説明

複合成形体

【課題】 2以上の樹脂成形体からなる、接合強度の高い複合成形体の提供。
【解決手段】 ポリオレフィン、セルロース繊維及び必要に応じて着色料を含む第1樹脂成形体と、前記ポリオレフィンを除く熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂及び必要に応じて着色料を含む第2樹脂成形体とが接合された複合成形体。前記第1樹脂成形体に含まれるポリオレフィンは、環状ポリオレフィン又はその共重合体を除くものが好ましく、前記第2樹脂成形体に含まれるポリオレフィンを除く熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、環状ポリオレフィン又はその共重合体から選ばれるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの樹脂成形体を接合して得られる複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形体の接合方法として汎用されている、超音波溶着法、熱板工法、接着工法、ネジ止め工法等が有する問題点を解消する方法として、レーザー溶着法が注目されている。レーザー溶着法を適用した場合、接合しようとする2つの樹脂成形体の色が異なる場合にしか適用できないとの問題があり(特許文献1)、この問題を解決するものとして、特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献2には、第一樹脂部材と第二樹脂部材とをレーザー光で溶着する技術が開示されており、実施例では、汎用されている染料及びカーボンブラックを用いて着色された、黒色同士の樹脂部材を溶着する方法が開示されている。
【0004】
しかし、第一樹脂部材は、照射されるレーザー光に対して95%以上の透過率を有することが好ましいと記載され、第二樹脂部材は、レーザー光に対して十分な吸収性を示す樹脂であり、無機又は有機物よりなるフィラー等を配合できることが記載されている。このように、高いレーザー光透過率を維持するため、第一樹脂部材には無機及び有機充填剤等を配合できないことが、幅広い用途への適用を制限する要因になっている。
【特許文献1】特公昭62−49850号公報
【特許文献2】特開2001−71384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したレーザー溶着法における問題点、即ち第一樹脂部材には無機及び有機充填剤等を配合できないという問題点を解消すると共に、レーザー溶着法を含む複数の溶着法を適用して得ることができる複合成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題の解決手段として、ポリオレフィン、セルロース繊維及び必要に応じて着色料を含む第1樹脂成形体と、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂及び必要に応じて着色料を含む第2樹脂成形体とが接合された複合成形体を提供する。
【0007】
本発明における「接合」は、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体が、接触部分において一体化されていることをいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合成形体は、複数の溶着法から選択される方法で得られるものであり、2以上の成形体が高い接合強度で一体化されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の複合成形体は、1又は2以上の第1樹脂成形体と1又は2以上の第2樹脂成形体が接合された二次成形体、2以上の前記二次成形体が部分的に接合された三次成形体や、二次成形体と第1樹脂成形体及び/又は第2樹脂成形体が部分的に接合された三次成形体等を含むものである。
【0010】
<レーザー溶着法により接合された複合成形体>
本発明の複合成形体が、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体がレーザー溶着法により接合されたものであるとき、いずれか一方の成形体が「レーザー光透過性」及び「レーザー光吸収性」となる。
【0011】
本発明において、「レーザー光透過性」及び「レーザー光吸収性」とは、2つの成形体がレーザー溶着できる関係にあることを意味するもので、例えば、実施例に記載の方法により求められるレーザー光の透過率(%)が10%以上のものを「レーザー光透過性」といい、レーザー光の透過率(%)が10%より小さい(好ましくは10%よりも十分に小さく、より好ましくはレーザー光透過率0%)のものを「レーザー光吸収性」という。
【0012】
(第1樹脂成形体)
第1樹脂成形体は、ポリオレフィン、セルロース繊維及び必要に応じて着色料や公知の各種添加剤を含む所望形状のものであり、「レーザー光透過性」でも、「レーザー光吸収性」でもよい。
【0013】
ポリオレフィンは特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン(COP)又はその共重合体(COC)等の公知のものを用いることができるが、本発明ではポリプロピレンが好ましい。
【0014】
ポリプロピレンはホモポリマーが好ましいが、エチレンのような他のオレフィン単量体、(メタ)アクリル酸エステル等のその他の単量体との共重合体でもよい。共重合体にするときは、ポリプロピレン以外の単量体の使用量(原料基準)が50質量%未満であることが好ましい。
【0015】
第1樹脂成形体は、ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂を含んでもよいが、ポリオレフィンの含有量は10質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0016】
他の熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂(ホモポリマー、AS樹脂等)、ゴム含有スチレン系樹脂(ABS樹脂、AES樹脂、ABSM樹脂、AAS樹脂、HIPS等)、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、非結晶(透明)ナイロン、液晶ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等を挙げることができる。
【0017】
セルロース繊維は、αセルロースの含有率が80%以上のものが好ましく、より好ましくは85%以上のものである。αセルロースの含有率が80%以上のセルロース繊維を用いた場合は、例えばαセルロースの含有率が80%未満であるケナフ繊維やジュート繊維を用いた場合と比べて、熱安定性が良いため、成形体を得るときに金型中にデポジット(繊維の付着物)が生じることが殆どなく、成形品の着色も殆どないので好ましい。
【0018】
セルロース繊維の平均繊維径は、好ましくは0.1〜1000μm、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは10〜50μm、特に好ましくは20〜30μmである。
【0019】
セルロース繊維の平均長さは、好ましくは0.1〜1000mm、より好ましくは0.2〜500mm、更に好ましくは0.3〜50mm、特に好ましくは0.5〜5mmである。
【0020】
第1樹脂成形体中のセルロース繊維の含有量は、3〜90質量%が好ましく、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜70質量%である。
【0021】
第1樹脂成形体を得る場合、熱可塑性樹脂中へのセルロース繊維の分散性が重要となる。この分散性が十分でない場合には、成形体表面に、いわゆる「ホワイトスポット」を称される大きめのセルロース繊維塊が点在して外観を損なう要因となる。この「ホワイトスポット」の発生は、一般的な2軸押出機では十分な解決ができない。
【0022】
本発明では、このような「ホワイトスポット」の発生を抑制するため、第1樹脂成形体は、ポリオレフィンとセルロース繊維を混合する際、セルロース繊維を解繊し、ポリオレフィンに分散させた後、成形して得る方法を適用する。なお、解繊し、分散させる場合、解繊した後に分散させる方法と、解繊と分散を並行して行う方法が含まれる。次に、この方法(解繊及び分散方法)の好ましい実施形態を説明する。
【0023】
(方法1)
ポリオレフィン及びセルロース繊維を上記比率範囲で使用し(望ましくは予め予備混合する)、これらをヘンシェルミキサー(例えば、三井鉱山社製、ヒーター付き)に投入し、攪拌しながら加温する。このときの条件は次のとおりである。
【0024】
混合槽容量20Lのミキサー内に、ポリオレフィン及びセルロース繊維の合計1000〜3000gを投入し、使用した樹脂の溶融温度近傍にて、周速10〜50m/secで、10〜30分間混練する。
【0025】
(方法2)
ポリオレフィン及びセルロース繊維を予備混合したもの50kgを、2軸高混練型押出機〔例えば、シーティーイー社製,HTM65,スクリュー径65mm、ホットカット(水中)カット付き〕に投入し、使用した樹脂の溶融温度近傍にて、スクリュー回転数200〜800r/mで溶融混練する。
【0026】
このような解繊及び分散方法を適用して第1樹脂成形体を得ることにより、外観が美しく、「ホワイトスポット」の発生が抑制された成形体を得ることができる。本発明では、第1樹脂成形体において、成形体表面の50cm当たり、最大径又は最大長さが1mm以上の未解繊又は解繊されたセルロース繊維の塊の数は10個以下にすることが好ましく、5個以下にすることがより好ましい。最大径とは、球の場合には直径を意味し、楕円の場合には長径を意味し、不定形の場合には最大長さを意味する。
【0027】
第1樹脂成形体には、添加剤として無機充填剤を配合することができるが、第1樹脂成形体を「レーザー光透過性」にするときは、レーザー光透過性を損なわせないため、ポリプロピレンの屈折率(ホモポリマーの屈折率1.49)と近いものを使用することが好ましく、屈折率が1.4〜1.7のものが好ましく、屈折率が1.45〜1.55のものがより好ましい。
【0028】
このような無機充填剤としては、タルク(屈折率1.54〜1.59)、マイカ(屈折率1.55〜1.59)、重炭酸カルシウム(屈折率1.47〜1.69)、軽炭酸カルシウム(屈折率1.47〜1.69)、ガラス繊維(屈折率1.46〜1.56)、ガラスフレーク(屈折率1.46〜1.56)、ガラスビーズ(屈折率1.46〜1.56)、ウォラストナイト(屈折率1.63)、硫酸バリウム(屈折率1.64〜1.65)、アルミナ(屈折率1.56)、水酸化マグネシウム(屈折率1.54)、ベントナイト(屈折率1.52)、硫酸カルシウム(2水塩)(屈折率1.52〜1.53)、塩基性炭酸マグネシウム(屈折率1.50〜1.53)、含水ケイ酸カルシウム(屈折率1.47〜1.50)、湿式法ホワイトカーボン(屈折率1.44〜1.50)から選ばれる1又は2以上のものが好ましい。
【0029】
無機充填剤は、粒状、繊維状、フレーク状等の不定形のものを用いることができる。粒状のものを用いるとき、平均粒径は0.01〜100μmのものが好ましい。繊維状のものを用いるとき、直径0.1〜100μm、長さ1〜100μmのものが好ましい。フレーク状のものを用いるとき、最大長さが5000μm以下であるものが好ましい。
【0030】
第1形成体には着色料を配合することができるが、「レーザー光透過性」にするか、「レーザー光吸収性」にするかにより、種類や配合量を選択調整する。着色料としては、カーボンブラック、無機顔料、有機顔料、染料等を挙げることができる。
【0031】
着色料の配合量は、接合後の成形体の用途、レーザー光の透過率等との関連において決定されるものであるが、ポリオレフィン100質量部にして、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部、更に好ましくは0.05〜5質量部である。
【0032】
(第2樹脂成形体)
第2樹脂成形体は、第1樹脂成形体に含まれるポリオレフィンを除く熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂及び必要に応じて着色料や公知の樹脂添加剤を含む所望形状のものであり、「レーザー光透過性」でも、「レーザー光吸収性」でもよい。
【0033】
第2樹脂成形体に含まれるポリオレフィンを除く熱可塑性樹脂は、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミドから選ばれるものが好ましい。スチレン系樹脂は、ホモポリマー、AS樹脂等、ゴム含有スチレン系樹脂(ABS樹脂、AES樹脂、ABSM樹脂、AAS樹脂、HIPS等)から選択することができ、ABS樹脂が特に好ましい。
【0034】
第1樹脂成形体に含まれるポリオレフィンが、環状ポリオレフィン(COP)又はその共重合体(COC)を含まないときは、第2樹脂成形体の熱可塑性樹脂として、環状ポリオレフィン又はその共重合体を用いることができる。
【0035】
第2樹脂成形体は、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂以外の熱可塑性樹脂(上記した熱可塑性樹脂群から選択することができる)を含んでもよい。
【0036】
第2樹脂成形体は、第1樹脂成形体と同様にしてセルロース繊維を配合することができるほか、「レーザー光透過性」にするか、「レーザー光吸収性」にするかにより、第1樹脂成形体と同様にして無機充填剤、着色料を配合することができる。第1樹脂成形体と第2樹脂成形体に含まれる着色料は同色であることが好ましいが、黒色である必要はなく、黒色以外の組み合わせも用途に合わせて使用することができる。
【0037】
第1樹脂成形体及び/又は第2樹脂成形体には、必要に応じて助色剤、分散剤、安定剤、可塑剤、改質剤、紫外線吸収剤又は光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、及び耐衝撃性改良用のエラストマー等を配合することができる。
【0038】
(レーザー溶着法)
重ね合わせた第1樹脂成形体と第2樹脂成形体の接触部分に対して、「レーザー光透過性」である成形体側からレーザー光を照射して、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体とを、それらの接触面において溶着させる。
【0039】
本発明で用いるレーザーとしては、800〜1200nmに発振波長を有するものを用いることができ、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザー等の公知のレーザーを適用できる。これらのレーザーの出力は、5〜30W程度で十分であるが、厚い成形体を接合する場合には、より高い出力のものを用いることができる。
【0040】
レーザーの照射時間及びレーザーと被照射体(第1樹脂成形体と第2樹脂成形体)との間隔は、レーザーの出力、成形体の厚み、成形体のレーザー透過率等を考慮して調整する。
【0041】
次に、レーザー溶着法を適用したときの接合機構について説明する。第1樹脂成形体と第2樹脂成形体とを重ね合わせた状態で、「レーザー光透過性」である成形体からレーザー光を照射すると、レーザー光は「レーザー光透過性」である成形体を通過した後、「レーザー光吸収性」である成形体の表面に到達する。
【0042】
このとき、「レーザー光透過性」である成形体において「ホワイトスポット」の発生が抑制されている場合は、レーザー光の透過率が安定しており(成形体内におけるレーザー光の透過率のバラツキが小さい)、レーザー出力の高低による依存性も小さくできる。
【0043】
レーザー光は、「レーザー光吸収性」である成形体中を透過せずに、2つの成形体の界面にエネルギーとして滞留する。その結果、2つの成形体の界面で温度上昇に伴う溶融が生じるため、両成形体が強固に接合される。
【0044】
特に「レーザー光透過性」である成形体において「ホワイトスポット」の発生が抑制されているときは、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体の接触面に多数の「ホワイトスポット」が存在する(10個/50cmを超える数)場合と比べると、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体のレーザー照射前の密着度合いが高められるため、レーザー照射で容易に溶着され、かつ溶着強度も高められるものと考えられる。
【0045】
そして、第1樹脂成形体には、セルロース繊維が配合されており、「ホワイトスポット」の発生が抑制されているので、外観が美しく、機械的強度等の性質を付与調節することができるので、より広い分野への様々な用途への適用ができるようになる。
【0046】
<熱板溶着又は接着剤による溶着法により接合された複合成形体>
熱板溶着又は接着剤を適用して第1樹脂成形体と第2樹脂成形体を接合するときは、レーザー溶着法を適用して接合する場合のように、2つの「レーザー光透過性」及び「レーザー光吸収性」を付与するは必要ないため、光透過性との関連からの添加成分の種類及び配合量は制限されない。
【0047】
接着剤による溶着法は、公知の熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤、ゴム系接着剤、その他の接着剤を用いることができる。
【0048】
熱可塑性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル系接着剤、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、塩素化ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、プラスチゾル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ナイロン、飽和無定形ポリエステル、セルロース誘導体を挙げることができる。
【0049】
熱硬化性接着剤としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0050】
ゴム系接着剤としては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、ポリイソブチレン−ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンRTV、塩化ゴム、臭化ゴム、クラフトゴム、ブロック共重合体、液状ゴムを挙げることができる。
【0051】
その他の接着剤としては、瞬間接着剤、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤、ポリマーアロイ型接着剤、ポリイミド系接着剤、無機接着剤を挙げることができる。
【実施例】
【0052】
(第1樹脂成形体)
・ポリプロピレン:PMB60A(サンアロマー社製)
・セルロース繊維:溶解パルプNDT-T(日本製紙社製)のシートを、シュレッダーを用いて5mm角のチップにしたものを用いた(平均繊維径20〜40μm,αセルロース含有量91%)。
・酸変性ポリプロピレン:ユーメックス1010(三洋化成工業社製)
・微結晶セルロース:VIVAPUR 101(リバソン社製)
・ガラス繊維:T480(日本電気硝子社製)
(第2樹脂成形体)
・PBT:500FP(ウィンテックポリマー社製)
・PC:S2000(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
・ABS:500(ダイセルポリマー社製)
・PMMA:アクリペットVH001(三菱レイヨン社製)
・COC:Topas6013(ポリプラスチックス社製)
・GPPS:トーヨースチロールG100(東洋スチレン社製)
・HIPS:トーヨースチロールH650(東洋スチレン社製)
・PE:ハイゼックス1300J(プライムポリマー社製)
・カーボンブラック:A1−1000(大日本インキ化学工業社製)
(レーザー光透過率の測定法)
成形体に対して垂直方向からレーザー光を照射(波長1064nm,YAGレーザー,出力1.5W)(レーザーマーカー,NEC製,マーカーエンジンSL475H)したときにおいて、成形体を通過したレーザー光と成形体を置かない場合のレーザー光をレーザーパワーメーター(COHERENT製,LASERMATE10)により受け、レーザーパワーメーターに連結したテスターにより電圧(V)を測定して、電圧をレーザー光の強度とし、下記式より求めた。
【0053】
レーザー光の透過率(%)=〔成形体を透過したレーザー光の強度(V)/成形体に照射したレーザー光の強度(V)〕×100
実施例、比較例
表1〜表3に示す成分(カーボンブラック以外は質量%表示で、カーボンブラックは他の成分の合計100質量部に対する質量部表示)を用いて、下記の方法により原料ペレットを得た。
【0054】
<溶融混練方法等>
三井鉱山社製のヘンシェルミキサー(ヒーター付き,容量20L)に原料成分(第1樹脂成形体の原料成分)を合計で2000g投入し、140℃に加温した状態で、3000r/mで20分間攪拌した。
【0055】
第1樹脂成形体は、ポリプロピレンが溶融し始めたとき、連結する別のミキサー(クーラーミキサー)に排出し、冷却しながら攪拌して、ポリプロピレンとセルロース繊維からなる造粒物(直径約1cm)を得た。この造粒物を、ホットカット(水中)付きの単軸押出機(スクリュー径40mm、フルフライト型スクリュー使用)で押し出し(ガラス繊維は、混練途中から添加した)、ペレット化した。
【0056】
第2樹脂成形体は、原料成分を、ホットカット(水中)付きの単軸押出機(スクリュー径40mm、フルフライト型スクリュー使用)で押し出し、ペレット化した。
【0057】
<第1樹脂成形体又は第2樹脂成形体の製造>
次に、各原料ペレットを用い、80℃で4時間、熱風乾燥した後、射出成形(住友重機社製、SH100、シリンダー温度200℃)により、図1に示す寸法及び形状の2段板状成形体(第1樹脂成形体1と第2樹脂成形体2)を得た。これらの第1樹脂成形体1と第2樹脂成形体2を用い、下記の方法にて、レーザー溶着又は接着剤による溶着をして、複合成形体を得た。
【0058】
(レーザー溶着)
第1樹脂成形体1と第2樹脂成形体2を図2に示すようにして組み合わせた状態(実施例1〜20、41〜60の場合。実施例21〜40では、第1樹脂成形体1が下で、第2樹脂成形体2が上になる。)で、クランプや支持部材(図示せず)で固定した後、接触部分に対して垂直方向(図中の矢印方向)より、ファインデバイス社製のレーザー溶着機FD200(半導体レーザー)を用い、10mm/secでレーザー光(出力40W、60W、80W)を照射した。レーザーのスポット径は0.6mmであり、レーザー光で直径1cmの円を描くように照射した。
【0059】
その後、オリエンテック社製 引張試験機 テンシロンUTC-1Tを用いチャック間距離80mm及びヘッド速度5mm/分の条件で第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の其々を接合部を中心に外側に引っ張ることにより、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体の接合強度を測定し、下記の基準で評価した。
【0060】
○:第1樹脂成形体と第2樹脂成形体が容易に外れない(接合強度500N以上)
△:接合強度は劣るが、接合できている(接合強度100〜500N未満)
×:接合できない(接合強度100N未満)
(接着剤による溶着)
図3に示すように、第2樹脂成形体2側(又は第1樹脂成形体1側でもよい)に約10mg/cmの塗布量の接着剤を塗布した後、図1に示すようにして第1樹脂成形体1(又は第2樹脂成形体2)と組み合わせた状態で平面板上に置き、接着部分に対して垂直方向(図中の矢印方向)より 0.5Nの荷重を加えた状態にて、約24時間放置した。その後、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体の接合強度を上記と同様にして測定し、下記の基準で評価した。
【0061】
○:第1樹脂成形体と第2樹脂成形体が容易に外れない(接合強度500N以上)
△:接合強度は劣るが、接合できている(接合強度100〜500N未満)
×:接合できない(接合強度100N未満)
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
実施例の第1樹脂成形体と第2樹脂成形体の接合強度は、第1樹脂成形体中にセルロース繊維が均一に分散された状態にて含有されているため、接合方法にかかわらず、高いものであった。
【0066】
また、実施例の樹脂成形体の片面(面積50cm)を、拡大鏡(10倍)を使用して、直径1mm以上の繊維塊(ホワイトスポット)の個数を数えたところ、いずれも0個又は最大でも10個以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例で使用する第1樹脂成形体と第2樹脂成形体の斜視図。
【図2】第1樹脂成形体と第2樹脂成形体のレーザー溶着による接合方法の説明図。
【図3】第1樹脂成形体と第2樹脂成形体の接着剤による接合方法の説明図。
【符号の説明】
【0068】
1 第1樹脂成形体
2 第2樹脂成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン、セルロース繊維及び必要に応じて着色料を含む第1樹脂成形体と、前記ポリオレフィンを除く熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂及び必要に応じて着色料を含む第2樹脂成形体とが接合された複合成形体。
【請求項2】
前記第1樹脂成形体に含まれるポリオレフィンが、環状ポリオレフィン又はその共重合体を除くものであり、前記第2樹脂成形体に含まれるポリオレフィンを除く熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、環状ポリオレフィン又はその共重合体から選ばれるものである、請求項1記載の複合成形体。
【請求項3】
第1樹脂成形体中、セルロース繊維の含有量が3〜90質量%である、請求項1又は2記載の複合成形体。
【請求項4】
第1樹脂成形体中、ポリオレフィンがポリプロピレンである、請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形体。
【請求項5】
第1樹脂成形体と第2樹脂成形体のいずれか一方がレーザー光透過性で他方がレーザー光吸収性で、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体がレーザー溶着法で接合されたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の複合成形体。
【請求項6】
第1樹脂成形体と第2樹脂成形体が熱板溶着又は接着剤による溶着法で接合されたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の複合成形体。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−168163(P2007−168163A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366253(P2005−366253)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】