説明

複合構造体およびそれからなる電子部品用セパレータ

【課題】内部短絡を防止するために緻密な構造を有し、かつ薄葉であっても十分な内部抵抗値を備え、優れた耐熱性を有する電子部品用セパレータに適した複合構造体及びその製造方法を提供することにある。また、該複合構造体からなる電子部品用セパレータを提供する。
【解決手段】2層以上からなる複合構造体であって、一方の層が、繊維径が1〜1000nmの芳香族ポリアミド極細繊維を含む繊維構造体からなり、他方の層が、芳香族ポリアミドフィブリッドまたは芳香族ポリアミドパルプを含む不織布からなることを特徴とする複合構造体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品内において導電部材間を隔離するのに有用であり、電解質もしくはイオンなどのイオン種が通過しうるセパレータに関する。さらに詳しくは、ナノオーダーの繊維径を有する芳香族ポリアミド極細繊維を含む複合構造体、および電子部品用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信機器や高速情報処理機器などの最近の進歩に象徴される、エレクトロニクス機器の小型軽量化、高性能化には目覚しいものがある。なかでも、小型、軽量、高容量で長期保存にも耐える高性能な電池、コンデンサー、電気二重層キャパシタへの期待は大きく、幅広く応用が図られ、部品開発が急速に進展している。これにこたえる為、部材、例えば電極間の隔壁材料であるセパレータに関しても、技術・品質開発の必要性が高まっている。セパレータに対する要求特性は、電解質を保持した状態での導電性、高い電極間遮蔽性、低内部抵抗などが挙げられる。
【0003】
従来、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とする多孔質膜(特許文献1)、同ポリマーを用いてシート化した不織布(特許文献2)溶融紡糸セルロースを主成分とする紙(特許文献3)などが用いられている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたポリオレフィンを主成分とする多孔質膜は、密度が高いために保液性が悪く、内部抵抗が高くなる傾向にあり、その結果、容量不足、電圧低下などの問題を生じさせる。特許文献1、2ではポリオレフィンを主成分としているが、融点が130〜165℃程度と低く、耐熱性に問題がある。一方、特許文献3に記載された、溶融紡糸セルロースからなるセパレータでは、150℃以上の高温で長時間処理すると、セルロースが炭化することが知られており、150℃以下で長時間の乾燥処理が必要という問題点がある。
【0005】
また、これらのセパレータは、電気・電子部品中の内部抵抗を低下させ、効率的に高いエネルギー密度を得るために、さらなる薄葉化が望まれている。しかしながら、薄葉化に伴う目付けの低下は、内部短絡の発生確率の上昇、電解液保液性の低下などの問題がある。
【0006】
また、現在のセパレータに使用される素材や形態としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とする多孔質膜(特許文献4)が多く用いられ、かかる多孔質膜は、異常発生時に電池内部温度上昇が孔を閉塞させ、イオンの透過性を妨げることから(シャットダウン性能)、広く安全性が高いとの認識がある。しかしながら、180℃以上に電池内部温度が上昇した場合、セパレータが平面形態を保持することができずに電極が接触してしまうため、十分な短絡防止作用があるとは言えないものであった。また、ポリオレフィンは100℃からでも収縮を開始するため、端部における電極接触の機会が増える恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3195120号公報
【特許文献2】特許第3753561号公報
【特許文献3】特開2000−003834号公報
【特許文献4】国際公開第2004/020511号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、内部短絡を防止するために緻密な構造を有し、かつ薄葉であっても十分な内部抵抗値を備え、優れた耐熱性を有する電子部品用セパレータに適した複合構造体及びそれからなる電子部品用セパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が鋭意検討したところ、上記課題は、以下に記載する複合構造体及び電子部品用セパレータにより、解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は、2層以上からなる複合構造体であって、一方の層が、繊維径が1〜1000nmの芳香族ポリアミド極細繊維を含む繊維構造体からなり、他方の層が、芳香族ポリアミドフィブリッドまたは芳香族ポリアミドパルプを含む不織布からなることを特徴とする複合構造体である。また、他の本発明は、上記複合構造体からなることを特徴とする電子部品用セパレータである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芳香族ポリアミド極細繊維と、芳香族ポリアミドフィブリッドまたは芳香族ポリアミドパルプが巧みに組み合わされた、電気・電子部品中の導電部材間の隔壁として好適に利用することができる複合構造体を提供することもできる。
【0011】
また、芳香族ポリアミド極細繊維からなる繊維構造体に、カレンダー加工などによって、フィルム状部分を形成した複合構造体とすることにより、該繊維構造体の密度が向上して電極間の遮蔽性も高くなり、同時に芳香族ポリアミドフィブリッド等からなる不織布への該繊維構造体の密着性が向上するため、良好な取り扱い性をも達成することができる。
【0012】
さらに、本発明の電子部品用セパレータを使用した電池、コンデンサーなどの電気・電子部品では、耐熱性を有することから高い安全性が期待でき、かつ薄葉であるため、電気自動車などの大電流環境下で有利に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における複合構造体は、2層以上からなる複合構造体であって、一方の層が、繊維径が1〜1000nmの芳香族ポリアミド極細繊維を含む繊維構造体からなり、他方の層が、芳香族ポリアミドフィブリッドまたは芳香族ポリアミドパルプを含む不織布からなることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、上記構成の複合構造体であることにより、電気・電子部品中の内部抵抗を低下させ、効率的に高いエネルギー密度を得ることができ、極細繊維が構成成分として含まれていることから、薄葉であっても高い空隙率を有するため、電解液保液性を確保することができ、特に電子部品用セパレータに適した複合構造体となる。
【0015】
繊維構造体を構成する芳香族ポリアミド極細繊維の繊維径は、1〜1000nmである必要があるが、好ましくは10〜600nm、より好ましくは30〜300nmである。繊維径が1nm未満であると得られる強力が著しく低下し、電子部材加工時に破損しやすくなり、一方、極細繊維の繊維径が1000nmを越えると、空隙のサイズが大きくなり内部短絡が発生する。
【0016】
繊維構造体は、極細繊維の繊維径として1〜1000nmを達成することが可能な、乾式不織布製造法により成形され、例えば、特開2006−037276号公報の電界紡糸法などを好ましく挙げることができる。特に上記方法により成形された乾式不織布、中でも電界紡糸法により成形された不織布は、驚くべきことに、後述する低温加圧でも芳香族ポリアミド極細繊維が軟化し部分的なフィルム形状が形成され、不織布とより強固に接合することがわかった。
【0017】
一方、不織布は、芳香族ポリアミドフィブリッド、もしくは芳香族ポリアミドパルプを含む必要がある。ここでいうフィブリッドとは、特公昭37−5732公報で開示されているようなフィルム状の粒子を指し、パルプとは、特許第3202597号公報で開示されているような幅広い繊維径と繊維直径を有するパルプ状短繊維である。いずれも不織布成形の際に、フロック(塊状になっている繊維)と組み合わせて使用され、フィブリッド、パルプはバインダーとして優れた機能を有し、セパレータに必要な電気特性も発現することが可能である。
【0018】
不織布の製造方法としては、それ自体既知の方法、例えば、芳香族ポリアミドフィブリッドおよび芳香族ポリアミドフロックを乾式ブレンドした後、気流を利用してシートを形成する乾式抄造法、熱可塑性ポリマーパルプと芳香族ポリアミドフロックおよび芳香族ポリアミドフロックを液体媒体中で分散混合した後、網またはベルト上に吐出していシート化し、液体を除いて乾燥する湿式抄造法などを適用することができるが、これらのなかでも水を媒体として使用する、いわゆる湿式抄造法が好適である。
【0019】
さらに、不織布の構成材料が芳香族ポリアミドであることは、本質的に耐熱性、難燃性などの優れた特性を備えていることや、比重が1.4程度と小さく軽量であるため電気・電子部品の導電部材間の隔離壁として好ましく用いることができる、等、種々の優れた特性を有している。
【0020】
繊維構造体の目付けは、好ましくは0.1〜5.0g/m、より好ましくは0.4〜3.0g/mである。目付けが0.1g/m未満であると、内部短絡が頻発し、不織布との接触面積が激減することから好ましくない。一方、上記目付けが、5.0g/mを超えると、内部抵抗値が上がりやすくなるため、好ましくない。特に、加熱加圧処理等により繊維構造体の一部にフィルム状を形成した場合、密度が飛躍的に上昇し、内部抵抗値が著しく高くなりやすい。
【0021】
不織布の目付けは、好ましくは5〜25g/m、より好ましくは8〜15g/mである。目付けが5g/m未満であると、内部抵抗が頻発するため好ましくなく、25g/mを超えると、電解液保持性が低くなり、内部抵抗値が上昇するため、好ましくない。
【0022】
複合構造体の目付けは、好ましくは5.1〜30g/m、より好ましくは8〜20g/mである。また、複合構造体の平均厚さは、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。複合構造体の、目付けが5.1g/m未満、平均厚さが5μm未満では、電子部材加工に必要な強度が不十分であったり、内部短絡を頻発したりして、セパレータとして好ましくない。また、目付けが30g/mより大きく、平均厚さが30μmより大きいと、後述する電池用セパレータのイオン導電度を示す指標であるマクミラン数15以下でかつマクミラン数×複合構造体の平均厚さが250μm以下である複合構造体を得ることが困難となる。
【0023】
本発明においては、繊維構造体には、芳香族ポリアミド極細繊維が繊維形状を有している部分と、複数の芳香族ポリアミド極細繊維が軟化して一体化しフィルム形状を有している部分とが存在し、該フィルム形状を有している部分と、他方の層を構成する不織布とが少なくとも一部において接合一体化していることが好ましい。これにより、繊維構造体と不織布との密着性が向上し、層間の剥離が起こりにくい。また、繊維構造体の密度が向上して電極間の遮蔽性も高くなる。
【0024】
なおここで、フィルム形状とは、複数の極細繊維が軟化して一体化し、繊維形状を留めず、表面がフィルムのように平滑となっている状態をいい、該フィルム形状は厚み斑があっても空隙を有していてもよい。
【0025】
以上に説明した本発明の複合構造体は、例えば以下の方法により製造することができる。一つの方法としては、全芳香族ポリアミド溶液を、高電圧を印加して不織布上にスプレーして極細繊維を形成する方法を好ましく例示することができる。また、得られる極細繊維の繊維径は印加電圧、溶液濃度、スプレーの飛散距離等に依存し、これらの条件を調整することで任意の繊維径とすることができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0026】
具体的には、全芳香族ポリアミドポリマーと溶媒とを1:99〜16:84の重量比で溶解させたポリマー溶液を調製し、5〜70kVの電圧下で、紡糸距離を5.0〜50cmとし、単位距離あたりの電圧に換算すると0.5〜7.0kv/cmとして電界紡糸を行うことにより前述した繊維径を有する芳香族ポリアミド極細繊維を作製することができる。
【0027】
また、紡糸溶液の安定性付与など、必要に応じ、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を、全芳香族ポリアミドポリマーを含む紡糸溶液に対し、0.05〜5重量%含んでいても良い。
【0028】
紡糸溶液の供給は、ノズルや口金から押し出す方法や、紡糸溶液中に浸した円盤やドラムに、必要量となるように紡糸溶液を付着させ、連続回転させることにより供給する方法が挙げられる。
【0029】
また、繊維構造体を構成する極細繊維は、メタ型芳香族ポリアミドであることが好ましい。メタ型芳香族ポリアミドは耐熱性、耐薬品性などに優れており、産業資材用途に広く使用されているものである。極細繊維を成形しやすい高分子には、ポリビニルアルコールやナイロンなどがあるが、これらは後述する加熱加圧処理や高温雰囲気下にて溶融、劣化するため、内部抵抗が上昇したり、内部短絡が発生したり、といった欠点が生じる。
【0030】
さらに、繊維構造体に、芳香族ポリアミド極細繊維が繊維形状を有している部分と、フィルム形状を有している部分とが存在する前記複合構造体を製造するには、以下の方法を採用することができる。
【0031】
すなわち、上記方法で得られた、繊維径が1〜1000nmの芳香族ポリアミド極細繊維を含む繊維構造体と、芳香族ポリアミドフィブリッドまたは芳香族ポリアミドパルプを含む不織布とからなる複合構造体を、温度が30〜350℃、線圧が50〜300kgf/cmの加熱加圧処理を施すことにより製造することができる。上記加熱加圧処理の条件において、温度は100〜350℃、線圧は150〜300kgf/cmであることがより好ましい。ここで、加熱温度および加圧力が低すぎると、極細繊維間の接着力が弱くなり、一方、加熱温度および加圧力が高すぎると繊維構造体を構成する繊維同士または不織布を構成する繊維同士が融着などを起こして目が潰れるなどし、電解液保持性が悪くなったり、内部抵抗値があがり易くなったりするため、好ましくない。
【0032】
また、上記の加熱加圧処理を施すことにより、繊維構造体と不織布との密着性が向上し、加工性が向上する。さらに、繊維構造体の密度が向上し、電極間の遮蔽性も高くなることから、電気・電子部品中の導電部材間の隔壁として利用することができ、同時に不織布への繊維構造体の密着性が向上するため、良好な取り扱い性を提供することもできる。また、本発明のセパレータを使用した電池、コンデンサーなどの電気・電子部品は、耐熱性を有し、かつ薄葉であるため、電気自動車などの大電流環境下で有利に使用することができる。
【0033】
本発明の複合構造体においては、透気度が、JIS P8117ガーレー試験機法で測定して、100秒/300cm以下、特に50秒/300cm以下であることが好ましい。100秒/300mを超えるセパレータは、電解液をセパレータに含浸浸透させる場合に、十分な浸透充填が達成できない可能性があり、内部抵抗が高くなる可能性があることから好ましくない。
【0034】
複合構造体のマクミラン数は、好ましくは15以下、より好ましく10以下である。また、マクミラン数×複合構造体の平均厚さは、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下である。ここで、マクミラン数は電池用セパレータのイオン導電度を示す指標であり、複合構造体に電解液を含浸させたときのインピーダンスと電解液のみのインピーダンスとの比であることから、内部抵抗の指標として使用することができ、低いほど好ましい。ここでは25℃において測定されたマクミラン数を採用している。
【0035】
以上に説明した本発明の複合構造体は、内部抵抗値が著しく上昇することなく、高空隙率を有し、かつ薄葉でも内部短絡を防止することが可能であることから、電子部品用セパレータに好ましく用いることができる。
【0036】
本発明においては、30℃から昇温速度10℃/分で昇温したときの250℃における複合構造体の縦方向及び横方向の寸法変化率はいずれも好ましくは5%未満であり、さらに好ましくは3%未満である。複合構造体の寸法変化としては昇温により収縮する場合と伸長する場合が有り得るが、寸法変化率が5%を超えると、セパレータとして用いた複合構造体が、収縮した場合には短絡を生じやすくなり、伸張した場合には繊維構造体に疎と密の部分が生じて、疎の部分にイオン透過が集中して負荷がかかりやすくなるため、好ましくない。
【0037】
また、複合構造体の200℃にて1時間加熱した際の透気度の変化率は好ましくは5%未満であり、より好ましくは3%未満である。透気度は、前述したJIS P8117ガーレー試験機法に準じて測定した数値を指すが、数値が増加することは密な構造、数値が減少することは、疎な構造に変化していることを意味する。透気度の数値が5%を超えて上昇、すなわち密な構造となると、内部抵抗が上昇するため好ましくない。一方、透気度の数値が5%を越えて減少し、疎な構造となると、極細繊維の破損する割合が高くなり、短絡防止の効果が低下するため好ましくない。
【0038】
以上に説明した本発明の複合構造体は、内部抵抗値が著しく上昇することなく、高空隙率を有し、かつ薄葉でも内部短絡を防止することが可能であることから、電子部品用セパレータとしてそのまま好ましく用いることができる。
【0039】
また、従来のセパレータには、電池内部温度が上昇した場合、セパレータが平面形態を保持することができず、また、セパレータ端部においても電極接触の機会が増えるため、十分な短絡防止作用が得られないといった課題が有り、本発明は、前記の寸法変化率、透気度の変化率を同時に満足させることでこれを解決できることに着目したものであるが、本発明の複合構造体およびそれからなるセパレータはかかる性能を十分に満たし前記課題をも克服するものである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の例によって、本発明が限定されることはない。
【0041】
(1)繊維径
極細繊維を任意に100本サンプリングし、走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて測定し、繊維径の平均値を求めた。なお測定は、30,000倍の倍率で行った。
【0042】
(2)複合構造体の平均厚さ
ONO SOKKI DG−925 ディジタルリニアゲージを用い、任意に選択した20箇所において厚さを測定し、平均値を求めた。
【0043】
(3)透気度
JIS P8117に従って測定した。
【0044】
(4)マクミラン数
得られた複合構造体を200mmφに切り出し、2枚のSUS電極に挟み、10kHzでの交流インピーダンスから算出した伝導度で電解液のイオン伝導度を除し、算出する。電解液は1M LiBFEC/PCを重量比で1/1に調整したものを用い、測定温度は25℃とする。この数値が低いほど、イオン透過が良く好ましい。
【0045】
(5)寸法変化率
得られた複合構造体から任意に10ヶ所選んで、縦、横方向にそれぞれ5mm×25mmの試験片を切り出して用い、TMA4000SA(Bruker AXS社製)により、試験長20mm、荷重2g、昇温速度10℃/分として、30℃から昇温しながら試験長20mmに対する寸法変化率(%)を連続して測定し、表1には250℃における寸法変化率(%)を示した。
【0046】
(6)透気度変化率
得られた複合構造体を20cm×20cmに切り出し、200℃に設定した乾燥機に、その壁面に複合構造体が接触しないように吊り下げた状態で、1時間加熱処理を実施し、前記(3)と同様にして透気度を測定した。さらに、加熱処理前後の透気度差の、加熱処理前の透気度に対する変化率を算出した。
【0047】
[実施例1]
特許第3202597号公報に準じ、メタ型芳香族ポリアミドパルプを作製した。得られたメタ型芳香族ポリアミドパルプを、水1.5Lとともに公知の離解機にて離解し、25×25cm角のTAPPI式手漉きマシーンを用いて抄造した。さらに120℃で5時間乾燥させて湿式不織布を得た。その後、得られた湿式不織布に、上ローラが金属製加熱フラットローラ、下ローラが金属製フラットローラであるカレンダー装置により、上下ローラの温度を330℃、線圧を300kgf/cmとして1回目のカレンダー加工を施し、さらに、上下ローラの温度を250℃、線圧を300kgf/cmとして2回目のカレンダー加工を施し、メタ型芳香族ポリアミドパルプからなる不織布を得た。
また、特公昭47−10863号公報実施例1記載の方法に準じ、界面重合法によりメタ型芳香族ポリアミドを主成分とする芳香族ポリアミド粉末状体を製造した。得られた芳香族ポリアミド粉末状体、溶媒N,N−ジメチルアセトアミドを10:90の重量比で溶解させたポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を電解紡糸法にて印加電圧20kV下にて芳香族ポリアミド極細繊維を成形し、目付が1.5g/mとなるように、上記のメタ型芳香族ポリアミドパルプからなる不織布上に積層させ、複合構造体を得た。得られた複合構造体を用い、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
不織布を、カレンダー加工を実施しない以外は、実施例1記載の方法と同様にして、不織布を得た。
また、実施例1記載の方法と同様にして、芳香族ポリアミド極細繊維からなる繊維構造体を上記不織布上に成形し、積層体を得た。得られた積層体を、上ローラが金属製加熱フラットローラ、下ローラが金属製フラットローラであるカレンダー装置により、上下ローラの温度を330℃、線圧を300kgf/cmとして1回目のカレンダー加工を施し、さらに、上下ローラの温度を250℃、線圧を300kgf/cmとして2回目のカレンダー加工を施し、複合構造体を得た。得られた複合構造体は、芳香族ポリアミド極細繊維が繊維形状を有している部分と、複数の芳香族ポリアミド極細繊維が軟化して一体化しフィルム形状を有している部分とが存在していた。また、フィルム形状を有している部分と、不織布とが接合一体化していた。得られた複合構造体を用い、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
芳香族ポリアミド粉末状体、溶媒N,N−ジメチルアセトアミドを7:93の重量比で溶解させたポリマー溶液を使用した以外は、実施例2と同様にして複合構造体を得、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
芳香族ポリアミド粉末状体、溶媒N,N−ジメチルアセトアミドを15:85の重量比で溶解させたポリマー溶液を使用した以外は、実施例2と同様にして複合構造体を得、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
特公昭37−5732公報実施例1に準じて得られたメタ型芳香族ポリアミドフィブリッドにより不織布を成形した以外は、実施例2記載の方法に準じて複合繊維構造体を得た。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1]
ポリビニルアルコール(PVA)(株式会社クラレ製)、を17:85の重量比で水に溶解させたポリマー溶液を調製して芳香族ポリアミドポリマー溶液の代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして複合構造体を得た。得られた複合構造体を用い、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例2]
ポリビニルアルコール(PVA)(株式会社クラレ製)、を17:85の重量比で水に溶解させたポリマー溶液を調製して芳香族ポリアミドポリマー溶液の代わりに用い、カレンダー加工において、上下ローラの温度を1回目、2回目ともに100℃、線圧を1回目、2回目ともに300kgf/cmに変更した以外は、実施例2と同様にして複合構造体を得た。得られた複合構造体を用い、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
[比較例3]
不織布として、目付けが17g/mのポリプロピレンスパンボンド不織布(日本不織布製)を用い、カレンダー加工において、上下ローラの温度を1回目、2回目ともに100℃、線圧を1回目、2回目ともに300kgf/cmに変更した以外は、実施例2と同様にして複合構造体を得た。得られた複合構造体を用い、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例4]
ポリプロピレン(PP)微多孔膜(セルガードTM2400、Celgard社製)を用い、セパレータとしての性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、耐熱性などの高機能を有する芳香族ポリアミド極細繊維を使用し、加熱加圧処理工程を経ることによって、薄葉で、優れた耐熱性を有する電子部品用セパレータを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上からなる複合構造体であって、一方の層が、繊維径が1〜1000nmの芳香族ポリアミド極細繊維を含む繊維構造体からなり、他方の層が、芳香族ポリアミドフィブリッドまたは芳香族ポリアミドパルプを含む不織布からなることを特徴とする複合構造体。
【請求項2】
繊維構造体の目付けが0.1〜5.0g/m、不織布の目付けが5〜25g/mである請求項1記載の複合構造体。
【請求項3】
複合構造体の目付けが5.1〜30g/m、平均厚さが5〜30μmである請求項1または2記載の複合構造体。
【請求項4】
複合構造体を構成する芳香族ポリアミド極細繊維、芳香族ポリアミドフィブリッド、および、芳香族ポリアミドパルプが、いずれもメタ型芳香族ポリアミドからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項5】
一方の層を構成する繊維構造体が、電界紡糸法によって成形された芳香族ポリアミド極細繊維からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項6】
一方の層を構成する繊維構造体には、芳香族ポリアミド極細繊維が繊維形状を有している部分と、複数の芳香族ポリアミド極細繊維が軟化して一体化しフィルム形状を有している部分とが存在し、該フィルム形状を有している部分と、他方の層を構成する不織布とが少なくとも一部において接合一体化している請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合構造体からなることを特徴とする電子部品用セパレータ。
【請求項8】
透気度が100秒/300cm以下、25℃におけるマクミラン数が15以下、マクミラン数×複合構造体の平均厚さが250μm以下である請求項7記載の電子部品用セパレータ。
【請求項9】
30℃から昇温速度10℃/分で昇温したときの250℃における縦方向及び横方向の寸法変化率がいずれも5%未満であり、200℃にて1時間加熱した後の透気度の変化率が5%未満である請求項7又は8に記載の電子部品用セパレータ。

【公開番号】特開2010−115919(P2010−115919A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237294(P2009−237294)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】