説明

複合機動作制御システム

【課題】緊急地震速報に応じて複合機の緊急停止を可能とし、ユーザの再起動操作による二次災害の発生を未然に防ぎつつ、安全に復旧させることができる複合機動作制御システムを提供する。
【解決手段】FSSサーバ31は、地震の予想到達時刻及び予想震度を含む緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部31cと、緊急地震速報による予想震度に応じてMFP100に緊急停止信号を送信する緊急停止部31dと、緊急地震速報による予想到達時刻以後にMFP100に対して自己診断指示信号を送信する自己診断指示部31eとを備える。MFP100は、緊急停止信号に従って緊急停止された場合、ユーザによる操作入力を無効化すると共に、自己診断指示信号に従って自己診断を実行し、自己診断の結果をFSSサーバ31に送信する。FSSサーバ31は、MFP100から受信した自己診断の結果を解析し、解析結果に応じて、MFP100の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合機動作制御システムに関し、より詳細には、地震発生時に緊急地震速報を利用して複合機を緊急停止させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、企業等において、技術や製品仕様の情報、顧客情報、障害情報などのナレッジをデータベースに蓄積し、そのナレッジを活用してユーザのサポートを行う所謂FSS(フィールドサポートシステム)が用いられている。そしてこのようなシステムを用いることにより、業務の効率化と顧客対応の迅速化及びコストの削減が図られている。このFSSにおいては、ネットワーク機能やファクシミリ機能などの複合的な機能を備えたMFP(デジタル複合機)などをサービス対象としたユーザサポートサービスが提供されている。
【0003】
MFPにおけるFSSでは、顧客管理やサービス管理用のデータベースを備えたカスタマセンタに対してMFPの状態に関する情報を伝達可能としたり、カスタマセンタのサーバ装置から遠隔でMFPを操作してMFPの設定変更等が可能となるようにシステムが構成される。すなわち、FSSでは、遠隔のサーバ装置からMFPにアクセスし、MFPのリモートメンテナンスを行う機能が提供されており、このリモートメンテナンス機能によって、サービスマンがユーザを訪問することなく、トラブルの回避が可能となる(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、例えば震度5以上の大きな地震が発生した場合に、上記MFPは、地震によって大きな振動を受けて、電源系統をはじめ、用紙搬送機構、電子回路などが損傷を受ける恐れがある。このような大きな地震に対しては、火災等の二次災害を防止するために、MFPを速やかに停止(緊急停止)させる必要がある。
【0005】
自然現象としての地震は、秒速5〜7km程度の速度で相対的に速く伝わるP波と、秒速3〜4kmの速度でP波よりも遅く伝わるが大きな揺れを伴うS波とがあることが知られている。日本では、気象庁を中心として、地震発生時に、日本の各地に配置された地震観測装置(地震計)のうち、震源近傍の地震観測装置で相対的に速く伝わるP波を検知し、この地震観測装置で検知されたP波の観測データに基づいて、震源や地震の規模(マグニチュード)、S波が日本の各地に到達すると予想される予想到達時刻と予想震度を直ちに推定し、気象庁に備えられた緊急地震速報サーバによって可能な限り素早く、緊急地震速報として配信されるようになっている。
【0006】
例えば、特許文献2には、地震発生時に、上記の緊急地震速報を利用して緊急停止を行うMFPが記載されている。このMFPは、地震発生時に緊急地震速報を受信する受信手段と、受信手段によって受信された緊急地震速報の予想到達時刻及び予想震度のデータに基づいて、MFPの緊急停止動作を実行する緊急停止動作実行手段とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−259087号公報
【特許文献2】特開2009−72922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2に記載の技術では、MFPに緊急停止装置を組み込んで、これにより緊急地震速報を受信し、この緊急地震速報による予想到達時刻及び予想震度に応じて緊急停止動作を実行するようにしている。しかしながら、地震の後、ユーザが不用意にMFPを再起動した場合には、火災や漏電等の二次災害発生の危険性がある。また、特許文献1に記載のMFPは、管理サーバからリモートで各種メンテナンスを行うことができるが、地震発生時の動作制御を目的としたものではないため、やはり二次災害発生の危険性がある。
【0009】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、緊急地震速報に応じて複合機の緊急停止を可能とし、ユーザの再起動操作による二次災害の発生を未然に防ぎつつ、安全に復旧させることができる複合機動作制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、複合機と、該複合機とネットワークを介して接続された管理サーバとを備え、地震発生時に前記管理サーバにより前記複合機の動作を制御する複合機動作制御システムであって、前記管理サーバは、地震の予想到達時刻及び予想震度を含む緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部と、前記緊急地震速報による予想震度に応じて前記複合機に緊急停止信号を送信する緊急停止部と、前記緊急地震速報による予想到達時刻以後に前記複合機に対して自己診断指示信号を送信する自己診断指示部とを備え、前記複合機は、前記緊急停止信号に従って緊急停止された場合、ユーザによる操作入力を無効化すると共に、前記自己診断指示信号に従って自己診断を実行し、該自己診断の結果を前記管理サーバに送信し、前記管理サーバは、前記複合機から受信した自己診断の結果を解析し、解析結果に応じて、前記複合機の動作を制御することを特徴としたものである。
【0011】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記管理サーバは、前記解析結果より、前記複合機の電源系統が故障していると判定した場合、全てのジョブの受付を禁止するための全ジョブ受付禁止信号を送信し、前記複合機は、前記全ジョブ受付禁止信号に従って、緊急停止状態を継続させ、全てのジョブの受付を禁止することを特徴としたものである。
【0012】
第3の技術手段は、第1の技術手段において、前記管理サーバは、前記解析結果より、前記複合機のプリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能の1つ以上の機能が故障していると判定した場合、該故障した機能以外の他の機能の動作を再開させるための一部機能再開信号を送信し、前記複合機は、前記一部機能再開信号に従って、前記故障した機能以外の他の機能の動作を再開させると共に、前記故障した機能に係るジョブの受付を禁止することを特徴としたものである。
【0013】
第4の技術手段は、第1の技術手段において、前記管理サーバは、前記解析結果より、前記複合機の電源系統、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能のいずれも故障していないと判定した場合、前記複合機の緊急停止を解除するための緊急停止解除信号を送信し、前記複合機は、前記緊急停止解除信号に従って、緊急停止を解除し、動作を再開させることを特徴としたものである。
【0014】
第5の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段において、前記管理サーバ及び前記複合機は、所定の地域内に設置され、前記管理サーバは、揺れを検知するセンサを備え、前記自己診断指示部は、前記緊急地震速報による予想震度が規定値以上であり、且つ、前記センサで検知される実際の震度が規定値未満であった場合には、前記自己診断指示信号を送信せずに、前記複合機の緊急停止を解除するための緊急停止解除信号を送信することを特徴としたものである。
【0015】
第6の技術手段は、第1〜第5のいずれか1の技術手段において、前記管理サーバは、地震により故障していると判定した前記複合機のメンテナンスを行うためのサービスコールを、非地震時に前記管理サーバから前記複合機に提供されるメンテナンスより優先して、予め登録された宛先に発信することを特徴としたものである。
【0016】
第7の技術手段は、第1〜第6のいずれか1の技術手段において、前記複合機は、表示部を備え、該表示部に、地震発生時における前記管理サーバによる制御の状況を表示させることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、緊急地震速報に応じて管理サーバから複合機の緊急停止を行い、複合機の自己診断結果を解析することで、管理サーバから複合機の動作を制御することができるため、ユーザの再起動操作による二次災害の発生を未然に防ぎつつ、安全に復旧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る複合機の構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る複合機動作制御システムの概略について示す図である。
【図3】本システムを構成するMFP及びFSSサーバの構成例を示す図である。
【図4】FSSによるサービス運用例を説明するための図である。
【図5】本発明によるMFP及びFSSサーバの構成例を説明するための機能ブロック図である。
【図6】本システムにおける地震対応の処理例について説明するためのフロー図である。
【図7】本システムにおける地震対応の処理例について説明するためのフロー図で、図6の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る複合機の構成例を示す図である。複合機100は、外部から伝達された画像データに応じて、所定のシート(記録用紙)に対して多色及び単色の画像を形成するもので、装置本体101と、自動原稿処理装置102とにより構成されている。装置本体101は、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、クリーナユニット4、帯電器5、中間転写ベルトユニット6、定着ユニット7、給紙カセット81、排紙トレイ91等を有して構成されている。
【0020】
装置本体101の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台92が設けられ、原稿載置台92の上側には自動原稿処理装置102が取り付けられている。自動原稿処理装置102は、原稿載置台92の上に自動で原稿を搬送する。また原稿処理装置102は矢印M方向に回動自在に構成され、原稿載置台92の上を開放することにより原稿を手置きで置くことができるようになっている。
【0021】
複合機100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像器2、感光体ドラム3、帯電器5、クリーナユニット4は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションが構成されている。
【0022】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、図1に示すようなチャージャ型の他、接触型のローラ型やブラシ型の帯電器が用いられることもある。露光ユニット1は、レーザ出射部及び反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成される。露光ユニット1は、レーザビームを走査するポリゴンミラーと、ポリゴンミラーによって反射されたレーザ光を感光体ドラム3に導くためのレンズやミラー等の光学要素が配置されている。露光ユニット1としては、発光素子をアレイ状に並べた例えばELやLED書込みヘッドを用いる手法も採用できる。
【0023】
露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3を入力された画像データに応じて露光することにより、その表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有する。現像器2はそれぞれの感光体ドラム3上に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーにより顕像化するものである。またクリーナユニット4は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを、除去・回収する。
【0024】
感光体ドラム3の上方に配置されている中間転写ベルトユニット6は、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、中間転写ローラ64、及び中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。中間転写ローラ64は、YMCK用の各色に対応して4本設けられている。中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、及び中間転写ローラ64は、中間転写ベルト61を張架して回転駆動させる。また各中間転写ローラ64は、感光体ドラム3のトナー像を、中間転写ベルト61上に転写するための転写バイアスを与える。
【0025】
中間転写ベルト61は、各感光体ドラム3に接触するように設けられている、そして、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト61に順次的に重ねて転写することによって、中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する機能を有している。中間転写ベルト61は、例えば厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0026】
感光体ドラム3から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側に接触している中間転写ローラ64によって行われる。中間転写ローラ64には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM、発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加することができる。転写電極としてローラ形状を使用しているが、それ以外にブラシなども用いることが可能である。
【0027】
上述のように各感光体ドラム3上で各色相に応じて顕像化された静電像は中間転写ベルト61で積層される。このように、積層された画像情報は中間転写ベルト61の回転によって、用紙と中間転写ベルト61の接触位置に配置される転写ローラ10によって用紙上に転写される。このとき、中間転写ベルト61と転写ローラ10は所定ニップで圧接されると共に、転写ローラ10にはトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。さらに、転写ローラ10は上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ10もしくは中間転写ベルト駆動ローラ62の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等々)が用いられる。
【0028】
また、上記のように、感光体ドラム3に接触することにより中間転写ベルト61に付着したトナー、もしくは転写ローラ10によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収されるように設定されている。中間転写ベルトクリーニングユニット65には、中間転写ベルト61に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードが備えられており、クリーニングブレードが接触する中間転写ベルト61は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ63で支持されている。
【0029】
給紙カセット81は、画像形成に使用するシート(記録用紙)を蓄積しておくためのトレイであり、装置本体101の露光ユニット1の下側に設けられている。また手差し給紙カセット82にも画像形成に使用するシートを置くことができる。また、装置本体101の上方に設けられている排紙トレイ91は、印刷済みのシートをフェイスダウンで集積するためのトレイである。
【0030】
また、装置本体101には、給紙カセット81及び手差し給紙カセット82のシートを転写ローラ10や定着ユニット7を経由させて排紙トレイ91に送るための、略垂直形状の用紙搬送路Sが設けられている。給紙カセット81ないし手差し給紙カセット82から排紙トレイ91までの用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ11a,11b、複数の搬送ローラ12a〜12d,レジストローラ13、転写ローラ10、定着ユニット7等が配されている。
【0031】
搬送ローラ12a〜12dは、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。又ピックアップローラ11aは、給紙カセット81の端部近傍に備えられ、給紙カセット81からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。同様にまたピックアップローラ11bは、手差し給紙カセット82の端部近傍に備えられ、手差し給紙カセット82からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。
【0032】
本発明に係る複合機動作制御システム(以下、単に本システムという)の概略について、図2を参照しながら、説明する。
【0033】
本システムは、図2で例示するように、MFP100と、MFP100にネットワークNを介して接続されたFSSサーバ31とを備えたシステムであり、特に、地震対応の処理を制御することが可能なシステムとなっている。具体的には、地震発生時にFSSサーバ31によりMFP100を緊急停止させることができる。FSSサーバ31は、本発明の管理サーバの一例であり、フィールドサポートシステムを提供する機能も備えている。ネットワークNは、電話回線による公衆回線網やLANのようなネットワークを適宜適用することができる。以下、本システムのFSSサーバ31について、非地震時の通常サービスも行うことを前提に説明するが、この通常サービスを組み込まなくてもよい。
【0034】
本システムにおけるMFP100は、ユーザが利用する場所(ユーザ拠点20)に設置されており、ネットワークNを介してプリントサーバ22及びPC21a〜21cで例示する複数のPCに接続されている。そして、MFP100は、本体でのユーザ操作に基づき、若しくは、プリントサーバ22を介してPC21a〜21cからの依頼に基づき、プリント処理やスキャン処理等を行っている。MFP100は、さらにネットワークNを介して外部のサービスセンタ30(カスタマセンタともいう)のFSSサーバ31と接続されており、FSSサーバ31は同じくネットワークNを介してサービス業者の拠点に設置されたPC40a〜40cと接続されている。FSSサーバ31では、MFP100の稼動状況、問題の有無、消耗品の残量等をモニタしており、これらの情報はPC40a〜40cからもモニタできるようになっている。このサービスセンタ30は、地域毎に設置されており、管轄地域内の企業等に設置されているMFPの保守サービス等を提供するものである。
【0035】
さらに、FSSサーバ31は、ネットワークNを介して緊急地震速報を提供する地震情報提供サーバ(図示せず)と接続されている。つまり、FSSサーバ31は、地震情報提供サーバから緊急地震速報を受信できるようになっている。
【0036】
図3は、本システムを構成するMFP及びFSSサーバの構成例を示す図である。MFP100は、ネットワークNを介してサービスセンタ30のFSSサーバ31に接続されている。そして、通常、FSSサーバ31によるサービス提供の対象となるMFP100がネットワークN上に複数接続され、これらのMFP100の状態をFSSサーバ31で管理している。
【0037】
MFP100は、演算を行うCPU及び演算に伴う一時的な情報を記憶するRAM等からなる機器制御部113を備えている。機器制御部113には、MFP100を制御するための制御プログラムを記憶するROMが含まれる。この制御プログラムはそれをコンピュータ読み取り可能に記録した可搬の記録媒体やネットワークを介して流通させることができる。なお、FSSサーバ31における制御も同様にしてプログラム(サーバプログラム)によって実行されることになるが、同様にして流通させることができる。
【0038】
また、機器制御部113には、MFP100が行う処理を管理するための管理情報(各種の制御情報)を記憶するメモリである管理部116が接続される。さらに機器制御部113には、記録紙に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取部110が接続される。画像読取部110には、原稿画像を画像データとして取り込むためのCCD110aが備えられる。また、機器制御部113には、ユーザからの命令などの情報が入力されるタッチパネル又はテンキー等の入力部111aと、操作のために必要な情報や設定の変更内容などを表示する液晶パネルなどの表示部111bとからなる操作部(操作パネル)111が接続される。
【0039】
また、機器制御部113には、記録紙上に画像データの画像を形成する画像形成部112が接続される。この画像形成部112には、画像データを一時的に記憶するメモリ112aと、メモリ112aが記憶した画像データから画像を形成して記録紙に記録する印字部(LSU)112bと、印字部112bで画像形成するための記録紙を収容する給紙用トレイ112cとが設けられている。そして、MFP100は、画像読取部110が生成した画像データをメモリ112aに一旦記憶させた後、印字部112bで画像を形成することができる。メモリ112aに一旦記憶させた画像データは、ハードディスク(HD)115に記憶させるようにしてもよい。
【0040】
また、機器制御部113には、電話回線を介してFAXデータの送受信を行うFAX部117が接続される。MFP100は、電話回線を介して外部のファクシミリ装置と接続され、このファクシミリ装置との間で、FAXデータの送受信を行うことができる。
【0041】
また、MFP100は、図2のPC21a〜21cから送信された画像データを通信部114で受信し、受信した画像データから画像形成部112で画像を形成することができる。このようにMFP100は、ネットワークプリンタとして機能させることができる。
【0042】
FSSサーバ31は、ネットワークNを介してMFP100や地震情報提供サーバと通信可能に接続するための通信部311と、FSSサーバ31の動作を制御するCPUやメモリを含む制御部312と、ハードディスクなどの記憶部313とを備えて構成される。また、FSSサーバ31は、FSSを提供するためのデータベース(DB)32を備えている。
【0043】
本発明の主たる目的は、緊急地震速報に応じて複合機の緊急停止を可能とし、ユーザの再起動操作による二次災害の発生を未然に防ぎつつ、複合機を安全に復旧させることにある。このための構成として、FSSサーバ31は、地震の予想到達時刻及び予想震度を含む緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部と、緊急地震速報による予想震度に応じてMFP100に緊急停止信号を送信する緊急停止部と、緊急地震速報による予想到達時刻以後にMFP100に対して自己診断指示信号を送信する自己診断指示部とを備える。なお、緊急地震速報受信部、緊急停止部、及び自己診断指示部は、プログラムとして記憶部313に格納されており、このプログラムが制御部312により実行されることで実現される。
【0044】
MFP100は、FSSサーバ31からの緊急停止信号に従って緊急停止された場合、ユーザによる操作入力を無効化すると共に、自己診断指示信号に従って自己診断を実行し、自己診断の結果をFSSサーバ31に送信する。そして、FSSサーバ31は、MFP100から受信した自己診断の結果を解析し、解析結果に応じて、MFP100の動作を制御する。
【0045】
上記において、FSSサーバ31は、緊急地震速報に含まれる予想震度が例えば震度5以上であった場合に、緊急停止信号を送信してMFP100を緊急停止させる。すなわち、FSSサーバ31は、FSSサーバ31が設置されている地域(サービスセンタ30によって管轄される地域)の予想震度を、緊急地震速報から取得し、取得した予想震度が規定震度(ここでは震度5)以上であった場合に、MFP100に緊急停止信号を送信する。なお、本例では、FSSサーバ31にネットワークNを介して接続される全てのMFPは、サービスセンタ30によって管轄される地域に含まれる企業等に設置されているものとする。この緊急停止信号を受けたMFP100は、ユーザによる操作入力を無効化、すなわち、操作キーによる入力を無効にしてユーザ操作の受け付け動作を停止させる。
【0046】
そして、FSSサーバ31は、緊急地震速報による予想到達時刻以後にMFP100に対して自己診断指示信号を送信する。ここで、MFP100での自己診断は地震による揺れが収まった後に行うほうが望ましい。このため、FSSサーバ31は、地震の予想到達時刻から所定時間(例えば、1〜3分など)経過したときに、自己診断指示信号をMFP100に送信するようにすればよい。
【0047】
MFP100は、FSSサーバ31から自己診断指示信号を受信すると、例えば、MFP内の各センサからの情報や温度情報等を収集し、収集した情報を自己診断結果として、ネットワークNを介してFSSサーバ31に返信する。より具体的には、例えば、機器制御部113が、電源系、画像形成系、用紙搬送系、定着系、スキャナ系、通信系など各部位のダメージ情報(障害情報)を収集する。このダメージ情報は、その部位が故障により停止さえしていなければ収集することができる。つまり、機器制御部113と各部位とが通信可能な状態であれば、ダメージ情報を収集し、収集したダメージ情報を自己診断結果としてFSSサーバ31に送信する。また、通信できない部位については、ダメージ情報を収集できないが、機器制御部113では、ダメージ情報を収集できない部位についてはダメージを受けていると判定し、その旨をMFP100に送信するようにする。
【0048】
FSSサーバ31は、MFP100からの自己診断結果を解析し、解析結果に応じて、MFP100の動作を制御する。具体的には、FSSサーバ31は、解析結果より、MFP100の電源系統が故障していると判定した場合、全てのジョブの受付を禁止するための全ジョブ受付禁止信号を送信する。この場合、MFP100は、FSSサーバ31からの全ジョブ受付禁止信号に従って、緊急停止状態を継続させ、全てのジョブの受付を禁止する。
【0049】
また、FSSサーバ31は、解析結果より、MFP100のプリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能の1つ以上の機能が故障していると判定した場合、故障した機能以外の他の機能の動作を再開させるための一部機能再開信号を送信する。例えば、用紙搬送系にダメージを受けている場合には、プリンタ機能、コピー機能は故障しており、ファクシミリ送信、スキャナ機能は故障していないと判定される。この場合、MFP100は、FSSサーバ31からの一部機能再開信号に従って、故障した機能以外の他の機能の動作を再開させると共に、故障した機能に係るジョブの受付を禁止する。
【0050】
また、FSSサーバ31は、解析結果より、MFP100の電源系統、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能のいずれも故障していないと判定した場合、MFP100の緊急停止を解除するための緊急停止解除信号を送信する。この場合、MFP100は、FSSサーバ31からの緊急停止解除信号に従って、緊急停止を解除し、動作を再開させる。
【0051】
このように、自己診断によって安全が確認できたMFPは動作を再開させ、地震によってダメージを受けたMFPは動作の停止を継続させるか、あるいは、一部機能に限定して復帰させるように制御される。これにより、ユーザの不用意な再起動操作による二次災害の防止や、安全を優先したMFPの運用管理を行うことができる。
【0052】
図4で例示するサービス運用例は、上述したように通常サービスも含めた運用例であり、FSSをMFP100に適用したものである。FSSは、MFP100をサービス対象とし、そのMFP100に対してネットワークNを介して接続されるFSSサーバ31により運用が行われる。なお、MFP100は、スキャナ機能やプリンタ機能などを有する装置であるが、本発明はプリンタやネットワークスキャナ、ファクシミリ装置などの画像処理機能を備える各種の画像処理装置を適用することも可能である。
【0053】
FSSによるサービス対象とするMFP100は、ユーザ(サービスの顧客)のオフィスや店舗等に設置され、FSSによるサービスはサービスプロバイダが設置したサービスセンタ30内のシステム(FSSサーバ31)により提供されるものとする。図2の構成例からも分かるように、FSSを運用するシステムでは、ユーザが保有するMFP100が通信手段を介してサービスセンタ30のシステムに接続され、そのシステムによりFSSによる遠隔からのユーザサポートサービスが提供される。
【0054】
FSSによるユーザサポートサービスでは、サービスセンタ30のシステムによるMFP100のカウンタ数値(記録紙の使用量)を検針するためのリモート検針及びリモート診断機能41、サービスセンタ30のシステムからMFP100に対するリモートメンテナンスを実行するためのリモートメンテナンス機能42、及びMFP100からサービスセンタ30のシステムに対するアラート送信機能43などが提供される。
【0055】
例えばリモート診断機能41により、MFP100の設定内容を定期的にサービスセンタ30に送信する。またアラート送信機能43により、MFP100に発生したトラブル内容に関する情報をサービスセンタ30に送信する。MFP100による自己診断は、これらの機能を利用して実行することもできる。
【0056】
サービスセンタ30では、ユーザのMFP100から送信されたアラート情報や検針/診断情報に基づいて、トラブル一次対応処理45やトナー自動配送処理46を行う。トラブル一次対応では、リモートメンテナンス機能42を使用してサービスセンタ30から遠隔でメンテナンスを行う。また、MFP100からトナーの残量が少ないことを示すアラートが送信された場合には、ユーザに対するトナー自動配送処理46を実行する。
【0057】
また、トラブルの内容によりサービスマンの訪問が必要な場合には、サービスセンタ30から障害内容(診断情報)47をサービス拠点(認定店)50に送り、サービス拠点50のサービスマンがMFP100の状態を把握してユーザ訪問48を行う。また、サービスセンタ30は、例えばMFP100の今月の使用料金などの可動状況報告44を適宜通知することもできる。
【0058】
また、サービスセンタ30では、MFP100のトラブルに対応して遠隔からMFP100の設定を変更可能とする。設定の変更は、例えばMFP100を動作させるファームウェアのアップデートにより実行される。MFP100では、設定を変更したときに、MFP100が備える表示部に変更した設定内容の情報を表示し、もしくは設定内容の情報を印刷出力して報知する。あるいは、管理者権限を持つユーザに対して設定変更の内容を報知する。これによりMFP100のトラブルが解消されるとともに、MFP100の設定内容がユーザに通知されることで、ユーザがMFP100の状態を把握でき、不安を解消することができる。
【0059】
上記のごとくのMFP100にはFSSを実行するためのFSS機能が備えられている。そして上記のような構成でMFPのFSS機能を有効にすると、ネットワークNを介してMFP100からFSSサーバ31に情報が送信できるようになる。
【0060】
通常サービスについて説明すると、例えばMFP100からサービスセンタのFSSサーバ31に対しては、印字の[カウンタ数値]、[トラブル発生]等の情報が送信される。[カウンタ数値]はMFP100からFSSサーバ31に対して定期的に送信され、また[トラブル発生]はトラブルが発生したときに緊急的に随時送信される情報である。そしてこれらの送信情報は、FSSサーバ31内のDB32に蓄積される。MFP100から送信された[トラブル発生]を示すトラブルアラートに対しては、FSSサーバ31はアラート監視機能により、必要な箇所に情報を通知する。例えばトラブルアラートが、MFP100におけるトナーの残量が少なくなってきたことを示すトナーニアエンド通知であれば、補充が必要なトナーを自動発送するように処理を行う。
【0061】
ここでは、MFP100が使用しているトナーの残量が少なくなった場合、MFP100がそれを検知して、FSSサーバ31にトナーのニアエンド通知を送信する。サービスセンタ30では、FSSサーバ31が受信したニアエンド通知に従って、自動的にそのMFP100を使用する客先にトナーを送付する手配処理を行う。これによりユーザは、トナーの残量を気にすることなくMFPを利用することができる。
【0062】
また、トラブルアラートがサービスマンをコールするサービスマンコール通知であれば、サービスマン派遣(修理対応)を手配する。通常サービスでの手配はサービスセンタ30の作業員が行ってもよいが、地震時には自動的な電話や電子メール、メッセージ送信などにより行うものとする。このMFP100では、自身のトラブルを検出して、その検出結果に従ってトラブルコードをサービスセンタ30のFSSサーバ31に送信する。サービスセンタ30では、MFP100からFSSサーバ31に送信されたトラブルコードに従ってMFP100の不具合箇所を推定し、サービスマンの訪問が必要であれば、交換すべき可能性の高い交換パーツを持って訪問修理対応を行わせる。
【0063】
また[カウンタ数値]に関し、MFP100では、記録紙に対する画像形成(印字)を行って記録紙を使用するごとに、印字カウンタを積算している。印字カウンタのカウンタ数値情報は定期的にFSSサーバ31に送信される。そしてMFP100のコピーボリュームに対して課金される契約が行われていれば、サービスセンタ30では、FSSサーバ31上のDB32のカウンタ数値を確認し、対象顧客の使用料金を計上する。またここでは、カウンタ数値によりMFP100の利用状況を遠隔操作で印字させることにより、ユーザ(顧客)に対して例えば今月の使用料金などを通知することもできる。
【0064】
一方、ユーザからサービスセンタ30に対して直接電話コールがあった場合は、サービスセンタ30内のテクニカルオペレータに接続される。テクニカルオペレータは、FSSサーバ31のDB32を確認しながら適切な対応を行う。例えば、FSSサーバ31から遠隔操作で確認・変更可能な箇所であれば、FSSサーバ31のリモート診断及びリモートメンテナンス機能により、診断及び遠隔メンテナンスを行う。またトナーの注文であれば、既にトナーを自動発送したという連絡を行うことができ、またサービスマンの訪問が必要な場合には保守部門への修理指示を行うことができる。
【0065】
また、MFP100で特定の設定のときにのみに発生する不具合であれば、FSSサーバ31からのリモートメンテナンスによりMFP100の設定を修正し、一旦トラブルが発生しない状態に設定した上で、サービスマンの訪問手配を行う。
【0066】
上記リモートメンテナンス機能は、ユーザからの要請またはユーザによる了解を得た上で、FSSサーバ31からMFP100内部の設定変更や遠隔操作を可能とするものである。ここでは、MFP100を動作させるための各種設定値の設定項目及び設定値の読み込み及び書込みが可能であり、またサービスマンが使用するシミュレーション設定の設定内容の読み込み及び書込が可能である。この他リモートメンテナンス機能では、例えば、MFP100の再起動指示や、MFP100の動作禁止/解除、マルチ部数設定禁止/解除、MFP100のマシンステータス情報(例えばドアオープン、省エネモード中、復帰中、ウォームアップ中、レディ中など)の読取り、及びMFP100のアプリケーションのバージョン情報の読み取りなどが可能になっている。
【0067】
そして、ここで説明する通常サービスでは、上記のリモートメンテナンス機能によりFSSサーバ31によるリモートメンテナンスが行われる際に、予め登録してある通知先に対して、リモートメンテナンスが開始されることを示す通知や、リモートメンテナンスが終了したことを示す通知を送信する処理を行う。またリモートメンテナンスに関連する画像処理機能の使用を制限したり、またその画像処理機能を使用する装置に対して、上記のメンテナンスの開始・終了通知を送信する処理を行う。
【0068】
図5は、本発明によるMFP及びFSSサーバの構成例を説明するための機能ブロック図である。図4に示すFSSに適用したMFP100は、記録紙上に画像データの画像を印刷(画像形成)する画像形成部112と、ディスプレイやタッチパネル等の表示部111bと、原稿画像のスキャン処理を行って画像データとして読み取る画像読取部110と、電話回線を介してFAXデータの送受信を行なうFAX部117と、各種データやプログラムを記憶するHD(ハードディスク)115と、装置各部を制御する機器制御部113と、ネットワークNに接続するためのネットワークI/Fである通信部116とから構成される。
【0069】
HD115には、リモートメンテナンスの対象となるMFP100の設定内容115aと、メンテナンス通知の通知先を判定するための通知先テーブル115bとが保持されている。
【0070】
そして、機器制御部113は、通常サービスのために、設定変更許可部113a、設定変更処理部113b、トラブルアラート送信部113c、メンテナンス通知先判断部113d、メンテナンス通知処理部113e、及び使用制限処理部113fを有している。これら機器制御部113の各部の機能は、HD115もしくは他の図示しない記憶手段に記憶したプログラムにより実行可能となり、機器制御部113では必要とするプログラムをRAMなどのメモリに読み込んでこれをCPUなどの処理装置で実行することにより、機器制御部113が有する機能を実現させることができる。
【0071】
機器制御部113において、設定変更許可部113aは、FSSサーバ31からMFP100の設定変更が指示されたときに、その設定変更を許可するか否かを判断する。設定変更の許可は、例えばFSSサーバ31から送信された認証情報を設定変更許可部113aによって認証し、認証の結果に従ってFSSサーバ31からの指示に基づく設定の変更を許可するか否かを判断する。設定変更処理部113bは、設定変更許可部113aがFSSサーバ31からの設定変更を許可したときに、FSSサーバ31からの設定変更指示に従って、HD115に記憶されている設定データの変更処理を行う。
【0072】
また、トラブルアラート送信部113cは、MFP100で連続した紙詰まりなどの所定のトラブルが発生したときにそのトラブルに応じた所定のトラブルコードをFSSサーバ31に送信する。また、トラブルアラート送信部113cは、トナーカートリッジ交換などのメンテナンスが必要となったときにも、必要なメンテナンスに応じた所定のトラブルコードを送信する。
【0073】
メンテナンス通知先判断部113dは、FSSサーバ31からMFP100の設定内容の変更処理等のメンテナンスを行う場合に、メンテナンスの開始・終了のタイミングで通知する通知先を判断する。通知先の判断は、HD115に記憶した通知先テーブル115bを使用して行われる。ここでは、メンテナンスの開始時と終了時の両方で通知先を判断してもよく、またこれらのいずれかのときに通知先を判断するようにしてもよい。そして、メンテナンス通知処理部113eは、メンテナンス通知先判断部113dで判断された通知先に対して、メンテナンス通知を送信する処理を行う。
【0074】
使用制限処理部113fは、FSSサーバ31からのメンテナンスが行われる際に、MFP100の特定の機能の使用を制限する。例えばFSSサーバ31から実行されるメンテナンスが、MFP100のFAX機能に関する設定変更処理である場合は、MFP100におけるFAX処理の利用を制限する。
【0075】
一方で、FSSサーバ31は、通常サービスのために、MFP100のリモートメンテナンスによる設定変更を実行するための設定変更処理部31aと、リモートメンテナンスの開始及び終了をMFP100に通知する開始/終了通知部31bとを有している。
【0076】
そして、ネットワークNには、上述のようにPC21a〜21cが接続されており、このうちPC21aはMFP100の管理者権限を持つ管理者PCであり、PC21b,21cは他の複数のユーザPCとする。なお、上述したようにジョブの依頼は、ユーザPC21b,21cからだけでなく、管理者PC21aからも可能に構成しておいてもよい。
【0077】
各PC21a,21b,21cは、MFP100から送信されたメンテナンス通知を受信するメンテナンス通知受信部211a,211b,211cを有している。管理者PC21aは、MFP100でネットワーク接続するときに使用する装置の識別情報に従って、MFP100で管理権限を持つ管理者の使用PCであるものと判断できるようになっている。もしくは、管理者権限を持つメールアドレスをMFP100で登録しておき、そのメールアドレスに対して管理者宛の通知を送信するようにしてもよい。また、管理者PC21a以外のユーザPC21b,21cについても同様に、接続用の識別情報やメールアドレスをMFP100で予め登録しておく。MFP100では、これらのPCに対して所定の条件下でリモートメンテナンスに関する通知を送信する。なお、ここではPCを例としたが、PCに限らず登録された識別情報に従って特定の宛先にメンテナンス通知を送信できる構成であればよい。
【0078】
図5において、本システムにおけるFSSサーバ(管理サーバ)31は、前述したように、地震の予想到達時刻及び予想震度を含む緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部31cと、緊急地震速報による予想震度に応じてMFP100に緊急停止信号を送信する緊急停止部31dと、緊急地震速報による予想到達時刻以後にMFP100に対して自己診断指示信号を送信する自己診断指示部31eとを備える。例えば、予想震度が規定値(例えば、震度5)以上のときに、MFP100に緊急停止信号が送信される。MFP100は、FSSサーバ31からの緊急停止信号に従って緊急停止された場合、ユーザによる操作入力を無効化すると共に、自己診断指示信号に従って自己診断を実行し、自己診断の結果をFSSサーバ31に送信する。FSSサーバ31は、MFP100から受信した自己診断の結果を解析し、解析結果に応じて、MFP100の動作を制御する。
【0079】
ここで、FSSサーバ31は、揺れを検知する揺れセンサ31fを備えるようにしてもよい。この場合、自己診断指示部31eは、緊急地震速報による予想震度が規定値以上であり、且つ、揺れセンサ31fで検知される実際の震度が規定値未満であった場合には、自己診断指示信号を送信せずに、MFP100の緊急停止を解除するための緊急停止解除信号を送信する。このように、緊急地震速報の予想震度よりも実際の震度が小さい場合には、地震によりMFP100が故障する確率は小さいと考えられるため、自己診断を行うことなく、緊急停止を解除するようにしてもよい。
【0080】
また、FSSサーバ31は、地震により故障していると判定したMFP100のメンテナンスを行うためのサービスコールを、非地震時にFSSサーバ31からMFP100に提供されるメンテナンス(すなわち、通常のメンテナンス)より優先して、予め登録された宛先に発信することが好ましい。このように地震で故障したMFPを優先的にメンテナンスすることで、安全性の確保を優先させ、緊急サービス対応を行うことができる。
【0081】
サービスコールの発信は、例えば、電話の自動発呼による音声メッセージ、電子メールなどを利用することができる。電話の自動発呼の場合、FSSサーバ31に、サービス会社等のサービス受付用電話番号、サービスマンが持つ携帯端末の電話番号などを宛先として予め登録しておけばよい。また、電子メールの場合、FSSサーバ31に、サービス会社等のサービス受付用電子メールアドレス、サービスマンが持つ携帯端末の電子メールアドレスなどを宛先として予め登録しておけばよい。特に、MFP100に対応可能な近隣のサービス会社等にサービスコールしたほうが、サービスマンの訪問までの時間が短くなり好ましい。MFP100では、このサービスマンによるサービス対応が完了するまでの間は、ユーザによる操作入力を無効化して、サービス対応によりMFP100を復帰させることができる。
【0082】
ここで、例えば、確認事項を増やすなど、MFP100の動作を復帰させるための条件を通常サービスより多く、つまり確認条件を厳しくすることが好ましい。これにより、安全性の確保を優先して、厳しい条件でのサービス対応し、二次災害の発生を防止することができる。
【0083】
また、MFP100の表示部111bに、地震発生時におけるFSSサーバ31による制御の状況を表示させるようにしてもよい。例えば、MFP100が緊急停止信号を受信した場合には、表示部111bに、地震により緊急停止したことを示す「地震により緊急停止中」を表示させる。また、MFP100が自己診断指示信号を受信した場合には、表示部111bに、自己診断中であることを示す「地震により緊急停止中/自己診断中」を表示させる。また、MFP100が全ジョブ受付禁止信号を受信した場合には、緊急停止状態が継続され、FSSサーバ31からサービスコールが発信されているため、表示部111bに、その旨を示す「地震により緊急停止継続中/サービスコール中」を表示させる。また、MFP100が一部機能再開信号を受信した場合には、一部機能が再開され、FSSサーバ31からサービスコールが発信されているため、表示部111bに、その旨を示す「地震により一部の機能のみ再開動作中/サービスコール中」を表示させる。
【0084】
さらに、オンラインサービスにて、「サービス中」等の経過状況を表示するようにしてもよい。これにより、ユーザが、MFP100のサービス状態を一目で確認することができる。また、このような表示制御は、FSSサーバ31からの制御に撚らずに、MFP100が停止の際に実行するようにしてもよい。
【0085】
以下、図6及び図7を参照しながら、本システムにおける地震対応の処理例について説明する。まず、図6において、管理サーバ31の緊急地震速報受信部31cが、緊急地震速報を受信したか否かを判定し(ステップS1)、受信していない場合(NOの場合)、ステップS1で緊急地震速報の受信待ち状態に移行する。また、ステップS1において、緊急地震速報を受信した場合(YESの場合)、緊急地震速報に含まれる予想震度が規定値以上か否かを判定し(ステップS2)、予想震度が規定値未満であれば(NOの場合)、ステップS1に戻り緊急地震速報の受信待ち状態に移行する。この規定値は、例えば、震度5をデフォルト値として、設置条件等により個々に調整可能としておけばよい。
【0086】
また、ステップS2において、予想震度が規定値以上である場合(YESの場合)、管理サーバ31の緊急停止部31dは、管理サーバ31に接続されている全てのMFPに緊急停止信号を送信する(ステップS3)。MFP100は、管理サーバ31からの緊急停止信号に従って、所定の手順で緊急停止させる(ステップS4)。このときMFP100は、ユーザによる操作入力を無効化し、表示部111bに、地震により緊急停止したことをユーザに通知するためのメッセージとして、「地震により緊急停止中」を表示させる(ステップS5)。ここで、画像処理の動作が稼動中の場合には、例えば、搬送中の用紙に限定して処理を最後まで行い、早々に終了させ、その後、ヒータランプやコピーランプ等の熱源、及び使用しない回路部の電源を切ればよい。
【0087】
次に、管理サーバ31の自己診断指示部31eは、揺れセンサ31fにより検知された実際の震度か規定値以上か否かを判定する(ステップS6)。ここでは、揺れを検知できない場合もあるので、緊急地震速報の受信から所定の時間経過したか否かも判定するようにしてもよい。所定の時間としては、例えば、30秒をデフォルト値として、緊急地震速報の条件(例えば、震源の位置と深さ)等により個々に自動的に調整できるようにすればよい。また、ステップS6での規定値は、ステップS2の判定時の規定値と同様に、例えば震度5に相当する値をデフォルト値として、設置条件等により個々に調整可能としておけばよい。なお、ステップS2,S6の規定値は異ならせてもよい。
【0088】
ステップS6において、実際の震度が規定値以上と判定した場合(YESの場合)、自己診断指示部31eは、緊急地震速報による予想到達時刻以後に、管理サーバ31に接続されている全てのMFPに自己診断指示信号を送信する(ステップS7)。なお、管理サーバ31が揺れセンサ31fを備えている場合には、揺れが収まったか否かを揺れセンサ31fの検知結果により判定し、揺れが収まった後に、自己診断指示信号を送信するようにしてもよい。また、ステップS6において、実際の震度が規定値未満と判定した場合(NOの場合)、自己診断指示部31eは、図7のステップS23に移行して、緊急停止解除信号をMFP100に送信する。
【0089】
次に、MFP100は、管理サーバ31からの自己診断指示信号に従って、自己診断を実施し、各部位(電源系、用紙搬送系、定着系、スキャナ系、通信系など)のダメージ情報を収集する(ステップS8)。このときMFP100は、表示部111bに、自己診断中であることをユーザに通知するためのメッセージとして、「地震により緊急停止中/自己診断中」を表示させる(ステップS9)。そして、MFP100は、自己診断の結果を管理サーバ31に送信する(ステップS10)。
【0090】
次に、管理サーバ31は、MFP100から自己診断結果を受信し(ステップS11)、受信した自己診断結果を解析する(ステップS12)。なお、MFP100から自己診断結果を受信できない場合は、MFP100に何らかの故障があると判定し、サービスコールを発信するなどの緊急修理対応をとる。
【0091】
図7において、管理サーバ31は、ステップS12での解析結果より、MFP100の電源系統が故障しているか否か、すなわち、動作に必要な電源が安定的に供給できているか否かを判定し(ステップS13)、MFP100の電源系統が故障していると判定した場合(YESの場合)、このMFP100について、通常のサービスコールと異なり、優先度の高いサービスコールを発信する(ステップS14)。そして、管理サーバ31は、MFP100に全ジョブ受付禁止信号を送信する(ステップS15)。
【0092】
MFP100は、管理サーバ31からの全ジョブ受付禁止信号に従って、緊急停止状態を継続させ、全てのジョブの受付を禁止する(ステップS16)。そして、MFP100は、表示部111bに、サービスコール中であることをユーザに通知するためのメッセージとして、「地震により緊急停止継続中/サービスコール中」を表示させる(ステップS17)。
【0093】
次に、管理サーバ31は、ステップS13において、MFP100の電源系統が故障していないと判定した場合(NOの場合)、MFP100の機能の一部が故障しているか否か、すなわち、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能のいずれかが故障しているか否かを判定し(ステップS18)、MFP100の一部機能が故障していると判定した場合(YESの場合)、このMFP100について、通常のサービスコールと異なり、優先度の高いサービスコールを発信する(ステップS19)。そして、管理サーバ31は、MFP100に一部機能再開信号を送信する(ステップS20)。
【0094】
MFP100は、管理サーバ31からの一部機能再開信号に従って、一部の機能を再開させ、故障した機能に係るジョブの受付を禁止する(ステップS21)。そして、MFP100は、表示部111bに、サービスコール中であることをユーザに通知するためのメッセージとして、「地震により一部の機能のみ再開動作中/サービスコール中」を表示させる(ステップS22)。より具体的には、例えば、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能が故障し、プリンタ機能のみ故障していない場合には、「地震によりプリンタ機能のみ再開動作中/サービスコール中」などと表示させる。
【0095】
次に、管理サーバ31は、ステップS18において、MFP100の機能の一部が故障していないと判定した場合(NOの場合)、すなわち、MFP100は故障しておらず、復帰可能であると判定した場合、緊急停止解除信号をMFP100に送信する(ステップS23)。MFP100は、管理サーバ31からの緊急停止解除信号に従って、緊急停止を解除し(ステップS24)、表示部111bに緊急停止前の内容を表示し、動作を再開させる(ステップS25)。
【0096】
次に、管理サーバ31は、自己診断結果を送信してきた全てのMFPについて解析処理を終了したか否かを判定し(ステップS26)、解析処理を終了していない場合(NOの場合)、図6のステップS12に戻り処理を繰り返す。また、ステップS26において、解析処理を終了した場合(YESの場合)、そのまま終了する。
【符号の説明】
【0097】
1…露光ユニット、2…現像器、3…感光体ドラム、4…クリーナユニット、5…帯電器、6…中間転写ベルトユニット、7…定着ユニット、10…転写ローラ、11a,11b…ピックアップローラ、12a〜12d…搬送ローラ、13…レジストローラ、20…ユーザ拠点、21a〜21c,40a〜40c…PC、22…プリントサーバ、30…サービスセンタ、31…管理サーバ(FSSサーバ)、31a…設定変更処理部、31b…開始/終了通知部、31c…緊急地震速報受信部、31d…緊急停止部、31e…自己診断指示部、31f…揺れセンサ、32…DB、41…リモート診断機能、42…リモートメンテナンス機能、43…アラート送信機能、44…稼動状況報告、45…トラブル一次対応処理、46…トナー自動配送処理、47…障害内容、48…ユーザ訪問、50…サービス拠点、81…給紙カセット、82…手差し給紙カセット、91…排紙トレイ、92…原稿載置台、101…装置本体、102…自動原稿処理装置、100…複合機(MFP)、110…画像読取部、110a…CCD、111…操作部、111a…入力部、111b…表示部、112…画像形成部、112a…メモリ、112b…印字部、112c…給紙用トレイ、113…機器制御部、113a…設定変更許可部、113b…設定変更処理部、113c…トラブルアラート送信部、113d…メンテナンス通知先判断部、113e…メンテナンス通知処理部、113f…使用制限処理部、114,311…通信部、115…HD、116…管理部、117…FAX部、312…制御部、313…記憶部、211a〜211c…メンテナンス通知受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合機と、該複合機とネットワークを介して接続された管理サーバとを備え、地震発生時に前記管理サーバにより前記複合機の動作を制御する複合機動作制御システムであって、
前記管理サーバは、地震の予想到達時刻及び予想震度を含む緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部と、前記緊急地震速報による予想震度に応じて前記複合機に緊急停止信号を送信する緊急停止部と、前記緊急地震速報による予想到達時刻以後に前記複合機に対して自己診断指示信号を送信する自己診断指示部とを備え、
前記複合機は、前記緊急停止信号に従って緊急停止された場合、ユーザによる操作入力を無効化すると共に、前記自己診断指示信号に従って自己診断を実行し、該自己診断の結果を前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、前記複合機から受信した自己診断の結果を解析し、解析結果に応じて、前記複合機の動作を制御することを特徴とする複合機動作制御システム。
【請求項2】
前記管理サーバは、前記解析結果より、前記複合機の電源系統が故障していると判定した場合、全てのジョブの受付を禁止するための全ジョブ受付禁止信号を送信し、
前記複合機は、前記全ジョブ受付禁止信号に従って、緊急停止状態を継続させ、全てのジョブの受付を禁止することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合機動作制御システム。
【請求項3】
前記管理サーバは、前記解析結果より、前記複合機のプリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能の1つ以上の機能が故障していると判定した場合、該故障した機能以外の他の機能の動作を再開させるための一部機能再開信号を送信し、
前記複合機は、前記一部機能再開信号に従って、前記故障した機能以外の他の機能の動作を再開させると共に、前記故障した機能に係るジョブの受付を禁止することを特徴とする請求項1に記載の複合機動作制御システム。
【請求項4】
前記管理サーバは、前記解析結果より、前記複合機の電源系統、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能のいずれも故障していないと判定した場合、前記複合機の緊急停止を解除するための緊急停止解除信号を送信し、
前記複合機は、前記緊急停止解除信号に従って、緊急停止を解除し、動作を再開させることを特徴とする請求項1に記載の複合機動作制御システム。
【請求項5】
前記管理サーバ及び前記複合機は、所定の地域内に設置され、前記管理サーバは、揺れを検知するセンサを備え、前記自己診断指示部は、前記緊急地震速報による予想震度が規定値以上であり、且つ、前記センサで検知される実際の震度が規定値未満であった場合には、前記自己診断指示信号を送信せずに、前記複合機の緊急停止を解除するための緊急停止解除信号を送信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合機動作制御システム。
【請求項6】
前記管理サーバは、地震により故障していると判定した前記複合機のメンテナンスを行うためのサービスコールを、非地震時に前記管理サーバから前記複合機に提供されるメンテナンスより優先して、予め登録された宛先に発信することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合機動作制御システム。
【請求項7】
前記複合機は、表示部を備え、該表示部に、地震発生時における前記管理サーバによる制御の状況を表示させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合機動作制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90173(P2013−90173A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229399(P2011−229399)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】