説明

複合機能付きサポートの取付構造

【課題】サポートの取付作業性を良好にし得るとともに、サポートの必要強度を確保できるようにした、複合機能付きサポートの取付構造を提供する。
【解決手段】作業車における少なくとも前後何れかの端部に設けられる複合機能付きサポートの取付構造であって、複合機能付きサポート4は、単一のプレートに異なる用途に用いられる2つの穴42,43を設けたものを2セット使用し、各複合機能付きサポート4,4を、キャリヤフレーム2の前後何れかの端面における左右2箇所にそれぞれ取付けている一方、各複合機能付きサポート4,4は、キャリヤフレーム2部分のみで且つ該キャリヤフレーム2の底板22を含めた位置に溶接していることにより、サポート4の取付作業性を良好にし得るとともに、サポート取付部の必要強度を確保できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばクレーン車のような作業車の少なくとも前後何れかの端部に設けられる複合機能付きサポートの取付構造に関するものである。尚、本願で取り扱う複合機能付きサポートの主用途としては、クレーン車の吊荷フックを係止するためのフック係止ロープを連結したり、クレーン車をトレーラで搬送する際に該クレーン車をトレーラの荷台上に固定するための車両固定ロープを連結したりするためのものであるが、他の用途としては車両牽引用ロープを連結することもできるものである。
【0002】
又、本願の発明の名称は「複合機能付きサポートの取付構造」であるが、以下の説明では、本願の発明の名称を単に「サポート取付構造」ということがある。
【背景技術】
【0003】
図1には、ラフテレーンクレーンと称されるクレーン車Xを示しているが、このクレーン車Xは、車両1のキャリヤフレーム2上に旋回台11を設けている一方、該旋回台11にブーム12を伸縮及び起伏自在に取付けている。尚、ブーム12は、ブームに内蔵された伸縮シリンダで伸縮せしめられる一方、起伏シリンダ13で起伏せしめられる。
【0004】
又、このクレーン車Xには、キャリヤフレーム2の前後各端部位置にそれぞれアウトリガ3,3が左右向き姿勢で取付けられている。この各アウトリガ3,3は、例えば図3又は図4に示すように、アウトリガ外箱31の上面をキャリヤフレーム2の底板22下面に溶接により固着させている。
【0005】
尚、キャリヤフレーム2の底板22は、例えば図4又は図6に示すように、キャリヤフレーム2の左右各端部位置に所定小幅のものを2枚使用しているが、この各底板22,22は、キャリヤフレーム2の他の部分より板厚さが厚いもの(例えば板厚さが20mm以上)を使用しているので、高強度部材となるものである。
【0006】
そして、図1のクレーン車Xは、ブーム12を前方に向けて格納する形式のものであって、該クレーン車Xを走行させるときには、ブーム12を前方に倒伏させた格納状態において、ブーム先端部12aから吊下されている吊荷フック16をキャリヤフレーム2の前部20に装備したフック係止ロープ7に係止させることで該吊荷フック16を固定するようにしている。尚、フック係止ロープ7は、後述するように、そのロープ7の各端部をそれぞれ車両前部(例えばアウトリガ外箱やキャリヤフレーム前部)に取付けた左右一対の連結穴つきサポート(図4、図6参照)に連結することによって、該フック係止ロープ7の中間位置を吊荷フック16で係止し得るようになっている。そして、車両前部に取付けたフック係止ロープ7に吊荷フック16を係止した状態でウインチ14を巻上げる(ワイヤーロープ15を緊張させる)ことで、該吊荷フック16がグラつかない状態で保持している。
【0007】
他方、この種のクレーン車Xでは、作業現場が遠方の場合は、図2に示すようにトレーラYの荷台Ya上に載せて搬送することがあるが、このときクレーン車X(キャリヤフレーム2)の前後左右の4箇所をトレーラYの荷台Ya上にそれぞれ車両固定ロープ8(合計4本)で固定することが行われている。
【0008】
ところで、上記フック係止ロープ7の各端部や上記車両固定ロープ8の一方の端部をキャリヤフレーム2の端部(例えば前部20)に連結するには、該キャリヤフレーム端部(キャリヤフレーム前部20)にロープ連結穴付きのサポートを取付けておくが、当社ではこの種のサポート取付構造として、図3及び図4に示す第1従来例のものと、図5及び図6に示す第2従来例のものとをそれぞれ実施している。尚、第1従来例の図3及び第2従来例の図5は、それぞれ図2のA部付近(キャリヤフレーム前部20付近)の拡大相当図であり、又、図4は図3のIV矢視図であり、図6は図5のVI矢視図である。
【0009】
図3及び図4に示す第1従来例のサポート取付構造では、車両の前部に、フック係止ロープ7の各端部を連結するための左右一対のフック係止ロープ用サポート4A,4Aと、左右2本の車両固定ロープ8,8のそれぞれ一端部を連結するための左右一対の車両固定ロープ用サポート4B,4Bの、合計4つのサポートを使用している。これら4つの各サポート4A,4A、4B,4Bには、それぞれ各側のロープ端部を連結するための穴42(又は43)が1つずつ設けられている。尚、この場合、車両の後部側には、図2に示すように後部側の各車両固定ロープ8,8を連結するための左右2つの車両固定ロープ用サポートが設けられている。
【0010】
そして、この第1従来例のものでは、フック係止ロープ7用の2つのサポート4A,4Aは、図4に示すように、左右に所定間隔(例えば700mm間隔)を隔てた位置で、それぞれキャリヤフレーム2の底板22(前方突出部22a)とアウトリガ外箱31の前面部とに跨がってそれぞれ溶接により固定されている一方、車両固定ロープ8用の2つのサポート4B,4Bは、左右に所定間隔(例えば900mm間隔)を隔てた位置で、アウトリガ外箱31の底部付近にそれぞれ溶接により固定されている。
【0011】
ところが、図3及び図4に示す第1従来例のサポート取付構造では、4つの各サポート4A,4A、4B,4Bには、それぞれロープ連結穴(42又は43)が1つずつしか設けられていないので、車両前部に合計4つのサポート4A,4A、4B,4Bを取付ける必要がある。
【0012】
従って、この第1従来例(図3、図4)のサポート取付構造では、サポート個数が多くなることにより、部品点数、重量、溶接箇所(及び溶接量)、全体コスト、等の面で不利になる点が多々ある。
【0013】
図5及び図6に示す第2従来例のサポート取付構造では、上記第1従来例の問題点を改善するために、サポート4Cとして1つのプレート41に2つの穴(フック係止ロープ連結穴42と車両固定ロープ連結穴43)を設けたものを使用している。そして、この一対のサポート4C,4Cは、左右に所定間隔(例えば700mm間隔)を隔てた位置においてそれぞれキャリヤフレーム前部20の下部寄り位置20aとその下に左右向き姿勢で取付けられているアウトリガ外箱31の上部寄り位置31aとに跨がって溶接されている。又、このサポート4Cは、キャリヤフレーム2の底板22の前方突出部22a(高強度部分となる)にも溶接されている。
【0014】
この第2従来例(図5、図6)のサポート取付構造では、単一のプレート41に2つの穴42,43を設けたサポート4Cを使用していることにより、1つのサポート4Cでフック係止ロープ7の連結と車両固定ロープ8の連結とに利用できる(複合機能を有する)とともに、サポート4cをキャリヤフレーム前部20(底板22の前方突出部22aを含む)とアウトリガ外箱31とに跨がって溶接していることにより、該サポート4Cの取付強度を強くできるという機能もある。尚、このように、サポートをキャリヤフレーム底板とアウトリガ外箱とに跨がって溶接したものとして、例えば実公平6−40483号公報(特許文献1)のものがあるが、この特許文献1のものもサポートの取付強度を強くすることを1つの目的としている。
【0015】
ところで、上記第2従来例(図5、図6)のサポート取付構造では、次のような問題点を有している。
【0016】
まず、第2従来例(図5、図6)では、サポート4cをキャリヤフレーム前部20(底板22の前方突出部22aを含む)とその下のアウトリガ外箱31とに跨がって溶接しているが、この場合は、キャリヤフレーム2にアウトリガ外箱31を組付けた後でないとサポート4Cを取付ける(溶接する)ことができず、サポートの取付作業性が悪い。つまり、キャリヤフレーム2には、該キャリヤフレーム単体の状態で多数の部品が溶接されるが、サポート4Cの溶接を後回しにする必要がある。
【0017】
又、サポート4Cを両部材(キャリヤフレーム前部20とアウトリガ外箱31)に跨がって溶接する場合は、該両部材に対してサポート4Cの各部所をそれぞれ正確に接合させる必要があるが、そのためにはキャリヤフレーム2に対するアウトリガ外箱31の前後方向位置を高精度に位置決めする必要があり、アウトリガ外箱31の組付作業性が悪い。つまり、サポート4Cの溶接面は、キャリヤフレーム前面板20の下部(符号20a)、キャリヤフレーム底板22の前方突出部(符号22a)、アウトリガ外箱31の外面上部(符号31a)等に全面接触させることが望まれるが、キャリヤフレーム2に対するアウトリガ外箱31の取付位置に前後方向の誤差が生じると、該サポート4Cの溶接面の全長が相手側にうまく接触しなくなって、溶接がしにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】実公平6−40483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本願発明は、上記第2従来例(図5、図6)の問題点、即ち、サポートの取付作業性が悪いこと及びアウトリガ外箱の組付作業性が悪いことをそれぞれ改善し得るとともに、サポートの必要強度を確保できるようにした、複合機能付きサポートの取付構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、例えばクレーン車のような作業車における少なくとも前後何れかの端部に設けられる複合機能付きサポートの取付構造を対象にしたものである。尚、本願の以下の説明においても、本願の「複合機能付きサポートの取付構造」を単に「サポート取付構造」と表現することがある。
【0021】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明のサポート取付構造は、作業車における少なくとも前後何れかの端部に複合機能付きサポートを取付けたものである。尚、本願の以下の説明においては、「複合機能付きサポート」を単に「サポート」と表現することがある。
【0022】
複合機能付きサポート(サポート)は、単一のプレートに異なる用途に用いられる2つの穴を設けたものであり、本願のサポート取付構造では、このサポートを2セット使用している。
【0023】
そして、上記各サポートは、キャリヤフレームの前後何れかの端面における左右2箇所にそれぞれ取付けている。尚、この両サポートは、相互に同高さで且つキャリヤフレーム端面の左右幅中心から左右に同長さずつ離間した位置(両サポート間の間隔が例えば700mm程度)に取付けられる。
【0024】
又、この各サポートは、キャリヤフレーム部分のみで且つ該キャリヤフレームの底板を含めた位置に溶接している。
【0025】
このように、各サポートをキャリヤフレーム部分のみに溶接していると、アウトリガ外箱をキャリヤフレームに組付ける前に該各サポートをキャリヤフレームに溶接できる(キャリヤフレームに溶接される他の部材と同時期に各サポートを溶接できる)。
【0026】
他方、キャリヤフレームの底板には、一般に高強度の鋼板(肉厚が例えば20mm以上)が使用されており、各サポートをキャリヤフレームの底板(例えば底板端部の突出部)を含めた位置に溶接することで、該各サポートの取付強度を強くできる。
【0027】
本願で取り扱うサポート(複合機能付きサポート)の主用途としては、クレーン車の吊荷フックを係止するためのフック係止ロープを連結したり、クレーン車をトレーラで搬送する際に該クレーン車をトレーラの荷台上に固定するための車両固定ロープを連結したりするためのものであるが、他の用途としては車両牽引用ロープを連結することもできるものである。
【0028】
そして、この各複合機能付きサポートをフック係止ロープ連結用として使用するときには、両サポートにおける特定(第1)の各穴に該フック係止ロープの各端部を連結すれば、該フック係止ロープの中間位置に吊荷フックを係止することができる。尚、吊荷フックは、フック係止ロープに係止した状態でウインチの巻上げ(ワイヤーロープを緊張させる)により、静止状態で位置保持できる。
【0029】
ところで、この各複合機能付きサポートを車両固定ロープ連結用(例えばクレーン車をトレーラの荷台上に固定するときのロープ連結用)として使用するときには、クレーン車側の吊荷フックをフック係止ロープに係止した状態で行われる関係で、該フック係止ロープ連結用の各穴(第1の各穴)を車両固定ロープ連結用に使用することはできない。そして、この場合(車両固定ロープを連結する場合)は、両サポートにおける別(第2)の各穴にそれぞれ各車両固定ロープの一端を連結し、各車両固定ロープの各他端をそれぞれトレーラ荷台に固定した状態で、該各車両固定ロープをそれぞれ緊張させることにより、クレーン車をトレーラ荷台上に固定できる。尚、クレーン車をトレーラ荷台上に固定するには、この両サポートを取付けた側とは反対側の車両端部を別の車両固定ロープで固定しておく。
【0030】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1のサポート取付構造において、サポート(複合機能付きサポート)の一方の穴がキャリヤフレームの底板と略同高さに位置していることを特徴としている。
【0031】
ところで、キャリヤフレームの底板は、肉厚の鋼板が使用されていて高強度である。そして、サポートにおける一方の穴がキャリヤフレームの底板と略同高さに位置していると、該底板と略同高さに位置している穴に近接した取付部分が高強度になる。
【0032】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2のサポート取付構造において、各サポート(複合機能付きサポート)を取付けているキャリヤフレームの端面板の背面部に、左右に間隔をもった2枚の縦向き板を有した補強板を溶接しているとともに、各サポートを上記補強板の各縦向き板にそれぞれ近接させて配置していることを特徴としている。
【0033】
作業機の機種によっては、キャリヤフレーム内に補強板を設置したものがあるが、この請求項3では、該補強板として左右に間隔をもった2枚の縦向き板を有したものを使用している一方、該補強板の端面を、サポートが取付けられるキャリヤフレーム端面板の背面部(内面)に溶接している。このように、キャリヤフレーム端面板における補強板の端面が溶接された部分は高強度になる。
【0034】
そして、上記のように、左右の各サポートをキャリヤフレーム端面板(外面)における補強板の各縦向き板にそれぞれ近接させて配置していると、該各サポートの取付位置が高強度部分となる。
【発明の効果】
【0035】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1のサポート取付構造は、次のような効果がある。
【0036】
まず、各サポート(複合機能付きサポート)は、キャリヤフレーム部分のみに溶接しているので、該各サポートのキャリヤフレームへの取付(溶接)をアウトリガ外箱の組付前に行うことができる。つまり、キャリヤフレームには、多数の部材が溶接されているが、それらの部材の溶接と同時期にサポートも溶接することができるので、各サポートの取付作業性が良好となるという効果がある。
【0037】
又、各サポートをキャリヤフレームの底板(高強度部材である)を含めた位置に溶接しているので、サポートをキャリヤフレーム部分のみに溶接したものであっても、サポート取付部の必要強度が確保できるという効果がある。
【0038】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明では、上記請求項1のサポート取付構造において、サポートの一方の穴をキャリヤフレームの底板と略同高さに位置させている。尚、キャリヤフレームの底板は高強度部材であって、該高強度部材であるキャリヤフレーム底板と略同高さに位置している穴に近接した取付部分は高強度になる。
【0039】
従って、この請求項2のサポート取付構造では、サポートにおける一方(キャリヤフレーム底板と略同高さ)の穴に近接した取付部分が高強度になるので、上記請求項1の効果に加えて、該高強度の穴部分に連結されるロープを高張力で緊張させることができる(支持力が増加する)という効果がある。
【0040】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明では、上記請求項1又は2のサポート取付構造において、各サポートを取付けているキャリヤフレームの端面板の背面部に補強板を溶接しているとともに、各サポートを補強板の各縦向き板にそれぞれ近接させて配置している。尚、キャリヤフレームの端面板における補強板溶接付近は高強度であり、該高強度部分の近傍に各サポートを溶接していると、該各サポートの取付強度も強くできる。
【0041】
従って、この請求項3のサポート取付構造では、上記請求項1又は2の効果に加えて、各サポートが高強度部分に取付けられていることで、該各サポートを一層高強度に取付けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願のサポート取付構造に関連する吊荷フック係止状態でのクレーン車の説明図である。
【図2】図1のクレーン車をトレーラ上に載せて搬送する際の説明図である。
【図3】第1従来例のサポート取付構造で、図2のA部拡大相当図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】第2従来例のサポート取付構造で、図2のA部拡大相当図である。
【図6】図5のVI−VI矢視図である。
【図7】本願実施例のサポート取付構造であって、図2のA部拡大相当図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢視図である。
【図9】図7のサポート取付状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[実施例]
以下、図7〜図9(図1及び図2を併用)を参照して本願実施例の複合機能付きサポートの取付構造を説明する。尚、本願実施例でも、「複合機能付きサポートの取付構造」を単に「サポート取付構造」と表現することがある一方、「複合機能付きサポート」を単に「サポート」と表現することがある。
【0044】
図7〜図9に示す本願実施例のサポート取付構造は、図1に示すクレーン車Xのキャリヤフレーム2の前部20(図2の符号A部分)に採用されたものである。尚、以下の説明では、キャリヤフレーム2の前部20を前面板ということがある。
【0045】
図1に示すクレーン車Xの概略については、上記「背景技術」の項でも説明しているが、ここでも該クレーン車Xについて説明しておく。
【0046】
即ち、図1のクレーン車Xは、車両1のキャリヤフレーム2上に旋回台11を設けている一方、該旋回台11にブーム12を伸縮及び起伏自在に取付けている。又、このクレーン車Xには、キャリヤフレーム2の前後各端部位置にそれぞれアウトリガ3,3が左右向き姿勢で取付けられている。この各アウトリガ3,3は、例えば図7及び図8に示すように、アウトリガ外箱31の上面をキャリヤフレーム2の底板22下面に溶接により固着させている。
【0047】
キャリヤフレーム2の前部寄り部分は、それぞれ鋼板製で、上板21と、該上板21に連続する前面板20と、左右の側板23,23と、底板22とを箱状に溶接したものである。
【0048】
キャリヤフレーム2の底板22は、図8〜図9に示すように、キャリヤフレーム2の左右各端部位置に所定小幅のものを2枚使用しているが、この各底板22,22は、キャリヤフレーム2の他の部分(前面板20、上板21、側板23等)より板厚さが厚いもの(例えば底板厚さが20mm以上)を使用している。従って、この各底板22,22は、高強度部材となるものである。又、この各底板22,22の前端部は、図7及び図9に符号22aで示すように、前面板20の下端との溶接代を確保するために該前面板20より所定小幅(例えば10mm程度)だけ前方に突出させている。尚、以下の説明では、符号22aの突出部分を前方突出部ということがある。
【0049】
又、この実施例では、図7〜図9に示すように、キャリヤフレーム2の内部にトンネル状の補強板25を設置している。この補強板25は、左右に所定間隔(例えば680mm間隔)をもった2枚の縦向き板26,26の上部を連結板27で連結したものである。そして、この補強板25は、左右の縦向き板26,26の各下端部をそれぞれ左右の各底板22,22の各内側端面に溶接しているとともに、該補強板25の前端面25aをキャリヤフレーム前面板20の背面部に溶接している。
【0050】
このように、キャリヤフレーム2の前面板20の背面に補強板25の前端面25aを溶接していると、該キャリヤフレーム前面板20を該補強板25で補強できる。
【0051】
ところで、このクレーン車Xを走行させるときには、図1に示すブーム格納状態において、ブーム先端部12aから吊下されている吊荷フック16をキャリヤフレーム2の前部20(キャリヤフレーム後部の場合もある)に装備したフック係止ロープ7に係止させることで該吊荷フック16を固定するようにしている。
【0052】
他方、この種のクレーン車Xでは、作業現場が遠方の場合は、図2に示すようにトレーラYの荷台Ya上に載せて搬送することがあるが、このときクレーン車X(キャリヤフレーム2)の前後左右の4箇所をトレーラYの荷台Ya上にそれぞれ車両固定ロープ8(合計4本)で固定することが行われている。
【0053】
次に、図7〜図9に示す本願実施例のサポート取付構造について説明すると、この実施例のサポート取付構造でも、図5〜図6に示す第2従来例のサポート4Cと同様に、単一のプレート(鋼板製)41に2つの穴(フック係止ロープ7の連結穴42と車両固定ロープ8の連結穴43)を設けたサポート4を2つ使用している。
【0054】
この実施例のサポート4に使用されているプレート41の大きさ及び形状は、特に限定するものではないが、高さが220mm程度、厚さが25mm程度で、図7及び図9に示す形状に加工されたものである。
【0055】
このサポート4では、フック係止ロープ7の連結穴42がプレート41の上部寄りに位置している一方、車両固定ロープ8の連結穴43がプレート41の下部寄りに位置している。又、各サポート4,4(プレート41,41)は、図7及び図9における左端面41aが溶接部分となるが、この各サポート4,4は、キャリヤフレーム2の前部(前面板)20と底板22(前方突出部22a)とに跨がって溶接される関係で、プレート41の溶接部分41aの下端寄り位置にはキャリヤフレーム底板22の前方突出部22aを嵌入させるための凹部41bが形成されている。
【0056】
そして、この2つのサポート4,4は、キャリヤフレーム2の前部(前面板)20における左右に所定間隔(例えば700mm程度の間隔)をもたせた各位置において、図7及び図9に示すようにプレート41の左端面41aをキャリヤフレーム2の前部(前面板)20と底板2の前方突出部22aとに跨がってそれぞれ溶接している。その際、各サポート4,4は、プレート41の左端面(溶接部分)41aの下部寄りに設けている凹部41bを底板22の前方突出部22aに嵌合させた状態で、該凹部41bと前方突出部22aとの嵌合部分を含めて溶接している。つまり、各サポート4,4は、キャリヤフレーム2部分のみで且つ該キャリヤフレーム2の底板22を含めた位置に溶接している。
【0057】
又、この実施例のサポート取付構造では、各サポート4,4の取付状態において、図7〜図9に示すようにプレート41の一方(下側)の穴43がキャリヤフレーム2の底板22と略同高さに位置している。尚、この実施例では、プレート41の下側の穴43は、車両固定ロープ8の連結穴となる。
【0058】
ところで、キャリヤフレーム2の底板22は、肉厚の鋼板が使用されているので高強度であり、サポート4における一方の穴(車両固定ロープ連結穴)43がキャリヤフレーム2の底板22と略同高さに位置していると、該底板22と略同高さに位置している穴に近接した取付部分が高強度になる。
【0059】
又、この実施例のサポート取付構造では、各サポート4,4は、キャリヤフレーム前面板20における補強板25の各縦向き板26,26にそれぞれ近接させた位置に配置している。尚、キャリヤフレーム前面板20における補強板25の各縦向き板26,26に近接する位置は、各縦向き板26,26が裏当て材となるので高強度になる。
【0060】
図7〜図9に示す実施例のサポート取付構造(両サポート4,4)の主用途は、図1に示すようにクレーン車Xを走行させるときに吊荷フック16を係止するためのフック係止ロープ7を連結したり、図2に示すようにクレーン車XをトレーラYで搬送する際に該クレーン車XをトレーラYの荷台Ya上に固定するための車両固定ロープ8を連結したりするためのものである。
【0061】
そして、各サポート4,4をフック係止ロープ7の連結用として使用するときには、両サポート4,4における第1(上側)の各穴42,42にフック係止ロープ7の各端部をそれぞれ連結すれば、該フック係止ロープ7の中間位置に吊荷フック16を係止することができる。尚、吊荷フック16は、フック係止ロープ7に係止した状態でウインチ14の巻上げ(ワイヤーロープ15を緊張させる)により、静止状態で位置保持できる。
【0062】
他方、図2に示すように、クレーン車XをトレーラYの荷台Ya上に載せて搬送するときには、該クレーン車Xのキャリヤフレーム2の前後左右の四隅付近をそれぞれ車両固定ロープ8(合計4本)でトレーラ荷台Ya側に引っ張るが、その場合には図8に示すようにキャリヤフレーム前部20側の左右各サポート4,4の第2(下側)の各穴42,42にそれぞれ車両固定ロープ8,8の端部を連結して、該各車両固定ロープ8,8を下方に緊張させる。又、キャリヤフレーム2の後部側は、図2に示すように別の車両固定ロープ8(左右2本)でそれぞれ下方に引っ張るが、図1及び図2のクレーン車Xでは、ブーム12を前方に向けて格納する形式なので、キャリヤフレーム2の後部側には、フック係止ロープ用のサポートは不要である。
【0063】
ところで、上記実施例(図7〜図9)のサポート取付構造では、次のような機能(効果)がある。
【0064】
まず、本願請求項1に対応するものとして、各サポート4,4は、キャリヤフレーム2部分のみに溶接しているので、各サポート4,4のキャリヤフレーム2への取付(溶接)をアウトリガ外箱31の組付前に行うことができる。つまり、キャリヤフレーム2には、多数の部材が溶接されているが、それらの部材の溶接と同時期にサポート4も溶接することができるので、各サポート4,4の取付作業性が良好となる。
【0065】
又、各サポート4,4をキャリヤフレーム2の底板22の前方突出部22a(高強度部材である)を含めた位置に溶接しているので、サポート4をキャリヤフレーム2部分のみに溶接したものであっても、サポート取付部の必要強度が確保できる。
【0066】
次に、本願請求項2に対応するものとして、サポート4における下側の穴(車両固定ロープの連結穴)43がキャリヤフレーム2の底板22(高強度部材である)と略同高さに位置しているので、該底板22と略同高さに位置している穴43に近接した取付部分が高強度になる。従って、該下側の穴43に連結される車両固定ロープ8を強く緊張させることができる(車両に対する固定力を増大させることができる)。
【0067】
又、本願請求項3に対応するものとして、各サポート4,4を取付けているキャリヤフレーム2の前面板20の背面部に補強板25を溶接しているとともに、各サポート4,4を補強板25の各縦向き板26,26にそれぞれ近接させて配置している。尚、キャリヤフレーム2の前面板20における各縦向き板26,26の溶接付近は高強度であり、該高強度部分の近傍に各サポート4,4を溶接していると、該各サポート4,4の取付強度も強くできる。従って、各サポート4,4が高強度部分に取付けられていることで、該各サポート4,4を一層高強度に取付けることができる。
【0068】
尚、上記の実施例では、サポート4の2つの穴42,43をフック係止ロープ連結穴と車両固定ロープ連結穴として利用しているが、該穴42,43の他の用途としては車両牽引用ロープを連結することもできるものである。
【符号の説明】
【0069】
1は車両、2はキャリヤフレーム、3はアウトリガ、4はサポート、7はフック係止ロープ、8は車両固定ロープ、16は吊荷フック、20は前部(又は前面板)、22は底板、22aは前方突出部、31はアウトリガ外箱、41はプレート、42は穴(フック係止ロープ連結穴)、43は穴(車両固定ロープ連結穴)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車における少なくとも前後何れかの端部に設けられる複合機能付きサポートの取付構造であって、
上記複合機能付きサポートは、単一のプレートに異なる用途に用いられる2つの穴を設けたものを2セット使用し、
上記各複合機能付きサポートを、キャリヤフレームの前後何れかの端面における左右2箇所にそれぞれ取付けている一方、
上記各複合機能付きサポートは、上記キャリヤフレーム部分のみで且つ該キャリヤフレームの底板を含めた位置に溶接している、
ことを特徴とする複合機能付きサポートの取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記複合機能付きサポートの一方の穴が上記キャリヤフレームの底板と略同高さに位置している、
ことを特徴とする複合機能付きサポートの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記各複合機能付きサポートを取付けている上記キャリヤフレームの端面板の背面部に、左右に間隔をもった2枚の縦向き板を有した補強板を溶接しているとともに、
上記各複合機能付きサポートを上記補強板の各縦向き板にそれぞれ近接させて配置している、
ことを特徴とする複合機能付きサポートの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−71695(P2013−71695A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213740(P2011−213740)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)