説明

複合樹脂組成物、それを含むプライマーコート剤、及び積層体

【課題】 密着性、基材追従性に優れ、耐久性(耐溶剤性、耐酸性、耐クラック性)及び耐候性に優れた、且つ乾燥性良好な塗膜の形成が可能な複合樹脂組成物、プライマーコート剤、及び積層体を提供すること。
【解決手段】 ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂含有してなり、前記ポリシロキサン(a3)由来の構造が、複合樹脂全体に対して15〜55重量%の範囲で含まれることを特徴とする複合樹脂組成物、プライマーコート剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤や接着剤をはじめとする様々な用途に使用可能な複合樹脂組成物、特に、速い乾燥性等が必要なコーティング剤、積層材料に好適な樹脂組成物、特に有機溶剤溶解型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーティング剤には、各種基材表面に意匠性を付与する役割のほかに、基材表面を外的要因から保護する役割が求められている。具体的には、水や有機溶剤や酸性雨等の付着や長期間に渡って風雨に曝された場合に、基材の劣化や錆等の発生を防止可能なレベルの、優れた耐水性等の耐久性及び耐候性等を有する塗膜を形成可能なコーティング剤が、産業界から求められている。
【0003】
このようなコーティング剤としては、例えば、特定のポリシロキサンセグメント(A)と、親水性基を有する重合体セグメント(B)とで構成される複合樹脂(C)と、特定のポリシロキサン(D)とを反応させて得られる水性樹脂によれば、耐久性や耐暴露汚染性に優れた硬化物を形成できることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、前記水性樹脂を用いて形成された塗膜が比較的硬いため、例えば外力や温度変化等の影響によって変形や伸縮を引き起こしやすい基材へ適用した場合に、前記塗膜が基材の変形等に追従できず、その結果、塗膜の剥離やクラックの発生等を引き起こす場合があった。
【0004】
更に、前記の技術では水性樹脂組成物であり、基材に塗工し乾燥して、塗膜を形成する際、水を蒸発する必要がある。このため、被塗物の耐熱性が乏しい場合には、乾燥に長時間要することが必要であり、作業性に劣る難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−279408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】

塗膜の耐久性(耐溶剤性、耐酸性、耐クラック性)、耐候性、密着性
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、密着性、基材追従性に優れ、耐久性(耐溶剤性、耐酸性、耐クラック性)及び耐候性に優れた、且つ乾燥性良好な塗膜の形成が可能な複合樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記特許文献1記載の複合樹脂をベースに検討を進め、該水性樹脂に良好な基材追従性を付与する方法として、ウレタン樹脂を併用することを検討した。
【0009】
更に、本発明者等は、前記特許文献1記載の複合樹脂をベースに検討を進め、該水性樹脂に乾燥性良好な塗膜の形成を付与する方法として、有機溶剤溶液からなる樹脂組成物の調製を検討した。
【0010】
具体的には、前記文献1記載の複合樹脂と一般的なポリウレタンとを含む樹脂組成物を用いて形成した塗膜の諸物性を検討した。
【0011】
しかし、前記樹脂組成物からなる塗膜は、優れた耐久性及び耐候性を有するものの、依然として優れた基材追従性を有するものではなかった。また、乾燥性も不足していた。
【0012】
また、本発明者等は、前記したような複合樹脂とポリウレタンとを混合したものではなく、それらを化学的に結合させた樹脂の有機溶剤溶液を検討した。
【0013】
具体的には、ビニル重合体と前記ポリウレタンとが、ポリシロキサン構造を介して化学的に結合した複合樹脂の有機溶剤組成物を検討した。
【0014】
しかし、前記複合樹脂組成物であっても、依然として耐久性及び耐候性の点で実用上十分なレベルの塗膜を形成することは困難であった。
【0015】
ところが、該複合樹脂中に占めるポリシロキサン由来の構造の重量割合を15重量%以上に調整した複合樹脂を検討したところ、予想外にも、優れた耐久性及び耐候性を有する塗膜を形成でき、更には、優れた基材追従性にも優れた塗膜を形成できることを見出した。また、乾燥性良好な塗膜の形成が可能であることを見出した。
【0016】
即ち、本発明はポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂を含有してなり、前記ポリシロキサン(a3)由来の構造が、複合樹脂全体に対して15〜55重量%の範囲で含まれる複合樹脂組成物であって、前記ポリウレタン(a1)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであり、かつ前記ビニル重合体(a2)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであることを特徴とする複合樹脂組成物及びプライマーコート剤に関するものである。
【0017】
また、本発明は、基材上に、前記プライマーコート剤を用いて得られるプライマー層を有し、該プライマー層上にトップコート層を有する積層体に関するものである。
【0018】
また、本発明は、以下の〔1〕(I−1)〜(I−3)からなる工程、〔2〕(II−1)〜(II−3)からなる工程、又は〔3〕(III−1)〜(III−3)からなる工程のいずれかによる複合樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0019】
〔1〕(I−1)〜(I−3)からなる工程
(I−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(I−2)前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液下で、前記ビニル重合体(a2)とシラン化合物とを反応させることによって、ビニル重合体(a2)にポリシロキサン(a3)が結合した樹脂(C)の有機溶剤溶液を得る工程、
(I−3)前記樹脂(C)と、ポリウレタン(a1)とを混合し反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程。
【0020】
〔2〕(II−1)〜(II−3)からなる工程
(II−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(II−2)ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液と、ポリウレタン(a1)とを混合する工程、
(II−3)前記混合物の有機溶剤溶液下で、前記ポリウレタン(a1)及びビニル重合体(a2)とシラン化合物とを反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程
【0021】
〔3〕(III−1)〜(III−3)からなる工程
(III−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(III−2)ポリウレタン(a1)の有機溶剤溶液下で、前記ポリウレタン(a1)とシラン化合物とを反応させることによって、ポリウレタン(a1)にポリシロキサン(a3)が結合した樹脂(D)の有機溶剤溶液を得る工程、
(III−3)前記樹脂(D)と、ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液とを混合し反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程
【発明の効果】
【0022】
本発明の複合樹脂組成物は、金属、無機質、プラスチック、繊維、布、紙、木質等の基材のコーティング剤や接着剤に使用することができる。
【0023】
また、本発明の複合樹脂組成物は、特に、基材追従性の点で優れた効果を奏することから、例えば偏光板を構成する各種機能フィルムの接着剤や、該機能フィルム上に塗布されるコーティング剤等に使用することができる。また、本発明の複合樹脂組成物は、耐候性及び耐久性に優れた塗膜を形成できることから、例えば鋼板表面処理用コーティング剤、とりわけ鋼板とトップコートとの間のプライマーコート層形成用コーティング剤に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を含有するものであって、前記ポリシロキサン(a3)由来の構造が、複合樹脂全体に対して15〜55重量%の範囲で含まれることを特徴とする複合樹脂組成物である。
【0025】
前記複合樹脂は、有機溶剤中に溶解したものであるが、前記複合樹脂の一部が有機溶剤中に分散していても良い。
【0026】
また、前記複合樹脂は、耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成するうえで、複合樹脂全体に対して15〜55重量%のポリシロキサン(a3)由来の構造を有することが重要である。例えば、前記ポリシロキサン(a3)の重量割合が10重量%である複合樹脂では、耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成できず、経時的に塗膜の剥離等が生じる場合がある。
【0027】
一方、前記ポリシロキサン(a3)由来の構造の重量割合が65重量%である複合樹脂含有の組成物であれば、耐久性等に優れた塗膜を形成できるものの、前記ポリウレタン(a1)や前記ビニル重合体(a2)由来の構造の重量割合が低くなるため、例えば、基材追従性の低下や、経時的な塗膜表面のクラック発生等の問題がある。
【0028】
前記複合樹脂全体に対するポリシロキサン(a3)由来の構造の重量割合は、20重量%〜35重量%の範囲であることが、優れた耐久性と耐候性と基材追従性とを兼ね備えた塗膜を形成するうえで好ましい。
【0029】
また、前記複合樹脂は、前記ポリウレタン(a1)と前記ビニル重合体(a2)との重量割合[(a2)/(a1)]が、20/1〜1/20の範囲であることが、基材追従性に優れ、かつ耐クラック性等の耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成するうえで好ましく、2/1〜1/12の範囲であることがより好ましい。
【0030】
また、前記ポリウレタン(a1)と前記ポリシロキサン(a3)との結合は、例えば前記ポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであることが好ましい。また、前記ビニル重合体(a2)と前記ポリシロキサン(a3)との結合は、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであることが好ましい。
【0031】
はじめに、前記複合樹脂を構成するポリウレタン(a1)について説明する。
【0032】
前記ポリウレタン(a1)は、優れた基材追従性を本発明の複合樹脂組成物に付与するうえで必須成分である。
【0033】
前記ポリウレタン(a1)としては、各種のものを使用することができるが、例えば3000〜100000の数平均分子量を有するものを使用することが、基材追従性に優れ、かつ耐クラック性等の耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成するうえで好ましい。
【0034】
前記ポリウレタン(a1)としては、例えばポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを使用することができる。
【0035】
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール等の低分子量ポリオール類、或いは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレンプロピレングリコール(PEPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、2−メチル−1,3−プロパンアジペート、3−メチル−1,5ペンタンアジペート、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、これらの中でも、Mnが、500〜5000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)等の高分子量ポリオール類、或いは、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のスルホン酸基含有ポリオール等が挙げられる。
【0036】
前記高分子量ポリオール類中のポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0037】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0038】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0039】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、1,4−ブタンジオールや1,5−ペンタンジオール等のグリコールと、ジメチルカーボネートやホスゲン等とを反応して得られたものを使用することができる。
【0040】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0041】
また、前記ポリウレタン(a1)を製造する際に使用するポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。なかでも、脂肪族環式構造含有ジイソシアネートを使用することが、長期耐候性に優れる塗膜を形成できるため好ましい。
【0042】
前記ポリウレタン樹脂(a1)は、必要に応じてその他の官能基を有していてもよく、かかる官能基としては、後述するポリシロキサン(a3)と反応しうる加水分解性シリル基、シラノール基や、アミノ基、イミノ基、水酸基等が挙げられ、なかでも加水分解性シリル基であることが、長期耐候性に優れる塗膜を形成できるため好ましい。
【0043】
前記ポリウレタン(a1)が有していても良い加水分解性シリル基は、加水分解性基が珪素原子に直接結合した官能基であり、例えば、下記の一般式で表される官能基が挙げられる。
【0044】
【化1】

【0045】
(式中、Rはアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基である。またxは0〜2の整数である。)
【0046】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基等が挙げられ、前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0048】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0049】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0050】
前記アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ等が挙げられ、前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられ、前記アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
前記Rは、加水分解によって生じうる一般式ROH等の脱離成分の除去が容易であることから、好ましくはそれぞれ独立してアルコキシ基であることが好ましい。
【0052】
また、前記ポリウレタン(a1)が有していても良いシラノール基は、水酸基が直接珪素原子に結合した官能基であって、主に前記した加水分解性シリル基が加水分解して生じる官能基である。
【0053】
前記加水分解性シリル基及びシラノール基は、前記ポリウレタン(a1)全体に対して10〜400mmol/kg存在することが、複合樹脂の良好な水分散安定性を確保するうえで好ましい。
【0054】
次に、前記複合樹脂を構成するビニル重合体(a2)について説明する。
前記ビニル重合体(a2)は、後述するポリシロキサン(a3)を介して前記ポリウレタン(a1)と結合しうるものである。
【0055】
前記ビニル重合体(a1)としては、3000〜100000の数平均分子量を有するものを使用することが、基材追従性に優れ、かつ耐クラック性等の耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成するうえで好ましい。
【0056】
前記ビニル重合体(a1)としては、例えば各種ビニル単量体を重合開始剤の存在下で重合することによって製造したものを使用することができる。
【0057】
前記ビニル単量体としては、前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基等と反応しうる官能基を、ビニル重合体(a1)中に導入する観点から、加水分解性シリル基含有ビニル単量体や水酸基含有ビニル単量体等を使用することが好ましい。
【0058】
前記加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、例えば3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等を使用することができ、なかでも、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
【0059】
また、前記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0060】
前記ビニル単量体としては、前記加水分解性シリル基含有ビニル単量体や水酸基含有ビニル単量体等の他に、必要に応じてその他のビニル単量体を併用しても良い。
【0061】
前記その他のビニル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基含有ビニル単量体;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の二級アミノ基含有ビニル単量体;アミノメチルアクリレート等の一級アミノ基含有ビニル単量体等の塩基性窒素原子含有基含有ビニル単量体;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル類;スチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン等のα−オレフィン類、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基及びそのアルコキシ化物含有ビニル単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基含有ビニル単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有ビニル単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有ビニル単量体;アクロレイン等のカルボニル基含有ビニル単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、もしくはこれらの半エステルまたはこれらの塩等のカルボキシル基含有単量体等を1種または2種以上使用することができる。
【0062】
前記ビニル重合体(a2)を製造する際に使用可能な重合開始剤としては、例えば過硫酸塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等のラジカル重合開始剤や、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、例えばアスコルビン酸等の還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
【0063】
前記重合開始剤の代表的なものである過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、有機過酸化物類として、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等を使用することができる。
【0064】
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、ビニル重合体(a2)の製造に使用するビニル単量体の全量に対して、10重量%以下とすることが好ましい。
【0065】
次に、前記複合樹脂を構成するポリシロキサン(a3)について説明する。
前記ポリシロキサン(a3)は、前記ポリウレタン(a1)と前記ビニル重合体(a2)との連結部分を構成するものである。
【0066】
前記ポリシロキサン(a3)は、ケイ素原子と酸素原子とからなる鎖状構造を有するものであって、必要に応じて加水分解性シリル基やシラノール基等を有するものである。
【0067】
前記加水分解性シリル基は、加水分解性基が前記ケイ素原子に直接結合した原子団であって、例えば前記ポリウレタン(a1)の説明の際に例示した一般式(I)に示されるような構造からなるものを使用することができる。
【0068】
前記加水分解性基は、水の影響により水酸基を形成しうるものであって、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、なかでもアルコキシ基や置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0069】
また、前記シラノール基は、水酸基が前記ケイ素原子に直接結合した原子団を示すものであって、前記加水分解性シリル基が加水分解した際に形成される。
【0070】
また、前記ポリシロキサン(a3)としては、前記したものの他に、必要に応じてメチル基等のアルキル基やフェニル基等を有しているものを使用することができ、例えばポリシロキサン(a3)を構成するケイ素原子に、フェニル基等の芳香族環式構造、炭素原子数1〜3個を有するアルキル基、及び炭素原子数1〜3個を有するアルコキシ基からなる群より選ばれる1種以上が直接結合したものを使用することが、複合樹脂の良好な水安定性を維持するうえでより好ましい。
【0071】
前記ポリシロキサン(a3)としては、例えば後述するシラン化合物を完全にまたは部分的に加水分解縮合して得られるものを使用することができる。
【0072】
前記シラン化合物としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランもしくはメチルフェニルジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランもしくはジフェニルジクロロシラン等の各種のクロロシラン類や、それらの部分加水分解縮合物等を使用することができ、なかでもオルガノトリアルコキシシランやジオルガノジアルコキシシランを使用することが好ましい。これらシラン化合物は単独使用でも2種類以上の併用でもよい。
【0073】
次に、本発明の複合樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0074】
本発明の複合樹脂組成物の製造方法としては、例えば、〔1〕(I−1)〜(I−3)からなる工程、〔2〕(II−1)〜(II−3)からなる工程、又は〔3〕(III−1)〜(III−3)からなる工程が挙げられる。
【0075】
〔1〕(I−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(I−2)前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液下で、前記ビニル重合体(a2)とシラン化合物とを反応させることによって、ビニル重合体(a2)にポリシロキサン(a3)が結合した樹脂(C)の有機溶剤溶液を得る工程、
(I−3)前記樹脂(C)と、ポリウレタン(a1)とを混合し反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程
【0076】
〔2〕(II−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(II−2)ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液と、ポリウレタン(a1)とを混合する工程、
(II−3)前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)の混合物の有機溶剤溶液下で、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とシラン化合物とを反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程
【0077】
〔3〕(III−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(III−2)ポリウレタン(a1)の有機溶剤溶液下で、前記ポリウレタン(a1)とシラン化合物とを反応させることによって、ポリウレタン(a1)にポリシロキサン(a3)が結合した樹脂(D)の有機溶剤溶液を得る工程、
(III−3)前記樹脂(D)と、ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液とを混合し反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程。
【0078】
前記(I−1)の工程は、有機溶剤中で、前記したビニル単量体を前記重合開始剤の存在下で重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0079】
かかる反応は、例えば重合開始剤を含む有機溶剤中に、前記ビニル単量体を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0080】
また、前記(I−2)の工程は、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液下で前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基等の反応性官能基と、シラン化合物の有する加水分解性シリル基またはシラノール基との反応と、前記シラン化合物間の加水分解縮合反応とを進行させることによって、ビニル重合体(a2)とポリシロキサン(a3)とが結合した樹脂(C)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0081】
かかる反応は、例えば前記(I−1)の工程に引き続き、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液中に、前記ポリシロキサン(a3)を形成しうる前記シラン化合物を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0082】
前記(I−2)の工程は、更に2段階の反応工程を経ることが好ましい。具体的には前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基またはシラノール基と、前記したフェニルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物とを反応させる工程と、次いで、該反応物と、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン及びエチルトリアルコキシシランを予め縮合させた縮合物とを反応させる工程とを経ることが好ましい。ポリシロキサン(a3)の構造形成を上記のような2段階で行うことで、一層、基材追従性に優れ、かつ耐久性に優れた塗膜を形成可能な複合樹脂組成物を得ることができる。
【0083】
また、前記(I−3)の工程は、前記樹脂(C)と、ポリウレタン(a1)とを混合し加水分解縮合させることにより、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0084】
前記反応は、例えば前記(I−2)の工程に引き続き、前記樹脂(C)の有機溶剤溶液中に前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応させることによって得られるポリウレタン(a1)を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0085】
前記(II−1)の工程は、有機溶剤中で、前記したビニル単量体を前記重合開始剤の存在下で重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0086】
かかる反応は、例えば重合開始剤を含む有機溶剤中に、前記ビニル単量体を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0087】
また、前記(II−2)の工程は、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液下でポリウレタン(a1)を混合し、ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)の混合物の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0088】
かかる反応は、例えば前記(II−1)の工程に引き続き、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液中に前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応させることによって得られるポリウレタン(a1)を逐次供給または一括供給することが好ましい。
【0089】
また、前記(II−3)の工程は、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)の混合物とシラン化合物とを反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0090】
かかる反応は、例えば前記(II−2)の工程に引き続き、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)の混合物の有機溶剤溶液中に、前記ポリシロキサン(a3)を形成しうる前記シラン化合物を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0091】
前記(II−3)の工程は、更に2段階の反応工程を経ることが好ましい。具体的には前記ビニル重合体(a2)及びポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基またはシラノール基と、前記したフェニルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物とを反応させる工程と、次いで、該反応物と、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン及びエチルトリアルコキシシランを予め縮合させた縮合物とを反応させる工程とを経ることが好ましい。ポリシロキサン(a3)の構造形成を上記のような2段階で行うことで、一層、基材追従性に優れ、かつ耐久性に優れた塗膜を形成可能な複合樹脂組成物を得ることができる。
【0092】
前記(III−1)の工程は、有機溶剤中で、前記したビニル単量体を前記重合開始剤の存在下で重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0093】
かかる反応は、例えば重合開始剤を含む有機溶剤中に、前記ビニル単量体を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0094】
また、前記(III−2)の工程は、前記ポリウレタン(a1)の有機溶剤溶液下で前記ポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基等の反応性官能基と、シラン化合物の有する加水分解性シリル基またはシラノール基との反応と、前記シラン化合物間の加水分解縮合反応とを進行させることによって、ポリウレタン(a1)とポリシロキサン(a3)とが結合した樹脂(D)の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0095】
かかる反応は、前記ポリウレタン(a1)の有機溶剤溶液中に、前記ポリシロキサン(a3)を形成しうる前記シラン化合物を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0096】
前記(III−2)の工程は、更に2段階の反応工程を経ることが好ましい。具体的には前記ポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基またはシラノール基と、前記したフェニルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物とを反応させる工程と、次いで、該反応物と、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン及びエチルトリアルコキシシランを予め縮合させた縮合物とを反応させる工程とを経ることが好ましい。ポリシロキサン(a3)の構造形成を上記のような2段階で行うことで、一層、基材追従性に優れ、かつ耐久性に優れた塗膜を形成可能な複合樹脂組成物を得ることができる。
【0097】
また、前記(III−3)の工程は、前記樹脂(D)と、ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液とを混合し加水分解縮合させることにより、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0098】
前記反応は、例えば前記(III−2)の工程に引き続き、前記樹脂(D)の有機溶剤溶液中に前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
【0099】
前記製造方法において使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、トルエン、キシレン、「ソルベッソ 150」[エクソン化学(株)製品]等のような芳香族系炭化水素溶剤類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n−ヘキサンまたはn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、グリコールエーテルエステル系溶剤類等が挙げられる。
【0100】
本発明の複合樹脂組成物中に配合される有機溶剤としては、前記の有機溶剤が好ましく、使用方法、例えば、塗膜の乾燥方法、温度条件等により適宜配合すればよい。
【0101】
これらの有機溶剤の中でも、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類を複合樹脂100重量部当たり、10〜300重量部配合すると、複合樹脂の安定性が向上することから好ましい。
【0102】
本発明の複合樹脂組成物は、製造の際の急激な粘度上昇を抑制し、かつ、複合樹脂組成物の生産性や、その塗工のしやすさや乾燥性等を向上する観点から、20〜70重量%の不揮発分を有するものであることが好ましく、30〜60重量%の範囲であることがより好ましい。
【0103】
本発明の複合樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤を併用しても良い。
【0104】
前記硬化剤としては、前記複合樹脂が有する反応性官能基やシラノール基と反応する官能基を有する化合物を使用することができる。
【0105】
前記硬化剤の具体例としては、シラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート等が挙げられる。特に、前記複合樹脂としてカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するものを使用する場合には、エポキシ基とシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物を使用する組み合わせとすることが好ましい。
【0106】
前記シラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物としては、例えば前記複合樹脂の製造に際し使用可能なものとして例示したシラン化合物と同様のものをはじめ、その他に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等や、これらの加水分解縮合物などが挙げられる。
【0107】
前記ポリエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、水添ビスフェノールA等の脂肪族又は脂環式ポリオール由来の構造を有するポリグリシジルエーテル類;ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の芳香族系ジオールのポリグリシジルエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸等の脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;シクロオクタジエン、ビニルシクロヘキセン等の炭化水素系ジエン類のビスエポキシド類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式ポリエポキシ化合物などが挙げられる。
【0108】
前記ポリオキサゾリン化合物としては、例えば、2,2’−p−フェニレン−ビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2−イソプロペニル−1,3−オキサゾリン、またはそれらの重合体等を使用することができる。
【0109】
前記ポリイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;メタ−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネート等のアラルキルジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等を使用することができる。
【0110】
また、前記ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を有する各種のプレポリマー、イソシアヌレート環を有するプレポリマー、ビウレット構造を有するポリイソシアネート、イソシアネート基含有ビニル系単量体を使用することもできる。
【0111】
硬化剤としての前記ポリイソシアネートの有するイソシアネート基は、必要に応じてメタノール等の種々のブロック剤によってブロック化されていても良い。
【0112】
前記硬化剤は、例えば前記複合樹脂の100重量部に対して固形分0.1〜50重量部の範囲内で使用することが好ましく、0.5〜30重量部の範囲内で使用することがより好ましく、1〜20重量部の範囲内で使用することが特に好ましい。
【0113】
また、前記複合樹脂が反応性官能基としてカルボキシル基を有する場合には、前記硬化剤は、前記複合樹脂中のカルボキシル基の1当量に対する、硬化剤が有するエポキシ基、シクロカーボネート基、水酸基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、ヒドラジノ基等の反応性官能基の当量が、0.2〜5.0当量の範囲内であることが好ましく、0.5〜3.0当量の範囲内であることがより好ましく、0.7〜2.0当量の範囲内であることが特に好ましい。
【0114】
また、本発明の複合樹脂組成物には、必要に応じて硬化触媒を含有させることも可能である。
【0115】
前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム、ナトリウムメチラート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ジ−n−ブチル錫ジアセテート、ジ−n−ブチル錫ジオクトエート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫マレエート、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、燐酸、モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル亜燐酸等を使用することができる。
【0116】
本発明の複合樹脂組成物には、必要に応じて熱硬化性樹脂を含有させることも可能である。かかる熱硬化性樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、シリコン樹脂、あるいはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0117】
本発明の複合樹脂組成物には、必要に応じて粘土鉱物、金属、金属酸化物、ガラス等の各種の無機粒子を使用することができる。金属の種類としては、金、銀、銅、白金、チタン、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン、それらの金属酸化物等が挙げられる。
【0118】
本発明の複合樹脂組成物には、必要に応じて無機顔料、有機顔料、体質顔料、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等の各種の添加剤等を使用することができる。
【0119】
前記複合樹脂組成物は、耐クラック性等の耐久性、耐候性、及び基材追従性に優れた塗膜を形成できることから、コーティング剤や接着剤等の各種用途に使用することができる。なかでも、本発明の複合樹脂組成物は、従来品と比較して優れた基材追従性を有することから、温度等の外的要因によって変形や伸縮を引き起こしやすい基材に対するコーティング剤等に好適に使用することができる。
【0120】
本発明の複合樹脂組成物からなるコーティング剤、とりわけプライマーコート剤を塗布可能な基材としては、例えば金属、ガラス、紙、木材、各種プラスチック基材等が挙げられる。
【0121】
プラスチック基材としては、一般に、携帯電話、家電製品、自動車内外装材、OA機器等のプラスチック成型品に採用されている素材として、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、ABS/PC樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられ、プラスチック基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等からなる基材を使用することができる。
【0122】
前記した各種基材は、予め被覆が施されていても良いが、後述するように、本発明のコーティング剤はプライマーコート剤として好適に使用できることから、前記基材表面に直接、本発明のコーティング剤を塗布し塗膜を形成することが好ましい。
【0123】
また、前記基材は、それぞれ、板状、球状、フィルム状、シート状であってもよい。前記したように、本発明のコーティング剤は特に基材追従性に優れることから、外力や温度等の影響によって変形や伸縮を引き起こしやすいフィルム状やシート状の基材や、表面に微細な凹凸を有する基材に対しても好適に使用することができる。
【0124】
前記コーティング剤は、例えばそれを前記基材上に塗布し、次いで乾燥、硬化させることによって、耐クラック性等の耐久性、耐候性、及び基材追従性に優れた塗膜を形成することができる。
【0125】
前記コーティング剤を前記基材上に塗布する方法としては、例えばスプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
【0126】
また、前記乾燥し硬化を進行させる方法としては、常温下で1〜10日程度養生する方法であってもよいが、硬化を迅速に進行させる観点から、50〜250℃の温度で、1〜600秒程度加熱する方法が好ましい。
【0127】
一方、本発明の複合樹脂組成物は、前記コーティング剤のなかでも、特に優れた基材追従性の求められる、プライマーコート剤に好適に使用することができる。
【0128】
したがって、本発明のプライマーコート剤は、例えば、前記基材上にプライマー層を有し、該プライマー層上にトップコート層を有する積層体の製造に好適に使用することができる。
【0129】
前記積層体を構成するプライマーコート層は、基材表面に本発明のプライマーコート剤を、前記と同様の方法で塗布、乾燥することによって形成することができる。
【0130】
また、前記トップコート層の形成には、例えばアクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、脂肪酸変性エポキシ樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料等の各種上塗り塗料を使用することができる。
【0131】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。
【0132】
中間体合成例1〔メチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)の調製例〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メチルトリメトキシシラン(MTMS)1421重量部を仕込んで、60℃まで昇温した。
【0133】
次いで、前記反応容器中に「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.17重量部と脱イオン水207重量部との混合物を5分間で滴下した後、80℃の温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
【0134】
前記加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、温度40〜60℃及び300〜10mmHgの減圧下(メタノールの留去開始時の減圧条件が300mmHgで、最終的に10mmHgとなるまで減圧する条件を言う。以下、同様。)で蒸留することによって前記反応過程で生成したメタノール及び水を除去し、数平均分子量1000のメチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)を含む混合液(有効成分70重量%)1000重量部を得た。
【0135】
なお、前記有効成分とは、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、エチルトリメトキシシラン(ETMS)等のシランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(重量部)を、縮合反応後の実収量(重量部)で除した値〔シランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(重量部)/縮合反応後の実収量(重量部)〕により算出したものである(以下、同様。)。
【0136】
中間体合成例2〔エチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−2)の調製例〕
合成例1と同様の反応容器に、エチルトリメトキシシラン(ETMS)1296重量部を仕込んで、60℃まで昇温した。
【0137】
次いで、前記反応容器中に「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.14重量部と脱イオン水171重量部との混合物を5分間で滴下した後、80℃で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
【0138】
前記加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、温度40〜60℃及び300〜10mmHgの減圧下で蒸留することによって、生成したメタノール及び水を除去し、数平均分子量が1100のエチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−2)を含む混合液(有効成分70重量%)1000重量部を得た。
【0139】
【表1】

【0140】
第1表中の略称について以下に説明する
「MTMS」 :メチルトリメトキシシラン
「ETMS」 :エチルトリメトキシシラン
【0141】
複合樹脂中間体合成例1〔複合樹脂中間体(C−1)の調製〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、1−ブタノール(BuOH)126重量部、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)168重量部及びジメチルジメトキシシラン(DMDMS)102重量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
【0142】
次いで、同温度で、メチルメタクリレート(MMA)50重量部、ブチルメタクリレート(BMA)47重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)22重量部、アクリル酸(AA)2重量部、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)4重量部、BuOH 54重量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)6重量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した後、更に同温度で2時間反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が10000のアクリル重合体(c1)を得た。
【0143】
次いで、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.03重量部と脱イオン水76重量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記アクリル重合体(c1)の有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した複合樹脂中間体(C’−1)を得た。
【0144】
次いで、前記複合樹脂中間体(C’−1)と前記メチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)291重量部とを混合し、更に、脱イオン水49重量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記複合樹脂中間体(C’−1)に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)が結合した複合樹脂中間体(C−1)を含有する反応液1000重量部を得た。
【0145】
複合樹脂中間体合成例2〔複合樹脂中間体(C−2)の調製例〕
合成例1と同様の反応容器に、BuOH 126重量部、PTMS 168重量部及びDMDMS 102重量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
【0146】
次いで、同温度で、MMA 38重量部、BMA 44重量部、2−EHMA 40重量部、MPTS 4重量部、BuOH 54重量部及びTBPEH 6重量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した後、更に同温度で2時間反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が10100のアクリル重合体(c2)を得た。
【0147】
次いで「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.03重量部と脱イオン水76重量部との混合物を5分間で滴下し、更に同温度で1時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、前記アクリル重合体(c2)の有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンとが結合した複合樹脂(C’−2)を得た。
【0148】
次いで、メチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)291重量部を添加し、更に、脱イオン水49重量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記複合樹脂中間体(C’−2)に、更にメチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)とが結合した複合樹脂中間体(C−2)を含有する反応液1000重量部を得た。
【0149】
複合樹脂中間体合成例3〔複合樹脂中間体(C−3)の調製例〕
メチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)291重量部の代わりにエチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−2)291重量部を使用した以外は、複合樹脂中間体合成例1と同様の方法で、複合樹脂中間体(C’−1)とエチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−2)とが結合した複合樹脂中間体(C−3)を含有する反応液1000重量部を得た。
【0150】
実施例1〔複合樹脂組成物(I)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 249重量部、ネオペンチルグリコール(NPG)6重量部、メチルエチルケトン(MEK)203重量部、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)50重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0151】
次いで、温度を50℃に下げ、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)15重量部、及びBuOH 271重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7500のポリウレタン(i)を得た。
【0152】
次いで、前記ポリウレタン(i)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)159重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(i)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(I’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(I)1000重量部を得た。
【0153】
実施例2〔複合樹脂組成物(II)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 218重量部、NPG 6重量部、MEK 178重量部、及びIPDI 44重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0154】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 13重量部、及びBuOH 257重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7400のポリウレタン(ii)を製造した。
【0155】
次いで、前記ポリウレタン(ii)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)239重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(ii)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(II’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(II)1000重量部を得た。
【0156】
実施例3〔複合樹脂組成物(III)の調製例〕
複合樹脂中間体(C−1)239重量部の代わりに複合樹脂中間体(C−2)239重量部を使用した以外は実施例2と同様の方法で不揮発分が40.1重量%の複合樹脂組成物(III)1000重量部を得た。
【0157】
実施例4〔複合樹脂組成物(IV)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 187重量部、NPG 5重量部、MEK 153重量部、及びIPDI 37重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0158】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 9重量部、及びBuOH 242重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7300のポリウレタン(iv)を得た。
【0159】
次いで、前記ポリウレタン(iv)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)318重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(iv)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(IV’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(IV)1000重量部を得た。
【0160】
実施例5〔複合樹脂組成物(V)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、1,6−ヘキサンジオール骨格を有する数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール(宇部興産(株)製 UH−200) 187重量部、NPG 5重量部、MEK 153重量部、及びIPDI 37重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0161】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 9重量部、及びBuOH 242重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7800のポリウレタン(v)を得た。
【0162】
次いで、前記ポリウレタン(v)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)318重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(v)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(V’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.1重量%の複合樹脂組成物(V)1000重量部を得た。
【0163】
実施例6〔複合樹脂組成物(VI)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、ポリエステルポリオール 123重量部(「ネオペンチルグリコールと1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール」水酸基当量1000g/当量)、NPG 5重量部、MEK 153重量部、及びIPDI 37重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0164】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 9重量部、及びBuOH 242重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7900のポリウレタン(vi)を得た。
【0165】
次いで、前記ポリウレタン(vi)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)318重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(vi)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(VI’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(VI)1000重量部を得た。
【0166】
実施例7〔複合樹脂組成物(VII)の調製例〕
複合樹脂中間体(C−1)318重量部の代わりに複合樹脂中間体(C−2)318重量部を使用した以外は実施例4と同様にして、不揮発分が40.1重量%の複合樹脂組成物(VII)1000重量部を得た。
【0167】
実施例8〔複合樹脂組成物(VIII)の調製例〕
複合樹脂中間体(C−1)318重量部の代わりに複合樹脂中間体(C−3)318重量部を使用した以外は実施例4と同様にして、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(VIII)1000重量部を得た。
【0168】
実施例9〔複合樹脂組成物(IX)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 93重量部、NPG 2重量部、MEK 76重量部、及びIPDI 19重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0169】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 6重量部、及びBuOH 200重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7700のポリウレタン(ix)を得た。
【0170】
次いで、前記ポリウレタン(ix)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)557重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(ix)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(IX’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.1重量%の複合樹脂組成物(IX)1000重量部を得た。
【0171】
実施例10〔複合樹脂組成物(X)の調製例〕
複合樹脂中間体(C−1)557重量部の代わりに複合樹脂中間体(C−2)557重量部を使用した以外は実施例9と同様にして、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(X)1000重量部を得た。
【0172】
比較例1〔比較用複合樹脂組成物(XI)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、BuOH 290重量部、MTMS 365重量部及びDMDMS 32重量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
【0173】
次いで、同温度でMMA 93重量部、BMA 53重量部、MPTS 27重量部、AA 7重量部、EHMA 20重量部、BuOH 10重量部、及びTBPEH 10重量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した後、更に同温度で2時間反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が18000のアクリル重合体(xi)を得た。
【0174】
次いで、前記アクリル重合体(xi)を含む反応容器中に、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕4.6重量部と脱イオン水154重量部との混合物を5分間で滴下し、更に80℃で10時間撹拌し加水分解縮合反応させることによって、前記アクリル重合体(xi)の有する加水分解性シリル基に、MTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンが結合した比較用複合樹脂(XI’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の比較用複合樹脂組成物(XI)1000重量部を得た。
【0175】
比較例2〔比較用複合樹脂組成物(XII)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、BuOH 286重量部、IPA 80重量部、PTMS 32重量部、及びDMDMS 19重量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
【0176】
次いで、同温度で、MMA 23重量部、BMA 86重量部、EHMA 67重量部、MPTS 14重量部、AA 2重量部、BuOH 14重量部及びTBPEH 14重量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した後、更に同温度で2時間反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が13000のアクリル重合体(xii)を得た。
【0177】
次いで、前記重合体(xii)を含む反応容器中に、「A−3」〔堺化学(株)製のiso−プロピルアシッドホスフェート〕0.9重量部と脱イオン水24重量部とを含む混合物を、5分間で滴下し、更に80℃で10時間撹拌し加水分解縮合反応させることによって、前記重合体(xii)の有する加水分解性シリル基に、PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンが結合した比較用複合樹脂(XII’)を得た。
【0178】
次いで、メチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)124重量部を混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させ、次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の比較用複合樹脂組成物(XII)1000重量部を得た。
【0179】
比較例3〔比較用複合樹脂組成物(XIII)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 261重量部、NPG 7重量部、MEK 214重量部、及びIPDI 52重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0180】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 16重量部、及びBuOH 277重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7400のポリウレタン(xiii)を得た。
【0181】
次いで、前記ポリウレタン(xiii)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)127重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(xiii)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(XIII’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(XIII)1000重量部を得た。
【0182】
比較例4〔比較用複合樹脂組成物(XIV)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 286重量部、NPG 7重量部、MEK 234重量部、及びIPDI 57重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0183】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 17重量部、及びBuOH 289重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7200のポリウレタン(xiv)を得た。
【0184】
次いで、前記ポリウレタン(xiv)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)64重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(xiv)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(XIV’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(XIV)1000重量部を得た。
【0185】
比較例5〔比較用複合樹脂組成物(XV)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 40重量部、NPG 1重量部、MEK 33重量部、及びIPDI 8重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させた。
【0186】
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 2重量部、及びBuOH 176重量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、加水分解性シリル基を有する数平均分子量が7700のポリウレタン(xv)を得た。
【0187】
次いで、前記ポリウレタン(xv)の全量と前記複合樹脂中間体(C−1)690重量部とを混合し、攪拌下50℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(xv)の有する加水分解性シリル基と前記複合樹脂中間体(C−1)の有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂(XV’)を得た。次いで、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することで、生成したメタノールを除去した後、MEKを添加し、不揮発分が40.0重量%の複合樹脂組成物(XV)1000重量部を得た。
【0188】
比較例6〔比較用複合樹脂組成物(XVI)の調製例〕
中間体合成例1と同様の反応容器に、BuOH 150重量部を仕込んで80℃まで昇温した。次いで、同温度でMMA 60重量部、BMA 45重量部、EHMA 57重量部、AA 38重量部、BuOH 50重量部、及びTBPEH 9重量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した後、更に同温度で2時間反応させることで、カルボキシル基を有する数平均分子量が16000のアクリル重合体(xvi−1)を得た。
【0189】
また、別の、中間体合成例1と同様の反応容器に、ポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製PTMG−2000) 260重量部、NPG 8重量部、MEK 400重量部、及びIPDI 110重量部を仕込んで75℃まで昇温し、同温度で10時間反応させることで、カルボキシル基を有する数平均分子量が7600のポリウレタン(xvi−2)を得た。
【0190】
上記した、アクリル重合体(xvi−1) 109重量部、ポリウレタン(xvi−2) 656重量部、メチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1) 235重量部を混合することにより複合樹脂組成物(XVI)1000重量部を得た。
【0191】
第2〜4表に記載の保存安定性は、前記複合樹脂組成物の粘度(初期粘度)と、該複合樹脂組成物を50℃の環境下に30日間放置した後の粘度(経時粘度)とを測定し、経時粘度を初期粘度で除した値[経時粘度/初期粘度]で評価した。該値が概ね0.5〜3.0程度であれば、塗料などとして使用可能である。
【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
【表4】

【0195】
実施例11〜34、比較例1〜6
前記した複合樹脂組成物(I)〜(X)及び比較用複合樹脂組成物(XI)〜(XVI)からなる塗膜の諸物性を、下記評価方法に従って評価した。
【0196】
また、前記複合樹脂組成物(I)〜(X)及び比較用複合樹脂組成物(XI)〜(XVI)に、各種硬化剤を表5〜9記載の配合組成に従って混合して得られた各複合樹脂組成物からなる塗膜の諸物性もまた、下記評価方法に従って評価した。
【0197】
前記硬化剤としては、下記のものを使用した。
「GPTMS」;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
「MS−51」;三菱化学(株)製「MKCシリケートMS−51」(縮合度2〜9のポリメトキシシロキサン)
「EX−614B」;ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX−614B」(エポキシ当量が173g/eqのエポキシ化合物)
【0198】
[塗膜の耐久性(耐溶剤性、耐酸性、耐クラック性)、耐候性、密着性の評価方法]
[試験板の作製方法]
(株)エンジニアリングテストサービス社製のクロメート処理されたアルミ板上に、前記複合樹脂組成物を膜厚が10μmとなるように塗装し、140℃の環境下で10分間乾燥させることによって、アルミ板上に塗膜が積層された試験板(1)を得た。
また、日本テストパネル(株)社製の亜鉛(Zn)−鉄(Fe)溶融鋼板(表面未処理)上に、前記複合樹脂組成物を乾燥膜厚が2μmとなるように塗付し、150℃で5分間乾燥させることによって、前記亜鉛(Zn)−鉄(Fe)溶融鋼板上に塗膜が積層された試験板(2)を得た。
また、エンジニアリングテストサービス(株)社製のポリカーボネート(PC)基材上に、前記複合樹脂組成物を乾燥膜厚が10μmとなるように塗付し、80℃で20分間乾燥することによって、前記ポリカーボネート基材上に塗膜が積層された試験板(3)を得た。
【0199】
[耐溶剤性の評価方法]
メチルエチルケトンを浸み込ませたフェルトを用い、試験板(1)〜(3)の表面の同一箇所を往復50回ラビングした。ラビング前とラビング後の塗膜の状態を指触及び目視により確認し、下記評価基準に従って評価した。
【0200】
○:ラビング前後で軟化及び光沢低下が認められない。
△:ラビング前後で若干の軟化又は光沢低下が認められる。
×:ラビング前後で著しい軟化又は光沢低下が認められる。
なお、前記複合樹脂組成物が前記基材表面に密着せず試験板を作製できなかったものは、耐溶剤性の評価試験を行わなかった。表中「−」で示したものは、前記理由により評価試験を行わなかったことを示す。
【0201】
[耐酸性の評価方法]
前記試験板(1)〜(3)の表面を5重量%の硫酸水溶液に浸した状態で25℃の温度下に24時間放置した後、該塗膜を水洗いし、次いで乾燥した塗膜の表面状態を目視により確認し、下記評価基準に従って評価した。
【0202】
○:エッチング跡なし。
△:若干エッチング跡あり。
×:エッチング著しい。
なお、前記複合樹脂組成物が前記基材表面に密着せず試験板を作製できなかったものは、耐酸性の評価試験を行わなかった。表中「−」で示したものは、前記理由により評価試験を行わなかったことを示す。
【0203】
[耐クラック性の評価方法]
前記複合樹脂組成物を、ガラス板上に塗膜の膜厚が10μmとなるように塗装し、140℃の環境下で10分間乾燥させて塗膜を得た。
【0204】
得られた試験板を、デューパネル光ウェザーメーター〔スガ試験機(株)製、光照射時:30W/m、60℃、湿潤時:湿度90%以上、40℃、光照射/湿潤サイクル=4時間/4時間〕を用いて1000時間の曝露試験を行った後、該試験板の表面の塗膜の外観を下記評価基準に従って目視で評価した。
【0205】
○:塗膜表面にクラックの発生がみられない。
△:塗膜表面のごく一部に若干のクラックの発生がみられる。
×:塗膜表面全体にクラックの発生がみられる。
なお、前記複合樹脂組成物が前記基材表面に密着せず試験板を作製できなかったものは、耐クラック性の評価試験を行わなかった。表中「−」で示したものは、前記理由により評価試験を行わなかったことを示す。
【0206】
[耐候性の評価方法]
前記試験板(1)〜(3)をデューパネル光ウェザーメーター〔スガ試験機(株)製、光照射時:30W/m、60℃、湿潤時:湿度90%以上、40℃、光照射/湿潤サイクル=4時間/4時間〕を用いて1000時間曝露試験した。
【0207】
ここで、前記曝露試験前後の試験板の表面塗膜の鏡面光沢反射率を、スガ試験機(株)製のHG−268を用いて測定し、その光沢保持率を下記式に基づいて求めた。
【0208】
〔100×(暴露試験後の塗膜の鏡面反射率)/(曝露試験前の塗膜の鏡面反射率)〕光沢保持率の値が大きいほど、耐候性が良好であることを示し、概ね80%以上であることが好ましい。
なお、前記複合樹脂組成物が前記基材表面に密着せず試験板を作製できなかったものは、耐候性の評価試験を行わなかった。表中「−」で示したものは、前記理由により評価試験を行わなかったことを示す。
【0209】
[密着性の評価方法]
前記試験板(1)〜(2)を用い、JIS K−5600 碁盤目試験法に基づいて評価した。評価基準は下記の通りである。
また、前記複合樹脂組成物を、エンジニアリングテストサービス(株)社製のポリカーボネート(PC)基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)基材、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)基材、ポリスチレン(PS)基材、ポリ塩化ビニル(PVC)基材、及び6−ナイロン(NR)基材上に、乾燥膜厚が10μmとなるように塗付し、80℃で20分間乾燥することによって、各プラスチック基材上に塗膜が積層された試験板を作製した。
前記試験板表面に形成された塗膜の、プラスチック基材に対する密着性を、上記同様、JIS K−5600 碁盤目試験法にしたがって評価した。
【0210】
◎:塗膜の剥がれが全く見られなかった。
○:塗膜のはがれた面積が、全碁盤目面積の30%未満であった。
△:塗膜のはがれた面積が、全碁盤目面積の30〜95%未満であった。
×:塗膜のはがれた面積が、全碁盤目面積の95%以上であった。
【0211】
[基材追従性の評価方法]
塗膜の基材追従性は、塗膜の伸度に基づいて評価した。
はじめに、ポリプロピレンフィルムからなる基材上に前記複合樹脂組成物を、膜厚が200μmとなるように塗装し、140℃の環境下で5分間乾燥させた後、更に25℃の環境下で24時間乾燥させ、該基材から剥離したものを試験塗膜(10mm×70mm)とした。
【0212】
前記試験塗膜の伸度の測定は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−1kNG(チャック間距離;20mm、引っ張り速度;300mm/min.、測定雰囲気:22℃、60%RH)を用いて行い、引張試験前の塗膜に対する伸び率に基づいて評価した。前記伸度は、概ね60%以上であることが実用上好ましい。
【0213】
[耐食性の評価方法]
日本テストパネル(株)社製の亜鉛(Zn)−鉄(Fe)溶融鋼板(表面未処理)上に、前記複合樹脂組成物を乾燥膜厚が2μmとなるように塗付し、150℃で5分間乾燥させることによって得た前記試験板(2)を用い、JIS K−5600 9.1 耐塩水噴霧性試験に基づいて測定した。具体的には、前記試験板(2)の塗膜表面を、基材に到達する深さまでカッターナイフで傷を付け(クロスカット部)、スガ試験機(株)製塩水噴霧試験器にて塩水噴霧試験を実施し、240時間後の錆発生面積を目視により求めて評価した。評価は、カッターナイフによる傷をつけていない平面部と、クロスカット部の周辺部とに分けて行った。
<平面部>
◎:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して5%未満であった。
○:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して5%以上30%未満であった。
△:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して30%以上60%未満であった。
×:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して60%以上であった。
<クロスカット部の周辺部>
◎:クロスカット部の周辺部に錆の発生は見られず、錆に起因した塗膜の剥離等も見られなかった。
○:クロスカット部の周辺部に極微量の錆の発生が見られたが、それに起因した塗膜の剥離や膨れは見られなかった。
△:クロスカット部の周辺部に広く錆の発生が見られ、それに起因した塗膜の剥離や膨れが見られたものの、流れ錆はみられなかった。
×:クロスカット部の周辺部に広く錆の発生と、それに起因した塗膜の剥離や膨れが見られ、更に流れ錆による塗膜の汚染等が見られた。
【0214】
[耐汚染性の評価方法」
前記試験塗膜を、大阪府高石市のDIC株式会社堺工場内において3ヶ月間の曝露試験を行った。
【0215】
ここで、曝露試験後の未洗浄の試験塗膜と、曝露試験前の試験塗膜との色差(ΔE)を、コニカミノルタセンシング(株)製のCM−3500dを用いて評価した。前記色差(ΔE)が小さいほど、耐汚染性が良好であることを示す。
【0216】
【表5】

【0217】
【表6】

【0218】
【表7】

【0219】
【表8】

【0220】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂を含有してなり、前記ポリシロキサン(a3)由来の構造が、複合樹脂全体に対して15〜55重量%の範囲で含まれる複合樹脂組成物であって、前記ポリウレタン(a1)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ポリウレタン(a1)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであり、かつ前記ビニル重合体(a2)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との反応によって形成されるものであることを特徴とする複合樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン(a1)と前記ビニル重合体(a2)との重量割合[(a2)/(a1)]が、20/1〜1/20の範囲である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン(a1)が、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる1種以上ポリオール類を必須成分とするポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるものである請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビニル重合体(a2)が、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合して得られるものである、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサン(a3)が、ケイ素原子に結合した芳香族環式構造、ケイ素原子に結合した炭素原子数1〜3個を有するアルキル基、及びケイ素原子に結合した炭素原子数1〜3個を有するアルコキシ基からなる群より選ばれる1種以上を有する、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の複合樹脂組成物を含んでなるコーティング剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の複合樹脂組成物を含んでなるプライマーコート剤。
【請求項8】
基材上に、請求項7に記載のプライマーコート剤を用いて得られるプライマー層を有し、該プライマー層上にトップコート層を有する積層体。
【請求項9】
以下の(I−1)〜(I−3)からなる工程による複合樹脂組成物の製造方法。
(I−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(I−2)前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液下で、前記ビニル重合体(a2)とシラン化合物とを反応させることによって、ビニル重合体(a2)にポリシロキサン(a3)が結合した樹脂(C)の有機溶剤溶液を得る工程、
(I−3)前記樹脂(C)と、ポリウレタン(a1)とを混合し反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程。
【請求項10】
以下の(II−1)〜(II−3)からなる工程による複合樹脂組成物の製造方法。
(II−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(II−2)ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液と、ポリウレタン(a1)とを混合する工程、
(II−3)前記混合物の有機溶剤溶液下で、前記ポリウレタン(a1)及びビニル重合体(a2)とシラン化合物とを反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程。
【請求項11】
以下の(III−1)〜(III−3)からなる工程による複合樹脂組成物の製造方法。
(III−1)有機溶剤下で、加水分解性シリル基含有ビニル単量体及びシラノール基含有ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むビニル単量体を重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程、
(III−2)ポリウレタン(a1)の有機溶剤溶液下で、前記ポリウレタン(a1)とシラン化合物とを反応させることによって、ポリウレタン(a1)にポリシロキサン(a3)が結合した樹脂(D)の有機溶剤溶液を得る工程、
(III−3)前記樹脂(D)と、ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液とを混合し反応させることによって、前記ビニル重合体(a2)とポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程。

【公開番号】特開2011−105903(P2011−105903A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264926(P2009−264926)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】