説明

複合材料構造物製造用マンドレルの組立方法およびマンドレルの組立装置

【課題】 例えば航空機の胴体部等の製造に用いられる、略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、高い位置精度で容易に組み立てることができる技術を提供する。
【解決手段】 セグメント固定工程では、対向配置した一対のサポートリングに沿って複数設定されている固定箇所のうち、1つの特定固定箇所に、固定対象である1個の前記セグメントを固定する。回転工程では、セグメント固定工程の前に、前記特定固定箇所を、サポートリングの最上部に位置させるように、前記サポートリングを回転させる。ここで、前記セグメント固定工程では、固定対象のセグメントを、前記サポートリングそれぞれの間に配置し、鉛直方向に沿って特定固定箇所に対応する高さまで上昇させてから、当該サポートリングに固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂複合材料を用いた複合材料構造物の製造に用いられ、複数のセグメントを筒状に保持して成るマンドレルの組立方法およびこれに用いられるマンドレルの組立装置に関し、特に、航空機の胴体部等として用いられる巨大な複合材料構造物の製造に好適に用いられるマンドレルの組立方法およびマンドレルの組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまで金属材料が用いられてきた分野において、繊維強化樹脂複合材料(以下、適宜「複合材料」と略す。)が広く用いられるようになっている。この複合材料の中でも、強化繊維として炭素繊維を用い、これにエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含浸させて成形した炭素繊維強化型のものは、金属材料よりも軽量であることに加え、より高強度であることから、スポーツ用品、産業機械、航空宇宙等の分野に広く採用されている。
【0003】
これら分野のうち航空宇宙の分野では、例えば、航空機の翼や胴体等の構造物において、軽量な金属の骨格部材であるスティフナ(stiffener)に複合材料からなるスキンを一体化するスティフンドパネル(stiffened panel)が採用されている。代表的なスティフナとしては、ストリンガが挙げられる。ストリンガは構造物の形状に組み合わせられた上で各種治具により支持され、これにプリプレグが複数枚積層され、オートクレーブ(圧力釜)により加圧、加熱される。これによりプレプリグが硬化してスキンとなるとともに、当該スキンにスティフナが密着されて一体化されることで、スティフンドパネルが形成される。
【0004】
スティフンドパネルからなる構造物の一例として、図22に示すような、ワンピースバレル(OPB)として形成される航空機の胴体部101等が挙げられる。胴体部101は、スキン102と当該スキン102の内面側に密着されている複数のストリンガ103とから構成され、航空機として組み立てられたときに扉となる開口部104および窓となる開口部105が形成されている。
【0005】
このような航空機の構造体の製造に関する技術としては、特許文献1に開示されている、航空機胴体の複合バレルセクションが知られている。この文献では、バレルセクションは「軸周りに360°延在する密封されたシェル構造」として定義され、このバレルセクションを製造するために、複数のツール断片(例えば6個)をツール固定具で円筒状に配置して支持することにより構成される成形型が用いられている。
【0006】
特許文献1では、複合バレルセクションの製造システムの一例として、複数の製造ステーションが直列配置され、各製造ステーションに、前記成形型を含むバレルセクションツールアセンブリ(以下、ツールアセンブリと略す。)が移動する構成が開示されている。
【0007】
具体的には、まず、スティフナ装填ステーションにおいて、各ツール断片に形成された複数のスティフナ溝に複数のスティフナを装填し、その後、当該ツール断片を前記ツール固定具に装填して円筒形に支持され、単一の成形型(同文献ではツールアセンブリ)を構成する。このとき、ツール固定具は、複数のローラによってツール支持構造に回転可能に支持され、ツール固定具が長手軸周りを回転することを可能にしている。
【0008】
次に、円筒形に支持されて構成された成形型は、ツール支持構造により外板積層ステーションに運搬され、ここで、前記長手軸周りに前記成形型が回転することで、繊維配置機械によって繊維トウ(熱硬化樹脂材料にあらかじめ含浸した連続的なフィラメントの撚られていない束)が積層され、前記成形型の外周に積層体(スキンに相当)が形成される。
【0009】
次に、積層体が形成された前記成形型(同文献ではツールアセンブリ)は、ツール支持構造によりバキュームステーションに運搬され、ここで、積層体の外周に圧力パッドが据え付けられ、バキュームバックが積層体の周囲に据え付けられ、バキュームバック内を排気する。その後、バキュームバックが付いた成形型(ツールアセンブリ)は、ガントリービームにより硬化ステーションに運搬され、オートクレーブ処理が行われることにより、積層体およびスティフナが硬化する。これにより、前記成形型の外周に、前記積層体およびスティフナが硬化してスティフンドパネルが形成される。
【0010】
スティフンドパネルが形成された状態の成形型(ツールアセンブリ)は、ガントリービームにより検査ステーションに運搬され、硬化後の積層体(スキン)に空隙または剥離が無いか検査され、次に、ガントリービームによりトリミングステーションに運搬され、積層体(スキン)にトリミングおよび穴開けが行われる。その後、ツール断片がスティフンドパネルから除去され、スティフナ装填ステーションに戻されるとともに、除去後のスティフンドパネル(ツールアセンブリ)は、ツール支持構造により最終アセンブリステーションに運搬され、複数のフレームセクションが取付けられ、複合バレルセクションが完成する。
【0011】
このように、OPBの製造においては、成形型として略円筒形のマンドレルを備え、このマンドレルは、巨大な成形型を用いて、成形品(複合材料構造物)であるOPBの中空を形成するために、外周面に当該成形品が成形されるように構成されている。それゆえ、このマンドレルにおいては、単一の巨大な筒状部材ではなく、複数のセグメント、例えば6つのセグメントに分割される構造が採用される。この構造であれば、単一の巨大な成形型を用いなくてもよく、必要に応じて、各セグメントを組み立てればよいため、OPB等の大きな成形品を成形するときに有用となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−532384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、前記円筒形のマンドレルは、成形品であるOPBが、航空機の胴体部のように非常に大きなものであることから、各セグメントを円筒形に組み立てるときに、その作業に困難性が伴うとともに、作業そのものも非常に煩雑となる。
【0014】
例えば、航空機の胴体部であれば、その寸法は、直径が約4〜6mで円筒の長さが約5〜15mという巨大なものとなる。胴体部を構成するスティフンドパネル(スキンおよびスティフナ)は、当該胴体部全体から見れば、非常に厚みの小さいものであることから、これを製造するマンドレルの大きさは、当該胴体部の外形寸法とほぼ同じ大きさとなる。しかも、特許文献1にも記載されている通り、マンドレルのセグメント(同文献ではツール断片)は、「鉄、インバール、アルミニウム」等の金属材料を主体として製造されることが多く、大きくかつ重い断片を単一のマンドレルに組み立てることは容易な作業ではない。
【0015】
さらに、複数のセグメントを円筒形の単一のマンドレルに組み立てたときに、円筒の外周に段差が生じれば、その外周に形成されるスティフンドパネルにも段差が生じてしまう。それゆえ、マンドレルを組み立てるときには、各セグメントを単に組み合わせて概ね円筒形になればよいのではなく、各セグメントによって円滑な外周面が形成されるような位置精度を確保する必要がある。したがって、巨大な金属製の断片を、高い位置精度で円筒形に組み立てることは、非常に困難性を伴い、かつ、煩雑なものとなる。
【0016】
一般に大型構造物の組立には、天井クレーン等を用いて、当該構造物の大きな構成部材を吊り上げてから水平移動させ、所定の位置に配置させるという過程を経ることになる。しかしながら、上記のように、複数のセグメントを単一の円筒形に高い精度で組み立てる場合には、天井クレーンを用いると、所定の位置にセグメントを配置させるために煩雑な操作が必要となるので、効率的でない上に、高い位置精度を実現することもできない。
【0017】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、例えば航空機の胴体部等の複合材料構造物の製造に用いられる成形型の主たる構成であり、略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、高い位置精度で容易に組み立てることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るマンドレルの組立方法は、前記の課題を解決するために、軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を成す複数のセグメントを互いに結合して筒状のマンドレルを組み立てるマンドレルの組立方法であって、対向配置した一対のサポートリングのそれぞれに、周方向に沿って複数設定されている固定箇所の1つである特定固定箇所に、固定対象である1個の前記セグメントを固定するセグメント固定工程と、前記セグメント固定工程の前に、前記特定固定箇所を、前記サポートリングの最上部に位置させるように、前記一対のサポートリングを回転させる回転工程と、を含み、前記セグメント固定工程では、前記固定対象の前記セグメントを、前記一対のサポートリングの間に配置し、鉛直方向に沿って前記特定固定箇所に対応する高さまで上昇させてから、前記一対のサポートリングに固定する構成を有している。
【0019】
前記構成によれば、固定対象のセグメントをサポートリングに固定する際、その固定箇所はサポートリングの最上部に位置しており、当該固定対象のセグメントは、一対のサポートリングの間に位置する状態から、鉛直上方へ向かって移動する。このように、固定対象のセグメントが固定される固定箇所の位置が、サポートリングの最上部という一箇所に決められており、移動方向も鉛直方向のみで一定となっているため、固定対象のセグメントの姿勢を安定的に一定に保って移動することができ、位置決め精度の向上を図ることができる。
【0020】
前記組立方法においては、前記特定固定箇所に隣接する2つの前記固定箇所の少なくとも一方に、すでに前記セグメントが固定されているときには、前記セグメント固定工程の後に、前記固定対象の前記セグメントを、隣接する前記セグメントに結合するセグメント結合工程を含む構成であると好ましい。
【0021】
前記構成によれば、セグメント固定工程で、固定対象のセグメントをサポートリングに対して固定するとともに、セグメント結合工程でセグメント同士を結合するので、セグメントを順次サポートリングに固定しながら各セグメントを結合して徐々にマンドレルを組み立てていくことになる。それゆえ、マンドレルの組み立てを効率的に行うことができる。
【0022】
前記組立方法においては、前記セグメント固定工程では、略矩形状を成す当該セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持しつつ上方へ変位させることにより、前記固定対象の前記セグメントを前記特定固定箇所へ向かって上昇させる構成であると好ましい。
【0023】
前記構成によれば、四隅近傍の位置を独立して個別に変位させながら固定対象のセグメントをサポートリングに固定するので、固定対象のセグメントの姿勢制御および位置制御を高い精度で行うことができる。
【0024】
前記組立方法においては、前記セグメント固定工程では、前記サポートリングおよび前記固定対象の前記セグメントの間に設けた環状固定ガイド機構により、上昇中の当該セグメントを前記特定固定箇所に案内し、当該特定固定箇所に到達した前記セグメントを、前記サポートリングに固定する構成であると好ましい。
【0025】
前記構成によれば、サポートリングへ固定する前に固定対象のセグメントの上昇移動を案内するため、固定位置(特定固定箇所)へ正確に位置決めすることができる。
【0026】
前記組立方法においては、前記回転工程では、前記サポートリングの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で当該サポートリングを下方から支持しつつ回転力を付与し、かつ、前記サポートリングの上部にて当該サポートリングの前記軸芯方向の移動を制約するように支持する構成であると好ましい。
【0027】
前記構成によれば、サポートリングの上部と下部とを回転可能に支持しているため、サポートリングの転倒を防止しつつこれを回転させることができる。
【0028】
前記組立方法においては、前記回転工程では、前記特定固定箇所が前記サポートリングの最上部に位置していると判断すべく、前記サポートリングに設けられた被検出部が当該サポートリングの回転により所定の検出位置に到達したことを、位置検出部により検出する構成であると好ましい。
【0029】
前記構成によれば、サポートリングの回転に伴って、特定固定箇所が最上部にあることを検出できるので、回転するサポートリングの正確な位置決めが可能となる。
【0030】
前記組立方法においては、最初の前記セグメント固定工程の前に行われ、前記一対のサポートリングを、前記セグメントが固定可能な状態に対向配置するサポートリング設置工程を含み、当該サポートリング設置工程では、最初に固定される前記セグメントに対応する前記特定固定箇所を、前記サポートリングの最上部に位置させるように、前記サポートリングを設置する構成であると好ましい。
【0031】
前記構成によれば、サポートリングを設置するときに、最上部に特定固定箇所を位置させた状態でサポートリングを設置するので、マンドレルの組み立てを効率的に行うことができる。
【0032】
前記組立方法においては、複数のセグメントの具体的構成は特に限定されないが、前記複数のセグメントは、互いに形状の異なる第一セグメントおよび第二セグメントから構成され、前記一対のサポートリングに設定される前記複数の固定箇所は、前記第一セグメントが固定される第一固定箇所および前記第二セグメントが固定される第二固定箇所から構成されているとともに、当該第一固定箇所および当該第二固定箇所は、前記一対のサポートリングのそれぞれに、周方向に沿って交互に設定され、前記セグメント固定工程には、前記第一固定箇所に前記第一セグメントを固定する第一セグメント固定工程と、前記第二固定箇所に前記第二セグメントを固定する第二セグメント固定工程とが含まれる構成を、好ましい一例として挙げることができる。
【0033】
前記構成によれば、複数のセグメントが2種類のセグメントのグループに分類され、それぞれの種類のセグメントの固定箇所が予め特定されているので、各種セグメントの形状等に応じて、複数のセグメントの固定順序を容易に設定することができる。
【0034】
前記第一セグメントおよび前記第二セグメントの具体的構成は特に限定されないが、例えば、略矩形状の前記第二セグメントにおける、前記マンドレルの外周面となる表面の面積は、前記第一セグメントの前記表面の面積よりも広くなっている構成が挙げられ、この構成であれば、前記組立方法においては、前記第二セグメント固定工程により、前記第二セグメントの全てが前記サポートリングの前記周方向の1箇所置きに固定されてから、前記第一セグメント固定工程が行われ、当該第一セグメント固定工程では、前記一対のサポートリングの間に配置された前記第一セグメントを、前記第一固定箇所に対応する高さで、2個の前記第二セグメントの間となる位置まで上昇させ、前記一対のサポートリングに固定するとともに隣接する前記第二セグメントに結合する構成であるとより好ましい。
【0035】
前記構成によれば、先に、表面の面積が広い第二セグメントをサポートリングに全て固定してから、表面の面積が狭い第一セグメントをサポートリングに順次固定するので、大面積のセグメント(第二セグメント)の間に、姿勢制御および位置制御が行いやすい小面積のセグメント(第一セグメント)を埋め込むようにして、マンドレルを組み立てることになる。これにより、個々のセグメントの位置決めが容易になるとともに、位置決めの精度を良好なものとすることができるので、マンドレルを容易に組み立てることができることに加え、組み立てられたマンドレルの外周面を段差のできるだけ小さな円滑な周面とすることができる。
【0036】
本発明には、前記マンドレルの組立方法に加えて、当該組立方法に好適に用いることができる組立装置も含まれる。具体的には、本発明に係るマンドレルの組立装置は、前記構成のマンドレルの組立方法に用いられ、前記一対のサポートリングの中空に挿入されるレール本体と、当該レール本体上に設けられ、当該レール本体の後端から先端に向かって前記セグメントを水平移動させるコンベヤ部と、前記レール本体上に設けられ、前記コンベヤ部から移動された前記セグメントを、鉛直方向に沿って上昇移動させるジャッキ部と、を備え、前記ジャッキ部は、前記レール本体が前記サポートリングの中空に挿入された状態で、前記サポートリングそれぞれの間で、略矩形状を成す前記セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、当該各位置を独立して鉛直方向に沿って変位可能とするセグメント支持部材を有している構成を挙げることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明では、略円筒形で、複数のセグメントに分割可能な構成を有するマンドレルを、高い位置精度で容易に組み立てることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るマンドレルを含む成形型の全体構成の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示すマンドレルを形成する第一セグメントの構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す第一セグメントを端部から見た平面図である。
【図3】(a)は、図1に示すマンドレルを形成する第二セグメントの構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す第二セグメントを端部から見た平面図である。
【図4】(a)は、図1に示すマンドレルを両端で支持するサポートリングの構成の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)に示すサポートリングで保持されるセグメントの位置関係を示すマンドレルの模式的な端面図である。
【図5】図1に示すマンドレルを組み立てる組立装置の一例であるプレシジョンレールの全体構成を示す斜視図である。
【図6】(a)は、図5に示すプレシジョンレールにセグメントを載置した状態を模式的に示す概略平面図であり、(b)は、図5に示すプレシジョンレールに含まれるリング回転駆動部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示すマンドレルの組立方法の全体構成を説明する工程図である。
【図8】図4に示す部位#4の第二セグメントをサポートリングに固定するために、ジャッキ部に当該第二セグメントを載置した状態を示す模式図である。
【図9】(a),(b)は、図8に示す第二セグメントを持ち上げてサポートリングに固定するときのプレシジョンレールの動作を示す当該プレシジョンレールの側面図である。
【図10】(a),(b)は、図9(b)に続くプレシジョンレールの動作を示す当該プレシジョンレールの側面図である。
【図11】図4に示す部位#4の第二セグメントをサポートリングに固定した状態を示す模式図である。
【図12】図4に示す部位#6の第二セグメントをサポートリングに固定するために、ジャッキ部に当該第二セグメントを載置した状態を示す模式図である。
【図13】図4に示す部位#6の第二セグメントをサポートリングに固定した状態を示す模式図である。
【図14】図4に示す部位#2の第二セグメントをサポートリングに固定するために、ジャッキ部に当該第二セグメントを載置した状態を示す模式図である。
【図15】図4に示す部位#6の第二セグメントをサポートリングに固定した状態を示す模式図である。
【図16】図4に示す部位#3の第一セグメントをサポートリングに固定するために、ジャッキ部に当該第一セグメントを載置した状態を示す模式図である。
【図17】図4に示す部位#3の第一セグメントをサポートリングに固定し、部位#2の第二セグメントおよび部位#4の第二セグメントに結合している作業状態を示す模式図である。
【図18】図4に示す部位#5の第一セグメントをサポートリングに固定するために、ジャッキ部に当該第一セグメントを載置した状態を示す模式図である。
【図19】図4に示す部位#5の第一セグメントをサポートリングに固定し、部位#4の第二セグメントおよび部位#6の第二セグメントに結合している作業状態を示す模式図である。
【図20】図4に示す部位#1の第一セグメントをサポートリングに固定するために、ジャッキ部に当該第一セグメントを載置した状態を示す模式図である。
【図21】図4に示す部位#1の第一セグメントをサポートリングに固定し、部位#6の第二セグメントおよび部位#2の第二セグメントに結合している作業状態を示す模式図である。
【図22】複合材料構造物の一例である、ワンピースバレル(OPB)として形成される航空機の胴体部の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0040】
[成形型の全体構成]]
まず、本実施の形態に係る組立方法で組み立てられる複合材料構造物製造用成形型(以下、成形型と略す。)の全体構成について図1を参照して説明する。図1は本実施の形態に係るマンドレルを含む成形型の全体構成の一例を示す斜視図である。
【0041】
図1に示すように、本実施の形態に係る成形型10は、マンドレル11と、その両端に位置する一対のサポートリング40a,40bとから少なくとも構成されている。マンドレル11は、6個のセグメント20a,30a,20b,30b,20c,および30cが、互いにその側面で結合されることにより形成されており、このマンドレル11の両端はサポートリング40a,40bによりそれぞれ支持されている。これによって6個のセグメント20a〜20cおよび30a〜30cが円筒状に保持されることになる。なお、以下の説明では、セグメント20a〜20cおよび30a〜30cを包括して説明するときには、単に、「セグメント20,30」と略す。
【0042】
ここで、後述するように、セグメント20,30の表面には、ストリンガを装着するための溝状凹部が形成されているが、図1では、全体構成を明確に示す便宜上、溝状凹部の記載を省略している。また、セグメント20,30およびサポートリング40a,40bの具体的な構成について、後述する。
【0043】
サポートリング40a,40bは、それぞれクレードル12a,12bによって直立した状態で回転可能に支持されている。サポートリング40aを支持するクレードル12aは、本実施の形態では、一対の腕部121,121、クレードル本体122および複数の支持ローラ123(図1では4個)を備えている。一対の腕部121,121は、直立した状態のサポートリング40aの外周を挟持するよう立設して設けられる。クレードル本体122は、サポートリング40aの下方に位置し、両端で腕部121,121を支持している。の支持ローラ123は、外力によりサポートリング40a,40bが回転するように、クレードル本体122およびサポートリング40a,40bの間に介在されている。なお、サポートリング40bを支持するクレードル12bも同一の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0044】
台車13は、クレードル12a,12b、サポートリング40a,40bおよびマンドレル11を搬送するものであり、本実施の形態では、矩形平板状で、図1には示さないが、台車13の下面には、複数の車輪が設けられており、上面に成形型10を載置した状態で搬送することが可能となっている。本実施の形態では、台車13は、その上面がマンドレル11の寸法(円筒の軸方向の長さおよび円筒の直径)に対応した広がり面積を有している。なお、クレードル12a,12bは、図1に示す状態では、台車13とは接しておらず、互いに対向するサポートリング40aおよびサポートリング40bの高さを水平に調整できる状態で、床面に対して自立している。
【0045】
なお、クレードル12a,12b、台車13の具体的な構成は、本実施の形態で開示される構成に限定されず、それぞれの作用、機能等を発揮できるものであれば、さまざまな構成を採用することができる。
【0046】
[セグメントの構成]
次に、マンドレル11を構成する6個のセグメント20,30について、図2(a),(b)および図3(a),(b)を参照して説明する。図2(a)は、図1に示すマンドレル11を形成する第一セグメントの構成を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示す第一セグメントを端部から見た平面図である。図3(a)は、図1に示すマンドレル11を形成する第二セグメントの構成を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示す第二セグメントを端部から見た平面図である。
【0047】
本実施の形態では、マンドレル11を構成する6個のセグメント20a〜20cおよび30a〜30cは、その形状から、図2(a),(b)に示す第一セグメント20a〜20cと、図3(a),(b)に示す第二セグメント30a〜30cとの2種類に分類される。なお、下記の説明のうち、図2(a),(b)および図3(a),(b)を参照する説明では、便宜上、同一形状の第一セグメント20a〜20cは「第一セグメント20」、第二セグメント30a〜30cは「第二セグメント30」と、一般化してまとめて説明する。
【0048】
マンドレル11を構成する第一セグメント20および第二セグメント30は、いずれも軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を有している。このうち、第一セグメント20は、図2(a)に示すように、全体が矩形平板状で、その表面21が凸状の曲面(凸面状あるいは凸曲面)となっており、この表面21を上側として水平に配置させたときに、その両側面22,22が、水平方向に面しているか、または、水平方向に対して上側に傾斜する方向に面している形状となっている。本実施の形態では、例えば、図2(b)に示すように、側面22は、その法線方向が、水平方向の上側に傾斜した方向に向かっている。
【0049】
後述するように、本実施の形態では、マンドレル11を円筒形に組み立てるときに、先に第二セグメント30がサポートリング40a,40bに固定され、その後に、各第二セグメント30,30の間に、第一セグメント20が下から上に向かって嵌め込まれて固定される。したがって、第一セグメント20の両側面22,22は、上記嵌め込みを妨げないように、その法線方向が水平方向(図2(b)の矢印Ar1方向)に向かうように(水平方向を向くように)形成されていればよい。言い換えれば、第一セグメント20を水平に配置させたときには、側面22は、垂直方向(図2(b)の一点鎖線に沿った方向)に沿った位置となっている
ここで、マンドレル11は、当該マンドレル11を含む成形型10を用いてワンピースバレル(OPB)を成形した後、当該OPBを成形型10から脱型することになる。この脱型は、マンドレル11を解体することにより行われる。マンドレル11の解体は、マンドレル11の組み立てとは逆の順序で行われる。したがって、第一セグメント20は、第二セグメント30,30の間から引き抜かれることになる。
【0050】
そこで、第一セグメント20の両側面22,22は、図2(b)に示すように、側面22の法線方向が上側(表面21側)に傾斜(図2(b)の矢印Ar2方向)するように形成されていることが好ましい。法線方向が上側に傾斜しているということは、側面22が上側に向くように傾斜しているということができる。言い換えれば、側面22は、当該側面22の裏側の縁が表側の縁よりも外側に広がるように傾斜しているということができる。このような側面22の傾斜は、第一セグメント20の両側面22,22に「抜き勾配」を形成することになるので、第一セグメント20を第二セグメント30,30の間から引き抜きやすくなることから、マンドレル11を解体しやすくすることができる。
【0051】
なお、側面22の傾斜角(抜き勾配角度)は特に限定されず、マンドレル11および成形型10の具体的な形状または寸法等に応じて好適な角度が適宜設定される。例えば、本実施の形態では、8〜12°の範囲、好ましくは約10°の角度であればよい。また、対向する両側面22,22の双方が同じ角度で傾斜してもよいし、異なる角度で傾斜してもよい。
【0052】
第一セグメント20の端面23には、図2(a),(b)に示すように、この端面23をサポートリング40a,40bの固定面(後述)に固定させる雄型固定部材251と、第一セグメント20を固定するときの固定部材同士の位置決めに用いられる雄型ガイド部材252とが設けられている。雄型固定部材251は、サポートリング40a,40bの固定面に設けられている雌型固定部材および固定状態保持部材(後述)とともに、環状固定保持機構を構成している。また、雄型ガイド部材252は、サポートリング40a,40bの固定面に設けられている雌型ガイド部材(後述)とともに、環状固定ガイド機構を構成している。
【0053】
雄型固定部材251は、端面23に2個設けられ、雄型固定部材251,251の間の中間位置に雄型ガイド部材252が位置している。雄型ガイド部材252の位置は、図2(b)に示すように、端面23を図中縦方向(第一セグメント20が水平配置されていれば鉛直方向)に分割する中央線(図中、二点鎖線)上の位置であるので、雄型固定部材251,251は、中央線から等距離となる位置に設けられていることになる。また、雄型ガイド部材252は、雄型固定部材251,251よりも表面21寄りに位置している。これは、第一セグメント20を、表面21を上側として持ち上げるように移動させてサポートリング40a,40bに固定させるので、環状固定ガイド機構を構成する雄型ガイド部材252と雌型ガイド部材とを先に接触させることにより、環状固定保持機構を構成する固定部材同士の位置決めを行うためである。
【0054】
第一セグメント20の両側面22,22には、図2(a)に示すように、複数の雄型結合部材261および外周側雌型ガイド部材262、並びに、図2(a)には図示されない、結合用くさび部材および内周側雄型ガイド部材が設けられている(図2(a)では5個)。雄型結合部材261は、第一セグメント20の裏側に位置し、外周側雌型ガイド部材262は、雄型結合部材261から見て表面21寄りに隣接して位置している。また、結合用くさび部材は、雄型結合部材261から見て側面22の内側に設けられており、後述するように、第二セグメント30と結合するときに、側面22の外側に突出するように構成されている。また、内周側雄型ガイド部材は、図2(a)では図示されないが、雄型結合部材261の下方に一体化して設けられている。
【0055】
雄型結合部材261および結合用くさび部材は、第二セグメント30の側面に設けられている雌型結合部材(後述)とともにセグメント結合保持機構を構成している。また、外周側雌型ガイド部材262は、第二セグメント30の側面に設けられている外周側雄型ガイド部材(後述)とともにセグメント結合ガイド機構を構成している。同様に、内周側雄型ガイド部材は、第二セグメント30の側面に設けられている内周側雌型ガイド部材(後述)とともにセグメント結合ガイド機構を構成している。なお、図2(b)では、側面22,22の位置関係を説明する便宜上、雄型結合部材261、外周側雌型ガイド部材262、内周側雄型ガイド部材、および結合用くさび部材は図示していない。
【0056】
雄型結合部材261および外周側雌型ガイド部材262の位置関係は、図中縦方向(第一セグメント20が水平配置されていれば鉛直方向)において、外周側雌型ガイド部材262が上側(表面21側)に雄型結合部材261が下側(裏面側)に並んで配置される関係となっている。これは、第一セグメント20を持ち上げるように移動させて、第二セグメント30,30の間に挿入してから互いに結合させるので、前記環状固定保持機構と同様に、セグメント結合ガイド機構によってセグメント結合保持機構の位置決めをするためである。
【0057】
一方、内周側雄型ガイド部材は後述するように雄型結合部材261の図中下方(裏面側)となる位置に設けられている。これは、セグメント20,30で形成される略円筒形のマンドレル11においては、外周面が滑らかな円周面となっている必要があることから、各セグメント20,30の側面同士を結合するときの位置決めが重要となるためである。すなわち、各セグメント20,30の側面同士を結合するとき、外周側雌型ガイド部材262および外周側雄型ガイド部材により、外周側の位置決めが行われ、内周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材により、内周側の位置決めが行われることで、マンドレル11の外周面に段差を小さくし、滑らかな円周面を形成することができる。
【0058】
なお、環状固定保持機構および環状固定ガイド機構、並びに、セグメント結合保持機構およびセグメント結合ガイド機構の具体的な構成および固定方法、結合方法またはガイド方法については、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。また、本実施の形態では、後述するように、側面22に設けられるクランプ部材がセグメント結合保持機構に含まれるが、このクランプ部材についても、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。また、図示されないが、第一セグメント20の表面21はストリンガが装着可能に構成されている。
【0059】
第二セグメント30は、図3(a)に示すように、全体が矩形平板状で、その表面31が凸状の曲面(凸面状あるいは凸曲面)となっており、この表面31を上側として水平に配置させたときに、その両側面32,32が水平方向に対して下側に傾斜する方向に面している形状を有している。つまり、第二セグメント30の裏側から表面31に向かって、その幅が広がるように、両側面32,32が傾斜している。
【0060】
後述するように、本実施の形態では、マンドレル11を円筒形に組み立てるときには、先にサポートリング40a,40bに第二セグメント30が固定され、その後に、各第二セグメント30,30の間に第一セグメント20が嵌め込まれる。したがって、先に固定された第二セグメント30は、第一セグメント20の嵌め込みを妨げないように、その裏側の面積が小さくなっていることが好ましい。それゆえ、第二セグメント30の両側面32,32は、その法線方向が下側(図3(b)の矢印Ar3方向)に向かうように、言い換えれば、側面32が下側に向かって傾斜するように形成されていると好ましい。
【0061】
また、第二セグメント30の側面32,32には、表面31につながる縁部がそれぞれの側面32,32よりも外側に突出した庇部37,37が設けられている。したがって、図3(a),(b)に示すように、第二セグメント30を表面31から見れば、下側を向いている側面32は、庇部37によって完全に隠れた状態となる。
【0062】
このように第二セグメント30は両側面32に庇部37が設けられているので、当該第二セグメント30の表面31(マンドレル11を構成したときに当該マンドレル11の外周面となる面)は、第一セグメント20の表面21よりも広い面積となっている。それゆえ、後述するように、先に、表面31の面積が広い第二セグメント30をサポートリング40a,40bに全て固定してから、表面21の面積が狭い第一セグメント20をサポートリング40a,40bに順次固定することで、大面積のセグメント(第二セグメント30)の間に、姿勢制御および位置制御が行いやすい小面積のセグメント(第一セグメント20)を埋め込むようにして、マンドレル11を組み立てることになる。これにより、個々のセグメント20,30の位置決めが容易になるとともに、位置決めの精度を良好なものとすることができるので、マンドレル11を容易に組み立てることができることに加え、組み立てられたマンドレル11の外周面を段差のできるだけ小さな円滑な周面とすることができる。
【0063】
また、第二セグメント30においては、庇部37の下方となる側面32に、セグメント結合保持機構を構成する雌型結合部材(後述)およびセグメント結合ガイド機構を構成する前記外周側雄型ガイド部材および前記内周側雌型ガイド部材が設けられている。なお、図3(b)では、側面32,32の位置関係を説明する便宜上、雌型結合部材、外周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材は図示していない。これらについては、マンドレル11の組み立て方法とともに後述する。
【0064】
なお、側面32が下側へ傾斜する程度、および、庇部37が突出する程度は、特に限定されず、マンドレル11の具体的構成、第二セグメント30そのものの具体的構成、あるいは、第二セグメント30に結合する第一セグメント20の具体的構成に応じて適宜設定される。
【0065】
第二セグメント30の端面33には、第一セグメント20の端面23と同様に、端面33をサポートリング40a,40bの固定面に固定させる2個の雄型固定部材351と1個の雄型ガイド部材352とが、雄型固定部材251および雄型ガイド部材252と同じ位置関係で設けられている。そして、雄型固定部材351も、雄型固定部材251と同様に、環状固定保持機構を構成し、雄型ガイド部材352も雄型ガイド部材252と同様に環状固定ガイド機構を構成している。
【0066】
また、図3(a)に示すように、図示されている第二セグメント30には、扉枠部15aおよび窓枠部15bが形成されている。これら扉枠部15aおよび窓枠部15bは、本実施の形態に係る成形型10を用いて形成されたOPBにおいて、扉および窓に対応する部位に相当し、トリミング処理における切り取りまたは穴開け加工時に利用される凹凸部である。本実施の形態では、扉枠部15aおよび窓枠部15bは第二セグメント30の表面31に形成されているが、もちろんこれに限定されず、第一セグメント20の表面21に形成されてもよいし、第一セグメント20および第二セグメント30のいずれに形成されてもよい。なお、図示されないが、第二セグメント30の表面31もストリンガが装着可能に構成されている。
【0067】
[サポートリングの構成]
次に、セグメント20,30を単一の円筒状のマンドレル11に保持するための保持部材であるサポートリング40a,40bの構成と、サポートリング40a,40bに設けられているセグメント20,30の固定箇所の位置関係について、図4(a),(b)を参照して具体的に説明する。図4(a)は、マンドレル11を両端で支持するサポートリング40a,40bの構成の一例を示す平面図であり、図4(b)は、サポートリング40a,40bで円筒状に保持されるセグメント20,30の位置関係を示す、マンドレル11の模式的な端面図である。
【0068】
なお、下記の説明のうち、図4(a)を参照する説明では、便宜上、実質的に同一の構成を有するサポートリング40a,40bは「サポートリング40」と、一般化してまとめて説明する。サポートリング40を支持するクレードル12a,12bについても同様に「クレードル12」と、まとめて説明する。
【0069】
図1に示すように、上記構成のマンドレル11を支持するサポートリング40a,40bは、いずれも楕円形の環状で互いに対向する位置関係で、直立した状態でクレードル12a,12bにより支持されている。図4(a)に示すように、サポートリング40における互いの対向面は、マンドレル11の端面を固定する固定面43となっている。なお、図4(a)では、クレードル12については、その外形を点線で示している。
【0070】
この固定面43には、図4(a)に示すように、第一セグメント20a〜20cが固定される位置である第一固定箇所420a〜420cと、第二セグメント30a〜30cが固定される位置である第二固定箇所430a〜430cとが設けられている(図中、一点鎖線の領域)。これら第一固定箇所420a〜420cおよび第二固定箇所430a〜430cは、固定面43の周方向に沿って交互に設定されており、各固定箇所には、2個の雌型固定部材41とその間に配置される1個の雌型ガイド部材42が設けられている。
【0071】
ここで、第一固定箇所420aに第一セグメント20aの端面23が固定され、第一固定箇所420bに第一セグメント20bの端面23が固定され、第一固定箇所420cに第一セグメント20cの端面23が固定される。同様に、第二固定箇所430aに第二セグメント30aの端面33が固定され、第二固定箇所430bに第二セグメント30bの端面33が固定され、第二固定箇所430cに第二セグメント30cの端面33が固定される。このように、サポートリング40の固定面43には、特定のセグメント20,30を固定するために、特定固定箇所が設けられている。
【0072】
雌型固定部材41は、マンドレル11を構成する第一セグメント20a〜20cが備えている雄型固定部材251、または、第二セグメント30a〜30cが備えている雄型固定部材351が挿入されることで、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cをサポートリング40の固定面43に固定するための部材であり、これら雄型固定部材251,351とともに環状固定保持機構を構成している。さらに、図4(a)には図示されないが、上記固定状態を保持する固定状態保持部材としての固定用くさび部材も固定面43に設けられている。
【0073】
また、雌型ガイド部材42は、第一セグメント20a〜20cが備えている雄型ガイド部材252および第二セグメント30a〜30cが備えている雄型ガイド部材352が挿入されるよう構成され、雄型固定部材251,351が雌型固定部材41に挿入される状態をガイドするものであり、雄型ガイド部材252,352とともに環状固定ガイド機構を構成している。雌型ガイド部材42は、例えば、図4(a)に示すように、サポートリング40の中心側から外側に向かって放射状に設けられる一対のレール状部材として構成されている。そして、サポートリング40の内側となる端部は各レールの間が開いており、外側となる端部は、各レールの間が封止されている。このレールの間の陥凹部に雄型ガイド部材252,352が挿入されることで環状固定ガイド機構として機能する。
【0074】
固定面43において雌型固定部材41が設けられている位置は、第一セグメント20a〜20cの端面23および第二セグメント30a〜30cの端面33に設けられている上記雄型固定部材251,351の位置に対応している。例えば、第一セグメント20a〜20cの雄型固定部材251は、端面23の中心線上に位置する雄型ガイド部材252から見て等距離となる位置に設けられているので、固定面43上では、雌型ガイド部材42を中心線として、等間隔となる位置に、同方向に雌型固定部材41が1個ずつ、合計2個設けられている。
【0075】
また、サポートリング40には、固定面43とは反対側となる面(外面44)の外周には、図4(a)には図示されない鍔状の回転ギヤ部が設けられている。この回転ギヤ部に関しては、プレシジョンレールとともに説明する。
【0076】
上記構成のサポートリング40にセグメント20,30が固定されることで形成され保持されるマンドレル11は、図4(b)に示すように、第一セグメント20および第二セグメント30が交互に配置する構成となっている。
【0077】
ここで、本実施の形態では、セグメント20,30をそれぞれ固定する順序と、マンドレル11として保持されている状態での位置との関係性が重要となる。それゆえ、以下の説明では、マンドレル11を構成している各セグメント20,30を、当該マンドレル11の一部(部位)と見なして序数で特定する。すなわち、図4(b)に示すように、図中最上部に位置する第一セグメント20aを基準として、図中時計回り(右回り)の順に序数を付し、この序数を「部位番号」として、各セグメント20,30がマンドレル11を形成したときに、相当する位置を特定する。
【0078】
すなわち、図4(b)に示すように、図中最上部の第一セグメント20aが「部位#1セグメント」であり、第二セグメント30aが「部位#2のセグメント」であり、第一セグメント20bが「部位#3セグメント」であり、第二セグメント30bが「部位#4のセグメント」であり、第一セグメント20cが「部位#5セグメント」であり、第二セグメント30cが「部位#6のセグメント」である。
【0079】
[プレシジョンレールの構成]
次に、本実施の形態において、セグメント20,30を円筒形のマンドレル11に組み立てる組立装置である、プレシジョンレールの具体的構成について、図5および図6(a),(b)を参照して説明する。図5は、プレシジョンレールの全体構成の一例を示す斜視図である。図6(a)は、図5に示すプレシジョンレールにセグメントを載置した状態を模式的に示す概略平面図であり、図6(b)は、図5に示すプレシジョンレールに含まれるリング回転駆動部の概略構成を示すブロック図である。
【0080】
図5に示すように、本実施の形態で用いられるプレシジョンレール17は、レール本体173、レール移動支持台175、一対のレール支持作業台176a,176bを備えている。レール本体173は、レール移動支持台175により長手方向に沿って移動可能な状態で支持される1本のレール部材であり、その上面にジャッキ部171a,171bおよび171cと、コンベヤ部174a,174bおよび174cとが設けられている。
【0081】
レール移動支持台175は、レール支持作業台176aとともに、レール本体173を、移動可能に支持している。本実施の形態では、明確に図示されないが、台座部の上に、レール本体173を移動可能に支持するクリップまたははさみ状の移動支持機構が設けられている。この移動支持機構は、レール本体173が移動するときには左右に開放され、レール本体173が停止している状態では、当該レール本体173を挟んだ状態で閉じる構成となっている。
【0082】
レール支持作業台176a,176bは、その間に、台車13を配置させた状態で互いに対向しており、その上側にはそれぞれ上作業台177が設けられているとともに、説明の便宜上、図示されないが、床面から上作業台177へ至る、つづら折り状の階段部が設けられている。また、レール支持作業台176aの下側には、明確に図示されないが、レール移動支持台175と同様に移動支持機構が設けられているとともに、サポートリング40aを回転させるリング回転駆動部が設けられている。また、レール支持作業台176bの下側には、明確に図示されないが、レール本体173が、当該レール支持作業台176bの位置を超えて移動しない状態で、当該レール本体173を支持する、停止支持機構が設けられているとともに、サポートリング40bを回転させるリング回転駆動部が設けられている。
【0083】
ここで、サポートリング40a,40bは、クレードル12a,12bによりそれぞれ支持されているとともに、レール支持作業台176a,176bによっても支持されている。具体的には、クレードル12a,12bは、サポートリング40a,40bの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で、腕部121,121により、サポートリング40a,40bを下方から支持しつつ、支持ローラ123を介してリング回転駆動部から回転力が付与される(図1参照)。また、サポートリング40a,40bの上部では、レール支持作業台176a,176bにより、当該サポートリング40a,40bの軸芯方向の移動が制約されている(図5参照)。このように、上部と下部との双方でサポートリング40a,40bが支持されていることで、サポートリング40a,40bの転倒を防止しつつこれを回転させることができる。
【0084】
レール支持作業台176a,176bの間に配置される台車13には、クレードル12a,12bを介してサポートリング40a,40bが載置されている。サポートリング40aは、台車13だけでなくレール支持作業台176aにも支持されており、この状態では、上作業台177がサポートリング40aの上側に向かうように位置している。同様に、サポートリング40bは、台車13およびレール支持作業台176bに支持されており、この状態で、上作業台177がサポートリング40bの上側に向かうように位置している。
【0085】
サポートリング40a,40bの間に、後述するように第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cが固定されて、円筒形のマンドレル11が組み立てられる。レール本体173は、このマンドレル11の内部(またはサポートリング40a,40bの中空)に挿入されたり、当該内部(または中空)から引き出されたりするように、長手方向に移動可能となっている。したがって、図5に示すように、内部から引き出された状態では、レール本体173は、その先端がサポートリング40aの中空に向かう状態で、サポートリング40a,40bとともに一直線状に並ぶような位置関係で、支持されている。
【0086】
なお、以下の説明においては、レール本体173の移動に関しては次のように定義する。まず、サポートリング40a,40bの中空内またはマンドレル11の内部にレール本体173が挿入されるように移動するときには、「前進」と表現し、挿入されたレール本体173が引き抜かれるように移動するときには、「後退」と表現する。
【0087】
レール本体173の上面に設けられる3つのジャッキ部171a〜171cと、3つのコンベヤ部174a〜174cは、図5に示すように、レール本体173の後端側から、コンベヤ部174a、ジャッキ部171a、コンベヤ部174b、ジャッキ部171b、コンベヤ部174c、およびジャッキ部171cの順で、交互に位置している。これらジャッキ部171a〜171cおよびコンベヤ部174a〜174cの具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0088】
ジャッキ部171a〜171cは、本実施の形態では、いずれも、ほぼ同寸法、同構成であり、上側に載置した物体を上方に移動可能に構成されている。コンベヤ部174a〜174cのうち、最も後端側にあるコンベヤ部174aは、他のコンベヤ部174bおよび174cよりも、その搬送方向の長さが大きくなっている。
【0089】
後述するように第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cを上面に載置して先端側へ移動する構成となっている。それゆえ、コンベヤ部174aの半双方向の長さは、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cの長手方向の寸法よりも大きくなっている。一方、コンベヤ部174bは、ジャッキ部171aおよび171bに挟まれるように位置し、コンベヤ部174cは、ジャッキ部171bおよび171cに挟まれるように位置している。これらコンベヤ部174b,174cは、ジャッキ部171a〜171cのいずれか2つの上に移動した第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cの位置を微調整するものである。
【0090】
3つのジャッキ部171a〜171cのうち、ジャッキ部171aおよび171bは、主として、第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cをサポートリング40a,40bの上方に移動させるために用いられる。なお、これらジャッキ部171aおよび171bに関する次の説明では、第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30cを、単に、第一セグメント20または第二セグメント30と略す。
【0091】
具体的には、レール本体173の上に載置された第一セグメント20または第二セグメント30は、後端側のコンベヤ部174aにより先端側に水平移動し、図6(a)に示すように、ジャッキ部171a、コンベヤ部174b、およびジャッキ部171bの上面を覆う位置まで達する。ここで、ジャッキ部171a〜171cは、いずれも、セグメント20,30を支持するために一対の支持ロッド部を備えている。図6(a)に示す例では、ジャッキ部171aは、支持ロッド部171a−1および171a−2を備え、ジャッキ部171bは、支持ロッド部171b−1および171b−2を備えている。これら支持ロッド部は、レール本体173の長手方向に平行で、かつ、レール本体173の断面方向における中央部を挟むように互いに対向する位置で、レール本体173の上面に設けられている。
【0092】
この状態では、略矩形状をなす第一セグメント20または第二セグメント30の下面において、その四隅近傍の各位置に、支持ロッド部171a−1および171a−2と、支持ロッド部171b−1および171b−2が配置され、これらの間にコンベヤ部174bが配置されている。それゆえ、ジャッキ部171aおよび171bによって、四隅それぞれの位置を変位させながら上方へ持ち上げることができる。これにより、後述するように、高い位置精度で第一セグメント20または第二セグメント30をサポートリング40a,40bに固定することができる。
【0093】
ここで、第一セグメント20または第二セグメント30が固定されたサポートリング40a,40bは回転可能となっているが、このサポートリング40a,40bを回転させる構成として、前述したように、レール支持作業台176a,176bの下方にリング回転駆動部が設けられている。なお、リング回転駆動部に関する次の説明では、サポートリング40a、40bを、単に、サポートリング40と略す。
【0094】
図6(b)に示すように、リング回転駆動部16は、サポートリング40の外周に設けられる回転ギヤ部45に噛み合っている駆動ギヤ161と、モータおよびギヤ等から構成され、駆動ギヤ161を回転させる駆動源162と、サポートリング40の最上部の位置に、第一固定箇所420a〜420cまたは第二固定箇所430a〜430cが位置しているか否かを検出する位置検出部163と、これらを制御する回転制御部164を備えている。位置検出部163としては公知の位置センサが用いられる。回転制御部164としてはCPU等の演算装置が用いられる。
【0095】
ここで、位置検出部163による位置検出の具体的構成は特に限定されず、本実施の形態では、サポートリング40に設けられた図示されない被検出部を検出する構成となっている。図6(b)に示す構成では、位置検出部163がサポートリング40の最上部に特定固定箇所が位置していることを検出しているので、特定固定箇所に被検出部が設けられている構成となっているが、これに限定されず、サポートリング40の回転により所定の検出位置に到達したことが位置検出部163で検出できればよい。例えば、サポートリング40の最上部に特定固定箇所が位置したときに、当該サポートリング40の下方に被検出部が位置する構成としてもよい。これにより、リング回転駆動部16の構成をコンパクト化することができる。被検出部は光学的な構成であってもよいし、機械的または物理的な構成であってもよい。
【0096】
このリング回転駆動部16によってサポートリング40が回転することで、セグメント20,30がそれぞれ異なる動きでサポートリング40に固定されるのではなく、下から上へ持ち上げるという同一の動きで固定されることになる。
【0097】
[マンドレルの組立方法・全体構成]
次に、上記プレシジョンレール17を用いて、6個のセグメント20,30をサポートリング40a,40bに1個ずつ固定し、マンドレル11を組み立てる方法について具体的に説明する。まず、マンドレル11の組立方法の全体について、図7を参照して説明する。図7は、本実施の形態におけるマンドレル11の組立方法の全体構成を説明する工程図である。
【0098】
図7に示すように、本実施の形態では、まず、プレシジョンレール17のレール支持作業台176a,176bの間に、台車13およびクレードル12a,12bを介して、一対のサポートリング40a,40bを設置する(工程P01)。このとき、サポートリング40a,40bは、その最上部に第二固定箇所430bが位置するように設置し、第二固定箇所430bを最上部に移動させるためにサポートリング40a,40bを回転させてもよい。
【0099】
次に、レール本体173をサポートリング40a,40bの中空内に挿入する(工程P02)。これにより、サポートリング40a,40bに対して第二セグメント30a〜30cを固定できる状態となる。
【0100】
次に、第二セグメント30a〜30cをサポートリング40a,40bの第二固定箇所430a〜430cにそれぞれ固定していくが、この固定の順序は、第二セグメント30b、30cおよび30aの順となっている(工程P03−1〜P05−2)。次に、第一セグメント20a〜20cをサポートリング40a,40bの第一固定箇所420a〜420cにそれぞれ固定するとともに、第一セグメント20a〜20cの側面22と第二セグメント30a〜30cとの側面32とを結合していくが、このうち、第一セグメント20a〜20cの固定の順序は、第一セグメント20b、20cおよび20aの順となっている(工程P06−1〜P08−2)。
【0101】
全てのセグメントがサポートリング40a,40bに固定されれば、図1に示すようなマンドレル11が組み立てられる。その後、レール本体173をサポートリング40a,40b内から引き抜き(工程P09)、マンドレル11およびサポートリング40a,40bから構成される成形型10を台車13で移動させて(工程P10)、複合材料構造物の成形に利用する。
【0102】
なお、上記各工程のうち、工程P03−1,P04−1,P05−1,P06−1,P07−1およびP08−1をセグメント固定工程と称し、工程P03−2,P04−2,P05−2,P06−3およびP07−3と回転工程と称する。また、工程P06−2,P07−2およびP08−2をセグメント結合工程と称し、工程P01をサポートリング設置工程と称し、工程P02をレール挿入工程と称し、工程P09をレール引抜工程と称する。ここで、セグメント固定工程は、第一セグメント固定工程である工程P06−1,P07−1およびP08−1と、第二セグメント固定工程である工程P03−1,P04−1およびP05−1とに分けることができる。
【0103】
このように、本実施の形態に係る組立方法は、第二セグメント30a〜30cをサポートリング40a,40bに1個ずつ固定してから、これら第二セグメント30a〜30cの間に、第一セグメント20a〜20cを1個ずつ固定する。そこで、次に、第二セグメント30a〜30cの固定方法および固定作業について、図8〜図15を参照して説明する。
【0104】
[マンドレルの組立方法・第二セグメントの固定]
本実施の形態では、第二セグメント30a〜30cは、図7に示すように、サポートリング40a,40bの第二固定箇所430a〜430cのそれぞれに1個ずつ固定していくが、その固定は、第二セグメント30b、第二セグメント30cおよび第二セグメント30cの順で行われる。以下の説明では、図4(b)に示されるセグメント20,30の部位番号を利用して、各第二セグメント30の固定に関する説明を行う。
【0105】
図8は、部位#4の第二セグメント30bを12時方向(鉛直方向、直上方向)に持ち上げてサポートリング40a(およびサポートリング40b)に固定するために、ジャッキ部171a(およびジャッキ部171b)に第二セグメント30bを載置した状態(載置状態)を示す模式図(サポートリング40a側から見た図)である。図9(a),(b)は、第二セグメント30bを持ち上げてサポートリング40aに固定するときのプレシジョンレール17の動作を示す当該プレシジョンレール17の側面図であり、図10(a),(b)は、図9(b)に続くプレシジョンレール17の動作を示す当該プレシジョンレール17の側面図である。図11は、部位#4の第二セグメント30bをサポートリング40aに固定した状態を示す模式図であり、図12〜図15は、部位#6の第二セグメント30cまたは部位#2の第二セグメント30aをサポートリング40aに順次固定するときの載置状態または固定状態をそれぞれ示す模式図である。
【0106】
なお、図8を含めて各セグメント20,30をサポートリング40aに固定する状態を示す模式図では、各セグメント20,30がサポートリング40a上で固定される位置を明確に示す便宜上、クレードル12aおよび台車13は、一部構成を省略して示している。また、各セグメント20,30は、その両端がサポートリング40a,40bに固定されるが、説明の便宜上、同じく前記模式図では、一方のサポートリング40a(およびこれを支持するクレードル12a)のみを代表例として図示している。したがって、他方のサポートリング40bにおいても、サポートリング40aと同様にクレードル12bで支持され、各セグメント20,30がそれぞれ固定されることは言うまでもない。
【0107】
図8に示すように、台車13に取り付けられたクレードル12aにより、サポートリング40aおよび図示されないサポートリング40bは立設して支持された状態にある(図7に示す工程P01、サポートリング設置工程)。そして、これらサポートリング40a,40bの間であって、サポートリング40a,40bの外面44から見て、環状の各サポートリング40a,40bの中空に相当する位置に、プレシジョンレール17が配置される。なお、図8には、サポートリング40aにおける第二セグメント30a〜30cを固定する第二固定箇所430a〜430cについても図示しており、図10〜図14においては、各第二セグメント30a〜30cが固定されていない第二固定箇所430cおよび430aを図示している。
【0108】
図8に示される位置に移動するまでのプレシジョンレール17の動作について説明すると、図9(a)に示すように、プレシジョンレール17のレール本体173は、サポートリング40a,40bの中空に挿入されておらず、完全にサポートリング40a,40bから引き出された状態で、レール移動支持台175およびレール支持作業台176aにより支持されている。図9(a)に示す状態は、図5に示すプレシジョンレール17の全体図と同じ状態である。なお、このときのレール本体173の位置は、完全に後退した位置である。
【0109】
この状態で、レール本体173の後端側に位置するコンベヤ部174aに、部位#4の第二セグメント30bが載置される。そして、レール本体173は、図中矢印Isで示すように、サポートリング40a,40bに向かって前進する(図7に示す工程P02、レール挿入工程)。
【0110】
次に、図9(b)に示すように、レール本体173は、サポートリング40a,40bの中空に挿入され、これらを貫通するまで前進してから停止し、レール移動支持台175、レール支持作業台176aおよび176bにより支持される。そして、第二セグメント30bは、コンベヤ部174aの搬送動作により、図中矢印Hrで示すように、サポートリング40aに向かって、レール本体173上を水平移動する。
【0111】
次に、図10(a)に示すように、第二セグメント30bは、サポートリング40a,40bの間で停止する。このとき、コンベヤ部174bおよびコンベヤ部174cによって、第二セグメント30bの水平方向の位置が微調整されてもよい。この状態をサポートリング40aの外面44から見れば、図8に示すように、サポートリング40aの中空内に、レール本体173、ジャッキ部171a、第二セグメント30bが、下からこの順で位置している状態となる。そして、図8および図10(a)において矢印Lfで示すように、ジャッキ部171aおよび171bが上昇するように動作を開始する。この状態では、図8に示すように、サポートリング40a(およびサポートリング40b)の最上部には、第二固定箇所430bが位置している。
【0112】
次に、図10(b)に示すように、ジャッキ部171aおよび171bによって、第二セグメント30bは、12時方向へ上昇移動するが、このとき、前述したとおり、図6(a)に示すように、第二セグメント30bの四隅近傍の位置は、それぞれ支持ロッド部171a−1,171a−2,支持ロッド部171b−1,171b−2により、独立して上昇位置を変えることができるように構成されている。
【0113】
しかも、第二セグメント30bの端面33(図3(a),(b)も参照)には、雄型固定部材351および雄型ガイド部材352が設けられ、サポートリング40aの固定面43(図4も参照)には、雌型固定部材41および雌型ガイド部材42、並びに図示されない固定用くさび部材が設けられている。雄型ガイド部材352および雌型ガイド部材42は、環状固定ガイド機構を構成し、雄型固定部材351、雌型固定部材41および固定用くさび部材は、環状固定保持機構を構成している。
【0114】
上記環状固定保持機構によって第二セグメント30bは、サポートリング40a,40bの第二固定箇所430bに固定される(図7に示す工程P03−1、第二セグメント固定工程)。ここで、ジャッキ部171aおよび171bによる第二セグメント30bの上昇に際しては、環状固定ガイド機構によって、上昇中の第二セグメント30bが第二固定箇所430bに案内されるとともに、ジャッキ部171aおよび171bによってそれぞれの角部の位置も調整されるので、サポートリング40a,40bの第二固定箇所430bに、第二セグメント30bの端面33を高精度に固定することができる。
【0115】
なお、以下の説明では、環状固定ガイド機構および環状固定保持機構それぞれの動作を、「固定ガイド動作」および「固定保持動作」と称する。同様に、ジャッキ部171aおよび171bによる第一セグメント20a〜20cおよび第二セグメント30a〜30cの四隅近傍の位置調整を、「四隅位置調整動作」と称する。
【0116】
また、図8および図11、並びに他の図においては、レール本体173の上に、ジャッキ部171a以外に内部作業台172が設けられている。この内部作業台172は後述するように、第一セグメント20a〜20cと第二セグメント30a〜30cとを結合する作業等を作業員が行うために設けられるものであり、レール本体173に支持されている。
【0117】
次に、図11の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図7に示す工程P03−2、回転工程)。これにより、図中上側の位置に固定された第二セグメント30bは、図12に示すように、図中向かって左下側の位置に移動する。このとき、位置検出部163はサポートリング40a(およびサポートリング40b)の最上部で位置検出を行い、その結果を回転制御部164に入力する。それゆえ、リング回転駆動部16は、図中向かって右下側の位置であった第二固定箇所430cが最上部に適切に移動するように、回転角度を調整しながら、サポートリング40a,40bを回転させる。
【0118】
第二固定箇所430cが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図9(b)から図10(a)に示す動作を行い、図12に示すように、部位#6の第二セグメント30cをサポートリング40a,40bの間の中空内に配置させる。そして、図10(b)に示す動作を行い、ジャッキ部171aおよび171bを動作させて、第二セグメント30cを図中矢印Lfの12時方向に上昇移動させる。
【0119】
この上昇移動に伴い、四隅位置調整動作、固定ガイド動作および固定保持動作が行われ、図12に示すように、第二セグメント30cがサポートリング40a,40bに固定される(図7に示す工程P04−1、第二セグメント固定工程)。その後、矢印Rt1に示すように、リング回転駆動部16により、サポートリング40a,40bが約120°回転する(図7に示す工程P04−2、回転工程)。これによって、図13に示すように、図中上側の位置に固定された部位#6の第二セグメント30cは、図中向かって左下側の位置に移動し、当該位置にあった部位#4の第二セグメント30bは、図中向かって右下側の位置に移動する。そして、最上部の位置には、第二固定箇所430aが移動する。
【0120】
次に、図14に示すように、部位#2の第二セグメント30aが図中矢印Lfの12時方向に上昇移動され、これに伴い、前記四隅位置調整動作、固定ガイド動作および固定保持動作が行われ、図15に示すように、部位#2の第二セグメント30aがサポートリング40a,40bに固定される(図7に示す工程P05−1、第二セグメント固定工程)。これによって、全ての第二セグメント30a〜30cがサポートリング40a,40bに固定されたことになる。
【0121】
[マンドレルの組み立て方法・第一セグメントの固定と結合]
次に、第二セグメント30a〜30cの間に、第一セグメント20a〜20cを固定する作業へ移る。この第一セグメント20a〜20cの固定方法および固定作業の順序について、図15に加えて図16〜図21を参照して、セグメント結合保持機構およびセグメント結合ガイド機構の具体的構成とともに説明する。なお、以下の説明においても、図4(b)に示されるセグメント20,30の部位番号を利用して、各第一セグメント20の固定に関する説明を行う。
【0122】
図16は、部位#3の第一セグメント20bを12時方向(上方向)に持ち上げてサポートリング40a(およびサポートリング40b)に固定するために、ジャッキ部171a(およびジャッキ部171b)に第一セグメント20aを載置した状態(載置状態)を示す模式図である。図17は、部位#3の第一セグメント20bをサポートリング40aに固定し、部位#2の第二セグメント30aおよび部位#4の第二セグメント30bに結合している作業状態を示す模式図であり、図18〜図21は、部位#5の第一セグメント20cまたは部位#1の第一セグメント20aをサポートリング40aに順次固定し、第二セグメント30a〜30cに順次結合するときの載置状態または固定および結合の作業状態をそれぞれ示す模式図である。
【0123】
第二セグメント30a〜30cが全て取り付けられれば、図15の矢印Rt2に示すように、リング回転駆動部16により、サポートリング40a,40bは約60°回転する(図7に示す工程P05−2、回転工程)。これは、第二セグメント30a〜30cを先に固定するときには、各セグメント30a〜30cを1個置きの固定位置(第二固定箇所430a〜430c)に固定するため、サポートリング40a,40bは、セグメント2個分の固定位置に相当する約120°の回転角度で回転させる必要があったが、この工程では、異なる種類の第一セグメント20aを固定するため、回転角度は、セグメント1個分の約60°となる。
【0124】
この回転によって、図16に示すように、図中上側の位置に固定された部位#2の第二セグメント30aは、図中向かって左上側の位置に移動し、図中向かって左下側の位置にあった部位#6の第二セグメント30cは、図中下側の位置(最下部)に移動し、図中向かって右下側の位置にあった部位#4の第二セグメント30bは、図中向かって右上側の位置に移動する。そして、最上部の位置には、第一固定箇所420bが移動する。
【0125】
なお、図15には、サポートリング40aにおける第一セグメント20a〜20cを固定する第一固定箇所420a〜420cについても図示しており、図16〜図20においては、各第一セグメント20a〜20cが固定されていない第一固定箇所420a〜420cのみを図示している。
【0126】
第一固定箇所420cが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図9(b)から図10(a)に示す動作を行い、図16に示すように、部位#3の第一セグメント20bをサポートリング40a,40bの間の中空内に配置させる。そして、図10(b)に示す動作を行い、ジャッキ部171aおよび171bを動作させて、第一セグメント20bを図中矢印Lfの12時方向に上昇移動させる。
【0127】
ここで、第一セグメント20bの端面23(図2(a),(b)も参照)には、雄型固定部材251および雄型ガイド部材252が設けられている。それゆえ、第一セグメント20bにおいても、第二セグメント30a〜30cと同様に、四隅位置調整動作、固定ガイド動作および固定保持動作が行われ、図17に示すように、第一セグメント20bがサポートリング40a,40bに固定される(図7に示す工程P06−1、第一セグメント固定工程)。
【0128】
この固定においては、2個の第二セグメント30aおよび30bの間に、第一セグメント20bを適切に固定できるだけでなく、高精度な位置調整が行われるので、これら3個のセグメント30a,20bおよび30bの表面21または31によって、成形上、段差として認識されることがほとんどない円滑な曲面が形成されることになる。
【0129】
さらに、第一セグメント20a〜20cの両側面22には、図2に示すように、セグメント結合保持機構としての雄型結合部材261および図示されない結合用くさび部材と、セグメント結合ガイド機構としての外周側雌型ガイド部材262および図示されない内周側雄型ガイド部材が設けられている。一方、固定済みの第二セグメント30a〜30cの両側面32には、セグメント結合保持機構としての雌型結合部材と、これらセグメント結合保持機構の位置を案内するセグメント結合ガイド機構としての外周側雄型ガイド部材および内周側雌型ガイド部材が設けられている。加えて、本実施の形態では、セグメント結合保持機構としてクランプ部材も備えている。
【0130】
上記セグメント結合保持機構によって第一セグメント20bは、第二セグメント30a,30bに結合される(図7に示す工程P06−2、セグメント結合工程)。ここで、上記セグメント結合保持機構およびセグメント結合ガイド機構を備えていれば、第一セグメント20bの上昇移動に伴い、各セグメント20,30同士を適切に結合することができる。また、セグメント結合保持機構としてクランプ部材も備えていれば、図17に示すように、例えば、内部作業台172に作業者を配備し、作業者の人手によってクランプ部材を取り付けることで、各セグメント20,30の結合が二重となるので、第一セグメント20bおよび第二セグメント30a,30bの結合状態がより一層安定して保持されることになる。
【0131】
なお、以下の説明では、セグメント結合ガイド機構およびセグメント結合保持機構それぞれの動作を、「結合ガイド動作」および「結合保持動作」と称する。
【0132】
次に、図17の矢印Rt1に示すように、サポートリング40a(および図示されないサポートリング40b)が、リング回転駆動部16によって約120°回転する(図7に示す工程P06−3、回転工程)。これにより、図中上側の位置に固定された第一セグメント20bは、図18に示すように、図中向かって左下側の位置に移動する。また、図中向かって左上側の位置にあった部位#2の第二セグメント30aは最下部に移動し、最下部にあった部位#6の第二セグメント30cは、図中向かって右上の位置に移動し、図中向かって右上側の位置にあった部位#4の第二セグメント30bは左上側の位置に移動する。そして、最上部の位置には、第一固定箇所420bが移動する。
【0133】
第一固定箇所420cが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図9(b)から図10(a)に示す動作を行い、図18に示すように、部位#5の第一セグメント20cをサポートリング40a,40bの間の中空内に配置させる。そして、図10(b)に示す動作を行い、ジャッキ部171aおよび171bを動作させて、第一セグメント20cを図中矢印Lfの12時方向に上昇移動させる。
【0134】
この上昇移動に伴い、四隅位置調整動作、固定ガイド動作および固定保持動作が行われ、図19に示すように、第一セグメント20cがサポートリング40a,40bに固定される(図7に示す工程P07−1、第一セグメント固定工程)とともに、結合ガイド動作および結合保持動作も並行して行われ、第一セグメント20cに第二セグメント30b,30cが結合される(図7に示す工程P07−2、セグメント結合工程)。
【0135】
その後、矢印Rt1に示すように、リング回転駆動部16により、サポートリング40a,40bが約120°回転する(図7に示す工程P07−3、回転工程)。これによって、図20に示すように、図中上側の位置に固定された部位#5の第一セグメント20cは、図中向かって左下側の位置に移動し、当該位置にあった部位#3の第一セグメント20bは、図中向かって右下側の位置に移動する。また、図中向かって左上側の位置にあった部位#4の第二セグメント30bは最下部に移動し、最下部にあった部位#2の第二セグメント30aは、図中向かって右上の位置に移動し、図中向かって右上側の位置にあった部位#6の第二セグメント30cは左上側の位置に移動する。そして、最上部の位置には、第一固定箇所420aが移動する。
【0136】
第一固定箇所420aが最上部に位置すれば、プレシジョンレール17は、図9(b)から図10(a)に示す動作を行い、図20に示すように、部位#1の第一セグメント20aをサポートリング40a,40bの間の中空内に配置させる。そして、図10(b)に示す動作を行い、ジャッキ部171aおよび171bを動作させて、第一セグメント20aを図中矢印Lfの12時方向に上昇移動させる。
【0137】
この上昇移動に伴い、四隅位置調整動作、固定ガイド動作および固定保持動作が行われ、図21に示すように、第一セグメント20aがサポートリング40a,40bに固定される(図7に示す工程P08−1、第一セグメント固定工程)とともに、結合ガイド動作および結合保持動作も並行して行われ、第一セグメント20aに第二セグメント30a,30cが結合される(図7に示す工程P08−2、セグメント結合工程)。
【0138】
これによって、全ての第一セグメント20a〜20cがサポートリング40a,40bに固定されるとともに、全てのセグメント20,30が互いに結合されて保持されたことになる。その結果、図1に示すように、サポートリング40a,40bに保持されたマンドレル11から構成される成形型10の組み立てが完成する。
【0139】
その後、前述したとおり、レール本体173をサポートリング40a,40bから引き抜き(図7に示す工程P09、レール引抜工程)、マンドレル11およびサポートリング40a,40bから構成される成形型10を台車13で次の工程に移動させる(図7に示す工程P10)。
【0140】
このように本実施の形態に係るマンドレルの組立方法では、対向配置した一対のサポートリング40a,40bのそれぞれに、周方向に沿って複数設定されている固定箇所の1つである特定固定箇所(第一固定箇所420a〜420cまたは第二固定箇所430a〜430c)に、固定対象である1個のセグメント(第一セグメント20a〜20cまたは第二セグメント30a〜30c)を固定するセグメント固定工程と、当該セグメント固定工程の前に、前記特定固定箇所を、サポートリング40a,40bの最上部に位置させるように、前記一対のサポートリングを回転させる回転工程と、を含んでいる。
【0141】
この方法では、セグメント固定工程において、固定対象の1個のセグメント20,30を、一対のサポートリング40a,40bの間に配置し、鉛直方向に沿って前記特定固定箇所に対応する高さまで上昇させてから、一対のサポートリング40a,40bに固定し、先に他のセグメント20,30が固定されていれば、当該固定済みのセグメント20,30と固定対象のセグメント20,30とを側面で結合する。これによって、固定対象のセグメントが固定される固定箇所の位置が、サポートリングの最上部という一箇所に決められており、移動方向も鉛直方向のみで一定となっているため、固定対象のセグメントの姿勢を安定的に一定に保って移動することができ、位置決め精度の向上を図ることができる。
【0142】
[変形例]
本発明に係るマンドレルの組立方法は、前述したような、第一セグメント20および第二セグメント30がそれぞれ3個ずつ組み合わせられた構成のマンドレル11のみに限定されるものではなく、他の構成のマンドレル11にも好適に用いることができる。つまり、組立対象のマンドレル11が、略矩形状を成す複数のセグメントから成り、各セグメントを鉛直方向に上昇移動させてサポートリングに固定できる構成となっていれば、セグメント固定工程および回転工程を実行できるので、本発明に係る組立方法を好適に用いることができる。
【0143】
また、図5に示されるプレシジョンレール17は、レール本体173の上に3台のコンベヤ部174a〜174cと3台のジャッキ部171a〜171cを備えているが、この構成に限定されるものではなく、レール本体173がサポートリング40a,40bの中空に挿入された状態で、各サポートリング40a,40bの間で、固定対象のセグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、各位置を独立して鉛直方向に沿って変位させることが可能なセグメント支持部材を有している構成であればよい。したがって、図6(a)に示すようなロッド状のセグメント支持部材(支持ロッド部171a−1,171a−2,171b−1,171b−2)以外の構成のセグメント支持部材が用いられてもよいし、セグメントの四隅近傍の位置をそれぞれ支持するようにジャッキ部が4台設けられてもよいし、1台のジャッキ部が四隅近傍の各位置を全て支持可能な構成を有するものであってもよい。
【0144】
さらに、本発明で用いられるマンドレルの組立装置は、図5に示されるプレシジョンレール17に限定されるものではなく、他の構成の組立装置を用いることもできる。もちろん、図5に示されるプレシジョンレール17が特に好ましい組立装置であることは言うまでもない。
【0145】
なお、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は、例えば、航空機の胴体部等、大型で略円筒形状の複合材料構造物を成形する分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0147】
10 成形型
11 マンドレル
16 リング回転駆動部
17 プレシジョンレール(組立装置)
20,20a〜20c 第一セグメント
21 第一セグメントの表面
30,30a〜30c 第二セグメント
31 第二セグメントの表面
40,40a,40b サポートリング
42 雌型ガイド部材(環状固定ガイド機構)
163 位置検出部
171a〜171c ジャッキ部
171a−1,171a−2 支持ロッド部(セグメント支持部材)
171b−1,171b−2 支持ロッド部(セグメント支持部材)
173 レール本体
174a〜174c コンベヤ部
252,352 雄型ガイド部材(環状固定ガイド機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯方向に沿った線で分割された略矩形状を成す複数のセグメントを互いに結合して筒状のマンドレルを組み立てるマンドレルの組立方法であって、
対向配置した一対のサポートリングのそれぞれに、周方向に沿って複数設定されている固定箇所の1つである特定固定箇所に、固定対象である1個の前記セグメントを固定するセグメント固定工程と、
前記セグメント固定工程の前に、前記特定固定箇所を、前記サポートリングの最上部に位置させるように、前記一対のサポートリングを回転させる回転工程と、を含み、
前記セグメント固定工程では、前記固定対象の前記セグメントを、前記一対のサポートリングの間に配置し、鉛直方向に沿って前記特定固定箇所に対応する高さまで上昇させてから、前記一対のサポートリングに固定する、マンドレルの組立方法。
【請求項2】
前記特定固定箇所に隣接する2つの前記固定箇所の少なくとも一方に、すでに前記セグメントが固定されているときには、
前記セグメント固定工程の後に、前記固定対象の前記セグメントを、隣接する前記セグメントに結合するセグメント結合工程を含む、請求項1に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項3】
前記セグメント固定工程では、略矩形状を成す当該セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持しつつ上方へ変位させることにより、前記固定対象の前記セグメントを前記特定固定箇所へ向かって上昇させる、請求項1または2に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項4】
前記セグメント固定工程では、前記サポートリングおよび前記固定対象の前記セグメントの間に設けた環状固定ガイド機構により、上昇中の当該セグメントを前記特定固定箇所に案内し、当該特定固定箇所に到達した前記セグメントを、前記サポートリングに固定する、請求項1から3のいずれか1項に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項5】
前記回転工程では、前記サポートリングの軸芯を通る鉛直線を挟む少なくとも2箇所で当該サポートリングを下方から支持しつつ回転力を付与し、かつ、前記サポートリングの上部にて当該サポートリングの前記軸芯方向の移動を制約するように支持する、請求項1から4のいずれか1項に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項6】
前記回転工程では、前記特定固定箇所が前記サポートリングの最上部に位置していると判断すべく、前記サポートリングに設けられた被検出部が当該サポートリングの回転により所定の検出位置に到達したことを、位置検出部により検出する、請求項1から5のいずれか1項に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項7】
最初の前記セグメント固定工程の前に行われ、前記一対のサポートリングを、前記セグメントが固定可能な状態に対向配置するサポートリング設置工程を含み、
当該サポートリング設置工程では、最初に固定される前記セグメントに対応する前記特定固定箇所を、前記サポートリングの最上部に位置させるように、前記サポートリングを設置する、請求項1から6のいずれか1項に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項8】
前記複数のセグメントは、互いに形状の異なる第一セグメントおよび第二セグメントから構成され、
前記一対のサポートリングに設定される前記複数の固定箇所は、前記第一セグメントが固定される第一固定箇所および前記第二セグメントが固定される第二固定箇所から構成されているとともに、当該第一固定箇所および当該第二固定箇所は、前記一対のサポートリングのそれぞれに、周方向に沿って交互に設定され、
前記セグメント固定工程には、前記第一固定箇所に前記第一セグメントを固定する第一セグメント固定工程と、前記第二固定箇所に前記第二セグメントを固定する第二セグメント固定工程とが含まれる、請求項1から7のいずれか1項に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項9】
略矩形状の前記第二セグメントにおける、前記マンドレルの外周面となる表面の面積は、前記第一セグメントの前記表面の面積よりも広くなっており、
前記第一セグメント固定工程は、前記第二セグメント固定工程により、前記第二セグメントの全てが前記サポートリングの前記周方向の1箇所置きに固定されてから、行われ、
当該第一セグメント固定工程では、前記一対のサポートリングの間に配置された前記第一セグメントを、前記第一固定箇所に対応する高さで、2個の前記第二セグメントの間となる位置まで上昇させ、前記一対のサポートリングに固定するとともに隣接する前記第二セグメントに結合する、請求項8に記載のマンドレルの組立方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のマンドレルの組立方法に用いられ、
前記一対のサポートリングの中空に挿入されるレール本体と、
当該レール本体上に設けられ、当該レール本体の後端から先端に向かって前記セグメントを水平移動させるコンベヤ部と、
前記レール本体上に設けられ、前記コンベヤ部から移動された前記セグメントを、鉛直方向に沿って上昇移動させるジャッキ部と、を備え、
前記ジャッキ部は、前記レール本体が前記サポートリングの中空に挿入された状態で、前記サポートリングそれぞれの間で、略矩形状を成す前記セグメントの少なくとも四隅近傍の各位置を支持し、かつ、当該各位置を独立して鉛直方向に沿って変位可能とするセグメント支持部材を有している、マンドレルの組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−131560(P2011−131560A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295576(P2009−295576)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】