説明

複合材料を製造するための繊維

本発明は、炭素含有繊維、特に炭素繊維及び/又はそれらの前駆体繊維を製造するための方法に関し、該方法は、a)1つ又は複数の出発材料繊維を準備する工程;b)該1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させる工程、その際、処理液は、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する;c)該1つ又は複数の出発材料繊維を、該処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理する工程を包含する。さらに、本発明は、特に本発明による方法に従って製造されることができる炭素繊維及び炭素繊維前駆体繊維、並びにそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にC/SiC複合材料を製造するために適している繊維、並びに該繊維の製造法及び複合材料を製造するための該繊維の使用に関する。
【0002】
複合材料及び特にC/SiC複合材料を製造するための方法は、何年も前から公知である。通常、C/SiC複合材料の製造に際しては、炭素体が、適した浸潤剤、例えば液状シリコンで浸潤させられ、かつ、この際、化学反応によって炭化シリコンの形成下でセラミック化される。US4725635は、合成繊維の後処理のための試剤を記載する。
【0003】
例えば文献DE4438455及びUS5,486.379は、C/SiC複合材料を製造するための方法を記載し、その際、しかしながら、複合材料の製造のために使用される繊維材料は、これまで関心が向けられていなかったか又は僅かな関心が向けられているに過ぎなかった。同様に数多くの文献が、炭素繊維及びそれらの前駆体繊維の製造法を教示するが、しかしながら、いかにして、複合材料を高い品質で取得できるように、炭素繊維又はそれらの前駆体繊維が製造され、かつ、場合により表面処理されることができるかという問題には少なくとも取り組んでいない。
【0004】
それゆえ本発明の課題は、特に、複合材料、特にC/SiC複合材料の製造に適している品質的に高価な繊維を提供することを可能にする、炭素繊維及びそれらの前駆体繊維を得ることができる手段を提供することである。そのうえ、このような方法は、出発材料を炭素繊維にする、信頼できる、確実な変換を可能にするべきである。さらに、このような方法は、プロセス工学的な観点の下で、より問題を含む出発材料からの繊維、例えばポリアクリロニトリルホモポリマー、モダクリル又はセルロースからの繊維を製造するためにも基本的に適しているべきであり、かつ、比較的低い温度で反応を実施することを可能にするべきである。そのうえ、工業規模における方法の場合、該方法が経済性に優れて実施できることが大変重要である。
【0005】
添付図面は、説明のために、かつ、非制限的に、本発明による繊維、並びに説明のための図表を示す:
図1は、本発明による方法の出発材料として使用されるポリアクリロニトリル繊維のREM写真を示す;
図2は、まず先に気相中で酸化され、次いで1450℃で炭素化された従来技術の繊維のESEM写真を示す;
図3は、処理液を洗浄プロセスによって除去しなかった、本発明による炭素繊維前駆体繊維のESEM写真を示す;
図4は、処理液をメチルエチルケトンで少なくとも部分的に除去した、本発明による炭素繊維前駆体繊維のESEM写真を示す;
図5は、処理液を洗浄プロセスによって除去しなかった、本発明による炭素繊維のESEM写真を示す;
図6は、処理液をメチルエチルケトンで少なくとも部分的に除去した、本発明による炭素繊維のESEM写真を示す;
図7は、処理液での処理の温度/時間推移を概略的に示す;
図8は、本発明による前駆体繊維の化学組成と密度の比較を概略的に示す;
【0006】
本発明の課題は、炭素含有繊維、特に炭素繊維及び/又はそれらの前駆体繊維を製造する方法によって解決され、該方法は:a)1つ又は複数の出発材料繊維を準備する工程;b)該1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させる工程、その際、処理液が、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する;c)該1つ又は複数の出発材料繊維を該処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理する工程;d)任意に、該処理液で処理した繊維を後処理する工程、その際、該後処理は、1つ以上の機械的な後処理プロセス及び/又は1つ以上の洗浄プロセスを包含する;e)任意に、処理及び任意に後処理した該繊維を乾燥する工程;f)任意に、処理、並びに任意に後処理及び/又は任意に乾燥した該繊維を取得する工程を包含する。さらに本発明は、請求項15、19、23及び27に記載の炭素繊維及びそれらの前駆体繊維を提供する。そのうえ本発明は、請求項32に記載の炭素繊維及びそれらの前駆体繊維の使用を教示する。有利な実施形態は、それぞれ下位クレームに示している。
【0007】
本発明に結び付く数多くの試験を通じて、意想外にも本発明による方法によって、非常に好ましい材料特性の組合せを有する炭素繊維及びそれらの前駆体繊維が得られることができるばかりでなく、そのうえまた、本発明による方法は、高いプロセス安全性にて出発材料の変換も可能することが確認された。特に、大いに好ましい点は、本発明による方法が、比較的低い温度で任意に実施されることができ、かつ、繊維が、高められた温度で酸素含有気相と直接接触することが完全に又は少なくとも部分的に炭素繊維前駆体繊維の製造を通じて回避されることができるという点である。加えて、本発明により製造された炭素繊維は、高い炭素含有量、好ましい密度、特に表面上及び/又は表面における、高いシリコン含有量、及び良好な引張強度を有し、かつ、複合材料の製造のために、特にC/SiC複合材料の製造のために際立って適している。そのうえまた本発明による方法は、工業的規模において実現可能であり、並びに、信頼できる形で、かつ、簡単に制御可能である。さらに本発明による方法は、より短いプロセス時間を提供し、かつ、炭素繊維の良好な収率をもたらし、その際、炭素繊維は、加えて、高い炭素含有量及び少数の欠陥を有する。加えて、繊維を処理液で処理することによって、好ましい熱伝達が生じ、その結果、本発明による方法は、投入されたエネルギーを良好に利用することができる。
【0008】
加えて、本発明による方法の重要な利点は、該方法が、これまで難しかった出発材料、例えばホモポリマーのポリアクリロニトリル若しくはモダクリルをベースとする繊維及びそのハイブリッド繊維、又はピッチ、リグニン、ビスコース若しくはセルロースをベースとする繊維から出発する炭素繊維の製造も可能にすることであり、それというのも、この方法は、最初の酸化反応若しくは最初の熱安定化又は最初の酸化反応の部分若しくは最初の熱安定化の部分の低い温度での実施を提供することができるからである。
【0009】
炭素含有繊維、特に炭素繊維及び/又はそれらの前駆体繊維を製造するための本発明による方法は、第一の工程において、1つ又は複数の出発材料繊維を準備することを包含する。
【0010】
本出願中で用いられる"出発材料繊維"との定義は、特に炭素繊維及び/又は炭素繊維製造のための前駆体繊維を製造するために使用することができる任意の炭素含有繊維を包含する。特に炭素繊維及び/又は炭素繊維製造のための前駆体繊維を製造するために使用することができる1つ又は複数の炭素含有繊維の他に、複数の出発材料繊維は、加えて、セラミックをベースとする1つ又は複数の繊維を包含してよい。
【0011】
とりわけ良好な結果が、本発明による方法において、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維(その際、これは、ホモポリマー及び/又はコポリマーのポリアクリロニトリルであってよい)、ポリアセチレンをベースとする繊維、ポリフェニレンをベースとする繊維、セルロースをベースとする繊維、ピッチをベースとする繊維、リグニンをベースとする繊維、ビスコースをベースとする繊維、ポリプロピレンをベースとする繊維、炭素含有繊維及びセラミックをベースとする繊維の混合物、及びそれらの混合物から成る群から選択されている繊維を包含するか又は該繊維から成る1つ又は複数の出発材料繊維を使用した場合に得られた。これらの繊維のための製造法は、当業者にそれぞれ公知であり、かつ、加えて以下で詳細に説明する。ポリマーをベースとする出発材料繊維の場合、繊維は、例えば、そのつどのホモポリマー及び/又はコポリマーから製造されていてよい。
【0012】
さらに本発明による方法は、1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させること(その際、処理液は、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する)及び1つ又は複数の出発材料繊維を処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理することを包含する。
【0013】
1つ又は複数の出発材料繊維を処理液と接触させる場合、これは、約126℃〜450℃の範囲からの、特に185℃〜282℃の範囲からの選択された処理温度を既に有するか、又はより低い温度、特に処理温度の範囲を下回る温度、例えば0℃〜約126℃より低い範囲からの温度、特に0℃〜約185℃より低い範囲からの温度を有してよく、かつ、この温度から、処理温度範囲における選択された温度に加熱してよい。任意に、処理時間の終了後、1つ又は複数の出発材料繊維は、その後に処理温度範囲を下回る温度、例えば0℃〜約126℃より低い範囲からの温度、特に0℃〜約185℃より低い範囲からの温度を有する処理液と接触し続けたままであってよく、かつ、そこで更なる時間、例えば少なくとも1分の時間留まってよい。
【0014】
本発明は、以下に提示した理論の正当性に縛られずに、出発材料繊維のこの処理に際して、少なくとも部分的に環化及び少なくとも部分的に水素脱離若しくは脱水素が、特にH2Oの形成下で生じ、その結果、出発材料繊維と比較して、酸素による酸化攻撃に際して攻撃可能性がより少ない繊維が得られると想定される。本出願の枠内で、少なくとも1つの処理液での処理に供され、かつ、その際、少なくとも部分的な化学変化を受けた繊維は、安定化された繊維とも呼ばれる。好ましくは、処理液で処理する工程は、この工程後に得られた繊維がもはや可融性ではなくなるように行われる。
【0015】
特に本発明による方法の場合、出発材料繊維を少なくとも1つの処理液で処理する工程は、必ずしも酸素の排除下で又は酸素含有量を低下させた雰囲気中で行う必要はなく、周囲空気雰囲気(雰囲気の全質量を基準として、約76質量%の窒素、約23質量%の酸素、約1質量%の希ガスを包含する雰囲気)下で実施されることができる。任意に処理液に、酸素を包含するガスを導入してよい。しかしながら、混合物に対する酸素供与体の添加又は混合物への不活性ガス及び/若しくは酸素の導入は、処理工程中に必ずしも必要ではない;それゆえ任意に、このような添加及び/又はこのような導入を省くことができる。本発明は、以下に提示した理論の正当性に縛られずに、処理液の使用によって酸化が一様に行われ、かつ、該酸化は良好に制御可能であると想定され、その際、特に好ましい点は、繊維への熱の移行が、液状又は少なくとも部分的に液状の処理液を介して行われる点である。
【0016】
"処理液"との定義は、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、選択された処理温度で液体の状態又は少なくとも流動性の状態である任意の液体を包含する。好ましくは、処理液は、20℃で、有利には125℃で、さらに有利には150℃で、特に165℃で液体の状態又は少なくとも流動性の状態である。本出願の枠内で用いられる"シリコーン化合物"との定義は、シリコン、炭素及び水素、並びに任意に例えば酸素及び窒素を包含するか、又はこれらから構成されている任意の化学化合物、特に任意の有機化学化合物を包含する。適したシリコーン化合物を、当業者は、その専門知識をベースにして選び出すことができ、かつ、処理温度は、着火点及び/又は引火点、並びに処理液の発生する分解現象に応じて選択することができる。
【0017】
"出発材料を少なくとも1つの処理液で処理する"との定義は、一定又はほぼ一定の温度及び/又は組成の処理液で処理することのみならず、処理時間中に処理液の温度又は組成を変化させる処理も包含する。特に、含水量又は1つ若しくは複数のシリコーン化合物の含有量は変化させてよい。これは、例えば、水又は複数の化合物の1つを処理時間中に混合物に添加することによって及び/又は処理時間中に温度を上げるか又は下げることによって行ってよい。所望される場合、しかしながら、処理時間内に、空間的に切り離されて存在する、例えば1つ又は複数の更なる容器中に存在する少なくとも1つの処理液に移すことも行ってよく、該処理液は、それぞれ少なくとも1つのシリコーン化合物(該化合物は、第一の処理液中に存在するシリコーン化合物と異なっていてもよい)を包含する。
【0018】
"処理温度"との定義は、処理されるべき繊維が存在するか又はこれらの繊維を取り囲む処理液の温度を言い表す。
【0019】
処理温度が、好ましくは132℃〜362℃の範囲に、有利には136℃〜360℃の範囲に、さらに有利には165℃〜320℃の範囲に、特に185℃〜282℃の範囲にある場合、複合材料を製造するための使用にとって非常に好ましい特性を有する繊維を得ることができる。
【0020】
好ましくは処理時間は、少なくとも5分、好ましくは少なくとも9分、有利には5分〜750分、さらに有利には5分〜200分、特に3分〜120分、さらに特に17分〜100分、それより特に21分〜65分の継続時間を有してよい。
【0021】
出発材料繊維の処理は、プロセス工学的に簡単に、かつ、好ましくは、出発材料繊維を処理液に接触、特に浸漬させることによって行うことができ、該処理液は、処理温度範囲内の温度を有するか又は接触、特に浸漬後に、処理温度範囲内の温度に加熱される。好ましくは、出発材料繊維を、容器中又は浴中の処理液に浸漬してよい。出発材料繊維の処理は、例えば、含浸プロセスによって、塗布によって、ローラーによる施与によってか、又は当業者に公知の他の手法によって行ってよい。
【0022】
処理液は、1つ又は複数のシリコーン化合物を包含してよい。処理液が、ポリジアルキルシロキサン、ポリジアリールシロキサン及びポリモノアルキルモノアリールシロキサンから成る群から選択された少なくとも1つのシリコーン化合物を包含する場合、例えば、複合材料の製造にとって非常に良好な特性を有する繊維を得ることができる。特に、処理液は、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びそれらの混合物であってよい。処理液の例は、FRAGOL Schmierstoff GmbH & Co.KG,D−45481(ミュールハイム・アン・デア・ルール)の商品名UCOTHERM X−BFで入手可能である。
【0023】
処理液が、そのつど処理液の全質量を基準として、含水率0.001〜22質量%、好ましくは0.1〜15質量%、有利には0.5〜12質量%、特に0.8〜8質量%を有する場合、例えば、複合材料中で使用するために非常に良好な特性を有する繊維を得ることができる。処理液中のシリコーン化合物の全含有率は、処理液の全質量を基準として、例えば、少なくとも65質量%、好ましくは70〜100質量%、有利には75〜99質量%、特に88〜98質量%であってよい。
【0024】
本発明は、以下に提示した理論の正当性に縛られずに、処理液中での水の存在が、炭素含有出発材料繊維から前駆体繊維への所望の変換を促進すると想定される。目下のところ、出発材料繊維の変換のこの促進は、水素橋状結合を形成する水の性質及び/又は安定化する水、H3+及び/又はOH-の炭素含有繊維への付加(これは、反応、例えば酸化の進行に際して、エネルギー的により好都合な遷移状態を可能にする)に基づいている可能性があると想定される。
【0025】
そのうえ処理液は、1つ又は複数の添加剤、例えば1つ又は複数の平滑剤、1つ又は複数の安定化剤、1つ又は複数の粘度調節剤、1つ又は複数の酸素供与体、例えば二酸化マンガン(軟マンガン鉱)又は過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウム、1つ又は複数の腐食抑制剤、有機酸及び無機酸、有機塩基及び無機塩基、塩、緩衝混合物、並びにホルムアルデヒドを有してよい。これらの添加剤は、当業者によりその一般的な専門知識をベースにして、かつ、製造されるべき前駆体遷移又は炭素遷移に応じて選び出されることができ、かつ、量的に適合させられることができる。
【0026】
少なくとも1つの処理液の製造は、当業者によってその一般的な専門知識をベースにして行われることができる。例えば、1つ又は複数のシリコーン化合物及び水、並びに任意に1つ又は複数の添加剤は、攪拌によって混合されることができる。
【0027】
1つ又は複数の出発材料繊維を処理液で処理する工程が、1つ又は複数の出発材料繊維の処理を、第一の温度範囲及び少なくとも1つの第二の温度範囲内で行うことを包含する場合、例えば、非常に良好な品質の繊維を得ることができ、その際、少なくとも1つの第二の温度範囲の最低温度は、第一の温度範囲の最高温度より高く、かつ、処理は、第一の温度範囲内での1つ又は複数の出発材料繊維の処理から始まる。本発明は、以下に提示した理論の正当性に縛られずに、このような反応操作が、繊維内で非常に少数の欠陥を有する高耐荷性の繊維をもたらすと想定される。
【0028】
"第一の温度範囲内での処理"及び"少なくとも1つの第二の温度範囲内での処理"との定義は、特定の温度で又は温度の範囲内で処理を行ってよいことを包含する。
【0029】
特に、第一の温度範囲は、126℃〜260℃範囲から選択された温度範囲、好ましくは152℃〜250℃の範囲から選択された温度範囲、有利には190℃〜240℃の範囲から選択された温度範囲であってよく、及び/又は少なくとも1つの第二の温度範囲は、140℃〜450℃の範囲から選択された温度範囲、好ましくは180℃〜290℃の範囲から選択された温度範囲、有利には195℃〜282℃の範囲から選択された温度範囲であってよい。この際、第一及び/又は第二の温度範囲は、それぞれ示される温度の範囲全体を包含するか又はこのうちの部分範囲(これは、例えば10℃、好ましくは5℃、有利には2℃、特に1℃を包含してよい)を包含するかのいずれかであってよい。"少なくとも1つの第二の温度範囲"との定義は、例えば、第二〜第十の温度範囲、好ましくは第二〜第五の温度範囲、特に第二〜第三の温度範囲を包含してよい。この際、好ましくは、考慮された識別番号を有する温度範囲を基準として、そのつど次に高い識別番号を有する温度範囲の最低温度は、考慮された識別番号を有する温度範囲の最高温度よりそのつど高い。処理は、好ましくは第一の温度範囲内で始まり、次いで第二の温度範囲内で行われ、引き続き任意に第三の温度範囲内で、次いで第四の温度範囲内で、並びに更なる温度範囲内でその識別番号に従って実施される。
【0030】
例えば、第一の温度範囲は、195℃から205℃までにわたっていてよく、第二の温度範囲は、206℃から215℃までにわたっていてよく、第三の温度範囲は、216℃から225℃までにわたっていてよい。そのうえ、例えば、第一の温度範囲は、218℃から222℃までにわたっていてよく、第二の温度範囲は、223℃から227℃までにわたっていてよく、第三の温度範囲は、228℃から232℃までにわたっていてよく、第四の温度範囲は、233℃から237℃までにわたっていてよく、第五の温度範囲は、238℃から242℃までにわたっていてよく、第六の温度範囲は、243℃から247℃までにわたっていてよく、第七の温度範囲は、248℃から252℃までにわたっていてよい。第一の温度範囲が、200℃から245℃までにわたり、並びに少なくとも1つの第二の温度範囲が、246℃から260℃までにわたる場合、非常に良好な結果を特に得ることができる。
【0031】
数多くの温度プロファイルは、1つ又は複数の出発材料繊維の処理が、第一の温度範囲及び少なくとも1つの第二の温度範囲内で行われることを可能にし、その際、少なくとも1つの第二の温度範囲の最低温度は、第一の温度範囲の最高温度より高い。本出願の枠内で例示的に挙げた温度プロファイルに本発明を限定することは意図していない。
【0032】
処理液の温度は、全体の処理時間中に又は処理時間の1つ又は複数の部分的な間隔を通じて連続的又は不連続的に上昇してよい。例えば、温度は全体の処理時間中に上昇してよい。温度の上昇は、任意の仕方で、例えば直線的又は指数的に行われてよい。好ましくは、温度上昇を伴う処理時間の1つ又は複数の部分的な間隔の全体の時間の長さは、処理時間の全体時間の長さの少なくとも5%、好ましくは少なくとも30%、有利には少なくとも45%、特に5〜20%である。
【0033】
処理時間中、一定又はほぼ一定の温度を有する時間と、温度が上昇する時間とが交互に現れる場合、非常に好ましい特性プロファイルを有する繊維を例えば得ることができる。処理液での処理に関して、"一定の温度を有する"との定義は、温度が一定に保たれることに加えて、例えば±5℃までの温度の変化、好ましくは±3℃までの温度の変化、有利には±2℃までの温度の変化も包含し、並びに、"ほぼ一定の温度を有する"との定義は、例えば±5℃までの温度の変化、好ましくは±3℃までの温度の変化、有利には±2℃までの温度の変化、並びにゆっくりと上昇又は下降する温度、例えば毎分0.5℃未満までの、好ましくは毎分0.3℃までのゆっくりと上昇又は下降する温度を包含してよい。本発明は、以下に提示した理論の正当性に縛られずに、温度が一定又はほぼ一定に保たれる時間間隔のみならず、温度が変化させられる、好ましくは高められる時間間隔も存在するこのような反応操作が、非常に少数の欠陥をその中に有する高耐荷性の繊維をもたらすと想定される。
【0034】
処理液の温度が少なくとも部分的に、処理時間の間隔を通じて段階的に高められる場合、品質的に非常に高価な繊維を特に得ることができる。特に、処理時間は、温度がある温度に一定又はほぼ一定に保たれる少なくとも1つの時間間隔及び/又は温度が変化させられる、好ましくは高められる少なくとも1つの更なる時間間隔を包含してよい。好ましくは、処理時間は、少なくとも2つの、有利には少なくとも3つの、さらに有利には少なくとも5つの、さらに一層有利には少なくとも10の、特に2〜12の時間間隔を包含し、その間、温度は変化させられる。その際、温度の変化は、任意の仕方で、例えば直線的又は指数的に行われてよい。さらに、処理時間は、少なくとも2つの、有利には少なくとも3つの、さらに有利には少なくとも5つの、さらに一層有利には少なくとも10の、特に2〜12の時間間隔を包含し、その間、温度は一定又はほぼ一定に保たれる。
【0035】
特に、温度が一定又はほぼ一定に保たれる時間間隔は、少なくとも2分、好ましくは少なくとも5分、有利には少なくとも15分、さらに有利には少なくとも20分、特に2分〜40分、なお特に3分〜5分の継続時間を有してよい。さらに、温度が変化させられる時間間隔は、少なくとも2分、好ましくは少なくとも5分、有利には少なくとも15分、さらに有利には少なくとも20分、特に2分〜115分、なお特に3分〜5分の継続時間を有してよい。
【0036】
温度が変化させられる時間間隔の全体の継続時間に対する、温度が一定又はほぼ一定に保たれる時間間隔の全体の継続時間の比が、1:10〜15:1、有利には1:5〜10:1、とりわけ有利には1:2〜2:1である場合、非常に良好な品質の繊維を得ることができる。
【0037】
全体の処理時間中に又は少なくとも処理時間の全体の継続時間の30%の間にわたり、温度が一定又はほぼ一定に保たれる時間間隔、それに温度が変化させられる、好ましくは高められる時間間隔が交互に現れる場合、繊維品質に関してとりわけ好ましい結果を得ることができる。
【0038】
温度の変化は、例えば、処理液の温度が、1分間のあいだに0.5℃〜15℃だけ上がるか又は下がり、好ましくは1分間のあいだに5℃〜10℃だけ上がるか又は下がるように行われてよい。温度変化時間を通じた温度の変化は、例えば、直線的又は指数的に増大又は減少してよく、又は当業者に選択可能な任意のプロファイルを示してよい。
【0039】
繊維が、処理液での処理の工程前に及び/又は少なくとも部分的に該工程を通じて引っ張られた状態で存在する場合、とりわけ好ましい特性プロファイルを有する繊維を例えば得ることができる。例えば、引っ張られた状態で存在する繊維が、少なくとも1つのシリコーン化合物及び水を包含する、例えば容器中に存在する混合物に通される場合、プロセス工学的に好ましい。
【0040】
出発材料繊維を引っ張られた状態に変えるのは、当業者に公知の任意の方法で成されることができる。これが1つ又は複数の装置間で張って固定することによって又は引っ張って荷重を加えることによって行われる場合、プロセス工学的に好ましい。繊維を引っ張られた状態にする手法は、当業者に公知である。
【0041】
処理液で処理された繊維は、更なる処理工程において任意の後処理に供され、その際、処理された繊維上に留まる処理液、特に残留シリコーン化合物及び/又は残留水が、処理された繊維から少なくとも部分的に又は完全に除去される。後処理は、1つ又は複数の機械的な後処理プロセス及び/又は1つ又は複数の洗浄プロセスを包含してよい。
【0042】
例えばこれは、繊維を、例えば、ローラー間に通過させるか、又は吸収性の材料、例えば紙で押し付けることで圧縮プロセスに供することによって行ってよく、その際、繊維上に存在するか又は留まる液体が少なくとも部分的に除去される。プロセス工学的な観点から、これらの分離されたシリコーン化合物及び/又はこの水を集め、かつ、場合によっては精製又は濾過後に本発明による方法においてさらに使用することが好ましい。
【0043】
さらに、後処理は、例えば少なくとも1分間の、繊維の滴切りも包含してよい。処理液の吸込も、後処理として行ってよい。
【0044】
そのうえ、後処理は、洗浄プロセスを溶媒又は溶媒混合物を用いて行うことも包含してよい。このような洗浄プロセスは、例えば溶媒又は溶媒混合物を噴霧することによって行ってよい。また洗浄プロセスは、処理された繊維を溶媒又は溶媒混合物に一回又は数回にわたって浸漬することによって行ってもよく、又は処理された繊維を、溶媒又は溶媒混合物を有する容器に浸透させるか又は通過させることにより行ってよい。溶媒又は溶媒混合物は、洗浄プロセスに際して、例えば0℃〜溶媒又は溶媒混合物の沸点までの範囲の温度を有してよい。品質的に高価な繊維を得るために、例えば、洗浄プロセスは、抽出の形で、特にソックスレー型の抽出の形で、又はフロー抽出の形で実施されることができる。ソックスレー型の抽出のための数多くの実施形態は、当業者に公知であり、かつ、特定用途において生じる問題に適合させられることができる。ソックスレーによる抽出装置の構造は、例えばH.G.O.Becker et al.,Organikum,VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften,1998,ISBN3−326−00076−6の第55頁〜第56頁に示されている。他の実施形態が可能であり、当業者により選択されることができ、かつ、本発明による方法に適合させられることができる。例えば、溶媒透過性の下地上に繊維を配置し、そこで、該繊維はそれぞれの溶媒又は溶媒混合物と接触してよい。この際、処理液の一部が、溶媒又は溶媒混合物に溶けるか、又はこれと一緒に運ばれて、溶媒透過性の下地に漏出する。次いで、任意に、このように分離された混合物は、漏出後に容器に至り、そこで沸点に加熱される。この際、最低沸点を有する成分、溶媒又は溶媒混合物が、沸点に加熱され、分離され、抽出されるべき繊維と再び接触される。そのうえまた、繊維は、溶媒又は溶媒混合物を有する浴中で超音波により処理されることができる。後処理は、繊維にシリコーンリムーバーを塗ることも包含してよく、その際、このような後処理は、本発明の枠内では、洗浄プロセスとして見なされる。
【0045】
好ましくは、後処理後に、予め処理液で処理された繊維上に液体がなお留まる。
【0046】
洗浄プロセスを実施するための溶媒又は溶媒混合物として、有機溶媒のみならず、無機溶媒、並びにそれらの混合物も使用することができる。洗浄プロセス用に、水、イソプロパノール、メチルエチルケトン、エタノール、ヘキサン、ペンタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、アセトン、シリコーンリムーバー及びそれらの混合物から成る群から選択された溶媒又は溶媒混合物が選択される場合、とりわけ良好な品質の繊維を得ることができる。任意に、溶媒又は溶媒混合物に、1つ又は複数の添加剤、例えば1つ又は複数の平滑剤、1つ又は複数の安定化剤、1つ又は複数の粘度調節剤、1つ又は複数の酸化防止剤、1つ又は複数の腐食抑制剤を添加してよい。これらの添加剤は、当業者によりその一般的な専門知識をベースにして、かつ、製造されるべき前駆体遷移又は炭素遷移に応じて選び出されることができ、かつ、量的に適合させられることができる。
【0047】
好ましくは、本発明の枠内でサイズ剤除去とも呼ばれる、例えば少なくとも40分間、好ましくは230分間〜250分間、選択された溶媒と繊維を接触させることによる、好ましくは抽出することによる洗浄プロセスが行われる。好ましくは、溶媒として、メチルエチルケトン又はシリコーンリムーバー及びそれらの水性混合物が使用される。溶媒又は洗浄プロセスの継続時間及び数の選択によって、処理液での処理後に存在する予め酸化された繊維における及び/又は該繊維上のシリコン含有付加物の量を制御することができる。洗浄プロセスの正確な継続時間は、当業者による試験によって突き止められることができる。
【0048】
同様に、先の処理液の押し付け、滴切り又は吸込後に洗浄プロセスに任意に供された繊維も使用することができる。
【0049】
任意に、洗浄プロセスは繰り返されることもできる。特に、1つ又は複数の洗浄プロセスの組合せも可能である。このような組合せは、噴霧による洗浄プロセス、浸漬による洗浄プロセス、特に超音波を作用させながらの該洗浄プロセス、及び抽出による洗浄プロセスから成る群から選択される洗浄プロセスの2つ又はそれより多くのプロセスを包含する。
【0050】
後処理は、一回又は数回にわたって実施してよく、かつ、任意に、当業者により一般的な専門知識をベースにして任意の順番で互いに組み合わせられることができる。
【0051】
さらに、後処理された、すなわち、例えば洗浄プロセス及び/又は圧縮プロセス及び/又は滴切りプロセス及び/又は吸込プロセスに供された、安定化された繊維は、任意に、20℃〜170℃の範囲の温度で乾燥してよい。乾燥は、酸素の存在下におけるガス混合物中で、例えば、ガス混合物の全体積を基準として、酸素18〜35体積%の体積含有率にて、さらに例えば、周囲空気混合物中で又は酸素不含で又はほぼ酸素不含で行ってよく、例えば、ガス混合物の全体積を基準として、酸素1体積%未満の体積含有率にて、有利には酸素0.08体積%未満の体積含有率にて行ってよい。
【0052】
前で具体的に説明を行った、出発材料繊維の処理及びこのように処理された繊維の任意の後処理を包含する工程、並びに任意の乾燥に引き続き、本出願の枠内で前駆体繊維と呼ばれる繊維を取得することができる。
【0053】
出発材料繊維としてポリアクリロニトリルをベースとする繊維を使用した場合、前駆体繊維として、通常はPANOx繊維と呼ばれる、予め酸化されたポリアクリロニトリルをベースとする繊維を取得することができる。
【0054】
アクリロニトリルの他にイタコン酸1.5質量%及びメタクリレート4.5質量%を包含する、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維が使用される場合、際立った品質の繊維を例えば得ることができる。
【0055】
好ましくは、本発明による出発材料繊維は、いわゆる連続繊維、すなわち、例えば少なくとも5cm、好ましくは少なくとも10cmの長さを有することができる繊維である。例えば繊維スプールの形態における連続繊維は、有利には数キロメートルの長さであってよい。
【0056】
非常に好ましい炭素繊維前駆体繊維は、例えば、前で記した、具体的に説明を行った方法工程a)〜c)及びさらに続く工程:d)任意に、処理液で処理した繊維を後処理する工程、その際、後処理は、1つ又は複数の機械的な後処理プロセスから成り、かつ、処理の工程c)と乾燥の工程e)との間で洗浄プロセスは行わない;e)処理及び任意に後処理した繊維を乾燥する工程を包含する方法に従って得られる。この炭素繊維前駆体繊維は、会話体では"サイズ剤が除去されなかった"炭素繊維前駆体繊維とも呼ばれる。本発明による炭素繊維前駆体繊維は、その表面にシリコン含有付加物を包含してよく、かつ、それぞれ、その表面のシリコン含有付加物を包含する炭素繊維前駆体繊維の全質量を基準として、少なくとも19質量%、好ましくは19.3質量%〜20.6質量%のシリコン含有率及び/又は、例えば49.9質量%〜63.5質量%、好ましくは50.0質量%〜63.4質量%の炭素含有率及び/又は、例えば12.4質量%〜14.0質量%、好ましくは12.5質量%〜13.9質量%の酸素含有率及び/又は、例えば3.3質量%〜16.2質量%、好ましくは3.4質量%〜16.1質量%の窒素含有率を有してよい。この繊維の密度は、有利には1.22〜1.44g/cm3である。好ましくは、この繊維は、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維から出発して得られる。処理液での処理の継続時間及び処理温度に応じて、窒素含有率は下がってよく、かつ、炭素含有率は上がってよい。
【0057】
本発明は、以下に提示した理論の正当性に縛られずに、本発明による炭素繊維前駆体繊維の場合、シリコンは少なくとも部分的に、特に主として、シリケート化合物の形態で存在すると想定される。これは、X線光電子分光(XPS)測定でのSiピークの位置により示される。
【0058】
図3は、処理液での処理の工程後に、紙の間でただ押し付け、引き続き105℃で乾燥した、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維から出発して得られる繊維を示す。表面上又は表面におけるシリコン含有付加物がはっきりと認められる。洗浄プロセスに供されなかったこのような繊維を、本発明の枠内では、サイズ剤が除去されなかった、安定化された繊維とも呼ぶ。
【0059】
本発明の枠内で用いられるような"その表面に付加物を有する繊維"との定義は、付加物を表面に有すること及び/又は部分的に又は完全に表面中に有すること及び/又は部分的に又は完全にその表面より下に有する繊維を包含してよい。
【0060】
炭素化の完了後(特に本発明による方法に従った温度処理の完了後)に炭素繊維に施与されたサイズ剤、仕上剤、調製薄層及び/又はコーティング、並びに安定化処理の完了後(特に本発明による方法に従った処理液での処理の完了後)に炭素繊維前駆体繊維に施与されたサイズ剤、仕上剤、調製薄層及び/又はコーティングは、本出願の枠内では、付加物との定義には含まれない。任意に、しかしながら、付加的にサイズ剤及び/又は1つ又は複数のコーティング物を、その表面にシリコン含有付加物を有している可能性がある本発明による繊維に施与してよい。好ましくは、付加物は、完全に又は少なくとも部分的に粒子の形態で存在し、該粒子は、繊維表面に付着し及び/又はどちらかといえばむしろ入り込まず、それというのも、さもなければ、繊維が破壊されるか又はもはや繊維として存在しなくなるからである。粒子は、任意の形状を有していてよく、かつ、例えば、薄片状又はほぼ球状であってよい。例えば、粒子の最大長さは、40μmより小さく、好ましくは8μmより小さく、有利には2μmより小さくてよい。特に、粒子の最大長さは、最大繊維径より小さく、好ましくは最大繊維径の3分の1より小さく、有利には最大繊維系の5分の1より小さくてよい。
【0061】
比較の目的で、図1は、出発材料繊維として使用したポリアクリロニトリルをベースとする繊維を示し、図2は、従来技術の方法に従ってまず第一に気相中で酸化され、引き続き1450℃にて不活性ガス下で炭素化された繊維を示す。
【0062】
そのうえ、本発明による方法は、処理液での処理の工程の前又は後に行われる更なる処理工程と任意に組み合わせられることができ、その際、前駆体繊維の取得前に、処理された繊維又は出発材料繊維を126℃より高い温度、特に200℃より高い温度に加熱することを包含する1つ又は複数の更なる処理が行われる。例えば、本発明による方法は、処理された繊維又は出発材料繊維を126℃より高い温度で、特に200℃より高い温度で酸素含有ガスと、例えば炉内で接触させる更なる処理工程を包含していてよい。
【0063】
しかしながら、作業時間、エネルギー及びプロセスのコストの節約、並びに所望の繊維特性及びプロセス安全性の改善に鑑みて、本発明による方法は、好ましくは、処理液での処理の工程のみを、126℃より高い、特に200℃より高い温度での唯一の方法工程として、予め酸化された炭素繊維前駆体繊維の任意の取得及び/又は温度処理の実施による引き続く炭素繊維への変換前に包含する。
【0064】
特に複合材料の製造にとって好ましい特性を有する繊維を得るために、本発明による方法は、1つ又は複数の繊維が、処理の工程c)及び温度処理の工程g)後に、5質量%より高い酸素含有率及び70℃又はそれより高い温度、有利には50℃又はそれより高い温度、好ましくは38℃又はそれより高い温度を有する雰囲気と接触しないか又は、例えば1分の時間間隔より長くは接触しないように実施されることができる。
【0065】
洗浄プロセスに供された繊維を、例えば図4に示す。ポリアクリロニトリルをベースとする繊維から出発して得られるこれらの繊維を、処理液での処理の工程後に、紙で押し付け、メチルエチルケトンを用いてソックスレー装置中で240分間抽出し、引き続き周囲空気雰囲気下で105℃にて乾燥した。表面上又は表面におけるシリコン含有付加物がはっきりと認められる。1つ又は複数の洗浄プロセスに供されなかった繊維を、本発明の枠内では、"サイズ剤が除去されなかった"繊維と呼ぶ。周囲空気雰囲気との定義は、人間の作業空間及び/又は戸外に存在する任意の空気混合物、特に、いわゆる大気中の空気を表してよい。これらの雰囲気の組成は、当業者に公知である。特に、周囲空気雰囲気との定義は、約75〜76質量%の窒素、約23〜24質量%の酸素、約1〜2質量%の希ガス、並びに任意に、雰囲気の全質量を基準としてそれぞれ1質量%を下回る含有率を有する更なるガス、並びに水蒸気とのその混合物を包含する雰囲気を表してよい。
【0066】
非常に好ましい炭素繊維前駆体繊維は、例えば、前で具体的に説明を行った方法工程a)〜c)及びさらに続く工程:d)1つ又は複数の洗浄プロセスによって、処理液で処理した繊維を後処理し、かつ、任意に、1つ又は複数の機械的な後処理プロセスによって後処理する工程;e)任意に、後処理した繊維を乾燥する工程を包含する方法に従って得られる。この繊維は、会話体では"サイズ剤が除去された"炭素繊維前駆体繊維とも呼ばれる。本発明による炭素繊維前駆体繊維は、その表面にシリコン含有付加物を有してよく、かつ、それぞれ、その表面にシリコン含有付加物を包含する炭素繊維前駆体繊維の全質量を基準として、少なくとも0.5質量%、好ましくは0.55質量%〜4.6質量%、好ましくは2.0〜4.5質量%のシリコン含有率及び/又は、例えば52.9質量%〜81.6質量%、好ましくは62.6質量%〜66.1質量%の炭素含有率及び/又は、例えば3.3質量%〜9.7質量%、好ましくは5.6質量%〜9.6質量%の酸素含有率及び/又は、例えば7.3質量%〜34.4質量%、好ましくは21.3質量%〜23.9質量%の窒素含有率を有してよい。この繊維の密度は、有利には1.30〜1.50g/cm3である。処理液での処理の継続時間及び処理温度に応じて、窒素含有率は下がってよく、かつ、炭素含有率は上がってよい。好ましくは、この繊維は、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維から出発して得られる。
【0067】
好ましくは、処理液での処理に際して、処理継続時間及び処理温度は、DSC測定にて、DIN ISO 11357−3に従って測定して、なお175〜310Jの範囲の熱量Qが放出する炭素繊維前駆体繊維が得られるように選択される。
【0068】
処理液で処理された繊維の任意の後処理、並びに後処理された繊維の任意の乾燥後に、任意に、処理された、並びに任意に後処理された、及び/又は任意に乾燥された繊維の取得を行ってよい。この繊維は、次いで1つ又は複数の更なる工程において炭素繊維に変換されることができる。所望される場合、しかしながら、別個の取得の工程を行う必要はなく、繊維は、処理液での処理後に、炭素繊維に至る更なる変換のための1つ又は複数の工程に直接供してよい。
【0069】
炭素繊維をもたらすことができる更なる方法工程において、温度処理が行われる。この温度処理は、先行する方法工程後に得られた、処理された、かつ、任意に後処理された及び/又は任意に乾燥された繊維を用いて実施されることができる。温度の処理の間ずっと、繊維は、温度処理時間中、450℃〜1800℃、好ましくは450℃〜1620℃の1つ又は複数の温度に不活性雰囲気下で曝される。温度処理は、付加的に、加熱段階(その際、加熱は、例えば20℃から出発して、450℃に至るまで行われる)及び冷却段階(その際、冷却は、450℃から、より低い温度、例えば20℃に至るまで行われる)を包含してよい。温度処理時間は、例えば、1〜10時間の範囲、有利には3〜8時間の範囲にあってよい。
【0070】
代替的に、連続的なプロセスの場合、処理時間は、450℃〜1000℃の温度では1〜5分、かつ、1000℃〜1450℃の温度では1〜5分であってよい。
【0071】
連続的なプロセスとは、繊維を、相次ぐ2つの炉に連続して通すことを意味する。第一の炉内で、繊維は、450℃〜1000℃で不活性ガス雰囲気中で熱処理される。次いで第二の炉内では1000℃〜1450℃である。炉内での滞留時間は、そのつど1分間から5分間であり、その間、繊維は、ローラー装置を稼働させることによって引っ張られた状態に保たれる。
【0072】
"不活性雰囲気"との定義は、本発明の枠内では、酸素を含まないか又は酸素5質量%未満、好ましくは1質量%未満、有利には0.2質量%未満、さらに有利には0.1質量%未満、特に0.001質量%未満を、雰囲気の全質量を基準として有する任意の雰囲気を包含する。有利な不活性雰囲気は、例えば、雰囲気の全質量を基準として少なくとも99.9質量%の含有率の窒素及び更なるガスの残分を有する。好ましくは、残分のガスは、希ガス、酸素及び酸化炭素から成り、有利には希ガスから成る。
【0073】
そのうえ、"不活性雰囲気"として、1atm未満の圧力を有する雰囲気、すなわち、雰囲気を含む容器の部分的な又は大幅な排気後に得られた雰囲気も使用することができる。不活性雰囲気は、好ましくは、窒素及び/又は希ガスを包含してよい。
【0074】
好ましくは、温度処理は、この処理に供された繊維が炭素繊維に変換されるように行われる。温度処理後、任意に炭素繊維の取得を行ってよい。
【0075】
任意に、温度処理後に更なる方法工程、例えば炭素繊維の被覆又は炭素繊維の表面処理を行ってよい。
【0076】
そのうえ、良好な品質の繊維を得るために、温度処理を、該温度処理が第一の温度処理−温度範囲及び少なくとも1つの第二の温度処理−温度範囲で行われるように実施すると好ましいことが判明し、その際、少なくとも1つの第二の温度処理−温度範囲の最低温度は、第一の温度処理−温度範囲の最高温度より高く、かつ、温度処理は第一の温度処理−温度範囲から始まる。特に、第一の温度処理−温度範囲は、450℃〜1000℃範囲から選択された温度範囲であってよく(その前に、任意に、例えば、より低い温度、例えば20℃からの加熱が行われてよい)、及び/又は少なくとも1つの第二の温度範囲は、例えば、1001℃〜1450℃の範囲から選択された温度範囲、好ましくは1001℃〜1375℃の範囲から選択された温度範囲、有利には1001℃〜1320℃の範囲から選択された温度範囲であってよい。この際、第一及び/又は第二の温度範囲は、それぞれ示される温度の範囲全体を包含するか又はこのうちの部分範囲(これは、例えば10℃、好ましくは5℃、有利には2℃、特に1℃を包含してよい)を包含するかのいずれかであってよい。
【0077】
特に温度処理は、少なくとも、1つの部分を通じて温度を高めること、特に温度を段階的に高めることを包含してよい。
【0078】
そのうえ、温度処理は、一定又はほぼ一定の温度を有する少なくとも1つの時間間隔を通じて及び/又は温度上昇を伴う少なくとも1つの時間間隔を通じて行ってよい。温度処理に関して、"一定の温度を有する"との定義は、温度が一定に保たれることに加えて、例えば±10℃までの温度の変化、好ましくは±3℃までの温度の変化、有利には±2℃までの温度の変化も包含し、かつ、"ほぼ一定の温度を有する"との定義は、例えば±10℃までの温度の変化、好ましくは±3℃までの温度の変化、有利には±2℃までの温度の変化、並びにゆっくりと上昇又は下降する温度、例えば毎分0.5℃未満までの、好ましくは毎分0.3℃までのゆっくりと上昇又は下降する温度を包含してよい。
【0079】
非常に好ましい炭素繊維は、例えば、前で具体的に説明を行った工程a)〜c)及びさらに続く工程:d)任意に、処理液で処理した繊維を後処理する工程、その際、後処理は、1つ又は複数の機械的な後処理プロセスから成り、かつ、処理の工程c)と乾燥の工程f)との間で洗浄プロセスは行わない;e)任意に、処理及び任意に後処理した繊維を乾燥する工程;f)処理、並びに任意に後処理及び/又は任意に乾燥した繊維の温度処理を実施する工程、その際、繊維は、温度処理時間中、少なくとも450℃の温度に不活性雰囲気下で曝されていることを包含する方法に従って得られる。本発明による炭素繊維は、その表面にシリコン含有付加物を有してよく、かつ、それぞれ、その表面にシリコン含有付加物を包含する炭素繊維の全質量を基準として、例えば94.0質量%〜94.6質量%、好ましくは94.2質量%〜94.4質量%の炭素含有率を有してよく、及び/又は0.45質量%より大きい、好ましくは0.48質量%〜1.0質量%、有利には0.5質量%〜0.6質量%の範囲のシリコンの含有率を有してよく、及び/又は2.4質量%〜2.9質量%、好ましくは2.6質量%〜2.7質量%の窒素含有率及び/又は1.5質量%〜2.1質量%、好ましくは1.7質量%〜1.9質量%の酸素含有率を有してよい。
【0080】
このような炭素繊維は、有利には1.20g/cm3より大きい密度、並びに、好ましくは1.42g/cm3〜1.82g/cm3の範囲の密度を有する。好ましくは、この繊維は、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維から出発して得られる。
【0081】
本発明は、以下に提示した理論の正当性に縛られずに、本発明による炭素繊維の場合、シリコンは少なくとも部分的に、特に主として、二酸化シリコンの形態で存在すると想定される。これは、X線光電子分光(XPS)測定でのSiピークの位置により指し示される。
【0082】
そのうえまた、本発明は、温度処理前に1つ又は複数の洗浄プロセスに供されており、かつ、例えば、前で具体的に説明を行った工程a)〜c)及びさらに続く工程:d)1つ又は複数の洗浄プロセスによって、処理液で処理した繊維を後処理し、かつ、任意に1つ又は複数の機械的な後処理プロセスによって後処理する工程;e)任意に、後処理した繊維を乾燥する工程;f)後処理及び任意に乾燥した繊維の温度処理を実施する工程、その際、繊維は、温度処理時間中、少なくとも450℃の温度に不活性雰囲気下で曝すことを包含する方法に従って得られる炭素繊維も包含する。このような炭素繊維は、会話体では"サイズ剤が除去された"炭素繊維とも呼ばれる。本発明による炭素繊維は、その表面にシリコン含有付加物を包含してよい。
【0083】
本発明による炭素繊維は、有利には1.20g/cm3より大きい密度、好ましくは1.42g/cm3〜1.82g/cm3の範囲の密度を有する。
【0084】
好ましくは、この繊維は、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維から出発して得られる。
【0085】
任意に、温度処理後に取得された繊維に、特にマトリックス中での繊維の付着を改善するために繊維が複合材料へとさらに加工されるべき場合、表面処理を実施してよい。
【0086】
本発明による方法によって製造された炭素繊維(その際、これは、任意の後処理、特に洗浄プロセスに供されていてもよい)は、DIN 65382に従って測定して、800MPaより高い引張強度、好ましくは1300MPaより高い引張強度、有利には1900MPaより高い引張強度、さらに有利には2800MPaより高い引張強度、特に1300〜6560MPaの範囲の引張強度を有することができる。
【0087】
さらに、本発明による方法によって製造された炭素繊維(その際、これは、任意の後処理、特に洗浄プロセスに供されていてもよい)は、DIN 65382に従って測定して、60GPaより高い弾性率、好ましくは150GPaより高い弾性率、有利には210MPaより高い弾性率、特に150GPa〜275GPaの範囲の弾性率を有することができる。
【0088】
特に複合材料を製造するための好ましい特性プロファイルを、1.24〜1.81g/cm3の密度と250〜6560MPaの引張強度を兼ね備え、好ましくは1.65〜1.81g/cm3の密度と1900〜6560MPaの引張強度を兼ね備える本発明による炭素繊維が有する。
【0089】
そのうえ、特に複合材料を製造するための好ましい特性プロファイルを、1.64〜1.82g/cm3の密度と28%未満の繊維収縮率を兼ね備える炭素繊維が有する。
【0090】
例えば本発明による方法によって得られる本発明による炭素繊維は、5〜13μm、好ましくは6〜8.6μmの直径を有していてよい。
【0091】
出発材料繊維として適した繊維は、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維であり、その際、このような繊維は、本発明の枠内では、"ポリアクリロニトリル繊維"とも略記される。ポリアクリロニトリルとして、ホモポリマーのポリアクリロニトリル及び/又はコポリマーのポリアクリロニトリルを使用してよい。ホモポリマーのポリアクリロニトリル又はコポリマーのポリアクリロニトリルの製造のために、当業者は従来技術の任意の方法を選択することができる。出発材料繊維の繊度は、例えば0.9〜2.4dtexの範囲にあってよい。
【0092】
1つの実施形態によれば、ポリアクリロニトリルが、ポリマーの全質量を基準として、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも95質量%、特に96〜99質量%でアクリロニトリル単位を(モノマー単位として)包含することが有利である。更なる1つの実施形態によれば、ポリアクリロニトリルは、いわゆるモダクリル、すなわち、ポリマーの全質量を基準として、少なくとも50質量%より高く、かつ、85質量%未満がアクリロニトリル単位から成るポリマーであってもよい。任意に、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維は、当業者に公知の更なる成分及び添加剤を有してよい。ポリマーは、有機金属ポリマー、すなわち、金属原子をポリマー鎖中に包含するか又は錯体結合して包含するポリマーであってもよいが、しかしながら、好ましくは、このようなポリマーのいずれも、出発材料繊維の製造には使用されない。好ましくは、出発材料繊維は、それぞれポリマーの全質量を基準として、(モノマー単位として)アクリロニトリル単位少なくとも80質量%、並びに(モノマー単位として)イタコン酸単位1質量%〜3質量%、並びに(モノマー単位として)メチルアクリレート単位3〜5質量%を包含するポリマーを包含する。
【0093】
ポリアクリロニトリル繊維の製造法は、例えば、E.Fitzer,L.M.Manocha著の刊行物"Carbon/Carbon Composites",Springer Verlag,Berlin,1998,ISBN 3−540−62933−5の第10頁〜第17頁、並びに特許文献US4,001,382及びUS6,054,214に具体的な説明が行われている。
【0094】
コポリマーのポリアクリロニトリルは、例えば、アクリロニトリルを、それと共重合可能な(コ)モノマーと重合させることによって得られることができ、例えば、溶液重合によって、レドックス重合によって又はスラリー重合によって得られることができる。
【0095】
コポリマーのポリアクリロニトリルの製造に際しての、共重合のために使用可能な(コ)モノマーとして、例えば:ビニルカルボン酸誘導体、例えばメタクリル酸、イタコン酸;ハロゲン化ビニル化合物、なかでも塩化ビニル;(メタ)アクリレート誘導体、例えば、なかでもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;並びにさらに、例えばメタクリルアミド、スチレンが使用されることができる。本発明の枠内では、1つより多いコモノマーも使用されることができる。好ましくは、出発材料繊維は、コポリマーのポリアクリロニトリルを包含する。
【0096】
ピッチをベースとする前駆体繊維を製造するための出発材料繊維は、等方性のピッチ繊維でも、異方性のピッチ繊維であってもよい。このような出発材料繊維の製造のために、中間相ピッチ(mesophase pitch)が溶融紡糸法に供され、かつ、それが可塑的に変形可能になる限り延伸され、その際、有利な配向を有するピッチ繊維が製造されることができる。適した製造法が従来技術において公知であり、かつ、例えば、E.Fitzer,L.M.Manocha著の刊行物"Carbon/Carbon Composites",Springer Verlag,Berlin,1998,ISBN 3−540−62933−5の第24頁〜第34頁、並びに特許文献DE69732825T2に具体的な説明が行われている。
【0097】
ポリアセチレンをベースとする繊維、ポリフェニレンをベースとする繊維、リグニンをベースとする繊維、セルロースをベースとする繊維についての製造法が当業者に公知である。例えば、次のセルロース繊維、特に再生セルロースからの繊維:ビスコース、キュプラ、モダル、セルロース残分からの繊維:アセテート繊維及びトリアセテート繊維が使用されることができる。
【0098】
セラミックをベースとする繊維についての製造法が当業者に公知である。セラミック繊維は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、SiNC、SiBNC、SiC、B4C、BN、Si34、TiC、WC及びそれらの混合物の中から選択された少なくとも1つの化合物を包含するか、又は完全に若しくは繊維の全質量を基準として少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも93質量%が該化合物から成っていてよい。特に、セラミック繊維は、玄武岩繊維及び/又はガラス繊維又は該繊維と更なるセラミック繊維との混合物であってよい。例えば、Si、C、B、N、Al又はそれらの化合物を基礎とする繊維、特に高耐熱繊維が、文献DE19711829C1に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明による方法の出発材料として使用されるポリアクリロニトリル繊維のREM写真を示す図
【図2】まず先に気相中で酸化され、次いで1450℃で炭素化された従来技術の繊維のESEM写真を示す図
【図3】処理液を洗浄プロセスによって除去しなかった、本発明による炭素繊維前駆体繊維のESEM写真を示す図
【図4】図4は、処理液をメチルエチルケトンで少なくとも部分的に除去した、本発明による炭素繊維前駆体繊維のESEM写真を示す図
【図5】処理液を洗浄プロセスによって除去しなかった、本発明による炭素繊維のESEM写真を示す図
【図6】処理液をメチルエチルケトンで少なくとも部分的に除去した、本発明による炭素繊維のESEM写真を示す図
【図7】処理液での処理の温度/時間推移を概略的に示す図
【図8】本発明による前駆体繊維の化学組成と密度の比較を概略的に示す図
【0100】
方法
a)密度
繊維の密度の測定は、特にDIN 65569、Part 1に従って行うことができる。
【0101】
b)引張強度及び弾性率
引張強度及び弾性率の測定は、特にDIN 65382に従って行うことができる。
【0102】
c)繊維の繊度
繊維の繊度の測定は、特にDIN 60905、sheet 1に従って行うことができる。
【0103】
d)C、H、N、Oの含有量の測定
C、H、N、Oの含有量の測定は、C、H、N及びOの含有量を測定するための元素分析装置によって特に行うことができ、その際、これは、特に、動的な自然燃焼の原理に基づいていてよい。試料の準備は、特に、恒量になるまで105℃で乾燥することによって行うことができる。
【0104】
b)EDX法
シリコンの含有量の測定のために、特にEDX検出を行うことができる。試料の準備は、好ましくは、恒量になるまで105℃で乾燥することによって行うことができる。
【0105】
炭素繊維のEDX検出は、特にREM(走査電子顕微鏡)で行うことができる。装置として、装置製造元LEOのGEMINI DSM 982モデルを用いたシリコンの含有量を測定するためのREMによる全検出は、5kVの加速電圧にて行う。
【0106】
炭素繊維前駆体繊維のEDX検出は、特にESEM(環境制御型走査電子顕微鏡)で行うことができる。装置として、装置製造元FEI CompanyのXL 30 ESEM FEGモデルを用いた。シリコンの含有量を測定するためのESEMによる全検出は、10kVの加速電圧にて行う。
【0107】
d)繊維の繊度
繊維の繊度の測定は、好ましくはDIN 60905、sheet 1に従って行うことができる。
【0108】
e)繊維収縮率
繊維収縮率Sの測定は、次の式:S=[1−(l1/l2)]×100に従って行われ、式中l1=温度処理(炭素化)前の繊維の長さであり、かつ、l2=温度処理後の繊維の長さである。
【0109】
ここから、本発明を、制限を課すものではない下記の例に基づき詳細に説明する:
例1
処理液での処理
1000mlのビーカー(Simax(R))に、各試験に際して300mlのシリコーン油(FRAGOL Schmierstoff GmbH & Co.KG,D−45481(ミュールハイム・アン・デア・ルール)のUCOTHERM X−BF)を入れていた。この油浴中で、出発材料繊維("SAF"、イタコン酸1.5質量%及びメチルアクリレート4.5質量%を包含する、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維)を加熱した。一様な加熱速度を保証するために、ヒータープレートとしてMSC basic Cを温度調節器TC 3と組み合わせて利用し、それにより周囲空気に左右されない油加熱を実現することができた(プレート及び調節器の製造元:Yellow line)。開放構造によってPAN(ポリアクリロニトリル)繊維を、所定の油温度で油浴に浸すことが可能であった。油中で均一な温度分布を保証するために、油を、組み込まれた磁気攪拌機を用いて試験中常に混合した。側面へと向かう著しい熱損失に基づき、油浴をセラミックウールで断熱した結果、200℃〜280℃の温度範囲を得ることができた。所定の長さを有する出発材料繊維を油浴に沈めることができるように、銅管フレームを適当な形に曲げて調整し、繊維を該フレーム上に固定した。フレームは、そのようにして静止状態でワイヤーを介して油浴に放つことができた。その際、繊維がビーカーの壁に接触せず、確実に油で完全に覆われることに注意した。Thermologger K204(voltcraft(R))に取り付けられた熱電対により、各試験に際して、温度/時間プロファイルを記録した。
【0110】
試料系Aについては、油温度を熱処理の間ずっと一定に保ち、安定化時間のみを変化させた。そのために、PAN繊維を、210℃、220℃及び230℃の油温度で浸漬した。繊維を、それぞれ、55分後、200分後、300分後、420分後及び720分後に油から取り出した。
【0111】
試料系Bでは、一定の加熱速度を段階的なプロファイルと近似させた。この試料系の各試料を、200℃の油温度で浸漬した。10分の保持時間後に、温度を段階的に10Kだけ高め、新しい目標温度に達した後に10分保持した。この仕方で、処理温度は280℃にまで漸次的に高まった。
【0112】
段階的な温度の高まりが繊維に及ぼす影響を追って調べるために、第2表に示す通り、9つの予め酸化されたポリアクリロニトリル繊維"PanOx 2"〜"PanOx 10"を取得した。繊維"PanOx 2"は、200℃で10分保持した後に取り出し、繊維"PanOx 3"は、210℃の温度に達してから、この温度を10分保持した後に取り出し、繊維"PanOx 4"は、220℃の温度に達してから、この温度を10分保持した後に取り出し、繊維"PanOx 5"は、230℃の温度に達してから、この温度を10分保持した後に取り出した等々。最終的に、繊維"PanOx 10"は、280℃に達してから、この温度を10分保持した後に取り出した。図7は、段階的に温度が高まることによる繊維処理に際しての温度挙動を具体的に示す。
【0113】
例2
後処理法
a)メチルエチルケトンを用いた抽出
繊維を、油浴から取り出した後に紙で軽くたたき、次いでメチルエチルケトンを用いたソックスレー抽出に240分間供した。この際、各々の抽出サイクルにおいて、純粋な溶媒のみが、サイズ剤が除去されるべき繊維に達する。引き続き、繊維を、周囲空気雰囲気中で100℃にて乾燥した。
【0114】
b)後処理の代替的な手法
幾つかの繊維の試料を、処理液での処理後に、繊維に留まっている油を除去するためにただ紙で軽くたたいた。このような繊維は、本出願の枠内では、"サイズ剤が除去されなかった"繊維とも呼ぶ。
【0115】
さらに、幾つかの一連の試験において、繊維を紙で軽くたたいた後に、トルエン又はイソプロパノール又はアセトンを用いたソックスレー抽出に240分間供した。そのつど選択した溶媒及び抽出継続時間に応じて、処理液の除去の程度を制御することができる。
【0116】
そのうえ、いくつかの一連の試験において、洗浄試験を超音波浴中で溶媒のアセトン、イソプロパノール及びトルエンを用いて実施した。
【0117】
そのうえまた、洗浄は市販のシリコーンリムーバーを用いてテストした。このために、この粘性のある組成物をブラシで繊維に塗った。
【0118】
c)種々の後処理の比較
処理液(FRAGOL Schmierstoff GmbH & Co.KGのUCOTHERM X−BF)での同一の処理後のPAN繊維(前述のような"SAF"繊維)の種々の後処理プロセスを互いに比較した:紙で軽くたたき、引き続き乾燥を行う処理;紙で軽くたたき、その後にメチルエチルケトン又はイソプロパノール又はアセトン又はトルエンを用いた抽出を、それぞれ240分間行い、引き続き恒量になるまで105℃で乾燥を行う処理、並びに市販のシリコーンリムーバーを用いた精製(例えば、前の例2bに記述)を行い、引き続き恒量になるまで105℃で乾燥を行う処理。
【0119】
EDX測定により、その表面にシリコン含有付加物を包含する、予め酸化された炭素繊維前駆体繊維の全質量をそのつど基準とした次のシリコン含有率の結果が出た:
【表1】

【0120】
例3
予め酸化されたPAN繊維の元素分析データ
例1にそれらの製造を記載している、予め酸化されたポリアクリロニトリル繊維"PanOx 2"〜"PanOx 10"を、例2aに従った抽出及び乾燥に供した。SAF−PANとの略称は、例1に記載した出発材料繊維を表す。
【0121】
段階的な製造の最終温度に応じて、予め酸化されたポリアクリロニトリル繊維"PanOx 2"〜"PanOx 10"(下記の表中の番号2〜10)についてのC、H、N、O−分析器を用いた燃焼分析によって次の元素分析値を得た:
【表2】

【0122】
2つ目の欄では、最終温度を示す値F(X)を見出すことができ、該最終温度に達し、かつ、10分間保持した後に、そのつど繊維を油浴から引き離した。
【0123】
図8は、これらの値のグラフィカルプロットを示す。
【0124】
例4
炭素化法(温度処理)
処理液で処理した前述の繊維の温度処理(本出願の枠内では"炭素化"とも呼ぶ)のために、管状炉LORA 1800−32−600−1(HTM Reetz GmbH)を使用した。炭素化の間ずっと、試料チャンバーを窒素でフラッシングして、炉内で可能な限り僅かな酸素濃度を炭素化の間ずっと保証し、かつ、試料の変換に際して生じるガスを導き出した。管状炉内での雰囲気の全質量を基準として1質量%を下回る酸素割合を得るために、これをラムダプローブ(Bosch、0258 104 004モデル)を用いて排ガス路内で測定した。ラムダプローブの電圧信号のみならず、炉内に組み込まれた熱電対により測定した温度も、各々の炭素化プロセスに際して記録した。試料を、各々の炭素化プロセスに際して、可能な限り作業管の中心に、ひいては熱電対にすぐ近くにも配置した。繊維は、その際、グラファイト片上又は10cmの長さのジルコニウムボート内に据え置くことで、炉の作業管が余計に汚されないようにした。種々の温度プロファイルを、一連の試験において調べた。
【0125】
温度プロファイルIを、以下のように実施する:1.5時間のあいだ、500℃への加熱を行い、続けて30分間のあいだ、温度を500±25℃で一定に保ち、次いで温度を、2.75時間のあいだ、8段階で1450℃に高め、引き続き2.5時間のあいだ、550℃冷却させる。
【0126】
温度プロファイルIIを、以下のように実施した:まず、1000℃まで250℃/hの加熱速度で加熱を行い、次いで温度の保持を2分間行う。引き続き、1375℃まで250℃/hの加熱速度で加熱を行い、次いで1375℃の温度の保持を2分間行う。その後、室温への冷却を続けて行う。
【0127】
温度プロファイルIIIを、以下のように実施する:まず、1000℃まで250℃/hの加熱速度で加熱を行い、次いで温度の保持を2分間行う。引き続き、1320℃まで250℃/hの加熱速度で加熱を行い、次いで1320℃の温度の保持を2分間行う。その後、室温への冷却を続けて行う。
【0128】
例5
炭素繊維の材料特性
例1にその製造を記載している、予め酸化されたポリアクリロニトリル繊維"PanOx 10を、例2aに従った抽出及び乾燥に供し、引き続き温度プロファイルIに従った温度処理(炭素化)に供した。この繊維"C繊維 10"の弾性率は低いので、この繊維は1000℃までしか炭素化しなかった。
【0129】
例6
高耐荷性の炭素繊維の製造
SAF繊維(イタコン酸1.5質量%及びメチルアクリレート4.5質量%を包含するポリアクリロニトリルをベースとする繊維)を、シリコーン油浴(FRAGOL Schmierstoff GmbH & Co.KG,D−45481(ミュールハイム・アン・デア・ルール)のUCOTHERM X−BF)に230℃の温度で浸漬した。この油浴温度を20分間保ち、次いで該温度を10分間にわたり250℃に上昇させ、かつ、該温度を30分間保った。油浴から取り出した後に、繊維を紙で軽くたたき、次いでメチルエチルケトンを用いたソックスレー抽出に240分間供した。引き続き、繊維を、周囲空気雰囲気中で105℃にて乾燥した。引き続き、所定の温度プロファイルによる炭素化を行った。このように製造された炭素繊維は、次の特性を有する:密度1.753g/cm3、引張強度2844MPa、弾性率218GPa、直径7.0μm。
強調されるべき点は、多段プロファイルの使用が、すでに比較的短い60分又はそれより短い処理時間にて、高い引張強度及び高い弾性率を有する繊維の製造を可能にすることである。一定温度での比較可能な試験では、意想外にも、明らかにより品質が劣った、特に引張強度が劣った炭素繊維が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有繊維の製造法であって、以下の工程:
a)1つ又は複数の出発材料繊維を準備する工程;
b)該1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させる工程、その際、処理液が、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する;
c)該1つ又は複数の出発材料繊維を、該処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理する工程;
を包含する、炭素含有繊維の製造法。
【請求項2】
さらに以下の工程:
g)処理、並びに任意に後処理及び/又は任意に乾燥した前記繊維の温度処理を実施する工程、その際、前記繊維は、少なくとも450℃の温度の温度処理時間を通じて不活性雰囲気に曝されている;
を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の出発材料繊維が、ポリアクリロニトリルをベースとする繊維、ポリアセチレンをベースとする繊維、ポリフェニレンをベースとする繊維、セルロースをベースとする繊維、ピッチをベースとする繊維、リグニンをベースとする繊維、ビスコースをベースとする繊維、ポリプロピレンをベースとする繊維、炭素含有繊維及びセラミックをベースとする繊維の混合物、及びそれらの混合物から成る群から選択されている繊維を包含する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記処理温度が、好ましくは136℃〜360℃の範囲、有利には165℃〜320℃の範囲、特に185℃〜282℃の範囲にある、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記処理液での前記処理が、前記処理を第一の温度範囲及び少なくとも1つの第二の温度範囲内で行うことを包含し、その際、前記少なくとも1つの第二の温度範囲の最低温度が、前記第一の温度範囲の最高温度より高く、かつ、前記処理が、前記第一の温度範囲内での前記1つ又は複数の出発材料繊維の処理から始まる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第一の温度範囲が、126℃〜260℃範囲から選択された温度範囲、好ましくは152℃〜250℃の範囲から選択された温度範囲、有利には190℃〜240℃の範囲から選択された温度範囲であり、及び/又は前記第二の温度範囲が、140℃〜450℃の範囲から選択された温度範囲、好ましくは180℃〜290℃の範囲から選択された温度範囲、有利には195℃〜282℃の範囲から選択された温度範囲である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記処理液の温度が、前記全体の処理時間を通じて、又は前記処理時間の1つ又は複数の時間間隔を通じて、連続的又は不連続的に上昇する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記処理時間が、前記温度をある温度に一定又はほぼ一定に保つ少なくとも1つの時間間隔、及び前記温度を変化させる、好ましくは高める少なくとも1つの時間間隔を包含する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記処理液の前記温度を、前記処理時間の時間間隔を通じて、1分間に0.5℃〜15℃だけ、好ましくは1分間に5℃〜10℃だけ上げるか又は下げる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記処理液が、ポリジアルキルシロキサン、ポリジアリールシロキサン及びポリモノアルキルモノアリールシロキサンから成る群から選択された少なくとも1つのシリコーン化合物を包含する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記処理液が、そのつど前記処理液の全質量を基準として、含水率0.001〜22質量%、好ましくは0.1〜15質量%、有利には0.5〜12質量%、特に0.8〜8質量%を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
さらに以下の工程:前記出発材料繊維の準備を、前記処理の工程c)の前に及び/又は少なくとも部分的に前記処理の工程c)を通じて、引っ張った状態で行う工程を包含する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の機械的な後処理プロセスが、前記処理された繊維を圧縮プロセス及び/又は吸込プロセス及び/又は滴切りプロセスに供する工程を包含し、及び/又は前記1つ又は複数の洗浄プロセスが、超音波作用下での浴中における抽出及び/又は処理工程を包含する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の繊維が、前記処理の工程c)及び前記温度処理の工程g)後に、5質量%より高い酸素含有率及び70℃又はそれより高い温度、有利には50℃又はそれより高い温度、好ましくは38℃又はそれより高い温度を有する雰囲気と接触しないか又は、1分の時間より長くは接触しない、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維であって、その際、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維が、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維の全質量を基準として49.9質量%〜63.5質量%の炭素含有率を有する、シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維。
【請求項16】
1.30〜1.50g/cm3である密度を有する、請求項15記載の炭素繊維前駆体繊維。
【請求項17】
それぞれ前記シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維の全質量を基準として、少なくとも19質量%のシリコン含有率、好ましくは19.3質量%〜20.6質量%のシリコン含有率を有し、及び/又は3.3質量%〜16.2質量%の窒素含有率を有し、及び/又は12.4質量%〜14.0質量%の酸素含有率を有する、請求項15又は16記載の炭素繊維前駆体繊維。
【請求項18】
請求項15から17までのいずれか1項記載の炭素繊維前駆体繊維であって、その際、前記炭素繊維前駆体繊維が、以下の工程:
a)1つ又は複数の出発材料繊維を準備する工程;
b)該1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させる工程、その際、処理液が、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する;
c)該1つ又は複数の出発材料繊維を、該処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理する工程;
d)任意に、該処理液で処理した繊維を後処理する工程、その際、該後処理は、1つ又は複数の機械的な後処理プロセスから成り、かつ、該処理の工程c)と該乾燥の工程e)との間で洗浄プロセスは行わない;
e)該処理及び任意に後処理した繊維を乾燥する工程;
を包含する方法に従って得られる、請求項15から17までのいずれか1項記載の炭素繊維前駆体繊維。
【請求項19】
シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維であって、その際、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維が、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維の全質量を基準として52.9質量%〜81.6質量%の炭素含有率を有する、シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維。
【請求項20】
1.20g/cm3より大きい密度を有し、好ましくは1.20g/cm3〜1.38g/cm3の範囲の密度を有する、請求項19記載の炭素繊維前駆体繊維。
【請求項21】
それぞれ前記シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維前駆体繊維の全質量を基準として、少なくとも0.5質量%のシリコン含有率、好ましく0.55質量%〜4.6質量%のシリコン含有率を有し、及び/又は7.3質量%〜34.4質量%の窒素含有率を有し、及び/又は3.3質量%〜9.7質量%の酸素含有率を有する、請求項19又は20記載の炭素繊維前駆体繊維。
【請求項22】
請求項19から21までのいずれか1項記載の炭素繊維前駆体繊維であって、その際、前記炭素繊維前駆体繊維が、以下の工程:
a)1つ又は複数の出発材料繊維を準備する工程;
b)該1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させる工程、その際、処理液が、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する;
c)該1つ又は複数の出発材料繊維を、該処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理する工程;
d)該処理液で処理した繊維を、1つ又は複数の洗浄プロセスによって後処理し、かつ、任意に、1つ又は複数の機械的な後処理プロセスによって後処理する工程;
e)任意に、該後処理した繊維を乾燥する工程;
を包含する方法に従って得られる、請求項19から21までのいずれか1項記載の炭素繊維前駆体繊維。
【請求項23】
シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維であって、その際、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維が、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維の全質量を基準として94.0質量%〜94.6質量%の炭素含有率を有する、シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維。
【請求項24】
1.20g/cm3より大きい密度を有し、好ましくは1.42g/cm3〜1.82g/cm3の範囲の密度を有する、請求項23記載の炭素繊維。
【請求項25】
それぞれ前記シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維の全質量を基準として、0.45質量%より高い、好ましくは0.48質量%〜1.0質量%の範囲のシリコン含有率を有し、及び/又は2.4質量%〜2.9質量%の窒素含有率を有し、及び/又は2.6質量%〜2.7質量%の酸素含有率を有する、請求項23又は24記載の炭素繊維。
【請求項26】
請求項23から25までのいずれか1項記載の炭素繊維であって、その際、前記炭素繊維が、以下の工程:
a)1つ又は複数の出発材料繊維を準備する工程;
b)該1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させる工程、その際、処理液が、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する;
c)該1つ又は複数の出発材料繊維を、該処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理する工程;
d)該処理液で処理した繊維を、1つ又は複数の洗浄プロセスによって後処理し、かつ、任意に、1つ又は複数の機械的な後処理プロセスによって後処理する工程;
e)任意に、該後処理した繊維を乾燥する工程;
f)該後処理及び任意に乾燥した繊維の温度処理を実施する工程、その際、該繊維は、温度処理時間を通じて、少なくとも450℃の温度に不活性雰囲気下で曝されている;
を包含する方法に従って得られる、請求項23から25までのいずれか1項記載の炭素繊維。
【請求項27】
シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維であって、その際、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維が、該シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維の全質量を基準として94.0質量%〜94.6質量%の炭素含有率を有する、シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維。
【請求項28】
1.20g/cm3より大きい密度を有し、好ましくは1.42g/cm3〜1.82g/cm3の範囲の密度を有する、請求項27記載の炭素繊維。
【請求項29】
それぞれ前記シリコン含有付加物をその表面に包含する炭素繊維の全質量を基準として、0.45質量%より高い、好ましくは0.48質量%〜1.0質量%の範囲のシリコン含有率を有し、及び/又は2.4質量%〜2.9質量%の窒素含有率を有し、及び/又は1.5質量%〜2.1質量%の酸素含有率を有する、請求項27又は28記載の炭素繊維。
【請求項30】
請求項27から29までのいずれか1項記載の炭素繊維であって、その際、該炭素繊維が、以下の工程:
a)1つ又は複数の出発材料繊維を準備する工程;
b)該1つ又は複数の出発材料繊維を、少なくとも1つの処理液と接触させる工程、その際、処理液が、少なくとも1つのシリコーン化合物を包含し、かつ、該処理液の全質量を基準として0〜25質量%の含水率を有する;
c)該1つ又は複数の出発材料繊維を、該処理液で、少なくとも3分の継続時間を有する処理時間を通じて126℃〜450℃の範囲の処理温度で処理する工程;
d)任意に、該処理液で処理した繊維を後処理する工程、その際、該後処理は、1つ又は複数の機械的な後処理プロセスから成り、かつ、該処理の工程c)と該温度処理の工程f)との間で洗浄プロセスは行わない;
e)任意に、該処理及び任意に後処理した繊維を乾燥する工程;
f)該処理、並びに任意に後処理及び/又は任意に乾燥した繊維の温度処理を実施する工程、その際、該繊維は、温度処理時間を通じて、少なくとも450℃の温度に不活性雰囲気下で曝されている;
を包含する方法に従って得られる、請求項27から29までのいずれか1項記載の炭素繊維。
【請求項31】
前記付加物が粒子状の付加物を包含し、その際、好ましくは、その粒子の最大長さが、40μmより小さく、さらに好ましくは8μmより小さく、有利には2μmより小さい、請求項15から22までのいずれか1項記載の前駆体繊維又は請求項23から30までのいずれか1項記載の炭素繊維。
【請求項32】
織物及び/又は繊維層状物及び/又は複合材料、特にC/SiC複合材料を製造するための、請求項15から22までのいずれか1項記載の前駆体繊維又は請求項23から31までのいずれか1項記載の炭素繊維の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−513034(P2013−513034A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541524(P2012−541524)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068880
【国際公開番号】WO2011/067392
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (47)
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
【住所又は居所原語表記】Soehnleinstr. 8, D−65201 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】