説明

複合材料、発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置

【課題】有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料であって、キャリア輸送性の高い複合材料を提供する。また、有機化合物へのキャリア注入性の高い複合材料を提供する。また、電荷移動相互作用による吸収が生じにくい複合材料を提供する。また、可視光に対する透光性が高い複合材料を提供する。
【解決手段】ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料、発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の有機化合物からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を容易に形成することができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように、有機ELを用いた発光素子は、発光装置や照明などへの応用が期待されている。一方で、有機ELを用いた発光素子には課題も多い。その課題の一つとして、消費電力の低減が挙げられる。消費電力を低減するためには、発光素子の駆動電圧を低くすることが重要である。そして、有機ELを用いた発光素子は流れる電流量によって発光強度が決まるため、駆動電圧を低くするためには、低い電圧で多くの電流を流すことが必要となってくる。
【0006】
これまでに、駆動電圧を低くさせるための手法として、バッファー層を電極と発光性の有機化合物を含む層との間に設けるという試みがなされている。例えば、カンファースルホン酸をドープしたポリアニリン(PANI)からなるバッファー層をインジウム錫酸化物(ITO:indium tin oxide)と発光層との間に設けることにより、駆動電圧を低くできることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。これは、PANIの発光層へのキャリア注入性が優れているためと説明されている。なお、非特許文献1では、バッファー層であるPANIも電極の一部と見なしている。
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載してある通り、PANIは膜厚を厚くすると透過率が悪くなるという問題点がある。具体的には、250nm程度の膜厚で、透過率は70%を切ると報告されている。すなわち、バッファー層に用いている材料自体の透明性に問題があるため、素子内部で発生した光を効率良く取り出すことができない。
【0008】
また、特許文献1によれば、発光素子(特許文献1では発光ユニットと記載されている)を直列に接続することにより、ある電流密度当たりの輝度、すなわち電流効率を高めようという試みがなされている。特許文献1においては、発光素子を直列に接続する際の接続部分に、有機化合物と金属酸化物(具体的には酸化バナジウムおよび酸化レニウム)とを混合した層を適用しており、この層はホール(正孔)や電子を発光ユニットへ注入できるとされている。
【0009】
しかしながら、特許文献1で開示されている有機化合物と金属酸化物との混合層は、実施例を見てもわかる通り、赤外領域だけでなく可視光領域(500nm付近)にも大きな吸収ピークが見られ、やはり透明性に問題が生じている。これは、電荷移動相互作用により発生する吸収バンドの影響である。したがって、やはり素子内部で発生した光を効率良く取り出すことができず、素子の発光効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−272860号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Y.Yang、他1名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.64(10)、1245−1247(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の一態様では、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料であって、キャリア輸送性の高い複合材料を提供することを課題の一とする。また、有機化合物へのキャリア注入性の高い複合材料を提供することを課題の一とする。また、電荷移動相互作用による光吸収が生じにくい複合材料を提供することを課題の一とする。また、可視光に対する透光性が高い複合材料を提供することを課題の一とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、該複合材料を発光素子に適用することにより、発光効率の高い発光素子を提供することを課題の一とする。また、駆動電圧の低い発光素子を提供することを課題の一とする。また、長寿命の発光素子を提供することを課題の一とする。また、該発光素子を用いた発光装置、該発光装置を用いた電子機器又は照明装置を提供することを課題の一とする。
【0014】
なお、以下に開示する発明は、上記課題の少なくともいずれか一つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。なお、本発明の一態様の複合材料に含まれる炭化水素化合物が有する環は、特に記載がない限り、置換又は無置換のどちらであっても良い。例えば、該置換基が有する環は、置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、又は、置換もしくは無置換のトリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種であれば良い。
【0016】
上記複合材料は、キャリア輸送性が高い。また、有機化合物へのキャリア注入性が高い。また、電荷移動相互作用による光吸収が生じにくい。また、可視光に対する透光性(以下、単に、透光性と記載する)が高い。
【0017】
本発明の一態様の複合材料に含まれる、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である)が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物は、吸収ピークが可視光領域(380nm〜760nm)よりも短波長側に生じる。
【0018】
上記複合材料は、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制するだけでなく、炭化水素化合物自体の吸収ピークが可視光領域(380nm〜760nm)よりも短波長側に生じるように制御できるため、透光性が高い複合材料を得ることができる。
【0019】
ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、及びトリフェニレン骨格は、剛直な構造であるため、炭化水素化合物の分子量が350以上であると、複合材料の膜質が安定化し、好ましい。該分子量が450以上であると特に好ましい。また、該分子量の上限に特に限定はないが、複合材料を加熱蒸着で形成する場合、蒸着性を考慮して2000以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合しており、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0021】
また、本発明の一態様は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0022】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基が結合しており、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0023】
ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基を有する炭化水素化合物を複合材料に用いることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の一態様は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格にフェニル基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0025】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格にフェニル基が結合しており、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0026】
ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に共役が小さいフェニル基が結合した炭化水素化合物は、該フェニル基にさらに置換基を結合させても共役が広がりづらいため、透光性を保つことができ好ましい。また、該炭化水素化合物を複合材料に用いることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制することができるため、好ましい。また、複合材料の膜質が安定化するため好ましい。また、共役が広がりにくくなるため、透光性向上の観点でも有効である。
【0027】
また、本発明の一態様は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位にフェニル基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0028】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位にフェニル基が結合しており、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0029】
また、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0030】
【化1】

【0031】
式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R10〜R14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R10〜R14のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0032】
また、本発明の一態様は、一般式(G2)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0033】
【化2】

【0034】
式中、R21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R30〜R34は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R30〜R34のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0035】
また、本発明の一態様は、一般式(G3)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0036】
【化3】

【0037】
式中、R41〜R47は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R50〜R54は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R50〜R54のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0038】
また、本発明の一態様は、一般式(G4)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0039】
【化4】

【0040】
式中、R61〜R71は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R80〜R84は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R80〜R84のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0041】
また、本発明の一態様は、一般式(G5)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0042】
【化5】

【0043】
式中、α〜αは、それぞれ独立に、フェニレン基又はビフェニレン基を表し、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。k、n、mは、それぞれ独立に、0又は1を表す。なお、該ナフチル基は、α−ナフチル基またはβ−ナフチル基であることが好ましい。また、該フェナントリル基は、9−フェナントリル基であることが好ましい。また、該トリフェニレニル基は、トリフェニレン−2−イル基であることが好ましい。
【0044】
本発明の一態様は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0045】
上記複合材料は、キャリア輸送性が高い。また、有機化合物へのキャリア注入性が高い。また、電荷移動相互作用による光吸収が生じにくい。また、透光性が高い。
【0046】
本発明の一態様の複合材料に含まれる、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である)が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物は、吸収ピークが可視光領域(380nm〜760nm)よりも短波長側に生じる。
【0047】
上記複合材料は、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制するだけでなく、炭化水素化合物自体の吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じるように制御できるため、透光性が高い複合材料を得ることができる。
【0048】
ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、及びトリフェニレン骨格は、剛直な構造であるため、炭化水素化合物の分子量が350以上であると、複合材料の膜質が安定化するため、好ましい。該分子量が450以上であると特に好ましい。また、該分子量の上限に特に限定はないが、複合材料を加熱蒸着で形成する場合、蒸着性を考慮して2000以下であることが好ましい。
【0049】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合しており、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0050】
また、本発明の一態様は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0051】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基が結合しており、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0052】
ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基を有する炭化水素化合物を複合材料に用いることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制することができる。
【0053】
また、本発明の一態様は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格にフェニル基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0054】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格にフェニル基が結合しており、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0055】
ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に共役が小さいフェニル基が結合した炭化水素化合物は、該フェニル基にさらに置換基を結合させても共役が広がりづらいため、透光性を保つことができ好ましい。また、該炭化水素化合物を複合材料に用いることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制することができるため、好ましい。また、複合材料の膜質が安定化するため好ましい。また、共役が広がりにくくなるため、透光性向上の観点でも有効である。
【0056】
また、本発明の一態様は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位にフェニル基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0057】
また、本発明の一態様は、分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、該炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位にフェニル基が結合しており、該フェニル基が1以上の置換基を有し、該置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料である。
【0058】
また、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含む複合材料である。
【0059】
【化6】

【0060】
式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R10〜R14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R10〜R14のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0061】
また、本発明の一態様は、一般式(G2)で表される炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含む複合材料である。
【0062】
【化7】

【0063】
式中、R21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R30〜R34は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R30〜R34のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0064】
また、本発明の一態様は、一般式(G3)で表される炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含む複合材料である。
【0065】
【化8】

【0066】
式中、R41〜R47は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R50〜R54は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R50〜R54のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0067】
また、本発明の一態様は、一般式(G4)で表される炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含む複合材料である。
【0068】
【化9】

【0069】
式中、R61〜R71は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R80〜R84は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R80〜R84のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0070】
また、本発明の一態様は、一般式(G5)で表される炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含む複合材料である。
【0071】
【化10】

【0072】
式中、α〜αは、それぞれ独立に、フェニレン基又はビフェニレン基を表し、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。k、n、mは、それぞれ独立に、0又は1を表す。なお、該ナフチル基は、α−ナフチル基またはβ−ナフチル基であることが好ましい。また、該フェナントリル基は、9−フェナントリル基であることが好ましい。また、該トリフェニレニル基は、トリフェニレン−2−イル基であることが好ましい。
【0073】
また、上記複合材料に含まれる遷移金属酸化物としては、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、銀酸化物から選ばれる一種又は複数種であることが好ましい。
【0074】
上記複合材料に用いる炭化水素化合物の最高被占有軌道準位(HOMO準位)は、特に制限はないが、本発明の一態様で用いる炭化水素化合物は、比較的深いHOMO準位(具体的には−5.7eV以下)を持つ。そのため、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制することができる。したがって、上記複合材料に用いる炭化水素化合物のHOMO準位は光電子分光法での測定値が−5.7eV以下であることが好ましい。
【0075】
また、本発明の一態様は、一対の電極間に発光物質を含む層(以下、EL層とも記す)を有し、発光物質を含む層は、上記複合材料を含む層を有する発光素子である。
【0076】
上記発光素子において、複合材料を含む層は、一対の電極のうち、陽極として機能する電極と接することが好ましい。また、複合材料を含む層は、一対の電極のうち、陰極として機能する電極と接することが好ましい。
【0077】
また、上記発光素子は、複合材料を含む層を2層有していても良く、該複合材料を含む層のうち、一方の層は、一対の電極のうち陽極として機能する電極と接し、他方の層は、陰極として機能する電極と接することが好ましい。
【0078】
ここで、上述した通り、本発明の一態様で用いる炭化水素化合物は、比較的深いHOMO準位(具体的には、−5.7eV以下)を持つ。したがって、上記複合材料を含む層の陰極側に接する層に用いられる有機化合物(正孔輸送層や発光層等に用いる有機化合物)が、比較的深いHOMO準位(例えば、−6.0eV)を持つ場合でも、上記複合材料から該有機化合物への正孔注入を良好に行うことができる。無論、該有機化合物が浅いHOMO準位(例えば、−5.0eV)を持つ場合でも、上記複合材料から該有機化合物への正孔注入を良好に行うことができる。したがって、上記複合材料を含む層の陰極側に接する層(以下、第1の層と記す)が有する有機化合物のHOMO準位は、−6.0eV以上−5.0eV以下であることが好ましい。
【0079】
さらに、上記複合材料と該有機化合物のHOMO準位の差は小さいことが好ましく、その差は、0.2eV以内であることが好ましい。またこのように、第1の層に用いられる有機化合物のHOMO準位と、上記複合材料で用いる炭化水素化合物のHOMO準位の差を小さくするという観点から、第1の層に用いられる有機化合物として、上記複合材料で用いる炭化水素化合物と同様、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である)が結合した、分子量が350以上2000以下の炭化水素化合物を用いることが好ましい。例えば、上記複合材料で用いる炭化水素化合物と同じ炭化水素化合物を用いればよい。
【0080】
また、同様の観点から第1の層と接する発光層も、上記複合材料で用いる炭化水素化合物と同様、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である)が結合した、分子量が350以上2000以下の炭化水素化合物を含む(特に、ホスト材料として含む)ことが好ましい。例えば、上記複合材料で用いる炭化水素化合物と同じ炭化水素化合物を用いればよい。
【0081】
つまり、本発明の一態様は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、該発光物質を含む層は、陽極側から、上記複合材料を含む層、第1の層、及び発光層を有し、上記複合材料を含む層、第1の層、及び発光層は、それぞれ、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である)が結合した、分子量が350以上2000以下の炭化水素化合物を含む発光素子である。
【0082】
特に、複合材料を含む層、第1の層、及び発光層に含まれる該炭化水素化合物が同一の化合物であると、これらの層間での正孔注入性が良好であるため、好ましい。また、合成コストを抑えることができ、好ましい。
【0083】
また、本発明の一態様は、一対の電極間にEL層を複数有し、複数のEL層の間に、上記複合材料を含む層を有する発光素子である。すなわち、複数の発光ユニットを積層した構成の有機EL発光素子(タンデム型の有機EL発光素子)における中間層(電荷発生層とも記す)に、上記複合材料を用いることができる。このとき、該複合材料を含む層の陰極側に接して、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である)が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物を含む層を設けることが好ましい。
【0084】
また、本発明の一態様は、上記発光素子を有する発光装置である。また、該発光装置を表示部に有する電子機器である。また、該発光素子を発光部に有する照明装置である。
【発明の効果】
【0085】
本発明の一態様によれば、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料であって、キャリア輸送性の高い複合材料を提供することができる。また、有機化合物へのキャリア注入性の高い複合材料を提供することができる。また、電荷移動相互作用による光吸収が生じにくい複合材料を提供することができる。また、可視光に対する透光性が高い複合材料を提供することができる。
【0086】
また、本発明の一態様によれば、該複合材料を発光素子に適用することにより、発光効率の高い発光素子を提供することができる。また、駆動電圧の低い発光素子を提供することができる。また、長寿命の発光素子を提供することができる。また、該発光素子を用いた発光装置、該発光装置を用いた電子機器及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一態様の発光素子を示す図。
【図2】本発明の一態様の発光素子を示す図。
【図3】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図4】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図5】本発明の一態様の電子機器を示す図。
【図6】本発明の一態様の照明装置を示す図。
【図7】実施例1のN3Pと、その複合材料の吸光度を示す図。
【図8】実施例1のPn3Pと、その複合材料の吸光度を示す図。
【図9】実施例1のP4Nと、その複合材料の吸光度を示す図。
【図10】実施例1のDPAnthと、その複合材料の吸光度を示す図。
【図11】実施例2の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図12】実施例2の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図13】実施例2の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
【図14】実施例3の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図15】実施例3の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図16】実施例3の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
【図17】実施例4の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図18】実施例4の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図19】実施例4の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
【図20】実施例5の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図21】実施例5の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図22】実施例5の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
【図23】実施例6の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図24】実施例6の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図25】実施例6の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
【図26】実施例の発光素子を示す図。
【図27】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図28】実施例7の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図29】実施例7の発光素子の電圧−電流特性を示す図。
【図30】実施例7の発光素子の輝度−色度座標特性を示す図。
【図31】実施例7の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図32】N3Pのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図33】Pn3Pのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図34】βN3Pのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図35】実施例8のβN3Pと、その複合材料の吸光度を示す図。
【図36】実施例9の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図37】実施例9の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図38】実施例10の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図39】実施例10の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図40】実施例10の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
【図41】mPnBPのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0088】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0089】
まず、本発明の背景となる技術と本発明との相違について、概要を説明する。特許文献1で示されているように、芳香族アミンと電子受容性の無機化合物が混合された複合材料は、電子受容性の無機化合物が芳香族アミンから電子を奪うことにより、芳香族アミンにホールが、無機化合物に電子が発生すると解釈されている。換言すれば、このような複合材料は、芳香族アミンと電子受容性の無機化合物とが電荷移動錯体を形成していると解釈される。そして、このような現象を利用して、これまでにキャリア輸送性、キャリア注入性に優れた複合材料がいくつか報告されている。
【0090】
しかしながらこのような場合、一般的には、電荷移動相互作用に基づく吸収バンドが発生することが知られている。この吸収バンドは深赤色〜近赤外領域に発生すると言われているが、実際には、多くの場合、可視光領域にも吸収バンドが生じる。例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)と酸化バナジウム、又はNPBと酸化モリブデンを混合した複合材料は、1300nm付近の吸収バンド以外に、500nm付近にも吸収バンドが生じる。このことは、発光素子のような光学デバイスにとっては大きなデメリットとなる。
【0091】
本発明者らは、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である)が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と電子受容性を示す無機化合物、又は、該炭化水素化合物と遷移金属酸化物とを複合させることにより、電荷移動相互作用に基づく光吸収が確認できない(ほとんど発生しない)にも関わらず、優れたキャリア輸送性やキャリア注入性を発現できることを見出した。従来、電荷移動相互作用によって発生するホール及び電子が、キャリア輸送性、キャリア注入性発現の要素と考えられていたわけであるから、電荷移動相互作用による光吸収が明確に観察されないにも関わらず優れたキャリア輸送性やキャリア注入性を発現できる本発明は、その一般論とは矛盾しており、予測不可能の驚くべき機能であると言える。
【0092】
先に記した通り、本発明の一態様で用いる炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格を含む。また、該骨格に結合する1以上の置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である。ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、及びトリフェニレンは、それ自体のエネルギーギャップが大きい。したがって、炭化水素化合物が有する環を上記から選択することで、該炭化水素化合物自体が可視光領域に吸収ピークを持たない(可視光領域に吸収をほとんど持たない)化合物となるよう設計できる。したがって、透光性向上の観点で大きなメリットがある。
【0093】
また、ナフタレン、フェナントレン、及びトリフェニレンは、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によると、HOMO準位が非常に低い。したがって、本発明の一態様に用いる炭化水素化合物単体は、他の有機化合物への正孔注入性には優れていると考えられるが、AlやITOに代表されるような導電材料(仕事関数が3〜5eV程度)から正孔を受け取ることは困難であると考えられる。しかしながら、本発明の一態様のような複合材料を形成することにより、他の有機化合物への優れた正孔注入性を保ちつつ、電極からの正孔注入性の問題点を克服することができる。このような複合材料の性質は、発光素子に用いた際に、駆動電圧の低減に寄与する。また、透光性が高いことから、発光効率を高めることができる。さらには、深いHOMO準位により発光素子中にキャリアの蓄積を防止できると考えられるため、長寿命化を達成できる。
【0094】
以下では、本発明の態様について、具体例を列挙しながら説明する。
【0095】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の複合材料について説明する。
【0096】
本発明の一態様の複合材料は特定の骨格を有する有機化合物と無機化合物との複合材料である。本発明の一態様の複合材料の作製方法に限定は無く、例えば、当該有機化合物と無機化合物を同時に蒸着する共蒸着法により形成することができる。本発明の一態様の複合材料において、有機化合物と無機化合物の混合比は質量比で8:1〜1:2(=有機化合物:無機化合物)程度が好ましく、さらに望ましくは4:1〜1:1(=有機化合物:無機化合物)である。混合比は複合材料を共蒸着法によって形成する場合は、有機化合物と無機化合物の蒸着レートをそれぞれ調節することによって制御することができる。
【0097】
まず、本発明の一態様の複合材料に用いることが可能な有機化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物である。なお、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である。
【0098】
該炭化水素化合物を用いた複合材料は、キャリア輸送性が高い。また、有機化合物へのキャリア注入性が高い。また、無機化合物との電荷移動相互作用による光吸収が生じにくい。また、透光性が高い。
【0099】
該炭化水素化合物を用いた複合材料は、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制するだけでなく、炭化水素化合物自体の吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じるように制御できるため、高い透光性を得ることができる。
【0100】
ナフタレン、フェナントレン、及びトリフェニレンは、縮合環であるため、キャリア輸送性(特に正孔輸送性)を発現するのに重要な共役環である。さらに、上記置換基が有する環(ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種)は、いずれもそのキャリア輸送性(特に正孔輸送性)を増強させるのに重要な共役環であるが、それと同時に、エネルギーギャップの広い共役環でもある。したがって、上記置換基が有する環がこれらの環のみであることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制するだけでなく、炭化水素化合物の吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じるよう制御できるため、該炭化水素化合物を用いることで、透光性の高い複合材料を得ることができる。
【0101】
また、該複合材料を作製する方法には、特に限定は無いが、該炭化水素化合物と無機化合物とを共蒸着することが好ましい。この場合は該炭化水素化合物が気化しやすいことが望まれる。したがって、分子量の観点から、炭化水素化合物の分子量は2000以下であることが望ましい。また、該炭化水素化合物にアルキル鎖などを結合させて、湿式プロセス(溶液にして成膜する方法)などで該複合材料を形成する場合は、分子量は2000以上でも構わない。
【0102】
なお、本発明者らがこれまで実験及び検討を行ってきた結果から、芳香族炭化水素化合物(例えばアントラセン化合物)と、無機化合物とを混合した際、芳香族炭化水素化合物と無機化合物の混合比における無機化合物の比率が低い場合には、混合により形成される複合材料は結晶化しやすいことが示された(後に示す実施例1の比較例の結果を参照)。逆に、無機化合物の比率が高い場合には、結晶化は抑制できるものの、芳香族炭化水素化合物が有する骨格(例えばアントラセン骨格)と無機化合物との電荷移動相互作用に由来するわずかな吸収ピークが可視光領域で増大する。一方で、本発明の一態様に示すように、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基(置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種)が結合した炭化水素化合物を用いる場合は、複合材料の結晶化は抑制され、複合材料の膜質が安定化する。したがって、本発明の一態様の複合材料の場合には、結晶化を抑制する目的で無機化合物の比率を高くする必要がなく、電荷移動相互作用に由来する吸収ピークが可視光領域に観測されることを防ぐことができる。
【0103】
特に、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基が結合した炭化水素化合物を用いることが好ましい。なお、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である。このような炭化水素化合物を複合材料に用いることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制することができる。
【0104】
ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位にバルキーな(嵩高い)置換基(例えば炭素数が6以上)を有する場合、該骨格と該置換基との立体障害により、分子全体が立体的な構造となる。このことにより、複合材料の膜質が安定化する。
【0105】
また、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格にフェニル基が結合し、該フェニル基が1以上の置換基を有することが好ましい。なお、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である。
【0106】
フェニル基は共役が小さいため、該フェニル基に置換基を結合させて分子量を増大させたとしても、該炭化水素化合物は広いエネルギーギャップを保つことができる。これは透光性向上の観点でも有効である。そして、該炭化水素化合物を複合材料に用いることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制することができるため、好ましい。
【0107】
さらに、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に、バルキーな部位(例えば、上記のフェニル基を含めて炭素数の総和が12以上の骨格)を有する場合、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格と該バルキーな部位との立体障害により、分子全体が立体的な構造となる。このことにより、複合材料の膜質が安定化する。
【0108】
上記複合材料に用いる炭化水素化合物を、よりバルキーな構造とするために、3つ以上の炭化水素骨格が結合している化合物であることが好ましく、そのうち2つの骨格が、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、及びトリフェニレン骨格のいずれかであることが特に好ましい。
【0109】
また、該複合材料を作製する際には、該炭化水素化合物と無機化合物とを共蒸着することが好ましいが、この場合は該炭化水素化合物が気化しやすいことが望まれる。したがって、該炭化水素化合物の分子量としては、2000以下程度が好ましい。
【0110】
ナフタレン、フェナントレン、及びトリフェニレンは、縮合環であるため、キャリア輸送性(特に正孔輸送性)を発現するのに重要な共役環である。さらに、上記置換基が有する環(ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種)は、いずれもそのキャリア輸送性(特に正孔輸送性)を増強させるのに重要な共役環であるが、それに加えて、エネルギーギャップの広い共役環でもある。したがって、置換基が有する環がこれらの環のみであることで、電荷移動相互作用に基づく光吸収の発生を抑制するだけでなく、炭化水素化合物の吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じるように制御できるため、該炭化水素化合物を用いることで、透光性の高い複合材料を得ることができる。
【0111】
フェニル基がメタ位に該置換基を有すると、炭化水素化合物のバンドギャップが広く保てるため好ましい。また、構造がより立体的になり、結晶化しづらくなるため、好ましい。フェニル基がパラ位に該置換基を有すると、炭化水素化合物のキャリア輸送性が良好となるため好ましい。
【0112】
本発明の一態様では、フェナントレン骨格を有することで、高い透光性を保ちつつ、分子量が大きい炭化水素化合物を設計できる。該炭化水素化合物は、熱物性が良いため、好ましい。また、該炭化水素化合物を含む複合材料を適用することで、駆動電圧が低い発光素子を得ることができる。
【0113】
よって、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0114】
【化11】

【0115】
式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R10〜R14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R10〜R14のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0116】
また、本発明の一態様では、ナフタレン骨格を有することで、エネルギーギャップが広い炭化水素化合物を設計できる。該炭化水素化合物は、可視光領域に吸収ピークを持たないため、好ましい。また、該炭化水素化合物を含む複合材料を適用することで、発光効率が高い発光素子を得ることができる。
【0117】
よって、本発明の一態様は、一般式(G2)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0118】
【化12】

【0119】
式中、R21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R30〜R34は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R30〜R34のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0120】
また、ナフタレン骨格のα位に比べて、β位の位置でフェニル基が結合している方が、他の置換基との立体障害が少なく、合成が容易であるため、好ましい。また、分子構造が立体的になり、分子間相互作用が小さくなり、結晶化しづらくなるため、α位の方が好ましい。また、分子内の置換基(ナフチル基)の回転が抑制され、熱物性(ガラス転移温度)が向上するため、α位の方が好ましい。
【0121】
よって、本発明の一態様は、一般式(G3)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0122】
【化13】

【0123】
式中、R41〜R47は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R50〜R54は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R50〜R54のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0124】
本発明の一態様では、トリフェニレン骨格を有することで、高い透光性を保ちつつ、分子量が大きい炭化水素化合物を設計できる。該炭化水素化合物は、熱物性が良いため、好ましい。また、分子構造が立体的になり、分子間相互作用が小さくなり、結晶化しづらくなるため、好ましい。
【0125】
また、本発明の一態様は、一般式(G4)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0126】
【化14】

【0127】
式中、R61〜R71は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R80〜R84は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R80〜R84のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。
【0128】
また、本発明の一態様は、一般式(G5)で表される炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料である。
【0129】
【化15】

【0130】
式中、α〜αは、それぞれ独立に、フェニレン基又はビフェニレン基を表し、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。k、n、mは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0131】
Ar〜Arにおいて、ナフチル基、フェナントリル基、又はトリフェニレニル基が置換基を有する場合、該置換基としては、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基が好ましい。
【0132】
α〜αの好ましい構造としては、例えば、一般式(α−1)乃至一般式(α−5)で表される置換基が挙げられる。
【0133】
【化16】

【0134】
α〜αが、一般式(α−1)又は一般式(α−3)で表される場合(一般式(G5)において、Ar〜Arと、中心のベンゼン環とが、それぞれフェニレン基やビフェニレン基を介してパラ位で結合している場合)、該炭化水素化合物はキャリア輸送性に優れるため好ましい。α〜αが、一般式(α−2)、一般式(α−4)、又は一般式(α−5)で表される場合(Ar〜Arと、中心のベンゼン環とが、それぞれフェニレン基やビフェニレン基を介してメタ位で結合している場合)、該炭化水素化合物の分子構造が立体的になり、結晶化しづらくなるため好ましい。一般式(α−3)乃至一般式(α−5)のように、α〜αがビフェニレン基の場合、該炭化水素化合物の熱物性が向上するため好ましい。
【0135】
合成の簡便性を考慮すると、α〜αがいずれもフェニレン基である、又はいずれもビフェニレン基であることが好ましい。かつ、Ar〜Arがいずれも置換もしくは無置換のナフチル基である、いずれも置換もしくは無置換のフェナントリル基である、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基であることが好ましい。かつ、k、n、mが同じ数字であることが好ましく、k、n、mは、いずれも0であることが特に好ましい。また、Ar〜Arがいずれも無置換のナフチル基である、いずれも無置換のフェナントリル基である、又は無置換のトリフェニレニル基であり、k、n、mはいずれも0であることがさらに好ましい。そうすれば、同じ置換基をベンゼンに対して3つ同時に結合させるだけでよく、簡便かつ、安価に分子量の高い炭化水素化合物を得ることができる。ベンゼンに対してプロペラ状に剛直な置換基が結合しているため、立体的な構造となり、熱物性の良い炭化水素化合物を得ることができる。
【0136】
以下の構造式(100)〜(127)及び構造式(130)〜(145)に本発明の一態様の複合材料に用いることが可能な有機化合物の一例を示す。
【0137】
【化17】

【0138】
【化18】

【0139】
【化19】

【0140】
【化20】

【0141】
【化21】

【0142】
【化22】

【0143】
【化23】

【0144】
続いて、本発明の一態様の複合材料に用いることが可能な無機化合物について説明する。
【0145】
本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物を用いることができる。例えば、塩化鉄(III)や塩化アルミニウムなどは、電子受容性が高い無機化合物の一例である。
【0146】
または、本発明の一態様の複合材料には、無機化合物として遷移金属酸化物を用いることができる。好ましくは元素周期表における4〜8族に属する金属の酸化物が望ましい。特にチタン酸化物、バナジウム酸化物、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、銀酸化物が好ましい。この中でもモリブデン酸化物は蒸着がしやすく、吸湿性が低く、安定であることから特に扱いやすい材料である。
【0147】
遷移金属酸化物は、上述した塩化鉄(III)等の強力なルイス酸に比べれば、電子受容性はそれほど高くない(反応性は低い)と考えられる。また、上述した通り、本発明の一態様である複合材料においては、電荷移動相互作用に基づく吸収の発生が少ない(あるいはほとんど発生しない)。これらのことから、本発明において、遷移金属酸化物は一般的な意味合いでの電子受容体として作用しているという証明はし難い。しかしながら一方で、実施例で後述するように、実験的には、電界を印加した際には炭化水素化合物単体では流せないほどの電流を流せる事実がある。したがって、本発明の一態様である複合材料において遷移金属酸化物を用いた場合、少なくとも電界印加のアシストにより容易にキャリアが発生しているものと考えられる。したがって本明細書では、少なくとも電界印加のアシストによりキャリアが発生していれば、複合材料中の無機化合物(上述のような遷移金属酸化物など)は電子受容性を有するものとして扱う。
【0148】
以上に述べた本発明の一態様の複合材料に含まれる炭化水素化合物のHOMO準位は、光電子分光法での測定値が−5.7eV以下であることが好ましい。上述したとおり、ナフタレン、フェナントレン、及びトリフェニレンは、HOMO準位が非常に低い。したがって、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格を含む本発明の一態様で用いる炭化水素化合物単体も、HOMO準位を−5.7eV以下という低い値をとることが容易である。
【0149】
炭化水素化合物が低いHOMO準位を有する場合、他の有機化合物への正孔注入性には優れていると考えられるが、AlやITOに代表されるような導電材料(仕事関数が3〜5eV程度)から正孔を受け取ることは困難であると考えられる。しかしながら、本発明の一態様のような複合材料を形成することにより、他の有機化合物への優れた正孔注入性を保ちつつ、電極からの正孔注入性の問題点を克服することができる。このような複合材料の性質は、発光素子に用いた際に、駆動電圧の低減に寄与する。また、透光性が高いことから、発光効率を高めることができる。さらには、深いHOMO準位によりキャリアの蓄積を防止できると考えられるため、長寿命化を達成できる。
【0150】
以上で述べたように、本発明の一態様の複合材料は、HOMO準位が低く、キャリア輸送性が高い材料である。また、本発明の一態様の複合材料は、有機化合物へのキャリア注入性に優れた材料である。また、本発明の一態様の複合材料は、電荷移動相互作用に基づく吸収が生じにくい材料である。また、本発明の一態様の複合材料は、透光性が高い材料である。
【0151】
したがって、本発明の一態様の複合材料は、発光素子や、光電変換素子、トランジスタ等の半導体素子に用いることが可能である。
【0152】
また、本発明の一態様の複合材料は、キャリア輸送性および有機化合物へのキャリア注入性に優れることから、発光素子等に用いることで、低い駆動電圧を実現できる。
【0153】
また、本発明の一態様の複合材料が透光性を有することから、発光素子等に用いることで、高い発光効率を実現できる。
【0154】
また、本発明の一態様の複合材料は電荷の蓄積を抑制することから、発光素子等に用いることで、長寿命の素子を作製することができる。
【0155】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0156】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について図1を用いて説明する。
【0157】
本実施の形態の発光素子は、一対の電極間にEL層(発光物質を含む層)を挟持して形成される。EL層は、少なくとも、実施の形態1で示した本発明の一態様の複合材料を含む層と、発光層とを有する。さらに、EL層は、そのほかの層を有していても良い。例えば、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリアの再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を備えていても良い。本明細書では、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層をキャリアの注入、輸送などの機能を有する、機能層ともよぶ。機能層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などを用いることができる。なお、本実施の形態において、本発明の一態様の複合材料を含む層は、正孔注入層として用いる。
【0158】
また、本発明の一態様の複合材料を含む層と、発光層との間に、一層以上の層(正孔輸送層など)を設ける事が好ましい。そのことで、発光層で生じた励起エネルギーが、該複合材料を含む層へ伝わることでの消光(効率低下)を抑制でき、より高効率な素子を得ることができる。
【0159】
図1(A)に示す発光素子は、第1の電極101及び第2の電極108の一対の電極間にEL層102が設けられている。EL層102は、第1の電極101上に正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705の順で積層されている。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極108は陰極として機能する。
【0160】
発光素子の支持体(図1(A)の基板100参照)としては、例えばガラス基板、石英基板、又はプラスチック基板などを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル等からなる)、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子の支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0161】
第1の電極101としては、様々な金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、IWZOは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0162】
第1の電極101の材料としては、仕事関数の大きい(仕事関数が4.0eV以上)材料を用いることが好ましい。なお、第1の電極101と、本発明の一態様の複合材料を含む層とが接する構成の発光素子については、第1の電極101に用いる材料は、仕事関数の大きい材料に限定されず、仕事関数の小さい材料を用いることもできる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等を用いることもできる。
【0163】
正孔注入層701は、本発明の一態様の複合材料を含む層である。
【0164】
本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物(実施の形態1参照)はHOMO準位が低く、正孔輸送層702及び発光層703への正孔注入性が良好である。一方、第1の電極101との間に注入障壁が生じ、第1の電極101から正孔が注入されにくい。
【0165】
しかし、本発明の一態様の発光素子は、正孔注入層701に、本発明の一態様の複合材料を用いるため、第1の電極101と正孔注入層701との間の注入障壁を緩和することができる。したがって、第1の電極101から発光層703までの注入障壁が小さく、キャリア注入性の高い素子の実現が可能となり、駆動電圧の低い発光素子を提供することができる。
【0166】
さらに、本発明の一態様の複合材料はキャリアの発生効率が高く、キャリア輸送性が高い。そのため、本発明の一態様の複合材料を用いることで、発光効率の高い発光素子を実現することができる。
【0167】
また、該炭化水素化合物は、可視光領域に大きな吸収ピークが生じない。さらに、該炭化水素化合物は、HOMO準位が低く、該無機化合物との間に、電荷移動相互作用に基づく吸収が生じにくい。したがって、本発明の一態様の複合材料は、可視光領域に吸収ピークが生じにくく、高い透光性を有する。よって、このことからも、本発明の一態様の複合材料を用いることで、発光効率の高い発光素子を実現することができると言える。
【0168】
また、本発明の一態様の複合材料は、電荷の蓄積を抑制できるため、長寿命の発光素子を提供することができる。
【0169】
本発明の一態様の複合材料を適用する発光素子について、発光色は問わない。また、本発明の一態様の複合材料を適用する発光素子について、蛍光発光か、燐光発光か、は問わない。本発明の一態様の複合材料は、いずれの発光素子においても、発光エネルギーを吸収して効率を損なうことがほとんど無く、正孔注入層に好適に用いることができる。
【0170】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層702の材料として、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物を用いても良い。そのほか、正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0171】
また、正孔輸送層702には、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)のようなカルバゾール誘導体や、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)のようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0172】
特に、本発明の一態様である複合材料における炭化水素化合物は、低いHOMO準位を有するため、正孔輸送層にも低いHOMO準位を有する材料を適用することができる。このような構成とすることにより、発光層と正孔輸送層との界面における電荷の蓄積を防ぐことができ、発光素子を長寿命化できる。具体的には、正孔輸送層のHOMO準位は−5.6eV以下であることが好ましい。また、このような観点から、正孔輸送層に用いる化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、アントラセン誘導体などが好ましい。また、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物を用いても良い。この時、正孔注入層と正孔輸送層に本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物を用いると、HOMO準位が近くなるため、キャリア注入障壁はより小さくなり、好ましい。特に、正孔注入層に用いる本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物と、正孔輸送層に用いる炭化水素化合物が同じ材料であると好ましい。また、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物を正孔輸送層に用い、それに発光層を接して設けると、信頼性の良い素子が得られ、好ましい。
【0173】
なお、正孔輸送層702には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を用いることもできる。
【0174】
発光層703は、発光性の有機化合物を含む層である。発光性の有機化合物としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0175】
発光層703に用いることができる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0176】
なお、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物は、紫色〜青色の蛍光を発する。よって、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物を、蛍光性化合物として、発光層703に用いることができる。
【0177】
また、発光層703に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CFppy)(pic)])、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pbi)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(dpo)(acac)])、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(p−PF−ph)(acac)])、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bt)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdppr−Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス{2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト}イリジウム(III)(略称:[Ir(dmmoppr)(acac)])などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−iPr)(acac)])などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(btp)(acac)])、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0178】
なお、発光層703としては、上述した発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、ゲスト材料よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、HOMO準位が低い物質を用いることが好ましい。また、ゲスト材料が蛍光性化合物の場合は一重項励起エネルギーの準位(S1準位)、燐光性化合物の場合は三重項励起エネルギーの準位(T1準位)が高いことが好ましい。
【0179】
本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物はLUMO準位が高く、HOMO準位が低く、S1準位とT1準位がそれぞれ高い。そのため、ホスト材料に用いることができる。具体的には、可視光を発光する蛍光性化合物のホスト材料、黄色や、黄色より長波長の色を発光する燐光性化合物のホスト材料に用いることができる。
【0180】
ホスト材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、NPB(又はα−NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。
【0181】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動やキャリア移動をより効率良く行うために正孔移動度が高い材料(例えば、NPB等のアミン骨格を有する材料やCBP等のカルバゾール骨格を有する材料)、あるいは電子移動度が高い材料(例えば、Alq等の複素環骨格を有する材料)をさらに添加してもよい。
【0182】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0183】
また、発光層703として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0184】
また、複数の発光層を設け、それぞれの発光層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光層を有する発光素子において、第1の発光層の発光色と第2の発光層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つ以上の発光層を有する発光素子の場合でも同様である。
【0185】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0186】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0187】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0188】
図2(A)に示す発光素子は、基板100上において、第1の電極101及び第2の電極108の一対の電極間に、EL層102が設けられている。EL層102は、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705を有している。図2(A)における発光素子は、基板100上に、陰極として機能する第2の電極108と、第2の電極108上に順に積層した電子注入層705、電子輸送層704、発光層703、正孔輸送層702、正孔注入層701と、さらにその上に設けられた陽極として機能する第1の電極101から構成されている。
【0189】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。また、3つ以上のEL層を有する発光素子の場合でも同様である。
【0190】
EL層は、図1(B)に示すように、第1の電極101と第2の電極108との間に複数積層されていても良い。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は本発明の一態様の複合材料を用いて形成することができる。本発明の一態様の複合材料は、電圧印加時におけるキャリアの発生効率が高く、正孔輸送性が高い。そのため、本発明の一態様の複合材料を用いることで、駆動電圧の低い発光素子を実現することができる。また、発光効率の高い発光素子を実現することができる。
【0191】
この場合も、本発明の一態様の複合材料を含む層に接する正孔輸送層や、該正孔輸送層に接する発光層に、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物を好適に用いることができる。
【0192】
また、該炭化水素化合物は、吸収ピークが可視光領域に生じにくい。また、該炭化水素化合物はHOMO準位が低く、該無機化合物との間に、電荷移動相互作用に基づく吸収が生じにくい、したがって、本発明の一態様の複合材料は、可視光領域に吸収ピークが生じにくく、高い透光性を有する。よって、このことからも、本発明の一態様の複合材料を用いることで、発光効率の高い発光素子を実現することができると言える。
【0193】
また、電荷発生層803は本発明の一態様の複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0194】
同様に、図2(B)に示すように、3つ以上のEL層802を積層した発光素子も適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に、電荷発生層を挟んで複数のEL層を配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度で発光する長寿命素子を実現できる。
【0195】
EL層は、図1(C)に示すように、第1の電極101と第2の電極108との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び第2の電極108と接する複合材料層708を有していても良い。
【0196】
第2の電極108と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて第2の電極108を形成する際に、EL層102が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、本発明の一態様の複合材料を用いることができる。
【0197】
また、上記複合材料層708は電荷発生層として機能するため、第2の電極108から複合材料層708を経由して電子リレー層707に良好にキャリアを注入することができる。
【0198】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0199】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0200】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0201】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0202】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0203】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0204】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0205】
電子リレー層707に含まれるフタロシアニン系材料としては、具体的にはCuPc、SnPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc(Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobalt(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthalocyanine Iron)及びPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16,23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocyanine)のいずれかを用いることが好ましい。
【0206】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0207】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。具体的には、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnOPc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex)及びTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide complex)のいずれかは、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすく、アクセプター性が高いため好ましい。
【0208】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0209】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいても良い。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0210】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0211】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0212】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0213】
その他にも、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を用いることができる。
【0214】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すれば良い。
【0215】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すれば良い。特に、正孔注入層701は本発明の一態様の複合材料とすればよい。また、正孔輸送層702や発光層703はそれぞれ本発明の一態様の複合材料で用いる炭化水素化合物を好適に用いることができる。
【0216】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0217】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の、発光素子を有する発光装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−B及びC−Dで切断した断面図である。
【0218】
本実施の形態の発光装置は、駆動回路部であるソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403と、画素部402と、封止基板404と、シール材405と、FPC(フレキシブルプリントサーキット)409と、素子基板410とを有する。シール材405で囲まれた内側は、空間になっている。
【0219】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPC又はPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0220】
図3(A)に示す素子基板410上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、図3(B)では、駆動回路部であるソース側駆動回路401と、画素部402中の一つの画素が示されている。
【0221】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、TFTで形成される種々のCMOS回路、PMOS回路又はNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0222】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0223】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部又は下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0224】
第1の電極413上には、EL層416、及び第2の電極417がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、又は珪素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれる。
【0225】
また、EL層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法などの液滴吐出法、印刷法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層416は、実施の形態1で示した本発明の一態様の複合材料を含んでいる。また、EL層416を構成する他の材料としては、低分子材料、オリゴマー、デンドリマー、又は高分子材料であっても良い。
【0226】
さらに、EL層416上に形成され、陰極として機能する第2の電極417に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、又はこれらの合金や化合物、Mg−Ag、Mg−In、Al−Li等)を用いることが好ましい。なお、EL層416で生じた光が第2の電極417を透過するためには、第2の電極417として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化亜鉛等)との積層を用いるのが良い。
【0227】
さらにシール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、素子基板410、封止基板404、及びシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される場合もある。
【0228】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル又はアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0229】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0230】
また、本発明の発光素子は、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパッシブマトリクス型の発光装置に用いることもできる。図4に本発明の発光素子を用いたパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図及び断面図を示す。なお、図4(A)は、発光装置を示す斜視図、図4(B)は図4(A)をX−Yで切断した断面図である。
【0231】
図4において、基板501上の第1の電極502と第2の電極503との間にはEL層504が設けられている。第1の電極502の端部は絶縁層505で覆われている。そして、絶縁層505上には隔壁層506が設けられている。隔壁層506の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁層506の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接する辺)の方が上辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層506を設けることで、クロストーク等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0232】
以上により、本発明の一態様の発光素子を有するパッシブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0233】
図27に、本発明の一態様を適用した発光装置の一例を示す。図27(A)は、発光装置を示す上面図、図27(B)(C)は図27(A)をE−F間で切断した断面図である。
【0234】
図27(A)乃至(C)に示す発光装置900は、第1の基板901上に発光素子908(第1の電極101、EL層102、及び第2の電極108)を備える。発光素子908は、実施の形態2に示した材料を用いて形成することができる。EL層102は、本発明の一態様の複合材料を含む。
【0235】
本実施の形態の発光装置は、発光素子が上部方向に光を射出する構造(トップエミッション構造ともいう)、上部及び下部方向に光を射出する構造(デュアルエミッション構造ともいう)、及び、下部方向に光を射出する構造(ボトムエミッション構造ともいう)のいずれの構造も適用することができる。
【0236】
図27(B)にボトムエミッション構造の発光装置を示す。
【0237】
図27(B)に示す発光装置は、第1の基板901上に第1の電極101を有し、第1の電極101上にEL層102を有し、EL層102上に第2の電極108を有する。
【0238】
第1の端子903は、補助配線910及び第1の電極101と電気的に接続し、第2の端子904は、第2の電極108と電気的に接続する。また、第1の電極101の端部及び第2の電極108の端部の間、並びに補助配線910とEL層102の間には、絶縁層909が形成されている。なお、図27(B)において、補助配線910上に第1の電極101が形成されている構成を示すが、第1の電極101上に補助配線910が形成される構成としても良い。
【0239】
そして、第1の基板901及び第2の基板902は、シール材912によって貼り合わされている。また、第1の基板901と第2の基板902の間に、乾燥剤911を有していても良い。
【0240】
また、第1の基板901の上部、下部、または両方に、光取り出し構造を有していても良い。光取り出し構造としては、光が屈折率の高い側から低い側に透過する界面に、凹凸構造を設ければ良い。具体的には、図27(B)に示すように、微細な凹凸構造をもつ光取り出し構造913aを屈折率の高い発光素子908とそれより屈折率が低い第1の基板901との間に設け、凹凸構造をもつ光取り出し構造913bを第1の基板901と大気との間に設ける構成が挙げられる。
【0241】
しかし、発光素子において、第1の電極101が凹凸を有すると、第1の電極101上に形成されるEL層102においてリーク電流が生じる恐れがある。したがって、本実施の形態では、EL層102の屈折率以上の屈折率を有する平坦化層914を光取り出し構造913aと接して設ける。これによって、第1の電極101を平坦な膜とすることができ、第1の電極101の凹凸に起因するEL層におけるリーク電流の発生を抑制することができる。また、平坦化層914と第1の基板901との界面に、光取り出し構造913aを有するため、全反射の影響で大気に取り出せない光を低減し、発光装置の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0242】
なお、図27(B)において、第1の基板901、光取り出し構造913a、及び光取り出し構造913bを異なる要素として示したが、本発明はこれに限られない。これらのうち二つ又は全てが一体に形成されていても良い。また、光取り出し構造913aはシール領域の内側に全てが形成されていても良い。
【0243】
図27(C)にトップエミッション構造の発光装置を示す。
【0244】
図27(C)に示す発光装置は、第1の基板901上に第2の電極108を有し、第2の電極108上にEL層102を有し、EL層102上に第1の電極101を有する。
【0245】
第1の端子903は、第2の電極108と電気的に接続し、第2の端子904は、第1の電極101と電気的に接続する。また、第1の電極101の端部及び第2の電極108の端部の間には、絶縁層909が形成されている。
【0246】
そして、第1の基板901及び第2の基板902は、シール材912によって貼り合わされている。また、第1の電極101上に補助配線を形成しても良い。また、第1の基板901と第2の基板902の間に、乾燥剤911を有していても良い。乾燥剤911は、発光素子の発光領域と重ならない位置に設けることが好ましい。または、発光素子の光を透過する乾燥剤を用いることが好ましい。
【0247】
なお、図27(A)に示す発光装置900の形状は八角形であるが、本発明はこれに限られない。発光装置900および発光素子908は、その他の多角形または曲線をもつ形状としても良い。特に、発光装置900の形状としては、三角形、四角形、正六角形などが好ましい。なぜなら、限られた面積に複数の発光装置900を隙間無く設けることができるためである。また、限られた基板面積を有効に利用して発光装置900を形成できるためである。また、基板上に形成する素子は一つに限られず、複数の素子を設けても良い。
【0248】
第1の基板901及び第2の基板902の材料としては、ガラス、石英、有機樹脂などの透光性を有する材料を用いることができる。第1の基板901及び第2の基板902の少なくとも一方は、発光素子が発する光を透過する。
【0249】
基板として有機樹脂を用いる場合、有機樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹脂などを用いることができる。また、ガラス繊維に有機樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜた基板を使用することもできる。
【0250】
なお、本実施の形態で示した発光装置は、いずれも本発明の一態様の発光素子を用いて形成されることから、消費電力の低い発光装置を得ることができる。
【0251】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0252】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明を適用した一態様である発光装置を用いて完成させた様々な電子機器および照明器具の一例について、図5、図6を用いて説明する。
【0253】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器および照明器具の具体例を図5に示す。
【0254】
図5(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0255】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0256】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0257】
図5(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0258】
図5(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図5(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、又は一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図5(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図5(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0259】
図5(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0260】
図5(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0261】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0262】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0263】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0264】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0265】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0266】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0267】
図5(E)は卓上照明器具であり、照明部7501、傘7502、可変アーム7503、支柱7504、台7505、電源7506を含む。なお、卓上照明器具は、発光装置を照明部7501に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具又は壁掛け型の照明器具なども含まれる。
【0268】
図6は、発光装置を、室内の照明装置811として用いた例である。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。その他、ロール型の照明装置812として用いることもできる。なお、図6に示すように、室内の照明装置811を備えた部屋で、図5(E)で説明した卓上照明器具813を併用してもよい。
【0269】
以上のようにして、発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0270】
なお、本実施の形態に示す構成は、先の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0271】
本実施例では、本発明の一態様の複合材料の具体例を例示する。本発明の一態様の複合材料は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物と、該炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む。なお、該置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である。
【0272】
本実施例の構成例1〜3、及び比較例に用いた炭化水素化合物、及び該炭化水素化合物のHOMO準位(eV)を表1に示す。なお、該HOMO準位は、光電子分光法での測定値である。また、該炭化水素化合物の構造式を以下に示す。
【0273】
【表1】

【0274】
【化24】

【0275】
また、N3Pのトルエン溶液の吸収スペクトルを図32(A)に、発光スペクトルを図32(B)にそれぞれ示す。また、Pn3Pのトルエン溶液の吸収スペクトルを図33(A)に、発光スペクトルを図33(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れて測定を行った。吸収スペクトルに関して、石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図32(A)及び図33(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。図32(B)及び図33(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。N3Pは295nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、351nm(励起波長300nm)であった。また、Pn3Pは302nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは356、及び374nm(励起波長303nm)であった。
【0276】
このように、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物のトルエン溶液の吸収スペクトルは、可視光領域に吸収がほとんど見られないことがわかった。また、発光ピークが短波長側にあることから、発光層に接する正孔輸送層の材料や発光層のホスト材料として、該炭化水素化合物は好適であることがわかった。
【0277】
また、後述するが、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物の薄膜の吸収スペクトルも、可視光領域に吸収がほとんど見られない(図7乃至図10参照)。溶液、薄膜ともに、可視光領域に吸収がほとんど見られないことから、単膜、及び他の有機化合物との混合膜のどちらにおいても、該炭化水素化合物は好適であることがわかった。このことから、本発明の一態様の複合材料、正孔輸送層、及び発光層に、それぞれ、該炭化水素化合物を好適に用いることができることがわかった。
【0278】
また、熱物性を示差走査熱量分析装置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて測定した。Pn3Pのガラス転移点は202℃であった。このことから、Pn3Pは良好な熱物性を示すことがわかった。そのため、この材料を用いた本発明の一態様の複合材料は、良好な熱物性を示すことがわかった。
【0279】
また、構成例1乃至構成例3、及び比較例において、無機化合物としては、酸化モリブデンを用いた。
【0280】
本発明の一態様の複合材料の作製方法について説明する。
【0281】
(構成例1)
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、1−[3,5−ジ(ナフタレン−1−イル)フェニル]ナフタレン(略称:N3P)と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、減圧状態で、共蒸着法によりN3Pと酸化モリブデンとを含む膜を形成した。この時、N3Pと酸化モリブデンの比率が質量比で4:2、4:1、4:0.5(=N3P:酸化モリブデン)となるようにそれぞれ共蒸着した。なお、膜厚は50nmとした。
【0282】
このようにして成膜したN3Pと酸化モリブデンの複合膜(構成例1)の吸収スペクトルを測定した結果を、図7に示す。また、比較のため、N3Pのみの膜(膜厚50nm)の吸収スペクトルも合わせて図示する。
【0283】
(構成例2)
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、9−[3,5−ジ(フェナントレン−9−イル)フェニル]フェナントレン(略称:Pn3P)と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、減圧状態で、共蒸着法によりPn3Pと酸化モリブデンとを含む膜を形成した。この時、Pn3Pと酸化モリブデンの比率が質量比で4:2、4:1、4:0.5(=Pn3P:酸化モリブデン)となるようにそれぞれ共蒸着した。なお、膜厚は50nmとした。
【0284】
このようにして成膜したPn3Pと酸化モリブデンの複合膜(構成例2)の吸収スペクトルを測定した結果を、図8に示す。また、比較のため、Pn3Pのみの膜(膜厚50nm)の吸収スペクトルも合わせて図示する。
【0285】
(構成例3)
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、1,2,3,4−テトラフェニルナフタレン(略称:P4N)と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、減圧状態で、共蒸着法によりP4Nと酸化モリブデンとを含む膜を形成した。この時、P4Nと酸化モリブデンの比率が質量比で4:4、4:2、4:0.5(=P4N:酸化モリブデン)となるようにそれぞれ共蒸着した。なお、膜厚は50nmとした。
【0286】
このようにして成膜したP4Nと酸化モリブデンの複合膜(構成例3)の吸収スペクトルを測定した結果を、図9に示す。また、比較のため、P4Nのみの膜(膜厚50nm)の吸収スペクトルも合わせて図示する。
【0287】
(比較例)
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、減圧状態で、共蒸着法によりDPAnthと酸化モリブデンとを含む膜を形成した。この時、DPAnthと酸化モリブデンの比率が質量比で4:2、4:1、4:0.5(=DPAnth:酸化モリブデン)となるようにそれぞれ共蒸着した。なお、膜厚は50nmとした。
【0288】
このようにして成膜したDPAnthと酸化モリブデンの複合膜(比較例)の吸収スペクトルを測定した結果を、図10に示す。また、比較のため、DPAnthのみの膜(膜厚50nm)の吸収スペクトルも合わせて図示する。
【0289】
図7乃至図10において、横軸は波長(nm)を、縦軸は吸光度(単位なし)を表す。
【0290】
比較例に示した、DPAnthと酸化モリブデンの複合膜(4:0.5=DPAnth:酸化モリブデン)は、結晶化していた。
【0291】
比較例(図10)に用いた炭化水素化合物は、アントラセン骨格を有する。アントラセン骨格を含む炭化水素化合物を複合材料に用いると、厚膜化した際に、アントラセン骨格に由来するわずかな吸収ピークが可視光領域に観察される。一方、構成例1乃至構成例3(図7乃至図9)に示す複合材料は、波長が少なくとも360nm以上の領域に顕著な吸収ピークが見られず、透光性の高い材料であることが分かった。
【0292】
本発明の一態様の複合材料は、可視光領域に顕著な吸収ピークがほとんど見られず、透光性の高い材料であることが分かった。また、本発明の一態様の複合材料は、赤外領域(波長が700nm以上の領域)においても、顕著な吸収ピークがほとんど見られなかった。
【0293】
また、炭化水素化合物と酸化モリブデンからなる本発明の一態様の複合材料の吸収スペクトルは、該炭化水素化合物の吸収スペクトルとほとんど同じ形状を有しており、酸化モリブデンの濃度が高い膜(具体的には、各構成例において、炭化水素化合物と酸化モリブデンの比率が質量比で4:2の膜や4:4の膜)においても、可視光領域から赤外領域までに顕著な吸収ピークがほとんど見られなかった。このことから、本発明の一態様の複合材料は、電荷移動相互作用による光吸収が生じにくいことが示唆された。
【実施例2】
【0294】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料の構造式を以下に示す。なお、先の実施例で用いた材料の構造式は省略する。
【0295】
【化25】

【0296】
以下に、本実施例の発光素子1の作製方法を示す。
【0297】
(発光素子1)
まず、ガラス基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)膜をスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0298】
当該基板1100上に発光素子を形成するための前処理としては、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0299】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0300】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、N3Pと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、50nmとし、N3Pと酸化モリブデンの比率は、質量比で4:2(=N3P:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0301】
次に、正孔注入層1111上に、3−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:PCPN)を10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0302】
さらに、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、及びN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、CzPA、及び1,6mMemFLPAPrnの質量比は、1:0.04(=CzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は30nmとした。
【0303】
次に、発光層1113上に、CzPAを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0304】
その後、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0305】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0306】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。
【0307】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0308】
以上により得られた発光素子1の素子構造を表2に示す。
【0309】
【表2】

【0310】
発光素子1を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子1の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0311】
発光素子1の電圧−輝度特性を図11に示す。図11において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、輝度−電流効率特性を図12に示す。図12において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子1における輝度1100cd/mのときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表3に示す。
【0312】
【表3】

【0313】
表3に示す通り、1100cd/mの輝度の時の発光素子1のCIE色度座標は(x,y)=(0.14,0.18)であった。この結果から、発光素子1は、1,6mMemFLPAPrnに由来する青色発光が得られたことがわかった。
【0314】
図11、12から、発光素子1は、駆動電圧が低く、発光効率が高いことがわかる。
【0315】
次に、発光素子1の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図13に示す。図13において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。
【0316】
信頼性試験は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で本実施例の発光素子を駆動した。
【0317】
図13から、発光素子1の180時間後の輝度は、初期輝度の55%を保っていた。本発明の一態様を適用した発光素子1は、長寿命であることがわかる。
【0318】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用いることで、駆動電圧の低い発光素子を提供できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を正孔注入層に用いることで、長寿命な発光素子を作製できることが示された。
【実施例3】
【0319】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料は先の実施例で用いた材料であるため、化学式は省略する。
【0320】
以下に、本実施例の発光素子2の作製方法を示す。
【0321】
(発光素子2)
発光素子2の正孔注入層1111は、Pn3P及び酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで形成した。その膜厚は、50nmとし、Pn3Pと酸化モリブデンの比率は、質量比で4:2(=Pn3P:酸化モリブデン)となるように調節した。正孔注入層1111以外は、発光素子1と同様に作製した。
【0322】
得られた発光素子2の素子構造を表4に示す。
【0323】
【表4】

【0324】
発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子2の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0325】
発光素子2の電圧−輝度特性を図14に示す。図14において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、輝度−電流効率特性を図15に示す。図15において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子2における輝度830cd/mのときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表5に示す。
【0326】
【表5】

【0327】
表5に示す通り、830cd/mの輝度の時の発光素子2のCIE色度座標は(x,y)=(0.14,0.17)であった。この結果から、発光素子2は、1,6mMemFLPAPrnに由来する青色発光が得られたことがわかった。
【0328】
図14、15から、発光素子2は、駆動電圧が低く、発光効率が高いことがわかる。
【0329】
次に、発光素子2の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図16に示す。図16において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。
【0330】
信頼性試験は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で本実施例の発光素子を駆動した。
【0331】
図16から、発光素子2の140時間後の輝度は、初期輝度の61%を保っていた。本発明の一態様を適用した発光素子2は、長寿命であることがわかる。
【0332】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用いることで、駆動電圧の低い発光素子を提供できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を正孔注入層に用いることで、長寿命な発光素子を作製できることが示された。
【実施例4】
【0333】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料は先の実施例で用いた材料であるため、化学式は省略する。
【0334】
以下に、本実施例の発光素子3の作製方法を示す。
【0335】
(発光素子3)
発光素子3の正孔輸送層1112は、N3Pを10nmの膜厚となるように成膜することで形成した。正孔輸送層1112以外は、発光素子1と同様に作製した。
【0336】
得られた発光素子3の素子構造を表6に示す。
【0337】
【表6】

【0338】
発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子3の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0339】
発光素子3の電圧−輝度特性を図17に示す。図17において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、輝度−電流効率特性を図18に示す。図18において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子3における輝度1000cd/mのときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表7に示す。
【0340】
【表7】

【0341】
表7に示す通り、1000cd/mの輝度の時の発光素子3のCIE色度座標は(x,y)=(0.14,0.18)であった。この結果から、発光素子3は、1,6mMemFLPAPrnに由来する青色発光が得られたことがわかった。
【0342】
図17、18から、発光素子3は、発光効率が高いことがわかる。
【0343】
次に、発光素子3の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図19に示す。図19において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。
【0344】
信頼性試験は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で本実施例の発光素子を駆動した。
【0345】
図19から、発光素子3の140時間後の輝度は、初期輝度の70%を保っていた。本発明の一態様を適用した発光素子3は、長寿命であることがわかる。
【0346】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用い、かつ、本発明の一態様の複合材料に含む炭化水素化合物を正孔輸送層に用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を正孔注入層に用い、かつ、本発明の一態様の複合材料に含む炭化水素化合物を正孔輸送層に用いることで、長寿命な発光素子を作製できることが示された。
【実施例5】
【0347】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料は先の実施例で用いた材料であるため、化学式は省略する。
【0348】
以下に、本実施例の発光素子4の作製方法を示す。
【0349】
(発光素子4)
発光素子4の正孔輸送層1112は、Pn3Pを10nmの膜厚となるように成膜することで形成した。正孔輸送層1112以外は、発光素子2と同様に作製した。
【0350】
得られた発光素子4の素子構造を表8に示す。
【0351】
【表8】

【0352】
発光素子4を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子4の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0353】
発光素子4の電圧−輝度特性を図20に示す。図20において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、輝度−電流効率特性を図21に示す。図21において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子4における輝度1000cd/mのときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表9に示す。
【0354】
【表9】

【0355】
表9に示す通り、1000cd/mの輝度の時の発光素子4のCIE色度座標は(x,y)=(0.14,0.17)であった。この結果から、発光素子4は、1,6mMemFLPAPrnに由来する青色発光が得られたことがわかった。
【0356】
図20、21から、発光素子4は、発光効率が高いことがわかる。
【0357】
次に、発光素子4の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図22に示す。図22において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。
【0358】
信頼性試験は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で本実施例の発光素子を駆動した。
【0359】
図22から、発光素子4の140時間後の輝度は、初期輝度の64%を保っていた。本発明の一態様を適用した発光素子4は、長寿命であることがわかる。
【0360】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用い、かつ、本発明の一態様の複合材料に含む炭化水素化合物を正孔輸送層に用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を正孔注入層に用い、かつ、本発明の一態様の複合材料に含む炭化水素化合物を正孔輸送層に用いることで、長寿命な発光素子を作製できることが示された。
【0361】
また、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用い、かつ、本発明の一態様の複合材料に含む炭化水素化合物を該複合材料に接して設けることで、良好な素子特性が得られることがわかった。さらに、本発明の一態様の複合材料に含む炭化水素化合物を発光層と接して設けることで、良好な素子特性が得られることがわかった。
【0362】
実施例2乃至実施例5における発光素子1乃至発光素子4の実験結果から、本発明の一態様の複合材料は、青色の蛍光発光素子に好適に用いることができることが示された。
【実施例6】
【0363】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料の構造式を以下に示す。なお、先の実施例で用いた材料の構造式は省略する。
【0364】
【化26】

【0365】
以下に、本実施例の発光素子5、発光素子6、及び比較発光素子7の作製方法を示す。
【0366】
(発光素子5)
まず、ガラス基板1100上に、ITSO膜をスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0367】
当該基板1100上に発光素子を形成するための前処理としては、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0368】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0369】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、P4Nと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、40nmとし、P4Nと酸化モリブデンの比率は、質量比で4:2(=P4N:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0370】
次に、正孔注入層1111上に、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0371】
さらに、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、及び、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、2mDBTPDBq−II、NPB、及び[Ir(tBuppm)(acac)]の質量比は、0.8:0.2:0.05(=2mDBTPDBq−II:NPB:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0372】
次に、発光層1113上に、2mDBTPDBq−IIを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0373】
その後、第1の電子輸送層1114a上にBPhenを膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0374】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、LiFを1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0375】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子5を作製した。
【0376】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0377】
(発光素子6)
発光素子6の正孔注入層1111は、Pn3P及び酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで形成した。その膜厚は、40nmとし、Pn3Pと酸化モリブデンの比率は、質量比で4:2(=Pn3P:酸化モリブデン)となるように調節した。正孔注入層1111以外は、発光素子5と同様に作製した。
【0378】
(比較発光素子7)
比較発光素子7の正孔注入層1111は、DPAnth及び酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで形成した。その膜厚は、40nmとし、DPAnthと酸化モリブデンの比率は、質量比で4:2(=DPAnth:酸化モリブデン)となるように調節した。正孔注入層1111以外は、発光素子5と同様に作製した。
【0379】
以上により得られた発光素子5、発光素子6、及び比較発光素子7の素子構造を表10に示す。
【0380】
【表10】

【0381】
これらの発光素子を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0382】
発光素子5、発光素子6、及び比較発光素子7の電圧−輝度特性を図23に示す。図23において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、輝度−電流効率特性を図24に示す。図24において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表11に示す。
【0383】
【表11】

【0384】
表11に示す通り、840cd/mの輝度の時の発光素子5のCIE色度座標は(x,y)=(0.45,0.54)であった。890cd/mの輝度の時の発光素子6のCIE色度座標は(x,y)=(0.45,0.55)であった。1100cd/mの輝度の時の比較発光素子7のCIE色度座標は(x,y)=(0.45,0.55)であった。この結果から、本実施例の発光素子は、[Ir(tBuppm)(acac)]に由来する橙色発光が得られたことがわかった。
【0385】
図23、24から、発光素子5及び発光素子6は、比較発光素子7に比べて、駆動電圧が低く、発光効率が高いことがわかる。
【0386】
次に、発光素子の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図25に示す。図25において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。
【0387】
信頼性試験は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で本実施例の発光素子を駆動した。
【0388】
図25から、発光素子5の150時間後の輝度は、初期輝度の80%を保っており、発光素子6の150時間後の輝度は、初期輝度の77%を保っており、比較発光素子7の150時間後の輝度は、初期輝度の78%を保っていた。
【0389】
発光素子5及び発光素子6は、比較発光素子7と同程度に高い信頼性を有することがわかった。
【0390】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、燐光を発光する発光素子の正孔注入層として用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、燐光を発光する発光素子の正孔注入層として用いることで、駆動電圧の低い発光素子を提供できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、燐光を発光する発光素子の正孔注入層として用いることで、長寿命な発光素子を作製できることが示された。
【0391】
また、本発明の一態様の複合材料は、橙色の燐光を発光する発光素子の正孔注入層として良好に用いることができることが示された。そのため、橙色を含むそれより長波長の燐光を発する発光素子で良好に用いることができることがわかった。
【実施例7】
【0392】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(B)を用いて説明する。本実施例で用いた材料の構造式を以下に示す。なお、先の実施例で用いた材料の構造式は省略する。
【0393】
【化27】

【0394】
以下に、本実施例の発光素子8の作製方法を示す。
【0395】
(発光素子8)
まず、ガラス基板1100上に、ITSO膜をスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0396】
当該基板1100上に発光素子を形成するための前処理としては、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0397】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0398】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、Pn3Pと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、第1の正孔注入層1111aを形成した。その膜厚は、33nmとし、Pn3Pと酸化モリブデンの比率は、質量比で1:0.5(=Pn3P:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0399】
次に、第1の正孔注入層1111a上に、PCPNを30nmの膜厚となるように成膜し、第1の正孔輸送層1112aを形成した。
【0400】
さらに、CzPA、及び1,6mMemFLPAPrnを共蒸着し、第1の正孔輸送層1112a上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、CzPA、及び1,6mMemFLPAPrnの質量比は、1:0.05(=CzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0401】
次に、第1の発光層1113a上に、CzPAを膜厚5nm、BPhenを膜厚15nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0402】
さらに、第1の電子輸送層1114a上に、酸化リチウム(LiO)を0.1nmの膜厚で蒸着し、第1の電子注入層1115aを形成した。
【0403】
その後、第1の電子注入層1115a上に、銅フタロシアニン(略称CuPc)を膜厚2nmで蒸着し、電子リレー層1116を形成した。
【0404】
次に、電子リレー層1116上に、Pn3Pと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、第2の正孔注入層1111bを形成した。その膜厚は40nmとし、Pn3Pと酸化モリブデンの比率は、質量比で1:0.5(=Pn3P:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、本実施例の第2の正孔注入層1111bは、先の実施の形態で説明した電荷発生層として機能する。
【0405】
次に、第2の正孔注入層1111b上に、PCPNを20nmの膜厚となるように成膜し、第2の正孔輸送層1112bを形成した。
【0406】
さらに、2mDBTPDBq−II、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、及び、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])を共蒸着し、第2の正孔輸送層1112b上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、2mDBTPDBq−II、PCBA1BP、及び[Ir(dppm)(acac)]の質量比は、0.8:0.2:0.06(=2mDBTPDBq−II:PCBA1BP:[Ir(dppm)(acac)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は40nmとした。
【0407】
次に、第2の発光層1113b上に、2mDBTPDBq−IIを膜厚15nm、BPhenを膜厚15nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0408】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、LiFを1nmの膜厚で蒸着し、第2の電子注入層1115bを形成した。
【0409】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子8を作製した。
【0410】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0411】
以上により得られた発光素子8の素子構造を表12に示す。
【0412】
【表12】

【0413】
発光素子8を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子8の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0414】
発光素子8の輝度−電流効率特性を図28に示す。図28において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、電圧−電流特性を図29に示す。図29において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流(mA)を表す。また、輝度−色度座標特性を図30に示す。図30において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は色度座標(x座標、又はy座標)を示す。また、発光素子8に0.1mAの電流を流した際の発光スペクトルを、図31に示す。図31において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。また、発光素子8における輝度890cd/mのときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)、相関色温度(K)を表13に示す。
【0415】
【表13】

【0416】
表13に示す通り、890cd/mの輝度の時の発光素子8のCIE色度座標は(x,y)=(0.43,0.38)であった。また、図31に示す通り、発光素子8は、青色発光材料(1,6mMemFLPAPrn)及び橙色発光材料([Ir(dppm)(acac)])がバランス良く発光していることがわかった。図30に示す通り、発光素子8は、輝度による色度の変化が小さく、キャリアバランスが良好な素子であることがわかった。このことから発光素子8は照明装置に用いることが好適であることがわかった。また、表3に示す通り、相関色温度が2800Kであった。発光素子8では、電球色の発光が得られ、このことからも、照明装置に用いることが好適であることがわかった。
【0417】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、タンデム型の発光素子の正孔注入層、電荷発生層に用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、タンデム型の発光素子の正孔注入層、電荷発生層に用いることで、駆動電圧の低い発光素子を提供できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料は、白色の発光素子に好適に用いることができることが示された。
【実施例8】
【0418】
本実施例では、本発明の一態様の複合材料の具体例を例示する。本実施例の構成例4に用いた炭化水素化合物、及び該炭化水素化合物のHOMO準位(eV)を表14に示す。なお、該HOMO準位は、光電子分光法での測定値である。また、該炭化水素化合物の構造式を以下に示す。
【0419】
【表14】

【0420】
【化28】

【0421】
また、βN3Pのトルエン溶液の吸収スペクトルを図34(A)に、発光スペクトルを図34(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れて測定を行った。吸収スペクトルに関して、石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図34(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。図34(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。βN3Pは296nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、363nm(励起波長291nm)であった。
【0422】
このように、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物のトルエン溶液の吸収スペクトルは、可視光領域に吸収がほとんど見られないことがわかった。また、発光ピークが短波長側にあることから、発光層に接する正孔輸送層の材料や発光層のホスト材料として、該炭化水素化合物は好適であることがわかった。
【0423】
また、後述するが、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物の薄膜の吸収スペクトルも、可視光領域に吸収がほとんど見られない(図35参照)。溶液、薄膜ともに、可視光領域に吸収がほとんど見られないことから、単膜、及び他の有機化合物との混合膜のどちらにおいても、該炭化水素化合物は好適であることがわかった。このことから、本発明の一態様の複合材料、正孔輸送層、及び発光層のいずれに対しても、該炭化水素化合物を好適に用いることができることがわかった。
【0424】
また、構成例4において、無機化合物としては、酸化モリブデンを用いた。
【0425】
本発明の一態様の複合材料の作製方法について説明する。
【0426】
(構成例4)
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、2−[3,5−ジ−(ナフタレン−2−イル)−フェニル]−ナフタレン(略称:βN3P)と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、共蒸着法によりβN3Pと酸化モリブデンとを含む膜を形成した。この時、βN3Pと酸化モリブデンの比率が質量比で4:2(=βN3P:酸化モリブデン)、4:1、4:0.5となるようにそれぞれ共蒸着した。なお、膜厚は50nmとした。
【0427】
このようにして成膜したβN3Pと酸化モリブデンの複合膜(構成例4)の吸収スペクトルを測定した結果を、図35に示す。また、比較のため、βN3Pのみの膜(膜厚50nm)の吸収スペクトルも合わせて図示する。なお、図35において、横軸は波長(nm)を、縦軸は吸光度(単位なし)を表す。
【0428】
構成例4(図35)に示す複合材料は、波長が少なくとも360nm以上の領域に顕著な吸収ピークが見られず、透光性の高い材料であることが分かった。このことから、本発明の一態様の複合材料は、可視光領域に顕著な吸収ピークがほとんど見られず、透光性の高い材料であることが分かった。また、本発明の一態様の複合材料は、赤外領域(波長が700nm以上の領域)においても、顕著な吸収ピークがほとんど見られなかった。
【0429】
また、炭化水素化合物と酸化モリブデンからなる本発明の一態様の複合材料の吸収スペクトルは、該炭化水素化合物の吸収スペクトルとほとんど同じ形状を有しており、酸化モリブデンの濃度が高い膜(具体的には、炭化水素化合物と酸化モリブデンの比率が質量比で4:2の膜)においても、可視光領域から赤外領域までに顕著な吸収ピークがほとんど見られなかった。このことから、本発明の一態様の複合材料は、電荷移動相互作用による光吸収が生じにくいことが示唆された。
【実施例9】
【0430】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料の構造式を以下に示す。なお、先の実施例で用いた材料の構造式は省略する。
【0431】
【化29】

【0432】
以下に、本実施例の発光素子9の作製方法を示す。
【0433】
(発光素子9)
まず、ガラス基板1100上に、ITSO膜をスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0434】
当該基板1100上に発光素子を形成するための前処理としては、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0435】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0436】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、βN3Pと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、50nmとし、βN3Pと酸化モリブデン(VI)の比率は、質量比で4:2(=βN3P:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0437】
次に、正孔注入層1111上に、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)を10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0438】
さらに、CzPA、及び1,6mMemFLPAPrnを共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、CzPA、及び1,6mMemFLPAPrnの質量比は、1:0.04(=CzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は30nmとした。
【0439】
次に、発光層1113上に、CzPAを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0440】
その後、第1の電子輸送層1114a上にBPhenを膜厚15nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0441】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、LiFを1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0442】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子9を作製した。
【0443】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0444】
以上により得られた発光素子9の素子構造を表15に示す。
【0445】
【表15】

【0446】
発光素子9を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子9の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0447】
発光素子9の電圧−輝度特性を図36に示す。図36において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、輝度−電流効率特性を図37に示す。図37において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子9における輝度1100cd/mのときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表16に示す。
【0448】
【表16】

【0449】
表16に示す通り、1100cd/mの輝度の時の発光素子9のCIE色度座標は(x,y)=(0.14,0.18)であった。この結果から、発光素子9は、1,6mMemFLPAPrnに由来する青色発光が得られたことがわかった。
【0450】
図36、37から、発光素子9は、駆動電圧が低く、発光効率が高いことがわかる。
【0451】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、発光素子の正孔注入層に用いることで、駆動電圧の低い発光素子を提供できることが示された。
【0452】
また、本実施例における発光素子9の実験結果から、本発明の一態様の複合材料は、青色の蛍光発光素子に好適に用いることができることが示された。
【実施例10】
【0453】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について、図26(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料は先の実施例で用いた材料であるため、化学式は省略する。
【0454】
以下に、本実施例の発光素子10の作製方法を示す。
【0455】
(発光素子10)
まず、ガラス基板1100上に、ITSO膜をスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0456】
当該基板1100上に発光素子を形成するための前処理としては、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0457】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0458】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、P4Nと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、40nmとし、P4Nと酸化モリブデンの比率は、質量比で4:2(=P4N:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0459】
次に、正孔注入層1111上に、BPAFLPを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0460】
さらに、2mDBTPDBq−II、NPB、及び、[Ir(dppm)(acac)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、2mDBTPDBq−II、NPB、及び[Ir(dppm)(acac)]の質量比は、0.8:0.2:0.05(=2mDBTPDBq−II:NPB:[Ir(dppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0461】
次に、発光層1113上に、2mDBTPDBq−IIを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0462】
その後、第1の電子輸送層1114a上にBPhenを膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0463】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、LiFを1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0464】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子10を作製した。
【0465】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0466】
以上により得られた発光素子10の素子構造を表17に示す。
【0467】
【表17】

【0468】
発光素子10を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子10の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0469】
発光素子10の電圧−輝度特性を図38に示す。図38において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、輝度−電流効率特性を図39に示す。図39において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子10における輝度940cd/mのときの電圧(V)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表18に示す。
【0470】
【表18】

【0471】
表18に示す通り、940cd/mの輝度の時の発光素子10のCIE色度座標は(x,y)=(0.57,0.42)であった。発光素子10は、[Ir(dppm)(acac)]に由来する橙色発光が得られたことがわかった。
【0472】
図38、39から、発光素子10は、駆動電圧が低く、発光効率が高いことがわかる。また、発光素子10は、940cd/mの輝度の時の外部量子効率が、28%と極めて高い値を示した。
【0473】
次に、発光素子の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図40に示す。図40において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。
【0474】
信頼性試験は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で本実施例の発光素子を駆動した。
【0475】
図40から、発光素子10の330時間後の輝度は、初期輝度の90%を保っていた。本発明の一態様を適用した発光素子10は、長寿命であり、高い信頼性を有することがわかった。
【0476】
以上の結果から、本発明の一態様の複合材料を、燐光を発光する発光素子の正孔注入層として用いることで、高い発光効率の素子を実現できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、燐光を発光する発光素子の正孔注入層として用いることで、駆動電圧の低い発光素子を提供できることが示された。また、本発明の一態様の複合材料を、燐光を発光する発光素子の正孔注入層として用いることで、長寿命な発光素子を作製できることが示された。
【0477】
また、本発明の一態様の複合材料は、橙色の燐光を発光する発光素子の正孔注入層として良好に用いることができることが示された。そのため、橙色を含むそれより長波長の燐光を発する発光素子で良好に用いることができることがわかった。
【実施例11】
【0478】
本実施例では、本発明の一態様の複合材料に用いることができる炭化水素化合物である、9,9’−(ビフェニル−3,3’−ジイル)−ジ−フェナントレン(略称:mPnBP)について説明する。mPnBPの構造式を以下に示す。
【0479】
【化30】

【0480】
また、mPnBPのトルエン溶液の吸収スペクトルを図41(A)に、発光スペクトルを図41(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れて測定を行った。吸収スペクトルに関して、石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図41(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。図41(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。mPnBPは282nm、298nm及び348nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、356nm、373nm及び394nm(励起波長306nm)であった。
【0481】
このように、mPnBPのトルエン溶液の吸収スペクトルは、可視光領域に吸収が見られないため、本発明の一態様の複合材料に用いる炭化水素化合物として好適であることがわかった。また、発光ピークが短波長側にあることから、発光層に接する正孔輸送層の材料や発光層のホスト材料として、該炭化水素化合物は好適であることがわかった。
【0482】
(参考例1)
上記実施例で用いた3−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:PCPN)を製造する合成例を示す。
【0483】
【化31】

【0484】
PCPNの合成スキームを(a−1)に示す。
【0485】
【化32】

【0486】
200mL三口フラスコにて、3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール5.0g(15.5mmol)、4−(1−ナフチル)−フェニルボロン酸4.2g(17.1mmol)、酢酸パラジウム(II)38.4mg(0.2mmol)、トリ(オルト−トリル)ホスフィン104mg(0.3mmol)、トルエン50mL、エタノール5mL、2mol/L炭酸カリウム水溶液30mLの混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気した後、窒素雰囲気下、85℃で9時間加熱撹拌し、反応させた。
【0487】
反応後、この反応混合液にトルエン500mLを加え、この混合液の有機層をフロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、アルミナ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通して濾過した。得られた濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を吸着させた。この懸濁液を濾過して濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。このとき、クロマトグラフィーの展開溶媒として、トルエンとヘキサンの混合溶媒(トルエン:ヘキサン=1:4)を用いた。得られたフラクションを濃縮し、メタノールを加えて超音波をかけたのち、再結晶化したところ、目的物の白色粉末を収量6.24g、収率90%で得た。
【0488】
核磁気共鳴分光法(H−NMR)によって、この化合物が目的物である3−[4−(1−ナフチル)−フェニル]−9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:PCPN)であることを確認した。
【0489】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.30−7.35(m,1H),7.44−7.67(m,14H),7.76(dd,J=8.7Hz,1.8Hz,1H),7.84−7.95(m,4H),8.04(d,J=7.8,1H),8.23(d,J=7.8,1H),8.46(d,J=1.5,1H)。
【0490】
(参考例2)
上記実施例で用いた2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成方法について説明する。
【0491】
【化33】

【0492】
2mDBTPDBq−IIの合成スキームを(b−1)に示す。
【0493】
【化34】

【0494】
2L三つ口フラスコに2−クロロジベンゾ[f,h]キノキサリン5.3g(20mmol)、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸6.1g(20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)460mg(0.4mmol)、トルエン300mL、エタノール20mL、2Mの炭酸カリウム水溶液20mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌することで脱気し、三つ口フラスコ内を窒素置換した。この混合物を窒素気流下、100℃で7.5時間攪拌した。室温まで冷ました後、得られた混合物を濾過して白色の濾物を得た。得られた濾物を水、エタノールの順でよくすすいだ後、乾燥させた。得られた固体を約600mLの熱トルエンに溶かし、セライト・フロリジールを通して濾過し、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。クロマトグラフィーは、熱トルエンを展開溶媒に用いて行った。ここで得られた固体にアセトンとエタノールを加えて超音波を照射した後、生じた懸濁物を濾取して乾燥させたところ、目的物の白色粉末を収量7.85g、収率80%で得た。
【0495】
得られた白色粉末4.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力5.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色粉末を300℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量3.5g、収率88%で得た。
【0496】
核磁気共鳴分光法(H−NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)であることを確認した。
【0497】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.45−7.52(m,2H),7.59−7.65(m,2H),7.71−7.91(m,7H),8.20−8.25(m,2H),8.41(d,J=7.8Hz,1H),8.65(d,J=7.5Hz,2H),8.77−8.78(m,1H),9.23(dd,J=7.2Hz,1.5Hz,1H),9.42(dd,J=7.8Hz,1.5Hz,1H),9.48(s,1H)。
【0498】
(参考例3)
上記実施例で用いたN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)の合成方法について説明する。
【0499】
【化35】

【0500】
[ステップ1:3−メチルフェニル−3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニルアミン(略称:mMemFLPA)の合成法]
ステップ1の合成スキームを(c−1)に示す。
【0501】
【化36】

【0502】
9−(3−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレン3.2g(8.1mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド2.3g(24.1mmol)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン40.0mL、m−トルイジン0.9mL(8.3mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)44.5mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして2.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮し得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=1:1)により精製し、トルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶化し、目的の白色固体を、収量2.8g、収率82%で得た。
【0503】
[ステップ2:1,6mMemFLPAPrn)の合成法]
ステップ2の合成スキームを(c−2)に示す。
【0504】
【化37】

【0505】
1,6−ジブロモピレン0.6g(1.7mmol)、上記ステップ1で得たmMemFLPA1.4g(3.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.5g(5.1mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン21.0mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)34.9mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして3.0時間攪拌した。攪拌後、トルエンを400mL加えて加熱し、熱いまま、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮し得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:2)により精製し、黄色固体を得た。得られた黄色固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶化し、目的の黄色固体を、収量1.2g、収率67%で得た。
【0506】
得られた黄色固体1.0gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、317℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、目的物の黄色固体を、収量1.0g、収率93%で得た。
【0507】
核磁気共鳴法(NMR)及びMSスペクトルによって、この化合物が目的物であるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)であることを確認した。
【0508】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=2.21(s,6H),6.67(d,J=7.2Hz,2H),6.74(d,J=7.2Hz,2H),7.17−7.23(m,34H),7.62(d,J=7.8Hz,4H),7.74(d,J=7.8Hz,2H),7.86(d,J=9.0Hz,2H),8.04(d,J=8.7Hz,4H)。
【0509】
(参考例4)
上記実施例で用いた(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])の合成方法について説明する。
【0510】
【化38】

【0511】
[ステップ1;4−tert−ブチル−6−フェニルピリミジン(略称:HtBuppm)の合成]
ステップ1の合成スキームを(d−1)に示す。
【0512】
【化39】

【0513】
まず、4,4−ジメチル−1−フェニルペンタン−1,3−ジオン22.5gとホルムアミド50gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部を窒素置換した。この反応容器を加熱することで反応溶液を5時間還流させた。その後、この溶液を水酸化ナトリウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンにて有機層を抽出した。得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ヘキサン:酢酸エチル=10:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ピリミジン誘導体HtBuppmを得た(無色油状物、収率14%)。
【0514】
[ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(tBuppm)Cl])の合成]
ステップ2の合成スキームを(d−2)に示す。
【0515】
【化40】

【0516】
次に、2−エトキシエタノール15mLと水5mL、上記ステップ1で得たHtBuppm1.49g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)1.04gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノールで吸引濾過、洗浄し、複核錯体[Ir(tBuppm)Cl]を得た(黄緑色粉末、収率73%)。
【0517】
[ステップ3;[Ir(tBuppm)(acac)]の合成]
ステップ3の合成スキームを(d−3)に示す。
【0518】
【化41】

【0519】
さらに、2−エトキシエタノール40mL、上記ステップ2で得た複核錯体[Ir(tBuppm)Cl] 1.61g、アセチルアセトン0.36g、炭酸ナトリウム1.27gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 120W)を60分間照射し、反応させた。溶媒を留去し、得られた残渣をエタノールで吸引濾過し、水、エタノールで洗浄した。この固体をジクロロメタンに溶解させ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、セライトの順で積層した濾過補助剤を通して濾過した。溶媒を留去して得られた固体をジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶することにより、目的物を黄色粉末として得た(収率68%)。
【0520】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、本合成例において、[Ir(tBuppm)(acac)]が得られたことがわかった。
【0521】
H−NMR.δ(CDCl):1.50(s,18H),1.79(s,6H),5.26(s,1H),6.33(d,2H),6.77(t,2H),6.85(t,2H),7.70(d,2H),7.76(s,2H),9.02(s,2H)。
【0522】
(参考例5)
上記実施例で用いた(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])の合成方法について説明する。
【0523】
【化42】

【0524】
<ステップ1;4,6−ジフェニルピリミジン(略称:Hdppm)の合成>
まず、4,6−ジクロロピリミジン5.02g、フェニルボロン酸8.29g、炭酸ナトリウム7.19g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略称:Pd(PPhCl)0.29g、水20mL、アセトニトリル20mLを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。ここで更にフェニルボロン酸2.08g、炭酸ナトリウム1.79g、Pd(PPhCl0.070g、水5mL、アセトニトリル5mLをフラスコに入れ、再度マイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。その後この溶液に水を加え、ジクロロメタンにて有機層を抽出した。得られた抽出液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ピリミジン誘導体Hdppmを得た(黄白色粉末、収率38%)。なお、マイクロ波の照射は、マイクロ波合成装置(CEM社製 Discover)を用いた。以下にステップ1の合成スキーム(e−1)を示す。
【0525】
【化43】

【0526】
<ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(dppm)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール15mL、水5mL、上記ステップ1で得たHdppm1.10g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)0.69gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノールで濾過し、次いで洗浄し、複核錯体[Ir(dppm)Cl]を得た(赤褐色粉末、収率88%)。以下にステップ2の合成スキーム(e−2)を示す。
【0527】
【化44】

【0528】
<ステップ3;(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])の合成>
さらに、2−エトキシエタノール40mL、上記ステップ2で得た[Ir(dppm)Cl]1.44g、アセチルアセトン0.30g、炭酸ナトリウム1.07gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 120W)を60分間照射し、反応させた。溶媒を留去し、得られた残渣をジクロロメタンに溶解して濾過し、不溶物を除去した。得られた濾液を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=50:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。その後、ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶化することにより、目的物である橙色粉末を得た(収率32%)。以下にステップ3の合成スキーム(e−3)を示す。
【0529】
【化45】

【0530】
上記ステップ3で得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、本合成例において、[Ir(dppm)(acac)]が得られたことがわかった。
【0531】
H−NMR.δ(CDCl):1.83(s,6H),5.29(s,1H),6.48(d,2H),6.80(t,2H),6.90(t,2H),7.55−7.63(m,6H),7.77(d,2H),8.17(s,2H),8.24(d,4H),9.17(s,2H).
【符号の説明】
【0532】
100 基板
101 第1の電極
102 EL層
108 第2の電極
401 ソース側駆動回路
402 画素部
403 ゲート側駆動回路
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 配線
409 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
410 素子基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 第1の電極
414 絶縁物
416 EL層
417 第2の電極
418 発光素子
423 nチャネル型TFT
424 pチャネル型TFT
501 基板
502 第1の電極
503 第2の電極
504 EL層
505 絶縁層
506 隔壁層
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光層
704 電子輸送層
705 電子注入層
706 電子注入バッファー層
707 電子リレー層
708 複合材料層
800 第1のEL層
801 第2のEL層
802 EL層
803 電荷発生層
811 照明装置
812 照明装置
813 卓上照明器具
900 発光装置
901 第1の基板
902 第2の基板
903 第1の端子
904 第2の端子
908 発光素子
909 絶縁層
910 補助配線
911 乾燥剤
912 シール材
913a 光取り出し構造
913b 光取り出し構造
1100 基板
1101 第1の電極
1103 第2の電極
1111 正孔注入層
1111a 第1の正孔注入層
1111b 第2の正孔注入層
1112 正孔輸送層
1112a 第1の正孔輸送層
1112b 第2の正孔輸送層
1113 発光層
1113a 第1の発光層
1113b 第2の発光層
1114a 第1の電子輸送層
1114b 第2の電子輸送層
1115 電子注入層
1115a 第1の電子注入層
1115b 第2の電子注入層
1116 電子リレー層
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7501 照明部
7502 傘
7503 可変アーム
7504 支柱
7505 台
7506 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、前記炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合しており、
前記置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項2】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、前記炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基が結合しており、
前記置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項3】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、前記炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格にフェニル基が結合しており、
前記フェニル基が1以上の置換基を有し、前記置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項4】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、前記炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位にフェニル基が結合しており、
前記フェニル基が1以上の置換基を有し、前記置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項5】
一般式(G1)で表される炭化水素化合物と、前記炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料。
【化1】


(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R10〜R14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R10〜R14のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。)
【請求項6】
一般式(G2)で表される炭化水素化合物と、前記炭化水素化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料。
【化2】


(式中、R21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R30〜R34は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R30〜R34のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。)
【請求項7】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合しており、
前記置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項8】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位に置換基が結合しており、
前記置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項9】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格にフェニル基が結合しており、
前記フェニル基が1以上の置換基を有し、前記置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項10】
分子量が350以上2000以下であり、吸収ピークが可視光領域よりも短波長側に生じる炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含み、
前記炭化水素化合物は、ナフタレン骨格のα位もしくはβ位、フェナントレン骨格の9位、又はトリフェニレン骨格の2位にフェニル基が結合しており、
前記フェニル基が1以上の置換基を有し、前記置換基が有する環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項11】
一般式(G1)で表される炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含む複合材料。
【化3】


(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R10〜R14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R10〜R14のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。)
【請求項12】
一般式(G2)で表される炭化水素化合物と、遷移金属酸化物とを含む複合材料。
【化4】


(式中、R21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は環を構成する炭素数が6〜25のアリール基を表し、R30〜R34は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。ただし、R30〜R34のうち、少なくとも1つは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は置換もしくは無置換のトリフェニレニル基を表す。)
【請求項13】
請求項7乃至請求項12のいずれか一項において、
前記遷移金属酸化物は、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、銀酸化物から選ばれる一種又は複数種である複合材料。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項において、
前記炭化水素化合物の最高被占有軌道準位は、光電子分光法での測定値が−5.7eV以下である複合材料。
【請求項15】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、
前記発光物質を含む層は、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の複合材料を含む層を有する発光素子。
【請求項16】
請求項15において、
前記複合材料を含む層が、前記一対の電極のうち陽極として機能する電極と接する発光素子。
【請求項17】
請求項16において、
前記発光物質を含む層は、ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物を含む第1の層を、前記複合材料を含む層の陰極側に接して有し、
前記第1の層に含まれる前記炭化水素化合物の前記置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である発光素子。
【請求項18】
請求項15において、
前記複合材料を含む層が、前記一対の電極のうち陰極として機能する電極と接する発光素子。
【請求項19】
請求項15において、
前記複合材料を含む層を2層有し、一方の層は、前記一対の電極のうち陽極として機能する電極と接し、他方の層は、陰極として機能する電極と接する発光素子。
【請求項20】
一対の電極間に発光物質を含む層を複数有し、
複数の前記発光物質を含む層の間に、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の複合材料を含む層を有する発光素子。
【請求項21】
請求項20において、
ナフタレン骨格、フェナントレン骨格、又はトリフェニレン骨格に置換基が結合した、分子量が350以上2000以下である炭化水素化合物を含む第1の層を、前記複合材料を含む層の陰極側に接して有し、
前記第1の層に含まれる前記炭化水素化合物の前記置換基が有する環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環から選ばれる一種又は複数種である発光素子。
【請求項22】
請求項15乃至請求項21のいずれか一項に記載の発光素子を有する発光装置。
【請求項23】
請求項22に記載の発光装置を表示部に有する電子機器。
【請求項24】
請求項22に記載の発光装置を発光部に有する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2013−10927(P2013−10927A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62926(P2012−62926)
【出願日】平成24年3月20日(2012.3.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】