説明

複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体

【課題】ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減した複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子及び予備発泡粒子を提供する。また、外観の低下を抑制した発泡成形体を提供する。
【解決手段】複合樹脂粒子は、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含む。発泡性複合樹脂粒子は、上記複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含有する。予備発泡粒子は、上記発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて得られる。発泡成形体は、上記予備発泡粒子を用いて発泡成形させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−102632号公報(特許文献1)には、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸及び重合して得られる複合樹脂粒子を形成する際に、ポリエチレン系樹脂粒子同士が付着することを防止するために、ポリエチレン系樹脂粒子を構成するポリエチレン系樹脂として、特定量の酢酸ビニルを含んでなり、特定のメルトフローレート及び特定の融点を有するポリエチレン系樹脂を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−102632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の複合樹脂粒子において、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着率(結合粒子量)は7%または10%であることが開示されており、付着率の低減は十分でない。このようにポリエチレン系樹脂粒子の付着率が十分に低減されていない場合には、この複合樹脂粒子に発泡剤を含浸した発泡性複合樹脂粒子を形成し、この発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子とし、この予備発泡粒子を型を用いて成形すると、型への充填不良により、得られる発泡成形体に粒子が充填されない部分が生じる。発泡成形体に粒子が充填されない部分が生じると、発泡成形体の外観が悪くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減した複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子及び予備発泡粒子を提供することを一の課題とする。
また、本発明は、外観不良を抑制した発泡成形体を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の複合樹脂粒子は、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含む。
【0007】
本発明者が鋭意研究した結果、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂は、モノマーと含浸及び重合する際に、互いに付着しにくいという特性を見出した。本発明の複合樹脂粒子は、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含むので、このポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士が付着することを低減できる。したがって、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減した複合樹脂粒子を提供することができる。
【0008】
上記複合樹脂粒子において好ましくは、上記ピークを有するポリエチレン系樹脂は、ASTM(米国材料試験協会:American Society for Testing and Materials) D 6866により測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂を含む。
【0009】
本発明者が鋭意研究した結果、植物由来ポリエチレン系樹脂は、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有することを見出した。このため、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むことにより、モノマーと含浸及び重合する際にポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減できると共に、環境問題に貢献できる複合樹脂粒子を提供することができる。
【0010】
上記複合樹脂粒子において好ましくは、上記植物由来ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂である。
【0011】
本発明者が鋭意研究した結果、植物由来ポリエチレン系樹脂のうち、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、モノマーと含浸及び重合する際に、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を効果的に低減できることを見出した。このため、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を含有することにより、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着をより低減できる。
【0012】
上記複合樹脂粒子において好ましくは、ビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂をさらに含む。
【0013】
本発明者は鋭意研究の結果、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を、ビニル芳香族系モノマーと含浸及び重合する際に、該ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を効果的に抑制できることを見出した。このため、ビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂をさらに含有することにより、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着をより低減できる。
【0014】
本発明の発泡性複合樹脂粒子は、上記いずれかの複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含有する。
【0015】
本発明の発泡性複合樹脂粒子によれば、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含むので、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減した発泡性複合樹脂粒子を提供することができる。
【0016】
本発明の予備発泡粒子は、上記発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて得られる。
【0017】
本発明の予備発泡粒子によれば、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含むので、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減した予備発泡粒子を提供することができる。
【0018】
本発明の発泡成形体は、上記予備発泡粒子を用いて発泡成形させて得られる。
【0019】
本発明の発泡成形体によれば、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含む予備発泡粒子を用いて発泡成形させて得られる。ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減できる予備発泡粒子を用いているので、型への充填不良を低減でき、得られる発泡成形体に粒子が充填されない部分を低減できる。したがって、本発明は、外観不良を抑制した発泡成形体を提供することができる。
【0020】
上記発泡成形体において好ましくは、50%以下の植物度を有する。
【0021】
これにより、ポリエチレン系樹脂の割合が高くなりすぎないので、発泡剤の保持性の低下を抑制することで、外観不良を抑制できるとともに、環境問題に貢献できる発泡成形体を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減した複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子及び予備発泡粒子を提供することができる。
また、本発明は、外観不良を抑制した発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂のGC/MSチャートを示す模式図である。
【図2】リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有さないポリエチレン系樹脂のGC/MSチャートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態1の複合樹脂粒子は、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子を含有している。
すなわち、複合樹脂粒子を構成するポリエチレン系樹脂粒子は、添加剤定性分析(TSM化GC/MS法)により測定したときに得られるGC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含む。
【0026】
ここで、図1及び図2を参照して、上記ピークを有するポリエチレン系樹脂について説明する。
ポリエチレン系樹脂中の添加剤種はガスクロマトグラフ質量分析装置を使って測定する事ができる。添加剤定性分析法では、このガスクロマトグラフ質量分析装置を用いてGC/MSチャートが測定される。この測定により得られるGC/MSチャートにおいて、横軸はリテンションタイム(保持時間)(単位:分)を示し、縦軸はイオン強度を示す。
図1に示す本実施の形態のポリエチレン系樹脂は、添加剤定性分析法により測定したときに得られるGC/MSチャートにおいて、26分以上28分以下の範囲内にピークを有する。一方、図2に示すポリエチレン系樹脂は、添加剤定性分析法により測定したときに得られるGC/MSチャートにおいて、26分以上28分以下の範囲内にピークを有していない。
なお、GC/MSチャートにおいて、S/N比(シグナル/ノイズ比)が3以上の信号をピークと判断し、それ未満はノイズと判断する。
【0027】
ポリエチレン系樹脂は、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有し、リテンションタイムが26.2分以上27.2分以下の範囲内にピークを有することがより好ましい。26分以上28分以下の範囲内にピークを有する場合には、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士が付着されることを低減できる。26.2分以上27.2分以下の範囲内にピークを有する場合には、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士が付着されることをより低減できる。
【0028】
また、ポリエチレン系樹脂において、図1に示すリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内に存在するピークの幅(ピークの開始点とピークの終了点とのタイム)は、1分以上2分以下であることが好ましく、0.1分以上1分以下であることがより好ましい。この範囲内の場合には、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減する効果をより発現することができる。
【0029】
なお、図1に示すようなGC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0030】
図1に示すようなGC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂は、ASTM D 6866により測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂を含むことが好ましく、植物由来ポリエチレン系樹脂であることがより好ましい。
【0031】
ここで、植物由来ポリエチレン系樹脂は、植物度が80%以上であれば特に限定されず、例えばBraskem S.A.社製の商品名「SLL−118」、「SLH−118」、「SLL−218」、「SLH−218」、「SHD−7255LS−L」、「SHC−7260」などを用いることができる。
【0032】
植物由来ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE:密度0.910〜0.940g/cm3)、高密度ポリエチレン系樹脂(HDPE:密度0.940〜0.970g/cm3)などであってもよい。ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減する効果をより発現する観点からは、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)であることが好ましい。
また、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、耐衝撃性が必要な用途に、好適に用いられる。このため、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を用いて発泡成形体を作製すると、高い耐衝撃性を発揮することができる。
【0033】
GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂が植物由来ポリエチレン系樹脂である場合、ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して、例えば5質量部以上、好ましくは70質量部以上の植物由来ポリエチレン系樹脂を含む。5質量部以上の植物由来ポリエチレン系樹脂を含むことにより、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減する効果をより発現することができる。70質量部以上の植物由来ポリエチレン系樹脂を含むことにより、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減する効果をより一層発現することができる。
【0034】
ポリエチレン系樹脂粒子は、石油由来ポリエチレン系樹脂をさらに含んでいてもよい。石油由来ポリエチレン系樹脂は、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有していてもよく、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有していなくてもよい。ポリエチレン系樹脂粒子が石油由来ポリエチレン系樹脂を含む場合、ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して、例えば95質量部以下の石油由来ポリエチレン系樹脂を含む。95質量部以下の石油由来ポリエチレン系樹脂を含んでいても、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減できる。
【0035】
植物由来ポリエチレン系樹脂及び石油由来ポリエチレン系樹脂は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)で測定した重量平均分子量(Mw)が10万以上50万以下であり、Z平均分子量(Mz)が20万以上90万以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上4.5以下であることが好ましい。これらの分子量、分子量分布範囲の場合、成形が容易で、かつ得られた発泡成形体の強度(特に耐衝撃性)を改善できるという効果がある。
【0036】
また、植物由来ポリエチレン系樹脂及び石油由来ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィン単量体との共重合体、エチレンと官能基に炭素、酸素、及び水素原子だけを持つ非オレフィン単量体との共重合体が挙げられ、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
ポリエチレン系樹脂粒子は、一般公知のエラストマー、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリル重合体などの第3成分をさらに含んでいてもよい。この場合、ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは30質量部以下の第3成分を含む。30質量部以下の第3成分を含んでいても、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を低減できると共に、第3成分による特性を発現することができる。
【0038】
なお、ポリエチレン系樹脂粒子は、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含んでいれば特に限定されない。すなわち、ポリエチレン系樹脂は、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有する植物由来ポリエチレン系樹脂及び石油由来ポリエチレン系樹脂の少なくとも一方を含んでいればよい。このため、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有していない植物由来ポリエチレン系樹脂及び石油由来ポリエチレン系樹脂の少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。
【0039】
複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂粒子にモノマーを重合して得られる樹脂をさらに含有している。つまり、複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂粒子と、モノマーを重合して得られる樹脂とを含む。
本実施の形態の複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂粒子にモノマーを含浸させながら、重合させてもよい。また、モノマーを重合して得られた樹脂とポリエチレン系樹脂を単純に混合して複合樹脂粒子としても良い。
【0040】
上記モノマーは、ビニル芳香族系モノマーであることが好ましい。
ビニル芳香族系モノマーは、特に限定されないが、スチレン及び置換スチレン(置換基には、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等が含まれる)のいずれも使用できる。置換スチレンとしては、例えば、クロルスチレン類、p−メチルスチレン等のビニルトルエン類、α−メチルスチレン等が挙げられる。この内、スチレンが一般に好ましい。また、スチレン系モノマーは、スチレンと、置換スチレンとの混合物、スチレンと共重合可能な少量の他のモノマー(例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度)、マレイン酸モノ乃至ジアルキル(アルキル部分の炭素数1〜4程度)、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノ乃至ジアクリル酸乃至メタクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイド等)との混合物が使用できる。これら混合物中、スチレンが優位量(例えば、50重量%以上)を占めることが好ましい。
【0041】
ビニル芳香族系モノマーの量は、ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して、70質量部以上1000質量部以下配合されることが好ましく、100質量部以上400質量部以下であることが好ましい。この範囲内で配合されたビニル芳香族系モノマーにポリエチレン系樹脂粒子が含浸及び重合される際に、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を抑制できる効果を発現でき、さらに以下の効果を発現できる。70質量部以上の場合、ビニル芳香族系モノマーの剛性が良好であるという特性を発現しやすく、発泡剤の保持性を向上でき(つまり発泡性を向上でき)、外観が良好な発泡成形体を得やすくなる。100質量部以上の場合、外観が良好な発泡成形体をより得やすくなる。1000質量部以下の場合、ポリエチレン系樹脂の弾性が高く、耐油性及び耐衝撃性が良好であるという特性が発現しやすく、特にポリエチレン系樹脂による優れた耐衝撃性を発揮することができる。400質量部以下の場合、ポリエチレン系樹脂の特性をより発現しやすい。
また、上記範囲内のビニル芳香族系モノマーを配合することにより、嵩密度が13kg/m3以上200kg/m3以下の発泡成形体を形成することができる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子は、無機核剤をさらに含むことが好ましい。無機核剤としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、クレー、ゼオライト、炭酸カルシウム等を使用できる。
【0043】
ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子が無機核剤をさらに含む場合には、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下が好ましい。0.01質量部以上であると、ポリエチレン系樹脂中にビニル芳香族系モノマーを分散させやすく、発泡性複合樹脂粒子を予備発泡する際、均一な気泡が形成される。2質量部以下であると、発泡成形体の強度を向上できる。
【0044】
ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子は、必要に応じて、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加物をさらに含んでいてもよい。着色剤としては、無機着色剤及び有機着色剤のいずれを用いてもよいが、酸化鉄、カーボンブラック等の無機系の着色剤を用いることが好ましい。
【0045】
本実施の形態の複合樹脂粒子の結合粒子量(ポリエチレン系樹脂粒子の付着率)は、2%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましい。
なお、上記結合粒子量は、複合樹脂粒子1gから2個以上のポリエチレン系樹脂粒子が付着して重合した付着粒子を取り出して、付着粒子の重量を測定し、1g中の重量%を測定したときの値である。
【0046】
上記複合樹脂粒子の平均粒径は、0.2mm以上2.0mm以下であることが好ましい。0.2mm以上の場合、発泡剤の保持性が低くなることを抑制でき、低密度化が可能となる。2.0mm以下の場合、金型への充填性が悪くなることを抑制できると共に、発泡成形体の薄肉化も可能となる。
【0047】
続いて、本実施の形態における複合樹脂粒子の製造方法について説明する。
【0048】
まず、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を押出機に供給する。
GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂は、植物由来ポリエチレン系樹脂であることが好ましく、その中でも直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であることがより好ましい。
【0049】
GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂と併せて、石油由来ポリエチレン系樹脂をさらに添加してもよい。石油由来ポリエチレン系樹脂は、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有していてもよく、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有していなくてもよい。
【0050】
また、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂と併せて、一般公知のエラストマー、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリル系重合体等の第三成分をさらに添加してもよい。
【0051】
また、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂と併せてタルク、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加物を押出機に供給してもよい。
【0052】
上記のように押出機に供給された供給物を溶融混練し、造粒することでポリエチレン系樹脂粒子を形成する。造粒方法は特に限定されず、例えばストランドカット、水中カットなどの公知の方法で行われる。溶融温度は押出機ヘッド部の樹脂流路の中心に達する熱電対により測定され、200℃以上350℃以下が好ましく、230℃以上330℃以下がより好ましい。
【0053】
次に、分散剤を含む水溶液中に、ポリエチレン系樹脂粒子と、モノマーとを加熱・攪拌下にて分散して、ポリエチレン系樹脂粒子にモノマーを含浸させる。
【0054】
モノマーは、ビニル芳香族系モノマーを含むことが好ましく、スチレン系モノマーを含むことがより好ましい。
この場合、ビニル芳香族系モノマーは、ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して、70質量部以上1000質量部以下配合されることが好ましい。
【0055】
分散剤としては、特に限定されず、例えば、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム等を用いることができる。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダのような界面活性剤を用いてもよい。
【0056】
上記水溶液中に、重合開始剤をさらに混合してもよい。重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネ−ト、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物を用いることができる。
【0057】
次に、分散液を昇温して、ポリエチレン系樹脂粒子中でモノマーを重合させる。
【0058】
以上の工程を実施することにより、本実施の形態のGC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子と(ビニル芳香族系)モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子を製造することができる。
【0059】
なお、重合するモノマーの量が多い場合(例えば300質量部を超える場合)、重合体粉末の発生を低減するために、モノマーを2段階以上に分けてポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させてもよい。
【0060】
(実施の形態2)
本実施の形態の発泡性複合樹脂粒子は、実施の形態1の複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含有する。
【0061】
揮発性発泡剤は、特に限定されないが、例えば、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素類等を単独もしくは2種以上混合して用いることができる。また、ジイソブチルアジペートのような公知の可塑剤、シクロヘキサンのような公知の溶剤を発泡助剤として用いても良い。
【0062】
揮発性発泡剤の含有量は、特に限定されないが、複合樹脂粒子100質量部に対して、例えば5質量部以上30質量部以下である。発泡助剤の含有量は、特に限定されないが、複合樹脂粒子100質量部に対して、例えば0.1質量部以上5質量部以下である。
【0063】
続いて、本実施の形態における発泡性複合樹脂粒子の製造方法について説明する。
まず、実施の形態1の複合樹脂粒子を製造する。
【0064】
次に、例えば、回転混合機に、複合樹脂粒子を供給して回転させながら、揮発性発泡剤を圧入する。この時、必要に応じて、複合樹脂粒子と併せて気泡調整剤等の添加物を回転混合機に供給してもよい。
次に、所定の温度まで昇温し、その温度で維持した後、冷却する。
【0065】
以上の工程を実施することにより、本実施の形態における発泡性複合樹脂粒子を製造することができる。
なお、本実施の形態の発泡性複合樹脂粒子は、複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を混合しているが、モノマーの重合中に揮発性発泡剤を混合してもよい。
【0066】
(実施の形態3)
本実施の形態の予備発泡粒子は、実施の形態2の発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させてなる。予備発泡粒子は、実施の形態2の発泡性複合樹脂粒子を嵩密度13kg/m3以上200kg/m3以下に予備発泡されていることが好ましく、好ましくは14kg/m3以上30kg/m3に予備発泡されていることがより好ましい。この範囲内の嵩密度では、外観が良好になり、優れた耐衝撃性が発揮される。
【0067】
本実施の形態の予備発泡粒子の製造方法は、実施の形態2の発泡性複合樹脂粒子を製造する工程と、この発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、所定の圧力の蒸気を導入して予備発泡させる工程とを備える。必要に応じて0.1MPaを超える圧力の蒸気を導入可能な発泡機を用いることもできるが、省エネルギーの為、0.1MPa以下の圧力の蒸気で予備発泡することが好ましい。
なお、複合樹脂粒子及び予備発泡粒子は、粒子の長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.6以上1.6以下である略球状、乃至は球状であることが好ましい。この場合、金型への充填性が良くなる。
【0068】
(実施の形態4)
本実施の形態の発泡成形体は、実施の形態3の予備発泡粒子を用いて発泡成形させてなる。
【0069】
複合樹脂粒子が植物由来ポリエチレン系樹脂を含む場合には、発泡成形体は、0%を超えて50%以下の植物度を有し、好ましくは0.4%以上43%以下の植物度を有する。この範囲内の植物度を有すると、外観不良を抑制でき、優れた耐衝撃性が得られると共に、環境に優しい発泡成形体を実現できる。また、植物度が50%以下であるということは、モノマーが100質量部以上であり、即ちポリエチレン系樹脂の割合が半分以下となるので、発泡剤の保持性の低下を抑制できるので、外観不良を抑制できる。
【0070】
本実施の形態の発泡成形体の製造方法は、実施の形態3の予備発泡粒子を製造する工程と、この予備発泡粒子を金型内に供給し、水蒸気を導入して、予備発泡粒子を発泡成形する工程とを備える。必要に応じて0.1MPaを超える圧力の蒸気を導入可能な成形機を用いることもできるが、省エネルギーの為、0.1MPa以下の圧力の蒸気で成形することが好ましい。
【0071】
予備発泡粒子を型を用いて成形すると、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着が低減されているため、型への充填不良を低減できる。このため、得られる発泡成形体に粒子が充填されない部分が生じることを抑制できるので、発泡成形体の外観不良を抑制できる。
【実施例】
【0072】
次に、実施例1〜6及び比較例1〜3を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
以下に、実施例1〜6及び比較例1〜3中の各種値の測定方法を記載する。
【0073】
(添加剤定性分析:TMS化GC/MS定性分析法)
ポリエチレン系樹脂0.2gを熱トルエン(トルエンを沸点(約110℃)付近まで熱したもの)約20mLに溶解し、メタノール約70mLで再沈殿して1時間程度攪拌する。No.5Aろ紙でポリマー分除去後、ろ液を濃縮乾固する。乾固物にアセトン10mLを加えて溶解し、その内5mLを10mL遠沈管に移し入れて蒸発乾固後TMS化剤0.2mLを加え、70℃アルミブロック中で1時間以上加熱し、上澄み反応液(溶解反応液)をGC/MS装置に注入する。測定装置はガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所株式会社製 QP5000)を用いて、得られたクロマトグラム上のピークのマススペクトルをNISTライブラリで検索し、照合することで定性分析を実施した。
測定条件は、カラム:Zebron社製ZB−5(0.25μm×0.25mmφ×30m)、カラム温度:初期温度60℃で1分間保持、10℃/分で昇温し300℃で5分間保持、注入口温度:220℃、インターフェース温度:220℃、キャリアーガス:He(流量17.5mL/分)、注入量:2μL、とした。
上記条件で測定したとき、GC/MSチャートにおいて、S/N比(シグナル/ノイズ比)が3以上の信号をピークと判断し、それ未満はノイズと判断して、ピークの有無と、ピークが存在する場合にはピークの存在するリテンションタイムとを測定した。
【0074】
(植物度)
ポリエチレン系樹脂及び発泡成形体の植物度は、ASTM D6866 により測定した。
【0075】
(ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート)
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgf荷重にて測定した。
【0076】
(嵩密度)
JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。具体的には、見かけ密度測定器により予備発泡粒子をメスシリンダー内に自然落下させ、その重量を測定し、下記の式により算出した。
嵩密度(kg/m3)=重量(kg)/メスシリンダー内の粒子容積(m3
【0077】
(発泡成形体の密度)
発泡成形体の密度は、JIS A 9511:1995「発泡プラスチック保温板」に準拠して測定した。
【0078】
(衝撃強度)
発泡成形体を縦215mm、横40mm、高さ20mmの大きさにカットしたサンプルを作製した。このサンプルを155mmのスパンで配置された一対の保持部材上に載置した後、両保持部材の中間位置で、かつサンプルの幅方向の中心位置に、所定の高さから重さ321gの鋼球を落下させて、サンプルの破壊の有無を確認した。
この試験では、鋼球を落下させる高さを変えて繰り返し行い、サンプルが破壊された高さの最低値を落球衝撃値とした。つまり、落球衝撃値が高いほど、衝撃強度が高いことを意味する。
なお、鋼球を落下させる最大高さは120cmに設定した。このため、落球衝撃値が120cmを超える場合、鋼球の重さを534g、1044gに変更して上記と同様にして落球衝撃値を測定し、その値を下記の式により321gの鋼球による落球衝撃値に換算した。
321gでの落球衝撃値=(534/321)×(534gでの落球衝撃値)・・・(式1)
321gでの落球衝撃値=(1044/321)×(1044gでの落球衝撃値)・・・(式2)
実施例1〜6及び比較例1〜3において、落球衝撃値が120cmより高く、200cmより低い場合は、式1により換算した値であり、落球衝撃値が200cm以上の場合は、式2により換算した値を意味する。
【0079】
(結合粒子量)
複合樹脂粒子1gから2個以上のポリエチレン系樹脂粒子が付着して重合した付着粒子を取り出して、付着粒子の重量を測定し、1g中の重量%を測定した。なお、サンプル重量は小数点以下4桁まで計測した。
【0080】
(金型充填性)
実施例1〜6及び比較例1〜3の発泡成形体の金型充填性評価として、仕切板を有する箱型の金型を用いて、得られた予備発泡粒子を型内成形した。箱型発泡成形体は、縦300mm、横400mm、高さ100mmの大きさで、内部に縦方向に平行な3組の仕切板を有している。各仕切板は底部からの深さ80mm、厚み10mmである。仕切板は最も予備発泡粒が充填しにくい部分と考えられ、この部分の粒子の充填性は、金型どおりに発泡粒が充填しているものを良好と判断し、金型どおりに発泡粒が充填しておらず、欠けたように見える部分があるものを充填不良と判断した。
【0081】
(実施例1)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLL−118」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が87%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であり、図1に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られた。
【0082】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで、楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0083】
次に、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子55質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部を予めスチレンモノマー45質量部に溶解した。
【0084】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
【0085】
次に、分散液の温度を130℃に昇温して3時間保持し、スチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0086】
得られた複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は、0.5%であった。
【0087】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)14質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0088】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度30kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0089】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後0.09MPaの蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度30kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体、及び縦300mm、横400mm、高さ100mmの大きさで、内部に縦方向に平行な3組の仕切板を有する箱型発泡成形体を得た。
【0090】
得られた発泡成形体の植物度は49%であり、直方体形状の発泡成形体から切り出したサンプルの落球衝撃値を測定したところ、206.0cmと優れていた。また、実施例1の箱型発泡成形体の金型充填性、及び外観は良好であった。
【0091】
(実施例2)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLH−118」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が84%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であり、図1に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られた。
【0092】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0093】
次に、分散剤としての第3リン酸カルシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子30質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.10質量部を予めスチレンモノマー15質量部に溶解して第1のスチレンモノマーを得た。
【0094】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含む第1のスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中に第1のスチレンモノマーを含浸させた。
【0095】
次に分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、第1のスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0096】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレンモノマー55質量部に溶解させて第2のスチレンモノマーを得て、第1の重合の反応液に1時間当たり11質量部の割合で5時間かけて連続的に第1の重合の反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合(第2の重合)させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0097】
得られた複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は、0.8%であった。
【0098】
続いて、実施例1と同様に、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)16質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0099】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度20kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0100】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後0.08MPaの蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度20kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体、及び縦300mm、横400mm、高さ100mmの大きさで、内部に縦方向に平行な3組の仕切板を有する箱型発泡成形体を得た。
【0101】
得られた発泡成形体の植物度は26%であり、直方体形状の発泡成形体から切り出したサンプルの落球衝撃値は50.0cmと優れていた。また、実施例2の箱型発泡成形体の金型充填性、及び外観は良好であった。
【0102】
(実施例3)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLH−218」メルトフローレート:2.3g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が84%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であり、図1に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られた。
【0103】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂5.0質量部、石油由来の無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製 商品名「NF−444A」メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.912g/cm3)95質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレンン系樹脂粒子を得た。得られたポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.40mgであった。
【0104】
次に、ピロリン酸ナトリウム(分散剤)0.8質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子10質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.10質量部を予めスチレンモノマー5質量部に溶解して第1のスチレンモノマーを得た。
【0105】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含む第1のスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中に第1のスチレンモノマーを含浸させた。
次に分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、第1のスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0106】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部をスチレンモノマー85質量部に溶解させて第2のスチレンモノマーを得て、第1の重合の反応液に1時間当たり11質量部の割合で8時間かけて連続的に第1の重合の反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合(第2の重合)させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0107】
得られた複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は、1.8%であった。
【0108】
続いて、実施例1と同様に、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート1.2質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)20質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0109】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.05MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度14kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0110】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後0.07MPaの蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度14kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体、及び縦300mm、横400mm、高さ100mmの大きさで、内部に縦方向に平行な3組の仕切板を有する箱型発泡成形体を得た。
【0111】
得られた発泡成形体の植物度は0.4%であり、直方体形状の発泡成形体から切り出したサンプルの落球衝撃値は35.0cmと優れていた。また、実施例3の箱型発泡成形体の金型充填性、及び外観は良好であった。
【0112】
(実施例4)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLL−218」メルトフローレート:2.3g/10分、密度:0.918g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が87%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であり、図1に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られた。
【0113】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂70質量部、アクリロニトリル−スチレン共重合体粒子(電気化学工業株式会社製 商品名「AS−XGS」(重量平均分子量12.7万)30質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで、楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0114】
次に、分散剤としての第3リン酸カルシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子30質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.10質量部を予めスチレンモノマー15質量部に溶解して第1のスチレンモノマーを得た。
【0115】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含む第1のスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中に第1のスチレンモノマーを含浸させた。
次に分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、第1のスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0116】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレンモノマー55質量部に溶解させて第2のスチレンモノマーを得て、第1の重合の反応液に1時間当たり11質量部の割合で5時間かけて連続的に第1の重合の反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合(第2の重合)させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0117】
得られた複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は、1.2%であった。
【0118】
続いて、実施例1と同様に、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.8質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)18質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0119】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.03MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度17kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0120】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後0.08MPaの蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度17kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体、及び縦300mm、横400mm、高さ100mmの大きさで、内部に縦方向に平行な3組の仕切板を有する箱型発泡成形体を得た。
【0121】
得られた発泡成形体の植物度は18%であり、直方体形状の発泡成形体から切り出したサンプルの落球衝撃値は43.0cmと優れていた。また、実施例4の箱型発泡成形体の金型充填性、及び外観は良好であった。
【0122】
(実施例5)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLL−118」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が87%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であり、図1に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られた。
【0123】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで、楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0124】
次に、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子60質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部を予めスチレンモノマー40質量部に溶解した。
【0125】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
【0126】
次に、分散液の温度を130℃に昇温して3時間保持し、スチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0127】
得られた複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は、0.7%であった。
【0128】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)14質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0129】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.05MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度30kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0130】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後0.10MPaの蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度30kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体、及び縦300mm、横400mm、高さ100mmの大きさで、内部に縦方向に平行な3組の仕切板を有する箱型発泡成形体を得た。
【0131】
得られた発泡成形体の植物度は52%であり、直方体形状の発泡成形体から切り出したサンプルの落球衝撃値を測定したところ、210.0cmと優れていた。また、実施例5の箱型発泡成形体の金型充填性、及び外観は良好であった。しかし、実施例1〜4と同等の外観を得るためには成形時に0.10MPaの圧力の蒸気が必要であった。
【0132】
(実施例6)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLH−218」メルトフローレート:2.3g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が84%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であり、図1に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られた。
【0133】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部、及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレンン系樹脂粒子を得た。得られたポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.40mgであった。
【0134】
次に、ピロリン酸ナトリウム(分散剤)0.8質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子8質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.10質量部を予めスチレンモノマー4質量部に溶解して第1のスチレンモノマーを得た。
【0135】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含む第1のスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中に第1のスチレンモノマーを含浸させた。
次に分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、第1のスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0136】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.40質量部をスチレンモノマー88質量部に溶解させて第2のスチレンモノマーを得て、第1の重合の反応液に1時間当たり11質量部の割合で8時間かけて連続的に第1の重合の反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合(第2の重合)させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0137】
得られた複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は、0.8%であった。
【0138】
続いて、実施例1と同様に、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート1.2質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)20質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0139】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.05MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度14kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0140】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後0.07MPaの蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度14kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体、及び縦300mm、横400mm、高さ100mmの大きさで、内部に縦方向に平行な3組の仕切板を有する箱型発泡成形体を得た。
【0141】
得られた発泡成形体の植物度は7%であり、直方体形状の発泡成形体から切り出したサンプルの落球衝撃値は30.0cmと優れていた。また、実施例6の箱型発泡成形体の金型充填性、及び外観は良好であった。しかし、実施例3の落球衝撃値と比較すると劣るものであった。
【0142】
(比較例1)
図2に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られない無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「LH−118」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.916g/cm3)とすること以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例1のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0143】
得られた発泡成形体の植物度は0%であり、落球衝撃値は205.0cmであったが、複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は2.2%と多く、2.0%を超えていた。また、比較例1の箱型発泡成形体は、充填不良が見られ、良好な外観は得られなかった。
【0144】
(比較例2)
図2に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られない無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「LH−218」メルトフローレート:2.3g/10分、密度:0.916g/cm3)とすること以外は実施例2と同様に実施にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例2のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0145】
得られた発泡成形体の植物度は0%であり、落球衝撃値は49.0cmであったが、複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は2.8%と多く、2.0%を超えていた。また、比較例2の箱型発泡成形体は、充填不良が見られ、良好な外観は得られなかった。
【0146】
(比較例3)
図2に示すようにGC/MS定性分析におけるリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークが見られない無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製 商品名「NF−375B」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.921g/cm3)とすること以外は実施例3と同様に実施にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例3のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0147】
得られた発泡成形体の植物度は0%であり、落球衝撃値32.0cmであったが、複合樹脂粒子における結合粒子量の割合は3.0%と多く、2.0%を超えていた。また、比較例3の箱型発泡成形体は、充填不良が見られ、良好な外観は得られなかった。
【0148】
(評価結果)
GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有さなかったポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子を含有した比較例1〜3の複合樹脂粒子の結合粒子量は2.0%を超えていた。また、比較例1〜3の箱型発泡成形体は、充填不良が見られ、良好な外観は得られなかった。
【0149】
一方、GC/MSチャートにおいてリテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子を含有した実施例1〜6の複合樹脂粒子の結合粒子量は、2.0%以下であり、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を抑制できることがわかった。このため、実施例1〜6の発泡成形体は、ポリエチレン系樹脂粒子の付着が低減された複合樹脂粒子を用いて成形されたので、互いに付着していない同程度の粒子径を有する小さな粒子で構成されており、外観不良を抑制できた。
【0150】
特に、ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して70質量部以上1000質量部以下のビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含有していた実施例1〜5は、1000質量部を超えたビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含有していた実施例6を参照して、落球衝撃値が優れていたため、ポリエチレン系樹脂による優れた耐衝撃性が発揮されたことがわかった。
【0151】
また、50%以下の植物度を有していた実施例1〜4、6は、植物度が50%を超えていた実施例5を参照して、ビニル芳香族系モノマーの割合が高かったので、発泡剤の保持性が高くなったため、外観が良好な発泡成形体を得るために、予備発泡粒子を発泡成形する際に導入する蒸気の圧力を低減できることがわかった。
【0152】
以上より、本実施例によれば、GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂粒子を含有することにより、ポリエチレン系樹脂粒子同士の付着を抑制できることが確認できた。
また、このポリエチレン系樹脂粒子を含有した複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、及び予備発泡粒子を用いて発泡成形された発泡成形体は、充填不良に影響される外観不良を抑制できることが確認できた。
【0153】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GC/MSチャートにおいて、リテンションタイムが26分以上28分以下の範囲内にピークを有するポリエチレン系樹脂を含む、複合樹脂粒子。
【請求項2】
前記ピークを有するポリエチレン系樹脂は、ASTM D 6866により測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂を含む、請求項1に記載の複合樹脂粒子。
【請求項3】
前記植物由来ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂である、請求項2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項4】
ビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合樹脂粒子と、
揮発性発泡剤とを含有する、発泡性複合樹脂粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて得られた、予備発泡粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の予備発泡粒子を用いて発泡成形させて得られた、発泡成形体。
【請求項8】
50%以下の植物度を有する、請求項7に記載の発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76041(P2013−76041A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218339(P2011−218339)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】