説明

複合材組成物

【課題】プリフォームを用いて製造する未硬化組成物及び硬化複合材料を提供する。
【解決手段】プリフォームは、(a)強化ファブリック層と、(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維とを含有し、熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない、未硬化複合材組成物、硬化複合材料及び硬化複合材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材料のプリフォームに関する。本発明はさらに、プリフォームを用いて製造する未硬化組成物及び硬化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維及び樹脂マトリックスから製造される複合材料を使用して帆船本体から航空機部品におよぶ多様な製品が形成される。複合材料構造は、数多くの利点、例えば最先端の構造用合金に近い又はそれを上回る比強度を有する。
【0003】
従来、複合体又は複合構造を形成するのにいくつかのプロセス又は方法が用いられる。これらの方法のほとんどでは、最終複合構造の輪郭をとる、繊維材料の「レイアップ」、即ちプリフォームを形成する。複合構造用のプリフォームを形成するこのような方法の1つは、強化層としてスティッチを施したノンクリンプファブリックを用いる。ノンクリンプファブリック(NCF)は、繊維がまっすぐであり、それにより繊維支配の複合材料特性、例えば張力や圧縮を向上するので織布より有利となることがある。さらに、ノンクリンプファブリックは、織布と比べて異なる繊維角度で製造され、ファブリックに3つ以上の層を入れる融通性があり、複合材料の効率的な製造を可能にする。
【0004】
ノンクリンプファブリックのスティッチは、主に非クリンプ法での取り扱い時に、ノンクリンプファブリックのプライをまとめるのに用いる。ノンクリンプファブリック(NCF)に用いる従来のスティッチは通常、不溶性ポリエステル又はナイロン繊維である。このような不溶性スティッチを使用すると、硬化NCF複合材料に樹脂富化領域が形成され、その結果として熱サイクル時に樹脂富化領域での残留応力により硬化複合材料中に微小亀裂が形成されることがある。
【0005】
熱可塑性強靱化剤を含有する強靱化樹脂系は、複合材料の耐微小亀裂性を向上すると報告されている。しかし、非強靱化樹脂は強靱化樹脂より複合材料製造での加工が容易なことがある。これは、複合材料製造に用いられる樹脂トランスファー成形法では通常、プリフォームを樹脂成分で完全に湿潤、含浸するために、樹脂成分が比較的低い注入粘度を持つことが必要であるからである。さらに、複合材料の製造に非強靱化樹脂を用いると、低コストの樹脂及び加工方法の選択幅を広げることができる。また、強靱化樹脂でも耐微小亀裂性をさらに向上することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7767597号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、複合構造に強靱化剤を直接供給し、結果として耐微小亀裂性を向上する最適なノンクリンプファブリックの選択及び設計が必要とされている。さらに、ノンクリンプファブリックとともに非強靱化樹脂系を用いて、最終用途で必要な物性及び性能向上を示す複合材料を製造することが必要とされている。本発明は、複合材組成物に伴う上記その他の課題に対するさらなる解決策を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明はプリフォーム(予備成形物)を提供する。プリフォームは、(a)強化ファブリック層と、(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維とを含有する。熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0009】
一実施形態では、本発明は、未硬化複合材組成物を提供する。未硬化複合材組成物は(a)強化ファブリック層と、(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維と、(c)未硬化エポキシ樹脂とを含有する。熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0010】
一実施形態では、本発明は方法を提供する。本方法は、(a)未硬化エポキシ樹脂を含有する配合物を熱可塑性ブロックコポリマー繊維が組み込まれた強化ファブリック層と接触させて未硬化複合材組成物を形成する。熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0011】
一実施形態では、本発明は、硬化複合材料を提供する。硬化複合材料は、(a)強化ファブリック層と、(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維と、(c)硬化エポキシ樹脂とを含有する。熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0012】
一実施形態では、本発明は、熱可塑性ブロックコポリマーを含有する繊維を提供する。熱可塑性ブロックは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0013】
本発明の上記その他の特徴、実施形態及び利点は、以下の詳細な説明を参照することで、一層容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付図面を参照にして以下の詳細な説明を読むことで、一層明らかになるであろう。
【図1】本発明の一実施形態の未硬化及び硬化樹脂中の溶解性スティッチの画像である。
【図2】本発明の一実施形態の硬化複合材料中の溶解性スティッチの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲において、多数の用語に言及するが、その用語が次の意味を有するものと定義する。
【0016】
単数表現は、文脈上明らかにそうでない場合以外は、複数も含む。
【0017】
「任意の」又は「所望に応じて」は、後述する事象や状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、関連する説明は事象が起こった場合と事象が起こらなかった場合両方を包含する。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して用いた近似的な表示は、それが関与する基本機能に変化をもたらすことなく変動することが許される量的表現を修飾するのに適用することがある。したがって、「約」及び「実質的に」のような用語で修飾された値は、特定された正確な値に限定されない。少なくともいくつかの例では、近似的な表示はその値を測定する計器の精度に対応する。同様に、「存在しない」は、用語と組合わせて用いることができ、ごくわずかな数又は量を含んでも、組合わせた用語が存在しないと見なす。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、文脈上又は文言で示していない限り、範囲の限定はその上下限を組合せたり、交換することができ、このような範囲は、表示通りでありかつすべての下位範囲を包含する。
【0019】
一実施形態では、本発明はプリフォームを提供する。プリフォームは、(a)強化ファブリック層と、(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維とを含有する。熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0020】
ここで用いる用語「プリフォーム」は、樹脂とともに用いて所望の形状の複合構造を形成することができる予備成形繊維強化構造をいう。一実施形態では、プリフォームは、注入液状樹脂から複合構造を製造するのに適当な強化ファブリック層を含有する。一実施形態では、プリフォームは複数の強化ファブリック層(即ちプライ)を含有し、この場合複数の強化ファブリック層を積み重ねて必要な厚さのプリフォームを形成する。
【0021】
ここで用いる用語「ファブリック」は、繊維構造を形成するように製造された繊維のアセンブリをいう。アセンブリにまとめるには、繊維同士を或いは繊維を第2の材料と機械的に絡み合わせて、これらの繊維を束縛し、繊維を適切な位置に保持し、こうして取り扱いに十分な一体性をアセンブリに与える。ファブリックの種類は、用いた繊維の配向及び繊維をまとめるのに用いた種々の組織化方法により分類することができる。ここで用いる用語「繊維」は、単一の繊維、フィラメント又は糸或いは複数の繊維、フィラメント又は糸を包含する。一実施形態では、用語「繊維」は、無撚り又は撚りの繊維、フィラメント又は糸を包含する。一実施形態では、用語「繊維」は、ストランド、トウ又はヤーンを包含する。
【0022】
一実施形態では、強化ファブリック層はファブリックの種類又はファブリック内での繊維の配置を特徴とすることができる。一実施形態では、強化ファブリック層は、少なくとも1つの織布、不織布、編ファブリック、ブレーデッド・ファブリック、TFP(tailored fiber placement)法によるファブリック、エンブロイダリー(刺繍機を用いた)ファブリック又は多軸ファブリックを含む。一実施形態では、強化ファブリック層は複数のファブリック層(即ちプライ)を含み、少なくとも1つのプライは上記のファブリック構成の1つを含む。織布の適当な例には、極軸織、螺旋状織及び単織(uniweave)があるが、これらに限らない。不織布の適当な例には、マットファブリック、フェルト、ベール及びチョップドストランドマットがあるが、これらに限らない。多軸ファブリックの適当な例には、多軸たて編ファブリック、ノンクリンプファブリック(NCF)及び多方向ファブリックがあるが、これらに限らない。
【0023】
一実施形態では、強化ファブリック層は一方向ファブリック(即ち、すべての繊維が単一方向に配向している)を含む。別の実施形態では、強化層は多軸ファブリックを含む。ここで用いる用語「多軸」は、繊維のプライを一つおきにいくつかの異なる方向に並べて必要な方向に最適な強度及び剛性をファブリックに付与した状態のファブリックを指す。一実施形態では、繊維は、0°、+30°、−30°、+45°、−45°、+60°、−60°又は90°の1つ又は2つ以上の方向に配向することができる。
【0024】
一実施形態では、強化ファブリック層は多軸ノンクリンプファブリックを含む。ここで用いる用語「ノンクリンプ」は、1つ又は複数の繊維層を互いに重ね、これを繊維が実質的にクリンプせずに真っ直ぐなままになるようにスティッチ(縫合)又はバインダーの適用によりファブリックに変成した状態のファブリックを指す。
【0025】
一実施形態では、強化構造ファブリックを構成する繊維には、紡糸繊維、押出繊維、キャスト繊維、連続繊維、ランダム繊維、不連続繊維、チョップド繊維、ホイスカー、フィラメント、リボン、テープ、ベール、フリース、中空繊維及びこれらの組合せがあるが、これらに限らない。
【0026】
一実施形態では、強化ファブリック層は、ガラス繊維、石英繊維、ポリマー繊維又はセラミック繊維を含む。繊維の適当な例には、ガラス繊維(例えば、PPG、AGY、St. Gobain、Owens−Corning、Johns Manvilleなどの業者からの石英、E−glass、S−2 glass、R−glass)、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維(例えば、米国デラウェア州ウィルミントン所在のE.I. DuPont社から入手できるNYLON(登録商標)ポリアミド)、芳香族ポリアミド繊維(例えば、米国デラウェア州ウィルミントン所在のE.I. DuPont社から入手できるKEVLAR(登録商標)芳香族ポリアミド、又はオーストリア所在のLenzing Aktiengesellschaft社から入手できるP84(登録商標)芳香族ポリアミド)、ポリイミド繊維(例えば、米国デラウェア州ウィルミントン所在のE.I. DuPont社から入手できるKAPTON(登録商標)ポリイミド)又は長鎖ポリエチレン(例えば、米国ニュージャージー州モリスタウン所在のHoneywell International社からのSPECTRA(登録商標)ポリエチレン及び東洋紡株式会社からのダイニーマ(登録商標)ポリエチレン)があるが、これらに限らない。
【0027】
一実施形態では、強化ファブリック層は、炭素繊維を含む。炭素繊維の適当な例には、AS2C、AS4、AS4C、AS4D、AS7、IM6、IM7、IM9及びPV42/850(Hexcel社製);トレカT300、T300J、T400H、T600S、T700S、T700G、T800H、T800S、T1000G、M35J、M40J、M46J、M50J、M55J、M60J、M30S、M30G及びM40(東レ株式会社製);HTS12K/24K、G30−500 3K/6K/12K、G30−500 12K、G30−700 12K、G30−700 24K F402、G40−800 24K、STS 24K、HTR40 F22 24K 1550tex(東邦テナックス株式会社製);34−700、34−700WD、34−600、34−600WD、34−600(Grafil社製);及びT−300、T−650/35、T−300C、T−650/35C(Cytec Industries社製)があるが、これらに限らない。
【0028】
上述のように、強化ファブリック層はさらに、熱可塑性ブロックコポリマー繊維を強化ファブリック層に組み込まれた状態で含む。一実施形態では、強化ファブリック層は、複数の熱可塑性コポリマー繊維が内部に組み込まれている。一実施形態では、強化ファブリック層は複数のプライを有し、少なくとも1つのプライは1つ又は2つ以上の熱可塑性コポリマー繊維が内部に組み込まれている。
【0029】
一実施形態では、本発明は、熱可塑性ブロックコポリマーを含有する繊維を提供する。熱可塑性ブロックは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0030】
一実施形態では、熱可塑性コポリマー繊維は、単一の繊維、フィラメント又は糸或いは複数の繊維、フィラメント又は糸を包含する。一実施形態では、熱可塑性コポリマー繊維は、無撚り又は撚りの繊維、フィラメント又は糸を包含する。一実施形態では、熱可塑性コポリマー繊維はストランド、トウ又はヤーンを包含する。熱可塑性コポリマー繊維の適当な例には、紡糸繊維、押出繊維、キャスト繊維、連続繊維、ランダム繊維、不連続繊維、チョップド繊維、ホイスカー、フィラメント、リボン、テープ、中空繊維、ベール、フリース及びこれらの組合せがあるが、これらに限らない。
【0031】
一実施形態では、熱可塑性コポリマー繊維はモノフィラメントである。別の実施形態では、熱可塑性コポリマー繊維は、複数のモノフィラメントからなるヤーンである。熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、モノフィラメント又はヤーン(ヤーンが複数のモノフィラメントを含有する場合)の直径によって特徴づけることができる。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、直径が約1μm〜約100μmの範囲であるモノフィラメントを含有する。他の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、各直径が約1μm〜約100μmの範囲であるモノフィラメントを複数含有する。
【0032】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、熱可塑性コポリマー繊維を未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解性にする構造単位を有する。一実施形態では、この構造単位は、未硬化エポキシ樹脂と物理的に相溶し、熱可塑性コポリマー繊維を未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解性にする。別の実施形態では、この構造単位は、未硬化エポキシ樹脂と化学的に相溶し、熱可塑性コポリマー繊維を未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解性にする。他の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、未硬化エポキシ樹脂と化学反応性である構造単位を有する。この構造単位は、エポキシモノマー又は硬化剤又はエポキシモノマーと硬化剤の両方と化学反応することができる。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、未硬化エポキシ樹脂と水素結合を形成できる構造単位を有する。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、未硬化エポキシ樹脂と極性結合を形成できる構造単位を有する。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーはメチルメタクリレート構造単位を有する。
【0033】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維はさらに、熱可塑性コポリマー繊維を硬化エポキシ樹脂に実質的に不溶性にする構造単位を有する。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維はさらに、メチルメタクリレート構造単位と相溶せず、硬化エポキシ樹脂中で相分離する構造単位を有する。
【0034】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーはジブロックコポリマーである。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーはトリブロックコポリマーである。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、ポリメチルメタクリレートと、ポリオレフィン(例えば、ポリブタジエン)、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンビニルアセテート又はポリビニルアセテートの1つ又は2つ以上とのブロックコポリマーである。
【0035】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、2つのポリメチルメタクリレートブロック及び1つのポリブチルアクリレートブロックを有するブロックコポリマーであり、PMMA−PBA−PMMAと表すことができる。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロック及びポリメチルメタクリレートブロックを有し、PS−PBd−PMMAと表すことができる。
【0036】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーの数平均分子量は、約20000g/mol〜約400000g/molの範囲である。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーの数平均分子量は、約40000g/mol〜約200000g/molの範囲である。他の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーの数平均分子量は、約50000g/mol〜約100000g/molの範囲である。
【0037】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位が熱可塑性ブロックコポリマーの10重量%〜約80重量%の範囲の量で存在する。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位が熱可塑性ブロックコポリマーの20重量%〜約70重量%の範囲の量で存在する。他の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位が熱可塑性ブロックコポリマーの30重量%〜約60重量%の範囲の量で存在する。
【0038】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、スティッチ、編む、タフト、経編(warp knitting)、クリンプ、パンチ、織る、単織り、組む(ブレーディング)、過巻(overwinding)、かみ合わせ(intermeshing)、混合(commingling)、整列(aligning)、撚る、巻き付け(coiling)、節止め(knotting)、スレッディング(threading)、マット化、共織り、紡糸接合、スプレー、積層、ベール熱接合(veil thermal bonding)又はベールスティッチから選択される方法で強化ファブリック層に組み込まれる。
【0039】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、スティッチの形態で強化ファブリック層に組み込まれる。一実施形態では、スティッチは、プライを実質的に横断方向に進み、所定のパターンに従う。パターンは、トリコットクローズド、オープンピラー(pillar)スティッチ、クローズドピラースティッチ、オープントリコット−ピラースティッチ又はクローズドトリコット−ピラースティッチ又はこれらの変種にすることができる。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、跡を残さないスティッチの形態で強化ファブリック層に組み込まれる。
【0040】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、プリフォームの総重量に基づいて約0.1重量%〜約30重量%の範囲の量で存在する。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、プリフォームの総重量に基づいて約0.5重量%〜約20重量%の範囲の量で存在する。他の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、プリフォームの総重量に基づいて約1重量%〜約10重量%の範囲の量で存在する。
【0041】
一実施形態では、強化ファブリック層の各層内での、熱可塑性コポリマー繊維対強化繊維の数の比は約0.1:99〜約99:1の範囲である。別の実施形態では、強化ファブリック層の各層内での、熱可塑性コポリマー繊維対強化繊維の数の比は約20:80〜約80:20の範囲である。他の実施形態では、強化ファブリック層の各層内での、熱可塑性コポリマー繊維対強化繊維の数の比は約30:70〜約70:30の範囲である。
【0042】
上述したように、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、硬化プロセスの準備段階の間に実質的に溶解するように設計される。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、エポキシ樹脂の硬化温度に昇温する間に実質的に溶解するように設計される。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーの溶解温度は樹脂の硬化温度未満である。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、未硬化エポキシ樹脂に約25℃〜約180℃の範囲の温度で実質的に溶解する。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、未硬化エポキシ樹脂に約40℃〜約160℃の範囲の温度で実質的に溶解する。他の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、未硬化エポキシ樹脂に約60℃〜約140℃の範囲の温度で実質的に溶解する。
【0043】
ここで用いる用語「実質的に溶解」は、強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性コポリマー繊維の約0.1重量%超の濃度での未硬化エポキシ樹脂への熱可塑性コポリマー繊維の溶解をいう。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性コポリマー繊維の約1重量%超の濃度で未硬化エポキシ樹脂に溶解する。別の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性コポリマー繊維の約10重量%超の濃度で未硬化エポキシ樹脂に溶解する。他の実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は、強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性コポリマー繊維の約30重量%超の濃度で未硬化エポキシ樹脂に溶解する。
【0044】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解しない。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、硬化エポキシ樹脂中で実質的に相分離し、ナノ粒子状熱可塑性ブロックコポリマー不連続相を形成する。一実施形態では、ナノ粒子状熱可塑性ブロックコポリマー不連続相のドメインサイズ分布は、約1nm〜約1000nmの範囲である。別の実施形態では、ナノ粒子状熱可塑性ブロックコポリマー不連続相のドメインサイズ分布は、約1nm〜約500nmの範囲である。他の実施形態では、ナノ粒子状熱可塑性ブロックコポリマー不連続相のドメインサイズ分布は、約1nm〜約250nmの範囲である。さらに他の実施形態では、ナノ粒子状熱可塑性ブロックコポリマー不連続相のドメインサイズ分布は、約1nm〜約100nmの範囲である。一実施形態では、不連続相は、さらに小さいナノ粒子の凝集体の形態をとることができる。別の実施形態では、さらに小さいナノ粒子の凝集体のドメインサイズは約10nm〜約500μmの範囲である。
【0045】
一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマー繊維は硬化エポキシ樹脂中で実質的に検出不可能である。一実施形態では、熱可塑性コポリマー繊維は、硬化エポキシ樹脂の機械特性をさらに向上する。一実施形態では、熱可塑性コポリマー繊維は、硬化エポキシ樹脂中で強靱化剤として作用する。一実施形態では、熱可塑性ブロックコポリマーは、硬化エポキシ樹脂中に実質的に均一に分散し、硬化複合材料の耐微小亀裂性を向上する。
【0046】
一実施形態では、本発明は、未硬化複合材組成物を提供する。未硬化複合材組成物は、(a)強化ファブリック層と、(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維と、(c)未硬化エポキシ樹脂とを含有する。
【0047】
一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、少なくとも1つの反応性エポキシ基を有する反応性モノマーを含有する。一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、複数の反応性エポキシ基を有する反応性モノマーを含有する。一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、2つのエポキシ基を有する少なくとも1つのモノマーを含有し、未硬化エポキシ樹脂は硬化剤での処理により硬化エポキシ樹脂に変換される。一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、3つ以上のエポキシ基を有する少なくとも1つのモノマーを含有し、未硬化エポキシ樹脂は、硬化剤での処理により硬化エポキシ樹脂に変換される。
【0048】
一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、下記成分、多価フェノールポリエーテルアルコール、エポキシ化フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂などのノボラック樹脂のグリシジルエーテル、単核の二及び三価フェノールのグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどのビスフェノールのグリシジルエーテル、多核のフェノールのグリシジルエーテル、脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル、脂肪族二酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル、グリシジルアミド、アミド含有エポキシなどの窒素含有グリシジルエポキシ、シアヌル酸のグリシジル誘導体、メラミン由来グリシジル樹脂、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテルアミンなどのグリシジルアミン、グリシジルトリアジン、チオグリシジルエーテル、ケイ素含有グリシジルエーテル、モノエポキシアルコール、グリシジルアルデヒド、2、2’−ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブタジエンジオキシド又はビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルの1つ又は2つ以上を含有する。
【0049】
一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、下記成分、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、米国テキサス州ヒューストン所在Shell Chemical社から商品名「EPON828」、「EPON1004」及び「EPON1001F」及び米国ミシガン州ミッドランド所在Dow Chemical社から商品名「DER−332」及び「DER−334」にて入手できるもの)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、米国ニューヨーク州ホーソーン所在Ciba−Geigy社から商品名「ARALDITE GY281」にて及びShell Chemical社から商品名「EPON862」にて入手できるもの)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、米国コネチカット州ダンベリー所在Union Carbide社から商品名「ERL4206」にて入手できるもの)、3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、Union Carbide社から商品名「ERL−4221」にて入手できるもの)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン(例えば、Union Carbide社から商品名「ERL−4234」にて入手できるもの)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(例えば、Union Carbide社から商品名「ERL−4299」にて入手できるもの)、ジペンテンジオキサイド(例えば、Union Carbide社から商品名「ERL−4269」にて入手できるもの)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMC社から商品名「OXIRON2001」にて入手できるもの)、エポキシシラン、例えばβ−3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン及びγ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Ciba−Geigy社から商品名「ARALDITE RD−2」にて入手できるもの)、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、Shell Chemical社から商品名「EPONEX1510」にて入手できるもの)又はフェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical社から商品名「DEN−431」及び「DEN−438」にて入手できるもの)の1つ又は2つ以上を含有する。
【0050】
一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、Cytec Engineered Materials社(米国アリゾナ州テンピ所在)から市販されている「Cycom977−2」、「Cycom977−20」、「CycomPR520」及び「Cycom5208」;Hexcel社(米国カルフォルニア州ダブリン所在)から市販されている「HexFLow RTM−6」及び「HexFlow VRM34」;又はHenkel−Loctite社(米国カルフォルニア州ベイポイント所在)から市販されている「LX70412.0」の1つ又は2つ以上を含有する。
【0051】
一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、未硬化複合材組成物の全体積に基づいて約10体積%〜約80体積%の範囲の量で未硬化複合材組成物中に存在する。別の実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、未硬化複合材組成物の全体積に基づいて約20体積%〜約70体積%の範囲の量で未硬化複合材組成物中に存在する。他の実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、未硬化複合材組成物の全体積に基づいて約30体積%〜約60体積%の範囲の量で未硬化複合材組成物中に存在する。
【0052】
一実施形態では、強化ファブリック層は、未硬化複合材組成物の全体積に基づいて約20体積%〜約90体積%の範囲の量で未硬化複合材組成物中に存在する。別の実施形態では、強化ファブリック層は、未硬化複合材組成物の全体積に基づいて約30体積%〜約80体積%の範囲の量で未硬化複合材組成物中に存在する。他の実施形態では、強化ファブリック層は、未硬化複合材組成物の全体積に基づいて約40体積%〜約70体積%の範囲の量で未硬化複合材組成物中に存在する。
【0053】
一実施形態では、本発明は方法を提供する。本方法は、(a)未硬化エポキシ樹脂を含有する配合物を熱可塑性ブロックコポリマー繊維が組み込まれた強化ファブリック層と接触させて未硬化複合材組成物を形成する。
【0054】
一実施形態では、本方法は、熱可塑性ポリマー繊維を強化ファブリック層に組み込む工程を含む。一実施形態では、本方法はさらに、構造ファブリック中に補強繊維を組み込んだ後、構造ファブリックの層(即ちプライ)を積層及び切断する工程を含んでもよい。一実施形態では、本方法はさらに、強化ファブリック層の積層及び切断後、強化ファブリックの層を付形する工程を含む。
【0055】
得られた強化ファブリック層は未硬化エポキシ樹脂を含有する配合物と接触させる。一実施形態では、接触は、Scrimp(Seeman Composites Resin Infusion Molding Process)成形、ハンドレイアップ、圧縮成形、引抜成形、「B段階」成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファー成形(RTM)、液状樹脂注入(LRI)、軟質成形型を用いた樹脂注入(RIFT)、真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、又は樹脂フィルム注入(RFI)条件で行うことができる。
【0056】
一実施形態では、本方法は、未硬化エポキシ樹脂を含有する配合物を強化ファブリック層中に注入する工程を含む。一実施形態では、本方法は、真空補助樹脂トランスファー法(以下VARTMともいう)を用いて未硬化樹脂を含有する配合物を強化ファブリック層中に注入する工程を含む。ここで用語「注入」及び「射出」は同義である。
【0057】
一実施形態では、周囲温度又は熱可塑性ブロックコポリマーの溶解温度未満の温度で注入又は射出を行うことができる。一実施形態では、約15℃〜約150℃の範囲の注入温度で未硬化エポキシ樹脂を強化ファブリック層中に注入することにより接触を行う。別の実施形態では、約30℃〜約120℃の範囲の注入温度で未硬化エポキシ樹脂を強化ファブリック層中に注入することにより接触を行う。他の実施形態では、約45℃〜約100℃の範囲の注入温度で未硬化エポキシ樹脂を強化ファブリック層中に注入することにより接触を行う。
【0058】
一実施形態では、本発明は、未硬化複合材組成物を提供し、これは未硬化エポキシ樹脂の粘度が比較的低いので硬化複合材組成物の製造に用いるのに適当である。一実施形態では、硬化エポキシ複合材料の製造に用いる未硬化エポキシ樹脂は、注入プロセス時に強化ファブリック層に完全、均一に接触するのに特に良好な粘度特性を有する。
【0059】
一実施形態では、配合物は、未硬化エポキシ樹脂及び追加の強靱化剤を含有する。一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂及び強靱化剤を含有する配合物は、注入プロセスに適当な粘度を有する。一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂は、実質的に強靱化剤を含有せず、未硬化エポキシ樹脂は注入プロセスに適当な粘度を有する。一実施形態では、未硬化エポキシ樹脂を含有する配合物の粘度は、注入温度(注入工程を行う温度)で約5センチポアズ〜約1200センチポアズの範囲である。別の実施形態では、配合物の粘度は、注入温度で約10センチポアズ〜約500センチポアズの範囲である。他の実施形態では、配合物の粘度は、注入温度で約20センチポアズ〜約100センチポアズの範囲である。
【0060】
一実施形態では、本方法はさらに、未硬化複合材組成物を加熱して熱可塑性ブロックコポリマーを実質的に溶解する工程を含む。一実施形態では、未硬化組成物を約30℃〜約220℃の範囲の温度に加熱する。別の実施形態では、未硬化組成物を約50℃〜約200℃の範囲の温度に加熱する。他の実施形態では、未硬化組成物を約75℃〜約150℃の範囲の温度に加熱する。
【0061】
一実施形態では、本方法はさらに、未硬化複合材組成物を硬化して硬化複合材料を得る工程を含む。一実施形態では、熱又は圧力又は熱と圧力両方を未硬化複合材組成物にかけることにより硬化を行う。一実施形態では、赤外線、マイクロ波、対流、誘導、超音波、輻射及びこれらの組合せから選択される熱源を用いて未硬化複合材組成物に熱を加えることにより、硬化を行う。
【0062】
一実施形態では、50℃〜約250℃の範囲の温度に未硬化組成物を加熱することにより硬化を行う。別の実施形態では、80℃〜約220℃の範囲の温度に未硬化組成物を加熱することにより硬化を行う。他の実施形態では、100℃〜約180℃の範囲の温度に未硬化組成物を加熱することにより硬化を行う。
【0063】
一実施形態では、本発明は硬化した複合材料を提供する。硬化複合材料は、(a)強化ファブリック層と、(b)強化ファブリック層に組み込んだ熱可塑性ブロックコポリマー繊維と、(c)硬化エポキシ樹脂とを含有する。熱可塑性ブロックコポリマーは、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない。
【0064】
一実施形態では、硬化複合材料は、微小亀裂形成に耐性がある。一実施形態では、硬化複合材料は、約−54℃〜約71℃の範囲での熱湿潤試験2000サイクル後、標準試験クーポンの断面に生じる微小亀裂の長さが約10000μm未満である。一実施形態では、硬化複合材料は、約−54℃〜約71℃の範囲での熱湿潤試験2000サイクル後、標準試験クーポンの断面に生じる微小亀裂の長さが約5000μm未満である。一実施形態では、硬化複合材料は、約−54℃〜約71℃の範囲での熱湿潤試験2000サイクル後、標準試験クーポンの断面に生じる微小亀裂の長さが約1000μm未満である。
【0065】
一実施形態では、物品を提供する。物品は上述のような硬化複合材料を含有する。一実施形態では、物品は、高強度と軽量を兼ね備える必要がある航空及び宇宙用途に有用である。一実施形態では、物品は、航空機の部品、例えば翼、胴体又は航空機エンジンのタービンブレードである。一実施形態では、物品は、航空機エンジンの部品である。別の実施形態では、物品は、宇宙船の耐力構造、自動車の耐力構造、建設材料、例えば梁及び屋根材、個人用通信機器、例えば携帯電話、家具、例えばテーブルや椅子、スポーツ用具、例えばテニスラケット及びゴルフクラブ、スポーツ施設の座席、電車車両及び機関車の耐力構造、個人用小型船舶、帆船及び大型船の耐力構造並びに上記の用途で高強度と軽量を兼ね備える必要がある非耐力構造に有用である。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明の方法及び実施形態を具体的に示すものである。特記しない限り、すべての成分は、Alpha Aesar社(米国マサチューセッツ州ワードヒル所在)、Sigma Aldrich社(米国ミズーリ州セントルイス所在)、Spectrum Chemical Manufacturing社(米国カルフォルニア州ガーデナ所在)などの一般的な化学薬品業者から市販されている。
【0067】
特記しない限り、エポキシ樹脂RTM6(米国カルフォルニア州ダブリン所在Hexcel社から入手)をすべての複合材料の未硬化樹脂として用いた。Arkema社から市販されているポリメチルメタクリレートブロックコポリマーPMMA−PBA−PMMA(M22、M22N)及びPMMA−PBd−PS(E20)を引き延ばして繊維にし、スティッチとして用いた。強化ファブリック層を製造する実験では、Hexcel社のポリエステルスティッチを有する炭素ノンクリンプファブリック(NCF)(T700GC、+60°/0°/0°/−60°)を用いた。ポリエステルスティッチをファブリックから取り除いた。PMMA−PBA−PMMA(M22、M22N)及びPMMA−PBd−PS(E20)繊維を用いて同様なスティッチ緻密度及びパターンでNCFファブリックに手作業でスティッチして、非溶解性スティッチのファブリックと溶解性スティッチのファブリックとを比較した。
【0068】
実施例1〜3:PMMAトリブロックコポリマーを用いた硬化複合材料の製造
M22スティッチを有するHexcel社NCFファブリック(T700G繊維)5〜7プライを、樹脂入口及び約30mmHg(完全真空)の真空レベルに到達する出口を有するナイロン真空バッグフィルムエンクロージャーに封入した。任意の工程として、第1層の真空バッグフィルムが完全真空に達するのに不十分であると判明した場合、第2層の真空バッグフィルムを適用することができる。真空に引いたままでアセンブリを約90℃に加熱した。RTM6樹脂(米国カルフォルニア州ダブリン所在Hexcel社から入手)を含有する未硬化樹脂配合物を80℃に加熱し供給チャンバーに入れ、完全真空下で脱泡した。注入に先立って、供給チャンバーの真空を約10インチHgに下げた。パーツを完全に満たしたら、入口及び出口ラインを樹脂供給及び真空から遮断した。樹脂を満たしたアセンブリを真空下180℃で2時間硬化して無ボイド硬化複合パネル(実施例1)を得た。M22N及びE20スティッチを有するNCFファブリックを同様に用いて、上述の方法により硬化複合パネルを製造した(それぞれ実施例2及び実施例3)。
【0069】
エポキシ樹脂及び複合材料中でのPMMAブロックコポリマーの溶解試験
PMMAブロックコポリマー繊維M22、M22N及びE20をRTM6樹脂プラックに入れてスティッチの溶解性を評価した。図1に示すように、硬化プロセス後、M22及びM22Nスティッチは完全に見えなくなったが、E20スティッチは目に見える状態のままだった。これによりM22及びM22N繊維は、E20繊維よりRTM6樹脂への溶解性が高いことが示された。
【0070】
図2は、M22とE20スティッチの両方がこれらのスティッチを用いて製造した複合材料に部分的に溶解することを示す(実施例1及び実施例3)。
【0071】
PMMAブロックコポリマーでスティッチしたNCFファブリックを用いて製造した複合材料の微小亀裂分析
注入後、複合材料パーツをウオータージェットで切断し、熱衝撃サイクルにかけた。Thermotron社の環境試験チャンバーを用いて複合パネルの熱湿潤サイクルを行った。熱衝撃チャンバーは高温(71℃)及び低温(−54℃)の2つのコンパートメントからなる。パーツを各チャンバー内に5分間保ち、これを1サイクルとした。サイクルの間、複合材料パネルを自立鉛直姿勢に置いた。
【0072】
400〜2000サイクル後のサンプルを微小亀裂形成の兆候があるか光学顕微鏡で検査した。倍率50xの顕微鏡及び社内開発の自動画像解析ソフトを用いて微小亀裂を分析した。各サンプルで微小亀裂の数と長さを3切断方向(0°、90°及び45°)を合わせて合計5.5インチ×1/8インチの断面で求めた。
【0073】
溶解性のPMMAブロックコポリマースティッチ(実施例1〜3)を用いて製造した複合材料に微小亀裂は認められなかった。
【0074】
上記の実施例は例示にすぎず、本発明のいくつかの特徴だけを例証するものである。特許請求の範囲は着想した広い範囲で本発明を請求することを目的としており、ここで示した実施例は可能な多種多様なすべての実施形態から選択された実施形態を具体的に示すものである。したがって、出願人は、特許請求の範囲が本発明の特徴を示すのに用いた実施例の選択に限定されないと考えている。特許請求の範囲で用いた用語「含む」、「含有する」及びこの文法上の異形は、論理的に境界を定め、「のみからなる」、「からなる」などの言及範囲が変動する(異なる)語句を包含する。必要に応じ、様々な範囲を与えたが、これらの範囲は、範囲内にあるすべての下位範囲を含む。これらの範囲の変更は当業者にとって自明であり、これらの範囲の変更を記載していなくても、特許請求の範囲は可能な限りこれらの変更を含むものとする。文言の不明確さのために現在は予想できない均等物及び置換が科学技術の進展により可能になるかもしれず、これらの変更は可能な限り特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)強化ファブリック層と、
(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維と
を含むプリフォームであって、熱可塑性ブロックコポリマーが、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない、プリフォーム。
【請求項2】
熱可塑性ブロックコポリマーが、ポリメチルメタクリレートブロック及びポリブチルアクリレートブロックを有する、請求項1記載のプリフォーム。
【請求項3】
熱可塑性ブロックコポリマーが、ポリメチルメタクリレートブロック、ポリブタジエンブロック及びポリスチレンブロックを有する、請求項1記載のプリフォーム。
【請求項4】
熱可塑性ブロックコポリマー繊維が、プリフォームの総重量に基づいて約0.1重量%〜約30重量%の範囲の量でプリフォームに存在する、請求項1記載のプリフォーム。
【請求項5】
熱可塑性ブロックコポリマー繊維が、約70℃〜約140℃の範囲の温度で未硬化エポキシ樹脂に溶解する、請求項1記載のプリフォーム。
【請求項6】
強化ファブリック層がノンクリンプファブリックを含む、請求項1記載のプリフォーム。
【請求項7】
(a)強化ファブリック層と、
(b)強化ファブリック層に組み込まれた熱可塑性ブロックコポリマー繊維と、
(c)未硬化エポキシ樹脂と
を含む未硬化複合材組成物であって、熱可塑性ブロックコポリマーが、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない、未硬化複合材組成物。
【請求項8】
(a)未硬化エポキシ樹脂を含有する配合物を熱可塑性ブロックコポリマー繊維が組み込まれた強化ファブリック層と接触させて未硬化複合材組成物を形成する工程
を含む方法であって、熱可塑性ブロックコポリマーが、メチルメタクリレート構造単位を有しており、未硬化エポキシ樹脂に実質的に溶解するが、対応する硬化エポキシ樹脂には実質的に溶解しない、方法。
【請求項9】
未硬化複合材組成物を硬化させて硬化複合材料を形成する工程を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
接触工程を真空補助樹脂トランスファー成形条件下、注入温度で行う、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−92338(P2012−92338A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236580(P2011−236580)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】