がより大きいことを示す。
【0086】
ドップラー周波数推定値
【0087】
【数21】
【0088】
も観測されるビート周波数fBKの重み付けされた平均であり、重み関数
【0089】
【数22】
【0090】
は、対応するチャープがより緩い勾配|Sk|を有する場合に、観測されるビート周波数fBKによって成された相対的寄与がより大きいことを示す。
【0091】
したがって、時間遅延及びドップラー周波数の両方の正確な推定のために、複合波形は、利用可能な勾配の範囲から適切に選択される、非常に大きな値の勾配|Sk|及び非常に小さな値の勾配|Sk|を有する周波数チャープを含まなくてはならない。
【0092】
推定値分離を達成するため、すなわちパラメーターPKをゼロに等しくするために、以下の条件を満たすように、K+個の正の勾配、Si>0、i=1,2,...,K+、及びK-個の負の勾配Sj>0、j=1,2,...,K-を選択しなくてはならない。
【0093】
【数23】
【0094】
ただし、
【0095】
【数24】
【0096】
波形設計の目的のために、値
【0097】
【数25】
【0098】
を、離散した点Skにおいて取られた連続「エンベロープ」関数
【0099】
【数26】
【0100】
のサンプルとみなすことが有用である。したがって、サンプリング点(勾配)は、1つは正の勾配値に関するものであり、別の1つは負の勾配値に関するものである、サンプルの2つの和の同じ絶対値が得られるように選択されるべきである。
【0101】
図5は、推定値分離を達成するように勾配値を選択する例を概略的に示している。この場合、点S1及びS2においてとられるサンプル、並びに点S3、S4、及びS5においてとられるサンプルは全て合計がゼロになる。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、推定値分離は、(K/2)個のチャープ対のみから構成される複数のK個の周波数チャープを用いることによって達成され、各対は反対の勾配を有するチャープを含み、したがって
【0103】
【数27】
【0104】
である。
【0105】
そのような勾配選択の場合、パラメーターPKは、パラメーターPKの定義を分析するか又は図5を調べることによって推論され得るように、構築(construction)によって常にゼロに等しい。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、複数のK個の周波数チャープは、(K/2)個のチャープ対のみから構成され、各対は、逆数の(正規化された)勾配
【0107】
【数28】
【0108】
を有し、2つのパラメーターGK及びHKは同じ数値GK=HK=K/2を想定する。
【0109】
本発明の別の実施形態によれば、ビート周波数を処理するタスクは、K/4個のチャープ4つ組(K/4 chirp quadruples)のみから構成される照射波形を利用することによってさらに単純化され、各4つ組(each quadruple)は反対かつ逆数の勾配を有するチャープを含む。
【0110】
そのような場合、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0は以下によって求めることができる。
【0111】
【数29】
【0112】
単位勾配は該単位勾配自体の逆数(inverse)でもあることに留意することが重要である。したがって、正規化された勾配−1及び+1を有するチャープの単一対は、同時に反対(opposite)でありかつ逆数である勾配を有するチャープを含む。この一意のチャープ2つ組(doublet)をチャープ4つ組と併せて使用して、K=2(L+1)個のチャープを含む有利な照射波形を構築することができる。ただし、L≧0は整数である。
【0113】
多くの場合に、動作要件及び技術的制限に起因して、最大勾配と最小勾配との比Z、
【0114】
【数30】
【0115】
は固定でなくてはならない。そのような場合、有利なチャープ4つ組は以下の(正規化された)勾配を有する。
【0116】
【数31】
【0117】
以下において、この特定の最適なチャープ配置を4つ組チャープ(quadrichirp)と呼ぶ。
【0118】
概して、複合照射波形は、正の勾配及び負の勾配を有する複数のチャープを含むことができる。結果として、これらの勾配はそれらのそれぞれの区間
【0119】
【数32】
【0120】
及び
【0121】
【数33】
【0122】
にわたって何らかの最適な形で分散されなくてはならない。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、有利な勾配分散は、勾配Skによって生成されるアイソビート線の傾斜角tan-1(Sk)がそれらのそれぞれの区間
【0124】
【数34】
【0125】
及び
【0126】
【数35】
【0127】
にわたって実質的に均一に分散されるときに得られる。
【0128】
そのような設計は結果として、ジャミング及び相互干渉に対する耐性が高められた複合照射波形をもたらす最大エントロピーを有する勾配パターンとなる。
【0129】
本発明の実施形態の上記の説明から明らかになるように、送信信号は、特に、線形周波数変動が各部分内で異なる勾配を有する場合に、複数の部分K(a number of portions K)を有することが好ましい。ただし、K≧4である。
【0130】
本発明の実施形態に従って構築された、有利な照射波形の設計に伴うステップの理解を容易にするために、例示的な実施例を以下に提示する。
【0131】
実施例1:最適なチャープ6つ組
6つの周波数チャープを含む有利な照射波形を設計することが必要とされていると想定する。また、最大勾配と最小勾配との比Zが設計パラメーターとして与えられていると仮定する。
【0132】
6つの周波数チャープが必要とされているため、波形は、1つのチャープ4つ組と1つのチャープ2つ組とから構築することができる。チャープ4つ組は以下の4つ組チャープである。
【0133】
【数36】
【0134】
チャープ2つ組が付加されると、以下の勾配パターンが得られる。
【0135】
【数37】
【0136】
たとえば、Z=3のとき、上記の勾配パターンは以下の形態
【0137】
【数38】
【0138】
を想定する。
【0139】
傾斜角はこれらの値の逆正接である。
【0140】
したがって、この勾配パターンは傾斜角が
【0141】
【数39】
【0142】
の6つのアイソビート線を生成する。
【0143】
傾斜角は度単位で表されているが、代替的にラジアン又は任意の他の角度基準で表されてもよい。
【0144】
平均勾配がたとえば50MHz/msと想定される場合、Z=3の、最適なチャープ6つ組を用いる複合照射波形は、以下の概算の勾配値(MHz/ms単位で表される)を有する6つの周波数チャープから構成される。
【0145】
【数40】
【0146】
これらの値のそれぞれは、平均勾配と勾配パターンの各値との積によって計算されるか、又は代替的に、平均勾配と傾斜角の正接(tangent)との積によって計算されている。
【0147】
本発明の実施形態に従って構築された、有利な照射波形の設計に伴うステップの理解を容易にするために、別の例示的な実施例を以下で提示する。
【0148】
実施例2:最適なチャープ8つ組
8つの周波数チャープを含む有利な照射波形を設計することが必要とされていると想定する。また、最大勾配と最小勾配との比Zが設計パラメーターとして与えられていると仮定する。
【0149】
8つの周波数チャープが必要とされているため、波形は2つのチャープ4つ組から構築することができる。第1の4つ組は、4つ組チャープ
【0150】
【数41】
【0151】
である。
【0152】
第2の4つ組は、上記の4つ組チャープの単なるコピーとすることができるが、第2の4つ組は、アイソビート線の傾斜角の均一な広がりを得るように有利に構築される。
【0153】
したがって、傾斜角
【0154】
【数42】
【0155】
によって定義されるセクターは、2対の介在するアイソビート線の傾斜角を確定するように3つの等しい部分に分割されなくてはならない。傾斜角はラジアンで表されているが、代替的に度又は任意の他の角度基準で表されてもよい。
【0156】
同様に、傾斜角
【0157】
【数43】
【0158】
によって定義されるセクターも、3つの等しい部分に分割されなくてはならない。
【0159】
これらのセクターのうちの第1のもののみを考察すると、制限が(Lmin,Lmax)である場合、セクターを3つの等しいセグメントに分割する2つの介在する角度は、
【0160】
【数44】
【0161】
及び
【0162】
【数45】
【0163】
である。
【0164】
上記の式に
【0165】
【数46】
【0166】
及び
【0167】
【数47】
【0168】
を代入すると、角度
【0169】
【数48】
【0170】
及び
【0171】
【数49】
【0172】
が得られる。
【0173】
他方のセクターにおける対応する角度は、これらの値の反対となる。したがって、第2の4つ組チャープの勾配は、
【0174】
【数50】
【0175】
及び
【0176】
【数51】
【0177】
である。
【0178】
たとえば、Z=2である場合、4つの介在する勾配は以下の概算値を想定する。
【0179】
【数52】
【0180】
最後に、2つの4つ組を組み合わせることによって、概算勾配値
【0181】
【数53】
【0182】
を有する最適な8つ組が得られる。
【0183】
平均勾配がたとえば50MHz/msと想定される場合、最適な照射波形は、以下の概算の勾配値(MHz/ms単位で表される)を有する周波数チャープを含む。
【0184】
【数54】
【0185】
求められた勾配の幾何平均
【0186】
【数55】
【0187】
は、想定値50MHz/msに高精度で近似する。
【0188】
周波数チャープを時間において任意の適切な順序で送信することができるということに起因して、勾配の単一のセットは複数の有利な照射波形を生成することができる。そのような各波形は、周波数チャープの同じセットから構成されるが、毎回、チャープは異なる順序で送信される。
【0189】
チャープ6つ組又はチャープ8つ組のようなチャープの有利なセットを、チャープバーストと呼ばれる複数の有限な複合波形を構築するのに使用することができる。
本発明の一実施形態によれば、たとえば自動車レーダーは、その動作中、毎回ランダムに又は任意の他の適切な不規則な形で、利用可能な波形のうちの1つを選択し、この波形をチャープバーストとして送信して、対象領域を照射する。さらに、チャープバースト間の時間間隙は一定とすることもできるし、何らかの規則的な又は不規則な形式で変動することもできる。
【0190】
時間間隙の間、電力が一切送信されないため、この区間は、「リスンのみ」の動作モードを組み込むのに利用することができる。この動作モードは、共有される周波数帯域の他のユーザーによって生成される潜在的な干渉のレベルを評価するのに用いられる。
【0191】
図6は、異なる順序で発生するが同じである6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示している。図示されるように、いくつかの波形は、「時間反転」及び/又は「周波数反転」の操作を適用することによって、他の波形から得られた。
【0192】
本発明の一実施形態による、複数の周波数チャープから構成される照射波形を電圧制御発振器VCOが生成するように、電圧制御発振器VCOのための制御信号を生成するための装置が図7に示されている。
【0193】
図7は、本発明の一実施形態に従って構築されたチャープバースト発生器CBG701の機能ブロック図を示している。発生器は、以下のブロック、すなわち
タイミング/制御ユニットTCU711、
自走カウンターFRC710、
物理雑音源PNS705、
パターンレジスタPRG706、
チャープカウンターCHC707、
メモリMEM702、
アキュムレーターACC703、
クロック発生器CKG708、
時間カウンターTMC709、
デジタル対アナログ変換器DAC704、
を備える。
【0194】
チャープ−バースト発生器CBGは以下のように動作する。ツェナー(Zener)ダイオードのような物理雑音源PNSによって供給されるランダムに現れるパルスRPが、自走カウンターFRCを駆動する。カウンターFRCの容量は、システムによって利用される異なるチャープバースト(照射波形)の数に等しい。ランダムパルスRPの比は、カウンターFRCが、周期的に動作する間、連続するチャープバースト間の時間区間の間、多数回オーバーフローするほど高い。結果として、そのような時間区間において「オンザフライ」で観測されるカウンター状態CTは、全て実質的に同じ確率で生じることになる。
【0195】
時間/制御ユニットTCUによって提供されるパルスSIによって確定される時点において、カウンターFRCの現在の状態CTは、パターンレジスタPRGに転送され、該パターンレジスタPRGにおいて記憶されると共に、出力PTにおいて利用可能にされる。出力PTは、メモリMEMの対応するストレージセルを位置特定するのに使用されるアドレスの一部分を構成する。組み合わされたアドレス(PT,CN)の他の部分CNは、チャープカウンターCHCによって提供される。
【0196】
パルスSIはまた、タイミング/制御ユニットTCUによって生成されるバーストゲートBGに切り換える。以下で説明されるように、このゲートの持続時間は、チャープバースト全体の持続時間と等しい。ゲートBGは、自動車レーダーがマイクロ派電力増幅器又は発生器を制御するのに使用することができる。
【0197】
パルスSIは、規則的又は適切な不規則的な間隔で、タイミング/制御ユニットTCUによって内部的に生成される。これらのパルスによって画定される時間区間は、バースト持続時間と、連続するバースト間の意図される時間間隙との和である。タイミング/制御ユニットTCUは、適切なシグナルプロセッサが使用するリセットパルスRAも生成する。リセットパルスのそれぞれは、各チャープバーストの開始前に発生する。
【0198】
出力PTは、送信される、利用可能なチャープバーストのうちの1つを選択するが、出力CNはこの選択されたバースト内で生成されるチャープの実際の数を示す。たとえば、チャープ6つ組を用いて複数のチャープバーストを構築する場合、利用可能な32個の異なるチャープバーストが存在する場合があり、これらのバーストのそれぞれが6つのチャープを含む。しかしながら、概して、異なるバースト内の同じ位置に現れるチャープは異なる勾配値を有する。
【0199】
したがって、出力PTは選択されたチャープバーストの間同じ値を保つが、出力CNは1(バーストの最初のチャープ)からK(バーストの最後のチャープ)まで連続して増加する整数値を想定する。たとえば、チャープ6つ組を用いてチャープバーストを構築し、かつチャープ数7が利用される場合、バースト持続時間全体の間、出力PTの値は一定のままであり7に等しいが、出力CNは連続して値1、2、3、4、5、及び6をとる。
【0200】
バーストが開始する直前に、チャープカウンターCHCの状態CNが、タイミング/制御ユニットTCUによって供給されるパルスSTによって「1」に設定される。状態CNは、新たなパルスが入力STにおいて現れて新たなチャープの開始を示す度に、1だけ増加される。これらのパルスは、バーストの各チャープの持続時間に等しい持続時間の規則的間隔でタイミング/制御ユニットTCUによって生成される。
【0201】
チャープ持続時間は、適切なクロック発生器CKGによって供給されるパルスCKを「カウントアップ」している時間カウンターTMCによって、確定される。時間カウンターTMCの初期状態は、タイミング/制御ユニットTCUによって提供される信号RSによって、「オールゼロ状態」に予め設定されている。時間カウンターTMCは、その最大容量に達すると、
信号TTを生成し、
「オールゼロ状態」に戻り、
クロックパルスCKを再び「カウントアップ」し始める。
【0202】
信号TTは、チャープカウンターCHCの状態を1だけ増加させる新たなパルスSTをタイミング/制御ユニットTCUに生成させる。状態CNは、タイミング/制御ユニットTCUによってモニタリングされる。状態CNがその最大値に達するとき、これは選択されたバーストの最後のチャープが生成されていることを意味し、時間カウンターTMCから得られる新たなパルスTTがチャープバースト全体の終了を定義する。このパルスは、タイミング/制御ユニットTCUによって生成されるバーストゲートBGもオフに切り換える。
【0203】
組み合わされたアドレス(PT,CN)に対応する各セルにおいて、メモリMEMは以下のパラメーター、すなわち、
バーストの開始周波数に対応する初期値IS、
チャープ勾配の険しさを表す増分DS、
以下で論考される、ビート周波数プロセッサのような適切なシグナルプロセッサに送信される重みDK及びHK、
の値を格納する。
【0204】
各バーストの開始時点の直前に、「負荷」信号LSによって、アキュムレーターACCの状態が、メモリMEMによって供給される初期状態ISに予め設定される。各クロックパルスCKにおいて、アキュムレーターACCはその現在の状態に、メモリMEMによって提供される増分DSを加える。この増分の値は、実際に生成及び送信されているチャープの勾配の険しさを表す。明らかに、増分DSは、上り勾配の場合に正であり、下り勾配の場合に負である。
【0205】
アキュムレーターACCの各状態NBが、デジタル対アナログ変換器DACに供給される。デジタル対アナログ変換器DACの出力CBは、生成されているチャープバーストの要求される周波数−時間特性を「追跡」している。信号CBは、適切な電圧制御発振器を制御するのに用いられる。
【0206】
下記で論考するように、2つの重みDK及びHKの格納される値は、
【0207】
【数56】
【0208】
及び
【0209】
【数57】
【0210】
に等しい。ただし、Skはバースト内に生じるk番目のチャープの勾配である。
【0211】
チャープバーストを生成するプロセスの理解を容易にするために、以下に例を与える。
【0212】
実施例1において論考された最適なチャープ6つ組に基づいてチャープバーストを生成することが必要とされていると仮定する。選択されたチャープバーストの周波数−時間特性は図8に示される形態のものであると想定する。
【0213】
バーストは6つのチャープを含む。それらのチャープは、チャープカウンターCHCの連続した状態CNによって示されるようにナンバリングされている。MHs/ms単位で表される概算の勾配値は、実施例1において以下のように与えられる。
【0214】
【数58】
【0215】
また、各チャープの持続時間が4msであると想定する。たとえば、必要とされる時間区間は、1MHzクロック発生器CKGによって生成されるクロックパルスCKをカウントアップする時間カウンターTMCによって求められる。初期状態ISは、4ms・50MHz/ms=200MHzの値を表す。チャープカウンターCHCのそれぞれの状態CNに対応する増分DSは以下の勾配を表す。
【0216】
【数59】
【0217】
チャープ−バースト発生器の代替的な設計も可能である。そのような設計は、たとえば、勾配の値の関数と共に、又はその代わりに、勾配の値(Sk)を出力してもよい。
【0218】
ビート周波数プロセッサBFPは、観測されるビート周波数fBk及び対応する勾配の情報又は勾配の関数を受信するように動作可能であるデバイスである。ビート周波数プロセッサBFPは、この情報を使用して、距離及び/又は速度の推定値を計算及び出力する。
【0219】
図9は、本発明の一実施形態に従って構築されたビート周波数プロセッサBFPの機能ブロック図である。プロセッサBFPは、以下の2つの式を実施して、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0を計算する。
【0220】
【数60】
【0221】
ただし、
【0222】
【数61】
【0223】
【数62】
【0224】
ただし、
【0225】
【数63】
【0226】
次に、遅延τ0及びドップラー周波数fV0の値は、検出された物体の距離及び視線速度に変換される。
【0227】
ビート周波数プロセッサBFP907は、2つの乗算器GGF901及びHHF902と、2つのアキュムレーターACI903及びACQ904と、2つのスケーリング回路ISI905及びQSQ906とを備える。適切な周波数分析器FAN108によって提供されるビート周波数fBkの各値BFは、並列に2つの乗算器GGF及びHHFに適用される。これらの乗算器GGF及びHHFの他の入力は、チャープ−バースト発生器CBG701(図7も参照されたい)によって供給される重みDK及びHKによってそれぞれ駆動される。
【0228】
2つの重みの値は、
【0229】
【数64】
【0230】
及び
【0231】
【数65】
【0232】
によって与えられる。ただし、Skはバースト内で発生するk番目のチャープの勾配である。
【0233】
乗算器出力WG及びWHは、以下の積の数値表現である。
【0234】
【数66】
【0235】
これらの積は、それぞれのアキュムレーターACI及びACQに適用され、量
【0236】
【数67】
【0237】
及び
【0238】
【数68】
【0239】
を表す和SI及びSQが求められる。
【0240】
次に、アキュムレーターACI及びACQによって供給される値SI及びSQは、適切にスケーリングされて、検出された物体の距離R0及び速度V0が生成される。
【0241】
スケーリング係数GG及びHHは以下のように表すことができる。
【0242】
【数69】
【0243】
及び
【0244】
【数70】
【0245】
ただし、係数TRは遅延τ0を距離R0に変換するのに使用され、係数FVはドップラー周波数fV0を速度V0に変換するのに使用される。
【0246】
勾配パターンがチャープ4つ組及び/又はチャープ2つ組を含む場合、上記のスケーリング係数は以下の単純化された形態を想定する。
【0247】
【数71】
【0248】
及び
【0249】
【数72】
【0250】
ビート周波数プロセッサBFPは以下のように動作する。最初に、チャープ−バースト発生器CBGから得られた信号RAによって、2つのアキュムレーターACI及びACQがゼロにリセットされる。次に、連続する積の対WG及びWKが累算されてそれぞれの出力SI及びSQが生成される。各該対はそれぞれのチャープ勾配Sk及びビート周波数fBkについて求められる。最後に、これらの出力が以下のようにスケーリングされ、
【0251】
【数73】
【0252】
及び
【0253】
【数74】
【0254】
検出された物体の距離R0及び速度V0の測定値がもたらされる。
【0255】
ビート周波数プロセッサの代替的な設計も可能である。これらも同様に、チャープバースト発生器からの勾配の値又は勾配の値の関数、及び周波数分析器からの観測されるビート周波数を受信するように動作可能である。
【0256】
しかしながら、プロセッサは上記で与えられた式を実施することに制限されず、代替的に他の式を実施することができる。
【0257】
たとえば、ビート周波数プロセッサは、上記で与えられた式から往復遅延τ0及び/又はドップラー周波数fV0を計算することができる。
【0258】
そのようなビート周波数プロセッサは、効率的な特注の設計を有しても、又はDSPによって実施されてもよい。
【0259】
図10は、本発明の一実施形態に従って構築された、自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。システムは、図1に示される従来の構成の変形であり、図1の説明が参照される。
図示されるように、図1の三角波形発生器WFGが、チャープバースト発生器CBG701によって置き換えられる一方で、図1のデジタルシグナルプロセッサDSPは、本発明によるビート周波数プロセッサBFP907によって置き換えられている。図10に示すように、上記で論考した値HK、DL、及びRAは、チャープバースト発生器CBG701からビート周波数プロセッサBFP907に提供され、一方でビート周波数fBKは周波数分析器FAN108から提供される。
【0260】
代替的に、図10に示すように、値HK、DK、及びRAの代わりに、信号部分の勾配又は正規化された勾配Skをチャープバースト発生器CBG701からビート周波数プロセッサBFP907に提供することができる。
【0261】
本発明の一実施形態に従って構築されたビート周波数プロセッサBFPの性能を評価するためにコンピューターシミュレーション研究が行われてきた。上記の実施例において構築されたように、自動車レーダーが77GHz周波数帯域で動作し、最適なチャープ8つ組を用いることが想定される。また、距離60mにおいて現れる物体が、110km/hの視線速度でレーダーシステムに近づいていることが想定される。
【0262】
雑音も干渉も存在しない理想的な場合には、勾配Skを有するチャープに対応する8つのビート周波数fBkは、以下の公称値を有する。
【0263】
【数75】
【0264】
図11aは、8つの観測されるビート周波数を処理するシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図を示している。この場合、各ビート周波数はゼロ平均及び0.2kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている。
【0265】
図11b及び図11cは、8つのビート周波数のそれぞれがゼロ平均及びそれぞれ0.5kHz及び1kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されているときに、同じ物体について得られた散布図である。予期されるように、距離推定値及び速度推定値の誤りは、干渉のレベルが上昇するにつれ次第に増加している。
【0266】
最も実際的な応用形態では、低いか又は中程度の干渉レベルに起因するいくつかの劣化を許容することができる。しかしながら、自動車レーダーが高密度信号マルチユーザー環境で動作している場合、インパルス特性の何らかの干渉に起因して壊滅的な干渉が発生する可能性が高い。そのような場合、観測されるビート周波数のうちの少なくとも1つが「ローグ周波数」となり、すなわち検出された物体の距離又は速度に一切関係しない値を想定する。
【0267】
壊滅的な干渉を生じさせる場合がある1つのメカニズムが図12に概略的に示されている。雑音又は干渉が存在しない場合、図12aに示すように、ビート周波数は、ビート周波数の関数として受信される電力の最大値を観測することによって高精度で求めることができる。雑音及び干渉のレベルが増加しているとき、最大電力を求めることが依然として可能である。しかしながら、ここで最大値が良好に定義されていないため、推定誤りが発生する場合がある。この事例は図12bに示される。図12cに示される壊滅的な干渉の状況では、高レベルの雑音及び干渉によって、ビート周波数において現れる電力最大値はその真の値に対して大幅にシフトされる。
【0268】
比較の目的で、図13aは、距離60mにおいて現れ、110km/hの視線速度でレーダーシステムに近づいている物体について得られた、5000個の個々のプロセッサ出力の散布図を示している。この場合、さらなるインパルス性干渉は存在せず、全ての観測されるビート周波数は、ゼロ平均及び0.2kHzの標準偏差を有するガウス外乱で汚染されている。
【0269】
極度に壊滅的な干渉によって引き起こされ得る問題を示すために、図13bは4つの散布図を示している。該散布図はそれぞれ同じ物体について得られた1200個の個々のプロセッサ出力を含む。4つの事例のそれぞれにおいて、壊滅的な干渉の例の影響をシミュレートするために、全てのビート周波数に等しく影響を与える同じガウス外乱に加えて、1つの選択されたビート周波数が30kHzだけシフトされている。各事例において、同じ周波数シフトが、異なる上り勾配によって生成されたビート周波数に適用される。
【0270】
図示されるように、この事例では、推定距離はその真の値より大きく、推定速度は真の速度よりはるかに小さい。結果として、「衝突までの時間」(推定距離を推定速度で除算したもの)の推定値は受入可能でない時間量、正しい値を超える場合がある。
【0271】
本発明のさらなる実施形態によれば、壊滅的な干渉の影響は、以下の手順を用いることによって大幅に低減することができる。全てのK個の観測されるビート周波数は、(K/2)個の対に分割される。ここで、各対は反対かつ/又は逆数の勾配を有する2つのチャープによって生成されるビート周波数を含む。次に、そのように形成された第1の対が除外され、残りの[(K/2)−1]個の対を使用して距離推定値及び速度推定値を求める。プロセスは(K/2)回実行され、毎回異なるビート周波数対が除外される。全ての(K/2)個の事例が検査されると手順は終了し、結果として(K/2)個の距離−速度結合推定値のセットが分析される。
【0272】
受信したチャープのうちの1つが壊滅的に破損していた場合、影響を受けるビート周波数は「ローグ周波数」となり、いかなる形でも検出された物体の距離又は速度に関連しない。[(K/2)−1]個の事例において、「ローグ周波数」は試験下のビート周波数のセット内に存在し、毎回距離及び速度は誤って推定される。しかしながら、1つの事例では、「ローグ周波数」が試験下のビート周波数のセットから除外される。このとき、結合距離−速度推定値は正しい。
【0273】
誤った結合距離−速度推定値は、[(K/2)−1]個の点から成る主クラスターを形成するが、正しい推定値は、主クラスターの外側に現れる孤立点によって表される。適切な分類手順を適用することによって、この特定のポイントを識別すると共に、正しい結合距離−速度推定値を表すその座標を確定することが可能である。単一の点と、複数の点から成るクラスターとを区別するのが不可能になる場合、手順は中断するか、又は単に最悪の場合の「衝突までの時間」を求める。
【0274】
説明の目的のために、図14は4つの散布図を示している。該散布図はそれぞれ、同じ物体について得られた1200個の個々のプロセッサ出力を含む。別個のクラスターを形成する3つの散布図は、試験下のビート周波数のセット内に「ローグ周波数」が存在する事例に対応する。しかしながら、4番目の散布図は、主クラスターから或る程度離れて位置し、試験されているビート周波数のセットから除外されている事例に対応する。この散布図を形成する点は、正しい値に近い結合距離−速度推定値を提供する。しかしながら、ここで推定値はより小さな(8ではなく6)数の観測に基づくため、推定誤りはわずかに大きくなる。チャープ8つ組の場合、誤りは100[√(4/3)1]≒15パーセント増加する。
【0275】
壊滅的な干渉が存在しない状況において手順が適用される場合、ビート周波数の(K/2)個全ての試験されるセットが同様の結合距離−速度推定値をもたらす。これらの全ての推定値は、(K/2)点から成る単一のクラスターを形成し、そしてクラスターの中心点(たとえば重心)が最終推定値として使用される。
【0276】
計算の観点から、上記の手順は、最初に全てのビート周波数を使用して距離及び速度の推定値を計算し、次に毎回異なる周波数対を除外してこれらの推定値を再計算することによってより効率的に実施することができる。
【0277】
図15は、本発明の一実施形態に従って設計された、単一の壊滅的な干渉の影響を低減するための手順の流れ図である。そのような手順は、適切なプロセッサ制御装置によって実施することができる。
【0278】
ステップ1502において、K個の測定されたビート周波数fBkが格納され、観測される物体の距離及び速度が求められる。
【0279】
ステップ1503において、ビート周波数のK/2個の対が形成され、該対はそれぞれ反対の勾配を有するチャープを含む。
【0280】
ステップ1504において、カウントJが1に設定される。
【0281】
ステップ1505において、カウントJを有する対が処理から除外され、残りの((K/2)−1)個の対を使用して、ビート周波数(fBk)及びそれらのそれぞれの勾配(Sk)から物体の距離及び速度が計算される。
【0282】
ステップ1506において、カウントJが、ステップ1505において得られた距離及び速度についての結果としての値と共に格納される。
【0283】
ステップ1507において、カウントJがK/2に等しいか否かが検査される。
【0284】
ステップ1507においてカウントJがK/2に等しくないと判断される場合、カウントはステップ1508において1だけ増加され、距離及び速度のK/2回の計算が実行されるまでステップ1505〜1507が反復される。
【0285】
ステップ1507においてカウントJがK/2に等しいと判断される場合、得られた距離及び速度の測定値のK/2個の対がステップ1509において調べられる。結果として、他のK/2−1個の対によって形成されるクラスターの外側に位置する対が選択される。
【0286】
ステップ1510において、ステップ1509において得られた結果が、検出された物体の距離及び速度として出力される。
【0287】
図16は、本発明の一実施形態に従って構築された、自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。この構成は、適切なプロセッサ制御装置PRC1601を組み込むことによって、図10の構成から得られたものである。この制御装置PRCは、(ハードウェア又はソフトウェアで)図15の流れ図に示される動作を実施する。
【0288】
図16に示すように、上記で論考した値HK、DK、及びRAは、チャープバースト発生器CBG701からプロセッサ制御装置PRC1601に提供される一方で、ビート周波数fBkは周波数分析器FAN108から提供される。プロセッサ制御装置PRC1601は、ビート周波数プロセッサBFP907に信号を出力し、ビート周波数プロセッサBFP907から信号を受信する。さらに、プロセッサ制御装置PRC1601は、観測される物体の距離及び速度を出力する。
【0289】
代替的に、図16に示す値HK、DL、及びRAの代わりに、信号部分の勾配又は正規化された勾配Skを、チャープバースト発生器CBG701からプロセッサ制御装置PRC1601に提供することもできる。
【0290】
上述される干渉拒否手順は、単一の「ローグ周波数」以上のものを扱うように一般化することができる。たとえば、インパルス性干渉の結果として2つの「ローグ周波数」が生じる場合があると想定される場合、毎回2つの異なる対が試験下のビート周波数のセットから除外されなくてはならない。したがって、分析される事例の数は、(K/2)から[(K2/8)−(K/4)]に増加する。
【0291】
たとえば、チャープ8つ組が用いられるとき、試験下のビート周波数セットの数は4(単一「ローグ周波数」が推測される)から6(2つの「ローグ周波数」が推測される)に増加する。さらに、ここで4つのビート周波数のみが推定に使用されるため。推定値誤りは41パーセント増加する。したがって、推定誤りを低減するために、より長いチャープバーストを使用しなくてはならない。代替的に、距離及び速度推定をいくつかのチャープバーストにわたって実行することができる。
【0292】
本発明の好ましい実施形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示されてきた。該説明は、包括的であることも、本発明を開示された正確な形態に限定することも意図されていない。上記の説明を鑑みて、当業者であれば、多くの改変形態、変更形態、及び変形形態によって、本発明を意図される特定の使用に適した様々な実施形態において利用することが可能になることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体の距離及び速度を求めるのに用いられるマイクロ波センサーの搬送波周波数を変調するのに利用される波形の生成及び処理のための方法及び装置に関する。本方法は、限定ではないが特に、高レベルの干渉を有する環境において動作するように意図される自動車のマルチユーザーFMCWレーダーに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
自律的クルーズコントロール及び衝突警報/回避システムの需要が伸びたことが、周波数変調連続波(FMCW)自動車レーダーを開発する契機になった。開発中のレーダーの大部分は77GHz帯において動作し、その帯域はこれらの用途のために予約されている。
【0003】
FMCWレーダーの機能ブロック図が図1に示されている。このシステムは、三角波形発生器WFG101と、アップコンバーターとしての役割も果たす電圧制御発振器VCO102と、結合器CPL103と、シングルアンテナ動作を提供するサーキュレーターCIR104と、送信−受信アンテナTRA105と、直交混合器QMX107と、周波数分析器FAN108と、デジタルシグナルプロセッサDSP109とを備える。
【0004】
三角波形発生器WFGは、三角形を成すように、電圧制御発振器VCOの周波数を変更する制御信号CVを生成する。結果として生成され、アンテナTRAによって送信される波形TWは、一定の振幅を有するが、図2aに概略的に示されるように、その周波数は各掃引区間Ts中に帯域Δfにわたって掃引される。
【0005】
距離Rにある障害物OBS106からのエコーRWは、送信波形TWの減衰したコピーになり、τ=2・R/cだけ時間的に遅延している。ただし、cは光速である。
エコーRWは、直交混合器QMXにおいて、結合器SPLによって供給される送信波形TWの一部と混合される。
混合器QMXの出力信号QSは、周波数分析器FANにおいて分析され、障害物距離に正比例する振幅|fR|を有するビート周波数BFを生成する。
【0006】
【数1】
【0007】
ただし、|S|=|Δf|/Tsは周波数掃引の勾配である。
【0008】
反射波の周波数から問合せ波(an interrogating wave)の周波数を減算したものとして定義されるビート周波数fRは、周波数下り掃引(S<0)の場合に正であり、周波数上り掃引(S>0)の場合に負である。このため、
【0009】
【数2】
【0010】
である。
【0011】
従来技術から既知であるように、正のビート周波数と負のビート周波数との区別は、レーダーシステムが直交信号処理を利用するときに達成することができる。
【0012】
図2aは、送信波形及び受信波形両方の線形の周波数変動を概略的に示しており、結果として生成されるビート周波数も示している。図に示されるように、ビート周波数fRは、掃引の極限における大きさを除いて一定の大きさである(この影響は実際には無視することができる)。
【0013】
レーダーと障害物との間の視線速度(radial velocity)Vの相対運動によって、ビート周波数fR上にドップラー周波数シフト
【0014】
【数3】
【0015】
が重ね合わせられる。ただし、λ=c/fcは波長であり、fcはレーダー送信の搬送波周波数である。搬送波周波数fcは、周波数掃引が占める帯域Δfよりもはるかに大きいため、実際には、ドップラーシフトの値fvは周波数変調による影響を受けない。
【0016】
障害物が速度Vでレーダーに近づいてくる場合、ドップラーシフトfvは正であるのに対し、障害物がレーダーから遠ざかる場合、シフトfvは負となる。したがって、測定されるビート周波数fBは2つの周波数成分fR及びfvに起因して生じ、適切に結合されて複合ビート周波数が生成される。
【0017】
【数4】
【0018】
勾配S自体が負(下り掃引の場合)又は正(上り掃引の場合)になり得ることに留意されたい。
【0019】
図2bは、送信される波形に対して受信される波形が遅延し、ドップラーシフトする場合を示している。
【0020】
デジタルシグナルプロセッサDSPは、周波数分析器FANによって供給される、測定されたビート周波数値BFを使用して、障害物の距離R及び相対速度Vの両方を求める。距離R及び速度Vの推定値が、プロセッサDSPの出力RVにおいて生成される。正確な動作のために、シグナルプロセッサDSPは、波形発生器WFGから、各周波数掃引の開始及び方向を示す同期用パルスSCを受信する。
【0021】
自動車レーダーの分野では、要求される機能及び潜在的な性能をハードウェアで実証することに、研究開発の努力の大部分を集中してきた。しかしながら、相互干渉に対する耐性に関する重要な問題がほとんど無視されてきた。マルチユーザー干渉への耐性の問題が解決されるまで、自動車レーダーが商業的成功に至らないことは今や明らかである。
【0022】
自動車レーダーにおいて用いられる従来のFMパターン及び関連する信号処理技法は、マルチユーザー干渉による重大な影響を受け得る。干渉の形態によっては適切に設計されたシステムにおいて耐えられ得るが、抑制が不可能な干渉の形態が存在する。結果として、高密度の信号のマルチユーザー環境において動作する従来のFMシステムは、質の劣った障害物検出、並びに該障害物の距離及び速度の不十分な推定しか提供することができない。
【0023】
マルチユーザー干渉の負の影響は、周波数変調の不規則かつ非循環のパターンを利用することによって、或る程度緩和することができる。たとえば、欧州特許出願第07252352.5号は、送信機の周波数が、区分的に線形であるが依然として非決定論的でかつ不規則な「ジグザグ」状であり、割り当てられる周波数帯域の最大の広がりを利用するように配置される自動車レーダーシステムを開示している。欧州特許出願第07252352.5号の内容は参照により本明細書に含まれる。
【0024】
同じ領域内で動作すると共に同じ周波数帯域を共有する他のユーザーによって引き起こされる帯域内相互干渉の影響を、ランダム周波数ウォークを使用することによって低減することができる。しかしながら、ランダム周波数ウォークにおいて利用される方法のような、多勾配FMチャープ信号の最適な処理が可能な効率的な方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、特に自動車レーダーにおいて、結果としてマルチユーザー干渉に対する耐性を改善することになる、FM波形の設計及び生成のための方法及び装置を提供することが望ましい。
【0026】
複合多勾配FMチャープ波形(composite multi-slope FM chirp waveform)を用いると共に高密度の信号のマルチユーザー環境において動作することが可能な自動車レーダーにおいて検出された物体の距離及び/又は速度を求めるための方法及び装置を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の1つの態様によれば、物体を検出する方法であって、
有限の持続時間の変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、並びに
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めること、
を含み、
前記送信信号は、少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、
前記線形の周波数変動は各前記部分内で異なる勾配を有する、方法が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、及び
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、
を含み、
前記送信信号はK個の部分から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数はそれぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、ただしk=1,...,Kであり、
該方法は、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めることをさらに含む、方法が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える自動車レーダー装置であって、
前記送信信号が少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、前記線形周波数が各前記部分内で異なる勾配を有するような前記変動周波数信号を提供するように動作可能な信号発生器をさらに備える、自動車レーダー装置が提供される。
【0030】
本発明の別の態様によれば、
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号がK個の部分から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動するような前記変動周波数信号を提供するように動作可能である信号発生器と、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える、自動車レーダー装置が提供される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、及び
前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を求めること、
を含み、
前記送信信号は、K個の部分(k)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、
前記部分は、反対かつ/又は逆数の正規化された勾配Sk(opposite and/or inverse normalized slopes Sk)から成るK/2個の対で存在し、
該方法は、
前記ビート周波数(fBk)及び該ビート周波数のそれぞれの勾配(Sk)から前記物体の距離及び/又は速度をK/2回計算することであって、毎回、複数の前記対のうちの1つが該計算プロセスから除外される、計算すること、
或る対を用いた計算が、他の対の結果によって形成されるクラスターの外側に位置する結果を生成するか否かを判断すること、及び
前記結果によって与えられた前記距離及び/又は前記速度を出力すること、
をさらに含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来技術のFMCW自動車レーダーの簡略化された機能ブロック図である。
【図2】(a)は、送信波形及び受信波形の線形の周波数変動、並びにまた結果として生成されるビート周波数を概略的に示す図であり、(b)は、受信波形が送信波形に対して遅延しドップラーシフトする場合の、送信波形及び受信波形の線形の周波数変動、並びにまた結果として生成されるビート周波数を概略的に示す図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態による、マルチユーザー自動車FMCWレーダーシステムに適したチャープバーストの時間−周波数特性の一例を示す図であり、(b)は、本発明の一実施形態による、マルチユーザー自動車FMCWレーダーシステムに適したチャープバーストの電力−時間特性の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、時間−周波数平面及びそれぞれが異なる勾配を有する複数の周波数チャープを用いて照射された物体を象徴的に示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による、推定値分離を達成する勾配値の選択の一例を概略的に示す図である。
【図6a】本発明の一実施形態による、異なる順序で発生するが同じ6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示す図である。
【図6b】本発明の一実施形態による、異なる順序で発生するが同じ6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示す図である。
【図6c】本発明の一実施形態による、異なる順序で発生するが同じ6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に従って構築されたチャープ−バースト発生器CBGの機能ブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態による、6つの周波数チャープを含む選択された波形の周波数−時間特性の一例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に従って構築されたビート周波数プロセッサBFPの機能ブロック図である。
【図10】本発明の一実施形態に従って構築された、改善された自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。
【図11】(a)は、8つのビート周波のそれぞれが、ゼロ平均及び0.2kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている場合のシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図であり、(b)は、8つのビート周波のそれぞれが、ゼロ平均及び0.5kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている場合のシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図であり、(c)は、8つのビート周波のそれぞれが、ゼロ平均及び1kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている場合のシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図である。
【図12】壊滅的な干渉を引き起こす場合があるメカニズムの例を概略的に示す図である。
【図13】(a)は、距離60mにおいて現れ、110km/hの速度でシステムに近づいてくる物体について得られる散布図であり、(b)は、同じ外乱に加えて、1つのビート周波数が壊滅的な干渉による影響を受ける場合の、同じ物体について得られる4つの散布図である。
【図14】ビート周波数のセット内に「ローグ周波数(rogue frequency)」が存在する場合に得られる3つの散布図、及び「ローグ周波数」がセットから除外された場合に得られる1つの散布図である。
【図15】単一の壊滅的な干渉の影響を低減するための、本発明の一実施形態に従って設計された手順の流れ図である。
【図16】本発明の一実施形態に従って構築されたロバストな自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
高速道路のような対象監視領域を、周波数変調された(FM)波形を用いて照射することができる。FM波形は、複数の周波数アップチャープ及びダウンチャープ、すなわち信号の周波数が時間と共に線形に変動する変動周波数送信信号の部分を含んでいる。各周波数チャープ又は波形の部分は、その持続時間及びその線形の周波数変調則(frequency-modulation law)の勾配によって特徴付けられる。実際には、必須ではないが、同じ持続時間の周波数チャープを利用することが好都合である。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、図3aは、同じ持続時間であるが異なる勾配を有する複数の周波数チャープを含む複合照射波形の周波数−時間特性の例を示している。この場合、図3bに示すように、各有限のチャープシーケンス、すなわちチャープバーストの後に、電力が全く送信されない時間間隙が続く。
【0035】
対象物体は、時間−周波数平面(τ,fv)における点(τ0,fv0)で表される。ここで、τ0は照射波の往復遅延であり、fv0はドップラー周波数である。往復遅延は物体の距離を示し、ドップラー周波数は物体の視線速度を示す。
【0036】
距離R0において現れて視線速度V0で移動する物体が、勾配Skを有する周波数チャープで照射されるとき、観測されるビート周波数fBkの値は、以下のように表すことができる。
【0037】
【数5】
【0038】
ただし、τ0=2・R0/cであり、fv0=2・V0/λであり、ダウンチャープの場合Sk<0であり、アップチャープの場合、Sk>0である。
観測されるビート周波数fBkは、周波数成分fR0(距離のみに起因する)がドップラー周波数fv0だけシフト(アップシフト又はダウンシフト)されることに起因して生じる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、図4は、時間−周波数平面(τ,fV)、及び、各チャープが異なるビート周波数fBkを発生させるように、それぞれが異なる勾配Skを有する複数の周波数チャープを用いて照射される物体を象徴的に示している。物体は、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0によって特徴付けられることが想定される。
【0040】
未知の距離及び未知の速度を有する物体が、それぞれが勾配Skを有するK個の周波数チャープによって照射されたと想定する。すると、結果として生じるK個のビート周波数fBKは、K個の線を定義する。
【0041】
【数6】
【0042】
以下において、そのような線のそれぞれをアイソビート線(isobeat line)と呼ぶ。
【0043】
完全な周波数測定の理想的な場合には、K個全てのアイソビート線が単一の点(τ0、fV0)で交差し、物体の往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0を示す。したがって、異なる勾配を有する少なくとも2つの問合せ周波数チャープに応答して得られたビート周波数から、距離及び視線速度の両方を一意に求めることができる。
【0044】
雑音及び干渉の存在下では、ビート周波数測定は完全でない可能性があり、結果として生じるアイソビート線は、それらの通常の位置からランダムにシフトされる。距離及び速度を求めるために2つのみ以上の乱されたアイソビート線が使用される場合、全ての線交差の数は常に1より大きく、かつK(K−1)/2以下である。ただし、Kはアイソビート線の数である。たとえば、K=8の場合、全ての可能な交差点の数、したがって潜在的な解の数は、28に等しい。
【0045】
効率的な計算及び数字の安定性の目的のために、単位勾配の概念を導入することが好都合である。まず、たとえば、複数のK個の用いられる勾配の幾何平均として、平均勾配
【0046】
【数7】
【0047】
が計算され、したがって以下となる。
【0048】
【数8】
【0049】
このとき、上記の平均勾配は単位勾配となり、全ての勾配を正規化するのに使用される。平均勾配
【0050】
【数9】
【0051】
を計算するための代替的な方法も使用することができる。たとえば、算術平均を計算し、全ての勾配を正規化するのに使用することができる。
【0052】
たとえば、平均勾配が50MHz/ms(又は50kHz/μs)に等しいことがわかったと仮定する。観測される周波数を表す好都合な周波数単位が1キロヘルツであると想定する。すると、適切にスケーリングされた時間−周波数平面において1μsの時間遅延が50個の「新たな」時間単位に等しくされる場合、50kHz/μsの平均勾配は単位勾配を表す。したがって、1μs/50=20nsであるため、1つの「新たな」時間単位は20nsに等しくならなくてはならない。結果として、単位勾配のアイソビート線は、時間遅延軸τに対して45度の傾斜角(鋭角)、及び周波数軸fVに対して45度の傾斜角(鋭角)を成す。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、複数の用いられる周波数チャープは、各該チャープが正規化された勾配Skを有し、以下の3つのパラメーター
【0054】
【数10】
【0055】
によって特徴付けることができる。
【0056】
当業者であれば、様々なパラメーターを定義することができ、本発明に従って上記の式の変形を使用することができることは明らかである。
【0057】
所定の複数の周波数チャープに関して、上記のパラメーターは、チャープが複合照射波形において実際に送信される順序に依存しないことに留意することが重要である。したがって、勾配が予め定義される場合、これらの3つのパラメーターを測定の前に計算及び格納し、それによって計算効率をさらに改善することができる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、K個全ての測定されたビート周波数fBKは、各該周波数が、正規化された勾配Skを有するそれぞれのチャープに応答して得られ、以下の2つの量を求めるのに利用される。
【0059】
【数11】
【0060】
上記の2つの量は、複合照射波形を有する対象領域を問い合わせるプロセスによって提供される全ての情報を封入する。
【0061】
当業者であれば、異なる量を定義することができること、及び本発明に従って上記の式の変形を使用することができることが明らかである。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、検出物体の距離R0を示す往復遅延τ0及び/又は検出物体の速度V0を示すドップラー周波数fV0を、2つの一般方程式
【0063】
【数12】
【0064】
から求めることができる。
【0065】
当業者であれば、本発明に従って上記の式の変形を使用することができることが明らかである。
【0066】
所定の複数のチャープに関して、共通分母(common denominator)
【0067】
【数13】
【0068】
が正規化された勾配Sk値のみに依存し、チャープが複合照射波形において送信される順序には依存しないことに留意されたい。したがって、分母の値を測定の前に計算及び格納することができる。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、遅延及び/又はドップラー周波数を求めるのに必要な計算は、複数のK個の周波数チャープが、状態
【0070】
【数14】
【0071】
を満たす、すなわちドップラー周波数推定値から時間−遅延推定値を分離するように選択される場合に、大幅に単純化することができる。
【0072】
そのような分離が達成されると、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0は、2つの単純化された式
【0073】
【数15】
【0074】
から推定することができる。
【0075】
上述したように、所定の複数の周波数チャープに関して、パラメーターGK及びHKは、チャープが実際に送信される順序と無関係であり、したがって、これらの2つのパラメーターは、測定の前に計算及び格納することができる。
【0076】
2つの単純化された式を等価形式で表すことができる。
【0077】
【数16】
【0078】
ただし、
【0079】
【数17】
【0080】
ただし、
【0081】
【数18】
【0082】
時間遅延推定値
【0083】
【数19】
は、個々の遅延要素の重み付けされた平均(−fBk/Sk)である。重み関数
【0084】
【数20】
【0085】
は、対応するチャープがより急な勾配|Sk|を有する場合に、遅延成分によって成された相対的寄与がより大きいことを示す。
【0086】
ドップラー周波数推定値
【0087】
【数21】
【0088】
も観測されるビート周波数fBKの重み付けされた平均であり、重み関数
【0089】
【数22】
【0090】
は、対応するチャープがより緩い勾配|Sk|を有する場合に、観測されるビート周波数fBKによって成された相対的寄与がより大きいことを示す。
【0091】
したがって、時間遅延及びドップラー周波数の両方の正確な推定のために、複合波形は、利用可能な勾配の範囲から適切に選択される、非常に大きな値の勾配|Sk|及び非常に小さな値の勾配|Sk|を有する周波数チャープを含まなくてはならない。
【0092】
推定値分離を達成するため、すなわちパラメーターPKをゼロに等しくするために、以下の条件を満たすように、K+個の正の勾配、Si>0、i=1,2,...,K+、及びK-個の負の勾配Sj>0、j=1,2,...,K-を選択しなくてはならない。
【0093】
【数23】
【0094】
ただし、
【0095】
【数24】
【0096】
波形設計の目的のために、値
【0097】
【数25】
【0098】
を、離散した点Skにおいて取られた連続「エンベロープ」関数
【0099】
【数26】
【0100】
のサンプルとみなすことが有用である。したがって、サンプリング点(勾配)は、1つは正の勾配値に関するものであり、別の1つは負の勾配値に関するものである、サンプルの2つの和の同じ絶対値が得られるように選択されるべきである。
【0101】
図5は、推定値分離を達成するように勾配値を選択する例を概略的に示している。この場合、点S1及びS2においてとられるサンプル、並びに点S3、S4、及びS5においてとられるサンプルは全て合計がゼロになる。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、推定値分離は、(K/2)個のチャープ対のみから構成される複数のK個の周波数チャープを用いることによって達成され、各対は反対の勾配を有するチャープを含み、したがって
【0103】
【数27】
【0104】
である。
【0105】
そのような勾配選択の場合、パラメーターPKは、パラメーターPKの定義を分析するか又は図5を調べることによって推論され得るように、構築(construction)によって常にゼロに等しい。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、複数のK個の周波数チャープは、(K/2)個のチャープ対のみから構成され、各対は、逆数の(正規化された)勾配
【0107】
【数28】
【0108】
を有し、2つのパラメーターGK及びHKは同じ数値GK=HK=K/2を想定する。
【0109】
本発明の別の実施形態によれば、ビート周波数を処理するタスクは、K/4個のチャープ4つ組(K/4 chirp quadruples)のみから構成される照射波形を利用することによってさらに単純化され、各4つ組(each quadruple)は反対かつ逆数の勾配を有するチャープを含む。
【0110】
そのような場合、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0は以下によって求めることができる。
【0111】
【数29】
【0112】
単位勾配は該単位勾配自体の逆数(inverse)でもあることに留意することが重要である。したがって、正規化された勾配−1及び+1を有するチャープの単一対は、同時に反対(opposite)でありかつ逆数である勾配を有するチャープを含む。この一意のチャープ2つ組(doublet)をチャープ4つ組と併せて使用して、K=2(L+1)個のチャープを含む有利な照射波形を構築することができる。ただし、L≧0は整数である。
【0113】
多くの場合に、動作要件及び技術的制限に起因して、最大勾配と最小勾配との比Z、
【0114】
【数30】
【0115】
は固定でなくてはならない。そのような場合、有利なチャープ4つ組は以下の(正規化された)勾配を有する。
【0116】
【数31】
【0117】
以下において、この特定の最適なチャープ配置を4つ組チャープ(quadrichirp)と呼ぶ。
【0118】
概して、複合照射波形は、正の勾配及び負の勾配を有する複数のチャープを含むことができる。結果として、これらの勾配はそれらのそれぞれの区間
【0119】
【数32】
【0120】
及び
【0121】
【数33】
【0122】
にわたって何らかの最適な形で分散されなくてはならない。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、有利な勾配分散は、勾配Skによって生成されるアイソビート線の傾斜角tan-1(Sk)がそれらのそれぞれの区間
【0124】
【数34】
【0125】
及び
【0126】
【数35】
【0127】
にわたって実質的に均一に分散されるときに得られる。
【0128】
そのような設計は結果として、ジャミング及び相互干渉に対する耐性が高められた複合照射波形をもたらす最大エントロピーを有する勾配パターンとなる。
【0129】
本発明の実施形態の上記の説明から明らかになるように、送信信号は、特に、線形周波数変動が各部分内で異なる勾配を有する場合に、複数の部分K(a number of portions K)を有することが好ましい。ただし、K≧4である。
【0130】
本発明の実施形態に従って構築された、有利な照射波形の設計に伴うステップの理解を容易にするために、例示的な実施例を以下に提示する。
【0131】
実施例1:最適なチャープ6つ組
6つの周波数チャープを含む有利な照射波形を設計することが必要とされていると想定する。また、最大勾配と最小勾配との比Zが設計パラメーターとして与えられていると仮定する。
【0132】
6つの周波数チャープが必要とされているため、波形は、1つのチャープ4つ組と1つのチャープ2つ組とから構築することができる。チャープ4つ組は以下の4つ組チャープである。
【0133】
【数36】
【0134】
チャープ2つ組が付加されると、以下の勾配パターンが得られる。
【0135】
【数37】
【0136】
たとえば、Z=3のとき、上記の勾配パターンは以下の形態
【0137】
【数38】
【0138】
を想定する。
【0139】
傾斜角はこれらの値の逆正接である。
【0140】
したがって、この勾配パターンは傾斜角が
【0141】
【数39】
【0142】
の6つのアイソビート線を生成する。
【0143】
傾斜角は度単位で表されているが、代替的にラジアン又は任意の他の角度基準で表されてもよい。
【0144】
平均勾配がたとえば50MHz/msと想定される場合、Z=3の、最適なチャープ6つ組を用いる複合照射波形は、以下の概算の勾配値(MHz/ms単位で表される)を有する6つの周波数チャープから構成される。
【0145】
【数40】
【0146】
これらの値のそれぞれは、平均勾配と勾配パターンの各値との積によって計算されるか、又は代替的に、平均勾配と傾斜角の正接(tangent)との積によって計算されている。
【0147】
本発明の実施形態に従って構築された、有利な照射波形の設計に伴うステップの理解を容易にするために、別の例示的な実施例を以下で提示する。
【0148】
実施例2:最適なチャープ8つ組
8つの周波数チャープを含む有利な照射波形を設計することが必要とされていると想定する。また、最大勾配と最小勾配との比Zが設計パラメーターとして与えられていると仮定する。
【0149】
8つの周波数チャープが必要とされているため、波形は2つのチャープ4つ組から構築することができる。第1の4つ組は、4つ組チャープ
【0150】
【数41】
【0151】
である。
【0152】
第2の4つ組は、上記の4つ組チャープの単なるコピーとすることができるが、第2の4つ組は、アイソビート線の傾斜角の均一な広がりを得るように有利に構築される。
【0153】
したがって、傾斜角
【0154】
【数42】
【0155】
によって定義されるセクターは、2対の介在するアイソビート線の傾斜角を確定するように3つの等しい部分に分割されなくてはならない。傾斜角はラジアンで表されているが、代替的に度又は任意の他の角度基準で表されてもよい。
【0156】
同様に、傾斜角
【0157】
【数43】
【0158】
によって定義されるセクターも、3つの等しい部分に分割されなくてはならない。
【0159】
これらのセクターのうちの第1のもののみを考察すると、制限が(Lmin,Lmax)である場合、セクターを3つの等しいセグメントに分割する2つの介在する角度は、
【0160】
【数44】
【0161】
及び
【0162】
【数45】
【0163】
である。
【0164】
上記の式に
【0165】
【数46】
【0166】
及び
【0167】
【数47】
【0168】
を代入すると、角度
【0169】
【数48】
【0170】
及び
【0171】
【数49】
【0172】
が得られる。
【0173】
他方のセクターにおける対応する角度は、これらの値の反対となる。したがって、第2の4つ組チャープの勾配は、
【0174】
【数50】
【0175】
及び
【0176】
【数51】
【0177】
である。
【0178】
たとえば、Z=2である場合、4つの介在する勾配は以下の概算値を想定する。
【0179】
【数52】
【0180】
最後に、2つの4つ組を組み合わせることによって、概算勾配値
【0181】
【数53】
【0182】
を有する最適な8つ組が得られる。
【0183】
平均勾配がたとえば50MHz/msと想定される場合、最適な照射波形は、以下の概算の勾配値(MHz/ms単位で表される)を有する周波数チャープを含む。
【0184】
【数54】
【0185】
求められた勾配の幾何平均
【0186】
【数55】
【0187】
は、想定値50MHz/msに高精度で近似する。
【0188】
周波数チャープを時間において任意の適切な順序で送信することができるということに起因して、勾配の単一のセットは複数の有利な照射波形を生成することができる。そのような各波形は、周波数チャープの同じセットから構成されるが、毎回、チャープは異なる順序で送信される。
【0189】
チャープ6つ組又はチャープ8つ組のようなチャープの有利なセットを、チャープバーストと呼ばれる複数の有限な複合波形を構築するのに使用することができる。
本発明の一実施形態によれば、たとえば自動車レーダーは、その動作中、毎回ランダムに又は任意の他の適切な不規則な形で、利用可能な波形のうちの1つを選択し、この波形をチャープバーストとして送信して、対象領域を照射する。さらに、チャープバースト間の時間間隙は一定とすることもできるし、何らかの規則的な又は不規則な形式で変動することもできる。
【0190】
時間間隙の間、電力が一切送信されないため、この区間は、「リスンのみ」の動作モードを組み込むのに利用することができる。この動作モードは、共有される周波数帯域の他のユーザーによって生成される潜在的な干渉のレベルを評価するのに用いられる。
【0191】
図6は、異なる順序で発生するが同じである6つのチャープを含む複合波形のいくつかの選択された例を示している。図示されるように、いくつかの波形は、「時間反転」及び/又は「周波数反転」の操作を適用することによって、他の波形から得られた。
【0192】
本発明の一実施形態による、複数の周波数チャープから構成される照射波形を電圧制御発振器VCOが生成するように、電圧制御発振器VCOのための制御信号を生成するための装置が図7に示されている。
【0193】
図7は、本発明の一実施形態に従って構築されたチャープバースト発生器CBG701の機能ブロック図を示している。発生器は、以下のブロック、すなわち
タイミング/制御ユニットTCU711、
自走カウンターFRC710、
物理雑音源PNS705、
パターンレジスタPRG706、
チャープカウンターCHC707、
メモリMEM702、
アキュムレーターACC703、
クロック発生器CKG708、
時間カウンターTMC709、
デジタル対アナログ変換器DAC704、
を備える。
【0194】
チャープ−バースト発生器CBGは以下のように動作する。ツェナー(Zener)ダイオードのような物理雑音源PNSによって供給されるランダムに現れるパルスRPが、自走カウンターFRCを駆動する。カウンターFRCの容量は、システムによって利用される異なるチャープバースト(照射波形)の数に等しい。ランダムパルスRPの比は、カウンターFRCが、周期的に動作する間、連続するチャープバースト間の時間区間の間、多数回オーバーフローするほど高い。結果として、そのような時間区間において「オンザフライ」で観測されるカウンター状態CTは、全て実質的に同じ確率で生じることになる。
【0195】
時間/制御ユニットTCUによって提供されるパルスSIによって確定される時点において、カウンターFRCの現在の状態CTは、パターンレジスタPRGに転送され、該パターンレジスタPRGにおいて記憶されると共に、出力PTにおいて利用可能にされる。出力PTは、メモリMEMの対応するストレージセルを位置特定するのに使用されるアドレスの一部分を構成する。組み合わされたアドレス(PT,CN)の他の部分CNは、チャープカウンターCHCによって提供される。
【0196】
パルスSIはまた、タイミング/制御ユニットTCUによって生成されるバーストゲートBGに切り換える。以下で説明されるように、このゲートの持続時間は、チャープバースト全体の持続時間と等しい。ゲートBGは、自動車レーダーがマイクロ派電力増幅器又は発生器を制御するのに使用することができる。
【0197】
パルスSIは、規則的又は適切な不規則的な間隔で、タイミング/制御ユニットTCUによって内部的に生成される。これらのパルスによって画定される時間区間は、バースト持続時間と、連続するバースト間の意図される時間間隙との和である。タイミング/制御ユニットTCUは、適切なシグナルプロセッサが使用するリセットパルスRAも生成する。リセットパルスのそれぞれは、各チャープバーストの開始前に発生する。
【0198】
出力PTは、送信される、利用可能なチャープバーストのうちの1つを選択するが、出力CNはこの選択されたバースト内で生成されるチャープの実際の数を示す。たとえば、チャープ6つ組を用いて複数のチャープバーストを構築する場合、利用可能な32個の異なるチャープバーストが存在する場合があり、これらのバーストのそれぞれが6つのチャープを含む。しかしながら、概して、異なるバースト内の同じ位置に現れるチャープは異なる勾配値を有する。
【0199】
したがって、出力PTは選択されたチャープバーストの間同じ値を保つが、出力CNは1(バーストの最初のチャープ)からK(バーストの最後のチャープ)まで連続して増加する整数値を想定する。たとえば、チャープ6つ組を用いてチャープバーストを構築し、かつチャープ数7が利用される場合、バースト持続時間全体の間、出力PTの値は一定のままであり7に等しいが、出力CNは連続して値1、2、3、4、5、及び6をとる。
【0200】
バーストが開始する直前に、チャープカウンターCHCの状態CNが、タイミング/制御ユニットTCUによって供給されるパルスSTによって「1」に設定される。状態CNは、新たなパルスが入力STにおいて現れて新たなチャープの開始を示す度に、1だけ増加される。これらのパルスは、バーストの各チャープの持続時間に等しい持続時間の規則的間隔でタイミング/制御ユニットTCUによって生成される。
【0201】
チャープ持続時間は、適切なクロック発生器CKGによって供給されるパルスCKを「カウントアップ」している時間カウンターTMCによって、確定される。時間カウンターTMCの初期状態は、タイミング/制御ユニットTCUによって提供される信号RSによって、「オールゼロ状態」に予め設定されている。時間カウンターTMCは、その最大容量に達すると、
信号TTを生成し、
「オールゼロ状態」に戻り、
クロックパルスCKを再び「カウントアップ」し始める。
【0202】
信号TTは、チャープカウンターCHCの状態を1だけ増加させる新たなパルスSTをタイミング/制御ユニットTCUに生成させる。状態CNは、タイミング/制御ユニットTCUによってモニタリングされる。状態CNがその最大値に達するとき、これは選択されたバーストの最後のチャープが生成されていることを意味し、時間カウンターTMCから得られる新たなパルスTTがチャープバースト全体の終了を定義する。このパルスは、タイミング/制御ユニットTCUによって生成されるバーストゲートBGもオフに切り換える。
【0203】
組み合わされたアドレス(PT,CN)に対応する各セルにおいて、メモリMEMは以下のパラメーター、すなわち、
バーストの開始周波数に対応する初期値IS、
チャープ勾配の険しさを表す増分DS、
以下で論考される、ビート周波数プロセッサのような適切なシグナルプロセッサに送信される重みDK及びHK、
の値を格納する。
【0204】
各バーストの開始時点の直前に、「負荷」信号LSによって、アキュムレーターACCの状態が、メモリMEMによって供給される初期状態ISに予め設定される。各クロックパルスCKにおいて、アキュムレーターACCはその現在の状態に、メモリMEMによって提供される増分DSを加える。この増分の値は、実際に生成及び送信されているチャープの勾配の険しさを表す。明らかに、増分DSは、上り勾配の場合に正であり、下り勾配の場合に負である。
【0205】
アキュムレーターACCの各状態NBが、デジタル対アナログ変換器DACに供給される。デジタル対アナログ変換器DACの出力CBは、生成されているチャープバーストの要求される周波数−時間特性を「追跡」している。信号CBは、適切な電圧制御発振器を制御するのに用いられる。
【0206】
下記で論考するように、2つの重みDK及びHKの格納される値は、
【0207】
【数56】
【0208】
及び
【0209】
【数57】
【0210】
に等しい。ただし、Skはバースト内に生じるk番目のチャープの勾配である。
【0211】
チャープバーストを生成するプロセスの理解を容易にするために、以下に例を与える。
【0212】
実施例1において論考された最適なチャープ6つ組に基づいてチャープバーストを生成することが必要とされていると仮定する。選択されたチャープバーストの周波数−時間特性は図8に示される形態のものであると想定する。
【0213】
バーストは6つのチャープを含む。それらのチャープは、チャープカウンターCHCの連続した状態CNによって示されるようにナンバリングされている。MHs/ms単位で表される概算の勾配値は、実施例1において以下のように与えられる。
【0214】
【数58】
【0215】
また、各チャープの持続時間が4msであると想定する。たとえば、必要とされる時間区間は、1MHzクロック発生器CKGによって生成されるクロックパルスCKをカウントアップする時間カウンターTMCによって求められる。初期状態ISは、4ms・50MHz/ms=200MHzの値を表す。チャープカウンターCHCのそれぞれの状態CNに対応する増分DSは以下の勾配を表す。
【0216】
【数59】
【0217】
チャープ−バースト発生器の代替的な設計も可能である。そのような設計は、たとえば、勾配の値の関数と共に、又はその代わりに、勾配の値(Sk)を出力してもよい。
【0218】
ビート周波数プロセッサBFPは、観測されるビート周波数fBk及び対応する勾配の情報又は勾配の関数を受信するように動作可能であるデバイスである。ビート周波数プロセッサBFPは、この情報を使用して、距離及び/又は速度の推定値を計算及び出力する。
【0219】
図9は、本発明の一実施形態に従って構築されたビート周波数プロセッサBFPの機能ブロック図である。プロセッサBFPは、以下の2つの式を実施して、往復遅延τ0及びドップラー周波数fV0を計算する。
【0220】
【数60】
【0221】
ただし、
【0222】
【数61】
【0223】
【数62】
【0224】
ただし、
【0225】
【数63】
【0226】
次に、遅延τ0及びドップラー周波数fV0の値は、検出された物体の距離及び視線速度に変換される。
【0227】
ビート周波数プロセッサBFP907は、2つの乗算器GGF901及びHHF902と、2つのアキュムレーターACI903及びACQ904と、2つのスケーリング回路ISI905及びQSQ906とを備える。適切な周波数分析器FAN108によって提供されるビート周波数fBkの各値BFは、並列に2つの乗算器GGF及びHHFに適用される。これらの乗算器GGF及びHHFの他の入力は、チャープ−バースト発生器CBG701(図7も参照されたい)によって供給される重みDK及びHKによってそれぞれ駆動される。
【0228】
2つの重みの値は、
【0229】
【数64】
【0230】
及び
【0231】
【数65】
【0232】
によって与えられる。ただし、Skはバースト内で発生するk番目のチャープの勾配である。
【0233】
乗算器出力WG及びWHは、以下の積の数値表現である。
【0234】
【数66】
【0235】
これらの積は、それぞれのアキュムレーターACI及びACQに適用され、量
【0236】
【数67】
【0237】
及び
【0238】
【数68】
【0239】
を表す和SI及びSQが求められる。
【0240】
次に、アキュムレーターACI及びACQによって供給される値SI及びSQは、適切にスケーリングされて、検出された物体の距離R0及び速度V0が生成される。
【0241】
スケーリング係数GG及びHHは以下のように表すことができる。
【0242】
【数69】
【0243】
及び
【0244】
【数70】
【0245】
ただし、係数TRは遅延τ0を距離R0に変換するのに使用され、係数FVはドップラー周波数fV0を速度V0に変換するのに使用される。
【0246】
勾配パターンがチャープ4つ組及び/又はチャープ2つ組を含む場合、上記のスケーリング係数は以下の単純化された形態を想定する。
【0247】
【数71】
【0248】
及び
【0249】
【数72】
【0250】
ビート周波数プロセッサBFPは以下のように動作する。最初に、チャープ−バースト発生器CBGから得られた信号RAによって、2つのアキュムレーターACI及びACQがゼロにリセットされる。次に、連続する積の対WG及びWKが累算されてそれぞれの出力SI及びSQが生成される。各該対はそれぞれのチャープ勾配Sk及びビート周波数fBkについて求められる。最後に、これらの出力が以下のようにスケーリングされ、
【0251】
【数73】
【0252】
及び
【0253】
【数74】
【0254】
検出された物体の距離R0及び速度V0の測定値がもたらされる。
【0255】
ビート周波数プロセッサの代替的な設計も可能である。これらも同様に、チャープバースト発生器からの勾配の値又は勾配の値の関数、及び周波数分析器からの観測されるビート周波数を受信するように動作可能である。
【0256】
しかしながら、プロセッサは上記で与えられた式を実施することに制限されず、代替的に他の式を実施することができる。
【0257】
たとえば、ビート周波数プロセッサは、上記で与えられた式から往復遅延τ0及び/又はドップラー周波数fV0を計算することができる。
【0258】
そのようなビート周波数プロセッサは、効率的な特注の設計を有しても、又はDSPによって実施されてもよい。
【0259】
図10は、本発明の一実施形態に従って構築された、自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。システムは、図1に示される従来の構成の変形であり、図1の説明が参照される。
図示されるように、図1の三角波形発生器WFGが、チャープバースト発生器CBG701によって置き換えられる一方で、図1のデジタルシグナルプロセッサDSPは、本発明によるビート周波数プロセッサBFP907によって置き換えられている。図10に示すように、上記で論考した値HK、DL、及びRAは、チャープバースト発生器CBG701からビート周波数プロセッサBFP907に提供され、一方でビート周波数fBKは周波数分析器FAN108から提供される。
【0260】
代替的に、図10に示すように、値HK、DK、及びRAの代わりに、信号部分の勾配又は正規化された勾配Skをチャープバースト発生器CBG701からビート周波数プロセッサBFP907に提供することができる。
【0261】
本発明の一実施形態に従って構築されたビート周波数プロセッサBFPの性能を評価するためにコンピューターシミュレーション研究が行われてきた。上記の実施例において構築されたように、自動車レーダーが77GHz周波数帯域で動作し、最適なチャープ8つ組を用いることが想定される。また、距離60mにおいて現れる物体が、110km/hの視線速度でレーダーシステムに近づいていることが想定される。
【0262】
雑音も干渉も存在しない理想的な場合には、勾配Skを有するチャープに対応する8つのビート周波数fBkは、以下の公称値を有する。
【0263】
【数75】
【0264】
図11aは、8つの観測されるビート周波数を処理するシグナルプロセッサの5000個の個々の出力の散布図を示している。この場合、各ビート周波数はゼロ平均及び0.2kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されている。
【0265】
図11b及び図11cは、8つのビート周波数のそれぞれがゼロ平均及びそれぞれ0.5kHz及び1kHzの標準偏差を有するガウスランダム外乱で汚染されているときに、同じ物体について得られた散布図である。予期されるように、距離推定値及び速度推定値の誤りは、干渉のレベルが上昇するにつれ次第に増加している。
【0266】
最も実際的な応用形態では、低いか又は中程度の干渉レベルに起因するいくつかの劣化を許容することができる。しかしながら、自動車レーダーが高密度信号マルチユーザー環境で動作している場合、インパルス特性の何らかの干渉に起因して壊滅的な干渉が発生する可能性が高い。そのような場合、観測されるビート周波数のうちの少なくとも1つが「ローグ周波数」となり、すなわち検出された物体の距離又は速度に一切関係しない値を想定する。
【0267】
壊滅的な干渉を生じさせる場合がある1つのメカニズムが図12に概略的に示されている。雑音又は干渉が存在しない場合、図12aに示すように、ビート周波数は、ビート周波数の関数として受信される電力の最大値を観測することによって高精度で求めることができる。雑音及び干渉のレベルが増加しているとき、最大電力を求めることが依然として可能である。しかしながら、ここで最大値が良好に定義されていないため、推定誤りが発生する場合がある。この事例は図12bに示される。図12cに示される壊滅的な干渉の状況では、高レベルの雑音及び干渉によって、ビート周波数において現れる電力最大値はその真の値に対して大幅にシフトされる。
【0268】
比較の目的で、図13aは、距離60mにおいて現れ、110km/hの視線速度でレーダーシステムに近づいている物体について得られた、5000個の個々のプロセッサ出力の散布図を示している。この場合、さらなるインパルス性干渉は存在せず、全ての観測されるビート周波数は、ゼロ平均及び0.2kHzの標準偏差を有するガウス外乱で汚染されている。
【0269】
極度に壊滅的な干渉によって引き起こされ得る問題を示すために、図13bは4つの散布図を示している。該散布図はそれぞれ同じ物体について得られた1200個の個々のプロセッサ出力を含む。4つの事例のそれぞれにおいて、壊滅的な干渉の例の影響をシミュレートするために、全てのビート周波数に等しく影響を与える同じガウス外乱に加えて、1つの選択されたビート周波数が30kHzだけシフトされている。各事例において、同じ周波数シフトが、異なる上り勾配によって生成されたビート周波数に適用される。
【0270】
図示されるように、この事例では、推定距離はその真の値より大きく、推定速度は真の速度よりはるかに小さい。結果として、「衝突までの時間」(推定距離を推定速度で除算したもの)の推定値は受入可能でない時間量、正しい値を超える場合がある。
【0271】
本発明のさらなる実施形態によれば、壊滅的な干渉の影響は、以下の手順を用いることによって大幅に低減することができる。全てのK個の観測されるビート周波数は、(K/2)個の対に分割される。ここで、各対は反対かつ/又は逆数の勾配を有する2つのチャープによって生成されるビート周波数を含む。次に、そのように形成された第1の対が除外され、残りの[(K/2)−1]個の対を使用して距離推定値及び速度推定値を求める。プロセスは(K/2)回実行され、毎回異なるビート周波数対が除外される。全ての(K/2)個の事例が検査されると手順は終了し、結果として(K/2)個の距離−速度結合推定値のセットが分析される。
【0272】
受信したチャープのうちの1つが壊滅的に破損していた場合、影響を受けるビート周波数は「ローグ周波数」となり、いかなる形でも検出された物体の距離又は速度に関連しない。[(K/2)−1]個の事例において、「ローグ周波数」は試験下のビート周波数のセット内に存在し、毎回距離及び速度は誤って推定される。しかしながら、1つの事例では、「ローグ周波数」が試験下のビート周波数のセットから除外される。このとき、結合距離−速度推定値は正しい。
【0273】
誤った結合距離−速度推定値は、[(K/2)−1]個の点から成る主クラスターを形成するが、正しい推定値は、主クラスターの外側に現れる孤立点によって表される。適切な分類手順を適用することによって、この特定のポイントを識別すると共に、正しい結合距離−速度推定値を表すその座標を確定することが可能である。単一の点と、複数の点から成るクラスターとを区別するのが不可能になる場合、手順は中断するか、又は単に最悪の場合の「衝突までの時間」を求める。
【0274】
説明の目的のために、図14は4つの散布図を示している。該散布図はそれぞれ、同じ物体について得られた1200個の個々のプロセッサ出力を含む。別個のクラスターを形成する3つの散布図は、試験下のビート周波数のセット内に「ローグ周波数」が存在する事例に対応する。しかしながら、4番目の散布図は、主クラスターから或る程度離れて位置し、試験されているビート周波数のセットから除外されている事例に対応する。この散布図を形成する点は、正しい値に近い結合距離−速度推定値を提供する。しかしながら、ここで推定値はより小さな(8ではなく6)数の観測に基づくため、推定誤りはわずかに大きくなる。チャープ8つ組の場合、誤りは100[√(4/3)1]≒15パーセント増加する。
【0275】
壊滅的な干渉が存在しない状況において手順が適用される場合、ビート周波数の(K/2)個全ての試験されるセットが同様の結合距離−速度推定値をもたらす。これらの全ての推定値は、(K/2)点から成る単一のクラスターを形成し、そしてクラスターの中心点(たとえば重心)が最終推定値として使用される。
【0276】
計算の観点から、上記の手順は、最初に全てのビート周波数を使用して距離及び速度の推定値を計算し、次に毎回異なる周波数対を除外してこれらの推定値を再計算することによってより効率的に実施することができる。
【0277】
図15は、本発明の一実施形態に従って設計された、単一の壊滅的な干渉の影響を低減するための手順の流れ図である。そのような手順は、適切なプロセッサ制御装置によって実施することができる。
【0278】
ステップ1502において、K個の測定されたビート周波数fBkが格納され、観測される物体の距離及び速度が求められる。
【0279】
ステップ1503において、ビート周波数のK/2個の対が形成され、該対はそれぞれ反対の勾配を有するチャープを含む。
【0280】
ステップ1504において、カウントJが1に設定される。
【0281】
ステップ1505において、カウントJを有する対が処理から除外され、残りの((K/2)−1)個の対を使用して、ビート周波数(fBk)及びそれらのそれぞれの勾配(Sk)から物体の距離及び速度が計算される。
【0282】
ステップ1506において、カウントJが、ステップ1505において得られた距離及び速度についての結果としての値と共に格納される。
【0283】
ステップ1507において、カウントJがK/2に等しいか否かが検査される。
【0284】
ステップ1507においてカウントJがK/2に等しくないと判断される場合、カウントはステップ1508において1だけ増加され、距離及び速度のK/2回の計算が実行されるまでステップ1505〜1507が反復される。
【0285】
ステップ1507においてカウントJがK/2に等しいと判断される場合、得られた距離及び速度の測定値のK/2個の対がステップ1509において調べられる。結果として、他のK/2−1個の対によって形成されるクラスターの外側に位置する対が選択される。
【0286】
ステップ1510において、ステップ1509において得られた結果が、検出された物体の距離及び速度として出力される。
【0287】
図16は、本発明の一実施形態に従って構築された、自動車FMCWレーダーの機能ブロック図である。この構成は、適切なプロセッサ制御装置PRC1601を組み込むことによって、図10の構成から得られたものである。この制御装置PRCは、(ハードウェア又はソフトウェアで)図15の流れ図に示される動作を実施する。
【0288】
図16に示すように、上記で論考した値HK、DK、及びRAは、チャープバースト発生器CBG701からプロセッサ制御装置PRC1601に提供される一方で、ビート周波数fBkは周波数分析器FAN108から提供される。プロセッサ制御装置PRC1601は、ビート周波数プロセッサBFP907に信号を出力し、ビート周波数プロセッサBFP907から信号を受信する。さらに、プロセッサ制御装置PRC1601は、観測される物体の距離及び速度を出力する。
【0289】
代替的に、図16に示す値HK、DL、及びRAの代わりに、信号部分の勾配又は正規化された勾配Skを、チャープバースト発生器CBG701からプロセッサ制御装置PRC1601に提供することもできる。
【0290】
上述される干渉拒否手順は、単一の「ローグ周波数」以上のものを扱うように一般化することができる。たとえば、インパルス性干渉の結果として2つの「ローグ周波数」が生じる場合があると想定される場合、毎回2つの異なる対が試験下のビート周波数のセットから除外されなくてはならない。したがって、分析される事例の数は、(K/2)から[(K2/8)−(K/4)]に増加する。
【0291】
たとえば、チャープ8つ組が用いられるとき、試験下のビート周波数セットの数は4(単一「ローグ周波数」が推測される)から6(2つの「ローグ周波数」が推測される)に増加する。さらに、ここで4つのビート周波数のみが推定に使用されるため。推定値誤りは41パーセント増加する。したがって、推定誤りを低減するために、より長いチャープバーストを使用しなくてはならない。代替的に、距離及び速度推定をいくつかのチャープバーストにわたって実行することができる。
【0292】
本発明の好ましい実施形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示されてきた。該説明は、包括的であることも、本発明を開示された正確な形態に限定することも意図されていない。上記の説明を鑑みて、当業者であれば、多くの改変形態、変更形態、及び変形形態によって、本発明を意図される特定の使用に適した様々な実施形態において利用することが可能になることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検出する方法であって、
有限の持続時間の変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、並びに
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めること、
を含み、
前記送信信号は、少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、
前記線形の周波数変動は各前記部分内で異なる勾配を有する、方法。
【請求項2】
物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、及び
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、
を含み、
前記送信信号はK個の部分から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数はそれぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、ただしk=1,...,Kであり、
該方法は、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めることをさらに含む、方法。
【請求項3】
前記方法は、前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を求めることをさらに含み、
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び前記部分(k)内の前記対応する正規化された勾配(Sk)についてそれぞれ実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び/又は前記部分(k)内の前記対応する正規化された勾配(Sk)に基づいて計算されるパラメーターに基づいてそれぞれ実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
【数1】
によって得ることができるパラメーターGk、Hk、及びPkが計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数をそれぞれ求めることを含めて実行される、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数を、
【数2】
及び
【数3】
としてそれぞれ求めることを含めて実行され、ただし
【数4】
及び
【数5】
は
【数6】
によって得ることができ、IK及びQKは
【数7】
によって得ることができる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記正規化された勾配(Sk)は所定の条件を満たす、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の条件は
【数8】
である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部分は、正規化された勾配Skを有する部分ごとに正規化された勾配−Skを有する部分が存在するように対で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記部分は、正規化された勾配Skを有する部分ごとに正規化された勾配1/Skを有する部分が存在するように対で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記部分は、正規化された勾配Skを有する部分ごとに正規化された勾配1/Sk、−1/Sk、及び−Skを有する部分が存在するように4つ組で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記勾配の最大所望大きさと前記勾配の最小所望大きさとの比はZであり、
前記4つ組の前記正規化された勾配Skは、
【数9】
である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
角度区間
(tan-1|S|min,tan-1|S|max)
及び
(−tan-1|S|max,−tan-1|S|min)
を規定する、前記正規化された勾配の最小大きさ|S|min及び前記正規化された勾配の最大大きさ|S|maxが存在し、
他の正規化された勾配によって規定される角度は、前記角度区間内で等しく離間される、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記正規化は、たとえば前記勾配の幾何平均又は算術平均を計算する等して平均勾配を得て、該平均勾配で各勾配を除算することによって実行される、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
各前記部分(k)の前記勾配(Sk)は、勾配の少なくとも1つの所定のセットにおいて規定される、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記勾配のセットごとにパラメーターが予め計算される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記予め計算されるパラメーターは、
【数10】
によって得ることができる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各前記部分(k)は同じ持続時間を有する、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記送信信号は、K個の部分から成る有限のシーケンスと、少なくとも1つの間隙とから構成される少なくとも1つのバーストを含む、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記勾配(Sk)は所与の範囲内にあり、少なくとも1つの部分の前記信号は、前記範囲内で大きな勾配を伴って変動し、少なくとも1つの他の部分の前記信号は、前記範囲内で小さな勾配を伴って変動する、請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記部分の数Kは偶数である、請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える、自動車レーダー装置であって、
前記送信信号が少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、前記線形の周波数変動が各前記部分内で異なる勾配を有するような、前記変動周波数信号を提供するように動作可能な信号発生器をさらに備える、自動車レーダー装置。
【請求項24】
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号がK個の部分から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動するような前記変動周波数信号を提供するように動作可能である信号発生器と、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える、自動車レーダー装置。
【請求項25】
前記自動車レーダー装置は、前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を検出するように動作可能なビート周波数検出器をさらに備え、
前記シグナルプロセッサは、前記物体の距離及び/又は速度を求めることを、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び前記部分(k)内の対応する正規化された勾配(Sk)についてそれぞれ実行するように構成される、請求項24に記載の自動車レーダー装置。
【請求項26】
前記シグナルプロセッサは、前記物体の前記距離及び/又は前記速度を求めることを、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び/又は前記部分(k)内の前記対応する正規化された勾配(Sk)に基づいて計算されるパラメーターに基づいてそれぞれ実行するように構成される、請求項25に記載の自動車レーダー装置。
【請求項27】
前記シグナルプロセッサは、
【数11】
によって得ることができるパラメーターGk、Hk、及びPkを計算するように構成される、請求項26に記載の自動車レーダー装置。
【請求項28】
前記シグナルプロセッサは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数をそれぞれ求めることを含む、前記物体の距離及び/又は速度を求めることを実行するように構成される、請求項24から請求項27までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項29】
前記シグナルプロセッサは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数を、
【数12】
及び
【数13】
としてそれぞれ求めることを含む、前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることを実行するように構成され、ただし
【数14】
及び
【数15】
は
【数16】
によって得ることができ、IK及びQKは
【数17】
によって得ることができる、請求項27に記載の自動車レーダー装置。
【請求項30】
前記信号発生器は、勾配の予め定められたセットを格納するためのメモリを備える、請求項23から請求項29までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項31】
前記メモリは、前記勾配の予め定められたセットごとに予め計算されたパラメーターを格納するように構成される、請求項30に記載の自動車レーダー装置。
【請求項32】
前記予め計算されたパラメーターは、
【数18】
によって得ることができる、請求項31に記載の自動車レーダー装置。
【請求項33】
前記信号発生器は、前記勾配の予め定められたセットのうちの1つをランダムに選択するように動作可能な選択器をさらに備える、請求項30から請求項32までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項34】
前記選択器は、前記選択された勾配の予め定められたセットの前記勾配を連続して選択するようにさらに動作可能である、請求項33に記載の自動車レーダー装置。
【請求項35】
前記信号発生器は、K個の部分から成る有限のシーケンスと、少なくとも1つの間隙とから構成される少なくとも1つのバーストを生成するように構成される、請求項23から請求項34までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項36】
前記信号発生器は、前記変動周波数信号が生成されるように電圧制御発振器を制御する電圧を出力するように構成される電圧発生器を備える、請求項23から請求項35までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項37】
前記測定されたビート周波数(fBk)を処理して前記物体の前記距離及び/又は前記速度を求めるように動作可能であるビート周波数プロセッサをさらに備える、請求項23から請求項36までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項38】
前記ビート周波数プロセッサは、前記測定されたビート周波数を前記信号発生器から受信した値と乗算するように構成される少なくとも1つの乗算器(GGF、HHF)を備える、請求項37に記載の自動車レーダー装置。
【請求項39】
前記ビート周波数プロセッサは、前記乗算器(GGF、HHF)の前記出力を累算するように構成される少なくとも1つのアキュムレーター(ACI、ACQ)と、該アキュムレーター(ACI、ACQ)の前記出力をスケーリングするように構成される少なくとも1つのスケーリングユニット(ISI、QSQ)とを備える、請求項38に記載の自動車レーダー装置。
【請求項40】
物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、及び
前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を求めること、
を含み、
前記送信信号は、K個の部分(k)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、
前記部分は反対かつ/又は逆数の正規化された勾配Skから成るK/2個の対で存在し、
該方法は、
前記ビート周波数(fBk)及び該ビート周波数のそれぞれの勾配(Sk)から前記物体の距離及び/又は速度をK/2回計算することであって、毎回、複数の前記対のうちの1つが該計算プロセスから除外される、計算すること、
或る対を用いた計算が、他の対の結果によって形成されるクラスターの外側に位置する結果を生成するか否かを判断すること、及び
前記結果によって与えられた前記距離及び/又は前記速度を出力すること、
をさらに含む、方法。
【請求項41】
請求項1から請求項22までのいずれか1項に記載の方法と組み合わされる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項40又は請求項41に記載の前記方法に従って、前記K個のビート周波数(fBk)及び該ビート周波数のそれぞれのK個の勾配(Sk)を処理するように動作可能なビート周波数プロセッサをさらに備える、請求項23から請求項39までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項1】
物体を検出する方法であって、
有限の持続時間の変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、並びに
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めること、
を含み、
前記送信信号は、少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、
前記線形の周波数変動は各前記部分内で異なる勾配を有する、方法。
【請求項2】
物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、及び
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、
を含み、
前記送信信号はK個の部分から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数はそれぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、ただしk=1,...,Kであり、
該方法は、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めることをさらに含む、方法。
【請求項3】
前記方法は、前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を求めることをさらに含み、
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び前記部分(k)内の前記対応する正規化された勾配(Sk)についてそれぞれ実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び/又は前記部分(k)内の前記対応する正規化された勾配(Sk)に基づいて計算されるパラメーターに基づいてそれぞれ実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
【数1】
によって得ることができるパラメーターGk、Hk、及びPkが計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数をそれぞれ求めることを含めて実行される、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数を、
【数2】
及び
【数3】
としてそれぞれ求めることを含めて実行され、ただし
【数4】
及び
【数5】
は
【数6】
によって得ることができ、IK及びQKは
【数7】
によって得ることができる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記正規化された勾配(Sk)は所定の条件を満たす、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の条件は
【数8】
である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部分は、正規化された勾配Skを有する部分ごとに正規化された勾配−Skを有する部分が存在するように対で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記部分は、正規化された勾配Skを有する部分ごとに正規化された勾配1/Skを有する部分が存在するように対で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記部分は、正規化された勾配Skを有する部分ごとに正規化された勾配1/Sk、−1/Sk、及び−Skを有する部分が存在するように4つ組で存在する、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記勾配の最大所望大きさと前記勾配の最小所望大きさとの比はZであり、
前記4つ組の前記正規化された勾配Skは、
【数9】
である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
角度区間
(tan-1|S|min,tan-1|S|max)
及び
(−tan-1|S|max,−tan-1|S|min)
を規定する、前記正規化された勾配の最小大きさ|S|min及び前記正規化された勾配の最大大きさ|S|maxが存在し、
他の正規化された勾配によって規定される角度は、前記角度区間内で等しく離間される、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記正規化は、たとえば前記勾配の幾何平均又は算術平均を計算する等して平均勾配を得て、該平均勾配で各勾配を除算することによって実行される、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
各前記部分(k)の前記勾配(Sk)は、勾配の少なくとも1つの所定のセットにおいて規定される、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記勾配のセットごとにパラメーターが予め計算される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記予め計算されるパラメーターは、
【数10】
によって得ることができる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各前記部分(k)は同じ持続時間を有する、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記送信信号は、K個の部分から成る有限のシーケンスと、少なくとも1つの間隙とから構成される少なくとも1つのバーストを含む、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記勾配(Sk)は所与の範囲内にあり、少なくとも1つの部分の前記信号は、前記範囲内で大きな勾配を伴って変動し、少なくとも1つの他の部分の前記信号は、前記範囲内で小さな勾配を伴って変動する、請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記部分の数Kは偶数である、請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える、自動車レーダー装置であって、
前記送信信号が少なくとも4つの隣接部分(K)から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動し、前記線形の周波数変動が各前記部分内で異なる勾配を有するような、前記変動周波数信号を提供するように動作可能な信号発生器をさらに備える、自動車レーダー装置。
【請求項24】
変動周波数信号を送信するように動作可能な送信機と、
物体から前記送信信号の反射を受信するように動作可能な受信機と、
前記送信信号がK個の部分から成るシーケンスを含むと共に、前記信号の周波数がそれぞれの前記部分内で時間と共に線形に変動するような前記変動周波数信号を提供するように動作可能である信号発生器と、
前記部分(k)ごとに、正規化された勾配(Sk)に基づいて前記物体の距離及び/又は速度を求めるように動作可能なシグナルプロセッサと、
を備える、自動車レーダー装置。
【請求項25】
前記自動車レーダー装置は、前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を検出するように動作可能なビート周波数検出器をさらに備え、
前記シグナルプロセッサは、前記物体の距離及び/又は速度を求めることを、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び前記部分(k)内の対応する正規化された勾配(Sk)についてそれぞれ実行するように構成される、請求項24に記載の自動車レーダー装置。
【請求項26】
前記シグナルプロセッサは、前記物体の前記距離及び/又は前記速度を求めることを、前記測定されたビート周波数(fBk)、及び/又は前記部分(k)内の前記対応する正規化された勾配(Sk)に基づいて計算されるパラメーターに基づいてそれぞれ実行するように構成される、請求項25に記載の自動車レーダー装置。
【請求項27】
前記シグナルプロセッサは、
【数11】
によって得ることができるパラメーターGk、Hk、及びPkを計算するように構成される、請求項26に記載の自動車レーダー装置。
【請求項28】
前記シグナルプロセッサは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数をそれぞれ求めることを含む、前記物体の距離及び/又は速度を求めることを実行するように構成される、請求項24から請求項27までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項29】
前記シグナルプロセッサは、前記物体からの反射信号の往復遅延及びドップラー周波数を、
【数12】
及び
【数13】
としてそれぞれ求めることを含む、前記物体の前記距離及び/又は前記速度を前記求めることを実行するように構成され、ただし
【数14】
及び
【数15】
は
【数16】
によって得ることができ、IK及びQKは
【数17】
によって得ることができる、請求項27に記載の自動車レーダー装置。
【請求項30】
前記信号発生器は、勾配の予め定められたセットを格納するためのメモリを備える、請求項23から請求項29までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項31】
前記メモリは、前記勾配の予め定められたセットごとに予め計算されたパラメーターを格納するように構成される、請求項30に記載の自動車レーダー装置。
【請求項32】
前記予め計算されたパラメーターは、
【数18】
によって得ることができる、請求項31に記載の自動車レーダー装置。
【請求項33】
前記信号発生器は、前記勾配の予め定められたセットのうちの1つをランダムに選択するように動作可能な選択器をさらに備える、請求項30から請求項32までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項34】
前記選択器は、前記選択された勾配の予め定められたセットの前記勾配を連続して選択するようにさらに動作可能である、請求項33に記載の自動車レーダー装置。
【請求項35】
前記信号発生器は、K個の部分から成る有限のシーケンスと、少なくとも1つの間隙とから構成される少なくとも1つのバーストを生成するように構成される、請求項23から請求項34までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項36】
前記信号発生器は、前記変動周波数信号が生成されるように電圧制御発振器を制御する電圧を出力するように構成される電圧発生器を備える、請求項23から請求項35までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項37】
前記測定されたビート周波数(fBk)を処理して前記物体の前記距離及び/又は前記速度を求めるように動作可能であるビート周波数プロセッサをさらに備える、請求項23から請求項36までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【請求項38】
前記ビート周波数プロセッサは、前記測定されたビート周波数を前記信号発生器から受信した値と乗算するように構成される少なくとも1つの乗算器(GGF、HHF)を備える、請求項37に記載の自動車レーダー装置。
【請求項39】
前記ビート周波数プロセッサは、前記乗算器(GGF、HHF)の前記出力を累算するように構成される少なくとも1つのアキュムレーター(ACI、ACQ)と、該アキュムレーター(ACI、ACQ)の前記出力をスケーリングするように構成される少なくとも1つのスケーリングユニット(ISI、QSQ)とを備える、請求項38に記載の自動車レーダー装置。
【請求項40】
物体を検出する方法であって、
変動周波数信号を送信すること、
前記物体からの前記送信信号の反射を受信すること、及び
前記送信信号と前記受信信号との間のビート周波数(fBk)を求めること、
を含み、
前記送信信号は、K個の部分(k)から成るシーケンスを含み、
前記信号の周波数は、それぞれの前記部分(k)内で時間と共に線形に変動し、
前記部分は反対かつ/又は逆数の正規化された勾配Skから成るK/2個の対で存在し、
該方法は、
前記ビート周波数(fBk)及び該ビート周波数のそれぞれの勾配(Sk)から前記物体の距離及び/又は速度をK/2回計算することであって、毎回、複数の前記対のうちの1つが該計算プロセスから除外される、計算すること、
或る対を用いた計算が、他の対の結果によって形成されるクラスターの外側に位置する結果を生成するか否かを判断すること、及び
前記結果によって与えられた前記距離及び/又は前記速度を出力すること、
をさらに含む、方法。
【請求項41】
請求項1から請求項22までのいずれか1項に記載の方法と組み合わされる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項40又は請求項41に記載の前記方法に従って、前記K個のビート周波数(fBk)及び該ビート周波数のそれぞれのK個の勾配(Sk)を処理するように動作可能なビート周波数プロセッサをさらに備える、請求項23から請求項39までのいずれか1項に記載の自動車レーダー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−529570(P2011−529570A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520515(P2011−520515)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059862
【国際公開番号】WO2010/012801
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059862
【国際公開番号】WO2010/012801
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】
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