説明

複合棘医療デバイスおよび方法

【課題】棘付き縫合糸または棘付きステープル、およびこれらを作製するための方法を改善する。
【解決手段】本体部分14および該本体部分から延びる少なくとも1つの棘12であって、該少なくとも1つの棘は、内側表面を規定し、該内側表面は、該本体部分の長手方向軸に対して第一の配向で配置された第一の部分12a、および該長手方向軸に対して第二の配向で配置された第二の部分12bを備える少なくとも1つの棘12を備え、該少なくとも1つの棘12が、形状記憶材料から作製され、該形状記憶材料は、永続的形状から一時的形状へと変形し得、ここで該棘は、該一時的形状にある場合、該本体部分に対して第一の位置で突出し、そして該永続的形状にある場合、該第一の位置とは異なる第二の位置で突出する、複合棘医療デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年1月29日に出願された米国特許出願番号12/361,962の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2008年2月20日に出願された米国仮出願番号61/029,964の利益および優先権を主張する。これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、医療デバイスに棘を形成することに関する。具体的には、本開示は、形状記憶ポリマー材料を含有する複合棘医療デバイス、ならびにこのような医療デバイスを形成する方法および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
棘付き縫合糸は、医療手順における使用について公知である。棘付き縫合糸の棘の構成は、特定の適応症のために、組織の保持を最適化するように設計され得る。いくつかの状況において、縫合糸の外側表面上での棘の無作為な構成は、最適な創傷閉鎖を達成するために好ましくあり得る。しかし、他の状況において、創傷、または必要とされる組織修復が比較的小さい場合、棘の数を減少させることが望ましくあり得る。なお他の状況において、縫合糸の一部分にわたって一方向に組織を通して縫合糸を通過させることを可能にし、そしてこの縫合糸の別の部分にわたって第二の方向で組織を通して縫合糸を通過させることを可能にするために、双方向棘付き縫合糸が、望ましくあり得る。
【0004】
縫合糸に棘を形成する種々の方法が提唱されているが、このような方法は、実施が困難であり得るか、または費用がかかり得る。従って、棘付き縫合糸およびこれらを作製するための方法に関して、改善の余地が残っている。
【0005】
さらに、外科手術用ファスナーまたはステープルもまた、身体組織を固定するために外科手術手順において使用され得る。代表的に、ステープルは、U字型の部材であり、1つのバックスパンおよび2つのレッグを備え、これらのレッグは、送達デバイスによって屈曲させられて、身体組織を一緒に留める。ステープラーのアンビルは、一般に、このステープルをクリンプし、従って、従来のステープラーは、代表的に、複雑な構造体を備え、これらの構造体は、ステープルを排出しなければならないのみでなく、ステープルが適切かつ時を得て変形するような様式で、ステープルを排出しなければならない。
【0006】
2部品ファスナーもまた使用されており、2部品ファスナーにおいて、ステープルは、別体の保持具片を係合する棘付きプロングを備える。使用において、このステープルは、これらの棘が組織に貫入して反対側から出るように、身体組織に押し込まれ、この反対側において、これらの棘が次いで、保持具片内にロックされる。
【0007】
従って、棘付きステープルおよびこれらを作製するための方法に関して、改善の余地が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
本体部分;および
該本体部分から延びる少なくとも1つの棘であって、該少なくとも1つの棘は、内側表面を規定し、該内側表面は、該本体部分の長手方向軸に対して第一の配向で配置された第一の部分、および該長手方向軸に対して第二の配向で配置された第二の部分を備える、少なくとも1つの棘、
を備え、
該少なくとも1つの棘が、形状記憶材料から作製され、該形状記憶材料は、永続的形状から一時的形状へと変形し得、ここで該棘は、該一時的形状にある場合、該本体部分に対して第一の位置で突出し、そして該永続的形状にある場合、該第一の位置とは異なる第二の位置で突出する、
複合棘医療デバイス。
(項目2)
上記棘の上記第一の部分が、上記本体部分の上記長手方向軸と実質的に整列しており、そして該棘の上記第二の部分が、該本体部分の該長手方向軸から離れるように延びている、上記項目に記載の複合棘医療デバイス。
(項目3)
上記棘の上記内側表面が、上記長手方向軸に対して第三の配向で配置された第三の部分をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目4)
上記医療デバイスが、モノフィラメント縫合糸、マルチフィラメント縫合糸、外科手術用繊維、外科手術用ステープル、アンカー、スリットシート、リボン、テープ、メッシュ、ステント、足場、外科用綿撤糸、および脈管移植片からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目5)
上記医療デバイスが縫合糸を構成する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目6)
上記医療デバイスがステープルを構成する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目7)
上記形状記憶ポリマーが、生体吸収性材料、非分解性材料、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目8)
上記形状記憶ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィンコポリマー、フッ素化ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリブタエステル、ポリウレタン、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、ハロゲン化ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリクロロフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルケトン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリホスファジン、ポリイミド、エポキシ樹脂、アラミド、レーヨン、スパンデックス、シリコーン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される非分解性材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目9)
上記形状記憶ポリマーが、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(酸無水物)、ポリアミドエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリイミドカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリウレタン、ポリマー薬物、生物学的に修飾された生体吸収性ポリマー、およびこれらのコポリマー、ホモポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される生体吸収性材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目10)
上記形状記憶ポリマーが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される脂肪族ポリエステルを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目11)
上記形状記憶ポリマーが、ポリ(アミノ酸)、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、アルブミン、ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド、ヒアルロン酸、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、セルロース、グリコサミノグリカン、ガット、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ニトロセルロース、キトサン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される生分解性ポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目12)
上記形状記憶ポリマーが、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート、オリゴ(ε−カプロラクトン)ブチルアクリレート、(アクリル酸n−ブチル)、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目13)
上記形状記憶ポリマーが、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目14)
上記ポリジオキサノンが、上記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして上記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目15)
上記形状記憶ポリマーが、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
(項目16)
上記トリメチレンカーボネートが、上記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして上記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、上記項目のうちのいずれかに記載の複合棘医療デバイス。
【0009】
(摘要)
複合棘医療デバイスは、本体部分、およびこの本体部分から延びる少なくとも1つの棘を備える。この少なくとも1つの棘は、内側表面を規定する。この内側表面は、この本体部分の長手方向軸に対して第一の配向で配置された第一の部分、およびこの長手方向軸に対して第二の配向で配置された第二の部分を備える。この少なくとも1つの棘は、形状記憶材料から作製され、この材料は、永続的形状から一時的形状へと変形し得る。この棘は、この永続的形状にある場合にはこの本体部分に対して第一の位置で、そしてこの一時的形状にある場合には第二の位置で、この本体部分から突出する。
【0010】
(要旨)
本開示は、複合棘医療デバイスに関し、この複合棘医療デバイスは、本体部分;およびこの本体部分から延びる少なくとも1つの棘を備え、この少なくとも1つの棘は、内側表面を規定し、この内側表面は、この本体部分の長手方向軸に対して第一の配向で配置された第一の部分、およびこの長手方向軸に対して第二の配向で配置された第二の部分を備え、ここでこの少なくとも1つの棘は、形状記憶材料から作製され、この形状記憶材料は、永続的形状から一時的形状へと変形し得、この棘は、この一時的形状にある場合には、この本体部分に対して第一の位置で突出し、そしてこの永続的形状にある場合には、この第一の位置とは異なる第二の位置で突出する。この棘の第一の位置は、この本体部分の長手方向軸と実質的に整列し得、そしてこの棘の第二の位置は、この本体部分の長手方向軸から離れるように延び得る。必要に応じて、この棘の内側表面は、この長手方向軸に対して第三の配向で配置された第三の部分をさらに備える。
【0011】
この複合棘医療デバイスは、モノフィラメント縫合糸、マルチフィラメント縫合糸、外科手術用繊維、外科手術用ステープル、アンカー、スリットシート、リボン、テープ、メッシュ、ステント、足場、外科用綿撤糸、および脈管移植片からなる群より選択され得る。特定の実施形態において、この医療デバイスは、縫合糸またはステープルであり得る。
【0012】
医療デバイスを作製するための材料としては、生体吸収性材料、非分解性材料、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される形状記憶ポリマーが挙げられる。この非分解性材料としては、ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィンコポリマー、フッ素化ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリブタエステル、ポリウレタン、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、ハロゲン化ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリクロロフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルケトン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリホスファジン、ポリイミド、エポキシ樹脂、アラミド、レーヨン、スパンデックス、シリコーン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられ得る。この生体吸収性材料としては、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(酸無水物)、ポリアミドエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリイミドカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリウレタン、ポリマー薬物、生物学的に修飾された生体吸収性ポリマー、およびこれらのコポリマー、ホモポリマー、ならびに組み合わせが挙げられ得る。より具体的には、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
他の形状記憶ポリマーは、ポリ(アミノ酸)、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、アルブミン、ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド、ヒアルロン酸、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、セルロース、グリコサミノグリカン、ガット、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ニトロセルロース、キトサン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される生分解性ポリマーを含有する。代替の実施形態において、この形状記憶ポリマーは、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート、オリゴ(ε−カプロラクトン)ブチルアクリレート、(アクリル酸n−ブチル)、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する。
【0014】
特定の実施形態において、この複合棘医療デバイスは、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを有する形状記憶ポリマーを含有し得る。より具体的には、このポリジオキサノンは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する。
【0015】
他の実施形態において、この複合棘医療デバイスは、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを有する形状記憶ポリマーを含有し得る。より具体的には、このトリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する。
【0016】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら本明細書中で以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付き医療デバイスの平面図である。
【図2】図2は、本開示に従って形成された複合棘を有する二方向棘付き医療デバイスの平面図である。
【図3】図3は、本開示に従って形成された単一角度棘と複合棘との両方を有する、棘付き医療デバイスの代替の実施形態の平面図である。
【図4A】図4Aは、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付き医療デバイスのセグメントの平面図である。
【図4B】図4Bは、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付き医療デバイスのセグメントの代替の実施形態の平面図である。
【図5】図5は、本開示に従って形成された複合棘を有する双方向棘付き医療デバイスのセグメントの平面図である。
【図6】図6は、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付き医療デバイスの代替の実施形態の平面図である。
【図7】図7は、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付き医療デバイスの代替の実施形態の平面図である。
【図8】図8は、本開示に従って形成された複合棘および一端に形成されたループを有する棘付き縫合糸のセグメントの平面図である。
【図9】図9は、本開示に従って医療デバイスに棘を形成する装置および方法の1つの実施形態の概略図である。
【図10】図10は、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付き医療デバイスのセグメントの代替の実施形態の平面図である。
【図11】図11は、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付き医療デバイスのセグメントの別の実施形態の平面図である。
【図12】図12は、本開示に従って形成された複合棘を有する棘付きステープルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を詳細に参照すると、図面において、同じ参照番号は、種々の図において同じ要素に適用され、図1は、医療デバイス100を図示し、この医療デバイスは、細長本体14、および細長本体14から延びる少なくとも1つの複合棘12を有する。複合棘12は、内側表面を規定し、この内側表面は、細長本体14の長手方向軸に対して第一の配向で配置された第一の部分12a、この長手方向軸に対して第二の配向で配置された第二の部分12b、およびこの長手方向軸に対して第三の配向で配置された第三の部分12cを備える。
【0019】
複合棘12は、少なくとも1つの実質的に直線状の部分を備える。図1に図示されるように、第一の部分12a、第二の部分12b、および第三の部分12cは、実質的に直線状である。これらの部分のうちの少なくとも1つが実質的に非直線状(例えば、本明細書中以下に記載されるような弓形)であってもよいことが想定される。
【0020】
図1の例示的な実施形態に示されるように、複合棘12は、医療デバイス100から、医療デバイス100の少なくとも1つの端部に向かって突出して形成され得る。他の代替の実施形態において、棘のうちのいくつかが医療デバイスの一端に向かって突出し、そして残りの棘が医療デバイスの他端に向かって突出するように、複数の複合棘が形成され得、これによって、図2に一般的に図示されるような、双方向医療デバイス200を形成し得る。あるいは、軸方向に間隔を空けた複数の棘が、同じ構成または無作為な構成で、互いに対して異なる角度で形成され得る。必要に応じて、この医療デバイスは、操作される組織の型および/または実施される手順に従って、同じ長さまたは異なる長さで間隔を空けた複数の棘を備え得る(図示せず)。いくつかの実施形態において、この複合棘医療デバイスは、その近位端にループを組み込み、このループは、この医療デバイスを身体組織内で所望の位置に保持することを増強するように構成される。
【0021】
代替の実施形態において、医療デバイス300は、図3に示されるように、複合棘12と単一角度棘13との組み合わせを備えるように形成され得る。このような実施形態において、複合棘12および単一角度棘13は、医療デバイス300の長さに沿って、特定のパターンまたは無作為なパターンで形成され得る。さらに、医療デバイス300は、複合棘12が全て、医療デバイス300の一端に向かって同じ方向に配向され、そして単一角度棘13が全て、医療デバイス300の他端に向かって同じ方向に配向されるように、形成され得る。
【0022】
図4Aを参照すると、第一の部分12a、第二の部分12b、および第三の部分12cを有する複合棘12は、一般に、細長本体14の表面を切ることによって形成される。ある実施形態において、第一の部分12a、第二の部分12b、および第三の部分12cの各々は、細長本体14の長手方向軸a、b、およびcのそれぞれに対して、第一の角度α、第二の角度β、および第三の角度γで切られ得る。長手方向軸a、b、およびcは、中心長手方向軸「D」に対して平行である。第二の角度βは、第一の角度αより小さく、そして第三の角度γは、第二の角度βより小さい。複合棘12は、長手軸方向「a」に対して約0°〜約90°の第一の角度α(ある実施形態において、第一の角度αは、長手方向軸「a」に対して約30°〜約50°の範囲である)で細長本体14を切ることにより形成された第一の部分12aを備え得る。第二の部分12bは、長手軸方向「b」に対して約0°〜約90°の第二の角度β(ある実施形態において、第二の角度βは、長手方向軸「b」に対して約2°〜約25°の範囲である)で細長本体14を切ることにより形成され得る。第三の部分12cは、長手軸方向「c」に対して約0°〜約90°の第三の角度γ(ある実施形態において、第三の角度γは、長手方向軸「c」に対して約2°〜約50°の範囲である)で細長本体14を切ることにより形成され得る。
【0023】
ここで図4Bを参照すると、第一の部分120a、第二の部分120b、および第三の部分120cの各々は、細長本体140の長手方向軸「a’」、「b’」、および「c’」のそれぞれに対して、第一の角度α’、第二の角度β’、および第三の角度γ’で、角度α’が角度β’より大きく、そして角度γ’が角度β’より小さくなるように切られ得る。複合棘120は、長手軸方向「a’」に対して約0°〜約90°の第一の角度α’(ある実施形態において、第一の角度α’は、長手方向軸「a’」に対して約30°〜約50°の範囲である)で細長本体140を切ることにより形成された第一の部分120aを備え得る。第二の部分120bは、長手軸方向「b’」に対して約0°〜約90°の第二の角度β’(ある実施形態において、第二の角度β’は、長手方向軸「b’」に対して約30°〜約60°の範囲である)で細長本体140を切ることにより形成され得る。第三の部分120cは、長手軸方向「c’」に対して約0°〜約90°の第三の角度γ’(ある実施形態において、第三の角度γ’は、長手方向軸「c’」に対して約25°〜約50°の範囲である)で細長本体140を切ることにより形成され得る。
【0024】
他の実施形態において、複合棘医療デバイスは、第一の部分および第二の部分を有する細長本体を備え、この細長本体の第一の部分および第二の部分は、この細長本体の長手方向軸に対して第一の角度または第二の角度をなし、少なくとも1つの複合棘を形成する(図示せず)。必要に応じて、複合棘医療デバイスの細長本体は、この細長本体の長手方向軸に対して第三の角度で、第三の部分を備え得る。
【0025】
複合棘縫合糸のこのような実施形態が、図10に示されている。複合棘620は、2つの部分602a、620bを備え、これらの部分は、この医療デバイスの長手方向軸に対して2つの角度α”およびβ”で配置される。より具体的には、複合棘620は、細長本体610の長手方向軸A−Aに対して第一の角度α”(第一の角度α”は、約0°〜約90°、ある実施形態においては、約30°〜約40°、さらなる実施形態においては、約31°〜約38°である)で細長本体610から形成された第一の部分620aを備える。第二の部分620bは、細長本体610の長手方向軸A−Aに対して第二の角度β”(第二の角度β”は、約0°〜約90°、ある実施形態においては、約1°〜約10°、さらなる実施形態においては、約2°〜約8°である)で細長本体610から形成される。
【0026】
複合棘デバイスの別の実施形態が図11に示されている。複合棘720を備える細長本体700が示されており、この複合棘は、細長本体700の長手方向軸B−Bに対して角度γ”で示される第一の直線状部分720aを有する。第一の部分720aから、弓形の第二の部分720bが半径rの弧になるように延びる。細長本体700はまた、第一の部分740aが弓形であり第二の部分740bが直線状である、複合棘を備える。
【0027】
図5は、図4Aに図示されるような3つの部分12a〜12cを有する複合棘12、および図4Bに図示されるような3つの部分120a’〜120c’を有する複合棘120が、これらの棘のうちのいくつかが医療デバイス500の一端に向かって突出し、そして残りの棘が医療デバイス500の他端に向かって突出するように形成され、これによって、双方向医療デバイス500を形成しているものを図示する。代替の実施形態において、複合棘は、一端に向かって(例えば、近位端に向かって)突出する棘が、他端に向かって(例えば、遠位端に向かって)突出する棘と同じ配向および角度を有するように形成される。
【0028】
いくつかの実施形態において、複合棘は、実質的に非直線状である少なくとも1つの部分を備え得る。ある実施形態において、これらの棘は、少なくとも1つの変曲点を備え得、この変曲点は、凹部、凸部、弓形部およびこれらの組み合わせを規定し得る。例えば、これらの部分のうちの少なくとも1つは、細長本体240の長手方向軸に対してある半径の弧になるように切られ得る。図6に示されるように、複合棘220は、弓形の第二の部分220bを備え得る。弓形部分220bは、細長本体240の長手方向軸に対して半径rの弧になるように切られ得る。
【0029】
代替の実施形態において、必要に応じた第四の部分が、第四の半径の弧になるように切られ得る。いくつかの実施形態において、第一の部分320a、第二の部分320b、第三の部分320c、および第四の部分320dの各々は、細長本体340の長手方向軸に対して、第一の半径、第二の半径、第三の半径、および第四の半径の弧になるように切られ得る。図7に図示されるように、複合棘320は、細長本体340から第一の半径rの弧になるように延びる弓形の第一の部分320a、第一の部分320aから第二の半径rの弧になるように延びる弓形の第二の部分320b、第二の部分320bから第三の半径rの弧になるように延びる弓形の第三の部分320c、および第三の部分320cから第四の半径rの弧になるように延びる弓形の第四の部分320dを備え得る。
【0030】
他の実施形態において、複合棘医療デバイスは、細長本体を備え得、この細長本体は、棘、ならびにこの細長本体の長手方向軸に対して第一の角度、第二の角度、および第三の角度で切られてこの棘を形成する第一の部分、第二の部分、および第三の部分を有する。
【0031】
本開示に従う医療デバイスは、モノフィラメント縫合糸、編組縫合糸、マルチフィラメント縫合糸、外科手術用繊維、ステープル、アンカー、スリットシート、リボン、テープ、メッシュ、ステント、足場、外科用綿撤糸、脈管移植片およびリボンからなる群より選択される型で形成され得る。例示的な実施形態において、この医療デバイスは、縫合糸である。別の例示的な実施形態において、この医療デバイスは、ステープルである。
【0032】
図面全体に図示される例示的な医療デバイスは、断面の幾何学的形状が楕円形であるように示されている。しかし、医療デバイスの断面の幾何学的形状は、任意の適切な形状(例えば、円形、正方形、星型、八角形、矩形、多角形および平坦)のものであり得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、ループが、複合棘医療デバイスの近位端に形成され、このループはこの医療デバイスを身体組織内の所望の位置で保持することを増強するように構成される。図8に図示されるように、ループ410は、複合棘医療デバイス400の近位端に形成される。ループ400は、複合棘医療デバイス400の細長本体440の長さに沿った所定の位置に固定され得る。ループ410は、細長本体440の長さに沿って調節可能であるような構成および寸法にされ得る(図示せず)。
【0034】
一般に、複合棘を医療デバイスに形成するための方法は、長手方向軸を有する医療デバイスまたはその一部分を提供する工程、およびこの医療デバイスに沿って複合棘を形成する工程を包含する。ここで、この複合棘は、内側表面を規定し、この内側表面は、少なくとも、この長手方向軸に対して第一の配向で配置された第一の部分、この長手方向軸に対して第二の配向で配置された第二の部分備え、そして必要に応じて、この長手方向軸に対して第三の配向で配置された第三の部分を備える。ある実施形態において、第一の部分、第二の部分、および第三の部分のうちの少なくとも1つは、実質的に直線状である。代替の実施形態において、第一の部分、第二の部分、および第三の部分のうちの少なくとも1つは、実質的に非直線状または弓形である。
【0035】
ある実施形態において、複合棘を医療デバイスに形成する方法は、医療デバイスに第一の切り込みを形成する工程であって、この第一の切り込みは、この医療デバイスの細長本体の直径に対する切り込み深さの第一の比を有する、工程;この医療デバイスに第二の切り込みを形成する工程であって、この第二の切り込みは、この医療デバイスの細長本体の直径に対する切り込み深さの第二の比を有する、工程;およびこの医療デバイスに第三の切り込みを形成する工程であって、この第三の切り込みは、この医療デバイスの細長本体の直径に対する切り込み深さの第三の比を有する、工程を包含する。
【0036】
図9は、本開示に従って複合棘を形成する装置および方法の実施形態を図示する。この方法は、例えば、2008年7月23日に出願された、発明の名称「Method of Forming Barbs on a Suture」の米国特許出願番号12/178,361に記載されており、この米国特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。例示的な実施形態において、超音波エネルギーが装置60により生成される。この装置は、変換器62を備え、この変換器は、超音波エネルギーを、変換器62に作動可能に結合されたホーン66に伝達する。変換器62は、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換し、この機械的エネルギーは、超音波発生器またはブースター68により供給される超音波周波数で、工具の変位を引き起こす。ブースター68は、この工具に伝達され得る超音波周波数を増加または減少のいずれかを行うように、操作され得る。この超音波周波数は、約1kHz〜約100kHzの範囲であり得る。他の実施形態において、この超音波周波数は、約10kHz〜約90kHzの範囲であり得る。なおさらなる実施形態において、この超音波周波数は、約15kHz〜約50kHzの範囲であり得る。超音波信号の振幅は、約1μ〜約125μの範囲であり得る。他の実施形態において、この信号の振幅は、約15μ〜約60μの範囲であり得る。
【0037】
この医療デバイスの細長本体に対する、切り込み深さの比および棘の角度は、切断要素に与えられる超音波エネルギーの信号振幅に基づいて変更可能である。例えば、超音波振幅が増加するにつれて、直径に対する切り込み深さの比、および棘の角度は、減少する。超音波振幅が減少するにつれて、直径に対する切り込み深さの比は増加し、これによって、棘の角度が増加する。
【0038】
図4Aに戻って参照すると、いくつかの実施形態において、形成される複合棘12は、複合棘12と細長本体14との間に、約0°〜約90°、ある実施形態においては、30°〜50°の第一の角度α、およびこの本体の直径の約1%〜約40%、特定の実施形態においては、約10%〜約30%である切り込み深さの第一の比を有する。本開示の方法により形成される複合棘12は、長手方向軸に対して約0°〜約90°、ある実施形態においては、2°〜25°の第二の角度βを有し得、そして切り込み深さの第二の比は、細長本体14の直径の約5%〜約50%、特定の実施形態においては、約15%〜約45%であり得る。本開示の方法により形成される複合棘12は、長手方向軸に対して約0°〜約90°、ある実施形態においては、25°〜50°の第三の角度γを有し得、そして切り込み深さの第三の比は、細長本体14の直径の約15%〜約50%、いくつかの実施形態においては、約30%〜約50%であり得る。1つの実施形態において、複数の棘が、この医療デバイスの長手方向軸に沿って連続的な間隔で形成される。
【0039】
図9の参照を続けると、装置60は、必要に応じて、医療デバイスを支持するためのアンビル70などの把持具を備える。把持具70は、医療デバイスを固定された位置で支持する。ホーン66は、医療デバイスに棘を形成するための切断要素(例えば、ナイフ刃または回転刃(図示せず))を受容するような構成および寸法にされる。モータ式スライド74は、X、Y、およびZ面内を移動して、この医療デバイスがこの変換器の前を通過して、この医療デバイスに棘を形成することを可能にする。装置60はまた、回転モータ76を備え、この回転モータは、この医療デバイスを円方向に回転させる。前進スライド78は、この医療デバイスを毎回の切断後に、適切な棘間隔に対して規定された増分で移動させる。装置60は、必要に応じて、棘を形成する方法を記録するためのカメラ72、およびカメラ72の視野を最適化するための光源74を備える。
【0040】
ある実施形態において、この医療デバイスは、この医療デバイスの細長本体の長手方向軸に対する特定の第一の角度で、この切断要素と接触させて動かされるか、または他の実施形態において、この医療デバイスは、この切断要素に押し付けながら動かされて、約1%〜約40%の直径に対する切り込み深さの第一の比、他の実施形態においては、約10%〜約30%の直径に対する切り込み深さの第一の比を形成する。この切断要素がこの医療デバイスと依然として接触している間に、約5%〜約50%の直径に対する切り込み深さの比、他の実施形態においては、約15%〜約45%の直径に対する切り込み深さを有する第二の角が切られる。必要に応じて、他の実施形態において、この切断要素がこの医療デバイスと依然として接触している間に、約15%〜約50%の直径に対する切り込み深さの比、他の実施形態においては、約30%〜約50%の直径に対する切り込み深さの比を有する第三の角が切られる。
【0041】
この刃がこの医療デバイスと接触している時間の量は、ある実施形態において、約1ミリ秒〜約5秒の範囲である。他の実施形態において、この刃がこの医療デバイスと接触している時間の量は、約1秒〜約3秒の範囲である。なおさらなる実施形態において、この刃がこの医療デバイスと接触している時間の量は、約2秒である。
【0042】
ある実施形態において、このナイフ刃は、実質的に、矩形、正方形、円形、平坦な形状、八角形、三角形、星型、スペード型、矢印型、鉤型、および楕円形の形状にされ得る。いくつかの実施形態において、このナイフ刃の湾曲は、実質的に凹または実質的に凸である。
【0043】
実際には、この医療デバイスは、変換器62の前を通過する。この変換器は、ホーン66 およびアンビル70を備える。次いで、種々の周波数および信号振幅の超音波エネルギーを使用して、その材料をある幾何学的形状に切る。ある実施形態において、この医療デバイスは、モータ式スライド74を介して、変換器62の前を通過する。このモータ式スライドは、把持具70およびカメラ72を保持するような構成および寸法にされる。特定の実施形態において、この医療デバイスは、機械的供給機構を介して、この医療デバイスがこの装置の両側の2つのスプールの周りにしっかりと保持された状態で、変換器62の前を通過する(図示せず)。他の実施形態において、この医療デバイスは、この医療デバイスを人が操作することを介して、変換器62の前を通過する。
【0044】
図9をなお参照すると、装置60は、ホーン66に結合された変換機62を備える。このホーンは、超音波振動エネルギーを介して、X−Y面で直線に沿って作動可能に移動する。ホーン66は、刃を備え、この刃は、医療デバイスに少なくとも1つの棘を形成するような角度でこの医療デバイスの表面に接触する。この刃は、ナイフ位置決めスライド80によって、医療デバイスに接触するように適切に位置決めされる。各棘が形成された後に、この医療デバイスは、X−Y面上でモータ式スライド74を介して特定の距離だけ直線運動で移動して、この医療デバイスに別の棘が形成されることを可能にする。ある実施形態において、この医療デバイスは、X−Z面内でモータ式スライド74を介して特定の距離だけ移動して、棘を形成する。さらなる実施形態において、この医療デバイスは、Y−Z面内でモータ式スライド74を介して特定の距離だけ移動して、棘を形成する。代替の実施形態において、この医療デバイスは、回転モータ76を介して円の様式で移動して、棘を特定の位置に形成する。ある実施形態において、この医療デバイスは、回転と、x−z面回転との両方で移動する。
【0045】
実際には、棘12は、ナイフ刃または回転刃(図示せず)のいずれかがこの医療デバイスの外側表面に接触する際に、形成される。この刃は、この医療デバイスの表面と接触するように、例えば、X−Y面の直線での往復運動アクチュエータによって、推進され得る。しかし、代替の実施形態において、この刃が固定されて保持され得、そしてこの医療デバイスがこの刃に向けて推進され得ることが想定される。この刃は、医療デバイスの表面に対して、この刃がこの医療デバイスの表面と接触する動きと、このナイフの超音波振動との組み合わせ作用が、所望の棘を形成するような角度で、接触する。次いで、前進スライド78が、毎回の切断後に、棘の所望の間隔に対して規定された増分で、この医療デバイスを移動させる。
【0046】
超音波エネルギーは、医療デバイスに棘を形成している際に、この医療デバイスに熱を移動させ得る。波の周期全体にわたって刃が医療デバイスに貫入したままにされる場合、振幅に依存して、超音波周波数は、この医療デバイスの融解を引き起こし得る。このことが起こることを防止するために、いくつかの実施形態において、超音波エネルギーの提供は、これらの刃を医療デバイスとの接触から離す前のいずれかの時点で、中断される。他の実施形態において、この方法は、振幅の増加または減少に関連して上に示されたように、切り込みの角度および深さを変化させるために使用され得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、棘は、医療デバイスの細長本体に直接鋭角の切込みを作製し、この切られた部分がこの医療デバイスの細長本体から外向きに押されて離されることによって、形成され得る。細長本体にこのように形成された棘の深さは、材料の直径および切り込みの深さに依存し得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、医療デバイスの細長本体の外側に、軸方向に間隔を空けた複数の棘を切るのに適切なデバイスは、グリッパー(例えば、切断床、切断床万力、切断テンプレート、ならびに切断を実施するための刃アセンブリとしての変換器およびホーン)を使用し得る。操作において、切断デバイスは、軸方向に間隔を空けた複数の棘を、同じ構成または無作為な構成で、そして互いに対して異なる角度で製造する能力を有する。
【0049】
他の実施形態において、棘は、医療デバイスの細長本体の長さの第一の部分で、医療デバイスの第一の端部が組織を一方向に通る動きを可能にするように整列され得、一方で、この医療デバイスの細長本体の長さの第二の部分の棘は、この医療デバイスの第二の端部の逆方向への動きを可能にするように整列され得る。
【0050】
これらの棘は、任意の適切なパターン(例えば、螺旋パターン、スパイラルパターン、直線パターン、または無作為に間隔を空けたパターン)で配置され得る。このパターンは、対称であっても非対称であってもよい。棘は、医療デバイスの細長本体の全外周、またはその一部分に配置され得る。さらに、棘は、細長本体の全長にわたって配置され得るか、またはその一部分のみ(単数または複数)のみに配置され得る。棘の数、構成、間隔および表面積は、この医療デバイスが使用される組織型、ならびにこの医療デバイスを形成するために利用される材料の組成および幾何学的形状に依存して、変わり得る。ある実施形態において、これらの棘は、細長本体の外周の周りで、重ならない、コルク栓抜き様のパターンで配置される。さらに、棘の割合は、比較的一定なままであり得、一方で、棘の全体的な長さおよび棘の間隔は、接続される組織によって決定され得る。例えば、この医療デバイスが皮膚または腱の創傷の縁部を接続するために使用される場合、これらの棘は、比較的短く、より硬く作製されて、このかなり堅固な組織に入ることを容易にし得る。あるいは、この縫合糸が脂肪組織(これは、比較的柔軟である)において使用されることを意図される場合、これらの棘は、より長く、より間隔を空けて作製されて、この縫合糸が軟部組織を把持する能力を増大させ得る。
【0051】
棘の表面積もまた変わり得る。例えば、丸へし状先端の棘が、特定の外科手術用途のために設計された様々なサイズで作製され得る。脂肪組織および比較的柔らかい組織を接合するためには、より大きい棘が望まれ得、一方で、より小さい棘は、コラーゲンの密度が高い組織に対してより適切であり得る。いくつかの実施形態において、同じ構造体内での大きい棘と小さい棘との組み合わせが、例えば、この縫合糸が異なる層構造の組織修復において使用される場合に有利であり得る。特定の実施形態において、一方向縫合糸は、大きい棘と小さい棘との両方を有し得る。他の実施形態において、二方向縫合糸は、大きい棘と小さい棘との両方を有し得る。
【0052】
本開示に従う医療デバイス100は、吸収性材料、非吸収性材料、およびこれらの組み合わせから形成され得る。より具体的には、この医療デバイスは、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリマー薬物、ポリヒドロキシブチレート、ジオキサノン、ラクトン、タンパク質、ガット、コラーゲン、カーボネート、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される吸収性材料から形成され得る。他の実施形態において、この医療デバイスを形成するために利用され得る適切な吸収性材料としては、天然コラーゲン材料または合成樹脂(アルキレンカーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)から誘導されるもの、カプロラクトン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる)が挙げられる。いくつかの実施形態において、グリコリドとラクチドとをベースとするポリマー(特に、グリコリドとラクチドとのコポリマー)が、本開示の医療デバイスを形成するために利用され得る。他の実施形態において、本開示の医療デバイスは、溶解可能な金属(例えば、マグネシウム)から形成され得る。
【0053】
ある実施形態において、本開示に従う医療デバイスを形成するために利用され得る適切な材料としては、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカプロラクトン、および上記のものの様々な組み合わせを有する、ホモポリマー、コポリマー、および/またはブレンドが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーが利用され得る。このようなコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第4,300,565号および同第5,324,307号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。グリコリドとトリメチレンカーボネートとの適切なコポリマーは、このコポリマーの約60重量%〜約75重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約65重量%〜約70重量%の量のグリコリドを有し得、トリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約25重量%〜約40重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約30重量%〜約35重量%の量で存在する。
【0054】
他の適切な材料としては、ラクチドとグリコリドとのコポリマーが挙げられ、ラクチドは、このコポリマーの約6重量%〜約12重量%の量で存在し、そしてグリコリドは、このコポリマーの約88重量%〜約94重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、ラクチドは、このコポリマーの約7重量%〜約11重量%で存在し、グリコリドは、このコポリマーの約89重量%〜約98重量%の量で存在する。いくつかの他の実施形態において、ラクチドは、このコポリマーの約9重量%の量で存在し、グリコリドは、このコポリマーの約91重量%の量で存在する。
【0055】
ある実施形態において、本開示による医療デバイスを形成するのに適切な材料は、ある実施形態において、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとのコポリマーを含有する。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約55重量%〜約65重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約58重量%〜約62重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約60重量%の量のグリコリド;このコポリマーの約10重量%〜約18重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約12重量%〜約16重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約14重量%の量のジオキサノン;およびこのコポリマーの約17重量%〜約35重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約22重量%〜約30重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約26重量%の量のトリメチレンカーボネートを有するコポリマーが挙げられ得る。
【0056】
他の適切な材料としては、グリコリドと、ラクチドと、トリメチレンカーボネートと、ε−カプロラクトンとのコポリマーが挙げられ、本開示に従う医療デバイスを形成するために利用され得る。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約14重量%〜約20重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約16重量%〜約18重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約17重量%の量のε−カプロラクトン;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約7重量%の量のラクチド;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約7重量%の量のトリメチレンカーボネート;およびこのコポリマーの約60重量%〜約78重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約66重量%〜約72重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約69重量%の量のグリコリドを有するランダムコポリマーが挙げられ得る。
【0057】
本開示に従う、吸収性材料から製造された棘付き医療デバイスは、移植後に、ある期間にわたって、種々の加工パラメータおよび使用される特定のコポリマーに依存して、それらの構造的一体性を(例えば、元の強度の約80%)維持する。このような特性としては、例えば、コポリマーの成分(このコポリマーを形成するために利用されるモノマーと、それに対する任意の添加剤との両方が挙げられる)、ならびに加工条件(例えば、重合反応の速度、反応温度、圧力など)、および得られるコポリマーの任意のさらなる処理(例えば、コーティング、滅菌など)が挙げられる。
【0058】
吸収性の医療デバイスへの棘の形成は、このデバイスの分解特性を変更し得る。例えば、縫合糸本体への棘の形成は、米国特許出願番号11/556,002(2006年11月2日出願、発明の名称「Long Term Bioabsorbable Barbed Sutures」、その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、本開示に従う縫合糸の分解時間を変更するために利用され得る。
【0059】
本開示に従って構成された非吸収性棘付き医療デバイスについて、本開示の医療デバイスを形成するために利用され得る適切な非吸収性材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー、およびポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド);ポリアミド(例えば、ナイロン);ポリアミン;ポリイミン;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート);フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン);ポリエーテル−エステル(例えば、ポリブタエステル(polybutester));ポリテトラメチレンエーテルグリコール;1,4−ブタンジオール;ポリウレタン;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。このポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、またはアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレンもしくはアタクチックポリプロピレンとの混合物であり得る。他の実施形態において、非吸収性材料は、絹、綿、麻、炭素繊維などを含み得る。なお他の実施形態において、本開示の医療デバイスを形成するための非吸収性材料としては、金属(例えば、チタン、およびステンレス鋼)が挙げられる。
【0060】
本開示の医療デバイスを形成するためのフィラメントおよび繊維は、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、押し出し、成形、および/または溶媒キャスティング)を使用して形成され得る。
【0061】
1つの実施形態において、複合棘は、モノフィラメント縫合糸に形成される。棘付きモノフィラメント縫合糸は、より高い強度、より長い吸収および強度プロフィールが望ましい実施形態において、使用され得る。この複合棘モノフィラメント縫合糸は、例えば、感染の危険性が高い皮膚での用途において、好まれ得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、本開示の医療デバイスは、1つより多いフィラメントから作製された糸を含み得、このフィラメントは、同じ材料または異なる材料の複数のフィラメントを含み得る。この医療デバイスが複数のフィラメントから作製される場合、この医療デバイスは、任意の公知の技術(例えば、編組、製織または編成)を使用して作製され得る。これらのフィラメントはまた、不織縫合糸を製造するために組み合わせられ得る。これらのフィラメント自体は、縫合糸形成プロセスの一部として、延伸され得るか、配向され得るか、捲縮され得るか、撚糸され得るか、混繊され得るか、または空気で絡められて、糸を形成し得る。
【0063】
棘は、本開示に従って、ステープルに形成され得る。図12に図示されるように、ステープル800は、1対の細長本体すなわちレッグ840を接続するクラウン810を備える。このクラウンは、真っ直ぐな部材として図示されるが、レッグ840を相互接続し得る任意の形状(例えば、頂点)に形成され得る。レッグ840は、このクラウンから実質的に垂直に延びるが、代替の実施形態において、このクラウンからある角度で延び得る。棘820が、レッグ840に形成される。
【0064】
ステープル800は、送達デバイスを介して、展開されて代表的なクリンプされた「B」字型に変形させられ得るか、あるいは、レッグ840の棘820は、図12に示されるような元の構成で展開され得る。なぜなら、一旦展開されると、棘820が組織に繋留し、これによって、変形に抵抗し、そして組織の引き離し強度を増強するからである。組織の引き離し強度は、棘の角度、および1つのステープルレッグあたりの棘の数などの要因に依存する。棘の方向もまた、このステープルが組織に貫入して組織内に適切に繋留することを確実にする。さらに、保持強度に合うために必要とされるステープルの直径は、代表的な棘なしステープルの直径と比較して、減少する。従って、棘付きステープルの保持強度は、クリンプされた棘なしステープルの保持強度に合うようにされ得、これによって、ステープラーのアンビルの必要性を排除し、そして誤発射、不完全なクリンプ、または従来の送達デバイスにおいて起こり得る過剰クリンプの可能性を防止し得る。
【0065】
他の実施形態において、複合棘医療デバイスは、他の医療デバイス(例えば、棘付き縫合糸、外科手術用繊維、アンカー、スリットシート、リボン、テープ、メッシュ、ステント、足場、外科用綿撤糸、および脈管移植片)を備え得る。
【0066】
一旦、この医療デバイスに棘が付けられると、この医療デバイスは、当業者の知識の範囲内である任意の手段によって、滅菌され得る。
【0067】
ある実施形態において、棘付き医療デバイスは、全体としてかまたは部分的に(例えば、医療デバイス本体、棘、および/またはこれらの一部分)、形状記憶ポリマーを使用して構成され得、これらの形状記憶ポリマーは、組織に接着するのに適切な形状、棘付きデバイスを固定することを補助するのに適切な形状、または別の外科手術用デバイス(例えば、メッシュ)を組織に固定するのに適切な形状を、インビボで取り得る。本開示の棘付き医療デバイスを形成するために利用される形状記憶ポリマー材料は、永続的形状および一時的形状を有する。ある実施形態において、この一時的形状は、外科医がこの医療デバイスを患者の身体に導入する能力を増強する構成の形状である。この永続的形状(エネルギー(例えば、熱または光)を与える際にインビボで呈される)は、組織内への医療デバイスの保持、および/または組織への外科手術用デバイスの接着を増強する構成の形状である。
【0068】
形状記憶ポリマーとは、縫合糸またはステープルなどの物体に形成される場合に、機械的な力により一時的に変形し得、次いで、エネルギーにより刺激を受ける場合に元の形状に復帰し得る、ポリマーのクラスである。形状記憶ポリマーは、それらの微細構造中の少なくとも二相の分離した微小ドメインによって、形状記憶特性を示す。第一のドメインは、硬い、共有架橋構造または他の様式で鎖の動きが制限された構造からなり、この構造は、その物体の元の形状を保持するためのアンカーとして働く。第二のドメインは、切り替え可能な柔らかい構造であり、この構造は、変形し得、次いで固定されて、二次形状または一時的形状を得る。
【0069】
熱で刺激される形状記憶ポリマーの場合、転移温度(TTrans)が存在し、この温度において、加熱中に形状変化が起こる。従って、これらの形状記憶ポリマーは、分子レベルで材料特性を変更すること、および加工パラメータを変化させることによって、調整され得る。物体の一次形状は、ソフトドメインが可撓性でありかつハードドメインが完全には形成されない温度で、熱および圧力を用いて形成され得る。次いで、この物体は、ハードドメインがより完全に形成され、そしてソフトドメインが硬くなるように、冷却され得る。二次形状または一時的形状は、この物体を機械的に変形させることにより形成され得、この変形は、TTransに近い温度またはより高温で、最も容易に達成される。次いで、この物体に導入される機械的応力は、この物体をTTrans未満の温度まで冷却して、ソフトドメインを硬い状態に固化させることによって、適所にロックされる。一旦、この物体がTTransより高温であるTまで加熱されると、そのソフトドメインが軟化し、そして弛緩してその元の構成に戻り、そしてその物体は、その一次形状または元の形状(本明細書中で時々、その永続的形状と称される)まで戻る。形状記憶材料がその永続的形状を回復する温度は、ある実施形態において、その永続温度(Tperm)と称され得る。
【0070】
本明細書中に開示される棘付き医療デバイスを構成するために使用され得る、形状記憶特性を有するポリマーとしては、例えば、合成材料、天然材料(例えば、生物学的材料)およびこれらの組み合わせが挙げられ、これらの材料は、生分解性および/または非生分解性であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「生分解性」は、生体吸収性材料と生体再吸収性材料との両方を包含する。生分解性とは、その物質が身体条件下で分解するかまたは構造的一体性を失うか(例えば、酵素分解、加水分解)あるいは身体内の生理学的条件下で(物理的もしくは化学的に)分解(例えば、溶解)し、その結果、その分解生成物が身体により排出可能または吸収可能になることを意味する。
【0071】
形状記憶特性を有し得る適切な非分解性材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(超高分子量ポリエチレンが挙げられる)およびポリプロピレン(アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチック、およびこれらのブレンドが挙げられる));ポリエチレングリコール;エチレンオキシド;超高分子量ポリエチレン;ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー;ポリイソブチレンとエチレン−αオレフィンとのコポリマー;フッ素化ポリオレフィン(例えば、ポリフルオロエチレン、ポリフルオロプロピレン、フルオロPEG、およびポリテトラフルオロエチレン);ポリアミド(例えば、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、およびポリカプロラクタム);ポリアミン;ポリイミン;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート);ポリエーテル;ポリテトラメチレンエーテルグリコール;ポリブタエステル、(ブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとのコポリマーが挙げられる);1,4−ブタンジオール;ポリウレタン;アクリルポリマー;メタクリル類;ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル);ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル);ポリハロゲン化ビニリデン(例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン);ポリクロロフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;ポリアリールエーテルケトン;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン);ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル);ビニルモノマー同士のコポリマーおよびビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー(例えば、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー);アクリロニトリル−スチレンコポリマー;ABS樹脂;エチレン−酢酸ビニルコポリマー;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリホスファジン;ポリイミド;エポキシ樹脂;アラミド;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;スパンデックス;シリコーン;ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、非生分解性のポリマーおよびモノマーが、互いに組み合わせられ得る。
【0072】
形状記憶特性を有し得る適切な生体吸収性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル;ポリアミド;ポリアミン;ポリアルキレンオキサレート;ポリ(酸無水物);ポリアミドエステル;コポリ(エーテル−エステル);ポリ(カーボネート)(チロシン由来のカーボネートが挙げられる);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート));ポリイミドカーボネート;ポリ(イミノカーボネート)(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)など);ポリオルトエステル;ポリオキサエステル(アミノ基を含むものが挙げられる);ポリホスファゼン;ポリ(プロピレンフマレート);ポリウレタン;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソール、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤);生物学的に修飾された(例えば、タンパク質、ペプチド)生体吸収性ポリマー;およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、ならびに組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
適切な脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンが挙げられる);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン(dioxabicycloctane)−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらのポリマーブレンドおよびコポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0074】
他の適切な生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド(RGD);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0075】
さらに、合成により修飾された天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる))が利用され得る。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、ある実施形態において、「セルロース」と称され得る。
【0076】
ある実施形態において、分解性材料と非分解性材料との両方の組み合わせ(形状記憶特徴を有するものが挙げられる)が利用され得る。
【0077】
ある実施形態において、形状記憶ポリマーは、異なる熱特性を有する2つの成分のコポリマー(例えば、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレートとアクリル酸ブチル(ポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート−ポリ(アクリル酸n−ブチル)が挙げられる)、またはジオールエステルとエーテル−エステルジオール(例えば、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー))であり得る。これらのマルチブロックオリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマーは、線状の鎖に一緒に連結された2つのブロックセグメント(すなわち、「ハード」セグメントおよび「スイッチ」セグメント)を有する。このような材料は、例えば、Lendlein,「Shape Memory Polymers−Biodegradable Sutures」,Materials World,第10巻,第7号,29−30頁(2002年7月)に開示されており、その全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0078】
他の実施形態において、生体吸収性材料のブレンドが利用され得、これらとしては、乳酸および/またはグリコール酸、これらのホモポリマーまたはこれらのコポリマーとブレンドされたウレタン、ならびにカプロラクトンとブレンドされたアクリレート(例えば、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
適切な形状記憶ポリマーならびにこれらを用いて永続的形状および一時的形状を形成するための手段の他の例は、Lendleinら,「Shape Memory Polymers as stimuli−sensitive implant materials」,Clinical Hemorheology and Microcirculation,32(2005)105−116、Lendleinら,「Biodegradable, Elastic Shape Memory Polymers for Potential Biomedical Applications」,Science,第269巻(2002)1673−1676、ならびにLendleinら,「Shape−Memory Polymers」,Angew.Chem.Int.Ed.,41(2002)2035−2057に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0080】
以下の表1は、形状記憶効果を示す組成物をさらに説明する。各組成物のブロックコポリマーは、アニーリングされたワイヤの形式であり、示されるソフトセグメントおよびハードセグメントを有し、ガラス転移温度(T)は、示差走査熱量分析により、TTransに等しいと測定された。
【0081】
【表1】

表1のコポリマーは、Tに近付く場合に部分的なシフトを起こし得、そしてTTransは、これらの材料が水溶液中にある場合に低下し得る。これらのポリマーは水の吸収およびバルク加水分解により分解するので、ポリマーマトリックスに浸入する水分子が可塑剤として働き得、乾燥空気中においてよりも低温で、ソフトセグメントを軟化させ得る。従って、水溶液中でTTrans低下を示すポリマーは、乾燥状態での温度偏差(例えば、輸送中および保存中)によって一時的形状を維持し得る。そして移植の際に、体温でその永続的形状に形状シフトし得る。
【0082】
従って、ある実施形態において、この形状記憶ポリマーは、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このポリジオキサノンは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在する。他の実施形態において、この形状記憶ポリマーは、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このトリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在し得る。
【0083】
Transは、ブロックセグメントのモル比、ポリマーの分子量、およびハードセグメントを形成させる時間を変化させることによって、調整され得ることが想定される。ある実施形態において、TTransは、種々の量のソフトセグメントの低分子量オリゴマーを、このコポリマーにブレンドすることにより調整され得る。このようなオリゴマーは、TTransの下方シフトを起こすための可塑剤として働き得る。
【0084】
さらに、本開示の棘付き医療デバイスを形成するコポリマーは、乳化剤、可溶化剤、湿潤剤、味改変剤、可塑剤、活性剤、水溶性不活性充填剤、防腐剤、緩衝剤、着色剤、および安定剤を含有し得る。この処方物への可塑剤の添加は、可撓性を改善し得る。可塑剤または可塑剤混合物は、ポリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、スクロース、コーンシロップ、フルクトース、ジオクチル−ナトリウムスルホスクシネート、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、1,2−プロピレングリコール、グリセロールのモノ酢酸エステル、ジ酢酸エステルもしくはトリ酢酸エステル、または天然ゴムであり得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、結晶性分解性塩または鉱物が、このブロックコポリマー組成物に添加されて、形状記憶特性を改善し得るポリマー複合体を作製し得る。ポリラクチドホモポリマーおよび結晶性ヒドロキシアパタイトを使用するこのような複合体の例は、Zhengら,「Shape memory properties of poly (D,L−lactide/hydroxyapatite composites」,Biomaterials,27(2006)4288−4295に記載されており、その全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0086】
他の形状記憶材料(形状記憶金属およびニチノールなどの金属合金が挙げられる)もまた、本開示の医療デバイスを形成するために使用され得る。
【0087】
ある実施形態において、成形プロセスが、本開示による棘付き医療デバイスを製造するために利用され得る。プラスチック成形方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして融解成形、溶液成形などが挙げられるが、これらに限定されない。射出成形、押し出し成形、圧縮成形および他の方法もまた、融解成形技術として使用され得る。一旦、適切な寸法および構成で鋳型に入れられると、医療デバイスを形成するために使用されるポリマー材料は、適切な温度(例えば、永続温度(Tperm)であり、この温度は、ある実施形態において、医療デバイスを形成するために利用される形状記憶ポリマー材料の融点であり得る)まで加熱され得る。この医療デバイスの加熱は、例えば、約40℃〜約180℃、ある実施形態において、約80℃〜約150℃が挙げられる適切な温度で、約2分間〜約60分間、ある実施形態において、約15分間〜約20分間であり得、永続的な形状および寸法を与える。
【0088】
予め記憶された形状で成形された医療デバイスの変形処理のための温度は、亀裂を生じることなく容易な変形を可能にする温度であり、形状記憶のために採用される温度(例えば、Tperm)を超えるべきではない。元の形状記憶のための温度を超える温度での変形処理は、この物体に、新たな変形後の形状を記憶/プログラムさせ得る。
【0089】
所望の形状を有する医療デバイスが形成された後に、この医療デバイスは、Ttransより高温で変形させられて、代替の一時的形状を得ることができる。変形のために適切な温度は、利用される形状記憶ポリマーに依存して変わるが、一般に、そのポリマーの転移温度(Ttrans)より高温であり得るが、Tpermより低温であり得る。ある実施形態において、形状記憶ポリマーは、そのTpermから、より低い温度(Ttransより高温なままである)まで冷却され得、そしてある実施形態においては手でおよび/または機械的手段によって、変形させられ得る。他の実施形態において、この医療デバイスは、室温(約20℃〜約25℃)で変形させられて、その一時的形状を得ることができるが、この温度は、使用される特定のポリマーに依存して異なり得る。次いで、この医療デバイスは、この医療デバイスを形成するために利用される材料のTtrans未満の温度まで冷却され得、この時点で、本開示の医療デバイスは、使用の準備ができる。Ttransは通常、室温より高温であるので、ある実施形態において、室温まで冷却することは、一時的形状でロックするために充分であり得る。
【0090】
変形が達成され得る様式に関して特定の制限は存在しない。変形は、手で達成されても、医療デバイスに所望の一時的構成を提供するために選択された適切なデバイスによって達成されても、いずれでもよい。
【0091】
医療デバイスの形状をその一時的形状に維持する目的で、本開示の形状記憶棘付き医療デバイスは、永続的形状への転移を引き起こさない温度で保存されるべきである。ある実施形態において、この形状記憶医療デバイスは、冷蔵庫で保存され得る。
【0092】
ある実施形態において、本開示の形状記憶ポリマー材料は、その永続的形状より直径が小さいかまたは大きい一時的形状に、圧縮または拡張され得る。
【0093】
このように調製された医療デバイスは、エネルギーを与える際に(例えば、加熱(患者の体内への配置、または規定された温度での外部熱を与えることのいずれかによる加熱、ある実施形態においては利用される形状記憶ポリマーのTtransより高温への加熱)の際に)、その永続的形状を回復する。本開示の医療デバイスは、生体内で利用されるので、体熱(約37℃)での加熱が可能である。このような場合、永続的形状プログラミングのための温度は、可能な限り、永続的形状の回復が非常にゆっくりと起こり得るように、低いべきである。ある実施形態において、永続的形状の回復は、組織への挿入の約1秒後〜約5秒後に起こり得る。
【0094】
ある実施形態において、形状記憶ポリマー医療デバイスは、上記のような棘付き縫合糸である。この縫合糸は棘を付けられ得、次いで、その結晶化温度の近くでアニーリングされて、永続的形状をその縫合糸および/またはその棘にプログラムし得る。例えば、この縫合糸の永続的形状は、細長本体から離れる方向に延びる棘を備え得る。次いで、一時的形状がこの縫合糸に与えられ得る。例えば、棘付き縫合糸は、これらの棘を縫合糸本体に対して圧縮するために充分に小さい内径を有する管を通して供給され得る。次いで、この管は、この形状記憶ポリマー材料の転移温度より高温まで加熱されてこれらの棘を軟化させ得、次いで、この管および縫合糸が冷却されて、一時的形状を設定し得る。次いで、この縫合糸は、棘が細長本体に近接した(すなわち、整列した)状態でこの管から取り外され得る。身体内での展開後、これらの棘は拡張して、その拡張した一次形状に戻り、これによって、組織内でのこの縫合糸の移動を制限する。他の実施形態において、この形状記憶医療デバイスは、上でまた記載されたような、棘付きステープルであり得る。
【0095】
しかし、いくつかの実施形態において、形状の回復を体温よりわずかに高い温度で起こす目的で、より高い形状記憶温度が望ましくあり得る。従って、いくつかの場合において、医療デバイスを変形状態から解放して永続的形状を回復することは、加熱によって達成され得る。約30℃〜約50℃、ある実施形態において、約39℃〜約43℃の温度で加熱すると、その一時的形状が解放され得、そして永続的形状が回復され得る。加熱のための温度が高くなるほど、永続的形状の回復のために要する時間が短くなる。この加熱のための手段は、限定されない。加熱は、気体または液体の加熱媒体、加熱デバイス、超音波、電気的誘導などを使用することにより、達成され得る。もちろん、生体が関与する用途においては、火傷を引き起こさない加熱温度を利用するように注意が払われなければならない。液体加熱媒体の例としては、生理食塩水溶液、アルコール、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0096】
同様に、他の実施形態において、電気的に活性なポリマー(電気活性ポリマーとしてもまた公知であり、電気の印加の際に構成を変更し得る)が、本開示に従う医療デバイスを形作るために利用され得る。電気活性ポリマーの適切な例としては、ポリ(アニリン)、置換ポリ(アニリン)、ポリカルバゾール、置換ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリ(ピロール)、置換ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、置換ポリ(チオフェン)、ポリ(アセチレン)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(エチレンジオキシピロール)、ポリ(p−フェニレンビニレン)など、または上記電気活性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。上記電気活性ポリマーのブレンドまたはコポリマーまたは複合体もまた、使用され得る。
【0097】
エネルギー(例えば、熱)を与える際に形状記憶材料が起こし得る形状の変化と同様に、ある実施形態において、電気活性ポリマーは、低電圧電源(例えば、バッテリ)からの電気の印加の際に、形状変化を起こし得る。このような変化を起こすために印加され得る電気の適切な量は、利用される電気活性ポリマーと共に変わるが、約5ボルト〜約30ボルト、ある実施形態において、約10ボルト〜約20ボルトであり得る。電気の印加の結果として、電気活性ポリマーから構成された医療デバイスの形状が、一時的形状から永続的形状へと変化する。
【0098】
電気活性ポリマーは、永続的形状および一時的形状との用語が形状記憶ポリマーに関連して上に記載された場合と同様の永続的形状および一時的形状を有さないが、本明細書中で使用される場合、用語「永続的形状」は、電気活性ポリマーに適用される場合、ある実施形態において、電気活性ポリマーが電気の印加の際に採用する形状を意味し、そして用語「一時的形状」は、電気活性ポリマーに適用される場合、ある実施形態において、電気活性ポリマーが電気の非存在下で採用する形状を意味する。
【0099】
いくつかの実施形態において、これらの縫合糸は、金属(例えば、鋼および分解性マグネシウム)、金属合金などを含有し得る。
【0100】
本明細書中で使用される場合、用語「繊維」、「フィラメント」および「糸」の各々は、縫合糸または他のデバイスを全体的にかまたは部分的に構成するために使用され得る。用語「繊維」は、その文脈において、一般に、その直径または幅よりおよそ3桁大きい長さを有する、天然構造体または合成構造体を指定するために使用される。用語「フィラメント」は、代表的に、無限または極端な長さの「繊維」を記載するために使用され、そして「糸」は、一般的な用語として、編成、製織、編組または他の様式での織り込みに対して適切な形態の、撚糸または非撚糸の「繊維」または「フィラメント」の連続的なストランドに対して使用される。
【0101】
ある実施形態において、本開示の縫合糸は、コア/シース構成を有し得、繊維は、コア/シース構成を有し得、糸は、コア/シース構成を有し得、またはこれらの両方である。本明細書中に記載される任意の材料(上記形状記憶材料を含む)が、コアもしくはシース、またはこれらの両方を形成するために利用され得る。
【0102】
本開示の縫合糸は、モノフィラメントであってもマルチフィラメント(例えば、編組されたもの)であってもよい。これらの適切な材料から縫合糸を作製するための方法は、当業者の知識の範囲内である(例えば、押し出しおよび成形)。これらのフィラメントは、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、混紡、撚糸、編組、製織、絡ませおよび編成)を使用して組み合わせられて、マルチフィラメント縫合糸を作製し得る。例えば、フィラメントが組み合わせられて糸を形成し得るか、またはこれらのフィラメントが編組され得る。別の例において、フィラメントが組み合わせられて糸を形成し得、次いで、これらのマルチフィラメント糸が編組され得る。本開示を読む当業者は、フィラメントが組み合わせられ得る他の方法を予測する。繊維はまた、組み合わせられて、不織マルチフィラメントの大直径縫合糸を製造し得る。特定の実施形態において、本開示による医療デバイスを形成する際に有用なマルチフィラメント構造体は、編組により製造され得る。編組は、当業者の知識の範囲内である任意の方法によりなされ得る。例えば、縫合糸および他の医療デバイスのための編組構成物は、米国特許第5,019,093号;同第5,059,213号;同第5,133,738号;同第5,181,923号;同第5,226,912号;同第5,261,886号;同第5,306,289号;同第5,318,575号;同第5,370,031号;同第5,383,387号;同第5,662,682号;同第5,667,528号;および同第6,203,564号に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。さらに、本開示のデバイスは、モノフィラメントである部分およびマルチフィラメントである部分を備え得る。いくつかの実施形態において、細長本体の近位端はマルチフィラメントであり得、そしてループ状部分(以下に記載されるループ部分)はモノフィラメントであり得る。
【0103】
本開示に従う医療デバイスは、1つ以上の合成ポリマーまたは天然ポリマー(例えば、この医療デバイスが創傷または外科手術部位に付けられる場合に治癒プロセスを加速するかまたは有利に改変する生物活性剤)でコーティングまたは含浸され得る。特定の実施形態において、このコーティングは、ラクトン、カーボネート、ポリオルトエステル、ヒドロキシアルカノエート、ヒドロキシブチレート、生物活性剤、ポリ酸無水物、シリコーン、ビニルポリマー、高分子量の蝋および油、天然ポリマー、タンパク質、多糖類、懸濁可能粒子、分散可能粒子、マイクロスフェア、ナノスフェア、ロッド、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、吸収性ポリマーから形成され得る。
【0104】
適切な生物活性剤としては、例えば、殺菌剤、抗菌剤、抗生物質、抗増殖剤、医薬、増殖因子、成長因子、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛薬、麻酔薬、抗炎症剤、創傷修復剤など、化学療法剤、生物学的物質、タンパク質治療剤、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、DNA、RNA、ペプチド、多糖類、レクチン、脂質、共生剤、診断剤、脈管形成剤、抗脈管形成薬、ポリマー薬物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
生物活性剤としては、動物に対して有利であり、そして治癒プロセスを促進する傾向がある物質が挙げられる。例えば、縫合糸は、縫合される部位に沈着される生物活性剤を提供され得る。この生物活性剤は、その抗菌特性、創傷の修復および/または組織の成長を促進する能力、あるいは血栓症などの特異的指標のために選択され得る。ある実施形態において、このような剤の組み合わせが、本開示の医療デバイスに、棘の形成後に塗布され得る。
【0106】
用語「抗菌剤」とは、本明細書中で使用される場合、単独でかまたは免疫系を補助することによって、病原性であり得る微生物を身体が破壊するかまたは抵抗することを補助する、剤を包含する。抗菌剤としては、抗生物質、防腐剤、集団感知遮断薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、界面活性剤、金属イオン、抗菌タンパク質、抗菌ペプチド、抗菌多糖類、消毒薬およびこれらの組み合わせが挙げられる。組織内にゆっくりと放出される抗菌剤がこの様式で適用されて、外科手術または外傷による創傷部位における臨床的な感染または無症状感染と戦うことを補助し得る。ある実施形態において、適切な抗菌剤は、1種以上の溶媒に可溶性であり得る。
【0107】
ある実施形態において、以下の抗菌剤が、単独でかまたは本明細書中に記載される他の生物活性剤と組み合わせて、使用され得る:アントラサイクリン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、フルオロピリミジン、5−フルオロウラシル(5−FU)、葉酸アンタゴニスト、メトトレキサート、ミトキサントロン、集団感知遮断薬、臭素化フラノン、ハロゲン化フラノン、ポドフィロトキシン、エトポシド、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、白金錯体、シスプラチン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、リファマイシン(リファンピンなど)、第四世代ペニシリン(例えば、ウレイドペニシリン、カルボキシペニシリン、メズロシリン、ピペラシリン、カルベニシリン、およびチカルシリン、ならびにこれらのアナログまたは誘導体)、第一世代セファロスポリン(例えば、セファゾリンナトリウム、セファレキシン、セファゾリン、セファピリン、およびセファロチン)、カルボキシペニシリン(例えば、チカルシリン)、第二世代セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セフォテタン、およびセフォキシチン)、第三世代セファロスポリン(例えば、ナクセル(naxcel)、セフジニル、セフォペラゾン、セフタジジム、セフトリアキソン、およびセフォタキシム)、ポリビニルピロリドン(PVP)、第四世代セファロスポリン(例えば、セフェピム)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム)、カルバペネム(例えば、イミペネム、エルタペネム(ertapenem)およびメロペネム)、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、およびアミカシン)、MSL群のメンバー(例えば、マクロライド、長時間作用型マクロライド、リンコサミド(lincosamide)、ストレプトグラミン(streptogramin)、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クリンダマイシン、シネロイド(Syneroid)、クラリスロマイシン、および硫酸カナマイシン)、テトラサイクリン(例えば、ミノサイクリン、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール);キノロン(例えば、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、およびトロバフロキサシン(trovafloxacin))、DNA合成インヒビター(例えば、メトロニダゾール)、スルホンアミド(例えば、スルファメトキサゾール、トリメトプリム(セフィキシム、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、ニトロフラントイン、ポリミキシンB、および硫酸ネオマイシンが挙げられる))、β−ラクタムインヒビター(スルバクタムなど)、クロラムフェニコール、糖ペプチド(バンコマイシンなど)、ムピロシン、ポリエン(アンホテリシンBなど)、アゾール(フルコナゾールなど)、ならびに当該分野において公知である他の公知の抗菌剤。
【0108】
利用され得る化学療法剤の例としては、以下のうちの1つ以上が挙げられる:ドキソルビシン(Dox)、パクリタキセル(PTX)、カンプトテシン(CPT)、ポリグルタメート−PTX(CT−2103またはキシオタックス(Xyotax))、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)コポリマー、アントラサイクリン、ミトキサントロン、レトロゾール、アナストロゾール、上皮成長因子レセプターインヒビター、チロシンキナーゼインヒビター、アポトーシスのモジュレーター、アントラサイクリン抗生物質(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミドおよびメルファラン)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(グルタミン酸)(PGA)、多糖類、モノクローナル抗体ならびにこれらのポリマー−薬物結合体、これらのコポリマーおよびこれらの組み合わせ。
【0109】
本開示の医療デバイスに組み込まれ得る凝固剤としては、以下のうちの1つ以上が挙げられる:細胞の再生を促進する線維化剤、新脈管形成を促進する線維化剤、線維芽細胞の移動を促進する線維化剤、線維芽細胞の増殖を促進する線維化剤、細胞外マトリックスの沈降を促進する線維化剤、組織の再造形を促進する線維化剤、憩室壁の刺激原である線維化剤、絹糸(例えば、蚕糸、クモの糸、組換え絹糸、生糸、加水分解絹糸、酸処理絹糸、およびアシル化絹糸)、滑石、キトサン、ブレオマイシンまたはそのアナログもしくは誘導体、結合組織成長因子(CTGF)、金属ベリリウムまたはベリリウム酸化物、銅、サラシン(saracin)、シリカ、結晶性シリケート、石英末、滑石粉末、エタノール、細胞外マトリックスの成分、酸化セルロース、多糖類、コラーゲン、フィブリン、線維素原、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、N−カルボキシブチルキトサン、RGDタンパク質、塩化ビニルのポリマー、シアノアクリレート、架橋ポリ(エチレングリコール)−メタクリレート化コラーゲン、炎症性サイトカイン、TGFβ、PDGF、VEGF、TNFα、NGF、GM−CSF、IGF−α、IL−1、IL−8、IL−6、成長ホルモン、骨形成タンパク質、細胞増殖因子、デキサメタゾン、イソトレチノイン、17−β−エストラジオール、エストラジオール、ジエチルスチルベストロール、シクロスポリンA、全てトランスのレチン酸またはそのアナログもしくは誘導体、ウール(動物性ウール、木毛、および鉱滓綿が挙げられる)、綿、bFGF、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクチビン、アンギオポイエチン、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポイエチン、インターフェロン、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、ブロモクリプチン、メチルセルギド(methylsergide)、フィブロシン(fibrosin)、フィブリン、接着性糖タンパク質、プロテオグリカン、ヒアルロナン、酸性でシステインに富む分泌タンパク質(APaRC)、トロンボスポンジン、テネイシン(tenacin)、細胞接着性分子、デキストランベースの粒子、マトリックスメタロプロテアーゼのインヒビター、マガイニン(magainin)、組織または腎臓プラスミノゲン活性化因子、マトリックスメタロプロテアーゼの組織インヒビター、四塩化炭素、チオアセトアミド、組織を損傷するフリーラジカルを捕捉するためのスーパーオキシドジスムターゼ、癌治療のための腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン−2または免疫系を増強するための他のリンホカイン、血小板に富む血漿、トロンビン、ペプチド(例えば、自己組み立てペプチド系)、アミノ酸(例えば、radAベースのアミノ酸)、ヒドロゲル(例えば、超吸収性ヒドロゲル材料)、これらの組み合わせなど。
【0110】
広範な種々の抗血管新生因子は、本開示の観点で容易に利用され得る。代表的な例としては、抗侵襲性因子;レチン酸およびその誘導体;パクリタキセル(高度に誘導体化されたジテルペノイド);スラミン;メタロプロテアーゼ−1の組織インヒビター;メタロプロテアーゼ−2の組織インヒビター;プラスミノゲン活性化因子インヒビター−1;プラスミノゲン活性化因子インヒビター−2;種々の形態の軽「d族」遷移金属(例えば、バナジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、およびタンタルの種およびこれらの錯体);血小板因子4;硫酸プロタミン(クルペイン);硫酸化キチン誘導体(クイーンクラブ(queen crab)の殻から調製される);硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(SP−PG)(この化合物の機能は、エストロゲンなどのステロイド、およびクエン酸タモキシフェンの存在により増強され得る);スタウロスポリン;マトリックス代謝のモジュレーター(例えば、プロリンアナログ(L−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d,L−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α−ジピリジル、およびβ−アミノプロピオニトリルフマレー)が挙げられる);MDL 27032(4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン);メトトレキサート;ミトキサントロン;ヘパリン;インターフェロン;2マクログロブリン血清;ChIMP−3;キモスタチン;β−シクロデキストリンテトラデカスルフェート;エポネマイシン(Eponemycin);カンプトテシン;フマギリン;金チオリンゴ酸ナトリウム(「GST」);D−ペニシラミン(「CDPT」);β−1−抗コラーゲナーゼ血清;α2−抗プラスミン;ビサントレン;ロベンザリット二ナトリウム(N−(2)−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸二ナトリウムすなわち「CCA」);サリドマイド;アンギオスタチンステロイド;AGM−1470;カルボキシンアミノイミダゾール(carboxynaminolmidazole);メタロプロテアーゼインヒビター(例えば、BB94、そのアナログおよび誘導体);ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
広範な種々のポリマー薬物が、本開示の観点において容易に利用され得る。代表的な例としては、ステロイド抗炎症剤、非ステロイド抗炎症剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本開示において使用され得る非ステロイド抗炎症剤の例は、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、フェニルブタゾン、ジフルニサル(diflusinal)、およびこれらの組み合わせである。
【0112】
使用され得るステロイド抗炎症剤の例は、糖質コルチコイド(例えば、コルチゾンおよびヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルプレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ならびにこれらの組み合わせ)である。
【0113】
上記生物活性剤は、説明の目的で提供されたが、本開示はそのように限定されないことが理解されるべきである。具体的には、特定の生物活性剤が上に具体的に記載されたが、本開示は、このような剤のアナログ、誘導体および結合体を包含すると理解されるべきである。さらに、上記開示は、生物活性剤をコーティングに入れることに言及するが、このような生物活性剤は、医療デバイスの任意の部分を形成するために利用される任意の材料と、当業者の知識の範囲内である手段を利用して合わせられ得る。従って、例えば、生物活性剤は、本開示の棘付きデバイスの任意の部分を形成するために利用される、ポリマー材料の一部であり得るか、またはポリマー材料と合わせられ得る。
【0114】
本開示に従う医療デバイスは、例えば、生物学的に受容可能な可塑剤、酸化防止剤および着色剤を含み得、これらは、本開示の縫合糸を形成するために利用されるフィラメントに含浸され得るか、または本開示の医療デバイス上のコーティングに含まれ得る。
【0115】
生物活性剤は、本開示の医療デバイスを形成するために利用される材料に含浸され得るか、またはこの医療デバイスの表面に堆積され得る。生物活性剤は、本開示の棘付き医療デバイスに、当業者の知識の範囲内である任意の方法(例えば、浸漬、噴霧、蒸着、ブラッシング、混合、化合などが挙げられる)を利用して塗布され得る。ある実施形態において、生物活性剤は、本開示に従って、米国特許出願番号11/899,852(2007年9月6日出願、発明の名称「Bioactive Substance in a Barbed Suture」、その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、棘角(すなわち、棘と医療デバイス表面との間に形成された角)内に配置され得る。ある実施形態において、生物活性剤は、医療デバイスの任意の棘付き部分および/または棘なし部分(例えば、ステープルのレッグおよび/またはこれらのレッグを接続するクラウンの、少なくとも一部分)に配置され得る。
【0116】
本開示の医療デバイスは、添加剤(例えば、外科手術野におけるこのデバイスの可視性を増加させる目的での、色素、顔料、および着色剤)を含有し得る。当業者の知識の範囲内である剤などの任意の適切な剤が、本開示に従って使用され得る。
【0117】
本開示のフィラメントおよび縫合糸は、一端に針をさらに備え得る。本開示の縫合糸への針の取り付けを容易にする目的で、従来の傾斜剤(tipping agent)が、編組に塗布され得る。この縫合糸の2つの尖った端部は、針をこの縫合糸の両端に取り付けて、いわゆるダブルアーム縫合糸を提供するために望ましくあり得る。針の取り付けは、任意の従来の方法(例えば、クリンプ、スエージなど)によってなされ得る。
【0118】
いくつかの場合において、管状挿入デバイス(図示せず)が、本開示に従う棘付き医療デバイスを組織に導入するために利用され得る。このような管状挿入デバイスは、管状本体ならびに遠位端および近位端を有し得、この管状本体内に本開示の棘付き医療デバイスが配置される。使用において、いくつかの実施形態において、本開示の棘付き縫合糸の尖った端部は、管状挿入デバイスの遠位端を用いて、挿入点の皮膚、組織などを通して押され得る。棘付き縫合糸の尖った端部および管状挿入デバイスの遠位端は、終点に達するまでこの組織を通して押される。次いで、管状挿入デバイスの近位端は、把持され、引かれて挿入デバイスが除去され、棘付き縫合糸を適所に残す。
【0119】
本開示による使用のために適切な棘付き医療デバイスおよび配置方法は、当該分野において周知である。例えば、ある実施形態において、本開示の医療デバイスは、組織の上昇(これは、特定の美容用途において望ましくあり得る)を提供するために利用され得る。他の実施形態において、本開示の医療デバイスは、組織開口部を閉鎖するために利用され得る。いくつかの実施形態において、棘付きステープルを利用して組織を閉鎖するための手順は、棘付きステープルのステープルカートリッジを外科手術用ステープラーに挿入する工程、およびこのステープルを、接合されるべき組織に通して発射する工程を包含する。この外科手術用ステープラーは、ステープルを変形させるためのアンビルを備えても備えなくてもよい。いくつかの実施形態において、棘付き縫合糸を利用して組織を閉鎖するための手順は、モノフィラメント縫合糸の第一の端部(必要に応じて針に取り付けられている)を、挿入点で身体組織に通して挿入することを包含する。この縫合糸の第一の端部は、この第一の端部が出口点で身体組織から出て延びるまで、この身体組織を通して押され得る。次いで、このモノフィラメント縫合糸の第一の端部は、把持されて引かれ、この縫合糸の第一の部分を身体組織に通して引き、その結果、この縫合糸(の第一の部分)の細長本体の外側表面が、この身体組織内と、この第一の端部の挿入点と出口点との間で直接接触したままになる。例えば図10に示されるように、細長本体610の外側表面630は、組織「t」と直接接触する。外側表面630は、細長本体の任意の長さ「L」について組織「t」と直接接触し得、そして図10に示されるような接触長さ「L」に限定されない。次いで、身体組織は、手で集められ、そしてこのモノフィラメント縫合糸の少なくとも一部分に沿って前進させられて、所望の量の上昇を提供し得る。
【0120】
本開示による医療デバイスは、任意の美容方法、内視鏡方法、または腹腔鏡方法において利用され得る。さらに、本開示の縫合糸は、ある組織を別の組織に付着させるため(靭帯への組織の付着が挙げられるが、これらに限定されない)に利用され得る。美容外科手術の特定の用途としては、例えば、顔のしわとり、眉毛上昇、大腿上昇、および胸部上昇が挙げられる。
【0121】
上記説明は、多くの具体例を含むが、これらの具体例は、本開示の範囲の限定であると解釈されるべきではなく、単に、本開示の実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲により規定されるような本開示の範囲および趣旨内で、他の多くの可能性を想定する。
【符号の説明】
【0122】
100 医療デバイス
14 細長本体
12 複合棘
12a 第一の部分
12b 第二の部分
12c 第三の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部分;および
該本体部分から延びる少なくとも1つの棘であって、該少なくとも1つの棘は、内側表面を規定し、該内側表面は、該本体部分の長手方向軸に対して第一の配向で配置された第一の部分、および該長手方向軸に対して第二の配向で配置された第二の部分を備える、少なくとも1つの棘、
を備え、
該少なくとも1つの棘が、形状記憶材料から作製され、該形状記憶材料は、永続的形状から一時的形状へと変形し得、ここで該棘は、該一時的形状にある場合、該本体部分に対して第一の位置で突出し、そして該永続的形状にある場合、該第一の位置とは異なる第二の位置で突出する、
複合棘医療デバイス。
【請求項2】
前記棘の前記第一の部分が、前記本体部分の前記長手方向軸と実質的に整列しており、そして該棘の前記第二の部分が、該本体部分の該長手方向軸から離れるように延びている、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項3】
前記棘の前記内側表面が、前記長手方向軸に対して第三の配向で配置された第三の部分をさらに備える、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項4】
前記医療デバイスが、モノフィラメント縫合糸、マルチフィラメント縫合糸、外科手術用繊維、外科手術用ステープル、アンカー、スリットシート、リボン、テープ、メッシュ、ステント、足場、外科用綿撤糸、および脈管移植片からなる群より選択される、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項5】
前記医療デバイスが縫合糸を構成する、請求項4に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項6】
前記医療デバイスがステープルを構成する、請求項4に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項7】
前記形状記憶ポリマーが、生体吸収性材料、非分解性材料、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項8】
前記形状記憶ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィンコポリマー、フッ素化ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリブタエステル、ポリウレタン、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、ハロゲン化ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリクロロフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルケトン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリホスファジン、ポリイミド、エポキシ樹脂、アラミド、レーヨン、スパンデックス、シリコーン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される非分解性材料を含有する、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項9】
前記形状記憶ポリマーが、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(酸無水物)、ポリアミドエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリイミドカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリウレタン、ポリマー薬物、生物学的に修飾された生体吸収性ポリマー、およびこれらのコポリマー、ホモポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される生体吸収性材料を含有する、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項10】
前記形状記憶ポリマーが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される脂肪族ポリエステルを含有する、請求項9に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項11】
前記形状記憶ポリマーが、ポリ(アミノ酸)、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、アルブミン、ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド、ヒアルロン酸、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、セルロース、グリコサミノグリカン、ガット、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ニトロセルロース、キトサン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される生分解性ポリマーを含有する、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項12】
前記形状記憶ポリマーが、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート、オリゴ(ε−カプロラクトン)ブチルアクリレート、(アクリル酸n−ブチル)、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項13】
前記形状記憶ポリマーが、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項14】
前記ポリジオキサノンが、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、請求項13に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項15】
前記形状記憶ポリマーが、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、請求項1に記載の複合棘医療デバイス。
【請求項16】
前記トリメチレンカーボネートが、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、請求項15に記載の複合棘医療デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−194236(P2011−194236A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63408(P2011−63408)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】