説明

複合材料、その製造方法およびその使用

強化用樹脂および強化用繊維を含有し、その際、強化用繊維がポリフェニレンスルフィド含有の被覆を有し、かつ被覆されてない繊維に対するポリフェニレンスルフィドの割合が0.001〜<0.01質量%である複合材料を記載する。該複合材料は、前記の割合の範囲でPPS被覆を有していない同様の複合材料と比較して高められた見かけの層間剪断強さおよび曲げ強さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、その製造方法およびその使用に関する。
【0002】
強化用繊維および複合材用樹脂を用いて複合材料を製造するためのこれらの使用は公知である。US5641572は、仕上げとしてたとえばポリフェニレンスルフィド(PPS)を含有する炭素−短繊維からなる強化用繊維を記載している。US5641572は、仕上げの割合が炭素−短繊維の全質量に対して少なくとも0.01質量%でなくてはならないことを教示している。というのは、0.01質量%よりも少ない仕上げの割合では保護効果が不十分だからである。さらにUS5641572は、不活性ガス中、400〜1500℃でサイジングした炭素−短繊維を炭素化することを教示している。その後、該炭素−短繊維は仕上げの炭素化生成物のみを含有する。最後にUS5641572は、熱可塑性樹脂を用いた炭素化された炭素−短繊維からなる強化材料の製造を開示している。US5641572は、強化用繊維を含有する複合材料の見かけの層間剪断強さ(ILSF)および曲げ強さを改善することができる方法を示唆していない。しかしまさにこの特性に対して常に高い要求が設定される。
【0003】
従って本発明の課題は、強化用繊維を含有する複合材料の見かけの層間剪断強さおよび曲げ強さを向上することである。
【0004】
前記課題は、強化用繊維がポリフェニレンスルフィドを含有する被覆を有する強化用樹脂および強化用繊維を含有する複合材料において、被覆されていない強化用繊維に対するポリフェニレンスルフィドの割合が0.001〜<0.01質量%であることを特徴とする複合材料により解決される。
【0005】
このような被覆された強化用繊維を自体公知の方法で複合材料へと加工する場合、見かけの層間剪断強さおよび曲げ強さは、本発明による被覆を有していない強化用繊維と比較して向上されることが確認される。この結果は、このような少量のPPSが複合材料の特性に何らかの影響を与えること、ましてこのように少量の質量割合のPPSが見かけの層間剪断強さおよび曲げ強さを改善することを予測することはできなかったために、驚くべきである。さらに、本発明による複合材料の見かけの層間剪断強さおよび曲げ強さは、強化用繊維におけるPPSの割合が0.001〜<0.01質量%の範囲で最大値を有することは驚くべきである。この最大値はたとえば炭素からなりPPS被覆された強化用繊維を含有し、かつポリエーテルエーテルケトンを用いて複合材料へと加工された本発明による複合材料において、炭素繊維におけるPPSの割合が約0.006質量%の場合である。
【0006】
本発明による複合材料の有利な実施態様では被覆されていない強化用繊維に対するポリフェニレンスルフィドの割合は0.002〜0.009質量%である。
【0007】
本発明による複合材料のもう1つの有利な実施態様では、該被覆はポリフェニレンスルフィドおよび熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂からなり、その際、熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホンまたはポリスルホンが有利であり、かつ熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が有利である。
【0008】
強化用樹脂として本発明による複合材料中で有利には熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリスルホンまたはこれらの熱可塑性樹脂の混合物を使用する。
【0009】
強化用繊維として本発明による複合材料は原則として、強化用繊維により要求される特性を有する天然もしくは合成に由来する全ての繊維が考えられ、その際、該強化用繊維が、ピッチ前駆物質、ポリアクリロニトリル前駆物質もしくはビスコース前駆物質からの炭素繊維またはアラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、合成繊維または天然繊維であるか、またはこれらの繊維の組合せである場合に、要求される特性は特に良好に形成されている。合成繊維としてポリエーテル繊維および天然繊維として亜麻およびサイザル繊維が特に有利である。
【0010】
炭素−強化用繊維とは特に商品名Tenax HTS(R)でTenax Fibers社、Wuppertalから市販されている炭素繊維が本発明による複合材料中で有利である。この場合、該繊維は本発明による複合材料中で短繊維として存在していても、数千の、有利には約3000〜24000のフィラメントからなるフィラメント糸として存在していてもよい。さらに本発明による複合材料中の繊維はテキスタイルの平面状構成物、たとえば織布、不織布、メリヤス、ニットとして、または一方向もしくは多方向のレイドファブリックとして存在していてもよい。
【0011】
本発明の根底にある課題はさらに、次の工程:
a)場合により前処理された強化用繊維の装入、
b)層が強化用繊維に対してポリフェニレンスルフィドを0.001〜<0.01質量%含有するような、工程a)からの強化用繊維上へのポリフェニレンスルフィド含有層の施与、このことにより被覆された強化用繊維が生じる、および
c)強化用樹脂を用いた工程b)からの被覆された強化用繊維の複合材料への加工
を有する複合材料の製造方法により解決される。
【0012】
工程a)において基本的に、繊維の全表面に工程b)で施与すべき層が供給されるあらゆる種類の強化用繊維の装入が適切である。従ってたとえば紡糸および乾燥したばかりの強化用繊維を単独で、または糸束として巻き取る前の製造工程において装入することができる。同様に強化用繊維を、数千のフィラメント、有利には約3000〜24000のフィラメントからなるフィラメント糸として装入することができる。
【0013】
強化用繊維として本発明による方法の工程a)に関して原則として、強化用繊維により要求される特性を有する天然もしくは合成に由来する全ての繊維が考えられ、その際、強化用繊維がピッチ前駆物質、ポリアクリロニトリル前駆物質もしくはビスコース前駆物質からの炭素繊維またはアラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、合成繊維または天然繊維であるか、またはこれらの繊維の組合せである場合に、要求される特性は特に良好に形成されている。合成繊維としてポリエステル繊維および天然繊維として亜麻およびサイザル繊維が特に有利である。炭素−強化用繊維として本発明による方法の工程a)では特に有利には商品名Tenax HTS(R)でTenax Fibers社、Wuppertalから市販されている炭素繊維を装入する。
【0014】
本発明による方法の工程a)で装入される強化用繊維は、工程b)で施与すべき被覆による強化用繊維の十分な濡れのため、および強化用繊維への被覆の付着のために必要である場合には前処理する。同様に強化用繊維の前処理は、工程b)において強化用繊維がその全表面上に本発明による被覆を有していない場合に、工程c)において使用される強化用樹脂と被覆した繊維との付着を改善することができる。前処理のために使用される方法は場合により含浸法であってもよく、その際、強化用繊維を疎水性もしくは親水性の液状媒体中に浸漬し、かつ乾燥させる。さらに、反応性の官能基を繊維表面上に導入する前処理法、たとえば電気化学的酸化が考えられ、この方法により強化用繊維の表面にたとえばヒドロキシル基およびカルボキシル基が導入される。
【0015】
本発明による方法の工程b)における施与のために、原則として強化用繊維上に、強化用繊維に対してポリフェニレンスルフィドを0.001〜<0.01質量%施与することができる全ての方法が適切である。
【0016】
たとえば工程b)において強化用繊維をPPS−溶融液に通過させることができ、その際、場合により強化用繊維を予め熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミドからなる溶融液に通過させる。同様にPPSおよび熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミドからなる溶融液を製造し、かつ強化用繊維を両方のポリマーの溶融液に通過させることができる。
【0017】
あるいはPPS粉末をプラズマ中に導入することができる。その際、PPS粒子を強化用繊維の方向に加速し、かつ溶融させる。強化用繊維上にぶつかり、PPS粒子は硬化し、かつ所望の層を強化用繊維上に形成する。このPPSを用いたプラズマ噴射被覆は熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミドを用いたプラズマ噴射被覆であってもよい。同様にプラズマ噴射被覆の際に、PPSおよび熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミドを同時に使用することができる。
【0018】
さらにPPSの施与を巻き取りの前に強化用繊維の製造工程に統合して実施することもでき、その際、柔軟剤の施与のために公知の装置を使用することができる。この場合、場合によりPPSの施与の前に、熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミドの施与を実施することができる。同様にPPSおよび熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミドからなる仕上げを製造し、かつ該仕上げを強化用繊維上に施与することができる。本発明による方法の有利な実施態様では、たとえば工程a)からの強化用繊維を工程b)において、PPSのスラリーを含有する浴に通過させ、乾燥させ、かつ巻き取ることによってPPSを結晶の形で強化用繊維上に施与する。選択した温度でできる限り微粒子状のPPS結晶がスラリー中に存在している限り、浴の温度に対して特別な要求は設定されない。このことは本発明による方法の多くの実施態様においてすでに室温で十分な程度に該当し、従ってこの浴温度が有利である。乾燥の際に、たしかに被覆した強化用繊維から付着している水分が除去されるが、しかし被覆の分解は回避されることが重要である。このために多くの場合、滞留時間に依存して、約350〜400℃の範囲の乾燥温度が適切である。場合により強化用繊維をまず熱可塑性樹脂、たとえばポリエーテルイミドの溶液を含有する浴に通過させ、かつ次いでPPSのスラリーを含有する浴に溶液で湿った繊維を通過させ、その後、該繊維をすでに記載したように巻き取り、かつ乾燥させることができる。
【0019】
特に有利にはたとえば3000〜24000のフィラメントを有するフィラメト糸として存在していてもよい強化用繊維を、その中身がPPSからなるスラリー、熱可塑性樹脂の溶液、たとえばポリエーテルイミドの溶液、溶剤および場合により乳化剤からなる浴に通過させ、その後、該繊維を前記のように、乾燥させ、かつ巻き取ることができる。溶剤は、PPSを溶解しないが、しかし熱可塑性樹脂を溶解するように選択する。このために、熱可塑性樹脂がポリエーテルイミドである場合、たとえば1−メチル−2−ピロリドン(NMP)が適切である。乳化剤としてたとえばデカエチレングリコレイルエーテルが適切である。この場合、およびPPSスラリーを浴中で使用する本発明による方法の全ての実施態様において、浴の中身を、たとえばポンプ循環または撹拌により常に運動させることにより懸濁させた状態を維持する。強化用繊維を浴に通過させる場合、糸の張力は有利には0.3〜1.5cN/tex、特に有利には0.5〜1.0cN/texである。強化用繊維をスラリーに通過させる速度は有利には60〜600m/h、特に有利には120〜480m/hである。浴中のPPSスラリーの濃度はそのつどポリエーテルイミドの含有率に対して有利にはPPS0.2〜5質量%、特に有利には0.5〜1.5質量%であり、浴内容物に対するその質量割合はたとえば0.5〜1.0質量%の範囲、および特に有利には0.5〜0.7質量%の範囲である。前記のパラメータは、強化用繊維上にたとえば0.5〜1.0質量%および特に有利には0.5〜0.7質量%の被覆が施与されるように相互に調整する。
【0020】
特に微粒子状のPPSの結晶を含有するスラリーは、熱可塑性樹脂およびPPSを前記の質量比で押出成形機に導入する場合、押出成形機中で溶融し、かつ顆粒を製造して得られる。この顆粒をすでに記載した、場合により乳化剤を含有する溶剤中に導入する。その際、熱可塑性樹脂が溶解し、かつPPSが微粒子状のスラリーを形成する。強化用繊維の本発明によるPPS割合はたとえば、浴を通過する強化用繊維の規定の引張速度で被覆した強化用繊維がPPSを0.001〜<0.01質量%含有するように、浴中のPPS濃度を調整することにより調節することができる。
【0021】
強化用繊維に対する被覆の質量割合はDIN EN ISO 10548、方法Bにより決定する。繊維の被覆がPPSに加えて熱可塑性樹脂を含有する場合、被覆した強化用繊維におけるPPSの質量割合は被覆のために使用した熱可塑性樹脂対PPSの質量比から算出する。
【0022】
本発明による方法の工程c)において被覆した強化用繊維を強化用樹脂により、有利には熱可塑性樹脂により、または熱可塑性樹脂からなる混合物により加工して複合材料が得られる。その際、熱可塑性樹脂として特にポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホンまたはポリスルホンまたはこれらの熱可塑性樹脂からなる混合物が適切である。本発明により被覆した強化用繊維を複合材料へと加工する方法は、自体公知である。これにはたとえば
− 本発明により被覆した強化用繊維と、複合材用樹脂からなる粉末またはシートとの混合および引き続き加熱圧縮、
− 複合材用樹脂の溶融液または溶液による本発明により被覆した強化用繊維の含浸、および
− 短繊維にカットした本発明による被覆した強化用繊維の配合
が含まれる。
【0023】
その際、本発明により被覆した強化用繊維は、たとえばフィラメント糸としての形状で、本発明による方法の工程b)の後に存在する複合材料へとさらに加工することができる。
【0024】
あるいは本発明による方法の工程b)で得られた被覆した強化用繊維をまずテキスタイル平面状構成物の形状にし、かつこの形状で複合材料へと加工することができる。たとえば本発明による方法の工程b)で得られた被覆した強化用繊維をまず不織布へと加工するか、または短繊維へとカットすることができる。同様に本発明により被覆した強化用繊維をまず織布、編組、メリヤスまたはニットの形状に、あるいは一方向もしくは多方向のレイドファブリックの形状にすることができる。
【0025】
工程c)における複合材料を製造する際に、本発明により被覆した強化用繊維はポリエーテルエーテルケトンを用いた加熱圧縮の際に、フィラメント糸へのポリエーテルエーテルケトンの浸透に関して、ならびに個々の被覆されたフィラメントの濡れに関して優れた含浸挙動を示す。
【0026】
本発明による複合材料は40〜70体積%の繊維体積割合を有し、その際、一方向のプリプレグからなる積層体における繊維体積割合は有利には55〜65体積%の範囲であり、織布プリプレグからなる積層体では45〜55体積%の範囲であり、かつ巻き取られた、もしくは延伸された物体では55〜70体積%の範囲である。
【0027】
本発明による複合材料の見かけの層間剪断強さはDIN EN 2563により、および曲げ強さ(繊維方向で0゜および繊維方向に対して垂直に90゜)はDIN EN 2562により測定する。
【0028】
本発明による複合材料および本発明による方法により製造した複合材料は有利には、たとえば胴体および着陸フラップのような飛行機構造のため、たとえばモーター部材のような自動車構造、ポンプおよびパッキングのため、たとえばパッキング、タンクおよび容器のような機械および装置構造のための部材を製造するため、および医療用部材、たとえば外科用器具を製造するために使用することができる。
【0029】
本発明を以下の実施例に基づいて詳細に説明する。
【0030】
例1
ポリエーテルイミド(GE−Plastics社のUltem(R))98質量部およびPPS(Ticona社のFortron(R))2質量部を押出成形機に導入し、該押出成形機中で溶融し、かつ顆粒を製造する。該顆粒39gをポリエーテルイミドが溶解するまで熱い1−メチル−2−ピロリドン(NMP)590g中に撹拌導入する。PPSは溶解せず、かつスラリーを形成する。撹拌され、かつ70℃に冷却されたポリエーテルイミドの溶液もしくはPPSのスラリーに、NMP200g、水60gおよび乳化剤デカエチレングリコロレイルエーテル20gからなる混合物を滴加する。その際に得られる混合物を50℃の暖かい水600ml中に撹拌導入して、ポンプ循環により常に運動させておくことができるエマルションが生じる。こうして得られた溶液を、ポリエーテルイミド0.6質量%、PPS0.006質量%、デカエチレングリコロレイルエーテル0.3質量%、NMP12.2質量%および水86.894質量%からなる溶液が得られるまで水で希釈する。
【0031】
Tenax HTS(R)の名称でTenax Fibers社から市販されており、かつ電気化学的酸化により前処理された炭素繊維からなる800texのタイターを有するフィラメント糸を180m/hの速度で1.0cN/texの糸張力下に前記のエマルションに通過させ、350℃で乾燥させ、かつ巻き取る。炭素繊維に対するPPSの割合は0.006質量%である(表の例1を参照のこと)。
【0032】
該フィラメント糸をPEEK(R)151 Gの名称でVictrex社から市販されているポリエーテルエーテルケトンを用いて複合材料へと加工する。その際、ポリエーテルエーテルケトンをシートとして使用する。該シートおよび被覆したTenax HTS(R)繊維の交互の層を形成する。その後、交互の層を約9バールの圧力および400℃をかろうじて超える温度で圧縮する。圧縮後に複合材料の温度を24時間以内で室温まで低下させる。
【0033】
見かけの層間剪断強さは143MPaであり、曲げ強さ(0゜)は3380.4MPaおよび曲げ強さ(90゜)は187MPaである(表の例1を参照のこと)。
【0034】
例2
例1を繰り返したが、ただしその際、エマルションはポリエーテルイミド0.597質量%、PPS0.009質量%、デカエチレングリコロレイルエーテル0.3質量%、NMP12.2質量%および水86.894質量%からなる。炭素繊維に対するPPS割合は0.009質量%である(表の例2を参照のこと)。
【0035】
層間剪断強さは125MPaであり、曲げ強さ(0゜)は2972.1MPaおよび曲げ強さ(90゜)は153MPaである(表の例2を参照のこと)。
【0036】
比較例
例1を繰り返したが、ただしその際、エマルションはPPSを含有しておらず、かつポリエーテルイミド0.606質量%、デカエチレングリコロレイルエーテル0.3質量%、NMP12.2質量%および水86.894質量%からなる(表の比較例Vを参照のこと)。
【0037】
見かけの層間剪断強さは121MPaであり、曲げ強さ(0゜)は2473.3MPaおよび曲げ強さ(90゜)は152MPaである(表の比較例を参照のこと)。
【0038】
以下の表には炭素繊維に対するPPSの質量%(質量%PPS)、層間剪断強さ(ILSF)、BFF(0゜)としての曲げ強さ(0゜)およびBBF(90゜)としての曲げ強さ(90゜)がまとめられている。
【0039】
【表1】

【0040】
表からILSFおよび0゜および90゜におけるBBFは、炭素繊維に対するPPSの割合が0.006質量%の場合に最大値を有することが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化用樹脂および強化用繊維を含有し、その際、強化用繊維がポリフェニレンスルフィド含有の被覆を有している複合材料において、被覆されていない強化用繊維に対するポリフェニレンスルフィドの割合が0.001〜<0.01質量%であることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
被覆されていない強化用繊維に対するポリフェニレンスルフィドの割合が0.002〜0.009質量%であることを特徴とする、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
被覆がポリフェニレンスルフィドと、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とからなることを特徴とする、請求項1または2記載の複合材料。
【請求項4】
強化用樹脂が熱可塑性樹脂であるか、または熱可塑性樹脂の混合物であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の複合材料。
【請求項5】
強化用繊維が、ピッチ前駆物質、ポリアクリロニトリル前駆物質もしくはビスコース前駆物質からの炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、合成繊維または天然繊維であるか、またはこれらの繊維の組合せである、請求項1から4までのいずれか1項記載の複合材料。
【請求項6】
工程:
a)場合により前処理された強化用繊維の装入、
b)層が強化用繊維に対してポリフェニレンスルフィドを0.001〜<0.01質量%含有するような、工程a)からの強化用繊維上へのポリフェニレンスルフィド含有層の施与、このことにより被覆された強化用繊維が生じる、および
c)強化用樹脂を用いた工程b)からの被覆された強化用繊維の、複合材料への加工
を有する、複合材料の製造方法。
【請求項7】
工程a)からの強化用繊維が、ピッチ前駆物質、ポリアクリロニトリル前駆物質もしくはビスコース前駆物質からの炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、合成繊維または天然繊維であるか、またはこれらの繊維の組合せであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程a)からの炭素強化用繊維を電気化学的酸化により前処理することを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
工程a)からの強化用繊維を工程b)において、ポリフェニレンスルフィドのスラリーを含有する浴に通過させ、乾燥させ、かつ巻き取ることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
浴がさらに熱可塑性樹脂の溶液を含有していることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程c)で被覆した、フィラメント糸、短繊維、織布、編組、編物、メリヤス、不織布、一方向もしくは多方向レイドファブリックの形の強化用繊維を複合材料へと加工することを特徴とする、請求項6から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
飛行機構造、自動車構造、機械および装置構造のための部材を製造するため、および医療用部材を製造するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の複合材料または請求項6から11までのいずれか1項の記載により製造された複合材料の使用。
【請求項13】
被覆されていない強化用繊維に対するポリフェニレンスルフィドの割合が0.001〜<0.01質量%であることを特徴とする、ポリフェニレンスルフィド含有の被覆を有する強化用繊維。
【請求項14】
被覆されていない強化用繊維に対するポリフェニレンスルフィドの割合が0.002〜0.009質量%であることを特徴とする、請求項13記載の強化用繊維。
【請求項15】
被覆がポリフェニレンスルフィドと、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とからなることを特徴とする、請求項13または14記載の強化用繊維。
【請求項16】
強化用繊維が、ピッチ前駆物質、ポリアクリロニトリル前駆物質もしくはビスコース前駆物質からの炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、合成繊維または天然繊維であるか、またはこれらの繊維の組合せであることを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項記載の強化用繊維。

【公表番号】特表2006−507412(P2006−507412A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−580069(P2003−580069)
【出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2003/003234
【国際公開番号】WO2003/082565
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(504370036)テナックス ファイバーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】