説明

複合成形体

【課題】 耐薬品性、耐摺動性、耐熱性等が求められる分野に適用できる複合成形体の提供。
【解決手段】 複合成形体1は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む成形体2の一面2aにポリアミド樹脂を含む層3を有している。ポリアミド樹脂を含む層3は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリアミド樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点以上で熱融着されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐薬品性、耐摺動性、耐熱性、難燃性等が求められる分野に適用できる複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる成形体を工業部品として利用する場合、用途に応じて要求される様々な特性に応じた適切な樹脂を選択する必要がある。機構部品のように高度な耐摺動性や耐薬品性が要求される分野では、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が選択されることがある。ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、いわゆるスーパーエンジニアリング・プラスチックと称される材料に属するもので、耐摺動性や耐薬品性が優れているが、加工温度が非常に高いため(融点334℃)、適用できる範囲が限られていた。
【0003】
機構部品に要求される耐摺動性や耐薬品性は、必要とされる部分のみに付与できれば良い場合もある。したがって、耐摺動性や耐薬品性が要求される部分のみにポリエーテルエーテルケトン樹脂を使用し、その他の部分は他の加工が容易な樹脂で代替できれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の適用範囲を広げることができる。
【0004】
しかし、ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、耐薬品性が高いため、接着剤を用いて他の樹脂成形体に接合することが困難であり、耐熱性が高いため、熱融着で他の樹脂成形体に接合することも困難である。ネジ止めや嵌め込み等の方法であれば接合できるが、設計上の制約が大きかったり、接合部の信頼性の点で問題がある。
【特許文献1】特開平6−192640号公報
【特許文献2】WO2004/050363
【特許文献3】特開平5−301323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、他の樹脂部品等に容易にかつ高い強度で接合でき、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が有する高い耐摺動性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等を利用できるようになる、複合成形体と、その取り付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題を解決するための手段として、下記の各発明を提供する。
1.ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む成形体の一部又は全部にポリアミド樹脂を含む層を有しており、前記ポリアミド樹脂を含む層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリアミド樹脂が熱融着されて形成されたものである、複合成形体。
2.ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む成形体の一部又は全部にポリアミド樹脂を含む層を有しており、前記ポリアミド樹脂を含む層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリアミド樹脂が熱融着されて形成されたものであり、
更に前記ポリアミド樹脂層を介して熱可塑性樹脂を含む成形体が固着一体化された複合成形体。
3.ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む成形体の一部又は全部にポリアミド樹脂を含む層を有しており、前記ポリアミド樹脂を含む層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリアミド樹脂が熱融着されて形成されたものであり、
更に前記ポリアミド樹脂層を介してゴムを含む成形体が固着一体化された複合成形体。
4.熱可塑性樹脂成形体の表面に対して請求項1記載の複合成形体を固着して取り付ける方法であり、前記熱可塑性樹脂成形体の表面に対して、請求項1記載の複合成形体のポリアミド樹脂層を固着する、複合成形体の取り付け方法。
5.熱可塑性樹脂成形体の表面に対して請求項2記載の複合成形体を固着して取り付ける方法であり、前記熱可塑性樹脂成形体の表面に対して、請求項2記載の複合成形体の熱可塑性樹脂を含む成形体を固着する、複合成形体の取り付け方法。
6.熱可塑性樹脂成形体の表面に対して請求項3記載の複合成形体を固着して取り付ける方法であり、前記熱可塑性樹脂成形体の表面に対して、請求項3記載の複合成形体のゴムを含む成形体を固着する、複合成形体の取り付け方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合成形体によれば、熱可塑性樹脂成形体に対して容易に接合一体化させることができるため、PEEK樹脂が有している高い耐摺動性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等を幅広い分野に適用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1、図2により、本発明の複合成形体と、その取り付け方法の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態である複合成形体の厚さ方向への断面図であり、図2は、本発明の他実施形態である複合成形体の厚さ方向への断面図である。
【0009】
<図1に示す複合成形体1>
複合成形体1は、板状のポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下「PEEK樹脂」と称する)を含む成形体2の表面2aに、ポリアミド樹脂(以下「PA樹脂」と称する)を含む層3を有している。
【0010】
PEEK樹脂を含む成形体(PEEK樹脂成形体)2は、PEEK樹脂のみからなるものでもよいし、必要に応じて公知の樹脂添加剤を含有するものでもよい。
【0011】
PEEK樹脂を含む成形体2の形状は、図1に示す各種形状及び大きさの板状のほか、立方体状、直方体状、球体状、各種形状の箱状、棒状、帯状、不定形状等にすることができる。
【0012】
PA樹脂を含む層(PA樹脂層)3は、PEEK樹脂成形体2の少なくとも一部に形成されていればよい。図1では、一面2aにPA層3が形成されているが、他の面(2b、2c、2d)にも形成されていてもよい。
【0013】
また、PA樹脂層3は、一面2aの一部又は全部に形成されていればよい。PA樹脂層3が一面2aの一部に形成されている場合は、形状状態は特に制限されず、格子状、縞状、島状に点在した状態、枠をなすように形成された状態、不定形状又はこれらを適宜組み合わせた状態で形成されていてもよい。
【0014】
複合成形体1におけるPEEK樹脂成形体2とPA樹脂層3の厚み比率は特に制限されるものではないが、例えば、板状の複合成形体1の場合は、PEEK樹脂成形体2の厚みに対して、PA樹脂層3の厚みが約10〜100%になるようにすることができる。
【0015】
PA樹脂としては、公知の脂肪族PA樹脂、脂環族PA樹脂、芳香族PA樹脂を用いることができる。
【0016】
脂肪族PA樹脂としては、
脂肪族ジアミン(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のC4-10アルキレンジアミン等)と脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等のC4-20のアルカンジカルボン酸等)との縮合物(例えば、ポリアミド46、66、610、612、1010)、
ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロタクタム等のC4-20のラクタム等)の単独重合体又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン等のC4-20のアミノカルボン酸等)の単独重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12)又は共重合体(例えば、6−アミノカプロン酸と12−アミノドデカン酸との共重合体;6−アミノカプロン酸、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の共重合体;ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸、水添ダイマー酸及び12−アミノドデカン酸の共重合体)、
これらのポリアミドが共重合した共重合体(例えば、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12、ポリアミド66/11、ポリアミド66/12)を挙げることができる。
【0017】
脂環族PA樹脂としては、脂肪族ジアミン及び/又は脂肪族ジカルボン酸の一部に代えて、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸を用いたものを挙げることができる。脂肪族PA樹脂としては、脂環族ジアミン、例えば、シクロヘキシルジアミン等のC5-8シクロアルキルジアミン;ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(アミノシクロヘキシル)プロパン等のビス(アミノシクロヘキシル)アルカン類等との縮合体を挙げることができる。
【0018】
芳香族PA樹脂としては、脂肪族ジアミン及び/又は脂肪族ジカルボン酸の一部に代えて、芳香族ジアミン及び/又は芳香族ジカルボン酸を用いたものを挙げることができる。例えば、ジアミン成分がMXD−6等の芳香族ジアミンであるポリアミド(メタキシリレンジアミン等と脂肪酸ジカルボン酸等との縮合体);ジカルボン酸成分が芳香族ジカルボン酸であるポリアミド(トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸等との縮合体);ジアミン成分とジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド〔ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド(アラミド)等〕を挙げることができる。
【0019】
その他、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド、少量の多官能性ポリアミン及び/又はポリカルボン酸成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミド、変性ポリアミド(N−アルコキシメチルポリアミド等)、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体(ポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテルセグメントをソフトセグメントとして含むポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体等)も用いることができる。
【0020】
PEEK樹脂成形体2とPA樹脂層3は、本発明の課題を解決できる範囲にて、公知の添加剤を含有することができる。公知の添加剤としては、フィラー又は補強剤(強化繊維等)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤等)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0021】
複合成形体1は、PEEK樹脂成形体2とPA樹脂層3が、熱融着により一体化されたものである。複合成形体1の製造方法は、PEEK樹脂成形体2とPA樹脂層3を熱融着により一体化できる方法であれば、特に制限されるものではなく、例えば、下記の各方法を適用して製造するこができる。
【0022】
(1)熱プレス成形法
プレス成形用の金型内に、PEEK樹脂成形体2となるPEEK樹脂成形体とPA樹脂層3となるPA樹脂成形体を重ねた状態で置き、金型をPEEK樹脂の融点以上に加熱した状態でプレスして、複合成形体1を得る方法。この方法では、PA樹脂とPEEK樹脂の一方又は両方は、粉末又はペレット状のものを用いることもできる。
【0023】
(2)インサート射出成形法
まず、PA樹脂層3となる成形体を、射出成形、押出成形、シート成形、フィルム成形等の成形法により成形して得る。次に、前記成形体を金型内にインサートした後、金型の残余のキャビティ内にPEEK樹脂を射出成形して、複合成形体1を得る方法。
【0024】
(3)二色射出成形法
まず、一つの射出成形機により、PA樹脂を金型内に射出成形する。次に、金型の回転又は移動により、金型の残余のキャビティ位置を交換した後、別の射出成形機により、前記金型のキャビティ内にPEEK樹脂を射出成形して、複合成形体1を得る方法。
【0025】
(4)コアバック射出成形法
まず、射出成形機により、PA樹脂を金型内に射出成形する。次に、前記金型のキャビティ容積を拡大させた後、キャビティ内にPEEK樹脂を射出成形して、複合成形体1を得る方法。
【0026】
(5)その他の成形法
その他の成形法として、インジェクションプレス成形法、サンドイッチ射出成形法、共押出成形法、Tダイラミネート成形法、ブロー成形法、超音波融着法、振動融着法、レーザー溶着法等を挙げることができる。
【0027】
複合成形体1は、PEEK樹脂成形体2とPA樹脂層3を熱融着により一体化するとき、PEEK樹脂とPA樹脂が反応して化学的に結合することで、PEEK樹脂成形体2とPA樹脂層3が強固に一体化できるものと考えられる。
【0028】
<図1に示す複合成形体1の取り付け方法>
次に、図1に示す複合成形体1を他の熱可塑性樹脂成形体に取り付ける方法を説明する。複合成形体1を他の熱可塑性樹脂成形体に取り付けるときには、複合成形体1のPA樹脂層3と他の熱可塑性樹脂成形体を固着させる。
【0029】
PA樹脂層3と他の熱可塑性樹脂成形体を固着する方法は特に制限されず、接着剤を用いる方法、熱融着させる方法、溶剤を用いて溶着させる方法等の公知の方法を適用することができる。なお、他の熱可塑性樹脂成形体は、加工する前の成形体であってもよく、加工後の部品等の既製品であってもよい。
【0030】
他の熱可塑性樹脂成形体に用いる熱可塑性樹脂は、PA樹脂と固着可能なものであればよく、スチレン系樹脂(ホモポリマー、AS樹脂、HIPS等)、ゴム含有スチレン系樹脂(ABS樹脂、AES樹脂、ABSM樹脂、AAS樹脂等)、PEEK樹脂、PA樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、非結晶(透明)ナイロン、液晶ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂等を挙げることができ、これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。また、これらの重合体を主体とする共重合体若しくは混合物、これらにゴム又はゴム状樹脂等のエラストマーを配合した熱可塑性樹脂、及びこれらの樹脂を10重量%以上含有するポリマーアロイ等も挙げることができる。
【0031】
<図2に示す複合成形体11>
複合成形体11は、板状のポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下「PEEK樹脂」と称する)を含む成形体12の表面12aに、ポリアミド樹脂(以下「PA樹脂」と称する)を含む層13を有しており、更に、PA樹脂層13の他面に熱可塑性樹脂成形体14が固着一体化されている。
【0032】
PEEK樹脂を含む成形体(PEEK樹脂成形体)12は、PEEK樹脂のみからなるものでもよいし、必要に応じて公知の樹脂添加剤を含有するものでもよい。
【0033】
PEEK樹脂を含む成形体12の形状は、図2に示す各種形状及び大きさの板状のほか、立方体状、直方体状、球体状、各種形状の箱状、棒状、帯状、不定形状等にすることができる。
【0034】
PA樹脂を含む層(PA樹脂層)3は、PEEK樹脂成形体12と熱可塑性樹脂成形体とを14接合する作用をするためのものであるから、前記接合が可能な程度にPEEK樹脂成形体12の少なくとも一部に形成されていればよい。図1では、一面12aにPA層3が形成されているが、他の面にも形成されていもよい。PA樹脂としては、図1に示す複合成形体1と同じものを用いることができる。
【0035】
また、PA樹脂層13は、一面12aの一部又は全部に形成されていればよい。PA樹脂層13が一面12aの一部に形成されている場合は、形状状態は特に制限されず、格子状、縞状、島状に点在した状態、枠をなすように形成された状態、不定形状又はこれらを適宜組み合わせた状態で形成されていてもよい。
【0036】
複合成形体11におけるPEEK樹脂成形体12とPA樹脂層13の厚み比率は特に制限されるものではないが、例えば、板状の複合成形体11の場合は、PEEK樹脂成形体12の厚みに対して、PA樹脂層13の厚みが約10〜100%になるようにすることができる。
【0037】
熱可塑性樹脂成形体14は、図1に示す複合成形体1の取り付け方法で例示した熱可塑性樹脂から選ばれるものを用いることができる。
【0038】
複合成形体11は、上記した複合成形体1の製造方法と、複合成形体1の取り付け方法に準じて製造することができる。なお、製造手順としては、PEEK樹脂成形体12の表面12aにPA樹脂層13を形成し、更に熱可塑性樹脂成形体14を固着する方法のほか、熱可塑性樹脂成形体14の表面14aにPA樹脂層13を形成し、PEEK樹脂成形体12の表面12aをPA樹脂層13に固着させる方法でもよい。
【0039】
<図2に示す複合成形体11の取り付け方法>
次に、図2に示す複合成形体11を更に他の熱可塑性樹脂成形体に取り付ける方法を説明する。複合成形体11を他の熱可塑性樹脂成形体に取り付けるときには、複合成形体11の熱可塑性樹脂成形体14と他の熱可塑性樹脂成形体を固着させる。他の熱可塑性樹脂成形体は、図1に示す複合成形体1の取り付け方法で例示したものから選ばれる樹脂からなるものを用いることができる。
【0040】
熱可塑性樹脂成形体14と他の熱可塑性樹脂成形体を固着する方法は特に制限されず、接着剤を用いる方法、熱融着させる方法、溶剤を用いて溶着させる方法等の公知の方法を適用することができる。なお、他の熱可塑性樹脂成形体は、加工する前の成形体であってもよく、加工後の部品等の既製品であってもよい。
【0041】
<図3に示す複合成形体21>
複合成形体21は、板状のポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下「PEEK樹脂」と称する)を含む成形体22の表面22aに、ポリアミド樹脂(以下「PA樹脂」と称する)を含む層23を有しており、更に、PA樹脂層23の他面にゴムを含む成形体24が固着一体化されている。
【0042】
複合成形体21は、例えば、PEEK樹脂22とPA樹脂層23が固着一体化された一次成形体のPA樹脂層23の表面と、未架橋(未硬化)のゴム材料(架橋剤を含む)を接触させた状態で、加熱等して架橋反応させることで、前記一次成形体とゴムを含む成形体24を一体化させて得ることができる。より詳細には、例えば、特開平7−11013号公報、特開2002−210872号公報に記載の加硫ゴムとポリアミドとの結合方法を適用することができる。
【0043】
ゴムは、架橋剤等の硬化手段の使用により硬化できるものであればよく、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、ポリイソブチレン−ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、塩化ゴム、臭化ゴム、クラフトゴム、ブロック共重合体、液状ゴム等を挙げることができる。
【0044】
<図3に示す複合成形体21の取り付け方法>
次に、図3に示す複合成形体21を更に他の熱可塑性樹脂成形体に取り付ける方法を説明する。複合成形体21を他の熱可塑性樹脂成形体に取り付けるときには、複合成形体21のゴムを含む成形体24と他の熱可塑性樹脂成形体を固着させる。他の熱可塑性樹脂成形体は、図1に示す複合成形体1の取り付け方法で例示したものから選ばれる樹脂からなるものを用いることができる。
【0045】
ゴムを含む成形体24と他の熱可塑性樹脂成形体を固着する方法は特に制限されず、接着剤を用いる方法、溶剤を用いて溶着させる方法等の公知の方法を適用することができる。なお、他の熱可塑性樹脂成形体は、加工する前の成形体であってもよく、加工後の部品等の既製品であってもよい。
【0046】
本発明の複合成形体は、PEEK樹脂が有している耐薬品性、耐摺動性、耐熱性、難燃性等が要求される様々な分野に適用することができる。また、図2、図3に示すような複合成形体であれば、一面と他面で性質の異なるものにすることができるため、更に適用分野を広げたり、特殊分野に適用したりすることが期待できる。
【実施例】
【0047】
実施例1
図1に示す構造の複合成形体1を製造した。PEEK樹脂成形体2を形成するPEEK樹脂としてダイセルエボニック(株)製のベスタキープ2000G(融点340℃)を用い、PA樹脂層3を形成するポリアミド樹脂として宇部興産(株)製のナイロン1013B(融点220℃)を用いて、熱プレス機をにより、厚さ10mmの板状PEEK樹脂成形体(縦20cm×横20cm)と厚さ1mmの板状PA樹脂成形体(縦20cm×横20cm)を得た。次に、熱プレス機内に板状PEEK樹脂成形体と板状PA樹脂成形体を重ね合わせて置き、390℃で5秒間熱プレスして、厚み約11mmの板状複合成形体を得た。但し、端から5cmの長さは熱プレスしなかった。
【0048】
次に、PEEK樹脂成形体2の熱プレスしていない部分を万力にて固定した状態にて、PA樹脂成形体(PA樹脂層3)の熱プレスしていない部分を大人の男性が手で持って引き剥がそうとしたが、引き剥がすことはできなかった。
【0049】
実施例2
PEEK樹脂成形体2を形成するPEEK樹脂としてダイセルエボニック(株)製のベスタキープ2000Gを用い、PA樹脂層3を形成するポリアミド樹脂としてダイセルエボニック(株)製のトロガミドCXを用い、実施例1と同様にして成形した。得られた複合成形体について実施例1と同様にして引き剥がし試験をしたが、引き剥がすことはできなかった。
【0050】
実施例3
図2に示す構造の複合成形体11を製造した。PA樹脂層13を形成するポリアミド樹脂としてダイセルエボニック(株)製のダイアミドL1940を用い、熱プレスにより、厚さ0.2mmのPA樹脂シートを成形した。
【0051】
次に、PA樹脂シートを適当な大きさに切断したものを金型に嵌め込み、そこにPEEK樹脂成形体12を形成するPEEK樹脂としてダイセルエボニック(株)製のベスタキープ2000Gを射出成形して、合計厚みが1.0mmの平板を得た。
【0052】
次に、前記平板をPA樹脂シート(PA樹脂層13)が形成されていない面が露出されるように金型に嵌め込み、ポリアミド樹脂(宇部興産(株)製のナイロン1013B)を射出成形して樹脂成形体14を形成し、複合成形体11を得た。
【0053】
実施例4
図3に示す構造の複合成形体21を製造した。PA樹脂層23を形成するポリアミド樹脂としてPA612、ダイセルエボニック(株)製のダイアミドDを用い、熱プレスにより、厚さ0.2mmのPA樹脂シートを成形した。
【0054】
次に、PA樹脂シートを適当な大きさに切断したものを金型に嵌め込み、そこにPEEK樹脂成形体12を形成するPEEK樹脂としてダイセルエボニック(株)製のベスタキープ2000Gを射出成形して、合計厚みが1.0mmの平板を得た。
【0055】
次に、前記平板をPA樹脂シート(PA樹脂層13)が形成されていない面が露出されるように金型に嵌め込み、特開2002−210872号公報の実施例に開示されている未加硫ゴム組成物(シリコーンゴム(「SH851」,東レ・ダウコーニング(株)製)100質量部に対して、ジクミルパーオキサイド(「パークミルD」,日本油脂(株)製)5質量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(「ハイクロスM」,精工化学(株)製)1質量部の混合物)をPA樹脂シートと接触するように被覆し、高圧プレス機を用いて、圧力300kg/cm2(30MPa)及び温度140℃で10分間加熱して加硫させて、複合成形体21を得た。ゴム成形体(硬化後の厚さ4.0mm)とPA樹脂シートは強固に固着していた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の複合成形体の一実施形態の断面図。
【図2】本発明の複合成形体の他実施形態の断面図。
【図3】本発明の複合成形体の他実施形態の断面図。
【符号の説明】
【0057】
1、11、21 複合成形体
2、12、22 PEEK樹脂成形体
3、13、23 PA樹脂層
14 他の熱可塑性樹脂成形体
24 ゴムを含む成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む成形体の一部又は全部にポリアミド樹脂を含む層を有しており、前記ポリアミド樹脂を含む層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリアミド樹脂が熱融着されて形成されたものである、複合成形体。
【請求項2】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む成形体の一部又は全部にポリアミド樹脂を含む層を有しており、前記ポリアミド樹脂を含む層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリアミド樹脂が熱融着されて形成されたものであり、
更に前記ポリアミド樹脂層を介して熱可塑性樹脂を含む成形体が固着一体化された複合成形体。
【請求項3】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む成形体の一部又は全部にポリアミド樹脂を含む層を有しており、前記ポリアミド樹脂を含む層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリアミド樹脂が熱融着されて形成されたものであり、
更に前記ポリアミド樹脂層を介してゴムを含む成形体が固着一体化された複合成形体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂成形体の表面に対して請求項1記載の複合成形体を固着して取り付ける方法であり、前記熱可塑性樹脂成形体の表面に対して、請求項1記載の複合成形体のポリアミド樹脂層を固着する、複合成形体の取り付け方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂成形体の表面に対して請求項2記載の複合成形体を固着して取り付ける方法であり、前記熱可塑性樹脂成形体の表面に対して、請求項2記載の複合成形体の熱可塑性樹脂を含む成形体を固着する、複合成形体の取り付け方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂成形体の表面に対して請求項3記載の複合成形体を固着して取り付ける方法であり、前記熱可塑性樹脂成形体の表面に対して、請求項3記載の複合成形体のゴムを含む成形体を固着する、複合成形体の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−234149(P2009−234149A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85512(P2008−85512)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】