説明

複合構造の合成樹脂製品

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、発泡合成樹脂を主体層とする複合構造の容器や包装材その他の合成樹脂製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術と考案が解決しようとする課題】食品用トレー等の各種商品の包装用容器、コンテナ、魚箱等の容器類や包装用材その他において、合成樹脂を素材とする成形品が一般に多用されている。
【0003】近年、この種の合成樹脂製品は、資材の節約や廃棄処理問題の解消の点から、使用後に回収し再利用することが行なわれ出している。例えばポリスチレン系樹脂発泡体等の合成樹脂発泡体よりなる製品は、使用後に回収されて粉砕され、押出し発泡成形製品の素材樹脂中に混入される等して再利用されることが多い。
【0004】ところが、食品用トレー等の容器の場合には、その使用によって容器内側表面に肉汁や血等の液汁が付着する。また機械部品や工具等の包装材の場合には、その内側に油汚れが付着する。
【0005】したがって、前記の再利用の際に、この汚れを除去しないで素材樹脂中に混入すると、再利用樹脂素材を含む製品に、臭いや色が付いたり、あるいは異種物が混入することになって、強度が低下する等、品質の低下を招くことになる。
【0006】特に、主体層とは異種の素材よりなる樹脂フィルムを表面層として積層した複合シートあるいはその成形品等の複合構造の合成樹脂製品の場合にも、主体層から表面層を分離しないと、再利用される樹脂素材材中にやはり異種物が混入することになり、品質の低下を招く。
【0007】本考案は、上記に鑑みてなしたもので、発泡合成樹脂よりなる容器等の合成樹脂製品の再利用に際し、表面層を容易に引き剥せるようにしておいて、この表面層を剥離することにより、前記の汚れや異種物を容易に除去できるようにし、再利用に供し易くした複合構造の合成樹脂製品を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する本考案は、発泡合成樹脂よりなる主体層と、合成樹脂フィルム等よりなる表面層を有する複合構造の合成樹脂製品であって、前記表面層を、主体層に対して剥離可能に積層してあり、その剥離強度が50〜500(g/15mm幅)であることを特徴とするものである。
【0009】前記の複合構造の合成樹脂製品としては、発泡合成樹脂よりなる主体層の少なくとも片面に、合成樹脂フィルム等の表面層を剥離可能に積層した複合シートから、前記表面層を汚れが付着する側になるようにして成形した容器等の合成樹脂製品を、代表的なものとして例示できる。
【0010】前記の合成樹脂製品の端縁部の一部に、剥離開始助成手段を設けておくのが実施上好ましい。
【0011】
【作用】上記の構成よりなる本考案によれば、表面層を主体層に対して前記の剥離強度で剥離可能に積層してあるため、容器等の発泡合成樹脂製品としての使用上は浮きや剥離が生じないが、製品としての使用後の再利用に際しては、その端縁部の一部、例えば剥離開始助成手段の個所から、表面層を引き剥せばよく、これにより異種の表面層および製品表面の汚れを主体層より除去できる。
【0012】例えば合成樹脂製品が成形容器の場合、汚れが付着する内面に剥離可能に積層した表面層を設けておけば、内容物による汚れを、前記のように表面層を剥離することにより表面層より容易に除去できる。
【0013】
【実施例】次に本考案の実施例を図面に基いて説明する。
【0014】図1は本考案の合成樹脂製品の1例としての食品用トレー等の容器(A)を示し、図2は同容器(A)の一部の拡大断面図を示している。
【0015】(1)は容器(A)を構成する合成樹脂発泡シートよりなる主体層、(2)は内容物と接触し汚れが付着する容器内側の合成樹脂フィルムよりなる表面層であり、図の場合、前記主体層(1)と表面層(2)との間にさらに他の樹脂フィルムによる中間層(3)を有し、この3層構造の複合シート(4)から容器が成形されている。
【0016】前記の表面層(2)は、主体層(1)に対して、人的な引き剥し操作により剥離可能に積層されている。すなわち、食品用トレー等の容器(A)としての使用上は表面層(2)が剥離したり、部分的に浮いたりはしないが、ある程度の引き剥し力を加えることにより剥離できる程度の剥離強度(剥離に対する強度)を保有する接合力で積層されている。
【0017】剥離可能な接合力は、通常、剥離強度が50〜500(g/15mm幅)、好ましくは100〜200(g/15mm幅)程度である。この剥離強度が、前記範囲より大きくなると、引き剥しが困難になり、また前記範囲より小さくなると、容器としての使用上、浮きや剥離が生じ易くなり、商品価値が低下するので、前記範囲とするのがよい。
【0018】前記の表面層(2)を主体層(1)に対し剥離可能に積層する手段としては、例えば前記主体層(1)がポリスチレン系樹脂発泡シート、表面層(2)がポリエチレン樹脂フィルム、その両者間の中間層(3)がエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムによる3層構造の複合シート(4)からなるものの場合、前記ポリエチレン樹脂フィルム(2a)とエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(3a)とを共押出し法等により積層した複合フィルム(5)を、図4のように発泡シート(1a)に対して、熱ロール(6a)とニップロール(6b)とで挾着して所定温度で加熱押圧することにより、前述のような剥離強度を保有するように積層し、引き剥し可能にする。各層が他の樹脂素材よりなる場合も同様である。
【0019】また中間層(3)にエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等の剥離しや易いフィルムがある場合、表面層として吸水性の紙、パルプ、不織布等を設けることもできる。
【0020】そして、このように積層された複合シート(4)を素材として、真空、圧空、プレス成形等の成形手段により、例えば図1に示すような容器(A)を成形すればよい。
【0021】このように構成された容器(A)は、表面層(2)と中間層(3)とよりなる複合フィルム(5)が主体層(1)である発泡シート(1a)から剥離可能であるから、容器(A)としての使用後の再利用に際して、内容物の液汁等による汚れが付着した表面層(2)を含む複合フイルム(5)を、主体層(1)との間の層間でその接合力に抗して容易に引き剥し除去することができる。
【0022】特に、容器(A)の端縁部の適所、例えば図のようにフランジ状端縁部(7)における180°相対向する隅角部に、剥離開始助成手段(8)として、主体層(1)の裏面側よりV溝状等の切込み(8a)を少なくとも表面層(2)を残すように形成するか、あるいはミシン目状の切込み(図示せず)を形成して、主体層(1)の先端部分(7a)を切離可能に設けるのが好ましい。
【0023】すなわち、表面層(2)を主体層(1)から引き剥す際、図3に示すように、前記先端部分(7a)を前記切込み(8a)による剥離開始助成手段(8)の個所から折るようにして切離し、そのまま表面層(2)を引き剥すようにすれば容易に剥離できる。前記の切込み(8a)は成形後のトリミングと同時に形成できる。
【0024】剥離開始助成手段(8)としては、前記のほか、図5のように一部を融着しない状態にしたり、また表面層(2)の端縁部の一部を主体層(1)より若干延設させておいて、剥離開始時に表面層(2)のみを摘んで引き剥せるようにすることもできる。
【0025】なお、3層構造の複合シート(4)からなるものにおいて、汚れが付着する側の表面層(2)を中間層(3)との層間、あるいは中間層(3)の中間部分から剥離できるようにしてもよいが、主体層(1)である発泡シート(1a)に異種素材を残存させないようにする点からは、前記のように中間層(3)を含む複合フィルム(5)を剥離できるように設けておくのが好ましい。
【0026】また、上記の実施例においては、表面層(2)と中間層(3)との複合フィルム(5)を主体層(1)に融着積層した場合について説明したが、前記複合フィルム(5)を接着材を用いて接着積層したり、また表面層(2)の樹脂フィルムを直接主体層(1)に融着積層あるいは接着積層した2層構造にして実施することもでき、いずれの場合にも、上記同様に剥離可能に積層しておけばよい。
【0027】上記の表面層(2)の樹脂フィルムが無色透明であると、表面層(2)の残存状態を見分け難くなるので、この表面層(2)を主体層(1)とは異なる着色を施しておくのがよい。
【0028】さらに表面層(2)が発泡シートよりなる場合にも、上記同様に表面層(2)を剥離可能に積層して実施できる。
【0029】さらにまた、本考案が対象とする合成樹脂製品は、実施例のような複合シートからの成形容器に限らず、図6のように他の発泡合成樹脂を主体層(1)とする容器(A)において、内容物等が接触する内側の表面層(2)を主体層(1)に上記同様に引き剥し可能に積層構成して実施できる。容器以外の他の包装材その他の合成樹脂成形品、あるいはシート状製品においても、上記同様に主体層に対し表面層を剥離可能に設けて実施できる。
【0030】
【考案の効果】上記したように本考案の合成樹脂製品は、発泡合成樹脂を主体層とする製品に対し、表面層を剥離強度50〜500(g/15mm幅)で剥離可能に積層してあるから、使用上は浮きや剥離等の問題なく使用できるとともに、使用後の回収、再利用に際しては、前記の表面層、すなわち汚れが付着している表面層を容易に剥離、除去でき、発泡合成樹脂の主体層には汚れが残らない。しかも表面層が主体層とは異種素材よりなる場合、この異種素材が残存することもない。
【0031】そのため、再利用される樹脂素材中に汚れや異種物質が混入することがなく、特性や材質的な変化が生じず、再利用製品の品質低下を防止でき、以て発泡樹脂製品の再利用を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例を示す一部欠截斜視図である。
【図2】一部の拡大断面図である。
【図3】表面層の剥離状態を示す一部の斜視図である。
【図4】複合シート材の積層状態を示す側面図である。
【図5】他の実施例を示す一部の断面図である。
【図6】さらに他の実施例を示す一部の斜視図である。
【符号の説明】
(A)……容器
(1)……主体層
(1a)…発泡シート
(2)……表面層
(2a)…ポリエチレンフィルム
(3)……中間層
(3a)…エチレンビニルアルコールフィルム
(4)……複合シート
(5)……複合フィルム
(7)……フランジ状端縁部
(7a)…先端部分
(8)……剥離開始助成手段
(8a)…切込み

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 発泡合成樹脂よりなる主体層と、合成樹脂フィルム等の表面層を有する複合構造の合成樹脂製品であって、前記表面層を、主体層に対して剥離可能に積層してあり、その剥離強度が50〜500(g/15mm幅)であることを特徴とする複合構造の合成樹脂製品。
【請求項2】 発泡合成樹脂よりなる主体層の少なくとも片面に、合成樹脂フィルム等の表面層を剥離可能に積層した複合シートから、前記表面層を汚れが付着する側になるようにして成形してなる請求項1に記載の複合構造の合成樹脂製品。
【請求項3】 合成樹脂製品の端縁部の一部に、剥離開始助成手段が設けられてなる請求項1または2に記載の複合構造の合成樹脂製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公告番号】実公平7−56190
【公告日】平成7年(1995)12月25日
【考案の名称】複合構造の合成樹脂製品
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−16214
【出願日】平成3年(1991)3月19日
【公開番号】実開平4−111429
【公開日】平成4年(1992)9月28日
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【参考文献】
【文献】特開昭62−199440(JP,A)
【文献】特開平1−167073(JP,A)
【文献】実開平1−100164(JP,U)
【文献】実公平3−1466(JP,Y2)