説明

複合多孔質膜、複合多孔質膜の製造方法並びにそれを用いた電池セパレーター、電池及びコンデンサ

【課題】 熱圧着法や、溶液を直接基材に塗布する方法を用いずに異なる融点(または軟化点)を有する樹脂多孔質膜を複合化させることで、優れたイオン透過性、および低い孔閉塞温度と高い破膜温度を併せ持つ電池用セパレーターに適した複合多孔質膜を提供する。
【解決手段】 融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aと、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂からなる多孔質膜Bとが一体化された複合多孔質膜において、多孔質膜Bの表側の面および多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面が、共に3次元ネットワーク状構造であることを特徴とする複合多孔質膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔閉塞機能と高温での優れた耐破膜性を同時に有する複合多孔質膜に関するものである。詳細には、イオン透過性に優れ、150℃以下での孔閉塞機能と200℃以上の耐熱破膜温度を併せ持つ安全性、充放電反応安定性の高いリチウムイオン電池用セパレーターとして有用な複合多孔質膜であり、さらにそれを用いた電池またはコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂微多孔膜は、物質の分離や選択透過及び隔離材等として広く用いられている。たとえば、リチウム二次電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ポリマー電池に用いる電池用セパレーターや、電解コンデンサ用セパレーター、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料等などである。特にポリエチレン製微多孔膜は、リチウムイオン二次電池用セパレーターとして好適に使用されているがその理由としては、電気絶縁性に優れる、電解液含浸によりイオン透過性を有する、耐電解液性・耐酸化性に優れるという特徴だけでなく、電池異常昇温時に120〜150℃程度の温度において電流を遮断し過度の昇温を抑制する孔閉塞効果をも備えているためである。しかしながら、何らかの原因で孔閉塞後も昇温が続く場合、膜を構成する融解したポリエチレンの粘度低下及び膜の収縮により、ある温度で破膜を生じることがある。また、一定高温下に放置すると、融解したポリエチレンの粘度低下及び膜の収縮により、ある時間経過後に破膜を生じる可能性がある。この現象はポリエチレンに限定された現象ではなく、他の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、その多孔質膜を構成する樹脂の融点以上では避けることができない。
【0003】
特にリチウムイオン電池用セパレーターは電池特性、電池生産性及び電池安全性に深く関わっており、優れた機械的特性、耐熱性、透過性、寸法安定性、孔閉塞特性(シャットダウン特性)、溶融破膜特性(メルトダウン)等が要求される。そのため、これまでにさまざまな耐熱性向上の検討がなされている。たとえば、耐熱フィルムとポリエチレン多孔質膜の熱圧着による積層(特許文献1)、ポリエチレン多孔質膜への耐熱樹脂溶液のディッピング(含浸)によって内部および両面の耐熱コーティング(特許文献2)。さらに、耐熱樹脂溶液をポリエチレン多孔質膜上へ塗布を行った後、湿式製膜法により耐熱樹脂多孔質層を積層する方法(特許文献3)などが報告されている。
【0004】
しかしながら、事前にレーザー光を用いて穴あけ加工した耐熱フィルムを張り合わせる方法では、当然、表から裏面にかけて直線状の孔が形成されてしまい、また、それらクレーター状の孔が広範囲に渡って分散するため、現行のポリオレフィン多孔質膜と同様の緻密な微細ネットワーク状の多孔質層を形成させることは不可能である。このような相構造は一般的に、開孔部に充放電反応が局所化するため、デンドライドの発生が大幅に加速されると言われている。
【0005】
また、ポリイミドやポリアミドイミド、ポリアミドなどの耐熱多孔質膜とポリオレフィン多孔質膜を積層して複合膜を製造する場合、耐熱性樹脂のガラス転移温度が非常に高い点、ガラス転移温度付近では樹脂の熱劣化も同時に起こってしまう点と、高温では自己架橋反応により硬化してしまう点から、ポリオレフィン多孔質膜と同様の延伸法よって多孔質膜を形成させることは困難である。
【0006】
さらに、当然、ポリオレフィン多孔膜と張り合わせた後に延伸することは、軟化温度に大きな差があるため極めて困難である。すなわち、両方の多孔質層が孔閉塞機能を発現させない温度で、複合多孔質膜を延伸しなければならず、工業的にはガラス転移温度が非常に近いもの(例えば両者の融点の差が50℃以下)の組み合わせに限られ、工業的に広く使用されているセパレーター用複合多孔質膜としてはポリエチレン、ポリプロピレンの2層、または3層の組み合わせのみである。
【0007】
さらに、レーザー光等によって孔あけ加工した耐熱性フィルムを熱圧着する方法に関しては、フィルム自体の開孔面積が少なく、また熱圧着時のポリエチレン表面の閉塞によって開孔の大部分が塞がれてしまうため、透気度の大幅な悪化が避けられない。この問題を解決するためには、組み合わせる多孔質膜の空孔率、表面開孔率を高くする必要があるが、同時に、機械物性の脆弱化、絶縁性の低下、薄膜の作成が困難になるといった課題を生じる。例えば特許文献1ではこれらの問題点について、解決策が明示されていない。
【0008】
耐熱性樹脂溶液中にポリオレフィン多孔質膜をディッピング(含浸)させることによりコーティングする方法については、ポリオレフィン多孔質膜の内部および両面に耐熱多孔質層を形成できるため、耐熱性の向上および対称な相構造による反りの低減などが可能であるが、一方で、ポリオレフィン多孔質膜内部にも耐熱樹脂多孔質相が形成されることを避けることができない。その結果、ポリオレフィン内部の連通孔を大部分に渡って塞ぐことになり、透気度の大幅な悪化が避けられないだけでなく、セパレーターの安全性を決定付ける最も重要な機能である孔閉塞機能(ポリオレフィンの溶融による連通孔の閉塞、およびそれによるイオン透過の阻害)を大幅に低下させてしまうことが避けられない。これらの問題点について特許文献2では全く触れられていない。
【0009】
また、ポリオレフィン多孔質膜上に耐熱性樹脂溶液を塗布し、湿式製膜法によって耐熱性多孔質相を形成させる方法が知られているが、この方法を用いた場合、塗布液を塗布した際にポリオレフィン多孔質膜表層部への浸透が避けられず、上記と同様に透気度の悪化と孔閉塞機能の低下が避けられない。さらに、塗布液の浸透は塗布液重量とそのチキソトロピー、およびポリオレフィン多孔質膜の微細孔による毛細管現象によって支配されるため、作成できる複合多孔質膜の諸物性への制限が大きく、根本的な解決は困難である。
【0010】
【特許文献1】特開2004−363048号公報
【特許文献2】特開2003−171495号公報
【特許文献3】特開2004−152675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題に対し、熱圧着法や、溶液を直接基材に塗布する方法を用いずに異なる融点(または軟化点)を有する樹脂多孔質膜を複合化させることで、優れたイオン透過性、および低い孔閉塞温度と高い破膜温度を併せ持つ電池用セパレーターに適した複合多孔質膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、孔閉塞機能と高温での優れた耐破膜性を同時に有する複合多孔質膜、複合多孔質膜の製造方法等に関するものであり、以下の(1)〜(3)に記載された特徴を有する。
【0013】
(1)融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aと、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂からなる多孔質膜Bとが一体化された複合多孔質膜において、多孔質膜Bの表側の面および多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面が、共に3次元ネットワーク状構造であることを特徴とする複合多孔質膜。
【0014】
(2)融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aと、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂からなる多孔質膜Bとが一体化された複合多孔質膜において、複合多孔質膜全体の透気度が多孔質膜Aの透気度の2倍以下であると共に、且つ50〜1000sec/100ccAirであり、さらに全体の膜厚が40μm以下であることを特徴とする複合多孔質膜。
【0015】
(3)基材上に、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂ワニスを塗布し、それに含まれる溶剤より貧溶剤に接触させることにより溶剤を含んだゲル状としてから、融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aに転写させ、洗浄、乾燥することを特徴とする複合多孔質膜の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、多孔質膜Aが本来持っているイオン透過性や低温孔閉塞機能を損なうことなく、破膜温度の高い安全性に優れた非水電解二次電池用またはコンデンサ用に適したセパレーターを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で言う「3次元ネットワーク状構造」とは所謂「網状」であり、例えば図2〜7で表されるような形状を言う。すなわち繊維状に固化した樹脂によって、平面方向(面方向)だけでなく、水平方向(厚み方向)にも同様の網状構造が形成されているものであり、明確な表面皮膜を有さない。本発明における繊維状に固化した樹脂は、それ自身が柱の役割となって多孔質膜に空隙保持や自己支持性などの機械強度を与えるものであり、その長さは0.1〜5.0μm程度で、太さは0.01〜1.0μm程度であることが好ましく、分岐点の部分は概して0.1〜3.0μm程度の不規則な球状であり一定の形状ではないものが好ましい。不織布を用いた場合(図6、7)では各繊維は長く二次元に広がっているが、繊維は三次元に絡まり、繊維の交点を密着させて固化している点などから3次元ネットワーク状構造に該当する。
ネットワーク状構造に形状としては、架橋構造、網目状構造、蜘蛛の巣状構造、スポンジ状構造などが挙げられる。
「3次元ネットワーク状構造」を採ることによる最も大きな効果は、多孔質膜Aの開孔と多孔質膜Bの開孔とを、お互いに閉塞させることなく一体化できる点である。すなわち、得られる複合多孔質膜全体の透気度を悪化させることなく孔閉塞温度と耐熱破膜温度のバランスに優れた安全性の高い非水電解二次電池用またはコンデンサ用に適したセパレーターを提供することができる。
また、本発明において「一体化された」とは単に重ね合わせたのではなく、多孔質膜Aと多孔質膜Bの一部分または全部が密着している状態を言う。その界面は強固に密着していても良いが、本発明では簡単に手やセロハンテープ等を用いて簡単に剥がれる程度の密着力であるものが好ましい。強固に密着していると透気度が高まる傾向にあり、全く密着していないと、非水二次電池やコンデンサを組み立てる際に多孔質膜Aと多孔質膜Bにずれが生じることがあるからである。
【0018】
本発明の複合多孔質膜は、多孔質膜Bの表側の面及び多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面が、共に3次元ネットワーク状構造であることが好ましい(図1参照)。従来知られた方法により製造した複合多孔質膜は特に多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面が3次元ネットワーク状構造になっておらず、複合多孔質膜全体の透気度の低下を招く原因となっていたからである。
【0019】
本発明は、融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aと、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂からなる多孔質膜Bとが一体化された複合多孔質膜において、複合多孔質膜全体の透気度がAの透気度の2倍以下である態様であることも好ましい。透気度の単位はsec/100ccAirである。
【0020】
多孔質膜Aは充放電反応の異常時に孔が閉塞する機能を有する必要がある。したがって、構成する樹脂の融点(軟化点)は、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは80〜140℃、もっとも好ましくは100〜130℃である。70℃以下では、正常使用時に孔閉塞機能が発現して電池が使用不可になる可能性があるため実用性に乏しく、150℃以上では異常反応が十分に進行してから孔閉塞機能が発現してしまうため、安全性を確保できないおそれがある。
また、多孔質膜Aの膜厚については、好ましくは5〜35μmさらに好ましくは10〜30μmもっとも好ましくは10〜20μmである。5μmよりも薄い場合、実用的な膜強度と孔閉塞機能を保有させることが出来ないことがあり、35μmよりも厚い場合、多孔質膜Bの占める体積が少ないために溶融収縮を原因とする短絡が生じてしまうため、安全性を確保することができない恐れがある。
【0021】
多孔質膜Aの透気度は好ましくは50〜800sec/100ccAir、さらに好ましくは50〜500sec/100ccAir、もっとも好ましくは50〜300sec/100ccAirであり、空孔率については、好ましくは30〜70%、さらに好ましくは35〜60%、もっとも好ましくは40〜55%である。透気度が800sec/100ccAirより高くても、空孔率が30%よりも低くても、十分な電池の充放電特性、特にイオン透過性(充放電作動電圧)、電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)において十分ではなく、これらの範囲を超えた場合、電池としての機能を十分に発揮することが出来なくなる可能性がある。一方で、50sec/100ccAirよりも透気度が低くても、空孔率が70%よりも高くても、十分な機械的強度と絶縁性が得られず充放電時に短絡が起こる可能性が高くなる。
【0022】
さらに、多孔質膜Aの表面状態に関しては、0.01〜0.5μmの平均粗度を有していると多孔質膜Bとの密着性がより強くなる傾向にある。上記範囲よりも粗度が低い場合には密着性改善の効果は見られず、上記範囲よりも粗度が高い場合には、多孔質膜Aの機械強度低下または多孔質膜Bの表面への凸凹の転写が起こることがある。
【0023】
多孔質膜Bはその耐熱性により多孔質膜Aを支持・補強する役割を担うため、構成する樹脂の融点(または軟化点)は、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、もっとも好ましくは210℃以上であり、上限は特に設ける必要はない。融点が分解温度よりも高い場合には、分解温度が上記範囲内であれば良い。融点が150℃よりも低い場合、十分な耐熱破膜温度が得られず、高い安全性を確保できないおそれがある。
【0024】
また、多孔質膜Bの膜厚については好ましくは1〜35μmさらに好ましくは2〜20μmもっとも好ましくは3〜10μmである。膜厚が1μmよりも薄い場合、多孔質膜Aが融点以上で溶融・収縮した際の破膜強度と絶縁性を確保できないおそれがあり、35μmよりも厚い場合、多孔質膜Aの占める割合が少なく十分な孔閉塞機能が得られず異常反応を抑制できないことがある。
【0025】
多孔質膜Bの透気度は好ましくは1〜500sec/100ccAir、さらに好ましくは1〜200sec/100ccAir、もっとも好ましくは1〜50sec/100ccAirであり、空孔率については、好ましくは30〜90%、さらに好ましくは40〜80%、もっとも好ましくは50〜70%である。透気度が1sec/100ccAirより低くても、空孔率が90%よりも高くても、多孔質膜Aが融点以上で溶融・収縮した際の複合多孔質膜の破膜強度を確保できなくなり、高い安全性を確保できない恐れがある。一方で、透気度が500sec/100ccAirより高くても、空孔率が30%よりも低くても多孔質膜Aと複合化した際の透気度が多孔質膜Aの透気度の2倍を超えてしまう傾向にあり、十分な電池特性が得られない可能性がある。
【0026】
多孔質膜Aの平均孔径については、孔閉塞速度に大きく影響を与えるため、好ましくは0.01〜1.0μm、さらに好ましくは0.05〜0.5μm、もっとも好ましくは0.1〜0.3μmである。0.01μmよりも小さい場合、複合化の際に透気度が大幅に悪化する可能性が高くなり、1.0μmよりも大きい場合には孔閉塞現象の温度に対する応答が緩慢になる、昇温速度による孔閉塞温度がより高温側にシフトするなどの現象が生じる可能性がある。
【0027】
多孔質膜Bの平均孔径については、主に多孔質膜Aのイオン透過性、および溶融収縮時の支持力・破膜強度に影響を与えるため、好ましくは0.1〜5.0μm、さらに好ましくは0.3〜4.0μm、もっとも好ましくは0.5〜3.0μmである。0.1μmよりも小さい場合、得られた複合多孔質膜の透気度が多孔質膜Aの2倍を越えてしまう傾向にあり、5.0μmよりも大きい場合には、溶融収縮する多孔質膜Aを十分に支持することが出来ず短絡を抑止することが出来ない可能性がある。
【0028】
得られた複合膜の全体の膜厚は40μm以下であることが望ましく、好ましくは6〜40μm、さらに好ましくは10〜30μm、もっとも好ましくは10〜20μmである。6μmよりも薄い場合には、十分な機械強度と絶縁性を確保することが困難になることがあり、20μmよりも厚い場合には容器内に充填できる電極面積が減少することにより容量の低下を回避することが困難になる恐れがある。
【0029】
さらに複合多孔質膜の透気度は、もっとも重要な特性のひとつであり、好ましくは50〜1000sec/100ccAir、さらに好ましくは50〜600sec/100ccAir、もっとも好ましくは50〜300sec/100ccAirである。50sec/100ccAirよりも透気度の値が低い場合、十分な絶縁性が得られず異物詰まりや短絡、破膜を招く可能性があり、1000sec/100ccAirよりも値が高い場合には膜抵抗が高く実使用可能な範囲の充放電特性、寿命特性が得られない場合がある。
【0030】
多孔質膜Aを構成する樹脂としては、電子絶縁性に優れる、電解液含浸によりイオン透過性を有する、耐電解液性・耐酸化性に優れる、適度の強度を持っているなどの基本特性に加え、電池異常昇温時に120〜150℃程度の温度において電流を遮断し過度の昇温を抑制する孔閉塞効果を具備しているポリオレフィンが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。
【0031】
さらに、工程作業性および電極との倦回時に生じるさまざまな外圧に耐える機械強度、たとえば、引っ張り強度、弾性率、伸度、突き刺し強度といった点から、好ましい質量平均分子量は30万以上、さらに好ましくは40万以上、もっとも好ましくは50万以上である。なお、これらの樹脂を用いる際は、上記範囲の質量平均分子量を有するポリオレフィン成分が50重量%以上含有されていることが好ましく、さらに好ましくは60重量%以上含有されていることが好ましい。上記範囲よりも含有量が少ない場合、溶融粘度が低いため、孔閉塞温度を越えて昇温した際の機械物性の低下が著しく、孔閉塞温度付近でも倦回圧力や電極端部のバリなどによって溶融破膜が起こる恐れがある。
【0032】
多孔質膜Aの層構造については、製法により異なる。上記の各種特徴を満足する範囲内ならば、製法により目的に応じた層構造を自由にもたせることが出来る。具体的な製造方法としては、発泡法、相分離法、溶解再結晶法、延伸開孔法、粉末焼結法などがある。
【0033】
多孔質膜Bを構成する樹脂については、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びセルロース樹脂の中から選ばれる少なくとも一種類以上の樹脂であることが好ましい。
特に、これらの耐熱樹脂の中でも耐熱性、耐電解液性、高極性溶媒への良溶解性による利便性、電解液への親和性などの点から、非晶性のポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
多孔質膜Bを構成する上記樹脂については、対数粘度が0.5dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.7dl/g以上、最も好ましくは0.9dl/g以上である。上限は特に定める必要はないが、作業性、たとえば溶剤溶解性や流延時の溶液粘度の点から3.0dl/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.5dl/g以下、もっとも好ましくは2.0dl/g以下である。
【0035】
多孔質膜Bの相構造は、製法によって異なる。上記の各種特徴を満足する範囲内ならば、製法により目的に応じた層構造を自由に持たせることが出来る。多孔質膜を得る具体的な製造方法としては、発泡法、相分離法、溶解再結晶法、延伸開孔法、粉末焼結法などがあり、これらのなかでは微細孔の均一化、コストの点で相分離法が好ましい。また、多孔質膜Bは不織布形態のものでも良い。具体的には、湿式不織布、サーマルボンド、スパンレース、スパンボンド、エレクトロスピニング、メルトブローによって得られる不織布が、膜厚、孔分布の均一性を保ちながら薄膜化することが可能であり、特に好ましい。
【0036】
本発明の複合多孔質膜は、まず、基材上に多孔質膜Bを構成する樹脂を溶解させた溶液を流延した後、貧溶剤に加えたり接触させたりすることで樹脂を緩やかに析出させる。このときに用いることの出来る基材としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルムなどの汎用フィルム、またはステンレス板などである。さらに、上記樹脂フィルムを基材として用いる際はコロナ放電処理面を使用すると、次工程にて多孔質膜Bを剥離する際に、密着力が弱く好適である。
【0037】
多孔質膜Bを形成させる基材は、エンドレスベルト状の態様であることが好ましい。その理由としては、コーティングブレードの位置によって多孔質膜Bの樹脂を析出させるための時間調整が簡便に行えるため、加工速度(ライン速度)を上げることが出来る。また、一般的なロールコーターを用いた加工も一応可能ではあるが、多孔質膜Bの樹脂を析出させる時間調整をアプリケーターロール径とライン速度で調整しなければならない不便がある。
【0038】
多孔質膜Bを形成させる基材を剥離することなく湿式製膜を行うことも可能である。この方法を用いる場合、弾性率が低く、加工時の張力によってネッキングするような柔らかい多孔質膜Aを用いる場合でも複合多孔質膜の製造が可能にある。具体的には、ガイドロール通過時に複合多孔質膜にシワ、折れが入らない、乾燥時のカールを低減できるなど工程作業性に優れる特徴が期待できる。この時、基材と複合多孔質膜を同時に巻き取っても、乾燥工程を通過してから基材と複合多孔質膜を別々の巻き取りロールに巻き取っても良いが、後者の巻き取り方法の方が巻きズレの恐れが少なく好ましい。
【0039】
また、貧溶剤としては工業的に水が最も好ましい。また、加湿処理による樹脂の析出速度をコントロールするために、種々の水溶性グリコール成分や、水溶性ポリマー成分、またはそれらのオリゴマー成分を相分離助剤として添加しても良い。水分を加える具体的な方法としては、加湿処理、および有機溶剤を含有させた水溶液を用いる湿式処理などがあるが、均一な相構造を形成させるためには加湿処理の方が好ましい。加湿風量、水分量、風速、風向き、温度、時間を変えることで相構造を任意に変化させることができ、使用目的、作業効率やスペースに応じて自由に調整することが出来る。特に基材上に多孔質膜Bを構成しうる樹脂溶液を塗布した後、10〜30℃かつ50〜90%RHの雰囲気下を、10〜60秒かけて通過させることが均質な多孔質構造を形成させる点で好ましい。上記範囲を満足しない場合、表面に開孔をほとんど有さない皮膜を形成したり、十分に多孔質構造が形成されない状態で多孔質膜Aと接する可能性が高くなり、得られた複合多孔質膜の透気度や空孔率が大幅に悪化する原因となることがある。上記工程によって形成された多孔質膜Bは溶剤を含んだゲル状(非流動状)を呈している。
【0040】
次に、上で得られたゲル状の多孔質膜Bの上に、多孔質膜Aを、気泡を含まないように貼り合わせる。貼り合わせる方法としては、二方向から来たフィルムを一つの金属ロールの面上で合わせる方法がフィルムに与えるダメージ、および多孔質膜Bの均質性、さらには多孔質膜Bの多孔質膜Aへの進入が抑えられるため好ましい。
【0041】
次に、基材または金属ロール上から、貼り合わされた状態の多孔質膜Aと多孔質膜Bの複合多孔質膜を剥離する。このとき多孔質膜Bは、全面に渡って多孔質膜Aに転写され、未洗浄の複合多孔質膜が得られる。これは多孔質膜Bの一部が多孔質膜Aの細孔に適度に食い込みアンカー効果が発現しているためである。
【0042】
さらに、上記の未洗浄多孔質膜を、多孔質膜Bを構成する樹脂に対する良溶媒を1〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%含有する水溶液中に浸漬させ、純水を用いた洗浄工程、100℃以下の熱風を用いた乾燥工程を経て、最終的な複合多孔質膜を得ることが出来る。
多孔質膜Bの膜厚が厚い、厚み方向に不均一な層構造を形成させたいなどの理由から、多孔質膜Bが多孔質膜Aに収率、品位良く転写されない場合は、基材から剥離することなく凝固浴に浸漬した後、基材を剥離することで、目的が達成される可能性がある。
【0043】
複合多孔質膜の電解液への親和性を高めるため、公知の技術であるスルホン化処理、フッ素ガス処理、グラフト重合処理、放電処理、親水性樹脂付与処理、界面活性剤処理を用いることが出来る。放電処理にはコロナ放電、プラズマ放電、グロー放電、電子線処理などがあり、特にプラズマ処理が内部まで親水化できるため好適である。また、親水性樹脂にはカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などがある。界面活性剤処理には、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤が有効である。
【0044】
また、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン等の電子電導性ポリマー等も併用することが出来る。これらの中では導電性の湿度依存性が少なく、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂への分散性や相溶性に優れるポリアニリンが有用である。特に、酸化重合したポリアニリン誘導体に無機酸やドデシルベンゼンスルホン酸等の有機プロトン酸ドーパントをドーピングした有機溶剤や、水に溶解又は分散可能したものが好ましい。
【0045】
本発明で用いる相分離助剤としては水、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどから選ばれる少なくとも一種類以上であり、添加量は塗布液の溶液重量に対して好ましくは10〜90wt%、さらに好ましくは20〜80wt%、最も望ましくは30〜70%の範囲で添加するのが好ましい。
【0046】
これらの相分離助剤を塗布液に混合することによって、主に透気度、表面開孔率、層構造の形成速度をコントロールすることが出来る。上記範囲よりも添加量が少ない場合、相分離速度の顕著な上昇は見られないことがあり、また、上記範囲よりも多い場合は、塗布液が混合の段階で白濁して樹脂成分が析出してしまう場合がある。
【0047】
多孔質膜Bを作成する際に、その樹脂を溶解するために使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP),リン酸ヘキサメチルトリアミド(HMPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、3−クロロナフタレン、パラクロロフェノール、テトラリン、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、樹脂の溶解性に併せて自由に選択できる。
【0048】
本発明の複合多孔膜は、目的幅にスリットされたポリオレフィン多孔質層を用いて複合多孔質膜を作成することも出来るが、ポリオレフィン多孔質層作成時にオンラインで続いて加工することも可能である。ここで言うオンラインとは、ポリオレフィン多孔質層の製造工程(具体的には、洗浄後の乾燥工程)後に、連続して多孔質膜B積層し、凝固、洗浄、スリットの各工程を経て目的とする複合多孔質膜を得る手段を言う。上記オンライン塗工を行うことで、大量生産が可能となり、コスト面で非常にメリットがある。
【0049】
本発明で得られる複合多孔質膜は、耐熱性、耐電解液特性に優れているが、さらに引張強度を向上させたい場合や、溶融収縮率のさらなる低減を行いたい場合などには、硬化剤を併用することが可能である。硬化剤としては2官能以上のエポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物が挙げられる。上記硬化剤から選ばれる少なくとも1種類を混合した樹脂溶液を先述した方法によってポリオレフィン多孔質層上に積層し、乾燥工程の加熱を利用して、硬化反応を促進させることが出来る。
【0050】
湿式製膜時の洗浄については、加温、超音波照射やバブリングといった一般的な手法を用いることが出来る。さらに、各浴槽内の濃度を一定に保ち、洗浄効率を上げるためには、浴間で多孔膜内部の溶液を取り除く手法が有効である。具体的には、空気または不活性ガスで多孔層内部の溶液を押し出す手法、ガイドロールによって物理的に膜内部の溶液を絞り出す手法などが挙げられる。
【0051】
本発明の効果により作成された複合多孔質膜は、乾燥状態で保存することが望ましいが、絶乾状態での保存が困難な場合は、使用の直前に100℃以下の減圧乾燥処理を行うことが好ましい。
【0052】
本発明の複合多孔質膜は、30℃/minの昇温速度で測定した際の孔閉塞温度と耐熱破膜温度の差が50℃以上であり、さらに孔閉塞温度が150℃以下、且つ耐熱破膜温度が200℃以上であることが好ましい。
【0053】
孔閉塞(シャットダウン)とは、多孔質膜を構成する樹脂が溶融することで連通孔を閉塞し、イオンがセパレーターを透過することを阻害する現象のことを言う。また、孔閉塞温度とは、孔閉塞によってセパレーターの電気抵抗が上昇し始める温度のことを言う。
さらに、溶融破膜(メルトダウン)とは、セパレーターを構成している樹脂が溶融または軟化することで流動してしまい、セパレーターが電極間の絶縁機能を果たせなくなることを言う。耐熱破膜温度とは、孔閉塞温度以上に加熱昇温した際に、溶融破膜によってセパレーターの電気抵抗が大幅に低下し始める温度のことを言う。
【0054】
孔閉塞機能はリチウムイオン二次電池の安全確保のために必須な機能であり、リチウム金属の発火温度である約160℃よりも低い温度で、その機能が発現することが必要である。その一方で、充放電時の異常反応による電池内部の昇温は非常に早く、孔閉塞機能が発現した場合であっても、惰性の昇温が30〜40℃程度も続くことがあり(オーバーシュート現象)、耐熱破膜温度は閉塞温度よりも50℃以上の高いことが望ましい。
【0055】
大型のリチウムイオン二次電池では200℃を越えたあたりから、溶融破膜による電極間の短絡を原因とする熱暴走と呼ばれる現象により、急激に400〜500℃まで電池内部の温度が上昇することが知られている。そのため、200℃以上の耐熱破膜温度があればそれ以上の異常昇温を防ぐことができ、電池の安全性を大幅に高められる。
【0056】
孔閉塞温度と耐熱破膜温度の測定時の昇温速度についてであるが、実際の電池内の昇温を想定すると30℃/minにて測定を行ったときの孔閉塞温度と耐熱破膜温度の差が50℃以上であり、さらに孔閉塞温度が150℃以下、且つ耐熱破膜温度が200℃以上であることが好ましい。
【0057】
本発明の複合多孔質膜は、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛電池、リチウム二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池、およびプラスチックフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、電解コンデンサ、電気二重層コンデンサなどのセパレーターとして用いることができるが、特にリチウム二次電池のセパレーターとして用いるのが好ましい。コンデンサの構造については、単板型、倦回型、貫通型、積層型、電解型、電気二重層型のいずれのスタイルでも良い。以下にリチウム二次電池を例にとって説明する。
【0058】
リチウム二次電池は、正極と負極がセパレーターを介して積層されており、セパレーターは電解液(電解質)を含有している。電極の構造は特に限定されず、公知の構造であってよい。例えば、円盤状の正極及び負極が対向するように配設された電極構造(コイン型)、平板状の正極及び負極が交互に積層された電極構造(積層型)、帯状の正極及び負極が重ねられて巻回された電極構造(巻回型)等の構造とすることができる。
【0059】
正極は、通常集電体とその表面に形成されたリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極活物質層とを有する。正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物(リチウム複合酸化物)、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられ、遷移金属としては、V、Mn、Fe、Co、Ni等が挙げられる。正極活物質の中でリチウム複合酸化物の好ましい例としては、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、α−NaFeO2型構造を母体とする層状リチウム複合酸化物等が挙げられる。
【0060】
負極は、集電体とその表面に形成された負極活物質を含む負極活物質層とを有する。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック等の炭素質材料が挙げられる。電解液はリチウム塩を有機溶媒に溶解することにより得られる。リチウム塩としては、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、Li210Cl10、LiN(C25SO22、LiPF4(CF32、LiPF3(C253、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン等の高沸点及び高誘電率の有機溶媒や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低沸点及び低粘度の有機溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。特に高誘電率の有機溶媒は粘度が高く、低粘度の有機溶媒は誘電率が低いため、両者を混合して用いるのが好ましい。
【0061】
電池を組み立てる際に、セパレーター(複合多孔質膜)に電解液を含浸させる。これによりセパレーターにイオン透過性を付与することができる。通常、含浸処理は微多孔膜を常温で電解液に浸漬して行う。例えば、円筒型電池を組み立てる場合、まず正極シート、セパレーター(複合多孔質膜)、及び負極シートをこの順に積層し、この積層体を一端より巻き取って巻回型電極素子とする。次にこの電極素子を電池缶に挿入し、上記電解液を含浸させ、さらに安全弁を備えた正極端子を兼ねる電池蓋を、ガスケットを介してかしめることにより電池を得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。尚、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
【0063】
1.対数粘度
ポリマー0.5gを100mlのNMPに溶解した溶液を25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
【0064】
2.不揮発分濃度
まず、樹脂溶液をあらかじめ秤量されたアルミ箔上に0.5〜1.0g正確に量り取り、市販の熱風乾燥機を用いて220℃、2時間乾燥した後、デシケーター内で室温付近まで冷却してからアルミ箔ごと秤量し、アルミ箔の重量を差し引くことで析出した樹脂重量を求めた。次に、以下の式から不揮発分濃度を求めた。
不揮発分濃度%=[1−{(乾燥前の溶液重量g−乾燥後の析出物重量g)÷乾燥前の溶液重量g}]×100
【0065】
3.ガラス転移温度
樹脂溶液、または複合多孔質膜を良溶媒に漬けて耐熱樹脂層のみを溶解させた樹脂溶液を、アプリケーターによってPETフィルム(東洋紡績製E5001)あるいはポリプロピレンフィルム(東洋紡績製パイレン−OT)に適当なギャップで塗布し、120℃10分間予備乾燥した後に剥離して、適当な大きさの金枠に耐熱粘着テープで固定した状態で、さらに真空下で200℃12時間乾燥し、乾式フィルムを得た。得られた乾式フィルムから幅4mm×長さ21mmの試験片を切り取り、測定長15mmで動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御製DVA―220)を用いて、110Hz、昇温速度4℃/分の条件下で室温から450℃までの範囲で測定した時の貯蔵弾性率(E’)の屈折点において、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と、屈折点以上における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0066】
4.走査型電子顕微鏡(SEM)観察
複合多孔質膜の表面の観察は、試験片を測定用セルに上に両面テープを用いて固定し、プラチナまたは金を数分間真空蒸着させ、適度な倍率で測定をおこなった。界面(多孔質膜Bの多孔質膜Aに接している面)の測定は、複合多孔質膜の多孔質膜Bに粘着テープを貼り付け、垂直方向にゆっくりと(0.1m/min程度)凝集破壊しないように注意しながら多孔質膜Bのみを剥離し、その時の剥離面を観察した。狙い通りに界面剥離できているかどうかは、剥離後の多孔質膜Aを同様にSEMで観察し、多孔質膜Bが残されていないことにより判断した。SEMでの観測が困難な微細表面に関しては、同様の金属蒸着処理を行った後、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて試験片を観測した。
【0067】
5.平均孔径
SEM測定で得られた画像上で任意の10箇所を選択し、それら10箇所の孔径の平均値を試験片の平均孔径とした。
【0068】
6.透気度
テスター産業(株)社製のガーレー式デンソメーターB型を使用して、複合多孔質膜をクランピングプレートとアダプタープレートの間にシワが入らないように固定し、JIS P−8117に従って測定した。測定は5回行い、その平均値を透気度[sec/100ccAir]として用いた。
【0069】
7.収縮率
試験片を2.5cm×7.5cmにカットして、2枚のスライドガラスで挟み、試験片がカールしない程度にクリップで荷重をかけた状態で150℃10分間加熱した。加熱後のサンプルを回収し下記の式により収縮率(%)を算出した。
{(加熱前の試験片面積−加熱後の試験片面積)/加熱前の試験片面積}×100
【0070】
8.膜厚
接触式膜厚計(ソニーマニュファクチュアリング社製 デジタルマイクロメーター M−30)を使用して測定した。
【0071】
9.突刺強度
圧縮試験機(カトーテック製KES−G5)を用いて、先端の曲率半径0.5mmの針を用いて突き刺し速度10mm/sで突き刺し試験を行い最大突き刺し荷重(gf)を突刺強度(gf)とした。
【0072】
10.空孔率
10cm角の試料を用意し、その試料体積(cm3)と質量(g)を測定し得られた結果から次式を用いて空孔率(%)を計算した。
空孔率=(1−質量/(樹脂密度×試料体積))×100
【0073】
11.簡易ボタン電池の作成および孔閉塞温度および耐熱破膜温度の測定
コバルト酸リチウム粉末85重量部とカーボンブラック5重量部とポリフッ化ビニリデン重量部を混合し、N―メチルピロリドンを加えてペースト状に調整した後、これを厚さ20μmのアルミ箔上に塗布乾燥後プレスし正極板を作成した。これを直径15.958mmの円形に打ち抜き正極とした。次にメソフェーズカーボンマイクロビーズ粉末を90重量部とポリフッ化ビニリデン10重量部を混合し、N−メチルピロリドンを加えてペースト状に調整した後、これを厚さ18μmの銅箔上に塗布乾燥後プレスし負極板を作成した。これを直径16.156mmの円形に打ち抜き負極とした。
【0074】
上記の方法にて作成した簡易ボタン電池を充電し、温度調整機能付きの恒温槽に漬けた状態で放電した際の電気抵抗を測定することにより孔閉塞温度および耐熱破膜温度を決定した。熱媒にはシリコンオイルを使用した。
【0075】
12.質量平均分子量及び分子量分布
複合多孔質膜をNMPに含浸させて多孔質膜Bを完全に溶解させて十分にNMPにて洗浄した後、真空乾燥機にて100℃12時間乾燥した。得られたポリオレフィン多孔質膜をウォーターズ(株)製のGPC装置を用い、カラムに東ソー(株)製GMH−6、溶媒にo−ジクロロベンゼンを使用し、温度135℃、流量1.0ml/分にてゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
【0076】
実施例1
ポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡績製HR11NN 不揮発分濃度15% NMP溶液 ガラス転移温度280℃)100重量部にポリエチレングリコール(三洋化成製 PEG−400)20重量部を加えて、室温にて均一になるように混合した(塗布液1)。
上記塗布液1をプロピレンフィルム(東洋紡績製パイレン−OT)のコロナ面上に、クリアランス30μm、塗布速度1.0m/minで塗布した後、25℃ 80%RH雰囲気中を30秒かけて通過させ、半ゲル状の多孔質膜B1を得た。
上記の半ゲル状多孔質膜B1の上にポリエチレン多孔質フィルム(厚み20μm 空孔率40% 透気度300sec/100ccAir)を、上記の半ゲル状多孔質膜の上に重ね、NMPを5重量%含有する水溶液中に進入させ、その後純水で洗浄した後、70℃の熱風乾燥区画を通過させることで乾燥し、複合多孔質膜1を得た。
【0077】
実施例2
ポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡績製HR16NN 不揮発分濃度14% NMP溶液 ガラス転移温度320℃)100重量部にポリエチレングリコール(三洋化成製 PEG−400)15重量部を加えて、室温にて均一になるように混合した(塗布液2)。
上記塗布液2をプロピレンフィルム(東洋紡績製パイレン−OT)のコロナ面上に、クリアランス20μm、塗布速度1.0m/minで塗布した後、25℃ 80%RH雰囲気中を30秒かけて通過させ、半ゲル状の多孔質膜B2を得た。
上記の半ゲル状多孔質膜B2の上にポリエチレン多孔質フィルム(厚み10μm 空孔率47% 透気度80sec/100ccAir)を用いて、上記の半ゲル状多孔質膜を上に重ねた。その際、ポリエチレン多孔質膜の引っ張り強度が十分ではなく、幅方向にネッキングする様子が観察されたため、基材フィルムから剥離させないまま、実施例1と同様の凝固・洗浄・乾燥工程を経た後、基材から剥離して複合多孔質膜2を得た。
【0078】
実施例3
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにピロメリット酸二無水物0.5モルとビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.5モル、およびジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート0.5モル、ヘキサメチレンジイソシアネート0.5モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、150℃で約1時間反応させた。得られた溶剤可溶型ポリイミド樹脂は、不揮発分濃度20%、対数粘度0.7g/dl、ガラス転移温度190℃であった。このポリイミド樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして複合多孔膜3を得た。
【0079】
実施例4
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにテレフタル酸0.5モルとイソフタル酸0.5モル、およびジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート1モルを固形分濃度が15%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら100℃に昇温して約1時間反応させた。この溶液を150℃に昇温して約3時間反応を継続した。得られたポリアミド樹脂の対数粘度は0.8dl/g、ガラス転移温度は270℃であった。このポリアミド樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして複合多孔質膜4を得た。
【0080】
実施例5
ポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学社製 フォートロンKPS)を不揮発分濃度15%になるようにNMPに溶解し、実施例1と同様に複合多孔質膜5を得た。
【0081】
実施例6
ポリアミドイミド樹脂(東洋紡績製HR11NN 不揮発分濃度15% NMP溶液 ガラス転移温度280℃)の高分子溶液を、ノズル径100μmから射出し、25℃ 80%RH雰囲気中を20secかけて通過させ、プロピレンフィルム(東洋紡績製パイレンーOT)のコロナ面上に投下させた。この状態では、NMPは除去されておらずゲル状
(非流動状)の多孔質膜Bが得られた。このゲル状多孔質膜B上に実施例2と同様にしてポリエチレン多孔質膜を重ね、洗浄、乾燥を経て複合多孔質膜6を得た。
【0082】
実施例7
ポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡績製HR11NN 不揮発分濃度15% NMP溶液 ガラス転移温度280℃)100重量部にポリエチレングリコール(三洋化成製 PEG−400)20重量部を加えて、室温にて均一になるように混合した。リバースロールコーター(ステンレス製 アプリケーターロールΦ650mm)を用い、メタリングロールとのギャップ30μmを通過してからポリエチレン多孔質膜に接するまでの区間を25℃80%RH雰囲気下に保つことで、吸湿による塗布液のゲル化(非流動化)処理を行った。非流動状の多孔質膜Bをポリエチレン多孔質膜に転写し、その後は実施例1と同様の凝固・洗浄・乾燥工程を経ることで複合多孔質膜を得た。
【0083】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績製厚さ7μm)を用い、レーザーを用いて孔をあけた。空孔率は40%であった。融点は265℃であった。
次に、ポリエチレン多孔質膜(厚み20μm 空孔率40% 透気度300sec/100ccAir)を上記のPETフィルムと熱溶着して複合多孔質膜を作製した。
【0084】
比較例2
ポリエチレン多孔質膜(厚み20μm 空孔率40% 透気度300sec/100ccAir)を、ポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡績製HR11NN 不揮発分濃度15% NMP溶液 ガラス転移温度280℃)100重量部にポリエチレングリコール(三洋化成製 PEG−400)20重量部を加えて、室温にて均一になるまで混合した溶液中に浸漬させた。計量・平滑化冶具にはマイヤーバー(ヨシミツ精機社製8番直径20mm)を用いた。2本のマイヤーバーと凝固浴間のエアギャップは7cmとした。2本のマイヤーバー間のクリアランスを40μmとし、ディップされた多孔膜が2本のマイヤーバー間のほぼ中央にくるように設置した。その後、調整したドープ及び凝固液を所定の容器に入れ、製膜の準備を整えた。塗布液を含浸させたポリエチレン多孔質膜を3m/分の速度で移動させ、NMPを実施例1と同様の凝固・洗浄・乾燥工程を経て複合多孔質膜を得た。
【0085】
比較例3
ポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡績製HR11NN 不揮発分濃度15% NMP溶液 ガラス転移温度280℃)100重量部にポリエチレングリコール(三洋化成製 PEG−400)30重量部を加えて塗布液を調整した。
上記塗布液を、ポリエチレン多孔質膜(厚み20μm 空孔率40% 透気度300sec/100ccAir)に、クリアランス20μm、塗布速度1.0m/minにて直接塗工し、その後は実施例1と同様の凝固・洗浄・乾燥工程を経て複合多孔質膜を得た。
【0086】
比較例4
ポリエチレン多孔質膜(厚み10μm 空孔率47% 透気度80sec/100ccAir)を二枚重ねて熱融着することで、ポリエチレンだけで構成される複合多孔質膜を得た。
【0087】
比較例5
ポリエチレン多孔質膜(厚み10μm 空孔率47% 透気度80sec/100ccAir)上に、ポリプロピレン多孔質膜(厚み20μm 空孔率50% 透気度200sec/100ccAir)を二枚重ねて熱融着することで、ポリエチレンとポリプロピレンで構成される複合多孔質膜を得た。
【0088】
比較例6
ポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡績製HR11NN 不揮発分濃度15% NMP溶液 ガラス転移温度280℃)100重量部にポリエチレングリコール(三洋化成製 PEG−400)30重量部を加えて塗布液を調整した
上記塗布液をクリアランス30μm、塗布速度1.0m/minにてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績製E5001)のコロナ面に塗布し、25℃80%RH雰囲気下を30秒通過させることでゲル状多孔質膜を形成させ、さらに、実施例1と同様の凝固・洗浄・乾燥を経て多孔質膜Bの単独フィルムを得た。
上記多孔質膜B単独膜を基材から剥離させながら、ポリエチレン多孔質膜(厚み20μm 空孔率40% 透気度300sec/100ccAir)とともに、紙管に巻き取った。
【0089】
比較例7
上記比較例6と同様にして多孔質膜Bの単独膜を作成し、ポリフッ化ビニリデン樹脂(呉羽化学社製 KFポリマー)をテトラヒドロフランに不揮発分濃度が20%になるように溶解させ、得られた樹脂溶液をポリエチレン多孔質膜にクリアランス10μm塗布速度1.0m/minにて塗布した後、多孔質膜Bの単独膜を金属ロール上で重ね、60℃の熱風乾燥区画を30秒通過させ、複合多孔質膜を得た。
【0090】
表1、表2の結果について詳細に説明する。
【0091】
実施例1および2では耐熱樹脂層が均一に形成されており、かつ、ポリエチレン内部に浸透することなく一体化されているため、透気度の低下はほとんど見られず室温での充放電を問題なく行え、さらにシャットダウン温度の上昇なども観察されなかった。このことから、セパレーターとしての基本特性を満たしているポリエチレン多孔質膜の性能を悪化させていないことがわかる。さらに、耐熱樹多孔質膜はポリエチレン多孔質膜表層の凹凸に食い込んだ状態で一体化していると思われ、その結果として、膜に対する水平方向への収縮抑制に対して非常に大きな効果を発揮していることがわかる。
【0092】
また、実施例1および2では、用いた耐熱樹脂の乾式膜での弾性率が3000MPaと6000MPaと異なり、樹脂そのものの弾性率がポリエチレンの溶融収縮低減に大きく寄与していることがわかる。すなわち、実施例2で示したように、これまで高温時の破膜強度の不足から使用されることが少なかった10μmのポリエチレン多孔質膜を用いても、本発明の提供によって十分に実使用可能な安全性を確保できることがわかる。実施例1の樹脂を用いて実施例2で使用したポリエチレン多孔質膜を用いた場合には、一部の試験セルで高温時の破膜が確認された。
【0093】
実施例3〜5に関しても同様にポリエチレン多孔質膜の透気度を悪化させることなく、複合化させることが可能であった。このことはポリアミドイミドに限らず、溶剤可溶型の耐熱性樹脂を本発明の加工方法によりポリオレフィン多孔質膜と複合化することで、高温時でも破膜しない複合多孔質膜を提供できることを示している。
実施例6に関しては、従来行われているような不織布とポリオレフィン多孔質膜との熱圧着、または接着剤を用いた複合化では見られないレベルでの透気度悪化であった。薄膜化についても検討したが、繊維径と孔分布の均一化の点から20μm程度の厚みは最低限必要であった。
【0094】
実施例7に関しては、もっともコスト的に有利な方法であり、実施例1と同様の満足する性能を示した。
【0095】
一方で、比較例1では、レーザー光による加工法では表から裏面への直線的に通じる孔が、広範囲にわたって分布を構築されるため、不均一反応により充電初期の段階からデンドライドが多発し、わずかに試作し得た試験セルにおいては、200℃での破膜は見られなかったものの、数度の充放電にてデンドライド由来と思われる短絡が生じ、目的を達成するものではなかった。このように、耐熱多孔質膜に補強されていない部分に、特にデンドライドの発生が起こりやすく、結果としてポリエチレン多孔質膜と比較して、安全性が低下していることが分かった。
【0096】
比較例2に関しては、ポリエチレン内部まで耐熱樹脂が浸透し、凝固しているため、空孔率が大幅に低下しただけでなく、透気度は測定不能(10000sec以上のため計測中止)にまで悪化した。当然、膜抵抗がポリエチレン基材単独と比較して異常に高く、端部に電流が集中する傾向が見られ、充電すら困難な状況であった。
【0097】
比較例3については、目標には達しないものの比較的透気度悪化を軽減した状態での加工が可能であった。しかし、比較例2と同様に塗布液がポリエチレン内部に浸透しているため、シャットダウン温度が上昇する傾向が見られた。
【0098】
比較例4および5に関しては、公知の技術であり、既に広く使用されている技術であるがいずれの組み合わせにおいても200℃での耐熱性を付与することは出来なかった。
【0099】
比較例6に関しては、透気度の低下がなく室温での充放電は問題なく行え、ポリエチレン内部への樹脂の浸透もないことから、シャットダウン温度の上昇などの不具合も見られなかったが、シャットダウン温度以降での昇温の際にポリエチレン多孔質膜が溶融収縮して短絡が生じた。この結果は耐熱樹脂層がポリオレフィン系多孔質膜と一体化されていないと効果を十分に発現できないことを示している。
【0100】
比較例7では、両多孔質膜ともに均一な微細孔を形成しているが、接着剤層の部分が両多孔質膜間の界面にて孔を閉塞してしまった。種々の検討を行ったが、接着剤量を軽減した場合には比較例6の結果に近づき、接着材料が多くなると比較例2の結果に近づく傾向が見られた。このことと実施例1〜6の結果を照合すると、両多孔質膜間の接合には多孔質物質による物理的アンカー効果がもっとも効果的な接合方法であることがわかる。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によって、多孔質膜Aが本来持っているイオン透過性や低温孔閉塞機能を損なうことなく、破膜温度の高い安全性に優れた非水電解二次電池用またはコンデンサ用に適したセパレーターを提供できることができ、産業界への寄与が大である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の複合多孔質膜を表す図である。
【図2】実施例1;多孔質膜Bの表側の面のSEM写真である。
【図3】実施例1;多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面のSEM写真である。
【図4】実施例4;多孔質膜Bの表側の面のSEM写真である。
【図5】実施例4;多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面のSEM写真である。
【図6】実施例6;多孔質膜Bの表側の面のSEM写真である。
【図7】実施例6;多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面のSEM写真である。
【図8】比較例2;多孔質膜Bの表側の面のSEM写真である。
【図9】比較例3;多孔質膜Bの表側の面のSEM写真である。
【符号の説明】
【0105】
1.多孔質膜A
2.多孔質膜B
3.多孔質膜Bの表側の面
4.多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aと、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂からなる多孔質膜Bとが一体化された複合多孔質膜において、多孔質膜Bの表側の面および多孔質膜Bにおける多孔質膜Aとの界面側の面が、共に3次元ネットワーク状構造であることを特徴とする複合多孔質膜。
【請求項2】
融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aと、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂からなる多孔質膜Bとが一体化された複合多孔質膜において、複合多孔質膜全体の透気度が多孔質膜Aの透気度の2倍以下であると共に、且つ50〜1000sec/100ccAirであり、さらに全体の膜厚が40μm以下であることを特徴とする複合多孔質膜。
【請求項3】
30℃/minの昇温速度で測定した際の孔閉塞温度と耐熱破膜温度の差が50℃以上であり、さらに孔閉塞温度が150℃以下、且つ耐熱破膜温度が200℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合多孔質膜。
【請求項4】
多孔質膜Aの空孔率が30〜70%であり、且つ多孔質膜Bの空孔率が30〜90%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合多孔質膜。
【請求項5】
多孔質膜Aの平均孔径が0.01〜1.0μmであり、多孔質膜Bの平均孔径が0.1〜5.0μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合多孔質膜。
【請求項6】
多孔質膜Aが質量平均分子量3×105以上の超高分子量ポリオレフィンを50重量%以上含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合多孔質膜。
【請求項7】
多孔質膜Bがポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びセルロース樹脂からなる群のうち少なくとも一種以上から選ばれる樹脂から構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合多孔質膜。
【請求項8】
多孔質膜Bが対数粘度0.5dl/g以上のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の複合多孔質膜。
【請求項9】
多孔質膜Bが相分離法によって形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の複合多孔質膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の複合多孔質膜を用いた電池用またはコンデンサ用セパレーター。
【請求項11】
請求項10に記載のセパレーターを用いた非水電解二次電池またはコンデンサ。
【請求項12】
基材上に、ガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂ワニスを塗布し、それに含まれる溶剤より貧溶剤に接触させることにより溶剤を含んだゲル状としてから、融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜Aに転写させ、洗浄、乾燥することを特徴とする複合多孔質膜の製造方法。
【請求項13】
基材がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートまたはステンレスのいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の複合多孔質膜の製造方法。
【請求項14】
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートがコロナ放電処理されていることを特徴とする請求項13に記載の複合多孔質膜の製造方法。
【請求項15】
基材が、エンドレスベルト状であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の複合多孔質膜の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかに記載の複合多孔質膜の製造方法において、基材上に多孔質膜Bを構成し得る樹脂溶液を塗布した後、10〜30℃かつ50〜90%RHの雰囲気下を、10〜60秒かけて通過させることで多孔質膜Bを形成させることを特徴とする複合多孔質膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−125821(P2007−125821A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321249(P2005−321249)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】