説明

複合構造体及び複合構造体の製造方法

【課題】インサート成形体における樹脂部材が、薄肉部分、立体的形状を有することが可能な複合構造体を提供する。
【解決手段】立体腑形シートからなる第一熱可塑性樹脂成形体と、第一熱可塑性樹脂成形体に積層するように接合された第二熱可塑性樹脂成形体と、第一熱可塑性樹脂成形体と第二熱可塑性樹脂成形体とに挟まれるインサート部材と、を備える複合構造体とする。第一熱可塑性樹脂成形体は、インサート部材が配置される溝部を有することが好ましい。用途によっては、第一熱可塑性樹脂成形体は、発泡構造を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合構造体及び複合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート成形法は、樹脂の特性と金属、無機固体等(以下、金属、無機固体等をインサート部材と言う場合がある。)の素材の特性を生かし、インサート部材を樹脂に埋め込む成形法であり、得られるインサート成形体は熱可塑性樹脂部材とインサート部材とを備える。インサート成形法により得られたインサート成形体は、自動車部品や電気・電子部品、OA機器部品等として使用されている。このようにインサート成形体は、広い分野で使用される有用な材料である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
一般的に、インサート成形体の製造は、射出成形用の金型内にインサート部材を配置し、次いで、インサート部材が配置された金型内に熱可塑性樹脂組成物を射出することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−161693号公報
【特許文献2】特開2008−6829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インサート成形体の熱可塑性樹脂組成物に由来する樹脂部分が、薄肉部分を有する場合、複雑な立体形状を有する場合には、射出成形法では対応が困難な場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、インサート成形体における樹脂部材が、薄肉部分、立体的形状を有することが可能な複合構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体と、第一熱可塑性樹脂成形体に積層するように接合された第二熱可塑性樹脂成形体と、第一熱可塑性樹脂成形体と第二熱可塑性樹脂成形体とに挟まれるインサート部材と、を備える複合構造体であれば、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体と、前記第一熱可塑性樹脂成形体に積層するように接合された第二熱可塑性樹脂成形体と、前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記第二熱可塑性樹脂成形体とに挟まれるインサート部材と、を備える複合構造体。
【0009】
(2) 前記第一熱可塑性樹脂成形体は、前記インサート部材が配置される溝部を有する(1)に記載の複合構造体。
【0010】
(3) 前記第一熱可塑性樹脂成形体は、発泡構造を有する(1)又は(2)に記載の複合構造体。
【0011】
(4) 前記インサート部材は、導電性部材であり、前記第二熱可塑性樹脂成形体の端部に、前記導電性部材の端部と一体化されたコネクタ部を備える(1)から(3)に記載の複合構造体。
【0012】
(5) 立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体と、前記第一熱可塑性樹脂成形体に積層するように接合された第二熱可塑性樹脂成形体と、前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記第二熱可塑性樹脂成形体との間に介在する被覆部材と、前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記被覆部材とに挟まれるインサート部材と、を備える複合構造体。
【0013】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の複合構造体を製造する方法であって、立体腑型シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体の表面にインサート部材を配置するインサート部材配置工程と、前記インサート部材が配置された前記第一熱可塑性樹脂成形体を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出し、前記インサート部材を覆うように第二熱可塑性樹脂成形体を形成するインサート部材被覆工程と、を備える複合構造体の製造方法。
【0014】
(7) (5)に記載の複合構造体を製造する方法であって、立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体の表面にインサート部材を配置するインサート部材配置工程と、前記インサート部材上に被覆部材を配置する被覆部材配置工程と、前記インサート部材上に前記被覆部材が配置された前記第一熱可塑性樹脂成形体を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出することで形成される第二熱可塑性樹脂成形体で、前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記被覆部材と前記インサート部材とを一体化する一体化工程と、を備える複合構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体を使用するため、複合構造体の樹脂部分が薄肉部を有し、且つその薄肉部分の面積が広い場合であっても、複合構造体の製造が困難になる等の問題がほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、複合構造体を示す模式図であり、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は、MM断面の断面図である。
【図2】図2(a)は、第一熱可塑性樹脂成形体を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、インサート部材の配置を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3は、第二実施形態の複合構造体を模式的に示した斜視図である。
【図4】図4は、第二実施形態の複合構造体における、電子部品が接続された複合構造体を模式的に示す斜視図である。
【図5】図5は、電子部品を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図6】図6(a)は第三実施形態の複合構造体の長手方向の断面を模式的に示した図であり、(b)は短手方向の断面を模式的に示した図である。
【図7】図7は、複合構造体の変形例を示す図であり、第一熱可塑性樹脂成形体が縁部を有する場合を模式的に示す図である。
【図8】図8は、第三実施形態の複合構造体の変形例を示す図であり、(a)は三枚の被覆部材を用いる変形例であり、(b)及び(c)は、第二熱可塑性樹脂成形体が被覆部材の一部を覆う変形例である。
【図9】図9は、第三実施形態の複合構造体の変形例であり、被覆部材が折れ曲がり形状を有する変形例である。
【図10】図10は、複合構造体の変形例を示す図であり、インサート部材の端部が露出する変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
<複合構造体>
図1は、本実施形態の複合構造体を示す模式図であり、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は、MM断面の断面図である。図1に示す通り、本実施形態の複合構造体1は、第一熱可塑性樹脂成形体10と、第二熱可塑性樹脂成形体11と、インサート部材12と、を備える。
【0019】
第一熱可塑性樹脂成形体10上に第二熱可塑性樹脂成形体11が積層するように接合され、第一熱可塑性樹脂成形体10と第二熱可塑性樹脂成形体11とに挟まれるようにインサート部材12が配置されている。
【0020】
第一熱可塑性樹脂成形体10は、第二熱可塑性樹脂成形体11と積層するように接合する部位である。第一熱可塑性樹脂成形体10は、例えば、真空成形法で製造された立体腑型シートから構成されるため、薄肉部分を有し、且つ立体的な形状を備えることが可能である。第一熱可塑性樹脂成形体10を薄くしたい場合には、第一熱可塑性樹脂成形体10の厚みを0.2mm以上4mm以下に調整することが好ましく、より好ましくは0.2mm以上2mm以下である。
【0021】
また、本発明において第一熱可塑性樹脂成形体の形状は特に限定されず、第二熱可塑性樹脂成形体11との間にインサート部材12を配置することができ、上記第二熱可塑性樹脂成形体11と接合可能であればよい。
【0022】
図2(a)には、本実施形態の第一熱可塑性樹脂成形体10を示す。本実施形態において、第一熱可塑性樹脂成形体10は、熱可塑性樹脂シートを立体的に熱成形することにより得られる、側面部と底面部とから構成される、断面が略凹型のレール状の立体腑形シートである。ここで、第一熱可塑性樹脂成形体10は、シートを熱成形することにより製造されているため、通常、全体が薄肉部分である。なお、本実施形態では略凹部型の折れ曲がり形状であるが、平面状等の他の形状であってもよい。また、折れ曲がり形状の曲がりの程度も特に限定されない。
【0023】
底面部は、本実施形態の第一熱可塑性樹脂成形体10が形成する略凹部型の底部分にあたり、底面部の一の面が上記略凹部型の底面になる。本実施形態において、第一熱可塑性樹脂成形体10は、当該底面から側面にかけて連続する溝部101を3本有する。この溝部101の部分が立体的な形状の部分にあたる。
【0024】
溝部101は、インサート部材12の位置を固定するための部位である。本実施形態における溝部101は、底面部の長手方向に対して略平行に形成される。上述の通り、溝部101は、インサート部材12を固定するための部位であるため、溝部101をどのように形成するかは、インサート部材12をどのように配置するかに依存する。また、溝部101の本数もインサート部材12をどのように配置するかに依存する。
【0025】
また、溝部101は、インサート部材12の位置を固定するため手段の一例であり、溝部101を形成する以外の方法で、上記底面にインサート部材12を固定するようにしてもよい。なお、固定しなくても、第一熱可塑性樹脂成形体10と第二熱可塑性樹脂成形体11との間の所望の位置に、インサート部材12を配置できる場合には、溝部101等のインサート部材12の位置を固定するための部位を設ける必要はない。
【0026】
図2(b)には、第二熱可塑性樹脂成形体を模式的に示す。第二熱可塑性樹脂成形体11は、上記第一熱可塑性樹脂成形体10の少なくとも一部、及び第一熱可塑性樹脂成形体10上に配置されたインサート部材12の少なくとも一部を覆うように形成される。
【0027】
本実施形態において、第二熱可塑性樹脂成形体11は、第一熱可塑性樹脂成形体10と同様に側面部と底面部とから構成される、断面が略凹型のレール状である。
【0028】
本実施形態においては、第二熱可塑性樹脂成形体11が形成する略凹部型の外側の面の少なくとも一部が、第一熱可塑性樹脂成形体10が形成する略凹部の内側の面の少なくとも一部と接合することで、第二熱可塑性樹脂成形体11が第一熱可塑性樹脂成形体10上に積層する。
【0029】
続いて、第一熱可塑性樹脂成形体10を構成する材料、第二熱可塑性樹脂成形体11を構成する材料、インサート部材12について説明する。
【0030】
第一熱可塑性樹脂成形体10、第二熱可塑性樹脂成形体11の両者とも、熱可塑性樹脂組成物から構成される。熱可塑性樹脂組成物は熱可塑性樹脂を必須成分として含む。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶性樹脂、オレフィン系樹脂等を挙げることができる。第一熱可塑性樹脂成形体10、第二熱可塑性樹脂成形体11ともに、これらの熱可塑性樹脂を複数含有してもよい。
【0031】
また、本発明においては結晶性熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、結晶性熱可塑性樹脂の中でもポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂の使用が最も好ましい。
【0032】
なお、上記熱可塑性樹脂組成物には、ガラス繊維等の強化剤、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0033】
特に、第一熱可塑性樹脂成形体10は、発泡構造を有することが好ましい。発泡構造とは、内部に気泡構造を有する熱可塑性樹脂成形体であり、熱可塑性樹脂と発泡剤や発泡核剤とを混練して成形することで製造することができる。
【0034】
発泡剤としては、物理発泡に用いられる揮発性発泡剤や、化学発泡に用いられる分解性発泡剤等の一般的なものを使用可能である。また、発泡核剤についても、特に限定は無く、一般的なものを使用できる。
【0035】
上記のように第一熱可塑性樹脂成形体10、第二熱可塑性樹脂成形体11は、原料の組成等を調整することで所望の物性を、これらに付与することができる。
【0036】
インサート部材12は、従来からインサート成形体に用いられる一般的なものを使用することができる。つまり、インサート部材12を構成する材料は、金属、無機材料、有機材料のいずれであってもよい。具体的には、鋼、鋳鉄、ステンレス、アルミ、銅、金、銀、真鍮等の金属、熱伝導性のセラミックや炭素材等が挙げられる。また、表面に金属の薄膜が形成された金属等もインサート部材12として使用可能である。金属の薄膜としては、例えばメッキ処理(湿式メッキ処理、乾式メッキ処理等)により形成される薄膜を例示することができる。なお、インサート部材12とは金属、無機材料等の単体のみならず複数の金属や樹脂等を有する複合体のことを言う場合もある。
【0037】
<複合構造体の製造方法>
本発明の複合構造体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、後述する方法で製造することが好ましい。以下、本実施形態の複合構造体を製造する場合を例に、複合構造体の製造方法について説明する。
【0038】
例えば、複合構造体は、熱可塑性樹脂シートを立体的に熱成形することにより得られる第一熱可塑性樹脂成形体10の表面にインサート部材12を配置するインサート部材配置工程と、インサート部材12が配置された上記第一熱可塑性樹脂成形体10を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を上記金型内に射出し、上記インサート部材12を覆うように第二熱可塑性樹脂成形体11を形成する第二熱可塑性樹脂成形体被覆工程と、を備える方法で製造することができる。
【0039】
インサート部材配置工程とは、第一熱可塑性樹脂成形体10の表面にインサート部材12を配置する工程である。インサート部材12を配置する位置は特に限定されず、用途等に応じて適宜好ましい位置にインサート部材12を配置する。
【0040】
上述の通り、第一熱可塑性樹脂成形体10の底面部には、インサート部材12を固定するための溝部101が形成されている。このようにインサート部材12を固定できるようになっている場合には、そのインサート部材12を固定する手段を用いて、第一熱可塑性樹脂成形体10上にインサート部材12を配置する。本実施形態においては、溝部101の底をインサート部材12が這うように、インサート部材12を第一熱可塑性樹脂成形体10に配置する。
【0041】
第二熱可塑性樹脂成形体被覆工程とは、インサート部材12が配置された上記第一熱可塑性樹脂成形体10を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を上記金型内に射出し、上記インサート部材12の少なくとも一部を覆うように第二熱可塑性樹脂成形体11を形成す工程である。ここで、射出された熱可塑性樹脂組成物が第二熱可塑性樹脂成形体11になる。なお、射出成形の条件は、熱可塑性樹脂組成物の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0042】
以上のようにして、本実施形態の複合構造体を製造することができる。
【0043】
<効果>
本実施形態の複合構造体によれば、熱可塑性樹脂シートを立体的に熱成形することにより得られる第一熱可塑性樹脂成形体10と第二熱可塑性樹脂成形体11との間にインサート部材12が形成されている。第一熱可塑性樹脂成形体がシートを熱成形することにより製造されるため、薄肉部分を有し、且つ大型の複合構造体になる。
【0044】
また、第一熱可塑性樹脂成形体10がシートを熱成形することより製造されたものであるため、複合構造体に立体形状を付与することもできる。
【0045】
本実施形態の複合構造体では、第一熱可塑性樹脂成形体10に溝部101が形成されている。溝部101が形成されていることで、複合構造体を製造する際に、インサート部材12の位置がずれることにより生じる問題の発生を抑えることができる。複数のインサート部材12が隣接するように配置される場合に、インサート部材12の位置がずれることの問題が大きくなる場合が特に多いが、本発明によれば解消可能である。
【0046】
また、第一熱可塑性樹脂成形体10が発泡構造を有する場合には、第一熱可塑性樹脂成形体10は、インサート部材12と外部とを電気的に絶縁する効果を奏する以外に、第一熱可塑性樹脂成形体の外側と内側とを断熱することができる。また、製品全体をより軽量化することができる。
【0047】
また、第一熱可塑性樹脂成形体の厚みが薄い場合や、第一熱可塑性樹脂成形体の原料に熱伝導性の高い材料が使用されている場合には、製品の電熱効率を高めることが可能である。
【0048】
本実施形態の複合構造体の製造方法によれば、第一熱可塑性樹脂体の表面にインサート部材を配置するインサート部材配置工程と、インサート部材が配置された第一熱可塑性樹脂体を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出し、インサート部材の少なくとも一部を覆うように第二熱可塑性樹脂層を形成するインサート部材被覆工程と、を備える。このように複合構造体を製造すれば、インサート部材を第一熱可塑性樹脂成形体と第二熱可塑性樹脂成形体との間に容易に挟むことができる。
【0049】
<複合構造体の第二実施形態>
次に、本発明の複合構造体の第二実施形態につき、図3を参照しながら説明する。図3は第二実施形態の複合構造体1を模式的に示す斜視図である。なお、第二実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0050】
第二実施形態の複合構造体1は、第二熱可塑性樹脂成形体11の側面の端部がコネクタ部111Aである構成、インサート部材12が導電性部材である構成、第二熱可塑性樹脂成形体11の側面の端部であるコネクタ部111Aとインサート部材12の端部とが一体化されている構成において、第一実施形態の複合構造体1と異なる。
【0051】
第二実施形態において、第二熱可塑性樹脂成形体11は、側面部における端部の中央部付近に、コネクタ部111Aを有する。
【0052】
上記コネクタ部111Aは、電気部品や電源等と接続するための部位であり、その形状等は特に限定されず、接続する電気部品や電源等に応じて適宜好ましい形状にすることができる。例えば、一般的なコネクタのオス型、メス型の形状として、外部の配線等と接続可能な構造とすることができる、また、コネクタの形状を外部からの水の浸入を防ぐ構造にしてもよい。
【0053】
第二実施形態において、コネクタ部111Aは、凸状の段差形状を有しており、この凸状のコネクタ部111Aの先端部からインサート部材12の先端が露出している。この状態は、コネクタ部とインサート部材12とが一体化した状態を表す。このように導電性部材であるインサート部材12の先端が露出していることで、このコネクタ部111Aの先端と電気部品や電源等とを電気的に接続することができる。
【0054】
第二実施形態においては、インサート部材12は、溝部101内を這うように配置され、インサート部材12の先端がコネクタ部111Aの先端部から外部に露出する。
【0055】
第二実施形態の複合構造体1は、電子部品と組み合わせることで、好ましく使用することができる。電子部品を組み合わせて使用する例について図4を用いて説明する。図4は、電子部品2が接続された複合構造体1を模式的に示す斜視図である。電子部品2は、断面が略凹部型のレール状の複合構造体1の略凹部を閉じるように、略凹部型の底面部分と略平行に配置される。
【0056】
図5は、電子部品2を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は底面図である。電子部品2は板状であり、長手方向の一端部に開口21を有し、他端部に接続部22を有する。開口21は複合構造体1の一方のコネクタ部111Aが挿入する部位である。接続部22は、他方のコネクタ部111Aと電気的に接続するための部位である。
【0057】
第二実施形態の複合構造体1は、第一実施形態の複合構造体1と同様の方法で製造することができる。なお、コネクタ部111Aの形成、及びコネクタ部111Aとインサート部材との一体化は、第二熱可塑性樹脂成形体被覆工程で、所望のキャビティ形状を有する金型を選択することで行える。
【0058】
第二実施形態の複合構造体1によれば、上述した第一実施形態の複合構造体1の効果を奏する他、以下効果を奏する。
【0059】
インサート部材12が配線等の導電性部材の場合には、配線等は製品の外部にまとめて配置されることが多い。しかし、本実施形態の複合構造体1は、インサート部材12と樹脂製品とが一体となることで、この配線等を樹脂製品の内部に形成することができる。その結果、製品全体としての小型化を図ることができる。また、コネクタ部111Aの形成や、コネクタ部111Aとインサート部材12との一体化を、第二熱可塑性樹脂成形体11の形成時と同時に行うことができるため、組み立て工程等を削減でき、複合構造体の製造が容易である。
【0060】
また、第一熱可塑性樹脂成形体10と第二熱可塑性樹脂成形体11との間は、外側と電気的に絶縁された状態になっている。このため、インサート部材12を形成する際の制約が少なく、製品設計の自由度が高い。
【0061】
例えば、図4に示されるような、電子部品2が接続された複合構造体1の場合、真空成形等で使用する金型を調整することで、製品全体を所望の形状にできるとともに、電子部品2の機能を製品に付与しつつ、小型化を図ることができる。
【0062】
<複合構造体の第三実施形態>
次に、本発明の複合構造体の第三実施形態につき、図6を参照しながら説明する。図6(a)は第三実施形態の複合構造体1の長手方向の断面を模式的に示した図であり、(b)は短手方向の断面を模式的に示した図である。なお、全体の形状としては、第一実施形態の複合構造体1と同様に断面が略凹部型のレール状である。
【0063】
第三実施形態の複合構造体1は、被覆部材13Bを備える構成、インサート部材12が第一熱可塑性樹脂成形体10と被覆部材13Bとに挟まれる構成において、第一実施形態の複合構造体1と異なる。
【0064】
図6に示すように、本実施形態の被覆部材13Bは、第一熱可塑性樹脂成形体10の底面上に配置される。また、図6に示される通り、被覆部材13Bは一枚のシート状である。
【0065】
また、被覆部材13Bは、例えば、被覆部材13Bが第一熱可塑性樹脂成形体10上に配置される際に固定できるような固定部を、被覆部材13Bに形成させておくこともできる。例えば、一部が第一熱可塑性樹脂成形体10の溝部101の凹みに一部が入り込むような立体形状が、この固定部の一例として挙げられる。
【0066】
図6に示すように、第二熱可塑性樹脂成形体11は、第一熱可塑性樹脂成形体10とともに、インサート部材12及び被覆部材13Bを挟む。被覆部材13Bを構成する材料は特に限定されず、第一熱可塑性樹脂成形体、第二熱可塑性樹脂成形体と同様の材料を使用することができる。ただし、被覆部材13Bを構成する材料としては、第一熱可塑性樹脂成形体を構成する材料及び/又は第二熱可塑性樹脂成形体を構成する材料と同種であることが好ましい。同種であれば、より強固にこれらを一体化することができるからである。また、接合強度を高める目的で、被覆部材13Bとしては、結晶化度を低く調整した樹脂シートが特に好ましく使用される。例えば、結晶化度を低く調整したポリブチレンテレフタレート樹脂シートやポリフェニレンサルファイド樹脂シートであり、シートの成形直後に急冷したり、結晶化をやや妨げる共重合成分を用いたりして製造可能である。
【0067】
第三実施形態の複合構造体1を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、以下のインサート部材配置工程と、被覆部材配置工程と、一体化工程とを備える方法で、本実施形態の複合構造体1を製造することができる。
【0068】
インサート部材配置工程は、第一実施形態のインサート部材配置工程と同様の方法で行えるため、説明を省略する。
【0069】
被覆部材配置工程とは、被覆部材13Bをインサート部材12上に配置する工程である。なお、被覆部材13Bが上記固定部を有する場合には、この固定部を利用して、被覆部材配置工程を行う。
【0070】
一体化工程とは、インサート部材12上に被覆部材13Bが配置された第一熱可塑性樹脂成形体10を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出することで形成される第二熱可塑性樹脂成形体11で、第一熱可塑性樹脂成形体10と被覆部材13Bとインサート部材12とを一体化する工程である。第一実施形態におけるインサート部材被覆工程と、第二熱可塑性樹脂成形体が形成される以外は同様であるため、第一実施形態における第二熱可塑性樹脂成形体被覆工程と同様にして行うことができる。
【0071】
第三実施形態の複合構造体1によれば、上述した第一実施形態の複合構造体1の効果を奏する他、以下効果を奏する。
【0072】
第三実施形態の複合構造体1は、後述する通り、被覆部材13Bを用いることで、製造時のインサート部材12が所望の位置から動くことを抑えることができる。このため第三実施形態の複合構造体1は、精度良く所望の位置にインサート部材12を配置しなければならないような複雑な複合構造体になり得る。
【0073】
第三実施形態の複合構造体1を製造する方法によれば、インサート部材配置工程で配置されたインサート部材が、一体化工程で動くことが抑えられる。その結果、インサート部材12が複雑に配置された複合構造体も容易に製造可能である。
【0074】
また、第三実施形態の製造方法によれば、第二熱可塑性樹脂成形体を製造するときの樹脂流動圧力や溶融樹脂がもたらす高い温度により、インサート部材12がダメージを受け難い。
【0075】
<変形例>
以上、本発明の複合構造体及びその製造方法の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0076】
例えば、第一実施形態〜第三実施形態においては、複合構造体の断面の端部が、例えば図1(b)に示すように、成形体が積層した形状であるが、例えば、図7に示すように、第一熱可塑性樹脂成形体がその上に配置される第二熱可塑性樹脂成形体等を保持するような縁部を有してもよい。
【0077】
また、第三実施形態では、図6(b)に示す通り、一枚の被覆部材13Bを用いているが、図8(a)に示すように、三枚の被覆部材13Bを用いてもよい。また、三枚以上の被覆部材13Bを使用してもよい。
【0078】
また、第三実施形態では、図6(b)に示す通り、第二熱可塑性樹脂成形体11が被覆部材13Bの全体を覆っているが、図8(b)、(c)に示すように、第二熱可塑性樹脂成形体11が被覆部材13Bの一部を覆うものであってもよい。
【0079】
また、第三実施形態では、被覆部材13Bは平面状のシートであるが、図9に示すように折れ曲がりを有するものであってもよく、その他の形状であってもよい。
【0080】
また、第一実施形態〜第三実施形態では、図1(b)等に示す通り、インサート部材が、熱可塑性樹脂成形体に覆われた状態にあるが、図10に示すように、インサート部材の端部が露出していてもよい。また、複数の端部においてインサート部材が露出していてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 複合構造体
10 第一熱可塑性樹脂成形体
101 溝部
11 第二熱可塑性樹脂成形体
111A コネクタ部
12 インサート部材
13B 被覆部材
2 電子部品
21 開口
22 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体と、
前記第一熱可塑性樹脂成形体に積層するように接合された第二熱可塑性樹脂成形体と、
前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記第二熱可塑性樹脂成形体とに挟まれるインサート部材と、を備える複合構造体。
【請求項2】
前記第一熱可塑性樹脂成形体は、前記インサート部材が配置される溝部を有する請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
前記第一熱可塑性樹脂成形体は、発泡構造を有する請求項1又は2に記載の複合構造体。
【請求項4】
前記インサート部材は、導電性部材であり、
前記第二熱可塑性樹脂成形体の端部に、前記導電性部材の端部と一体化されたコネクタ部を備える請求項1から3に記載の複合構造体。
【請求項5】
立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体と、
前記第一熱可塑性樹脂成形体に積層するように接合された第二熱可塑性樹脂成形体と、
前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記第二熱可塑性樹脂成形体との間に介在する被覆部材と、
前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記被覆部材とに挟まれるインサート部材と、を備える複合構造体。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の複合構造体を製造する方法であって、
立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体の表面にインサート部材が配置された前記第一熱可塑性樹脂成形体を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出し、前記インサート部材の少なくとも一部を覆うように第二熱可塑性樹脂成形体を形成するインサート部材被覆工程と、を備える複合構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の複合構造体を製造する方法であって、
立体腑形シートから構成される第一熱可塑性樹脂成形体の表面にインサート部材を配置するインサート部材配置工程と、
前記インサート部材上に被覆部材を配置する被覆部材配置工程と、
前記インサート部材上に前記被覆部材が配置された前記第一熱可塑性樹脂成形体を金型内に配置し、熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出することで形成される第二熱可塑性樹脂成形体で、前記第一熱可塑性樹脂成形体と前記被覆部材と前記インサート部材とを一体化する一体化工程と、を備える複合構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−52629(P2013−52629A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193347(P2011−193347)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】