説明

複合材料

【課題】 電圧に対する抵抗値の依存性が低い新規なカーボンナノチューブ複合材料の提供。
【解決手段】 カーボンナノチューブとポリマーとを含む、複合材料において、
前記カーボンナノチューブの直径が、11〜90nmであり、
低温低湿環境の下で、下記式(1)の特性を有することを特徴とする、複合材料。
−0.4≦log10100−log101000≦0.4 (1)
{ここで、R100は、印加電圧100Vのときの体積抵抗値(Ω・cm)であり、R1000は、印加電圧1000Vのときの体積抵抗(Ω・cm)である。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含有する複合材料に関し、特に電圧に対する依存性が低い抵抗値を有する複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックやゴム等のポリマー化合物に、無機系フィラーを添加することは一般的に行われている。その中でも、炭素系フィラーは、強度や導電性の点で、従来から幅広く用いられている。炭素系フィラーには、古くからカーボンブラックが用いられ、その他には最近、炭素繊維や、特にカーボンナノチューブ(CNT)のようなナノカーボンを用いることがよく検討されている。最近これらの中でも特に、CNTが、生成物に対して高い強度や高い導電性を付与できるため、多く用いられている(例えば、特許文献1)。特許文献1は、ポリイミド樹脂組成物において、常温常湿から高温高湿において安定な抵抗値を調整できる技術が開示されている。しかしこれらの樹脂組成物から得られる成形物は、フィルムやベルトであって、ソリッド状のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−246927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電圧に対する抵抗値の依存性が低い新規なカーボンナノチューブ複合材料を提供することを目的とする。
【0005】
特に、導電性の樹脂を発泡した場合には、フォームの泡の保持性とフォーム形成、柔軟性・硬度歪特性というフォームの物性面の観点で、導電性フィラーの添加量が制限されていた。すなわち、従来、例えばケッチェンブラック等の導電性フィラーの添加量が多くなると、例えば、ウレタンフォームにおいて、ポリオールに8%程度が限界であり、それよりも高濃度とすると、液粘度が高くなりすぎてポンプ配送ができなくなり、ウレタンフォームの製造ができないという製造上の制約がある。(このときの樹脂成形物に対しては、3.4%程度となる。)また、フォームの泡を保持しにくくなったりフォームの成形不良を起こしたり、柔軟性が低下して高硬度となったり、歪が悪化する。このため、樹脂のソリッド成形物に比べ、フォーム中の樹脂に対する導電性フィラーの添加量は、相対的に少ないものとなる。なお、ウレタン樹脂は、可トウ性があり、柔軟で、かつ強靭な物性を示す。ウレタン樹脂の特性から、ポリウレタンフォームは、OA部品等、幅広く使用されている。したがって、導電性樹脂発泡体の分野において、高導電性(低抵抗)で、電圧に対する抵抗値の依存性が低い新規なカーボンナノチューブ複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、カーボンナノチューブとポリマーとを含む、複合材料において、
前記カーボンナノチューブの直径が、11〜90nmであり、
低温低湿環境の下で、下記式(1)の特性を有することを特徴とする、複合材料である。
−0.4≦log10100−log101000≦0.4 (1)
{ここで、R100は、印加電圧100Vのときの体積抵抗値(Ω・cm)であり、R1000は、印加電圧1000Vのときの体積抵抗(Ω・cm)である。}
【0007】
本発明(2)は、前記カーボンナノチューブの含有量が、複合材料の全質量を基準として1〜4質量%である、前記発明(1)の複合材料である。
【0008】
本発明(3)は、前記ポリマーが、ウレタン系樹脂である、前記発明(1)又は(2)の複合材料である。
【0009】
本発明(4)は、前記ウレタン系樹脂が、ポリウレタン発泡体である、前記発明(3)の複合材料である。
【0010】
本発明(5)は、前記ウレタン系樹脂が、カーボンナノチューブポリオール分散液と、ポリイソシアネートを混合する工程を経て製造される、前記発明(3)又は(4)の複合材料である。
【0011】
本発明(6)は、前記カーボンナノチューブポリオール分散液が、下記式1で表される化合物の少なくとも一種を含有する、ナノカーボン分散剤を含む、前記発明(5)の複合材料である。
R−X−(Y) (式1)
{式中、Rは、炭素数mが13〜21の炭化水素基であり、Xは、酸素原子、窒素原子、CO、COO、CON、又は直接結合を示し、Yは、相互に異なる又は同一であるポリアルキレンオキサイド基[C(C2a+1)・O]−H を示す(ここで、aは0〜2の整数を示し、bは1〜100である)、nは、Xが酸素原子、CO、COO、直接結合の場合1であり、Xが窒素原子、CONの場合2を示す。}
【0012】
本発明(7)は、前記分散剤が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類を含む、前記発明(6)の複合材料である。
【0013】
本発明(8)は、前記ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が下記式2の化合物である、前記発明(7)の複合材料である。
R−N(AO) (式2)
{ここで、Rは、炭素数13〜21のアルキル基(ここで、当該アルキル基の一以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよく、更には、隣接する窒素原子との間にカルボニル基が存在していてもよい)を示し、AOは、相互に異なる又は同一であるポリアルキレンオキサイド基[C(C2a+1)・O]−H を示す(ここで、aは0〜2の整数を示し、bは1〜100である)。}
【0014】
本発明(9)は、前記カーボンナノチューブポリオール分散液が、ポリオールにカーボンナノチューブを直接分散させる方法により製造されたものである、前記発明(5)〜(8)のいずれか一つの複合材料である。
【発明の効果】
【0015】
本発明(1)によれば、電圧に対する抵抗値の依存性が低い複合材料を得ることができるという効果を奏する。
【0016】
本発明(2)によれば、更に、電圧に対する抵抗値の依存性が低い複合材料を得ることができるという効果を奏する。
【0017】
本発明(3)〜(7)によれば、フォーム状の複合材料でありながらCNTを高濃度で分散することができるため高い導電を有し、更に、電圧に対する抵抗値の依存性が低い複合材料を得ることができるという効果を奏する。
【0018】
本発明(8)、(9)によれば、フォームの泡を保持しやすくなり、フォームの成形不良を起こしにくくなるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る複合材料は、カーボンナノチューブとポリマーとを含む。また、当該カーボンナノチューブの直径は、11〜90nmである。当該直径を有するカーボンナノチューブは特に低い電圧依存性の電気抵抗値を示す。また、本発明の複合材料は、低温低湿(LL)環境の下で下記式(1)の特性を有する。
−0.4≦log10100−log101000≦0.4 (1)
{ここで、R100は、印加電圧100Vのときの体積抵抗値(Ω・cm)であり、R1000は、印加電圧1000Vのときの体積抵抗(Ω・cm)である。}尚、R100及びR1000は、実施例記載の方法により測定する。
低温低湿(LL)環境の下で前記式(1)の上限値は、0.3であることが好適であり、0.2であることがより好適である。また、低温低湿(LL)環境の下で前記式(1)の下限値は−0.3であることが好適であり、−0.2であることが更に好適である。
【0020】
また、常温常湿(NN)環境の下での前記式(1)の上限値は、0.3以下であることが好適であり、0.2以下であることがより好適であり、0.1以下であることが更に好適である。また、常温常湿(NN)環境の下での前記式(1)の下限値は、−0.3以上であることが好適であり、−0.2以上であることがより好適であり、−0.1以上であることが更に好適である。
【0021】
さらに、高温高湿(HH)環境の下での前記式(1)の上限値は、0.2以下であることが好適であり、0.15以下であることがより好適であり、0.1以下であることが更に好適である。また、高温高湿(HH)環境の下での前記式(1)の下限値は、−0.2以上であることが好適であり、−0.15以上であることがより好適であり、−0.1以上であることが更に好適である。
【0022】
カーボンナノチューブ
本最良形態に係るカーボンナノチューブは、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)であっても、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)であってもよい。カーボンナノチューブの直径は、11〜90nmである必要があり、12〜90nmがより好適であり、13〜50nmが更に好適であり、13〜18nmが特に好適である。このように、直径を11〜90nmの範囲とすることにより、電圧依存性の低い電気抵抗特性を有する。尚、当該チューブの平均直径は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、所定範囲内に存在する100個以上の構造体について測定した値とする。
【0023】
尚、カーボンナノチューブの平均長さは、0.1〜100μmが好適であり、0.1〜50μmがより好適であり、0.1〜20μmが更に好適である。尚、当該チューブの平均長さは、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、所定範囲内に存在する100個以上の構造体について測定し、その平均値とする。尚、カーボンナノチューブの含有量は、複合材料全体に対して、0.5〜8質量%が好適であり、1〜6質量%がより好適であり、1〜4質量%が更に好適である。
【0024】
また、カーボンナノチューブの合成法も特に限定されず、いかなる合成方法、例えば、電気放電法(C.Journet et al., Nature 388, 756(1997)及びD.S. Bethune et al., Nature 363, 605(1993))、レーザー蒸着法(R.E.Smally et al., Science 273, 483(1996))、気相合成法(R.Andrews et al., Chem. Phys. Lett.,303,468, 1999)、熱化学気相蒸着法(W.Z.Li et al., Science, 274, 1701(1996)、Shinohara et al., Jpn.J.Appl.Phys. 37, 1257(1998))、プラズマ化学気相蒸着法(Z.F.Ren et al., Science. 282,1105(1998))等により製造されたものでもよい。尚、合成に際し金属触媒が用いられた粗生成物に関しては、酸で処理して金属触媒を除去することが好適である。酸処理に関しては、例えば、特開2001−26410記載のように、酸水溶液としては硝酸溶液又は塩酸溶液を用い、例えば、硝酸溶液は50倍の水に希釈された溶液を、塩酸溶液も50倍の水に希釈された溶液を使用する手法を挙げることができる。そして、このように酸処理した後、洗浄し、フィルタリングし、カーボンナノチューブ水溶液とする。
【0025】
ポリマー
本最良形態に係る複合材料において用いられるポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化型樹脂等の樹脂や、ゴム系エラストマー、熱可塑性エラストマー類等のエラストマーが挙げられる。樹脂の具体例としては、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。また、エラストマーの具体例としては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)等のゴム系エラストマー類や、オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、等の熱可塑性エラストマー類が挙げられる。ポリマーはこれらを単独で用いてもよく、2種以上を複合して用いても構わない。さらに、ポリマーは発泡体(フォーム)が、製造条件の制約、フォーム形成性、物性の低下を抑える点で、より好ましい。これらの中でも特に、ポリウレタン発泡体が好適である。以下、ポリウレタン発泡体について詳述する。
【0026】
ポリウレタン発泡体
本最良形態に係るポリウレタン発泡体は、本最良形態に係るポリオールと、ポリイソシアネートとの反応により得られる樹脂である。ここで、本最良形態において、前記反応前にポリオール中にカーボンナノチューブを分散させることが好適である。必要に応じて、架橋剤、発泡剤、触媒、酸化防止剤、整泡剤、顔料、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、その他無機/有機系フィラー等が含まれていてもよい。さらに、導電補助材として、カーボンナノチューブ以外の導電性フィラー、例えば炭素繊維、カーボンブラック(ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック)等を必要に応じて併用しても構わない。以下、各原料について詳述する。
【0027】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態におけるポリウレタン発泡体(以下、単に発泡体又はフォームともいう)の製造方法では、まずメカニカルフロス法により、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、整泡剤及び導電性成分を含むポリウレタン発泡体の原料に不活性ガスを吹き込んで混合することにより、不活性ガスが微細に分散された原料分散液が得られる。
次いで、その原料分散液に加熱を行い、原料分散液中の各成分を反応及び硬化させることにより、目的とするポリウレタン発泡体が製造される。
【0028】
(ポリウレタン発泡体の原料)
ポリウレタン発泡体の原料は、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、整泡剤及び導電性成分を含有している。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコールにプロピレンオキシドを付加重合させた重合体、エチレンオキシドを付加重合させた重合体、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体、或いはそれらの変性体等が用いられる。変性体としては、前記ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル又はスチレンを付加させたもの、或はアクリロニトリルとスチレンの双方を付加させたもの等が挙げられる。ここで、多価アルコールは1分子中にヒドロキシル基を複数個有する化合物であり、例えばグリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0029】
これらのポリエーテルポリオールは、末端に第1級のヒドロキシル基を有していることから、ポリイソシアネートとの反応性が高い。ポリエーテルポリオールの質量平均分子量は2000〜6000であることが好ましい。この質量平均分子量が2000未満の場合には得られるポリウレタンの発泡体の成形時における安定性が低下し、6000を越える場合にはその反応性が低下し、ポリウレタン発泡体の成形が難しくなる傾向を示す。ポリエーテルポリオールにビニル系単量体をグラフト重合したポリマーポリオールを用いることもできる。ポリマーポリオールのグラフト部分はポリウレタン発泡体を補強し、質量平均分子量2000〜6000のポリエーテルポリオールがポリウレタン発泡体のソフトセグメントを増大させ、ポリウレタン発泡体の柔軟性、伸び等の物性を向上させる機能を有する。
【0030】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリエステルポリオールが用いられる。以上のポリオール成分は、原料成分の種類、分子量、重合度、縮合度等を調整することによって、水酸基の官能基数や水酸基価を変えることができる。また、ポリウレタン発泡体の原料には、ポリウレタン発泡体の架橋密度を高め、硬さ等の物性を向上させるために、水酸基について3官能以上のポリオールとしての架橋剤を含有することができる。そのような架橋剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0031】
上記のポリオールと反応させるポリイソシアネートはイソシアネート基を複数有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、又はこれらとポリオールとの反応による遊離イソシアネートプレポリマー、カルボジイミド変性ポリイソシアネート等の変性ポリイソシアネート、さらにはこれらの混合ポリイソシアネート等が用いられる。これらのうち、トリレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体が好ましく、これらを混合して使用することもできる。
【0032】
ポリイソシアネートのイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は100以下又は100を越えてもよいが、ポリウレタン発泡体の柔軟性を適するようにするために、90〜130の範囲で変更することが好ましい。イソシアネート指数が90未満の場合、ポリウレタン発泡体が柔らかくなり、導電性発泡体の用途、たとえば、OA機器用のローラなどとして用いるときにその機能の低下や歪み特性が悪化する傾向を示す。一方、イソシアネート指数が130を越える場合、ポリウレタン発泡体の架橋密度が高くなって硬くなる傾向を示し、OA機器用ローラが相手部材を傷付けたり、硬すぎて機能に合わないおそれがでてくる。ここで、イソシアネート指数は、ポリオールの水酸基等の活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。
【0033】
次に、触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応(樹脂化反応)、その生成物とポリイソシアネートとの硬化反応(架橋反応)等の各反応を促進させるためのものである。係る触媒として具体的にはトリエチレンジアミン(TEDA)、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)、鉄アセチルアセトネート等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。また、その他の触媒として、発泡体表面における硬化性を向上させるために、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のモルホリン系の触媒を用いることもできる。触媒の含有量は、ポリオール100質量部当たり1〜8質量部程度である。
【0034】
続いて、整泡剤は発泡体原料の発泡を円滑に行い、泡の保持性・安定性のために用いられ、ポリウレタン発泡体の原料に通常配合されるもののいずれも使用することができる。
整泡剤として具体的には、ジメチルポリシロキサン、オルガノシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はそれらの混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、フェノール系化合物等が挙げられる。
【0035】
整泡剤の含有量は発泡体表面への移行を抑えるために、ポリオール100質量部当たり1〜5質量部の範囲に設定される。整泡剤の含有量が1質量部より少ない場合には、発泡体原料の発泡を円滑に行うことができなくなり、泡の保持性・安定性を欠き、良好な発泡体を得ることができなくなる。その一方、5質量部より多い場合には、整泡作用は十分に発現されるが、整泡剤が発泡体表面へ移行し、発泡体を電子機器用ローラなどとして使用するときに、感光体などの相手部材を汚染するため不適当である。
【0036】
導電性成分は、後述のメカニカルフロス法により得られたポリウレタン発泡体の原料分散液に導電性物質を混合し、例えば、前述のCNTを必須で添加するほか、アセチレンブラック、カーボンブラック等の炭素材料を少量併用することは可能である。その他ポリウレタン発泡体の原料には、ポリアルキレンオキシドポリオール等のセルオープナー、縮合リン酸エステル等の難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤等を配合することができる。さらに、CNTの分散液を下記式1で表される化合物のものを用いるとウレタン原料であるポリオールとの親和性が良好となるため、粘度を低下させることができ、高濃度のCNT分散液を得る点で、また、それにより得られるポリウレタンフォームの導電性が高くなる点で好ましい。
R−X−(Y) (式1)
{式中、Rは、炭素数mが13〜21の炭化水素基であり、Xは、酸素原子、窒素原子、CO、COO、CON、又は直接結合を示し、Yは、相互に異なる又は同一であるポリアルキレンオキサイド基[C(C2a+1)・O]−H を示す(ここで、aは0〜2の整数を示し、bは1〜100である)、nは、Xが酸素原子、CO、COO、直接結合の場合1であり、Xが窒素原子、CONの場合2を示す。}
【0037】
ここで、Rの合計炭素数mは、13〜21が好適であり、14〜20がより好適であり、15〜19が更に好適である。mがこの範囲より低いと、ナノカーボンへの親和性が低下することを意味し、分散不良の原因となる。逆にこの範囲より高いと、分散媒との親和性が低下したり、分散液そのものの粘度が高くなることがあるので、やはり好ましくない。又、アルキレンオキサイドの繰り返し単位数bは、4〜40が好適であり、5〜30がより好適であり、6〜25が更に好適である。bがこの範囲より低いと、分散媒との親和性が低下することを意味し、分散不良の原因となる。逆にこの範囲より高いと、分散液の発泡が起こりやすくなったり、分散液そのものの粘度が高くなることがあるので、やはり好ましくない。
【0038】
ここで、Rは炭素数mの合計が13〜21の範囲の炭化水素基(炭化水素残基)であれば、特に限定されないが、例えば、1又は2以上の水素原子が他のアルキル、アリール基で置換されていてもよい、アルキル、アリール基(炭化水素残基)であり、Rの合計炭素数mが13〜21である。
より具体的には、二重/三重結合を含んでもよい直鎖状または分岐状または環状の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基・フェニル基等)が挙げられる。
直鎖状アルキル基としては、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基が挙げられる。直鎖状アルケニル基としては、パルミトイル基、オレイル基、リノール基、リノレン基が挙げられる。シクロアルキル基としては、オクチルシクロペンチル基、ノニルシクロペンチル基、デシルシクロペンチル基、ノニルシクロペンチル基、デシルシクロペンチル基、ウンデシルシクロペンチル基、ドデシルシクロペンチル基、トリデシルシクロペンチル基、テトラデシルシクロペンチル基、ペンタデシルシクロペンチル基、ヘキサデシルシクロペンチル基、ヘプチルシクロヘキシル基、オクチルシクロヘキシル基、ノニルシクロヘキシル基、デシルシクロヘキシル基、ウンデシルシクロヘキシル基、ドデシルシクロヘキシル基、トリデシルシクロヘキシル基、テトラデシルシクロヘキシル基、ペンタデシルシクロヘキシル基が挙げられる。その他、アリール基としては、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、トリデシルフェニル基、テトラデシルフェニル基、ペンタデシルフェニル基、プロピルナフチル基、ブチルナフチル基、ペンチルナフチル基、ヘキシルナフチル基、ヘプチルナフチル基、オクチルナフチル基、ノニルナフチル基、デシルナフチル基、ウンデシルナフチル基、が挙げられる。
【0039】
ここで、用いる分散剤の好適例としては、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が挙げられる。より具体的には下記式2の化合物が挙げられる。
R−N(AO) (式2)
{ここで、Rは、炭素数13〜21のアルキル基(ここで、当該アルキル基の一以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよく、更には、隣接する窒素原子との間にカルボニル基が存在していてもよい)を示し、AOは、相互に異なる又は同一であるポリアルキレンオキサイド基[C(C2a+1)・O]−H を示す(ここで、aは0〜2の整数を示し、bは1〜100である)。}
【0040】
このような、分散剤を用いると、カーボンナノチューブがポリオールに対して良好な分散性を示し、さらに分散液の粘度が低くなる。更に、ヒドロキシル基を二つ有し、エチレンオキサイドを分子鎖中に有するため、ウレタン原料であるメインのポリオールとの親和性が良好となり、ポリオール成分の粘度を低下させることができ、高濃度のCNT分散液を得る点で好ましい、また、ポリウレタンの製造の際に、反応に順応し、良好な発泡性を示す。このため、それにより、得られるポリウレタンフォームは、ポリウレタン中にCNTが良好に微分散された樹脂骨格を形成し、その結果、下記の導電性が高くなる等(電圧変化による抵抗値の変動の少ない)の点で好ましい。
【0041】
分散剤を用いずにカーボンブラックやCNT等の充填剤の高濃度の配合を検討し、ウレタン樹脂に対して5.3%の高濃度品のスラリーを作成したが、粘度が高くなりすぎてポンプ配送ができなくなり、ウレタンフォームの製造ができない。このように、ウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネートの反応を中心に製造させるものであるから、両主原料が液状であり、ポンプで原料タンクからミキシングヘッドまで配送し、計量することを特徴とするものである。したがって、カーボンブラックやCNT等の充填剤の配合量を多量にすると、液粘度が高粘度となり、ポンプや配管に負荷がかかり、配送できなかったりする。このような問題は、前記の好適な分散剤を使用することにより解決することができる。また、仮に、このような限界的な高濃度よりもやや低い濃度で配合すれば、カーボンブラックやCNT等の導電性充填剤が分散された比較的高濃度に分散されたポリウレタンフォームを得ることは可能ではある。
【0042】
しかし、軟質スラブ系ポリウレタンフォームの製造方法の場合、上記導電性充填剤が分散されたポリオール等の原料とイソシアネートの原料がミキシングされ、ミキシングヘッドから液状の反応混合物として吐出される。そして、その後、ポリオール、水等の活性水素を有する化合物が、イソシアネートと反応して、炭酸ガスを発生しつつ、ウレタン結合、ウレア結合を等のポリマー化反応が、逐次・競争的に反応するので、ポリウレタンが発泡してきて、ウレタン原料の液面がポリマー化により増粘しつつ上昇してくる。このような液状(無発泡)のものから上記反応の進行により、軟質スラブポリウレタンフォームが製造されるので、非常に大きな体積変化を受けるため、比較的高濃度に導電性充填剤が分散された軟質スラブウレタンフォームは、ポンプ配送の制約がなくフォームを形成できたとしても、脆く、強度が低く、物性が劣るものとなる。したがって、この観点からも、導電性充填剤等の充填量は低く制約される。
【0043】
一方、メカニカルフロス法により、同程度の高濃度の導電性充填剤が分散された軟質ポリウレタンフォームを得ることは可能ある。というのも、メカニカルフロス法では、ポリオール等の原料に導電性充填剤等を分散させ、さらにエアー等の気体を予備攪拌して、予め、気体を分散させたポリオール等の混合物を作る。その後、イソシアネートと攪拌・混合させて、反応させる。このとき、水を使用して泡化反応をさせてもよいが、いずれにしても、イソシアネートとの反応直後の反応混合物には、気体が分散されているので、発泡反応の前後で、体積変動が比較的少ない。したがって、メカニカルフロス法による製造方法で得られた軟質ポリウレタンフォームは、軟質スラブ用の配合よりも、より高濃度に導電性充填剤等を分散させることができる。よって、抵抗値をより低くすることができる。
【0044】
(メカニカルフロス法)
メカニカルフロス法では、通常の軟質スラブ系のポリウレタンフォームを製造する際の発泡剤を使用せず、ポリウレタン発泡体の前記原料に不活性ガスを吹き込み、撹拌、混合して原料分散液中に多数の微細なセル(気泡)を形成する方法である。このメカニカルフロス法では、温度上昇により不活性ガスが膨張するもので、化学発泡のようなポリイソシアネートと水との反応による炭酸ガスの発生を伴わない。そして、係る原料成分を反応及び硬化させることにより、目的とするポリウレタン発泡体を製造することができる。このメカニカルフロス法によれば、ポリウレタン発泡体中のセルを微細にすることができると同時に、セルを均一に形成することができる。
【0045】
不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス等が用いられる。不活性ガスの使用量は、前記原料分散液100mlに対して5〜500mlの範囲であることが好ましい。不活性ガスの使用量が5ml未満の場合には、不活性ガスに基づく発泡体のセルが十分に形成されず、発泡体の低密度化を図ることが難しくなる。その一方、500mlを越える場合には、不活性ガスに基づく発泡体のセルの粗化が避けられなくなり、好ましくない。
【0046】
CNTの配合量により、原料分散液の撹拌については、その回転数を500〜2000回転/分に設定し、十分に撹拌することが好ましい。この回転数が500回転/分を下回る場合、背圧が高くなり、撹拌不良及びセルのむらが生じて好ましくない。一方、2000回転/分を上回る場合、モータなどの撹拌装置として大型で撹拌能力の高いものを必要とし好ましくない。
【0047】
(ポリウレタン発泡体)
前述のようにメカニカルフロス法により、ポリウレタン発泡体の原料分散液を加熱して反応及び硬化させることによりポリウレタン発泡体が製造される。得られるポリウレタン発泡体は、例えば軟質ポリウレタン発泡体である。ここで、軟質ポリウレタン発泡体は、連続気泡構造を有し、柔軟性があって、かつ復元性を有するポリウレタンの発泡体である。
【0048】
ウレタン化反応の際には、ポリウレタン発泡体の原料成分を直接反応させる方法のほか、プレポリマー法を採用することができる。すなわち、プレポリマー法は、ポリオールとポリイソシアネートとの各一部を事前に反応させて末端にイソシアネート基又は水酸基を有するプレポリマーを得、それに残りのポリオール又はポリイソシアネートを反応させる方法である。
【0049】
ポリウレタン発泡体が形成される際の反応は複雑であるが、基本的には次のような反応が主体となっている。すなわち、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応(付加重合反応、樹脂化反応)及びその反応生成物とポリイソシアネートとの硬化(架橋)反応(アロファネート反応、ビューレット反応等)である。また、発泡剤として、水を用いる場合には、水がイソシアネートと反応し、炭酸ガスを発生(泡化反応)させる。このようにして得られるポリウレタン発泡体は、骨格が三次元網目状に延び、その間には多数の微細なセルが均一に形成された構造を有している。また、ポリウレタン発泡体は、ハードセグメントとソフトセグメントとにより構成されるポリウレタンの性質に基づいて一定の強度と所要の弾力性を発揮することができる。
【0050】
このようにして得られるポリウレタン発泡体は、画像形成装置におけるトナー供給ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等として好適に用いられる。ポリウレタン発泡体は、整泡剤の含有量・エアーの含有量を変化させることによってセル径を調節することができるため、ポリウレタン発泡体をトナー供給ローラとして使用した場合、トナーの収容性や搬送性を高めることができ、転写ローラの転写性を高めることができると共に、クリーニングローラの掻き取り性を高めることができる。これらのOA用ロールとして用いた場合には、特に本発明は電圧変動の影響を受けにくい特性を有するので、特に有益である。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1〜2 及び比較例1〜3)
各実施例及び比較例におけるポリウレタン発泡体の原料を表1に示す組成にて調製した。表1における各成分の含有量は質量部を表す。また、各成分の内容を以下に示す。
【0053】
ポリエーテルポリオール:プロピレングリコール系のジオール、質量平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、三井武田ケミカル(株)製、商品名「アクトコールED−37B
ポリマーポリオール:グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオールにスチレンとアクリロニトリルの混合物をグラフト重合したもの、質量平均分子量3700、水酸基価31mgKOH/g、水酸基についての官能基数3、三井武田ケミカル(株)製、商品名POP−24/30
架橋剤(TMP):トリメチロールプロパン
整泡剤:シリコーン(直鎖ジメチルポリシロキサン)、GESilicones社製、商品名「NiaxSiliconeL5614」
導電性部材1(CNT): バイエルマテリアルサイエンス社製、マルチウォールカーボンナノチューブC150P(チューブ径13〜16nm、長さ1〜10μm)、
三井物産、マルチウォールカーボンナノチューブMWNT−7(チューブ径40〜90nm、長さ4μm以上)、
ナノシル社製、マルチウォールカーボンナノチューブNC7000(チューブ径8〜10nm、長さ約1.5μm)
導電性部材2(カーボンブラック): ケッチェンブラック、_ライオン(株)製、商品名「ケッチェンブラックEC300J」
ポリイソシアネート:カルボジイミド変性MDI、イソシアネート基含有量30.88%、日本ポリウレタン工業(株)製、商品名ミリオネートMTL−S
【0054】
(CNTの予備分散)
バイエルマテリアルサイエンス社製、マルチウォールカーボンナノチューブC150P(チューブ径(直径、繊維径)13〜16nm、長さ1〜10μm)180g(ポリオール分散液全体に対し6重量%)を、分散剤として、ナイミーンS220を180g(6重量%)使用し、ポリエーテルポリオール(プロピレングリコール系のジオール、質量平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、三井武田ケミカル(株)製、商品名「アクトコールED−37B)に加えて合計3000gとした。この混合物をビーズミルにて3時間処理し、カーボンナノチューブ分散液を得た。このときの分散液の粘度は、13000cPとなり、実用性に耐えるものであった。また、カーボンナノチューブの濃度をポリオール分散液全体に対し15重量%とする分散液も作成できた。
【0055】
なお、分散剤として、ナイミーンS220に代えて、エマルゲンA60を用いて、ポリオール分散液全体に対し3重量%(CNTも3重量%)及び6重量%(CNTも6重量%)を配合し、上記と同様に混合・分散処理を行った。しかし、これらの分散液の粘度は、30万cP以上となり、回転型B型粘度型の測定限界を超えた。さらに、分散剤を全く用いないで、CNTを3重量%で、上記、混合・分散処理を行ったが、やはり、これらの分散液の粘度は、30万cP以上となり、回転型B型粘度型の測定限界を超えた。(CNTを、三井物産のものにかえても、同様であった。)
【0056】
(メカニカルフロス法による混合)
前記原料を1000回転/分の速度で撹拌しながら、不活性ガスとしての窒素ガスを原料100ml当たり5〜500mlの範囲で吹き込み、原料中に窒素ガスを微細に分散させて泡状を呈する原料分散液を得た。窒素ガスの吹き込み量は、各例における発泡体の見掛け密度の目標値になるように設定した。
【0057】
(加熱キュア)
その後、得られたポリウレタン発泡体を、養生加熱として、110℃に加熱された10mの加熱ゾーンを通過させて2分間加熱を行った。さらに、後加熱として、ポリウレタン発泡体を加熱炉に入れ、110℃で4時間加熱処理を行った。このようにして所望の軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0058】
ここで、実施例1、2、比較例1〜3では、従来の金型を用いて140℃で30分間モールド成形を行い、ポリウレタン発泡体を得た。比較例1では、導電材として、ケッチェンブラックを使用し、比較例2、3では、導電材として、チューブ径8〜10nmのCNTを用いたものである。
【0059】
以上のようにして得られた各例の軟質ポリウレタン発泡体について、下記に示す見掛け密度、平均セル径、圧縮残留ひずみ、硬さ及び抵抗値を測定した。
見掛け密度(kg/m):JISK7222:1999に準拠して測定した。
圧縮残留ひずみ(%):JISK6400−4:2004に準拠して測定した。
硬さ(N):JISK6400−2:2004に準拠して測定した。
【0060】
電気抵抗測定方法については、下記の環境条件下に24時間サンプルを置いた後に、以下のように測定した。
1. 測定治具にローラをセットして、ローラの両端にそれぞれ500gの荷重をかける。
2. 電圧を100,1000Vと変化させ、それぞれの抵抗値を測定する。
3. 1000Vまで測定したら、ローラの周方向(90°ずつ)を変えて測定。
4. 2.〜3.を繰り返し、4方向の抵抗値を測定する。
4方向の100,1000Vの各電圧の平均値をローラの各電圧の抵抗値とする。
尚、HH環境とは室温:28℃、湿度:85%、NN環境とは室温:22℃、湿度:55%、LL環境とは室温:10℃、 湿度:15%、である。
抵抗測定器:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
比較例1のケッチェンブラック配合は、LL環境・NN環境において、抵抗値が電圧に依存し、電圧変動する問題があった。(なお、HH環境においては、変動により影響は小さい。)また、ケッチェンブラックを多量に配合して、抵抗値を大幅に下げようとしても、ポリオールに分散させると、高濃度となり、粘度が非常に高くなり、液の流動性を失うため、ポリウレタンフォームの製造には、不適である。
【0064】
ケッチェンブラックに代えて、チューブ径が8〜10nmのCNTを用いた(比較例2、3)。特定の分散剤の効果により、比較的低粘度の分散液を得る事ができたため、ポリウレタンフォームを得る事ができた。特に、高濃度(5.3%)品のフォームは、抵抗値の低いものを得ることができた。しかし、低濃度(3.3%)品において、抵抗値の電圧依存性が大きく、課題をみたさない。
一方、チューブ径が13〜16nm(実施例1),40〜90nm(実施例2)のCNTを用いると、低粘度のCNT分散液により、ポリウレタンフォーム樹脂基準でCNT濃度が3.3%(実施例1と実施例2)、および高濃度(5.3%)の導電性を有するポリウレタンフォームを得ることができた。低濃度(3.3%)品においては、実施例1と実施例2は、NN環境だけでなく、LL環境においても、電圧依存性が非常に少ない優れた電気抵抗値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブとポリマーとを含む、複合材料において、
前記カーボンナノチューブの直径が、11〜90nmであり、
低温低湿環境の下で、下記式(1)の特性を有することを特徴とする、複合材料。
−0.4≦log10100−log101000≦0.4 (1)
{ここで、R100は、印加電圧100Vのときの体積抵抗値(Ω・cm)であり、R1000は、印加電圧1000Vのときの体積抵抗(Ω・cm)である。}
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの含有量が、複合材料の全質量を基準として1〜4質量%である、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記ポリマーが、ウレタン系樹脂である、請求項1又は2記載の複合材料。
【請求項4】
前記ウレタン系樹脂が、ポリウレタン発泡体である、請求項3記載の複合材料。
【請求項5】
前記ウレタン系樹脂が、カーボンナノチューブポリオール分散液と、ポリイソシアネートを混合する工程を経て製造される、請求項3又は4記載の複合材料。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブポリオール分散液が、下記式1で表される化合物の少なくとも一種を含有する、ナノカーボン分散剤を含む、請求項5記載の複合材料。
R−X−(Y) (式1)
{式中、Rは、炭素数mが13〜21の炭化水素基であり、Xは、酸素原子、窒素原子、CO、COO、CON、又は直接結合を示し、Yは、相互に異なる又は同一であるポリアルキレンオキサイド基[C(C2a+1)・O]−H を示す(ここで、aは0〜2の整数を示し、bは1〜100である)、nは、Xが酸素原子、CO、COO、直接結合の場合1であり、Xが窒素原子、CONの場合2を示す。}
【請求項7】
前記分散剤が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類を含む、請求項6記載の複合材料。
【請求項8】
前記ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が下記式2の化合物である、請求項7記載の複合材料。
R−N(AO) (式2)
{ここで、Rは、炭素数13〜21のアルキル基(ここで、当該アルキル基の一以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよく、更には、隣接する窒素原子との間にカルボニル基が存在していてもよい)を示し、AOは、相互に異なる又は同一であるポリアルキレンオキサイド基[C(C2a+1)・O]−H を示す(ここで、aは0〜2の整数を示し、bは1〜100である)。}
【請求項9】
前記カーボンナノチューブポリオール分散液が、ポリオールにカーボンナノチューブを直接分散させる方法により製造されたものである、請求項5〜8のいずれか一項記載の複合材料。

【公開番号】特開2010−248383(P2010−248383A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99930(P2009−99930)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】