複合材料構造物製造用マンドレルの分解方法およびマンドレルの分解装置
【課題】 略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、容易かつ効率的に分解することができる技術を提供する。
【解決手段】 外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態のマンドレルにおいて、取外し対象である1個のセグメントを最上部に位置させるように、一対のサポートリングを回転させる回転工程と、最上部に位置した取外し対象の前記セグメントを、一対のサポートリングから取り外すセグメント取外し工程とが行われる。このうち、セグメント取外し工程では、一対のサポートリングの間で、取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って下降させて前記マンドレルの内側に位置させてから、一対のサポートリングの間より搬出する。
【解決手段】 外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態のマンドレルにおいて、取外し対象である1個のセグメントを最上部に位置させるように、一対のサポートリングを回転させる回転工程と、最上部に位置した取外し対象の前記セグメントを、一対のサポートリングから取り外すセグメント取外し工程とが行われる。このうち、セグメント取外し工程では、一対のサポートリングの間で、取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って下降させて前記マンドレルの内側に位置させてから、一対のサポートリングの間より搬出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂複合材料を用いた複合材料構造物の製造に用いられ、複数のセグメントを筒状に保持して成るマンドレルを分解する分解方法およびこれに用いられるマンドレルの分解装置に関し、特に、航空機の胴体部等として用いられる巨大な複合材料構造物の製造に好適に用いられるマンドレルの分解方法およびマンドレルの分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまで金属材料が用いられてきた分野において、繊維強化樹脂複合材料(以下、適宜「複合材料」と略す。)が広く用いられるようになっている。この複合材料の中でも、強化繊維として炭素繊維を用い、これにエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含浸させて成形した炭素繊維強化型のものは、金属材料よりも軽量であることに加え、より高強度であることから、スポーツ用品、産業機械、航空宇宙等の分野に広く採用されている。
【0003】
これら分野のうち航空宇宙の分野では、例えば、航空機の翼や胴体等の構造物において、軽量な金属の骨格部材であるスティフナ(stiffener)に複合材料からなるスキンを一体化するスティフンドパネル(stiffened panel)が採用されている。代表的なスティフナとしては、ストリンガが挙げられる。ストリンガは構造物の形状に組み合わせられた上で各種治具により支持され、これにプリプレグが複数枚積層され、オートクレーブ(圧力釜)により加圧、加熱される。これによりプレプリグが硬化してスキンとなるとともに、当該スキンにスティフナが密着されて一体化されることで、スティフンドパネルが形成される。
【0004】
スティフンドパネルからなる構造物の一例として、図24に示すような、ワンピースバレル(OPB)として形成される航空機の胴体部101等が挙げられる。胴体部101は、スキン102と当該スキン102の内面側に密着されている複数のストリンガ103とから構成され、航空機として組み立てられたときに扉となる開口部104および窓となる開口部105が形成されている。
【0005】
このような航空機の構造体の製造に関する技術としては、特許文献1に開示されている、航空機胴体の複合バレルセクションが知られている。この文献では、バレルセクションは「軸周りに360°延在する密封されたシェル構造」として定義され、このバレルセクションを製造するために、複数のツール断片(例えば6個)をツール固定具で円筒状に配置して支持することにより構成される成形型が用いられている。
【0006】
特許文献1では、複合バレルセクションの製造システムの一例として、複数の製造ステーションが直列配置され、各製造ステーションに、前記成形型を含むバレルセクションツールアセンブリ(以下、ツールアセンブリと略す。)が移動する構成が開示されている。
【0007】
具体的には、まず、スティフナ装填ステーションにおいて、各ツール断片に形成された複数のスティフナ溝に複数のスティフナを装填し、その後、当該ツール断片を前記ツール固定具に装填して円筒形に支持され、単一の成形型(同文献ではツールアセンブリ)を構成する。このとき、ツール固定具は、複数のローラによってツール支持構造に回転可能に支持され、ツール固定具が長手軸周りを回転することを可能にしている。
【0008】
次に、円筒形に支持されて構成された成形型は、ツール支持構造により外板積層ステーションに運搬され、ここで、前記長手軸周りに前記成形型が回転することで、繊維配置機械によって繊維トウ(熱硬化樹脂材料にあらかじめ含浸した連続的なフィラメントの撚られていない束)が積層され、前記成形型の外周に積層体(スキンに相当)が形成される。
【0009】
次に、積層体が形成された前記成形型(同文献ではツールアセンブリ)は、ツール支持構造によりバキュームステーションに運搬され、ここで、積層体の外周に圧力パッドが据え付けられ、バキュームバックが積層体の周囲に据え付けられ、バキュームバック内を排気する。その後、バキュームバックが付いた成形型(ツールアセンブリ)は、ガントリービームにより硬化ステーションに運搬され、オートクレーブ処理が行われることにより、積層体およびスティフナが硬化する。これにより、前記成形型の外周に、前記積層体およびスティフナが硬化してスティフンドパネルが形成される。
【0010】
スティフンドパネルが形成された状態の成形型(ツールアセンブリ)は、ガントリービームにより検査ステーションに運搬され、硬化後の積層体(スキン)に空隙または剥離が無いか検査され、次に、ガントリービームによりトリミングステーションに運搬され、積層体(スキン)にトリミングおよび穴開けが行われる。その後、ツール断片がスティフンドパネルから除去され、スティフナ装填ステーションに戻されるとともに、除去後のスティフンドパネル(ツールアセンブリ)は、ツール支持構造により最終アセンブリステーションに運搬され、複数のフレームセクションが取付けられ、複合バレルセクションが完成する。
【0011】
このように、OPBの製造においては、成形型として略円筒形のマンドレルを備え、このマンドレルは、巨大な成形型を用いて、成形品(複合材料構造物)であるOPBの中空を形成するために、外周面に当該成形品が成形されるように構成されている。それゆえ、このマンドレルにおいては、単一の巨大な筒状部材ではなく、複数のセグメント、例えば6つのセグメントに分割される構造が採用される。この構造であれば、単一の巨大な成形型を用いなくてもよく、必要に応じて、各セグメントを組み立てればよいため、OPB等の大きな成形品を成形するときに有用となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−532384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、前記円筒形のマンドレル(成形型)は、成形品であるOPBが、航空機の胴体部のように非常に大きなものであることから、円筒形に組み立てられた各セグメントからなるマンドレル(成形型)を、成形品から取り外すときには、その作業に困難性が伴うとともに、作業そのものも非常に煩雑となる。
【0014】
例えば、航空機の胴体部であれば、その寸法は、直径が約4〜6mで円筒の長さが約5〜15mという巨大なものとなる。胴体部を構成するスティフンドパネル(スキンおよびスティフナ)は、当該胴体部全体から見れば、非常に厚みの小さいものであることから、これを製造するマンドレルの大きさは、当該胴体部の外形寸法とほぼ同じ大きさとなる。しかも、特許文献1にも記載されている通り、マンドレルのセグメント(同文献ではツール断片)は、「鉄、インバール、アルミニウム」等の金属材料を主体として製造されることが多い。したがって、上記マンドレルを成形型としてOPBを成形した後、当該マンドレルをOPBの中空から取り外すときには、巨大で重い金属製の成形型を、OPBを破損しないように取り外すことになるが、このような作業は容易ではない。
【0015】
ここで、上記マンドレルは複数のセグメントから構成されるため、OPBの中空から当該マンドレルを取り外すときには、セグメントに分解する方法を採用すればよいことになる。ところが、巨大なマンドレルを複数のセグメントに分解したところで、各セグメントそのものが上記のとおり大きくかつ重いものとなっている。
【0016】
一般に大型構造物の分解では、天井クレーン等を用いて、当該構造物を構成する大きな構成部材を吊り上げてから水平移動させ、所定の位置に配置させるという過程を経ることになる。しかしながら、上記のように、マンドレルは、成形品(OPB等)の中空内に嵌合した状態にある。それゆえ、上記マンドレルをセグメントに分解して中空から取り外すとしても、天井クレーン等を用いる方法では、上記セグメントを吊り上げる前に成形品の中空から当該セグメントを引き出す必要が生じる。したがって、天井クレーン以外の作業用機器を利用する必要が生じ、結果的にマンドレルの分解は煩雑な過程を経ることになり、また、適切な作業用機器を利用しなければ、成形品が破損するといった可能性も生じる。
【0017】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、例えば航空機の胴体部等の複合材料構造物の製造に用いられる成形型の主たる構成であり、略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、例えば、成形品から取り外す場合であっても成形品にほとんど影響を与えることなく、容易かつ効率的に分解することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るマンドレルの分解方法は、前記の課題を解決するために、軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を成す複数のセグメントを筒状に組み立てて成るマンドレルを、個々のセグメントに分解するマンドレルの分解方法であって、前記マンドレルは、対向配置した一対のサポートリングの間で、前記セグメントが、互いに結合され、前記サポートリングのそれぞれに固定されることで、筒状を成しているとともに、その外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態にあり、取外し対象である1個の前記セグメントを最上部に位置させるように、前記一対のサポートリングを前記マンドレルとともに回転させる回転工程と、最上部に位置した前記取外し対象の前記セグメントを、前記一対のサポートリングから取り外すセグメント取外し工程と、を含み、前記セグメント取外し工程では、前記一対のサポートリングの間で、前記取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って下降させて前記マンドレルの内側に位置させてから、前記一対のサポートリングの間より搬出する構成である。
【0019】
前記構成によれば、取外し対象のセグメントをサポートリングから取り外す際、当該セグメントは、サポートリングの最上部に位置している。そこで、当該セグメントを、最上部から鉛直下方へ向かって移動させると、取り外されたセグメントは、マンドレルの内側に移動するので、マンドレルの外周面に形成された複合材料構造物にほとんど影響を与えることなく、セグメントを取り外すことができる。しかも、マンドレルの内側に移動した当該セグメントは、一対のサポートリングの間に位置しているが、当該サポートリングの中空を通過するように水平方向に移動させれば、当該セグメントをサポートリングの間から容易に搬出することができる。また、取外し対象のセグメントは、サポートリングを回転させることで、常に最上部という一箇所に決められており、移動方向も鉛直方向のみで一定となっているため、複数のセグメントの全てを同様の工程で簡単に取り外すことができる。
【0020】
前記分解方法においては、前記取外し対象のセグメントが、隣接するセグメントに結合しているときには、前記セグメント取外し工程の前に、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの結合状態を解除する、セグメント結合解除工程を含むことが好ましい。
【0021】
前記構成によれば、先にセグメント同士の結合を解除しても、当該セグメントはサポートリングに固定されているので、結合が解除されたセグメントを1個ずつ取り外していくことができる。それゆえ、マンドレルの分解を効率的に行うことができる。
【0022】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、略矩形状を成す当該セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持しつつ下方へ変位させることにより、前記取外し対象の前記セグメントを前記マンドレルの内側へ向かって下降させることが好ましい。
【0023】
前記構成によれば、四隅近傍の位置を独立して個別に変位させながら取外し対象のセグメントを下降させるので、当該セグメントをマンドレルの内側へ下ろすときに、姿勢制御および位置制御を行うことができる。
【0024】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントを傾斜させるように、その一端部を他端部よりも先に下降させることによって、前記複合材料構造物の内面から引き剥がすことがより好ましい。
【0025】
前記構成によれば、取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って単純に下降させずに、傾斜させながら下降させるので、密着した複合材料構造物とセグメントとの間に空気を送り込むことにより密着を開放することができ、複合材料構造物に変形等を生じさせずに効率的に分離させることができる。
【0026】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、前記サポートリングおよび前記取外し対象の前記セグメントの間に設けた環状固定ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内することが好ましい。
【0027】
前記構成によれば、環状固定ガイド機構によりセグメントの下降方向を案内するため、取外し対象のセグメントが下降中にサポートリング等に接触するような事態を回避することができる。
【0028】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの間に設けたセグメント結合ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内することがより好ましい。
【0029】
前記構成によれば、セグメント結合ガイド機構によりセグメントの下降方向を案内するため、取外し対象のセグメントが下降中に隣接するセグメント等に接触するような事態を回避することができる。
【0030】
前記分解方法においては、前記回転工程では、前記サポートリングの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で当該サポートリングを下方から支持しつつ回転力を付与し、かつ、前記サポートリングの上部にて当該サポートリングの前記軸芯方向の移動を制約するように支持することが好ましい。
【0031】
前記構成によれば、サポートリングの上部と下部とを回転可能に支持しているため、サポートリングの転倒を防止しつつこれを回転させることができる。
【0032】
前記分解方法においては、前記回転工程では、前記取外し対象の前記セグメントが前記サポートリングの最上部に位置していると判断すべく、前記サポートリングに設けられた被検出部が当該サポートリングの回転により所定の検出位置に到達したことを、位置検出部により検出することが好ましい。
【0033】
前記構成によれば、サポートリングの回転に伴って、取外し対象のセグメントが最上部にあることを検出できるので、回転するサポートリングの正確な位置決めが可能となる。
【0034】
前記分解方法においては、前記複数のセグメントは、互いに形状の異なる第一セグメントおよび第二セグメントから構成され、かつ、前記第二セグメントにおける、前記マンドレルの外周面となる表面の面積は、前記第一セグメントの前記表面の面積よりも広くなっており、前記セグメント取外し工程には、前記第一セグメントを取り外す第一セグメント取外し工程と、前記第二セグメントを取り外す第二セグメント取外し工程とが含まれ、前記第一セグメント取外し工程は、前記第二セグメント取外し工程より先に行われることが好ましい。
【0035】
前記構成によれば、先に、表面の面積が狭い第一セグメントを取外してから、表面の面積が広い第二セグメントを取り外すので、取り外しやすい小面積のセグメント(第一セグメント)を取り外して、サポートリングの間に作業空間を確保してから大面積のセグメント(第二セグメント)を取り外すことになる。それゆえ、マンドレルの分解をより効率的に行うことができる。
【0036】
本発明には、前記マンドレルの分解方法に加えて、当該分解方法に好適に用いることができる分解装置も含まれる。具体的には、本発明に係るマンドレルの分解装置は、前記構成のマンドレルの分解方法に用いられ、前記一対のサポートリングの中空に挿入されるレール本体と、当該レール本体上に設けられ、当該レール本体の後端から先端に向かって前記セグメントを水平移動させるコンベヤ部と、前記レール本体上に設けられ、前記コンベヤ部から移動された前記セグメントを、鉛直方向に沿って上昇移動させるジャッキ部と、を備え、前記ジャッキ部は、前記レール本体が前記サポートリングの中空に挿入された状態で、前記サポートリングそれぞれの間で、略矩形状を成す前記セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、当該各位置を独立して鉛直方向に沿って変位可能とするセグメント支持部材を有している構成を挙げることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明では、略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、容易かつ効率的に分解することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るマンドレルを含む成形型の全体構成の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示すマンドレルを形成する第一セグメントの構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す第一セグメントを端部から見た平面図である。
【図3】(a)は、図1に示すマンドレルを形成する第二セグメントの構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す第二セグメントを端部から見た平面図である。
【図4】(a)は、図1に示すマンドレルを両端で支持するサポートリングの構成の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)に示すサポートリングで保持されるセグメントの位置関係を示すマンドレルの模式的な端面図である。
【図5】図1に示すマンドレルを組み立てる組立分解装置の一例であるプレシジョンレールの全体構成を示す斜視図である。
【図6】(a)は、図5に示すプレシジョンレールにセグメントを載置した状態を模式的に示す概略平面図であり、(b)は、図5に示すプレシジョンレールに含まれるリング回転駆動部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】(a)は、本実施の形態において用いられるアウターリングが成形品の外側に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すアウターリングを成形品に取り付ける状態を模式的に示す平面図である。
【図8】図1に示すマンドレルを分解する本実施の形態の分解方法の全体構成を説明する工程図である。
【図9】図4(b)に示す部位#1の第一セグメントを、隣接する部位#6,#2の第二セグメントおよびサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第一セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図10】(a),(b)は、図9に示す第一セグメントを取り外すときのプレシジョンレールの動作を示す当該プレシジョンレールの側面図である。
【図11】(a)〜(c)は、図10(b)に続くプレシジョンレールの動作を示す当該プレシジョンレールの側面図である。
【図12】(a),(b)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレールの動作において、ジャッキ部の支持ロッド部が第一セグメントを支持する状態を示す模式的断面図であり、(c)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレールの動作において、ジャッキ部の支持ロッド部が第一セグメントを支持する状態を示す模式的正面図である。
【図13】図4(b)に示す部位#1の第一セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図14】図4(b)に示す部位#3の第一セグメントを、隣接する部位#2,#4の第二セグメントおよびサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第一セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図15】図4(b)に示す部位#3の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図16】図4(b)に示す部位#5の第一セグメントを、隣接する部位#4,#6の第二セグメントおよびサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第一セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図17】図4(b)に示す部位#5の第一セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図18】図4(b)に示す部位#6の第二セグメントをサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第二セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図19】図4(b)に示す部位#6の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図20】図4(b)に示す部位#2の第二セグメントをサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第二セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図21】図4(b)に示す部位#2の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図22】図4(b)に示す部位#4の第二セグメントをサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第二セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図23】図4(b)に示す部位#4の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図24】複合材料構造物の一例である、ワンピースバレル(OPB)として形成される航空機の胴体部の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0040】
[成形型の全体構成]
まず、本実施の形態に係る分解方法で分解される複合材料構造物製造用成形型(以下、成形型と略す。)の全体構成について図1を参照して説明する。図1は本実施の形態に係るマンドレルを含む成形型の全体構成の一例を示す斜視図である。
【0041】
図1に示すように、本実施の形態に係る成形型10は、マンドレル11と、その両端に位置する一対のサポートリング40a,40bとから少なくとも構成されている。マンドレル11は、6個のセグメント20a,30a,20b,30b,20c,および30cが、互いにその側面で結合されることにより形成されており、このマンドレル11の両端はサポートリング40a,40bによりそれぞれ支持されている。これによって6個のセグメント20a〜20cおよび30a〜30cが円筒状に保持されることになる。なお、以下の説明では、セグメント20a〜20cおよび30a〜30cを包括して説明するときには、単に、「セグメント20,30」と略す。
【0042】
ここで、後述するように、セグメント20,30の表面には、ストリンガを装着するための溝状凹部が形成されているが、図1では、全体構成を明確に示す便宜上、溝状凹部の記載を省略している。また、セグメント20,30およびサポートリング40a,40bの具体的な構成について、後述する。
【0043】
サポートリング40a,40bは、それぞれクレードル12a,12bによって直立した状態で回転可能に支持されている。サポートリング40aを支持するクレードル12aは、本実施の形態では、一対の腕部121,121、クレードル本体122および複数の支持ローラ123(図1では4個)を備えている。一対の腕部121,121は、直立した状態のサポートリング40aの外周を挟持するよう立設して設けられる。クレードル本体122は、サポートリング40aの下方に位置し、両端で腕部121,121を支持している。の支持ローラ123は、外力によりサポートリング40a,40bが回転するように、クレードル本体122およびサポートリング40a,40bの間に介在されている。なお、サポートリング40bを支持するクレードル12bも同一の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0044】
台車13は、クレードル12a,12b、サポートリング40a,40bおよびマンドレル11を搬送するものであり、本実施の形態では、矩形平板状で、図1には示さないが、台車13の下面には、複数の車輪が設けられており、上面に成形型10を載置した状態で搬送することが可能となっている。本実施の形態では、台車13は、その上面がマンドレル11の寸法(円筒の軸方向の長さおよび円筒の直径)に対応した広がり面積を有している。なお、クレードル12a,12bは、図1に示す状態では、台車13とは接しておらず、互いに対向するサポートリング40aおよびサポートリング40bの高さを水平に調整できる状態で、床面に対して自立している。
【0045】
なお、クレードル12a,12b、台車13の具体的な構成は、本実施の形態で開示される構成に限定されず、それぞれの作用、機能等を発揮できるものであれば、さまざまな構成を採用することができる。
【0046】
成形型10は、OPB等の複合材料構造物の成形に用いられ、成形型10の要部であるマンドレル11(円筒状部材)は、成形品である複合材料構造物の中空に嵌合する状態で用いられる成形用中子として機能する。なお、以下の説明では、複合材料構造物を適宜、成形品と称する。
【0047】
具体的には、図1に示すように、図中二点鎖線で示す円筒状の成形品80は、マンドレル11の外周面を覆う状態で成形されている。したがって、成形品80から見れば、マンドレル11は、円筒構造の中空内に嵌合した状態となっている。それゆえ、成形後の成形品80からマンドレル11を取り外す(脱型する)ためには、後述するように、マンドレル11をセグメント20,30に分解することになる。なお、成形品80は、後述するように離型剤の層を介してマンドレル11の外周面に密着した状態にある。
【0048】
[セグメントの構成]
次に、マンドレル11を構成する6個のセグメント20,30について、図2(a),(b)および図3(a),(b)を参照して説明する。図2(a)は、図1に示すマンドレル11を形成する第一セグメントの構成を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示す第一セグメントを端部から見た平面図である。図3(a)は、図1に示すマンドレル11を形成する第二セグメントの構成を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示す第二セグメントを端部から見た平面図である。
【0049】
本実施の形態では、マンドレル11を構成する6個のセグメント20a〜20cおよび30a〜30cは、その形状から、図2(a),(b)に示す第一セグメント20a〜20cと、図3(a),(b)に示す第二セグメント30a〜30cとの2種類に分類される。なお、下記の説明のうち、図2(a),(b)および図3(a),(b)を参照する説明では、便宜上、同一形状の第一セグメント20a〜20cは「第一セグメント20」、第二セグメント30a〜30cは「第二セグメント30」と、一般化してまとめて説明する。
【0050】
マンドレル11を構成する第一セグメント20および第二セグメント30は、いずれも軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を有している。このうち、第一セグメント20は、図2(a)に示すように、全体が矩形平板状で、その表面21が凸状の曲面(凸面状あるいは凸曲面)となっており、この表面21を上側として水平に配置させたときに、その両側面22,22が、水平方向に面しているか、または、水平方向に対して上側に傾斜する方向に面している形状となっている。本実施の形態では、例えば、図2(b)に示すように、側面22は、その法線方向が、水平方向の上側に傾斜した方向に向かっている。
【0051】
後述するように、本実施の形態では、円筒形に組み立てられたマンドレル11を分解するときに、先に第一セグメント20a〜20cが1個ずつ取り外され、その後、第二セグメント30a〜30cが1個ずつ取り外される。したがって、第一セグメント20は、両側面22に位置している第二セグメント30,30の間から引き抜かれることになる。したがって、第一セグメント20の両側面22,22は、上記取り外しを妨げないように、その法線方向が水平方向(図2(b)の矢印Ar1方向)に向かうように(水平方向を向くように)形成されていればよい。言い換えれば、第一セグメント20を水平に配置させたときには、側面22は、垂直方向(図2(b)の一点鎖線に沿った方向)に沿った位置となっている。
【0052】
さらに、第一セグメント20の両側面22,22は、図2(b)に示すように、側面22の法線方向が上側(表面21側)に傾斜(図2(b)の矢印Ar2方向)するように形成されていることが好ましい。法線方向が上側に傾斜しているということは、側面22が上側に向くように傾斜しているということができる。言い換えれば、側面22は、当該側面22の裏側の縁が表側の縁よりも外側に広がるように傾斜しているということができる。このような側面22の傾斜は、第一セグメント20の両側面22,22に「抜き勾配」を形成することになるので、第一セグメント20を第二セグメント30,30の間から引き抜きやすくなることから、マンドレル11を分解しやすくすることができる。
【0053】
なお、側面22の傾斜角(抜き勾配角度)は特に限定されず、マンドレル11および成形型10の具体的な形状または寸法等に応じて好適な角度が適宜設定される。例えば、本実施の形態では、8〜12°の範囲、好ましくは約10°の角度であればよい。また、対向する両側面22,22の双方が同じ角度で傾斜してもよいし、異なる角度で傾斜してもよい。
【0054】
第一セグメント20の端面23には、図2(a),(b)に示すように、この端面23をサポートリング40a,40bの固定面(後述)に固定させる雄型固定部材251と、第一セグメント20を固定するときの固定部材同士の位置決めに用いられる雄型ガイド部材252とが設けられている。雄型固定部材251は、サポートリング40a,40bの固定面に設けられている雌型固定部材および固定状態保持部材(後述)とともに、環状固定保持機構を構成している。また、雄型ガイド部材252は、サポートリング40a,40bの固定面に設けられている雌型ガイド部材(後述)とともに、環状固定ガイド機構を構成している。
【0055】
雄型固定部材251は、端面23に2個設けられ、雄型固定部材251,251の間の中間位置に雄型ガイド部材252が位置している。雄型ガイド部材252の位置は、図2(b)に示すように、端面23を図中縦方向(第一セグメント20が水平配置されていれば鉛直方向)に分割する中央線(図中、二点鎖線)上の位置であるので、雄型固定部材251,251は、中央線から等距離となる位置に設けられていることになる。また、雄型ガイド部材252は、雄型固定部材251,251よりも表面21寄りに位置している。これは、第一セグメント20を、表面21を上側として持ち上げるように移動させてサポートリング40a,40bに固定させるので、環状固定ガイド機構を構成する雄型ガイド部材252と雌型ガイド部材とを先に接触させることにより、環状固定保持機構を構成する固定部材同士の位置決めを行うためである。
【0056】
第一セグメント20の両側面22,22には、図2(a)に示すように、複数の雄型結合部材261および外周側雌型ガイド部材262、並びに、図2(a)には図示されない、結合用くさび部材および内周側雄型ガイド部材が設けられている(図2(a)では5個)。雄型結合部材261は、第一セグメント20の裏側に位置し、外周側雌型ガイド部材262は、雄型結合部材261から見て表面21寄りに隣接して位置している。また、結合用くさび部材は、雄型結合部材261から見て側面22の内側に設けられており、後述するように、第二セグメント30と結合するときに、側面22の外側に突出するように構成されている。また、内周側雄型ガイド部材は、図2(a)では図示されないが、雄型結合部材261の下方に一体化して設けられている。
【0057】
雄型結合部材261および結合用くさび部材は、第二セグメント30の側面に設けられている雌型結合部材(後述)とともにセグメント結合保持機構を構成している。また、外周側雌型ガイド部材262は、第二セグメント30の側面に設けられている外周側雄型ガイド部材(後述)とともにセグメント結合ガイド機構を構成している。同様に、内周側雄型ガイド部材は、第二セグメント30の側面に設けられている内周側雌型ガイド部材(後述)とともにセグメント結合ガイド機構を構成している。なお、図2(b)では、側面22,22の位置関係を説明する便宜上、雄型結合部材261、外周側雌型ガイド部材262、内周側雄型ガイド部材、および結合用くさび部材は図示していない。
【0058】
雄型結合部材261および外周側雌型ガイド部材262の位置関係は、図中縦方向(第一セグメント20が水平配置されていれば鉛直方向)において、外周側雌型ガイド部材262が上側(表面21側)に雄型結合部材261が下側(裏面側)に並んで配置される関係となっている。これは、第一セグメント20を持ち上げるように移動させて、第二セグメント30,30の間に挿入してから互いに結合させるので、前記環状固定保持機構と同様に、セグメント結合ガイド機構によってセグメント結合保持機構の位置決めをするためである。
【0059】
一方、内周側雄型ガイド部材は後述するように雄型結合部材261の図中下方(裏面側)となる位置に設けられている。これは、セグメント20,30で形成される略円筒形のマンドレル11においては、外周面が滑らかな円周面となっている必要があることから、各セグメント20,30の側面同士を結合するときの位置決めが重要となるためである。すなわち、各セグメント20,30の側面同士を結合するとき、外周側雌型ガイド部材262および外周側雄型ガイド部材により、外周側の位置決めが行われ、内周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材により、内周側の位置決めが行われることで、マンドレル11の外周面に段差を小さくし、滑らかな円周面を形成することができる。
【0060】
なお、環状固定保持機構および環状固定ガイド機構、並びに、セグメント結合保持機構およびセグメント結合ガイド機構の具体的な構成および固定方法、結合方法またはガイド方法については、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。また、本実施の形態では、後述するように、側面22に設けられるクランプ部材がセグメント結合保持機構に含まれるが、このクランプ部材についても、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。また、図示されないが、第一セグメント20の表面21はストリンガが装着可能に構成されている。
【0061】
第二セグメント30は、図3(a)に示すように、全体が矩形平板状で、その表面31が凸状の曲面(凸面状あるいは凸曲面)となっており、この表面31を上側として水平に配置させたときに、その両側面32,32が水平方向に対して下側に傾斜する方向に面している形状を有している。つまり、第二セグメント30の裏側から表面31に向かって、その幅が広がるように、両側面32,32が傾斜している。
【0062】
後述するように、本実施の形態では、マンドレル11を分解するときには、先に第一セグメント20を取り外すため、第一セグメント20は、両側面22に位置している第二セグメント30,30の間から引き抜かれることになる。したがって、後から取り外される第二セグメント30は、第一セグメント20の引き抜きを妨げないように、その裏側の面積が小さくなっていることが好ましい。それゆえ、第二セグメント30の両側面32,32は、その法線方向が下側(図3(b)の矢印Ar3方向)に向かうように、言い換えれば、側面32が下側に向かって傾斜するように形成されていると好ましい。
【0063】
また、第二セグメント30の側面32,32には、表面31につながる縁部がそれぞれの側面32,32よりも外側に突出した庇部37,37が設けられている。したがって、図3(a),(b)に示すように、第二セグメント30を表面31から見れば、下側を向いている側面32は、庇部37によって完全に隠れた状態となる。
【0064】
また、第二セグメント30においては、庇部37の下方となる側面32に、セグメント結合保持機構を構成する雌型結合部材(後述)およびセグメント結合ガイド機構を構成する前記外周側雄型ガイド部材および前記内周側雌型ガイド部材が設けられている。なお、図3(b)では、側面32,32の位置関係を説明する便宜上、雌型結合部材、外周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材は図示していない。これらについては、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。
【0065】
なお、側面32が下側へ傾斜する程度、および、庇部37が突出する程度は、特に限定されず、マンドレル11の具体的構成、第二セグメント30そのものの具体的構成、あるいは、第二セグメント30に結合する第一セグメント20の具体的構成に応じて適宜設定される。
【0066】
第二セグメント30の端面33には、第一セグメント20の端面23と同様に、端面33をサポートリング40a,40bの固定面に固定させる2個の雄型固定部材351と1個の雄型ガイド部材352とが、雄型固定部材251および雄型ガイド部材252と同じ位置関係で設けられている。そして、雄型固定部材351も、雄型固定部材251と同様に、環状固定保持機構を構成し、雄型ガイド部材352も雄型ガイド部材252と同様に環状固定ガイド機構を構成している。
【0067】
また、図3(a)に示すように、図示されている第二セグメント30には、扉枠部15aおよび窓枠部15bが形成されている。これら扉枠部15aおよび窓枠部15bは、本実施の形態に係る成形型10を用いて形成されたOPBにおいて、扉および窓に対応する部位に相当し、トリミング処理における切り取りまたは穴開け加工時に利用される凹凸部である。本実施の形態では、扉枠部15aおよび窓枠部15bは第二セグメント30の表面31に形成されているが、もちろんこれに限定されず、第一セグメント20の表面21に形成されてもよいし、第一セグメント20および第二セグメント30のいずれに形成されてもよい。なお、図示されないが、第二セグメント30の表面31もストリンガが装着可能に構成されている。
【0068】
[サポートリングの構成]
次に、セグメント20,30を単一の円筒状のマンドレル11に保持するための保持部材であるサポートリング40a,40bの構成と、サポートリング40a,40bに固定されているセグメント20,30の位置関係について、図4(a),(b)を参照して具体的に説明する。図4(a)は、マンドレル11を両端で支持するサポートリング40a,40bの構成の一例を示す平面図であり、図4(b)は、サポートリング40a,40bで円筒状に保持されるセグメント20,30の位置関係を示す、マンドレル11の模式的な端面図である。
【0069】
なお、下記の説明のうち、図4(a)を参照する説明では、便宜上、実質的に同一の構成を有するサポートリング40a,40bは「サポートリング40」と、一般化してまとめて説明する。サポートリング40を支持するクレードル12a,12bについても同様に「クレードル12」と、まとめて説明する。
【0070】
図1に示すように、上記構成のマンドレル11を支持するサポートリング40a,40bは、いずれも楕円形の環状で互いに対向する位置関係で、直立した状態でクレードル12a,12bにより支持されている。図4(a)に示すように、サポートリング40における互いの対向面は、マンドレル11の端面を固定する固定面43となっている。なお、図4(a)では、クレードル12については、その外形を点線で示している。
【0071】
この固定面43には、図4(a)に示すように、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cが固定される位置(固定箇所)に、2個の雌型固定部材41とその間に配置される1個の雌型ガイド部材42がそれぞれ設けられている。本実施の形態では、セグメント20,30は合計6個であるので、固定箇所も合計6箇所となっており、第一セグメント20の固定箇所と第二セグメント30の固定箇所とは、サポートリング40の周方向に交互に設置されている。
【0072】
雌型固定部材41は、マンドレル11を構成する第一セグメント20a〜20cが備えている雄型固定部材251、または、第二セグメント30a〜30cが備えている雄型固定部材351が挿入されることで、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cをサポートリング40の固定面43に固定するための部材であり、これら雄型固定部材251,351とともに環状固定保持機構を構成している。さらに、図4(a)には図示されないが、上記固定状態を保持する固定状態保持部材としての固定用くさび部材も固定面43に設けられている。
【0073】
また、雌型ガイド部材42は、第一セグメント20a〜20cが備えている雄型ガイド部材252および第二セグメント30a〜30cが備えている雄型ガイド部材352が挿入されるよう構成され、雄型固定部材251,351が雌型固定部材41に挿入される状態をガイドするものであり、雄型ガイド部材252,352とともに環状固定ガイド機構を構成している。雌型ガイド部材42は、例えば、図4(a)に示すように、サポートリング40の中心側から外側に向かって放射状に設けられる一対のレール状部材として構成されている。そして、サポートリング40の内側となる端部は各レールの間が開いており、外側となる端部は、各レールの間が封止されている。このレールの間の陥凹部に雄型ガイド部材252,352が挿入されることで環状固定ガイド機構として機能する。
【0074】
固定面43において雌型固定部材41が設けられている位置は、第一セグメント20a〜20cの端面23および第二セグメント30a〜30cの端面33に設けられている上記雄型固定部材251,351の位置に対応している。例えば、第一セグメント20a〜20cの雄型固定部材251は、端面23の中心線上に位置する雄型ガイド部材252から見て等距離となる位置に設けられているので、固定面43上では、雌型ガイド部材42を中心線として、等間隔となる位置に、同方向に雌型固定部材41が1個ずつ、合計2個設けられている。
【0075】
また、サポートリング40には、固定面43とは反対側となる面(外面44)の外周には、図4(a)には図示されない鍔状の回転ギヤ部が設けられている。この回転ギヤ部に関しては、プレシジョンレールとともに説明する。
【0076】
上記構成のサポートリング40にセグメント20,30が固定されることで形成され保持されるマンドレル11は、図4(b)に示すように、第一セグメント20および第二セグメント30が交互に配置する構成となっている。
【0077】
ここで、本実施の形態では、固定されているセグメント20,30を分解して取り外す順序と、マンドレル11として保持されている状態での位置との関係性が重要となる。それゆえ、以下の説明では、マンドレル11を構成している各セグメント20,30を、当該マンドレル11の一部(部位)と見なして序数で特定する。すなわち、図4(b)に示すように、図中最上部に位置する第一セグメント20aを基準として、図中時計回り(右回り)の順に序数を付し、この序数を「部位番号」として、各セグメント20,30がマンドレル11を形成したときに、相当する位置を特定する。
【0078】
すなわち、図4(b)に示すように、図中最上部の第一セグメント20aが「部位#1セグメント」であり、第二セグメント30aが「部位#2のセグメント」であり、第一セグメント20bが「部位#3セグメント」であり、第二セグメント30bが「部位#4のセグメント」であり、第一セグメント20cが「部位#5セグメント」であり、第二セグメント30cが「部位#6のセグメント」である。
【0079】
[プレシジョンレールの構成]
次に、本実施の形態において用いられるプレシジョンレールの具体的構成について、図5および図6(a),(b)を参照して説明する。プレシジョンレールは、セグメント20,30を円筒形のマンドレル11に組み立てるとともに、当該マンドレル11を各セグメント20,30に分解する組立分解装置である、図5は、プレシジョンレールの全体構成の一例を示す斜視図である。図6(a)は、図5に示すプレシジョンレールにセグメントを載置した状態を模式的に示す概略平面図であり、図6(b)は、図5に示すプレシジョンレールに含まれるリング回転駆動部の概略構成を示すブロック図である。
【0080】
図5に示すように、本実施の形態で用いられるプレシジョンレール17は、レール本体173、レール移動支持台175、一対のレール支持作業台176a,176bを備えている。レール本体173は、レール移動支持台175により長手方向に沿って移動可能な状態で支持される1本のレール部材であり、その上面にジャッキ部171a,171bおよび171cと、コンベヤ部174a,174bおよび174cとが設けられている。
【0081】
レール移動支持台175は、レール支持作業台176aとともに、レール本体173を、移動可能に支持している。本実施の形態では、明確に図示されないが、台座部の上に、レール本体173を移動可能に支持するクリップまたははさみ状の移動支持機構が設けられている。この移動支持機構は、レール本体173が移動するときには左右に開放され、レール本体173が停止している状態では、当該レール本体173を挟んだ状態で閉じる構成となっている。
【0082】
レール支持作業台176a,176bは、その間に、台車13を配置させた状態で互いに対向しており、その上側にはそれぞれ上作業台177が設けられているとともに、説明の便宜上、図示されないが、床面から上作業台177へ至る、つづら折り状の階段部が設けられている。また、レール支持作業台176aの下側には、明確に図示されないが、レール移動支持台175と同様に移動支持機構が設けられているとともに、サポートリング40aを回転させるリング回転駆動部が設けられている。また、レール支持作業台176bの下側には、明確に図示されないが、レール本体173が、当該レール支持作業台176bの位置を超えて移動しない状態で、当該レール本体173を支持する、停止支持機構が設けられているとともに、サポートリング40bを回転させるリング回転駆動部が設けられている。
【0083】
ここで、サポートリング40a,40bは、クレードル12a,12bによりそれぞれ支持されているとともに、レール支持作業台176a,176bによっても支持されている。具体的には、クレードル12a,12bは、サポートリング40a,40bの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で、腕部121,121により、サポートリング40a,40bを下方から支持しつつ、支持ローラ123を介してリング回転駆動部から回転力が付与される(図1参照)。また、サポートリング40a,40bの上部では、レール支持作業台176a,176bにより、当該サポートリング40a,40bの軸芯方向の移動が制約されている(図5参照)。このように、上部と下部との双方でサポートリング40a,40bが支持されていることで、サポートリング40a,40bの転倒を防止しつつこれを回転させることができる。
【0084】
レール支持作業台176a,176bの間に配置される台車13には、クレードル12a,12bを介してサポートリング40a,40bが載置されている。サポートリング40aは、台車13だけでなくレール支持作業台176aにも支持されており、この状態では、上作業台177がサポートリング40aの上側に向かうように位置している。同様に、サポートリング40bは、台車13およびレール支持作業台176bに支持されており、この状態で、上作業台177がサポートリング40bの上側に向かうように位置している。
【0085】
図1にも示すように、マンドレル11を構成する第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cは、サポートリング40a,40bの間に固定されている。それゆえ、レール本体173は、このマンドレル11の内部(またはサポートリング40a,40bの中空)に挿入されたり、当該内部(または中空)から引き出されたりするように、長手方向に移動可能となっている。したがって、図5に示すように、内部から引き出された状態では、レール本体173は、その先端がサポートリング40aの中空に向かう状態で、サポートリング40a,40bとともに一直線状に並ぶような位置関係で、支持されている。
【0086】
なお、以下の説明においては、レール本体173の移動に関しては次のように定義する。まず、サポートリング40a,40bの中空内またはマンドレル11の内部にレール本体173が挿入されるように移動するときには、「前進」と表現し、挿入されたレール本体173が引き抜かれるように移動するときには、「後退」と表現する。
【0087】
レール本体173の上面に設けられる3つのジャッキ部171a〜171cと、3つのコンベヤ部174a〜174cは、図5に示すように、レール本体173の後端側から、コンベヤ部174a、ジャッキ部171a、コンベヤ部174b、ジャッキ部171b、コンベヤ部174c、およびジャッキ部171cの順で、交互に位置している。これらジャッキ部171a〜171cおよびコンベヤ部174a〜174cの具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0088】
ジャッキ部171a〜171cは、本実施の形態では、いずれも、ほぼ同寸法、同構成であり、上側に載置した物体を上方に移動可能に構成されている。コンベヤ部174a〜174cのうち、最も後端側にあるコンベヤ部174aは、他のコンベヤ部174bおよび174cよりも、その搬送方向の長さが大きくなっている。
【0089】
後述するように第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cを上面に載置して先端側へ移動する構成となっている。それゆえ、コンベヤ部174aの半双方向の長さは、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cの長手方向の寸法よりも大きくなっている。一方、コンベヤ部174bは、ジャッキ部171aおよび171bに挟まれるように位置し、コンベヤ部174cは、ジャッキ部171bおよび171cに挟まれるように位置している。これらコンベヤ部174b,174cは、ジャッキ部171a〜171cのいずれか2つの上に移動した第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cの位置を微調整するものである。
【0090】
3つのジャッキ部171a〜171cのうち、ジャッキ部171aおよび171bは、主として、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cをサポートリング40a,40bの上方に移動させるために用いられる。なお、これらジャッキ部171aおよび171bに関する次の説明では、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cを、単に、第一セグメント20または第二セグメント30と略す。
【0091】
具体的には、レール本体173の上に載置された第一セグメント20または第二セグメント30は、後端側のコンベヤ部174aにより先端側に水平移動し、図6(a)に示すように、ジャッキ部171a、コンベヤ部174b、およびジャッキ部171bの上面を覆う位置まで達する。ここで、ジャッキ部171a〜171cは、いずれも、セグメント20,30を支持するために一対の支持ロッド部を備えている。図6(a)に示す例では、ジャッキ部171aは、支持ロッド部171a−1および171a−2を備え、ジャッキ部171bは、支持ロッド部171b−1および171b−2を備えている。これら支持ロッド部は、レール本体173の長手方向に平行で、かつ、レール本体173の断面方向における中央部を挟むように互いに対向する位置で、レール本体173の上面に設けられている。
【0092】
この状態では、略矩形状をなす第一セグメント20または第二セグメント30の下面において、その四隅近傍の各位置に、支持ロッド部171a−1および171a−2と、支持ロッド部171b−1および171b−2が配置され、これらの間にコンベヤ部174bが配置されている。それゆえ、ジャッキ部171aおよび171bによって、四隅それぞれの位置を変位させながら上方へ持ち上げることができる。これにより、後述するように、サポートリング40a,40bに固定されている第一セグメント20または第二セグメント30を容易に取り外すことができる。
【0093】
ここで、サポートリング40a,40bは、第一セグメント20または第二セグメント30が固定された状態で回転可能となっているが、このサポートリング40a,40bを回転させる構成として、前述したように、レール支持作業台176a,176bの下方にリング回転駆動部が設けられている。なお、リング回転駆動部に関する次の説明では、サポートリング40a、40bを、単に、サポートリング40と略す。
【0094】
図6(b)に示すように、リング回転駆動部16は、サポートリング40の外周に設けられる回転ギヤ部45に噛み合っている駆動ギヤ161と、モータおよびギヤ等から構成され、駆動ギヤ161を回転させる駆動源162と、サポートリング40の最上部の位置に、取り外し対象となるセグメント20,30が位置しているか否かを検出する位置検出部163と、これらを制御する回転制御部164を備えている。位置検出部163としては公知の位置センサが用いられる。回転制御部164としてはCPU等の演算装置が用いられる。
【0095】
ここで、位置検出部163による位置検出の具体的構成は特に限定されず、本実施の形態では、サポートリング40に設けられた図示されない被検出部を検出する構成となっている。図6(b)に示す構成では、位置検出部163がサポートリング40の最上部に、取り外し対象となるセグメント20,30が位置していることを検出しているので、当該セグメント20,30に被検出部が設けられている構成となっているが、これに限定されず、サポートリング40の回転により所定の検出位置に到達したことが位置検出部163で検出できればよい。例えば、サポートリング40の最上部に、取り外し対象となるセグメント20,30が位置したときに、当該サポートリング40の下方に被検出部が位置する構成としてもよい。これにより、リング回転駆動部16の構成をコンパクト化することができる。被検出部は光学的な構成であってもよいし、機械的または物理的な構成であってもよい。
【0096】
このリング回転駆動部16によってサポートリング40が回転することで、セグメント20,30は、それぞれ異なる動きで分解されるのではなく、上から下へ引き下ろすという同一の動きで分解されることになる。
【0097】
[アウターリングの構成]
次に、上述したプレシジョンレール17を用いて6個のセグメント20,30から構成されるマンドレル11を分解していく過程で、マンドレル11の外周に保持されている成形品80を外側から支えるアウターリングの構成について、図7(a),(b)を参照して説明する。図7(a)は、本実施の形態において用いられるアウターリング50が成形品80の外側に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)に示すアウターリング50を成形品80に取り付ける状態を模式的に示す平面図である。
【0098】
図7(a)に示すように、アウターリング50は、マンドレル11の外周面に位置する成形品80の中央部を外側から支持する形で設けられている。このアウターリング50は、図7(b)に示すように、鉛直方向の下側の位置(6時方向の位置)および鉛直方向の上側の位置(12時方向の位置)の2箇所において、リング断片50a,50bに分離可能となっている。そして、各リング断片50a,50bを、図7(b)において格子線のハッチングで示す成形品80の外周から挟み込む形で、当該成形品80の外側に取り付け、6時方向および12時方向の位置で図示されない固定部材で固定されることで、単一の環状の支持部材であるアウターリング50として構成される。
【0099】
ここで、成形品80は、アウターリング50の内周側には、図示されないアクチュエータおよび緩衝部材が設けられている。この緩衝部材としては特に限定されないが、例えば、スチール製の板状部材でスポンジ状のクッション材が端部に取り付けられた構成を挙げることができ、アクチュエータとしてはエアシリンダを挙げることができる。そして、リング断片50a,50bが、成形品80に対して挟み込むように取り付けられるときには、位置センサによって位置確認を行いながら、緩衝部材をアクチュエータによって成形品80に向かって進出させ、緩衝部材で成形品80の外周面に当接させる。
【0100】
これにより、アウターリング50によって、成形品80の外周面を緩やかにかつ確実に支持することができる。それゆえ、繊維強化樹脂複合材料より構成された成形品80に変形を生じさせることなく、当該性景品80をアウターリング50によって外側から確実に保持することができる。
【0101】
また、成形品80へのアウターリング50を取り付けた後には、後述するように、成形品80の内部に装着された状態にあるマンドレル11を、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cにそれぞれ分解して脱型していくことになる。このとき、マンドレル11を支持するサポートリング40a,40bを回転させることで、マンドレル11も回転するが、アウターリング50もサポートリング40a,40bの回転に同期して、図7(a)に示すアウターリング回転部51によって回転するよう構成されている。これにより、マンドレル11の脱型時にも成形品80を適切に外側で保持することができる。
【0102】
さらに、マンドレル11の脱型が完全に終了した状態では、サポートリング40a,40bを取り外し、代わりに、成形品80の両端を支持する一対のエンドリングを取り付けることになるが、このときにもアウターリング50による成形品80の保持は継続される。これにより、成形品80の内部にマンドレル11が位置しない状態でも、成形品80の両端はエンドリングにより支持され、成形品80の中央部は外側からアウターリング50により保持されるので、円筒状の成形品80の形状を保持しつつ、次の製造工程に移行することができる。
【0103】
[マンドレルの分解方法・全体構成]
次に、上記プレシジョンレール17を用いて、6個のセグメント20,30から構成されるマンドレル11を1個ずつ分解する方法について具体的に説明する。まず、マンドレル11の分解方法の全体について、図8を参照して説明する。図8は、本実施の形態におけるマンドレル11の分解方法の全体構成を説明する工程図である。
【0104】
本実施の形態では詳述しないが、成形型10に含まれるマンドレル11の外周に成形品80が成形され、所定のトリミング等の工程が施されれば、当該成形品80から、成形用中子であるマンドレル11を脱型しなければならない。そこで、図8に示すように、本実施の形態では、まず、プレシジョンレール17のレール支持作業台176a,176bの間に、成形品80が成形され、所定の工程も完了した成形型10を設置する(工程P01)。このとき、サポートリング40a,40bは、その最上部に、最初に取り外す第一セグメント20aが位置していなければ、第一セグメント20aを最上部に移動させるためにサポートリング40a,40bを回転させてもよい。
【0105】
次に、レール本体173を成形型10の中空内に挿入する(工程P02)。これにより、サポートリング40a,40bおよびマンドレル11の内部にレール本体173が位置することになるので、マンドレル11を分解できる状態となる。なお、この状態では、前述したアウターリング50が成形品80の中央部外周に取り付け済みである。
【0106】
次に、第一セグメント20a〜20cをそれぞれ取り外していくが、この取り外しの順序は、第一セグメント20a、20bおよび20cの順となっている(工程P03−1〜P05−3)。次に、第二セグメント30a〜30cをそれぞれ取り外していくが、この取り外しの順序は、第二セグメント30c、30aおよび30bの順となっている(工程P06−1〜P08)。
【0107】
全てのセグメントがサポートリング40a,40bから取り外されれば、マンドレル11の分解が完了する。その後、レール本体173をサポートリング40a,40b内から引き抜く(工程P09)ことで、一連の分解工程が完了する。
【0108】
なお、上記各工程のうち、工程P03−2,P04−2,P05−2,P06−1,P07−1およびP08をセグメント取外し工程と称し、工程P03−3,P04−3,P05−3,P06−2およびP07−2と回転工程と称する。また、工程P03−1,P04−1およびP05−1をセグメント結合解除工程と称し、工程P01を成形型設置工程と称し、工程P02をレール挿入工程と称し、工程P09をレール引抜工程と称する。ここで、セグメント取外し工程は、第一セグメント取外し工程である工程P03−2,P04−2およびP05−2と、第二セグメント取外し工程である工程P06−1,P07−1およびP08とに分けることができる。
【0109】
このように、本実施の形態に係る分解方法は、第二セグメント30a〜30cの間から第一セグメント20a〜20cを1個ずつ取り外してから、第二セグメント30a〜30cを1個ずつ取り外す。そこで、次に、第一セグメント20a〜20cの取外し方法および取外し作業について、図9〜図17を参照して説明する。なお、以下の説明では、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cのいずれの取外しにおいても、説明の便宜上、各図面上ではアウターリング50の図示は省略するものとする。
【0110】
[マンドレルの分解方法・第一セグメントの取外し]
まず、第二セグメント30a〜30cの間から、第一セグメント20a〜20cを取り外す作業に入る。この第一セグメント20a〜20cの取外し方法および取外し作業の順序について、図9〜図17を参照して、セグメント結合保持機構およびセグメント結合ガイド機構の具体的構成とともに説明する。なお、以下の説明においては、図4(b)に示されるセグメント20,30の部位番号を利用して、各第一セグメント20の取外しに関する説明を行う。
【0111】
図9は、部位#1の第一セグメント20aを、隣接する部位#6の第二セグメント30cおよび部位#2の第二セグメント30a並びにサポートリング40a,40bから取り外すために、ジャッキ部171a(およびジャッキ部171b)を上昇させて第一セグメント20aの裏側に配置させた状態を示す模式図である。図10(a),(b)は、第一セグメント20aを取り外すときのプレシジョンレール17の動作を示す当該プレシジョンレール17の側面図であり、図11(a)〜(c)は、図10(b)に続くプレシジョンレール17の動作を示す当該プレシジョンレール17の側面図である。
【0112】
また、図12(a),(b)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレール17の動作において、ジャッキ部171aの支持ロッド部171a−1およびジャッキ部171bの支持ロッド部171b−1が第一セグメント20aを支持する状態を示す模式的断面図であり、図12(c)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレール17の動作において、ジャッキ部171aの支持ロッド部171a−1,171a−2が第一セグメント20aを支持する状態を示す模式的正面図である。
【0113】
また、図13は、部位#1の第一セグメント20aを取り外してジャッキ部171a(およびジャッキ部171b)を下降させた状態を示す模式図である。図14〜図17は、部位#3の第一セグメント20bまたは部位5の第一セグメント20cを、隣接する第二セグメント30a〜30cおよびサポートリング40a,40bから順次取り外すときのジャッキ部171aの上昇または下降の状態を示す模式図である。
【0114】
なお、図9を含めて各セグメント20,30を取り外す状態を示す模式図では、各セグメント20,30がサポートリング40a上で固定される位置を明確に示す便宜上、クレードル12aおよび台車13は、一部構成を省略して示している。また、各セグメント20,30は、その両端がサポートリング40a,40bに固定されるが、説明の便宜上、同じく前記模式図では、一方のサポートリング40a(およびこれを支持するクレードル12a)のみを代表例として図示している。したがって、他方のサポートリング40bにおいても、サポートリング40aと同様にクレードル12bで支持され、各セグメント20,30がそれぞれ固定されていることは言うまでもない。
【0115】
図9に示すように、台車13に取り付けられたクレードル12aにより、サポートリング40aおよび図示されないサポートリング40bは立設して支持された状態にあり、これらサポートリング40a,40bの間にマンドレル11が保持されている(図8に示す工程P01、成形型設置工程)。そして、マンドレル11およびサポートリング40a,40bの中空内であって、かつ、互いに対向するサポートリング40a,40bの間の位置に、プレシジョンレール17が配置される。
【0116】
図9に示される位置に移動するまでのプレシジョンレール17の動作について説明すると、図10(a)に示すように、プレシジョンレール17のレール本体173は、成形型10の中空に挿入されておらず、完全にサポートリング40a,40bから引き出された状態で、レール移動支持台175およびレール支持作業台176aにより支持されている。なお、図10(a)〜図11(c)においては、成形型10は、図中破線で示されるマンドレル11およびサポートリング40a,40b、並びに、図中二点鎖線で示される成形品80から構成されている。
【0117】
このときのレール本体173の位置は、完全に後退した位置である。レール本体173は、この位置から、図中矢印Isで示すように、成形型10に向かって前進する(図8に示す工程P02、レール挿入工程)。
【0118】
次に、図10(b)に示すように、レール本体173は、成形型10の中空に挿入され、これらを貫通するまで前進してから停止し、レール移動支持台175、レール支持作業台176aおよび176bにより支持される。この状態では、サポートリング40a,40bの最上部に位置する第一セグメント20aの下方に、ジャッキ部171a、コンベヤ部174bおよびジャッキ部171bが位置している。そして、ジャッキ部171aおよびジャッキ部171bは、図中矢印Lfで示すように上昇する。
【0119】
次に、図11(a)に示すように、ジャッキ部171a,171bは、第一セグメント20aの裏側に当接した状態で停止する。この図11(a)に示す状態が、図9に示す状態に対応する。
【0120】
次に、第一セグメント20aを取り外す具体的な作業について説明する。第一セグメント20aの両側面22には、図2(a)に示すように、セグメント結合保持機構としての雄型結合部材261および図示されない結合用くさび部材と、セグメント結合ガイド機構としての外周側雌型ガイド部材262および図示されない内周側雄型ガイド部材が設けられている。一方、第二セグメント30a〜30cの両側面32には、セグメント結合保持機構としての雌型結合部材と、これらセグメント結合保持機構の位置を案内するセグメント結合ガイド機構としての外周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材が設けられている。加えて、本実施の形態では、セグメント結合保持機構としてクランプ部材も備えている。
【0121】
それゆえ、まず、セグメント結合保持機構による第一セグメント20aおよび第二セグメント30c,30aの結合状態を解除する(図8に示す工程P03−1、セグメント結合解除工程)。具体的には、本実施の形態では、セグメント結合保持機構は、雄型結合部材261および雌型結合部材のみではなく、セグメント結合保持機構としてクランプ部材も備えている。そこで、図9に示すように、例えば、内部作業台172に作業者を配備し、作業者の人手によってクランプ部材を取り外し、その後、結合用くさび部材による雄型結合部材261および雌型結合部材の嵌合状態を解除する。全てのセグメント結合保持機構について同様の作業を行うことで、セグメント結合解除工程が完了する。なお、このセグメント結合保持機構による結合状態の解除動作を「セグメント結合解除動作」と称する。
【0122】
この状態では、第一セグメント20aは、両端面23でサポートリング40a,40bにより固定されている状態となる。ここで、第一セグメント20aの端面23(図2(a),(b)も参照)には、雄型固定部材251および雄型ガイド部材252が設けられ、サポートリング40aの固定面43(図4(a)も参照)には、雌型固定部材41および雌型ガイド部材42、並びに図示されない固定用くさび部材が設けられている。雄型ガイド部材352および雌型ガイド部材42は、環状固定ガイド機構を構成し、雄型固定部材351、雌型固定部材41および固定用くさび部材は、環状固定保持機構を構成している。
【0123】
それゆえ、次に、環状固定保持機構による第一セグメント20aおよびサポートリング40a,40bの固定状態を解除する。具体的には、固定用くさび部材による雄型固定部材251および雌型固定部材41の嵌合状態を解除する。なお、この環状固定保持機構による固定状態の解除動作を「セグメント固定解除動作」と称する。
【0124】
ここで、第一セグメント20aを下降移動させるということは、当該第一セグメント20aの表面21上に成形されている成形品80から脱型させることになる。このとき、図12(a)に示すように、成形品80の内面と表面21との間には、通常、離型剤110の層が形成されている。それゆえ、セグメント固定解除動作およびセグメント結合解除動作を行った上で第一セグメント20aを単純に下降させるだけでは、離型剤110の表面張力により、成形品80の内面と第一セグメント20aの表面21とが密着し、これら円滑に分離できないことがある。
【0125】
しかしながら、前述したとおり、第一セグメント20aの四隅近傍は、支持ロッド部171a−1,171a−2,171b−1,171b−2により、それぞれ独立して下降させることができるので、例えば、図12(b)に示すように、支持ロッド部171a−1に対して、支持ロッド部171b−1をより下降させて、これら支持ロッド部171a−1,171b−1の間に、高さdpが生ずるように、第一セグメント20aを微妙に傾斜させながら下降移動させる。これによって、離型剤110の層に端面23側から少しずつ空気を導入することができるので、成形品80の内面から第一セグメント20aの表面21を円滑に引き剥がすことができる。
【0126】
加えて、セグメント結合解除動作およびセグメント固定解除動作を完了しても、第一セグメント20aをジャッキ部171a,171bで支持していれば、セグメント結合ガイド機構および環状固定ガイド機構を構成する雄型および雌型の各ガイド部材は嵌合したままとなっている。それゆえ、ジャッキ部171a,171bを下降させるときには、セグメント結合ガイド機構および環状固定ガイド機構によって、第一セグメント20aの下降移動が、隣接する第二セグメント30c,30aおよびサポートリング40a,40bに衝突しない方向に案内されることになる。
【0127】
例えば、図12(c)に示すように、ジャッキ部171aの支持ロッド部171a−2よりも支持ロッド部171a−1をより下方に移動させ、第一セグメント20aを幅方向に傾斜させたとする。このとき、環状固定ガイド機構を構成する雄型ガイド部材252により第一セグメント20aの端部の下降移動が、図中矢印Gd方向に案内されるので、図12(c)には図示されないサポートリング40a,40bに衝突するような事態が回避される。また、セグメント結合ガイド機構を構成する外周側雌型ガイド部材262により第一セグメント20aの両側部の下降移動が、図中矢印Gd方向に案内されるので、隣接する第二セグメント30c,30aに衝突するような事態が回避される。このような下降移動の案内は、図12(b)に示すような、第一セグメント20aを長手方向に微妙に傾斜させた状態でも同様である。
【0128】
このように、セグメント結合解除動作およびセグメント固定解除動作を行った上で、ジャッキ部171a,171bを下降動作させると、上記各ガイド機構による下降移動が適切な方向に案内され、第一セグメント20aが周囲の構造物(サポートリング40a,40bおよび隣接する第二セグメント30c,30a)に影響を与えることなしに、図11(b)および図13に示すように、サポートリング40a,40bから取り外される(図8に示す工程P03−2、第一セグメント取外し工程)。なお、ジャッキ部171aおよび171bにより、第一セグメント20aを下降移動させるときに四隅近傍の位置を調整する動作を「四隅位置調整動作」と称する。
【0129】
ジャッキ部171a,171bを完全に下降させた状態では、図11(b)に示すように、第一セグメント20aは、これらジャッキ部171a,171bの間に位置するコンベヤ部174bにも載置した状態となる。そこで、コンベヤ部174bと、レール本体173の後端側のコンベヤ部174aとを動作させ、図中矢印Bkで示すように、第一セグメント20aを後端側へ移動させる。これによって、図11(c)に示すように、第一セグメント20aは、成形型10の中空内から外に搬出されるので、成形品80に何ら影響を与えることなく、第一セグメント20aを取り外すことができる。
【0130】
次に、図13の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P03−3、回転工程)。これにより、図13で向かって右下側の位置にあった部位#3の第一セグメント20bは最上部に移動する。
【0131】
部位#3の第一セグメント20bが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図14に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第一セグメント20bの裏側に当接するまで上昇する。この状態で、セグメント結合解除動作を行うことで、第一セグメント20bと第二セグメント30a,30bとの結合状態を解除する(図8に示す工程P04−1、セグメント結合解除工程)。
【0132】
次に、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、成形品80および周囲の構造物に影響を与えることなく、図15に示すように、第一セグメント20bが円滑に取り外される(図8に示す工程P04−2、第一セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第一セグメント20bは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0133】
次に、図15の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P04−3、回転工程)。これにより、図15で向かって右下側の位置にあった部位#5の第一セグメント20cは最上部に移動する。
【0134】
部位#5の第一セグメント20cが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図16に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第一セグメント20cの裏側に当接するまで上昇する。この状態で、セグメント結合解除動作を行うことで、第一セグメント20cと第二セグメント30a,30bとの結合状態を解除する(図8に示す工程P05−1、セグメント結合解除工程)。
【0135】
次に、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、成形品80および周囲の構造物に影響を与えることなく、図17に示すように、第一セグメント20cが円滑に取り外される(図8に示す工程P05−2、第一セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第一セグメント20cは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0136】
[マンドレルの分解方法・第二セグメントの取外し]
次に、第二セグメント30a〜30cをサポートリング40a,40bから取り外す作業へ移る。この第一セグメント20a〜20cの固定方法および固定作業の順序について、図17に加えて図18〜図23を参照して説明する。なお、以下の説明においても、図4(b)に示されるセグメント20,30の部位番号を利用して、各第二セグメント30の固定に関する説明を行う。
【0137】
図18〜図23は、部位#6の第二セグメント30c、部位#2の第二セグメント30b、または部位#4の第二セグメント30bをサポートリング40a,40bから順次取り外すときのジャッキ部171aの上昇または下降の状態を示す模式図である。
【0138】
第一セグメント20a〜20cが全て取り外されれば、図17の矢印Rt2に示すように、リング回転駆動部16により、サポートリング40a,40bは約60°回転する(図8に示す工程P05−3、回転工程)。これは、第一セグメント20a〜20cを先に取り外すときには、各セグメント20a〜20cは1個置きの固定箇所に固定されているため、サポートリング40a,40bは、セグメント2個分の固定位置に相当する約120°の回転角度で回転させる必要があったが、この工程では、異なる種類の第二セグメント30cを取り外すため、回転角度は、セグメント1個分の約60°となる。
【0139】
この回転によって、図18に示すように、図17の向かって右下側の位置にあった部位#6の第二セグメント30cは、最上部の位置に移動する。
【0140】
部位#6の第二セグメント30cが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図18に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第二セグメント30cの裏側に当接するまで上昇する。ここで、第一セグメント20a〜20cはすでに取り外されているので、セグメント結合解除動作を行う必要がなく、それゆえ、すぐにセグメント固定解除動作を行う。そして、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、成形品80および周囲の構造物に影響を与えることなく、図19に示すように、第二セグメント30cが円滑に取り外される(図8に示す工程P06−1、第二セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第二セグメント30cは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0141】
次に、図19の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P06−2、回転工程)。これにより、図19で向かって右下側の位置にあった部位#2の第二セグメント30aは最上部に移動する。
【0142】
部位#2の第二セグメント30aが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図20に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第二セグメント30aの裏側に当接するまで上昇する。その後、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、図21に示すように、第二セグメント30aが円滑に取り外される(図8に示す工程P07−1、第二セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第二セグメント30aは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0143】
次に、図21の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P07−2、回転工程)。これにより、図21で向かって右下側の位置にあった部位#4の第二セグメント30bは最上部に移動する。
【0144】
部位#4の第二セグメント30bが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図22に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第二セグメント30bの裏側に当接するまで上昇する。その後、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、図23に示すように、第二セグメント30bが円滑に取り外される(図8に示す工程P08、第二セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第二セグメント30bは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0145】
これによって、全てのセグメント20,30がサポートリング40a,40bから取り外され、マンドレル11の分解が完了する。その後、前述したとおり、レール本体173をサポートリング40a,40bから引き抜く(図8に示す工程P09、レール引抜工程)。
【0146】
このように本実施の形態に係るマンドレルの分解方法では、当該マンドレルの外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態にあり、このマンドレルにおいて、取外し対象である1個の前記セグメントを最上部に位置させるように、一対のサポートリングを回転させる回転工程と、最上部に位置した取外し対象のセグメントを、一対のサポートリングの間で、例えば傾斜させながら鉛直方向に沿って下降させて、マンドレルの内側に位置させてから、サポートリングの間より搬出する方法となっている。
【0147】
それゆえ、取外し対象のセグメントを最上部から鉛直下方へ向かって移動させると、取り外されたセグメントは、マンドレルの内側に移動するので、マンドレルの外周面に形成された複合材料構造物にほとんど影響を与えることなく、セグメントを取り外すことができる。しかも、マンドレルの内側に移動した当該セグメントは、一対のサポートリングの間に位置しているが、当該サポートリングの中空を通過するように水平方向に移動させれば、当該セグメントをサポートリングの間から容易に搬出することができる。
【0148】
また、取外し対象のセグメントは、サポートリングを回転させることで、常に最上部という一箇所に決められており、移動方向も鉛直方向のみで一定となっているため、複数のセグメントの全てを同様の工程で簡単に取り外すことができる。加えて、例えば、取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って単純に下降させずに、傾斜させながら下降させれば、密着した複合材料構造物とセグメントとを、複合材料構造物に変形等を生じさせずに効率的に分離させることができる。
【0149】
[変形例]
本発明に係るマンドレルの分解方法は、前述したような、第一セグメント20および第二セグメント30がそれぞれ3個ずつ組み合わせられた構成のマンドレル11のみに限定されるものではなく、他の構成のマンドレル11にも好適に用いることができる。つまり、組立対象のマンドレル11が、略矩形状を成す複数のセグメントから成り、各セグメントを鉛直方向に下降移動させてサポートリングから取り外す構成となっていれば、セグメント取外し工程および回転工程を実行できるので、本発明に係る分解方法を好適に用いることができる。
【0150】
また、図5に示されるプレシジョンレール17は、レール本体173の上に3台のコンベヤ部174a〜174cと3台のジャッキ部171a〜171cを備えているが、この構成に限定されるものではなく、レール本体173がサポートリング40a,40bの中空に挿入された状態で、各サポートリング40a,40bの間で、取外し対象のセグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、各位置を独立して鉛直方向に沿って変位させることが可能なセグメント支持部材を有している構成であればよい。したがって、図6(a)に示すようなロッド状のセグメント支持部材(支持ロッド部171a−1,171a−2,171b−1,171b−2)以外の構成のセグメント支持部材が用いられてもよいし、セグメントの四隅近傍の位置をそれぞれ支持するようにジャッキ部が4台設けられてもよいし、1台のジャッキ部が四隅近傍の各位置を全て支持可能な構成を有するものであってもよい。
【0151】
さらに、本発明で用いられるマンドレルの組立分解装置は、図5に示されるプレシジョンレール17に限定されるものではなく、他の構成の組立分解装置を用いることもできる。もちろん、図5に示されるプレシジョンレール17が特に好ましい組立分解装置であることは言うまでもない。
【0152】
なお、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、例えば、航空機の胴体部等、大型で略円筒形状の複合材料構造物を成形する分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0154】
10 成形型
11 マンドレル
16 リング回転駆動部
17 プレシジョンレール(組立分解装置)
20,20a〜20c 第一セグメント
21 第一セグメントの表面
30,30a〜30c 第二セグメント
31 第二セグメントの表面
40,40a,40b サポートリング
42 雌型ガイド部材(環状固定ガイド機構)
163 位置検出部
171a〜171c ジャッキ部
171a−1,171a−2 支持ロッド部(セグメント支持部材)
171b−1,171b−2 支持ロッド部(セグメント支持部材)
252,352 雄型ガイド部材(環状固定ガイド機構)
262 外周側雌型ガイド部材(セグメント結合ガイド機構)
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂複合材料を用いた複合材料構造物の製造に用いられ、複数のセグメントを筒状に保持して成るマンドレルを分解する分解方法およびこれに用いられるマンドレルの分解装置に関し、特に、航空機の胴体部等として用いられる巨大な複合材料構造物の製造に好適に用いられるマンドレルの分解方法およびマンドレルの分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまで金属材料が用いられてきた分野において、繊維強化樹脂複合材料(以下、適宜「複合材料」と略す。)が広く用いられるようになっている。この複合材料の中でも、強化繊維として炭素繊維を用い、これにエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含浸させて成形した炭素繊維強化型のものは、金属材料よりも軽量であることに加え、より高強度であることから、スポーツ用品、産業機械、航空宇宙等の分野に広く採用されている。
【0003】
これら分野のうち航空宇宙の分野では、例えば、航空機の翼や胴体等の構造物において、軽量な金属の骨格部材であるスティフナ(stiffener)に複合材料からなるスキンを一体化するスティフンドパネル(stiffened panel)が採用されている。代表的なスティフナとしては、ストリンガが挙げられる。ストリンガは構造物の形状に組み合わせられた上で各種治具により支持され、これにプリプレグが複数枚積層され、オートクレーブ(圧力釜)により加圧、加熱される。これによりプレプリグが硬化してスキンとなるとともに、当該スキンにスティフナが密着されて一体化されることで、スティフンドパネルが形成される。
【0004】
スティフンドパネルからなる構造物の一例として、図24に示すような、ワンピースバレル(OPB)として形成される航空機の胴体部101等が挙げられる。胴体部101は、スキン102と当該スキン102の内面側に密着されている複数のストリンガ103とから構成され、航空機として組み立てられたときに扉となる開口部104および窓となる開口部105が形成されている。
【0005】
このような航空機の構造体の製造に関する技術としては、特許文献1に開示されている、航空機胴体の複合バレルセクションが知られている。この文献では、バレルセクションは「軸周りに360°延在する密封されたシェル構造」として定義され、このバレルセクションを製造するために、複数のツール断片(例えば6個)をツール固定具で円筒状に配置して支持することにより構成される成形型が用いられている。
【0006】
特許文献1では、複合バレルセクションの製造システムの一例として、複数の製造ステーションが直列配置され、各製造ステーションに、前記成形型を含むバレルセクションツールアセンブリ(以下、ツールアセンブリと略す。)が移動する構成が開示されている。
【0007】
具体的には、まず、スティフナ装填ステーションにおいて、各ツール断片に形成された複数のスティフナ溝に複数のスティフナを装填し、その後、当該ツール断片を前記ツール固定具に装填して円筒形に支持され、単一の成形型(同文献ではツールアセンブリ)を構成する。このとき、ツール固定具は、複数のローラによってツール支持構造に回転可能に支持され、ツール固定具が長手軸周りを回転することを可能にしている。
【0008】
次に、円筒形に支持されて構成された成形型は、ツール支持構造により外板積層ステーションに運搬され、ここで、前記長手軸周りに前記成形型が回転することで、繊維配置機械によって繊維トウ(熱硬化樹脂材料にあらかじめ含浸した連続的なフィラメントの撚られていない束)が積層され、前記成形型の外周に積層体(スキンに相当)が形成される。
【0009】
次に、積層体が形成された前記成形型(同文献ではツールアセンブリ)は、ツール支持構造によりバキュームステーションに運搬され、ここで、積層体の外周に圧力パッドが据え付けられ、バキュームバックが積層体の周囲に据え付けられ、バキュームバック内を排気する。その後、バキュームバックが付いた成形型(ツールアセンブリ)は、ガントリービームにより硬化ステーションに運搬され、オートクレーブ処理が行われることにより、積層体およびスティフナが硬化する。これにより、前記成形型の外周に、前記積層体およびスティフナが硬化してスティフンドパネルが形成される。
【0010】
スティフンドパネルが形成された状態の成形型(ツールアセンブリ)は、ガントリービームにより検査ステーションに運搬され、硬化後の積層体(スキン)に空隙または剥離が無いか検査され、次に、ガントリービームによりトリミングステーションに運搬され、積層体(スキン)にトリミングおよび穴開けが行われる。その後、ツール断片がスティフンドパネルから除去され、スティフナ装填ステーションに戻されるとともに、除去後のスティフンドパネル(ツールアセンブリ)は、ツール支持構造により最終アセンブリステーションに運搬され、複数のフレームセクションが取付けられ、複合バレルセクションが完成する。
【0011】
このように、OPBの製造においては、成形型として略円筒形のマンドレルを備え、このマンドレルは、巨大な成形型を用いて、成形品(複合材料構造物)であるOPBの中空を形成するために、外周面に当該成形品が成形されるように構成されている。それゆえ、このマンドレルにおいては、単一の巨大な筒状部材ではなく、複数のセグメント、例えば6つのセグメントに分割される構造が採用される。この構造であれば、単一の巨大な成形型を用いなくてもよく、必要に応じて、各セグメントを組み立てればよいため、OPB等の大きな成形品を成形するときに有用となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−532384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、前記円筒形のマンドレル(成形型)は、成形品であるOPBが、航空機の胴体部のように非常に大きなものであることから、円筒形に組み立てられた各セグメントからなるマンドレル(成形型)を、成形品から取り外すときには、その作業に困難性が伴うとともに、作業そのものも非常に煩雑となる。
【0014】
例えば、航空機の胴体部であれば、その寸法は、直径が約4〜6mで円筒の長さが約5〜15mという巨大なものとなる。胴体部を構成するスティフンドパネル(スキンおよびスティフナ)は、当該胴体部全体から見れば、非常に厚みの小さいものであることから、これを製造するマンドレルの大きさは、当該胴体部の外形寸法とほぼ同じ大きさとなる。しかも、特許文献1にも記載されている通り、マンドレルのセグメント(同文献ではツール断片)は、「鉄、インバール、アルミニウム」等の金属材料を主体として製造されることが多い。したがって、上記マンドレルを成形型としてOPBを成形した後、当該マンドレルをOPBの中空から取り外すときには、巨大で重い金属製の成形型を、OPBを破損しないように取り外すことになるが、このような作業は容易ではない。
【0015】
ここで、上記マンドレルは複数のセグメントから構成されるため、OPBの中空から当該マンドレルを取り外すときには、セグメントに分解する方法を採用すればよいことになる。ところが、巨大なマンドレルを複数のセグメントに分解したところで、各セグメントそのものが上記のとおり大きくかつ重いものとなっている。
【0016】
一般に大型構造物の分解では、天井クレーン等を用いて、当該構造物を構成する大きな構成部材を吊り上げてから水平移動させ、所定の位置に配置させるという過程を経ることになる。しかしながら、上記のように、マンドレルは、成形品(OPB等)の中空内に嵌合した状態にある。それゆえ、上記マンドレルをセグメントに分解して中空から取り外すとしても、天井クレーン等を用いる方法では、上記セグメントを吊り上げる前に成形品の中空から当該セグメントを引き出す必要が生じる。したがって、天井クレーン以外の作業用機器を利用する必要が生じ、結果的にマンドレルの分解は煩雑な過程を経ることになり、また、適切な作業用機器を利用しなければ、成形品が破損するといった可能性も生じる。
【0017】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、例えば航空機の胴体部等の複合材料構造物の製造に用いられる成形型の主たる構成であり、略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、例えば、成形品から取り外す場合であっても成形品にほとんど影響を与えることなく、容易かつ効率的に分解することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るマンドレルの分解方法は、前記の課題を解決するために、軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を成す複数のセグメントを筒状に組み立てて成るマンドレルを、個々のセグメントに分解するマンドレルの分解方法であって、前記マンドレルは、対向配置した一対のサポートリングの間で、前記セグメントが、互いに結合され、前記サポートリングのそれぞれに固定されることで、筒状を成しているとともに、その外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態にあり、取外し対象である1個の前記セグメントを最上部に位置させるように、前記一対のサポートリングを前記マンドレルとともに回転させる回転工程と、最上部に位置した前記取外し対象の前記セグメントを、前記一対のサポートリングから取り外すセグメント取外し工程と、を含み、前記セグメント取外し工程では、前記一対のサポートリングの間で、前記取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って下降させて前記マンドレルの内側に位置させてから、前記一対のサポートリングの間より搬出する構成である。
【0019】
前記構成によれば、取外し対象のセグメントをサポートリングから取り外す際、当該セグメントは、サポートリングの最上部に位置している。そこで、当該セグメントを、最上部から鉛直下方へ向かって移動させると、取り外されたセグメントは、マンドレルの内側に移動するので、マンドレルの外周面に形成された複合材料構造物にほとんど影響を与えることなく、セグメントを取り外すことができる。しかも、マンドレルの内側に移動した当該セグメントは、一対のサポートリングの間に位置しているが、当該サポートリングの中空を通過するように水平方向に移動させれば、当該セグメントをサポートリングの間から容易に搬出することができる。また、取外し対象のセグメントは、サポートリングを回転させることで、常に最上部という一箇所に決められており、移動方向も鉛直方向のみで一定となっているため、複数のセグメントの全てを同様の工程で簡単に取り外すことができる。
【0020】
前記分解方法においては、前記取外し対象のセグメントが、隣接するセグメントに結合しているときには、前記セグメント取外し工程の前に、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの結合状態を解除する、セグメント結合解除工程を含むことが好ましい。
【0021】
前記構成によれば、先にセグメント同士の結合を解除しても、当該セグメントはサポートリングに固定されているので、結合が解除されたセグメントを1個ずつ取り外していくことができる。それゆえ、マンドレルの分解を効率的に行うことができる。
【0022】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、略矩形状を成す当該セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持しつつ下方へ変位させることにより、前記取外し対象の前記セグメントを前記マンドレルの内側へ向かって下降させることが好ましい。
【0023】
前記構成によれば、四隅近傍の位置を独立して個別に変位させながら取外し対象のセグメントを下降させるので、当該セグメントをマンドレルの内側へ下ろすときに、姿勢制御および位置制御を行うことができる。
【0024】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントを傾斜させるように、その一端部を他端部よりも先に下降させることによって、前記複合材料構造物の内面から引き剥がすことがより好ましい。
【0025】
前記構成によれば、取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って単純に下降させずに、傾斜させながら下降させるので、密着した複合材料構造物とセグメントとの間に空気を送り込むことにより密着を開放することができ、複合材料構造物に変形等を生じさせずに効率的に分離させることができる。
【0026】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、前記サポートリングおよび前記取外し対象の前記セグメントの間に設けた環状固定ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内することが好ましい。
【0027】
前記構成によれば、環状固定ガイド機構によりセグメントの下降方向を案内するため、取外し対象のセグメントが下降中にサポートリング等に接触するような事態を回避することができる。
【0028】
前記分解方法においては、前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの間に設けたセグメント結合ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内することがより好ましい。
【0029】
前記構成によれば、セグメント結合ガイド機構によりセグメントの下降方向を案内するため、取外し対象のセグメントが下降中に隣接するセグメント等に接触するような事態を回避することができる。
【0030】
前記分解方法においては、前記回転工程では、前記サポートリングの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で当該サポートリングを下方から支持しつつ回転力を付与し、かつ、前記サポートリングの上部にて当該サポートリングの前記軸芯方向の移動を制約するように支持することが好ましい。
【0031】
前記構成によれば、サポートリングの上部と下部とを回転可能に支持しているため、サポートリングの転倒を防止しつつこれを回転させることができる。
【0032】
前記分解方法においては、前記回転工程では、前記取外し対象の前記セグメントが前記サポートリングの最上部に位置していると判断すべく、前記サポートリングに設けられた被検出部が当該サポートリングの回転により所定の検出位置に到達したことを、位置検出部により検出することが好ましい。
【0033】
前記構成によれば、サポートリングの回転に伴って、取外し対象のセグメントが最上部にあることを検出できるので、回転するサポートリングの正確な位置決めが可能となる。
【0034】
前記分解方法においては、前記複数のセグメントは、互いに形状の異なる第一セグメントおよび第二セグメントから構成され、かつ、前記第二セグメントにおける、前記マンドレルの外周面となる表面の面積は、前記第一セグメントの前記表面の面積よりも広くなっており、前記セグメント取外し工程には、前記第一セグメントを取り外す第一セグメント取外し工程と、前記第二セグメントを取り外す第二セグメント取外し工程とが含まれ、前記第一セグメント取外し工程は、前記第二セグメント取外し工程より先に行われることが好ましい。
【0035】
前記構成によれば、先に、表面の面積が狭い第一セグメントを取外してから、表面の面積が広い第二セグメントを取り外すので、取り外しやすい小面積のセグメント(第一セグメント)を取り外して、サポートリングの間に作業空間を確保してから大面積のセグメント(第二セグメント)を取り外すことになる。それゆえ、マンドレルの分解をより効率的に行うことができる。
【0036】
本発明には、前記マンドレルの分解方法に加えて、当該分解方法に好適に用いることができる分解装置も含まれる。具体的には、本発明に係るマンドレルの分解装置は、前記構成のマンドレルの分解方法に用いられ、前記一対のサポートリングの中空に挿入されるレール本体と、当該レール本体上に設けられ、当該レール本体の後端から先端に向かって前記セグメントを水平移動させるコンベヤ部と、前記レール本体上に設けられ、前記コンベヤ部から移動された前記セグメントを、鉛直方向に沿って上昇移動させるジャッキ部と、を備え、前記ジャッキ部は、前記レール本体が前記サポートリングの中空に挿入された状態で、前記サポートリングそれぞれの間で、略矩形状を成す前記セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、当該各位置を独立して鉛直方向に沿って変位可能とするセグメント支持部材を有している構成を挙げることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明では、略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、容易かつ効率的に分解することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るマンドレルを含む成形型の全体構成の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示すマンドレルを形成する第一セグメントの構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す第一セグメントを端部から見た平面図である。
【図3】(a)は、図1に示すマンドレルを形成する第二セグメントの構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す第二セグメントを端部から見た平面図である。
【図4】(a)は、図1に示すマンドレルを両端で支持するサポートリングの構成の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)に示すサポートリングで保持されるセグメントの位置関係を示すマンドレルの模式的な端面図である。
【図5】図1に示すマンドレルを組み立てる組立分解装置の一例であるプレシジョンレールの全体構成を示す斜視図である。
【図6】(a)は、図5に示すプレシジョンレールにセグメントを載置した状態を模式的に示す概略平面図であり、(b)は、図5に示すプレシジョンレールに含まれるリング回転駆動部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】(a)は、本実施の形態において用いられるアウターリングが成形品の外側に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すアウターリングを成形品に取り付ける状態を模式的に示す平面図である。
【図8】図1に示すマンドレルを分解する本実施の形態の分解方法の全体構成を説明する工程図である。
【図9】図4(b)に示す部位#1の第一セグメントを、隣接する部位#6,#2の第二セグメントおよびサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第一セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図10】(a),(b)は、図9に示す第一セグメントを取り外すときのプレシジョンレールの動作を示す当該プレシジョンレールの側面図である。
【図11】(a)〜(c)は、図10(b)に続くプレシジョンレールの動作を示す当該プレシジョンレールの側面図である。
【図12】(a),(b)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレールの動作において、ジャッキ部の支持ロッド部が第一セグメントを支持する状態を示す模式的断面図であり、(c)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレールの動作において、ジャッキ部の支持ロッド部が第一セグメントを支持する状態を示す模式的正面図である。
【図13】図4(b)に示す部位#1の第一セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図14】図4(b)に示す部位#3の第一セグメントを、隣接する部位#2,#4の第二セグメントおよびサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第一セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図15】図4(b)に示す部位#3の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図16】図4(b)に示す部位#5の第一セグメントを、隣接する部位#4,#6の第二セグメントおよびサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第一セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図17】図4(b)に示す部位#5の第一セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図18】図4(b)に示す部位#6の第二セグメントをサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第二セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図19】図4(b)に示す部位#6の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図20】図4(b)に示す部位#2の第二セグメントをサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第二セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図21】図4(b)に示す部位#2の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図22】図4(b)に示す部位#4の第二セグメントをサポートリングから取り外すために、ジャッキ部を上昇させて当該第二セグメントの裏側に配置させた状態を示す模式図である。
【図23】図4(b)に示す部位#4の第二セグメントを取り外してジャッキ部を下降させた状態を示す模式図である。
【図24】複合材料構造物の一例である、ワンピースバレル(OPB)として形成される航空機の胴体部の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0040】
[成形型の全体構成]
まず、本実施の形態に係る分解方法で分解される複合材料構造物製造用成形型(以下、成形型と略す。)の全体構成について図1を参照して説明する。図1は本実施の形態に係るマンドレルを含む成形型の全体構成の一例を示す斜視図である。
【0041】
図1に示すように、本実施の形態に係る成形型10は、マンドレル11と、その両端に位置する一対のサポートリング40a,40bとから少なくとも構成されている。マンドレル11は、6個のセグメント20a,30a,20b,30b,20c,および30cが、互いにその側面で結合されることにより形成されており、このマンドレル11の両端はサポートリング40a,40bによりそれぞれ支持されている。これによって6個のセグメント20a〜20cおよび30a〜30cが円筒状に保持されることになる。なお、以下の説明では、セグメント20a〜20cおよび30a〜30cを包括して説明するときには、単に、「セグメント20,30」と略す。
【0042】
ここで、後述するように、セグメント20,30の表面には、ストリンガを装着するための溝状凹部が形成されているが、図1では、全体構成を明確に示す便宜上、溝状凹部の記載を省略している。また、セグメント20,30およびサポートリング40a,40bの具体的な構成について、後述する。
【0043】
サポートリング40a,40bは、それぞれクレードル12a,12bによって直立した状態で回転可能に支持されている。サポートリング40aを支持するクレードル12aは、本実施の形態では、一対の腕部121,121、クレードル本体122および複数の支持ローラ123(図1では4個)を備えている。一対の腕部121,121は、直立した状態のサポートリング40aの外周を挟持するよう立設して設けられる。クレードル本体122は、サポートリング40aの下方に位置し、両端で腕部121,121を支持している。の支持ローラ123は、外力によりサポートリング40a,40bが回転するように、クレードル本体122およびサポートリング40a,40bの間に介在されている。なお、サポートリング40bを支持するクレードル12bも同一の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0044】
台車13は、クレードル12a,12b、サポートリング40a,40bおよびマンドレル11を搬送するものであり、本実施の形態では、矩形平板状で、図1には示さないが、台車13の下面には、複数の車輪が設けられており、上面に成形型10を載置した状態で搬送することが可能となっている。本実施の形態では、台車13は、その上面がマンドレル11の寸法(円筒の軸方向の長さおよび円筒の直径)に対応した広がり面積を有している。なお、クレードル12a,12bは、図1に示す状態では、台車13とは接しておらず、互いに対向するサポートリング40aおよびサポートリング40bの高さを水平に調整できる状態で、床面に対して自立している。
【0045】
なお、クレードル12a,12b、台車13の具体的な構成は、本実施の形態で開示される構成に限定されず、それぞれの作用、機能等を発揮できるものであれば、さまざまな構成を採用することができる。
【0046】
成形型10は、OPB等の複合材料構造物の成形に用いられ、成形型10の要部であるマンドレル11(円筒状部材)は、成形品である複合材料構造物の中空に嵌合する状態で用いられる成形用中子として機能する。なお、以下の説明では、複合材料構造物を適宜、成形品と称する。
【0047】
具体的には、図1に示すように、図中二点鎖線で示す円筒状の成形品80は、マンドレル11の外周面を覆う状態で成形されている。したがって、成形品80から見れば、マンドレル11は、円筒構造の中空内に嵌合した状態となっている。それゆえ、成形後の成形品80からマンドレル11を取り外す(脱型する)ためには、後述するように、マンドレル11をセグメント20,30に分解することになる。なお、成形品80は、後述するように離型剤の層を介してマンドレル11の外周面に密着した状態にある。
【0048】
[セグメントの構成]
次に、マンドレル11を構成する6個のセグメント20,30について、図2(a),(b)および図3(a),(b)を参照して説明する。図2(a)は、図1に示すマンドレル11を形成する第一セグメントの構成を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示す第一セグメントを端部から見た平面図である。図3(a)は、図1に示すマンドレル11を形成する第二セグメントの構成を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示す第二セグメントを端部から見た平面図である。
【0049】
本実施の形態では、マンドレル11を構成する6個のセグメント20a〜20cおよび30a〜30cは、その形状から、図2(a),(b)に示す第一セグメント20a〜20cと、図3(a),(b)に示す第二セグメント30a〜30cとの2種類に分類される。なお、下記の説明のうち、図2(a),(b)および図3(a),(b)を参照する説明では、便宜上、同一形状の第一セグメント20a〜20cは「第一セグメント20」、第二セグメント30a〜30cは「第二セグメント30」と、一般化してまとめて説明する。
【0050】
マンドレル11を構成する第一セグメント20および第二セグメント30は、いずれも軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を有している。このうち、第一セグメント20は、図2(a)に示すように、全体が矩形平板状で、その表面21が凸状の曲面(凸面状あるいは凸曲面)となっており、この表面21を上側として水平に配置させたときに、その両側面22,22が、水平方向に面しているか、または、水平方向に対して上側に傾斜する方向に面している形状となっている。本実施の形態では、例えば、図2(b)に示すように、側面22は、その法線方向が、水平方向の上側に傾斜した方向に向かっている。
【0051】
後述するように、本実施の形態では、円筒形に組み立てられたマンドレル11を分解するときに、先に第一セグメント20a〜20cが1個ずつ取り外され、その後、第二セグメント30a〜30cが1個ずつ取り外される。したがって、第一セグメント20は、両側面22に位置している第二セグメント30,30の間から引き抜かれることになる。したがって、第一セグメント20の両側面22,22は、上記取り外しを妨げないように、その法線方向が水平方向(図2(b)の矢印Ar1方向)に向かうように(水平方向を向くように)形成されていればよい。言い換えれば、第一セグメント20を水平に配置させたときには、側面22は、垂直方向(図2(b)の一点鎖線に沿った方向)に沿った位置となっている。
【0052】
さらに、第一セグメント20の両側面22,22は、図2(b)に示すように、側面22の法線方向が上側(表面21側)に傾斜(図2(b)の矢印Ar2方向)するように形成されていることが好ましい。法線方向が上側に傾斜しているということは、側面22が上側に向くように傾斜しているということができる。言い換えれば、側面22は、当該側面22の裏側の縁が表側の縁よりも外側に広がるように傾斜しているということができる。このような側面22の傾斜は、第一セグメント20の両側面22,22に「抜き勾配」を形成することになるので、第一セグメント20を第二セグメント30,30の間から引き抜きやすくなることから、マンドレル11を分解しやすくすることができる。
【0053】
なお、側面22の傾斜角(抜き勾配角度)は特に限定されず、マンドレル11および成形型10の具体的な形状または寸法等に応じて好適な角度が適宜設定される。例えば、本実施の形態では、8〜12°の範囲、好ましくは約10°の角度であればよい。また、対向する両側面22,22の双方が同じ角度で傾斜してもよいし、異なる角度で傾斜してもよい。
【0054】
第一セグメント20の端面23には、図2(a),(b)に示すように、この端面23をサポートリング40a,40bの固定面(後述)に固定させる雄型固定部材251と、第一セグメント20を固定するときの固定部材同士の位置決めに用いられる雄型ガイド部材252とが設けられている。雄型固定部材251は、サポートリング40a,40bの固定面に設けられている雌型固定部材および固定状態保持部材(後述)とともに、環状固定保持機構を構成している。また、雄型ガイド部材252は、サポートリング40a,40bの固定面に設けられている雌型ガイド部材(後述)とともに、環状固定ガイド機構を構成している。
【0055】
雄型固定部材251は、端面23に2個設けられ、雄型固定部材251,251の間の中間位置に雄型ガイド部材252が位置している。雄型ガイド部材252の位置は、図2(b)に示すように、端面23を図中縦方向(第一セグメント20が水平配置されていれば鉛直方向)に分割する中央線(図中、二点鎖線)上の位置であるので、雄型固定部材251,251は、中央線から等距離となる位置に設けられていることになる。また、雄型ガイド部材252は、雄型固定部材251,251よりも表面21寄りに位置している。これは、第一セグメント20を、表面21を上側として持ち上げるように移動させてサポートリング40a,40bに固定させるので、環状固定ガイド機構を構成する雄型ガイド部材252と雌型ガイド部材とを先に接触させることにより、環状固定保持機構を構成する固定部材同士の位置決めを行うためである。
【0056】
第一セグメント20の両側面22,22には、図2(a)に示すように、複数の雄型結合部材261および外周側雌型ガイド部材262、並びに、図2(a)には図示されない、結合用くさび部材および内周側雄型ガイド部材が設けられている(図2(a)では5個)。雄型結合部材261は、第一セグメント20の裏側に位置し、外周側雌型ガイド部材262は、雄型結合部材261から見て表面21寄りに隣接して位置している。また、結合用くさび部材は、雄型結合部材261から見て側面22の内側に設けられており、後述するように、第二セグメント30と結合するときに、側面22の外側に突出するように構成されている。また、内周側雄型ガイド部材は、図2(a)では図示されないが、雄型結合部材261の下方に一体化して設けられている。
【0057】
雄型結合部材261および結合用くさび部材は、第二セグメント30の側面に設けられている雌型結合部材(後述)とともにセグメント結合保持機構を構成している。また、外周側雌型ガイド部材262は、第二セグメント30の側面に設けられている外周側雄型ガイド部材(後述)とともにセグメント結合ガイド機構を構成している。同様に、内周側雄型ガイド部材は、第二セグメント30の側面に設けられている内周側雌型ガイド部材(後述)とともにセグメント結合ガイド機構を構成している。なお、図2(b)では、側面22,22の位置関係を説明する便宜上、雄型結合部材261、外周側雌型ガイド部材262、内周側雄型ガイド部材、および結合用くさび部材は図示していない。
【0058】
雄型結合部材261および外周側雌型ガイド部材262の位置関係は、図中縦方向(第一セグメント20が水平配置されていれば鉛直方向)において、外周側雌型ガイド部材262が上側(表面21側)に雄型結合部材261が下側(裏面側)に並んで配置される関係となっている。これは、第一セグメント20を持ち上げるように移動させて、第二セグメント30,30の間に挿入してから互いに結合させるので、前記環状固定保持機構と同様に、セグメント結合ガイド機構によってセグメント結合保持機構の位置決めをするためである。
【0059】
一方、内周側雄型ガイド部材は後述するように雄型結合部材261の図中下方(裏面側)となる位置に設けられている。これは、セグメント20,30で形成される略円筒形のマンドレル11においては、外周面が滑らかな円周面となっている必要があることから、各セグメント20,30の側面同士を結合するときの位置決めが重要となるためである。すなわち、各セグメント20,30の側面同士を結合するとき、外周側雌型ガイド部材262および外周側雄型ガイド部材により、外周側の位置決めが行われ、内周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材により、内周側の位置決めが行われることで、マンドレル11の外周面に段差を小さくし、滑らかな円周面を形成することができる。
【0060】
なお、環状固定保持機構および環状固定ガイド機構、並びに、セグメント結合保持機構およびセグメント結合ガイド機構の具体的な構成および固定方法、結合方法またはガイド方法については、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。また、本実施の形態では、後述するように、側面22に設けられるクランプ部材がセグメント結合保持機構に含まれるが、このクランプ部材についても、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。また、図示されないが、第一セグメント20の表面21はストリンガが装着可能に構成されている。
【0061】
第二セグメント30は、図3(a)に示すように、全体が矩形平板状で、その表面31が凸状の曲面(凸面状あるいは凸曲面)となっており、この表面31を上側として水平に配置させたときに、その両側面32,32が水平方向に対して下側に傾斜する方向に面している形状を有している。つまり、第二セグメント30の裏側から表面31に向かって、その幅が広がるように、両側面32,32が傾斜している。
【0062】
後述するように、本実施の形態では、マンドレル11を分解するときには、先に第一セグメント20を取り外すため、第一セグメント20は、両側面22に位置している第二セグメント30,30の間から引き抜かれることになる。したがって、後から取り外される第二セグメント30は、第一セグメント20の引き抜きを妨げないように、その裏側の面積が小さくなっていることが好ましい。それゆえ、第二セグメント30の両側面32,32は、その法線方向が下側(図3(b)の矢印Ar3方向)に向かうように、言い換えれば、側面32が下側に向かって傾斜するように形成されていると好ましい。
【0063】
また、第二セグメント30の側面32,32には、表面31につながる縁部がそれぞれの側面32,32よりも外側に突出した庇部37,37が設けられている。したがって、図3(a),(b)に示すように、第二セグメント30を表面31から見れば、下側を向いている側面32は、庇部37によって完全に隠れた状態となる。
【0064】
また、第二セグメント30においては、庇部37の下方となる側面32に、セグメント結合保持機構を構成する雌型結合部材(後述)およびセグメント結合ガイド機構を構成する前記外周側雄型ガイド部材および前記内周側雌型ガイド部材が設けられている。なお、図3(b)では、側面32,32の位置関係を説明する便宜上、雌型結合部材、外周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材は図示していない。これらについては、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。
【0065】
なお、側面32が下側へ傾斜する程度、および、庇部37が突出する程度は、特に限定されず、マンドレル11の具体的構成、第二セグメント30そのものの具体的構成、あるいは、第二セグメント30に結合する第一セグメント20の具体的構成に応じて適宜設定される。
【0066】
第二セグメント30の端面33には、第一セグメント20の端面23と同様に、端面33をサポートリング40a,40bの固定面に固定させる2個の雄型固定部材351と1個の雄型ガイド部材352とが、雄型固定部材251および雄型ガイド部材252と同じ位置関係で設けられている。そして、雄型固定部材351も、雄型固定部材251と同様に、環状固定保持機構を構成し、雄型ガイド部材352も雄型ガイド部材252と同様に環状固定ガイド機構を構成している。
【0067】
また、図3(a)に示すように、図示されている第二セグメント30には、扉枠部15aおよび窓枠部15bが形成されている。これら扉枠部15aおよび窓枠部15bは、本実施の形態に係る成形型10を用いて形成されたOPBにおいて、扉および窓に対応する部位に相当し、トリミング処理における切り取りまたは穴開け加工時に利用される凹凸部である。本実施の形態では、扉枠部15aおよび窓枠部15bは第二セグメント30の表面31に形成されているが、もちろんこれに限定されず、第一セグメント20の表面21に形成されてもよいし、第一セグメント20および第二セグメント30のいずれに形成されてもよい。なお、図示されないが、第二セグメント30の表面31もストリンガが装着可能に構成されている。
【0068】
[サポートリングの構成]
次に、セグメント20,30を単一の円筒状のマンドレル11に保持するための保持部材であるサポートリング40a,40bの構成と、サポートリング40a,40bに固定されているセグメント20,30の位置関係について、図4(a),(b)を参照して具体的に説明する。図4(a)は、マンドレル11を両端で支持するサポートリング40a,40bの構成の一例を示す平面図であり、図4(b)は、サポートリング40a,40bで円筒状に保持されるセグメント20,30の位置関係を示す、マンドレル11の模式的な端面図である。
【0069】
なお、下記の説明のうち、図4(a)を参照する説明では、便宜上、実質的に同一の構成を有するサポートリング40a,40bは「サポートリング40」と、一般化してまとめて説明する。サポートリング40を支持するクレードル12a,12bについても同様に「クレードル12」と、まとめて説明する。
【0070】
図1に示すように、上記構成のマンドレル11を支持するサポートリング40a,40bは、いずれも楕円形の環状で互いに対向する位置関係で、直立した状態でクレードル12a,12bにより支持されている。図4(a)に示すように、サポートリング40における互いの対向面は、マンドレル11の端面を固定する固定面43となっている。なお、図4(a)では、クレードル12については、その外形を点線で示している。
【0071】
この固定面43には、図4(a)に示すように、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cが固定される位置(固定箇所)に、2個の雌型固定部材41とその間に配置される1個の雌型ガイド部材42がそれぞれ設けられている。本実施の形態では、セグメント20,30は合計6個であるので、固定箇所も合計6箇所となっており、第一セグメント20の固定箇所と第二セグメント30の固定箇所とは、サポートリング40の周方向に交互に設置されている。
【0072】
雌型固定部材41は、マンドレル11を構成する第一セグメント20a〜20cが備えている雄型固定部材251、または、第二セグメント30a〜30cが備えている雄型固定部材351が挿入されることで、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cをサポートリング40の固定面43に固定するための部材であり、これら雄型固定部材251,351とともに環状固定保持機構を構成している。さらに、図4(a)には図示されないが、上記固定状態を保持する固定状態保持部材としての固定用くさび部材も固定面43に設けられている。
【0073】
また、雌型ガイド部材42は、第一セグメント20a〜20cが備えている雄型ガイド部材252および第二セグメント30a〜30cが備えている雄型ガイド部材352が挿入されるよう構成され、雄型固定部材251,351が雌型固定部材41に挿入される状態をガイドするものであり、雄型ガイド部材252,352とともに環状固定ガイド機構を構成している。雌型ガイド部材42は、例えば、図4(a)に示すように、サポートリング40の中心側から外側に向かって放射状に設けられる一対のレール状部材として構成されている。そして、サポートリング40の内側となる端部は各レールの間が開いており、外側となる端部は、各レールの間が封止されている。このレールの間の陥凹部に雄型ガイド部材252,352が挿入されることで環状固定ガイド機構として機能する。
【0074】
固定面43において雌型固定部材41が設けられている位置は、第一セグメント20a〜20cの端面23および第二セグメント30a〜30cの端面33に設けられている上記雄型固定部材251,351の位置に対応している。例えば、第一セグメント20a〜20cの雄型固定部材251は、端面23の中心線上に位置する雄型ガイド部材252から見て等距離となる位置に設けられているので、固定面43上では、雌型ガイド部材42を中心線として、等間隔となる位置に、同方向に雌型固定部材41が1個ずつ、合計2個設けられている。
【0075】
また、サポートリング40には、固定面43とは反対側となる面(外面44)の外周には、図4(a)には図示されない鍔状の回転ギヤ部が設けられている。この回転ギヤ部に関しては、プレシジョンレールとともに説明する。
【0076】
上記構成のサポートリング40にセグメント20,30が固定されることで形成され保持されるマンドレル11は、図4(b)に示すように、第一セグメント20および第二セグメント30が交互に配置する構成となっている。
【0077】
ここで、本実施の形態では、固定されているセグメント20,30を分解して取り外す順序と、マンドレル11として保持されている状態での位置との関係性が重要となる。それゆえ、以下の説明では、マンドレル11を構成している各セグメント20,30を、当該マンドレル11の一部(部位)と見なして序数で特定する。すなわち、図4(b)に示すように、図中最上部に位置する第一セグメント20aを基準として、図中時計回り(右回り)の順に序数を付し、この序数を「部位番号」として、各セグメント20,30がマンドレル11を形成したときに、相当する位置を特定する。
【0078】
すなわち、図4(b)に示すように、図中最上部の第一セグメント20aが「部位#1セグメント」であり、第二セグメント30aが「部位#2のセグメント」であり、第一セグメント20bが「部位#3セグメント」であり、第二セグメント30bが「部位#4のセグメント」であり、第一セグメント20cが「部位#5セグメント」であり、第二セグメント30cが「部位#6のセグメント」である。
【0079】
[プレシジョンレールの構成]
次に、本実施の形態において用いられるプレシジョンレールの具体的構成について、図5および図6(a),(b)を参照して説明する。プレシジョンレールは、セグメント20,30を円筒形のマンドレル11に組み立てるとともに、当該マンドレル11を各セグメント20,30に分解する組立分解装置である、図5は、プレシジョンレールの全体構成の一例を示す斜視図である。図6(a)は、図5に示すプレシジョンレールにセグメントを載置した状態を模式的に示す概略平面図であり、図6(b)は、図5に示すプレシジョンレールに含まれるリング回転駆動部の概略構成を示すブロック図である。
【0080】
図5に示すように、本実施の形態で用いられるプレシジョンレール17は、レール本体173、レール移動支持台175、一対のレール支持作業台176a,176bを備えている。レール本体173は、レール移動支持台175により長手方向に沿って移動可能な状態で支持される1本のレール部材であり、その上面にジャッキ部171a,171bおよび171cと、コンベヤ部174a,174bおよび174cとが設けられている。
【0081】
レール移動支持台175は、レール支持作業台176aとともに、レール本体173を、移動可能に支持している。本実施の形態では、明確に図示されないが、台座部の上に、レール本体173を移動可能に支持するクリップまたははさみ状の移動支持機構が設けられている。この移動支持機構は、レール本体173が移動するときには左右に開放され、レール本体173が停止している状態では、当該レール本体173を挟んだ状態で閉じる構成となっている。
【0082】
レール支持作業台176a,176bは、その間に、台車13を配置させた状態で互いに対向しており、その上側にはそれぞれ上作業台177が設けられているとともに、説明の便宜上、図示されないが、床面から上作業台177へ至る、つづら折り状の階段部が設けられている。また、レール支持作業台176aの下側には、明確に図示されないが、レール移動支持台175と同様に移動支持機構が設けられているとともに、サポートリング40aを回転させるリング回転駆動部が設けられている。また、レール支持作業台176bの下側には、明確に図示されないが、レール本体173が、当該レール支持作業台176bの位置を超えて移動しない状態で、当該レール本体173を支持する、停止支持機構が設けられているとともに、サポートリング40bを回転させるリング回転駆動部が設けられている。
【0083】
ここで、サポートリング40a,40bは、クレードル12a,12bによりそれぞれ支持されているとともに、レール支持作業台176a,176bによっても支持されている。具体的には、クレードル12a,12bは、サポートリング40a,40bの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で、腕部121,121により、サポートリング40a,40bを下方から支持しつつ、支持ローラ123を介してリング回転駆動部から回転力が付与される(図1参照)。また、サポートリング40a,40bの上部では、レール支持作業台176a,176bにより、当該サポートリング40a,40bの軸芯方向の移動が制約されている(図5参照)。このように、上部と下部との双方でサポートリング40a,40bが支持されていることで、サポートリング40a,40bの転倒を防止しつつこれを回転させることができる。
【0084】
レール支持作業台176a,176bの間に配置される台車13には、クレードル12a,12bを介してサポートリング40a,40bが載置されている。サポートリング40aは、台車13だけでなくレール支持作業台176aにも支持されており、この状態では、上作業台177がサポートリング40aの上側に向かうように位置している。同様に、サポートリング40bは、台車13およびレール支持作業台176bに支持されており、この状態で、上作業台177がサポートリング40bの上側に向かうように位置している。
【0085】
図1にも示すように、マンドレル11を構成する第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cは、サポートリング40a,40bの間に固定されている。それゆえ、レール本体173は、このマンドレル11の内部(またはサポートリング40a,40bの中空)に挿入されたり、当該内部(または中空)から引き出されたりするように、長手方向に移動可能となっている。したがって、図5に示すように、内部から引き出された状態では、レール本体173は、その先端がサポートリング40aの中空に向かう状態で、サポートリング40a,40bとともに一直線状に並ぶような位置関係で、支持されている。
【0086】
なお、以下の説明においては、レール本体173の移動に関しては次のように定義する。まず、サポートリング40a,40bの中空内またはマンドレル11の内部にレール本体173が挿入されるように移動するときには、「前進」と表現し、挿入されたレール本体173が引き抜かれるように移動するときには、「後退」と表現する。
【0087】
レール本体173の上面に設けられる3つのジャッキ部171a〜171cと、3つのコンベヤ部174a〜174cは、図5に示すように、レール本体173の後端側から、コンベヤ部174a、ジャッキ部171a、コンベヤ部174b、ジャッキ部171b、コンベヤ部174c、およびジャッキ部171cの順で、交互に位置している。これらジャッキ部171a〜171cおよびコンベヤ部174a〜174cの具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0088】
ジャッキ部171a〜171cは、本実施の形態では、いずれも、ほぼ同寸法、同構成であり、上側に載置した物体を上方に移動可能に構成されている。コンベヤ部174a〜174cのうち、最も後端側にあるコンベヤ部174aは、他のコンベヤ部174bおよび174cよりも、その搬送方向の長さが大きくなっている。
【0089】
後述するように第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cを上面に載置して先端側へ移動する構成となっている。それゆえ、コンベヤ部174aの半双方向の長さは、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cの長手方向の寸法よりも大きくなっている。一方、コンベヤ部174bは、ジャッキ部171aおよび171bに挟まれるように位置し、コンベヤ部174cは、ジャッキ部171bおよび171cに挟まれるように位置している。これらコンベヤ部174b,174cは、ジャッキ部171a〜171cのいずれか2つの上に移動した第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cの位置を微調整するものである。
【0090】
3つのジャッキ部171a〜171cのうち、ジャッキ部171aおよび171bは、主として、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cをサポートリング40a,40bの上方に移動させるために用いられる。なお、これらジャッキ部171aおよび171bに関する次の説明では、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cを、単に、第一セグメント20または第二セグメント30と略す。
【0091】
具体的には、レール本体173の上に載置された第一セグメント20または第二セグメント30は、後端側のコンベヤ部174aにより先端側に水平移動し、図6(a)に示すように、ジャッキ部171a、コンベヤ部174b、およびジャッキ部171bの上面を覆う位置まで達する。ここで、ジャッキ部171a〜171cは、いずれも、セグメント20,30を支持するために一対の支持ロッド部を備えている。図6(a)に示す例では、ジャッキ部171aは、支持ロッド部171a−1および171a−2を備え、ジャッキ部171bは、支持ロッド部171b−1および171b−2を備えている。これら支持ロッド部は、レール本体173の長手方向に平行で、かつ、レール本体173の断面方向における中央部を挟むように互いに対向する位置で、レール本体173の上面に設けられている。
【0092】
この状態では、略矩形状をなす第一セグメント20または第二セグメント30の下面において、その四隅近傍の各位置に、支持ロッド部171a−1および171a−2と、支持ロッド部171b−1および171b−2が配置され、これらの間にコンベヤ部174bが配置されている。それゆえ、ジャッキ部171aおよび171bによって、四隅それぞれの位置を変位させながら上方へ持ち上げることができる。これにより、後述するように、サポートリング40a,40bに固定されている第一セグメント20または第二セグメント30を容易に取り外すことができる。
【0093】
ここで、サポートリング40a,40bは、第一セグメント20または第二セグメント30が固定された状態で回転可能となっているが、このサポートリング40a,40bを回転させる構成として、前述したように、レール支持作業台176a,176bの下方にリング回転駆動部が設けられている。なお、リング回転駆動部に関する次の説明では、サポートリング40a、40bを、単に、サポートリング40と略す。
【0094】
図6(b)に示すように、リング回転駆動部16は、サポートリング40の外周に設けられる回転ギヤ部45に噛み合っている駆動ギヤ161と、モータおよびギヤ等から構成され、駆動ギヤ161を回転させる駆動源162と、サポートリング40の最上部の位置に、取り外し対象となるセグメント20,30が位置しているか否かを検出する位置検出部163と、これらを制御する回転制御部164を備えている。位置検出部163としては公知の位置センサが用いられる。回転制御部164としてはCPU等の演算装置が用いられる。
【0095】
ここで、位置検出部163による位置検出の具体的構成は特に限定されず、本実施の形態では、サポートリング40に設けられた図示されない被検出部を検出する構成となっている。図6(b)に示す構成では、位置検出部163がサポートリング40の最上部に、取り外し対象となるセグメント20,30が位置していることを検出しているので、当該セグメント20,30に被検出部が設けられている構成となっているが、これに限定されず、サポートリング40の回転により所定の検出位置に到達したことが位置検出部163で検出できればよい。例えば、サポートリング40の最上部に、取り外し対象となるセグメント20,30が位置したときに、当該サポートリング40の下方に被検出部が位置する構成としてもよい。これにより、リング回転駆動部16の構成をコンパクト化することができる。被検出部は光学的な構成であってもよいし、機械的または物理的な構成であってもよい。
【0096】
このリング回転駆動部16によってサポートリング40が回転することで、セグメント20,30は、それぞれ異なる動きで分解されるのではなく、上から下へ引き下ろすという同一の動きで分解されることになる。
【0097】
[アウターリングの構成]
次に、上述したプレシジョンレール17を用いて6個のセグメント20,30から構成されるマンドレル11を分解していく過程で、マンドレル11の外周に保持されている成形品80を外側から支えるアウターリングの構成について、図7(a),(b)を参照して説明する。図7(a)は、本実施の形態において用いられるアウターリング50が成形品80の外側に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)に示すアウターリング50を成形品80に取り付ける状態を模式的に示す平面図である。
【0098】
図7(a)に示すように、アウターリング50は、マンドレル11の外周面に位置する成形品80の中央部を外側から支持する形で設けられている。このアウターリング50は、図7(b)に示すように、鉛直方向の下側の位置(6時方向の位置)および鉛直方向の上側の位置(12時方向の位置)の2箇所において、リング断片50a,50bに分離可能となっている。そして、各リング断片50a,50bを、図7(b)において格子線のハッチングで示す成形品80の外周から挟み込む形で、当該成形品80の外側に取り付け、6時方向および12時方向の位置で図示されない固定部材で固定されることで、単一の環状の支持部材であるアウターリング50として構成される。
【0099】
ここで、成形品80は、アウターリング50の内周側には、図示されないアクチュエータおよび緩衝部材が設けられている。この緩衝部材としては特に限定されないが、例えば、スチール製の板状部材でスポンジ状のクッション材が端部に取り付けられた構成を挙げることができ、アクチュエータとしてはエアシリンダを挙げることができる。そして、リング断片50a,50bが、成形品80に対して挟み込むように取り付けられるときには、位置センサによって位置確認を行いながら、緩衝部材をアクチュエータによって成形品80に向かって進出させ、緩衝部材で成形品80の外周面に当接させる。
【0100】
これにより、アウターリング50によって、成形品80の外周面を緩やかにかつ確実に支持することができる。それゆえ、繊維強化樹脂複合材料より構成された成形品80に変形を生じさせることなく、当該性景品80をアウターリング50によって外側から確実に保持することができる。
【0101】
また、成形品80へのアウターリング50を取り付けた後には、後述するように、成形品80の内部に装着された状態にあるマンドレル11を、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cにそれぞれ分解して脱型していくことになる。このとき、マンドレル11を支持するサポートリング40a,40bを回転させることで、マンドレル11も回転するが、アウターリング50もサポートリング40a,40bの回転に同期して、図7(a)に示すアウターリング回転部51によって回転するよう構成されている。これにより、マンドレル11の脱型時にも成形品80を適切に外側で保持することができる。
【0102】
さらに、マンドレル11の脱型が完全に終了した状態では、サポートリング40a,40bを取り外し、代わりに、成形品80の両端を支持する一対のエンドリングを取り付けることになるが、このときにもアウターリング50による成形品80の保持は継続される。これにより、成形品80の内部にマンドレル11が位置しない状態でも、成形品80の両端はエンドリングにより支持され、成形品80の中央部は外側からアウターリング50により保持されるので、円筒状の成形品80の形状を保持しつつ、次の製造工程に移行することができる。
【0103】
[マンドレルの分解方法・全体構成]
次に、上記プレシジョンレール17を用いて、6個のセグメント20,30から構成されるマンドレル11を1個ずつ分解する方法について具体的に説明する。まず、マンドレル11の分解方法の全体について、図8を参照して説明する。図8は、本実施の形態におけるマンドレル11の分解方法の全体構成を説明する工程図である。
【0104】
本実施の形態では詳述しないが、成形型10に含まれるマンドレル11の外周に成形品80が成形され、所定のトリミング等の工程が施されれば、当該成形品80から、成形用中子であるマンドレル11を脱型しなければならない。そこで、図8に示すように、本実施の形態では、まず、プレシジョンレール17のレール支持作業台176a,176bの間に、成形品80が成形され、所定の工程も完了した成形型10を設置する(工程P01)。このとき、サポートリング40a,40bは、その最上部に、最初に取り外す第一セグメント20aが位置していなければ、第一セグメント20aを最上部に移動させるためにサポートリング40a,40bを回転させてもよい。
【0105】
次に、レール本体173を成形型10の中空内に挿入する(工程P02)。これにより、サポートリング40a,40bおよびマンドレル11の内部にレール本体173が位置することになるので、マンドレル11を分解できる状態となる。なお、この状態では、前述したアウターリング50が成形品80の中央部外周に取り付け済みである。
【0106】
次に、第一セグメント20a〜20cをそれぞれ取り外していくが、この取り外しの順序は、第一セグメント20a、20bおよび20cの順となっている(工程P03−1〜P05−3)。次に、第二セグメント30a〜30cをそれぞれ取り外していくが、この取り外しの順序は、第二セグメント30c、30aおよび30bの順となっている(工程P06−1〜P08)。
【0107】
全てのセグメントがサポートリング40a,40bから取り外されれば、マンドレル11の分解が完了する。その後、レール本体173をサポートリング40a,40b内から引き抜く(工程P09)ことで、一連の分解工程が完了する。
【0108】
なお、上記各工程のうち、工程P03−2,P04−2,P05−2,P06−1,P07−1およびP08をセグメント取外し工程と称し、工程P03−3,P04−3,P05−3,P06−2およびP07−2と回転工程と称する。また、工程P03−1,P04−1およびP05−1をセグメント結合解除工程と称し、工程P01を成形型設置工程と称し、工程P02をレール挿入工程と称し、工程P09をレール引抜工程と称する。ここで、セグメント取外し工程は、第一セグメント取外し工程である工程P03−2,P04−2およびP05−2と、第二セグメント取外し工程である工程P06−1,P07−1およびP08とに分けることができる。
【0109】
このように、本実施の形態に係る分解方法は、第二セグメント30a〜30cの間から第一セグメント20a〜20cを1個ずつ取り外してから、第二セグメント30a〜30cを1個ずつ取り外す。そこで、次に、第一セグメント20a〜20cの取外し方法および取外し作業について、図9〜図17を参照して説明する。なお、以下の説明では、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cのいずれの取外しにおいても、説明の便宜上、各図面上ではアウターリング50の図示は省略するものとする。
【0110】
[マンドレルの分解方法・第一セグメントの取外し]
まず、第二セグメント30a〜30cの間から、第一セグメント20a〜20cを取り外す作業に入る。この第一セグメント20a〜20cの取外し方法および取外し作業の順序について、図9〜図17を参照して、セグメント結合保持機構およびセグメント結合ガイド機構の具体的構成とともに説明する。なお、以下の説明においては、図4(b)に示されるセグメント20,30の部位番号を利用して、各第一セグメント20の取外しに関する説明を行う。
【0111】
図9は、部位#1の第一セグメント20aを、隣接する部位#6の第二セグメント30cおよび部位#2の第二セグメント30a並びにサポートリング40a,40bから取り外すために、ジャッキ部171a(およびジャッキ部171b)を上昇させて第一セグメント20aの裏側に配置させた状態を示す模式図である。図10(a),(b)は、第一セグメント20aを取り外すときのプレシジョンレール17の動作を示す当該プレシジョンレール17の側面図であり、図11(a)〜(c)は、図10(b)に続くプレシジョンレール17の動作を示す当該プレシジョンレール17の側面図である。
【0112】
また、図12(a),(b)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレール17の動作において、ジャッキ部171aの支持ロッド部171a−1およびジャッキ部171bの支持ロッド部171b−1が第一セグメント20aを支持する状態を示す模式的断面図であり、図12(c)は、図11(a),(b)に示すプレシジョンレール17の動作において、ジャッキ部171aの支持ロッド部171a−1,171a−2が第一セグメント20aを支持する状態を示す模式的正面図である。
【0113】
また、図13は、部位#1の第一セグメント20aを取り外してジャッキ部171a(およびジャッキ部171b)を下降させた状態を示す模式図である。図14〜図17は、部位#3の第一セグメント20bまたは部位5の第一セグメント20cを、隣接する第二セグメント30a〜30cおよびサポートリング40a,40bから順次取り外すときのジャッキ部171aの上昇または下降の状態を示す模式図である。
【0114】
なお、図9を含めて各セグメント20,30を取り外す状態を示す模式図では、各セグメント20,30がサポートリング40a上で固定される位置を明確に示す便宜上、クレードル12aおよび台車13は、一部構成を省略して示している。また、各セグメント20,30は、その両端がサポートリング40a,40bに固定されるが、説明の便宜上、同じく前記模式図では、一方のサポートリング40a(およびこれを支持するクレードル12a)のみを代表例として図示している。したがって、他方のサポートリング40bにおいても、サポートリング40aと同様にクレードル12bで支持され、各セグメント20,30がそれぞれ固定されていることは言うまでもない。
【0115】
図9に示すように、台車13に取り付けられたクレードル12aにより、サポートリング40aおよび図示されないサポートリング40bは立設して支持された状態にあり、これらサポートリング40a,40bの間にマンドレル11が保持されている(図8に示す工程P01、成形型設置工程)。そして、マンドレル11およびサポートリング40a,40bの中空内であって、かつ、互いに対向するサポートリング40a,40bの間の位置に、プレシジョンレール17が配置される。
【0116】
図9に示される位置に移動するまでのプレシジョンレール17の動作について説明すると、図10(a)に示すように、プレシジョンレール17のレール本体173は、成形型10の中空に挿入されておらず、完全にサポートリング40a,40bから引き出された状態で、レール移動支持台175およびレール支持作業台176aにより支持されている。なお、図10(a)〜図11(c)においては、成形型10は、図中破線で示されるマンドレル11およびサポートリング40a,40b、並びに、図中二点鎖線で示される成形品80から構成されている。
【0117】
このときのレール本体173の位置は、完全に後退した位置である。レール本体173は、この位置から、図中矢印Isで示すように、成形型10に向かって前進する(図8に示す工程P02、レール挿入工程)。
【0118】
次に、図10(b)に示すように、レール本体173は、成形型10の中空に挿入され、これらを貫通するまで前進してから停止し、レール移動支持台175、レール支持作業台176aおよび176bにより支持される。この状態では、サポートリング40a,40bの最上部に位置する第一セグメント20aの下方に、ジャッキ部171a、コンベヤ部174bおよびジャッキ部171bが位置している。そして、ジャッキ部171aおよびジャッキ部171bは、図中矢印Lfで示すように上昇する。
【0119】
次に、図11(a)に示すように、ジャッキ部171a,171bは、第一セグメント20aの裏側に当接した状態で停止する。この図11(a)に示す状態が、図9に示す状態に対応する。
【0120】
次に、第一セグメント20aを取り外す具体的な作業について説明する。第一セグメント20aの両側面22には、図2(a)に示すように、セグメント結合保持機構としての雄型結合部材261および図示されない結合用くさび部材と、セグメント結合ガイド機構としての外周側雌型ガイド部材262および図示されない内周側雄型ガイド部材が設けられている。一方、第二セグメント30a〜30cの両側面32には、セグメント結合保持機構としての雌型結合部材と、これらセグメント結合保持機構の位置を案内するセグメント結合ガイド機構としての外周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材が設けられている。加えて、本実施の形態では、セグメント結合保持機構としてクランプ部材も備えている。
【0121】
それゆえ、まず、セグメント結合保持機構による第一セグメント20aおよび第二セグメント30c,30aの結合状態を解除する(図8に示す工程P03−1、セグメント結合解除工程)。具体的には、本実施の形態では、セグメント結合保持機構は、雄型結合部材261および雌型結合部材のみではなく、セグメント結合保持機構としてクランプ部材も備えている。そこで、図9に示すように、例えば、内部作業台172に作業者を配備し、作業者の人手によってクランプ部材を取り外し、その後、結合用くさび部材による雄型結合部材261および雌型結合部材の嵌合状態を解除する。全てのセグメント結合保持機構について同様の作業を行うことで、セグメント結合解除工程が完了する。なお、このセグメント結合保持機構による結合状態の解除動作を「セグメント結合解除動作」と称する。
【0122】
この状態では、第一セグメント20aは、両端面23でサポートリング40a,40bにより固定されている状態となる。ここで、第一セグメント20aの端面23(図2(a),(b)も参照)には、雄型固定部材251および雄型ガイド部材252が設けられ、サポートリング40aの固定面43(図4(a)も参照)には、雌型固定部材41および雌型ガイド部材42、並びに図示されない固定用くさび部材が設けられている。雄型ガイド部材352および雌型ガイド部材42は、環状固定ガイド機構を構成し、雄型固定部材351、雌型固定部材41および固定用くさび部材は、環状固定保持機構を構成している。
【0123】
それゆえ、次に、環状固定保持機構による第一セグメント20aおよびサポートリング40a,40bの固定状態を解除する。具体的には、固定用くさび部材による雄型固定部材251および雌型固定部材41の嵌合状態を解除する。なお、この環状固定保持機構による固定状態の解除動作を「セグメント固定解除動作」と称する。
【0124】
ここで、第一セグメント20aを下降移動させるということは、当該第一セグメント20aの表面21上に成形されている成形品80から脱型させることになる。このとき、図12(a)に示すように、成形品80の内面と表面21との間には、通常、離型剤110の層が形成されている。それゆえ、セグメント固定解除動作およびセグメント結合解除動作を行った上で第一セグメント20aを単純に下降させるだけでは、離型剤110の表面張力により、成形品80の内面と第一セグメント20aの表面21とが密着し、これら円滑に分離できないことがある。
【0125】
しかしながら、前述したとおり、第一セグメント20aの四隅近傍は、支持ロッド部171a−1,171a−2,171b−1,171b−2により、それぞれ独立して下降させることができるので、例えば、図12(b)に示すように、支持ロッド部171a−1に対して、支持ロッド部171b−1をより下降させて、これら支持ロッド部171a−1,171b−1の間に、高さdpが生ずるように、第一セグメント20aを微妙に傾斜させながら下降移動させる。これによって、離型剤110の層に端面23側から少しずつ空気を導入することができるので、成形品80の内面から第一セグメント20aの表面21を円滑に引き剥がすことができる。
【0126】
加えて、セグメント結合解除動作およびセグメント固定解除動作を完了しても、第一セグメント20aをジャッキ部171a,171bで支持していれば、セグメント結合ガイド機構および環状固定ガイド機構を構成する雄型および雌型の各ガイド部材は嵌合したままとなっている。それゆえ、ジャッキ部171a,171bを下降させるときには、セグメント結合ガイド機構および環状固定ガイド機構によって、第一セグメント20aの下降移動が、隣接する第二セグメント30c,30aおよびサポートリング40a,40bに衝突しない方向に案内されることになる。
【0127】
例えば、図12(c)に示すように、ジャッキ部171aの支持ロッド部171a−2よりも支持ロッド部171a−1をより下方に移動させ、第一セグメント20aを幅方向に傾斜させたとする。このとき、環状固定ガイド機構を構成する雄型ガイド部材252により第一セグメント20aの端部の下降移動が、図中矢印Gd方向に案内されるので、図12(c)には図示されないサポートリング40a,40bに衝突するような事態が回避される。また、セグメント結合ガイド機構を構成する外周側雌型ガイド部材262により第一セグメント20aの両側部の下降移動が、図中矢印Gd方向に案内されるので、隣接する第二セグメント30c,30aに衝突するような事態が回避される。このような下降移動の案内は、図12(b)に示すような、第一セグメント20aを長手方向に微妙に傾斜させた状態でも同様である。
【0128】
このように、セグメント結合解除動作およびセグメント固定解除動作を行った上で、ジャッキ部171a,171bを下降動作させると、上記各ガイド機構による下降移動が適切な方向に案内され、第一セグメント20aが周囲の構造物(サポートリング40a,40bおよび隣接する第二セグメント30c,30a)に影響を与えることなしに、図11(b)および図13に示すように、サポートリング40a,40bから取り外される(図8に示す工程P03−2、第一セグメント取外し工程)。なお、ジャッキ部171aおよび171bにより、第一セグメント20aを下降移動させるときに四隅近傍の位置を調整する動作を「四隅位置調整動作」と称する。
【0129】
ジャッキ部171a,171bを完全に下降させた状態では、図11(b)に示すように、第一セグメント20aは、これらジャッキ部171a,171bの間に位置するコンベヤ部174bにも載置した状態となる。そこで、コンベヤ部174bと、レール本体173の後端側のコンベヤ部174aとを動作させ、図中矢印Bkで示すように、第一セグメント20aを後端側へ移動させる。これによって、図11(c)に示すように、第一セグメント20aは、成形型10の中空内から外に搬出されるので、成形品80に何ら影響を与えることなく、第一セグメント20aを取り外すことができる。
【0130】
次に、図13の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P03−3、回転工程)。これにより、図13で向かって右下側の位置にあった部位#3の第一セグメント20bは最上部に移動する。
【0131】
部位#3の第一セグメント20bが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図14に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第一セグメント20bの裏側に当接するまで上昇する。この状態で、セグメント結合解除動作を行うことで、第一セグメント20bと第二セグメント30a,30bとの結合状態を解除する(図8に示す工程P04−1、セグメント結合解除工程)。
【0132】
次に、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、成形品80および周囲の構造物に影響を与えることなく、図15に示すように、第一セグメント20bが円滑に取り外される(図8に示す工程P04−2、第一セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第一セグメント20bは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0133】
次に、図15の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P04−3、回転工程)。これにより、図15で向かって右下側の位置にあった部位#5の第一セグメント20cは最上部に移動する。
【0134】
部位#5の第一セグメント20cが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図16に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第一セグメント20cの裏側に当接するまで上昇する。この状態で、セグメント結合解除動作を行うことで、第一セグメント20cと第二セグメント30a,30bとの結合状態を解除する(図8に示す工程P05−1、セグメント結合解除工程)。
【0135】
次に、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、成形品80および周囲の構造物に影響を与えることなく、図17に示すように、第一セグメント20cが円滑に取り外される(図8に示す工程P05−2、第一セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第一セグメント20cは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0136】
[マンドレルの分解方法・第二セグメントの取外し]
次に、第二セグメント30a〜30cをサポートリング40a,40bから取り外す作業へ移る。この第一セグメント20a〜20cの固定方法および固定作業の順序について、図17に加えて図18〜図23を参照して説明する。なお、以下の説明においても、図4(b)に示されるセグメント20,30の部位番号を利用して、各第二セグメント30の固定に関する説明を行う。
【0137】
図18〜図23は、部位#6の第二セグメント30c、部位#2の第二セグメント30b、または部位#4の第二セグメント30bをサポートリング40a,40bから順次取り外すときのジャッキ部171aの上昇または下降の状態を示す模式図である。
【0138】
第一セグメント20a〜20cが全て取り外されれば、図17の矢印Rt2に示すように、リング回転駆動部16により、サポートリング40a,40bは約60°回転する(図8に示す工程P05−3、回転工程)。これは、第一セグメント20a〜20cを先に取り外すときには、各セグメント20a〜20cは1個置きの固定箇所に固定されているため、サポートリング40a,40bは、セグメント2個分の固定位置に相当する約120°の回転角度で回転させる必要があったが、この工程では、異なる種類の第二セグメント30cを取り外すため、回転角度は、セグメント1個分の約60°となる。
【0139】
この回転によって、図18に示すように、図17の向かって右下側の位置にあった部位#6の第二セグメント30cは、最上部の位置に移動する。
【0140】
部位#6の第二セグメント30cが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図18に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第二セグメント30cの裏側に当接するまで上昇する。ここで、第一セグメント20a〜20cはすでに取り外されているので、セグメント結合解除動作を行う必要がなく、それゆえ、すぐにセグメント固定解除動作を行う。そして、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、成形品80および周囲の構造物に影響を与えることなく、図19に示すように、第二セグメント30cが円滑に取り外される(図8に示す工程P06−1、第二セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第二セグメント30cは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0141】
次に、図19の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P06−2、回転工程)。これにより、図19で向かって右下側の位置にあった部位#2の第二セグメント30aは最上部に移動する。
【0142】
部位#2の第二セグメント30aが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図20に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第二セグメント30aの裏側に当接するまで上昇する。その後、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、図21に示すように、第二セグメント30aが円滑に取り外される(図8に示す工程P07−1、第二セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第二セグメント30aは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0143】
次に、図21の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図8に示す工程P07−2、回転工程)。これにより、図21で向かって右下側の位置にあった部位#4の第二セグメント30bは最上部に移動する。
【0144】
部位#4の第二セグメント30bが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図10(b)から図11(a)に示す動作を行い、図22に示すように、ジャッキ部171a,171bが、第二セグメント30bの裏側に当接するまで上昇する。その後、セグメント固定解除動作を行い、図11(a)に矢印Pdで示すように、ジャッキ部171a,171bを下降させるとともに、この下降に伴って四隅位置調整動作を行うことにより、図23に示すように、第二セグメント30bが円滑に取り外される(図8に示す工程P08、第二セグメント取外し工程)。その後、プレシジョンレール17は、図11(b)から図11(c)に示す動作を行うので、第二セグメント30bは、成形型10の中空内から外に搬出される。
【0145】
これによって、全てのセグメント20,30がサポートリング40a,40bから取り外され、マンドレル11の分解が完了する。その後、前述したとおり、レール本体173をサポートリング40a,40bから引き抜く(図8に示す工程P09、レール引抜工程)。
【0146】
このように本実施の形態に係るマンドレルの分解方法では、当該マンドレルの外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態にあり、このマンドレルにおいて、取外し対象である1個の前記セグメントを最上部に位置させるように、一対のサポートリングを回転させる回転工程と、最上部に位置した取外し対象のセグメントを、一対のサポートリングの間で、例えば傾斜させながら鉛直方向に沿って下降させて、マンドレルの内側に位置させてから、サポートリングの間より搬出する方法となっている。
【0147】
それゆえ、取外し対象のセグメントを最上部から鉛直下方へ向かって移動させると、取り外されたセグメントは、マンドレルの内側に移動するので、マンドレルの外周面に形成された複合材料構造物にほとんど影響を与えることなく、セグメントを取り外すことができる。しかも、マンドレルの内側に移動した当該セグメントは、一対のサポートリングの間に位置しているが、当該サポートリングの中空を通過するように水平方向に移動させれば、当該セグメントをサポートリングの間から容易に搬出することができる。
【0148】
また、取外し対象のセグメントは、サポートリングを回転させることで、常に最上部という一箇所に決められており、移動方向も鉛直方向のみで一定となっているため、複数のセグメントの全てを同様の工程で簡単に取り外すことができる。加えて、例えば、取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って単純に下降させずに、傾斜させながら下降させれば、密着した複合材料構造物とセグメントとを、複合材料構造物に変形等を生じさせずに効率的に分離させることができる。
【0149】
[変形例]
本発明に係るマンドレルの分解方法は、前述したような、第一セグメント20および第二セグメント30がそれぞれ3個ずつ組み合わせられた構成のマンドレル11のみに限定されるものではなく、他の構成のマンドレル11にも好適に用いることができる。つまり、組立対象のマンドレル11が、略矩形状を成す複数のセグメントから成り、各セグメントを鉛直方向に下降移動させてサポートリングから取り外す構成となっていれば、セグメント取外し工程および回転工程を実行できるので、本発明に係る分解方法を好適に用いることができる。
【0150】
また、図5に示されるプレシジョンレール17は、レール本体173の上に3台のコンベヤ部174a〜174cと3台のジャッキ部171a〜171cを備えているが、この構成に限定されるものではなく、レール本体173がサポートリング40a,40bの中空に挿入された状態で、各サポートリング40a,40bの間で、取外し対象のセグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、各位置を独立して鉛直方向に沿って変位させることが可能なセグメント支持部材を有している構成であればよい。したがって、図6(a)に示すようなロッド状のセグメント支持部材(支持ロッド部171a−1,171a−2,171b−1,171b−2)以外の構成のセグメント支持部材が用いられてもよいし、セグメントの四隅近傍の位置をそれぞれ支持するようにジャッキ部が4台設けられてもよいし、1台のジャッキ部が四隅近傍の各位置を全て支持可能な構成を有するものであってもよい。
【0151】
さらに、本発明で用いられるマンドレルの組立分解装置は、図5に示されるプレシジョンレール17に限定されるものではなく、他の構成の組立分解装置を用いることもできる。もちろん、図5に示されるプレシジョンレール17が特に好ましい組立分解装置であることは言うまでもない。
【0152】
なお、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、例えば、航空機の胴体部等、大型で略円筒形状の複合材料構造物を成形する分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0154】
10 成形型
11 マンドレル
16 リング回転駆動部
17 プレシジョンレール(組立分解装置)
20,20a〜20c 第一セグメント
21 第一セグメントの表面
30,30a〜30c 第二セグメント
31 第二セグメントの表面
40,40a,40b サポートリング
42 雌型ガイド部材(環状固定ガイド機構)
163 位置検出部
171a〜171c ジャッキ部
171a−1,171a−2 支持ロッド部(セグメント支持部材)
171b−1,171b−2 支持ロッド部(セグメント支持部材)
252,352 雄型ガイド部材(環状固定ガイド機構)
262 外周側雌型ガイド部材(セグメント結合ガイド機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を成す複数のセグメントを筒状に組み立てて成るマンドレルを、個々のセグメントに分解するマンドレルの分解方法であって、
前記マンドレルは、対向配置した一対のサポートリングの間で、前記セグメントが、互いに結合され、前記サポートリングのそれぞれに固定されることで、筒状を成しているとともに、その外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態にあり、
取外し対象である1個の前記セグメントを最上部に位置させるように、前記一対のサポートリングを前記マンドレルとともに回転させる回転工程と、
最上部に位置した前記取外し対象の前記セグメントを、前記一対のサポートリングから取り外すセグメント取外し工程と、を含み、
前記セグメント取外し工程では、前記一対のサポートリングの間で、前記取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って下降させて前記マンドレルの内側に位置させてから、前記一対のサポートリングの間より搬出する、マンドレルの分解方法。
【請求項2】
前記取外し対象のセグメントが、隣接するセグメントに結合しているときには、前記セグメント取外し工程の前に、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの結合状態を解除する、セグメント結合解除工程を含む、請求項1に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項3】
前記セグメント取外し工程では、略矩形状を成す当該セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持しつつ下方へ変位させることにより、前記取外し対象の前記セグメントを前記マンドレルの内側へ向かって下降させる、請求項1または2に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項4】
前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントを傾斜させるように、その一端部を他端部よりも先に下降させることによって、前記複合材料構造物の内面から引き剥がす、請求項3に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項5】
前記セグメント取外し工程では、前記サポートリングおよび前記取外し対象の前記セグメントの間に設けた環状固定ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内する、請求項1から4のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項6】
前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの間に設けたセグメント結合ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内する、請求項5に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項7】
前記回転工程では、前記サポートリングの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で当該サポートリングを下方から支持しつつ回転力を付与し、かつ、前記サポートリングの上部にて当該サポートリングの前記軸芯方向の移動を制約するように支持する、請求項1から5のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項8】
前記回転工程では、前記取外し対象の前記セグメントが前記サポートリングの最上部に位置していると判断すべく、前記サポートリングに設けられた被検出部が当該サポートリングの回転により所定の検出位置に到達したことを、位置検出部により検出する、請求項1から7のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項9】
前記複数のセグメントは、互いに形状の異なる第一セグメントおよび第二セグメントから構成され、かつ、前記第二セグメントにおける、前記マンドレルの外周面となる表面の面積は、前記第一セグメントの前記表面の面積よりも広くなっており、
前記セグメント取外し工程には、前記第一セグメントを取り外す第一セグメント取外し工程と、前記第二セグメントを取り外す第二セグメント取外し工程とが含まれ、
前記第一セグメント取外し工程は、前記第二セグメント取外し工程より先に行われる、請求項1から8のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法に用いられ、
前記一対のサポートリングの中空に挿入されるレール本体と、
当該レール本体上に設けられ、当該レール本体の後端から先端に向かって前記セグメントを水平移動させるコンベヤ部と、
前記レール本体上に設けられ、前記コンベヤ部から移動された前記セグメントを、鉛直方向に沿って上昇移動させるジャッキ部と、を備え、
前記ジャッキ部は、前記レール本体が前記サポートリングの中空に挿入された状態で、前記サポートリングそれぞれの間で、略矩形状を成す前記セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、当該各位置を独立して鉛直方向に沿って変位可能とするセグメント支持部材を有している、マンドレルの分解装置。
【請求項1】
軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を成す複数のセグメントを筒状に組み立てて成るマンドレルを、個々のセグメントに分解するマンドレルの分解方法であって、
前記マンドレルは、対向配置した一対のサポートリングの間で、前記セグメントが、互いに結合され、前記サポートリングのそれぞれに固定されることで、筒状を成しているとともに、その外周面に密着して複合材料構造物が形成されている状態にあり、
取外し対象である1個の前記セグメントを最上部に位置させるように、前記一対のサポートリングを前記マンドレルとともに回転させる回転工程と、
最上部に位置した前記取外し対象の前記セグメントを、前記一対のサポートリングから取り外すセグメント取外し工程と、を含み、
前記セグメント取外し工程では、前記一対のサポートリングの間で、前記取外し対象のセグメントを、鉛直方向に沿って下降させて前記マンドレルの内側に位置させてから、前記一対のサポートリングの間より搬出する、マンドレルの分解方法。
【請求項2】
前記取外し対象のセグメントが、隣接するセグメントに結合しているときには、前記セグメント取外し工程の前に、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの結合状態を解除する、セグメント結合解除工程を含む、請求項1に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項3】
前記セグメント取外し工程では、略矩形状を成す当該セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持しつつ下方へ変位させることにより、前記取外し対象の前記セグメントを前記マンドレルの内側へ向かって下降させる、請求項1または2に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項4】
前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントを傾斜させるように、その一端部を他端部よりも先に下降させることによって、前記複合材料構造物の内面から引き剥がす、請求項3に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項5】
前記セグメント取外し工程では、前記サポートリングおよび前記取外し対象の前記セグメントの間に設けた環状固定ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内する、請求項1から4のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項6】
前記セグメント取外し工程では、前記取外し対象の前記セグメントと隣接する前記セグメントとの間に設けたセグメント結合ガイド機構により、下降中の当該セグメントを鉛直方向に沿うように案内する、請求項5に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項7】
前記回転工程では、前記サポートリングの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で当該サポートリングを下方から支持しつつ回転力を付与し、かつ、前記サポートリングの上部にて当該サポートリングの前記軸芯方向の移動を制約するように支持する、請求項1から5のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項8】
前記回転工程では、前記取外し対象の前記セグメントが前記サポートリングの最上部に位置していると判断すべく、前記サポートリングに設けられた被検出部が当該サポートリングの回転により所定の検出位置に到達したことを、位置検出部により検出する、請求項1から7のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項9】
前記複数のセグメントは、互いに形状の異なる第一セグメントおよび第二セグメントから構成され、かつ、前記第二セグメントにおける、前記マンドレルの外周面となる表面の面積は、前記第一セグメントの前記表面の面積よりも広くなっており、
前記セグメント取外し工程には、前記第一セグメントを取り外す第一セグメント取外し工程と、前記第二セグメントを取り外す第二セグメント取外し工程とが含まれ、
前記第一セグメント取外し工程は、前記第二セグメント取外し工程より先に行われる、請求項1から8のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のマンドレルの分解方法に用いられ、
前記一対のサポートリングの中空に挿入されるレール本体と、
当該レール本体上に設けられ、当該レール本体の後端から先端に向かって前記セグメントを水平移動させるコンベヤ部と、
前記レール本体上に設けられ、前記コンベヤ部から移動された前記セグメントを、鉛直方向に沿って上昇移動させるジャッキ部と、を備え、
前記ジャッキ部は、前記レール本体が前記サポートリングの中空に挿入された状態で、前記サポートリングそれぞれの間で、略矩形状を成す前記セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、当該各位置を独立して鉛直方向に沿って変位可能とするセグメント支持部材を有している、マンドレルの分解装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−131561(P2011−131561A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295577(P2009−295577)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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