説明

複合式容器

【課題】
生ビールや清涼飲料等の冷たい飲料を充填した場合において、雰囲気温度が高くても内部の温度が急激に上昇しないようにし、これによって美味な状態を長時間にわたって維持できるようにした複合式容器を提供することである。
【解決手段】
内側容器11と外側容器12とを、それらの底部側の胴の部分において内側容器11の円弧状凹部17を外側容器12の円弧状凸部18に凹凸嵌合して組合わせる。そして上部に蓋体20を装着し、その嵌着部21、22に内側容器11と外側容器12の開口縁部を嵌合させる。蓋体20のつまみ26を引張って切断誘導部25のところで蓋片28を開封し、注出口30を通して中の飲料を飲む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合式容器に係り、とくに内側容器と外側容器とを組合わせた複合式容器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の飲料を飲むための軽便な容器として、簡易容器が広く用いられている。簡易容器は一般に紙や合成樹脂によって形成され、ほぼカップ状をなす容器である。このような容器内に清涼飲料やビール等を注入して飲むようにしている。
【0003】
このような簡易式容器の欠点は、雰囲気温度が高い場合に、内部の飲料の温度が上昇してしまうことである。すなわち清涼飲料やビール等を注入し、ゆっくりと飲む場合には、後になるほど中の飲料の温度が上昇することになる。
【0004】
一般に清涼飲料はその温度が高くなるとまずくなる。またビールの場合には、6℃の状態が最も好ましい温度とされており、その温度よりも高くなるとビールの味わいが低下する問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の課題は、雰囲気温度が高くても、内部の飲料の温度が上昇しないようにした複合式容器を提供することである。
【0006】
本願発明の別の課題は、雰囲気温度によって内部の温度が上昇して飲料がまずくなるのを防止するようにした複合式容器を提供することである。
【0007】
本願発明の別の課題は、ビールを注入した場合に、最適な風味を得る温度に比較的長い時間維持できるようにした複合式容器を提供することである。
【0008】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術思想およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の主要な発明は、その中に飲料が入る内側容器と、
前記内側容器の外側に組合わされ、かつ前記内側容器の胴の外周面との間に所定の空間を形成する外側容器と、
前記内側容器と前記外側容器の上部開口を閉じるように嵌着される蓋体と、
を備え、前記蓋体の一部を破断して形成される注出口を通して内部の飲料を飲むようにしたことを特徴とする複合式容器に関するものである。
【0010】
ここで前記蓋体の内側に同心円状に一対の嵌着部が形成され、中心側の嵌着部に内側容器の開口の周縁部が嵌着され、外周側の嵌着部に外側容器の開口の周縁部が嵌着されてよい。また前記蓋体の主面に薄肉の切断誘導部を介してつまみを有する蓋片が一体に連設されるとともに、前記切断誘導部を破断すると前記蓋片が前記切断誘導部が欠如する部位に形成されたヒンジによって開閉自在に開封されてよい。また前記ヒンジが側端となるように前記蓋体の主面に凹部が形成され、前記切断誘導部を破断して前記蓋体を開封し、前記ヒンジを中心として前記蓋片を回動させて前記凹部内に押込むとともに、該凹部に形成される係止部によって前記蓋片を係止してよい。また前記内側容器の胴の下端の外周面に形成される凹部に対して前記外側容器の胴の下端の内周面に形成される凸部が凹凸嵌合されてよい。また内部に入る飲料がビールであってよい。
【0011】
本願の別の主要な発明は、その中に飲料が入る内側容器と、
前記内側容器の外側に組合わされ、かつ前記内側容器の胴の外周面との間に所定の空間を形成する外側容器と、
前記内側容器の上部開口を閉じるように嵌着される内蓋と、
前記内蓋を覆って前記外側容器の上部開口を閉じるように嵌着される外蓋と、
を備え、前記内蓋に形成される注出口を通して内部の飲料を飲むようにしたことを特徴とする複合式容器に関するものである。
【0012】
ここで前記内蓋の注出口が十字状の切込みであってよい。また前記外蓋がドーム状をなし、前記内側容器に嵌着された内蓋を上から押えるようにしてよい。
【発明の効果】
【0013】
本願の主要な発明は、その中に飲料が入る内側容器と、内側容器の外側に組合わされ、かつ内側容器の胴の外周面との間に所定の空間を形成する外側容器と、内側容器と外側容器の上部開口を閉じるように嵌着される蓋体と、を備え、蓋体の一部を破断して形成される注出口を通して内部の飲料を飲むようにしたものである。
【0014】
従ってこのような複合式容器によれば、内側容器の胴の外周側であって外側容器との間に形成される空間によってこの容器に断熱性が付与され、内部の飲料の温度と雰囲気温度との間に差があっても、熱の移動が起り難くなる。よって冷たい飲料を中に注入した場合には、雰囲気温度が高くても内部の温度が上昇し難くなり、これによって飲料を美味な状態で比較的長時間にわたって維持できるようになる。
【0015】
本願の別の主要な発明は、その中に飲料が入る内側容器と、内側容器の外側に組合わされ、かつ内側容器の胴の外周面との間に所定の空間を形成する外側容器と、内側容器の上部開口を閉じるように嵌着される内蓋と、内蓋を覆って外側容器の上部開口を閉じるように嵌着される外蓋と、を備え、内蓋に形成される注出口を通して内部の飲料を飲むようにしたものである。
【0016】
従ってこのような複合式容器によれば、内側容器と外側容器との間に形成される空間によってこの複合式容器に断熱性が付与され、内部に入っている飲料の温度が変化し難くなる。なお飲料は内側容器の内蓋の注出口を通して飲むか、内側容器の蓋体を取外して飲むことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3は本発明の第1の実施の形態の複合式容器のほぼ全体の構成を示すものであって、この容器は内側容器11と外側容器12とから構成される。内側容器11は例えばポリスチレンによってほぼカップ状に成形され、上端が上部開口13によって開放されている。また外側容器12は、例えばポリエチレンテレフタレートによってほぼカップ状に成形されるとともに、上端が上部開口14によって開放されている。
【0018】
これら一対の容器11、12はとくに図3に示すように、それらの胴の間に空間15が形成された状態で互いに組合わされるようになっている。すなわち内側容器11と外側容器12とはそれらの下端において互いに凹凸嵌合される。内側容器11の胴の下端の外周面には図4に示すように円弧状凹部17が形成されるとともに、外側容器12の胴の下端の内周面には円弧状凸部18が形成され、これらが互いに凹凸嵌合することによって、内側容器11と外側容器12とはそれらの下端において互いに嵌着されている。
【0019】
これら一対の容器11、12から成る複合式容器は、その上端に蓋体20が装着されるようになっている。蓋体20は例えばポリエチレンによってほぼ皿状に成形され、その下面であって内側には同心円状に一対の周溝から成る嵌着部21、22が形成される。中心側の嵌着部21は内側容器11の上部開口13の周縁部に嵌着され、外周側の嵌着部22は外側容器12の上部開口14の周縁部に嵌着され、これによって内側容器11と外側容器12から成る組立て式容器が閉じた状態で維持される。
【0020】
上記蓋体20の主面にはとくに図1および図2に示すように、ほぼU字状に薄肉の切断誘導部25が形成される。そしてこの切断誘導部25の内側の部分にはつまみ26が連結部27を介して連設されている。そしてこのようなつまみ26を有する切断誘導部25の内側の領域が蓋片28を構成している。上記切断誘導部25によって囲まれる蓋片28の基端側はヒンジ部29になっている。従って切断誘導部25のところで破断して蓋片28をヒンジ部29を中心として図5に示すように外側に回動させると、蓋体20の主面に注出口30が形成される。
【0021】
これに対して上記蓋片28を構成する切断誘導部25の側部には凹部32が形成される。この凹部32は上記蓋片28を開いた状態で保持するためのものであって、その対向する両側にそれぞれ係止用リブ33が形成されている。
【0022】
次に以上のような構成になるこの複合式容器の使用方法について説明する。内側容器11と外側容器12とをそれらの下端において、図4に示すように円弧状凹部17と円弧状凸部18とを組合わせて図3に示すように両者の間に空間15が形成されるように組合わせる。そしてその内部に所定の飲料、例えば生ビールや清涼飲料水を注入する。そして所定量の生ビールあるいは清涼飲料水を注入したならば、その後に蓋体20を上部に嵌着する。このときに蓋体20の一対の嵌着部21、22がそれぞれ内側容器11と外側容器12の上部開口13、14の周縁部に係合し、これによってこの内側容器11と外側容器12の上部開口が閉塞される。また2つの容器11、12間の空間15もその上端が蓋体20の外周側の部分によって閉塞され、雰囲気大気との間での連通が遮断状態になる。
【0023】
次にこのような容器内に注入された生ビールや清涼飲料等を飲む場合には、図5に示すように、蓋体20のつまみ26を上方に引張ることによって、蓋体20の主面の切断誘導部25を破断し、蓋片28をヒンジ部29を中心として上方へ回動させる。そしてこの後に図6に示すように、さらに蓋片28をヒンジ部29を中心として最初の状態よりも180度回動させ、この蓋片28を蓋体20の主面の凹部32内に挿入し、蓋片28の両側を係止用リブ33によって係止する。これによって注出口30が開放された状態になる。
【0024】
従ってこのような開放された注出口30を通して直接、あるいはストローによって中の飲料を飲むことができる。例えば生ビールの場合にはこの容器を傾けながら、注出口30から直接注出して飲むことになる。これに対して清涼飲料の場合には、注出口30内にストロー等を投入して飲めばよい。
【0025】
このような複合式容器の特徴は、表1に示すように、内部の温度が変化しないことである。最初の温度が1℃の生ビールをこの容器内に入れて、液量の2/3の高さおよび液量の1/3の高さの部分における温度変化を調べたところ、30分を過ぎても7.4℃および7.6℃までしか上昇しないことが判明した。また内側容器11と外側容器12との間の空間15に氷を入れた状態で同様の測定を行なったところ、液量の1/3の高さおよび液量の2/3の高さにおける30分後の温度は4.4℃であって、ほとんど温度上昇が見られず、飲料を冷たい状態で維持できることが確認された。
【0026】
【表1】

【0027】
次に第2の実施の形態を図7〜図10によって説明する。本実施の形態の複合式容器は、内側容器11と外側容器12とから構成される。これらの容器11、12はそれらの上部にそれぞれ上部開口13、14を備えている。そして内側容器11と外側容器12との胴の部分の間には空間15が形成され、この空間15によって複合式容器に断熱性が付与される。なお内側容器11と外側容器12との間の底部における結合構造は、上記第1の実施の形態と同様なのでその説明を省略する。
【0028】
内側容器11の上部開口を閉塞するように内蓋41が設けられ、外側容器12の上部を閉じるように外蓋42が設けられる。ここでとくに内蓋41はその上面であって外周部にリング状突部43を備えるとともに、リング状突部43はその周方向の所定の位置に傾斜部44が設けられ、この傾斜部44の終端側が高い領域45になっている。そして内蓋41の中心部には中心側凹部46が形成され、この中心側凹部46に十字状切込み47が形成される。また内蓋41はその外周部が図9に示すようにリング状をなす溝から成る嵌着部48に構成され、この嵌着部48が上記内側容器11の開口13の周縁部に係合して内側容器11に装着されるようになっている。
【0029】
これに対して外側容器12の上部開口を閉じる外蓋42は図7〜図9に示すようにほぼドーム状をなし、この外蓋42によって内側容器11に取付けられる内蓋41の上部を外側から押えるようにしている。そして外蓋42にはその頂面に円形の平坦部52が形成されるとともに、外周部には段部から成る嵌着部53が形成され、この嵌着部53が外側容器12の上部開口14のエッジの部分に係合して外側容器12の上部開口14を閉塞するようになっている。
【0030】
このような内側容器11と外側容器12とから成る複合式容器においても、両者の間にはその胴の部分に空間15が形成されるために、この容器に断熱性が付与される。従ってとくに冷却したビールや清涼飲料等を中に入れた場合には、上記空間15の断熱性によって内部の飲料の温度が上昇することが防止され、長時間にわたって適温に維持できるようになる。
【0031】
内部の飲料を飲む場合には、図10に示すように、外側容器12の上部開口14を閉塞する外蓋42を取外す。そして外蓋42のリング状突部43の中心部に形成されている中心側凹部46の十字状の切込み47にストローを投入して飲めばよい。また必要であれば内側容器11の上部開口13を閉じている内蓋41を取外し、内側容器11の上部開口13を通して直接内部の飲料を飲むことができる。
【0032】
なお内側容器11の内部にビールや炭酸飲料を入れた場合には、飲料に溶存する炭酸等が気化して内側容器11の内圧が増加する。ところがこのようなガスは内蓋41の中心側凹部46に形成されている十字状切込み47を通して抜くことができる。なお外蓋42はその嵌着部53の部分で外側容器12との間に隙間が存在する。従ってビールや清涼飲料のようなガスを発生させる飲料を入れた場合であっても、内蓋41や外蓋42がガスの圧力によって外れる不具合はない。
【0033】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想の範囲内で各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態は生ビール用の複合式容器に関するものであるが、本願発明はその他各種の複合式容器に広く適用可能である。また上記実施の形態における内側容器11、外側容器12、および蓋体20の材料については、各種の材料に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願発明に係る複合式容器は、生ビールや清涼飲料等の各種の冷たい飲料の容器として広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】複合式容器の全体の分解斜視図である。
【図2】同容器の平面図である。
【図3】図2におけるA〜A線縦断面図である。
【図4】図3におけるB〜B線横断面図である。
【図5】蓋片を途中まで開封した状態の斜視図である。
【図6】蓋片を完全に開封して凹部32内に係止した状態の斜視図である。
【図7】第2の実施の形態の複合式容器の全体の分解斜視図である。
【図8】同容器の平面図である。
【図9】図8におけるC〜C線断面図である。
【図10】外蓋を取外した状態のこの容器の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
11 内側容器
12 外側容器
13 上部開口
14 上部開口
15 空間
17 円弧状凹部
18 円弧状凸部
20 蓋体
21 嵌着部(周溝)
22 嵌着部(周溝)
25 切断誘導部
26 つまみ
27 連結部
28 蓋片
29 ヒンジ部
30 注出口
32 凹部
33 係止用リブ
41 内蓋
42 外蓋
43 リング状突部
44 傾斜部
45 高い領域
46 中心側凹部
47 十字状切込み
48 嵌着部
52 平坦部
53 嵌着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中に飲料が入る内側容器と、
前記内側容器の外側に組合わされ、かつ前記内側容器の胴の外周面との間に所定の空間を形成する外側容器と、
前記内側容器と前記外側容器の上部開口を閉じるように嵌着される蓋体と、
を備え、前記蓋体の一部を破断して形成される注出口を通して内部の飲料を飲むようにしたことを特徴とする複合式容器。
【請求項2】
前記蓋体の内側に同心円状に一対の嵌着部が形成され、中心側の嵌着部に内側容器の開口の周縁部が嵌着され、外周側の嵌着部に外側容器の開口の周縁部が嵌着されることを特徴とする請求項1に記載の複合式容器。
【請求項3】
前記蓋体の主面に薄肉の切断誘導部を介してつまみを有する蓋片が一体に連設されるとともに、前記切断誘導部を破断すると前記蓋片が前記切断誘導部が欠如する部位に形成されたヒンジによって開閉自在に開封されることを特徴とする請求項2に記載の複合式容器。
【請求項4】
前記ヒンジが側端となるように前記蓋体の主面に凹部が形成され、前記切断誘導部を破断して前記蓋体を開封し、前記ヒンジを中心として前記蓋片を回動させて前記凹部内に押込むとともに、該凹部に形成される係止部によって前記蓋片を係止することを特徴とする請求項3に記載の複合式容器。
【請求項5】
前記内側容器の胴の下端の外周面に形成される凹部に対して前記外側容器の胴の下端の内周面に形成される凸部が凹凸嵌合されることを特徴とする請求項1に記載の複合式容器。
【請求項6】
内部に入る飲料がビールであることを特徴とする請求項1に記載の複合式容器。
【請求項7】
その中に飲料が入る内側容器と、
前記内側容器の外側に組合わされ、かつ前記内側容器の胴の外周面との間に所定の空間を形成する外側容器と、
前記内側容器の上部開口を閉じるように嵌着される内蓋と、
前記内蓋を覆って前記外側容器の上部開口を閉じるように嵌着される外蓋と、
を備え、前記内蓋に形成される注出口を通して内部の飲料を飲むようにしたことを特徴とする複合式容器。
【請求項8】
前記内蓋の注出口が十字状の切込みであることを特徴とする請求項7に記載の複合式容器。
【請求項9】
前記外蓋がドーム状をなし、前記内側容器に嵌着された内蓋を上から押えることを特徴とする請求項7に記載の複合式容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−151500(P2006−151500A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349156(P2004−349156)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(599048638)CBC株式会社 (9)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】