説明

複合機

【課題】入力作業の手間を軽減する。
【解決手段】複合機100は、利用者によって電子ペーパEが載置される原稿トレイ21と、利用者によって電子ペーパEが載置される手差トレイ82と、原稿トレイ21に載置されている状態の電子ペーパEから無線通信にて画像データを読み取る第1通信装置123と、手差トレイ82に載置されている状態の電子ペーパEに対して無線通信にて画像データを記録する第2通信装置133とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパ、電子ブック端末、スマートフォン、携帯情報端末等の画像表示を行う携帯型表示媒体との間で無線通信を行うことの可能な複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原稿自動搬送装置の原稿テーブル(原稿トレイ)に原稿が載置された場合、当該原稿を搬送路に送り込んで搬送路内の所定位置で原稿の画像を光学的に読み取り、前記原稿テーブルに電子ペーパが載置された場合、当該電子ペーパを搬送路に送り込んで搬送路内の所定位置で電子ペーパに記録されている電子データを無線通信によって読み取る画像読取装置が提案されている。また、特許文献2には、給紙トレイまたは手差トレイに載置されている用紙を搬送路に送り込んで搬送路内の印刷位置にて前記用紙に画像を記録(印刷)し、前記給紙トレイまたは前記手差トレイに載置されている電子ペーパを搬送路に送り込んで搬送路内の記録位置において無線通信によって前記電子ペーパに画像を記録することの可能な画像形成装置が提案されている。
【0003】
しかし、電子ペーパは、柔軟性があるもののプラスチック製であるため、搬送路にて詰まり易く、また、詰まった時に破損する可能性が高いという問題がある。例えば、搬送路のアールの小さな箇所において、プラスチック製の電子ペーパは詰まり易い。そして、電子ペーパは、プラスチック製であるため、詰まると紙媒体よりも破損しやすい。また、定着装置近傍にて電子ペーパが詰まると、定着装置の熱によって電子ペーパの回路が損傷してしまう。
【0004】
さらに、電子ペーパが搬送路にて詰まってしまうと、画像形成装置自体が破損することがあるという問題も生じる。例えば、電子ペーパと用紙とを同じ搬送路にて搬送するようになっている画像形成装置の場合、プラスチック製の電子ペーパが定着装置近傍で詰まってしまうと、電子ペーパが搬送ガイドに融着してしまい、搬送ガイドが破損する。また、搬送路に詰まっている用紙を除去するために当該用紙を無理に引っ張っても当該用紙が破れるだけで装置本体が破損することは殆どなかったが、搬送路に詰まっている電子ペーパを除去するために当該電子ペーパを無理に引っ張ると、この電子ペーパによって搬送路のガイドや用紙通過検出用センサ等が傷つき破損するという問題もある。
【0005】
これに対し、特許文献3、4は、画像形成装置の内部に無線通信装置を備え、画像形成装置の外部において当該画像形成装置に近接している電子ペーパと無線接続し、この電子ペーパに対して無線通信によって画像を記録する構成が開示されている。この構成によれば、電子ペーパを搬送路内にて搬送させる必要が無いため、以上の問題が生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−124722号公報
【特許文献2】特開2008−192089号公報
【特許文献3】特開2006−041759号公報
【特許文献4】特開2007−300654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3、4の画像形成装置は、電子ペーパへ画像を記録するものであり、電子ペーパから画像データを読み取るジョブを行うものではないが、電子ペーパに対して画像を記録する機能と電子ペーパから画像データを読み取る機能との両方を備えることも可能である。
【0008】
しかし、近接する電子ペーパと無線接続するようになっている特許文献3、4のような画像形成装置において、電子ペーパに対して画像を記録する機能と電子ペーパから画像データを読み取る機能との両方を備える場合、下記の課題が生じる。この場合、画像形成装置に対して電子ペーパを近づけると、画像形成装置の無線通信装置と電子ペーパとが無線接続されるが、利用者は、画像形成装置のジョブ開始ボタン(スタートボタン)を押す前に、画像形成装置に実行させるジョブの種類を選択するための選択コマンドを入力しなければならず、コマンド入力の手間が増えるという課題がある。つまり、電子ペーパに対して画像を記録するジョブを行う場合、ジョブ開始ボタンを押す前に、記録ジョブモードを選択する選択コマンドを入力する必要があり、電子ペーパから画像データを読み出す場合、ジョブ開始ボタンを押す前に、読取ジョブモードを選択する選択コマンドを入力する必要がある。
【0009】
本発明は、電子ペーパ等の携帯型表示媒体との間で無線通信を行うことが可能であって、携帯型表示媒体への画像の記録処理および携帯型表示媒体からの画像データの読取処理の両方を行うことの可能な複合機において、利用者のコマンド入力の手間を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、用紙へ画像を印刷する印刷処理と、撮像素子によって原稿から画像を読み取る第1読取処理とを行うものであり、さらに、画像を表示するものであって当該画像の画像データを無線通信にて受信且つ送信可能になっている携帯型表示媒体との間で無線通信を行う複合機において、利用者によって前記携帯型表示媒体が載置される読取用載置部と、前記読取用載置部とは異なる位置にあり、利用者によって前記携帯型表示媒体が載置される記録用載置部と、前記読取用載置部に載置されている状態の携帯型表示媒体から無線通信にて画像データを読み取る第2読取処理を実行する読取用通信装置と、前記記録用載置部に載置されている状態の携帯型表示媒体に対して無線通信にて画像データを記録する記録処理を実行する記録用通信装置とを備えることを特徴とする。本発明の構成によれば、読取用載置部に携帯型表示媒体が載置されれば前記第2読取処理が実行可能になり、記録用載置部に携帯型表示媒体が載置されれば前記記録処理が実行可能になる。つまり、本発明の構成によれば、携帯型表示媒体に対して実行される処理内容が携帯型表示媒体の載置する位置に応じて決められているため、前記処理内容を選択するための選択コマンド(第2読取処理および記録処理のいずれかを選択するためのコマンド)を別途利用者から受け付ける必要がない。言い換えると、利用者からすれば、所望する処理内容に対応する載置部に携帯型表示媒体を載置するだけで処理内容を選択したことになるため、前記選択コマンドを入力する工程が不要になる。よって、本願発明の構成によれば、第2読取処理および記録処理の両方を実行できる複合機において入力作業の手間を軽減することができるという効果を奏する。
【0011】
なお、前記の携帯型表示媒体としては、無線通信の可能な電子ペーパ、電子ブック端末、スマートフォン、携帯情報端末が挙げられる。
【0012】
また、本発明の複合機は、前記構成に加えて、前記読取用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると前記複合機を読取モードに移行させ、前記記録用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると前記複合機を記録モードに移行させるモード制御部を備え、前記読取モードとは、前記複合機が前記第2読取処理の開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると前記読取用通信装置が第2読取処理を実行するようになっているモードであり、前記記録モードとは、前記複合機が前記記録処理の開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると前記記録用通信装置が前記記録処理を実行するようになっているモードであってもよい。この構成によれば、前記第2読取処理または前記記録処理を行う場合の利用者の作業手順は、処理内容に応じて決められた載置部に携帯型表示媒体を載置し、処理開始タイミングにて処理開始の指示を入力するという手順になり、決められた載置場所に原稿または用紙を載置して処理開始の指示を入力するという通常のジョブ(原稿読取または印刷)を行う場合の作業手順と類似することになる。それゆえ、前記構成によれば、利用者にとって使い勝手が良いというメリットがある。
【0013】
さらに、本発明の複合機において、前記読取用通信装置は、前記読取用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると、前記携帯型表示媒体の識別情報を前記携帯型表示媒体から読み出すようになっており、前記記録用通信装置は、前記記録用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると、前記携帯型表示媒体の識別情報を前記携帯型表示媒体から読み出すようになっており、前記モード制御部は、前記読取用通信装置が前記識別情報を読み出した場合に前記複合機を前記読取モードに移行させるようになっており、前記記録用通信装置が前記識別情報を読み出した場合に前記複合機を前記記録モードに移行させるようになっていてもよい。この構成によれば、前記モード制御部は、前記読取用通信装置が前記識別情報を読み出した事をもって原稿トレイに携帯型表示媒体が載置された事を認識し、複合機を前記読取モードに移行させ、前記記録用通信装置が前記識別情報を読み出した事をもって用紙トレイに携帯型表示媒体が載置された事を認識し、複合機を前記記録モードに移行させるようになっている。それゆえ、原稿トレイまたは用紙トレイに携帯型表示媒体が載置されていないのに読取モードや記録モードに移行してしまうといった事態を抑制できる。
【0014】
また、本発明は、前記構成に加えて、利用者によって前記原稿が載置される原稿トレイと、前記原稿トレイの原稿を所定の原稿搬送路に送り込み且つ前記原稿搬送路において前記原稿を搬送する原稿搬送部とを有しており、前記原稿搬送路において搬送されている状態の原稿に対して前記第1読取処理を行う原稿読取装置と、利用者によって前記用紙が載置される用紙トレイと、前記用紙トレイの用紙を所定の用紙搬送路に送り込み且つ前記用紙搬送路において前記用紙を搬送する用紙搬送部とを有しており、前記用紙搬送路において搬送されている状態の用紙に対して前記印刷処理を行う印刷装置とを備え、前記原稿トレイは前記読取用載置部として流用され、前記用紙トレイは前記記録用載置部として流用される構成であってもよい。この構成によれば、第2読取処理で用いられる携帯型表示媒体は第1読取処理で用いられる原稿を載置するための原稿トレイに載置するようになっており、画像書込の一形態である前記記録処理に用いられる携帯型表示媒体は画像書込の別の一形態である印刷処理にて用いられる用紙を載置するための用紙トレイに載置するようになっている。つまり、本願発明の構成によれば、読取処理に利用される媒体を原稿トレイに載置させ、画像書込に利用される媒体を用紙トレイに載置させており、処理の種類毎に媒体の載置場所を共通化していることになる。したがって、利用者からすれば、携帯型表示媒体の載置場所が分かり易く、使い勝手が良いという利点がある。
【0015】
さらに、本発明は、前記構成に加えて、前記原稿搬送部および前記用紙搬送部を制御する搬送制御部を備え、前記搬送制御部は、前記読取モードでは前記原稿搬送部を動作させず、前記記録モードでは前記用紙搬送部を動作させない構成であってもよい。この構成によれば、原稿トレイに載置された携帯型表示媒体が原稿搬送路に送り込まれる事態、および、用紙トレイに載置された携帯型表示媒体が用紙搬送路に送り込まれるという事態を抑制できるため、原稿搬送路や用紙搬送路にて携帯型表示媒体が詰まってガイドやセンサ等が傷つき破損するという問題の発生を抑制できる。
【0016】
また、原稿トレイ上における携帯型表示媒体の置き方によっては、読取用通信装置と前記携帯型表示媒体とが無線接続せずに、前記携帯型表示媒体から識別情報を読み出せないケースがある(例えば、携帯型表示媒体を原稿トレイに差し込む際の差込方向が決められており、決められた差込方向に従って差し込まないと無線接続しないようになっている構成において、差込方向と逆向きで差し込んでしまったような場合)。このケースでは、原稿トレイ上に携帯型表示媒体が載置されていても読取モードに移行しないという事態が生じることになる。そして、原稿トレイ上に携帯型表示媒体が載置されていても読取モードに移行しない場合、前記携帯型表示媒体が原稿トレイに載置されているにも拘わらず原稿搬送部が誤って駆動し、前記携帯型表示媒体が前記原稿搬送路に送り込まれてしまうという不都合が生じる虞がある。そこで、本発明の複合機は、前記構成に加えて、表示部と、前記原稿トレイ上の載置物から反射する反射光に応じて、前記載置物が紙媒体であるか否かを示す信号を出力する第1反射型センサと、前記載置物が紙媒体でないことを示す信号が前記第1反射型センサから出力され、且つ、読取用通信装置が前記載置物から前記識別情報を読み出せない場合、前記表示部にエラーを示す画像を表示する第1表示制御部とを備えていてもよい。これにより、原稿トレイ上に携帯型表示媒体が載置されている状況で前記携帯型表示媒体から識別情報を読み出せずに読取モードに移行できない場合、その旨を利用者に知らせることができるため、前記の不都合の発生を抑制できる。
【0017】
また、用紙トレイ上における携帯型表示媒体の置き方によっては、記録用通信装置と前記携帯型表示媒体とが無線接続せずに、前記携帯型表示媒体から識別情報を読み出せないケースがある(例えば、携帯型表示媒体を用紙トレイに差し込む際の差込方向が決められており、決められた差込方向に従って差し込まないと無線接続しないようになっている構成において、差込方向と逆向きで差し込んでしまったような場合)。このケースでは、用紙トレイ上に携帯型表示媒体が載置されていても記録モードに移行しないという事態が生じることになる。そして、用紙トレイ上に携帯型表示媒体が載置されていても記録モードに移行しない場合、前記携帯型表示媒体が用紙トレイに載置されているにも拘わらず用紙搬送部が誤って駆動し、前記携帯型表示媒体が前記用紙搬送路に送り込まれてしまうという不都合が生じる虞がある。そこで、本発明の複合機は、前記構成に加えて、表示部と、前記用紙トレイ上の載置物から反射する反射光に応じて、前記載置物が紙媒体であるか否かを示す信号を出力する第2反射型センサと、前記載置物が紙媒体でないことを示す信号が前記第2反射型センサから出力され、且つ、読取用通信装置が前記載置物から前記識別情報を読み出せない場合、前記表示部にエラーを示す画像を表示する第2表示制御部とを備えていてもよい。これにより、用紙トレイ上に携帯型表示媒体が載置されている状況で前記携帯型表示媒体から識別情報を読み出せずに読取モードに移行できない場合、その旨を利用者に知らせることができるため、前記の不都合の発生を抑制できる。
【0018】
さらに、本発明は、前記構成に加えて、表示部と、前記複合機が前記読取モードに移行すると、前記第2読取処理の実行を利用者に予告する画像を前記表示部に表示させ、前記複合機が前記記録モードに移行すると、前記記録処理の実行を利用者に予告する画像を前記表示部に表示させる第3表示制御部とを備えていてもよい。この構成によれば、前記読取モードまたは前記記録モードにおいて、前記指示入力キーを押した場合に実行される処理内容(第2読取処理または記録処理)を利用者に予告できるため、利用者によって意図しない処理が実行されることを抑制できるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明の複合機は、前記構成に加えて、前記印刷処理の開始指示を受け付けるためのキーであり、且つ、前記第1読取処理の開始指示を受け付けるためのキーでもある指示入力キーを備え、前記指示入力キーは、前記読取モードでは、前記第2読取処理の開始指示を受け付けるためのキーとして機能し、前記記録モードでは、前記記録処理の開始指示を受け付けるためのキーとして機能するものであってもよい。この構成によれば、印刷処理、記録処理、第1読取処理、第2読取処理において、処理開始の指示を入力するためのキーが共用されることになる。したがって、記録処理または第2読取処理における作業手順は通常のジョブ(原稿読取または印刷)を行う場合の作業手順により類似することになり、利用者にとって使い勝手が良いというメリットがある。
【0020】
さらに、本発明の複合機は、前記構成に加えて、前記読取用載置部に第1携帯型表示媒体が載置され且つ前記記録用載置部に第2携帯型表示媒体が載置されている場合、前記複合機を表示媒体複写モードに移行させるモード制御部を備え、前記表示媒体複写モードとは、前記複合機が表示媒体複写ジョブの開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると前記表示媒体複写ジョブが行われるようになっているモードであり、前記表示媒体複写ジョブとは、前記読取用通信装置が前記第1携帯型表示媒体から画像データを読み取る処理と、第1携帯型表示媒体から読み取られた画像データを前記記録用通信装置が前記第2携帯型表示媒体に記録する処理とを含むジョブであってもよい。この構成によれば、前記読取用載置部に載置される第1携帯型表示媒体に記録されている画像を、前記記録用載置部に載置される第2携帯型表示媒体に複写することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、携帯型表示媒体への画像の記録処理および携帯型表示媒体からの画像データの読取処理の両方を行うことの可能な複合機において、利用者のコマンド入力の手間を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の複合機の内部構成を示す図である。
【図2】図1の複合機に設けられる画像読取装置を示す図である。
【図3】図1の複合機の手差トレイを示す図である。
【図4】本実施形態の複合機にて用いられる電子ペーパが備える各ハードウェアを示したブロック図である。
【図5】図1の複合機が備える各ハードウェアを示す機能ブロック図である。
【図6】本実施形態の複合機が有する制御部の処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】図6におけるS7のサブルーチンである。
【図8】図6におけるS8のサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の一形態について図に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1は、本実施形態の複合機の構成例を示す図である。複合機100は、紙製の原稿から光学的に画像を読み取る処理を行う画像読取装置90と用紙に対して画像を印刷する画像形成装置110とを有する。
【0024】
さらに、本実施形態の複合機100には、無線通信によって電子ペーパから画像データを読み取る第1通信装置123(図2参照)と、無線通信によって電子ペーパに画像を記録する第2通信装置133(図3参照)とが設置されている。
【0025】
(画像読取装置について)
本実施形態の画像読取装置(原稿読取装置)90は、図2に示すように、原稿台92と、原稿台92の上側に配される原稿自動搬送装置120と、原稿台92の下側に配されており撮像素子によって画像データを読み取るスキャナ部191とを有している。すなわち、画像読取装置90は、原稿自動搬送装置120にて搬送されている状態の原稿から撮像素子によって画像を読み取る処理(第1読取処理)と、原稿台92上に載置されている状態の原稿から撮像素子によって画像を読み取る処理(第1読取処理)とを実行可能な装置である。なお、画像読取装置90にて生成された画像データは、複写ジョブにおいて画像形成装置110に入力し、ファイリングジョブにおいて所定の画像ファイル(例えばPDFファイル)に変換された上で所定のアドレスに格納されるようになっている。
【0026】
原稿台92は、少なくとも原稿を載置可能な広さを有するガラスである。スキャナ部191は、原稿台92に載置されている原稿の画像、または、原稿自動搬送装置120にて搬送され且つ所定位置Pを通過する原稿の画像を原稿台92の下側から光学的に読み取るものである。
【0027】
原稿自動搬送装置(ADF;Automatic Document Feeder)120は、原稿台92の上に自動で原稿を搬送する。また、原稿自動搬送装置120は矢印M方向に回動自在に構成され、原稿台92を開放することにより、原稿を原稿台92に手で載置できるようになっている。
【0028】
原稿自動搬送装置120は、搬送前の原稿を載置する原稿トレイ21と、スキャナ部191によって画像が読み取られた後の原稿が載置される第1排紙トレイ22と、原稿搬送経路23とを有する。原稿搬送経路(原稿搬送路)23は、原稿トレイ21の原稿が所定位置Pを経由して第1排紙トレイ22に至るように形成されている。また、原稿自動搬送装置120には、原稿搬送経路23に沿って、搬送方向上流側から順に、ピックアップローラ24、捌きローラ25、レジストローラ対27、搬送ローラ対28、排紙ローラ対29、切替ゲート34が配置されている。
【0029】
スキャナ部191は、光源、ミラー、結像レンズ、撮像素子(例えばCCDラインセンサ)を含む光学系である。このスキャナ部191においては、原稿からの反射光が撮像素子に入力され、この撮像素子が前記反射光に基づいて前記原稿の画像を示す画像データを出力するようになっている。
【0030】
以下、原稿台92上に載置されている状態の原稿から画像を読み取る際の動作を説明する。まず、利用者は、原稿自動搬送装置120を回動させて原稿台92を開放し、原稿台92上に原稿を載置する。その後、利用者は、原稿自動搬送装置120を回動させて原稿台92を閉じ、ジョブ開始キー(不図示)を押すことで原稿読取開始コマンドを入力する。この入力によって、スキャナ部191は、原稿台92の下側にて走査を開始し、原稿台92の原稿の画像を読み取るようになっている。
【0031】
つぎに、原稿自動搬送装置120を用いて原稿の読み取る際の動作について説明する。まず、原稿を片面だけ読み取る場合について説明する。はじめに、利用者は、原稿トレイ21に原稿を載置する。つぎに、利用者は、ジョブ開始キーを押すことによって原稿読取開始コマンドを複合機100に入力する。この入力があると、ピックアップローラ24および捌きローラ25によって、原稿トレイ21の原稿を送りだし、原稿搬送経路23において搬送されることになる。捌きローラ25に送り出された原稿は、レジストローラ対27に当接した状態で一旦停止する。ここで、一旦停止するのは、所定位置Pに原稿を送り出すタイミングを調整するためである。そして、所定位置Pに原稿を送り出すタイミングになると、レジストローラ対27が駆動し、所定位置Pに向けて原稿が搬送される。さらに、所定位置Pにおいて、原稿は、原稿台92に当接しながら搬送し、スキャナ部191によってその画像が読み取られる。所定位置Pを通過した原稿は、搬送ローラ対28を経て、排紙ローラ対29によって外部に排出される。ここで、排紙ローラ対29近傍の切換えゲート34は上向きに切換えられており(図2の点線)、排紙ローラ対29から排出される原稿は、切換えゲート34の下面に当接することによって第1排紙トレイ22に案内される。
【0032】
つぎに、原稿の両面を読み取る場合について説明する。原稿の両面を読み取る場合、上述の片面読取時と同様の動作により、先ず、原稿の表面がスキャナ部191によって読み取られ、当該原稿は排紙ローラ対29の配置位置まで搬送される。そして、排紙ローラ対29は、搬送されてきた原稿を、第1排紙トレイ22側ではなく、中間トレイ33側に送り出す。つまり、両面読取時において切換えゲート34は下向きに切換えられており(図2の実線)、排紙ローラ対29から排出される原稿は、切換えゲート34の上面に当接することによって中間トレイ33の方向に案内される。但し、この場合、排紙ローラ対29は原稿を完全に排出せず、原稿をニップしたまま反転し、原稿を反転搬送経路35へ送り出す。こうして反転搬送経路35に送り出された原稿は、再び原稿搬送経路23から所定位置Pへ送られ、裏面の読み取りが終了した後、排紙ローラ対29によって第1排紙トレイ22に排出されることになる。
【0033】
(画像形成装置について)
つぎに、画像形成装置について図1に基づいて説明する。画像形成装置(印刷装置)110は、電子写真方式のカラープリンタであって、LAN等にて接続されている外部端末から送られてくる画像データに基づく画像を用紙へ印刷するプリントジョブと、画像読取装置90にて生成された画像データの画像を用紙へ印刷する複写ジョブとを実行可能な装置である。
【0034】
画像形成装置110において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。したがって、各色に応じた4種類の潜像が形成されるように、現像器2、感光体ドラム3、帯電器5、クリーナユニット4からなる画像形成ステーションが4個設置されている。つまり、画像形成装置110には、ブラック画像用の画像形成ステーションと、シアン画像用の画像形成ステーションと、イエロー画像用の画像形成ステーションと、マゼンタ画像用の画像形成ステーションとが設けられている。
【0035】
帯電器(帯電手段)5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電ローラである。なお、帯電器5としては、図1に示すようなローラ型の他、ブラシ型が用いられてもよい。また、ローラ型やブラシ型のような接触方式の帯電器ではなく、無線方式の帯電器が用いられてもよい。
【0036】
露光ユニット1は、レーザ出射部(レーザ光源)と、レーザ出射部から放たれたレーザビームを走査するポリゴンミラーと、ポリゴンミラーによって走査されたレーザ光を感光体ドラム3に導くレンズおよび反射ミラー(光学部材)とを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)である。なお、発光素子をアレイ状に並べたELやLED書込みヘッドを露光ユニットとして設置してもよい。
【0037】
露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3を、入力された画像データに応じて露光することにより、その表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有する。現像器2は、感光体ドラム3上に形成された静電潜像を現像器2内のトナーによって現像(顕像化)するものである。なお、ブラック画像用の画像形成ステーションの現像器2ではブラックトナーによって現像が行われ、シアン画像用の画像形成ステーションの現像器2ではシアントナーによって現像が行われ、イエロー画像用の画像形成ステーションの現像器2ではイエロートナーによって現像が行われ、マゼンタ画像用の画像形成ステーションの現像器2ではマゼンタトナーによって現像が行われる。
【0038】
クリーナユニット4は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを除去・回収するものである。
【0039】
感光体ドラム3の上方に配置されている中間転写ベルトユニット6は、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、中間転写ローラ64、および中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。中間転写ローラ64はYMCK用の各色に対応して4本設けられている。
【0040】
中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、および中間転写ローラ64は、中間転写ベルト61を張架して回転駆動させる。また各中間転写ローラ64は、感光体ドラム3のトナー像を中間転写ベルト61上に転写するための転写バイアスを与える。
【0041】
中間転写ベルト61は、各感光体ドラム3に接触するように設けられている。そして、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト61に順次的に重ねて転写されることによって、中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)が形成されるようになっている。中間転写ベルト61は、例えば厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0042】
感光体ドラム3から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側に接触している中間転写ローラ64によって行われる。中間転写ローラ64には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施形態では、転写電極としてローラ形状を使用しているが、それ以外にブラシなども用いることが可能である。
【0043】
上述のように、各感光体ドラム3上で各色に応じて顕像化されたトナー像は中間転写ベルト61にて積層される。積層されたトナー像は、中間転写ベルト61の回転によって、転写ローラ10と中間転写ベルト61との接触位置(2次転写位置)に搬送され、この接触位置において転写ローラ10によって用紙上に転写される。
【0044】
転写ローラ10は、中間転写ベルト61に対して所定ニップで圧接されると共に、トナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。さらに、上記所定ニップを定常的に得るために、転写ローラ10もしくは中間転写ベルト駆動ローラ62の何れか一方を硬質材料(金属)からなるローラとし、他方を軟質材料からなるローラ(弾性ゴムローラまたは発泡性樹脂ローラ)とする。
【0045】
また、転写ローラ10によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収されるように設定されている。中間転写ベルトクリーニングユニット65には、中間転写ベルト61に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードが備えられており、クリーニングブレードが接触する中間転写ベルト61は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ63で支持されている。
【0046】
給紙トレイ(給紙カセット)81は、画像形成(印刷)に使用する用紙を載置するトレイであり、画像形成装置110において露光ユニット1の下側に設けられている。また、利用者は、手差トレイ82にも画像形成(印刷)に使用する用紙を載置することが可能になっている。画像形成装置110の上方に設けられている第2排紙トレイ91は、印刷済みの用紙をフェイスダウンで集積するためのトレイである。
【0047】
また、画像形成装置110には、給紙トレイ81および手差トレイ82の用紙を、転写ローラ10や定着ユニット7を経由させて第2排紙トレイ91に送るための、略垂直形状のシート搬送路(用紙搬送路)Sが設けられている。給紙トレイ81または手差トレイ82から第2排紙トレイ91までのシート搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ11a,11b、複数の搬送ローラ12a〜12d,レジストローラ13、転写ローラ10、定着ユニット7が配されている。
【0048】
搬送ローラ12a〜12dは、用紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、シート搬送路Sに沿って複数設けられている。ピックアップローラ11aは、給紙トレイ81の端部近傍に取り付けられ、給紙トレイ81に載置されている用紙をピックアップしてシート搬送路Sに供給する。ピックアップローラ11bは、手差トレイ82の端部近傍に取り付けられ、手差トレイ82に載置されている用紙をピックアップしてシート搬送路Sに供給する。また、レジストローラ13は、シート搬送路Sを搬送されている用紙を一旦保持するものである。そして、中間転写ベルト61に形成されているトナー像の先端と用紙の先端とが合わさるようなタイミングで、用紙を2次転写位置に搬送する機能を有している。
【0049】
定着ユニット7は、ヒートローラ71および加圧ローラ72を備えている。ヒートローラ71および加圧ローラ72は、用紙を挟んで回転するようになっている。またヒートローラ71は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部150(後述する)によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ72とともにトナーを用紙に熱圧着することにより、用紙に転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、用紙に対して熱定着させる機能を有している。また、定着ユニット7には、ヒートローラ71を外部から加熱するための外部加熱ベルト73が設けられている。
【0050】
つぎに、片面印字時の用紙搬送について詳細に説明する。上述のように、画像形成装置110には、予め用紙を収納する給紙トレイ81、手差トレイ82が設けられている。これら給紙トレイ81、手差トレイ82から用紙を給紙するために、各々ピックアップローラ11a,11bが配置され、用紙をシート搬送路Sに導くようになっている。給紙トレイ81,手差トレイ82から搬送される用紙は、シート搬送路Sの搬送ローラ12aによってレジストローラ13まで搬送され、用紙の先端と中間転写ベルト61上のトナー像の先端とが合わさるタイミングで2次転写位置に搬送される。2次転写位置において、中間転写ベルト61から用紙へトナー像が転写される。その後、用紙が定着ユニット7を通過することによって用紙上の未定着トナーが熱で溶融・固着される。定着処理の行われた後の用紙は、定着ユニット7よりも用紙搬送方向の下流側に設置される搬送ローラ12bによって第2排紙トレイ91上に排出される。
【0051】
両面印字時の場合、上記のように片面印字が終了し定着ユニット7を通過した用紙の後端が搬送ローラ12bで把持されたときに、搬送ローラ12bが逆回転することによって用紙を搬送ローラ12c,12dの設置位置に導く。用紙は、搬送ローラ12c,12dによってレジストローラ13の設置位置に搬送され、用紙裏面に画像の印刷が行われた後に第2排紙トレイ91に排出される。
【0052】
(電子ペーパについて)
つぎに、本実施形態にて用いられる電子ペーパEについて説明する。電子ペーパEは、画像表示用の液晶層を一対の樹脂フィルムで挟んだものであって、厚み0.3mm程度の平板状且つフレキシブルな画像表示媒体であり、周知のものが用いられる。
【0053】
つぎに、電子ペーパEが備える各ハードウェアについて図4に基づいて説明する。電子ペーパEは、図4に示すように、液晶表示部104と無線通信ユニット101と記憶部102とICチップ103とを有する。
【0054】
液晶表示部104は、画像の書き換え時のみ電力を必要とし、電圧無印加でカラー画像を表示し続けるメモリ性を有するディスプレィであり、例えばカイラルネマティック液晶が用いられる。記憶部102は、電子ペーパEに固有の識別情報を格納する記憶領域である。また、記憶部102には、液晶表示部104において表示される画像の画像データも格納される。
【0055】
無線通信ユニット101は、コイルアンテナを備えており、複合機100に設置される第1通信装置123(図2参照)または第2通信装置133(図3参照)との間で無線通信(非接触通信)によるデータの送受信を行うことが可能になっている。また、無線通信ユニット101は、複合機100に設置される第1通信装置123または第2通信装置133のコイルアンテナとの間で電磁誘導によって起電力を発生し、この起電力を記憶部102、ICチップ103や液晶表示部104に供給するようにもなっている。
【0056】
ICチップ103は、液晶表示部104、無線通信ユニット101、記憶部102を制御する集積回路である。具体的に、ICチップ103は、電子ペーパEが第1通信装置123または第2通信装置133の通信圏内に入ると、無線通信ユニット101から電力を受けて駆動可能になる。そして、ICチップ103は、無線通信ユニット101を制御して第1通信装置123または第2通信装置133と通信を行う。また、ICチップ103は、画像データを受信すると、記憶部102に記憶されている画像データを受信画像データに更新し、且つ、液晶表示部104に表示する画像を、前記受信画像データの画像に書き換えるようになっている。
【0057】
なお、電子ペーパEに小型の電源を備え、当該電源の電力によって記憶部102、ICチップ103および液晶表示部104が駆動するようになっていてもよい。
【0058】
(通信装置について)
つぎに、本実施形態の複合機100に設置される第1通信装置123および第2通信装置133について説明する。
【0059】
第1通信装置(読取用通信装置)123は、図2に示すように、原稿トレイ21において、ピックアップローラ(原稿給紙ローラ)24よりも原稿搬送方向の上流側に設置されている。第1通信装置123は、通信距離の短い近接無線転送装置であり、電子ペーパEの無線通信ユニット101が第1通信装置123の通信圏内に入った場合、電子ペーパEと無線接続して無線通信を行うようになっている。
【0060】
より具体的に説明すると、第1通信装置123は、所定の向きで電子ペーパEが原稿トレイ21に載置された場合に限って原稿トレイ21に載置されている電子ペーパEと無線接続されることになるが、それ以外の場合は電子ペーパEと無線接続しない。したがって、第1通信装置123は、誤った向きで電子ペーパEを原稿トレイ21に載置した場合や電子ペーパEを単に原稿トレイ21に近づけただけでは電子ペーパEと無線接続せず、中間トレイ33、第1排紙トレイ22、給紙トレイ81、手差トレイ82、第2排紙トレイ91に載置されている電子ペーパEとも無線接続しない。
【0061】
また、第1通信装置123と電子ペーパEとが無線接続した場合、第1通信装置123は、まず、電子ペーパEの識別情報を電子ペーパEから読み出すようになっている。
【0062】
つぎに、第2通信装置(記録用通信装置)133について説明する。第2通信装置133は、図3に示すように、手差トレイ82に設置されている。第2通信装置133は、第1通信装置123と同様に通信距離の短い近接無線転送装置であり、電子ペーパEの無線通信ユニット101が第2通信装置133の通信圏内に入った場合、電子ペーパEと無線接続して無線通信を行うようになっている。
【0063】
より具体的に説明すると、第2通信装置133は、所定の向きで電子ペーパEが手差トレイ82に載置された場合に限って手差トレイ82に載置されている電子ペーパEと無線接続されることになるが、それ以外の場合は電子ペーパEと無線接続しないようになっている。したがって、第2通信装置133は、誤った向きで電子ペーパEを手差トレイ82に載置した場合や電子ペーパEを単に手差トレイ82に近づけただけでは電子ペーパEと無線接続せず、原稿トレイ21、中間トレイ33、第1排紙トレイ22、給紙トレイ81、第2排紙トレイ91に載置されている電子ペーパEとも無線接続しない。
【0064】
また、第2通信装置133と電子ペーパEとが無線接続した場合、第2通信装置133は、まず、電子ペーパEの識別情報を電子ペーパEから読み出すようになっている。
【0065】
なお、上述した第1通信装置123および第2通信装置133としては、例えば、通信距離が3cmであって通信速度が375〜560MbpsのTransferJet(登録商標)、通信距離が10cmであって通信速度が100〜400KbpsのFelica(登録商標)を用いることができる。
【0066】
(反射型センサについて)
また、本実施形態の複合機100においては、図2に示すように、第1通信装置123に隣接する位置に第1反射型センサ124が設置され、図3に示すように、第2通信装置133に隣接する位置に第2反射型センサ134が設置されている。以下、これら反射型センサ124・134について説明する。
【0067】
第1反射型センサ124は、図2に示すように、原稿トレイ21において第1通信装置123よりも原稿搬送方向の上流側に設置されている。第1反射型センサ124は、原稿トレイ21に載置されている載置物からの反射光を入力し、この反射光に応じた電気信号を出力するようになっている。ここで、第1反射型センサ124は、原稿トレイ21に載置されている載置物が紙媒体である場合はロー信号を出力し、当該載置物が紙以外の媒体(例えば電子ペーパE)である場合はハイ信号を出力するようになっている。
【0068】
第2反射型センサ134は、図3に示すように、手差トレイ82において第2通信装置133よりも用紙搬送方向の上流側に設置されている。第2反射型センサ134は、手差トレイ82に載置されている載置物からの反射光を入力し、この反射光に応じた電気信号を出力するようになっている。ここで、第2反射型センサ134は、手差トレイ82に載置されている載置物が紙媒体である場合はロー信号を出力し、当該載置物が紙以外の媒体である場合はハイ信号を出力するようになっている。
【0069】
(複合機の各ハードウェアについて)
つぎに、複合機100に備えられる各ハードウェアおよび各ハードウェアを制御する制御部150について図5を参照して説明する。
【0070】
図5に示すように、複合機100は制御部150を有しており、制御部150は、第1通信装置123、第1反射型センサ124、第2通信装置133、第2反射型センサ134、原稿搬送部200、スキャナ部191、用紙搬送部160、転写部170、操作部180、表示部190に接続されている。
【0071】
第1通信装置123、第1反射型センサ124、第2通信装置133、第2反射型センサ134、スキャナ部191については、既に説明済であるため、ここではその説明を省略する。
【0072】
図5における原稿搬送部200は、原稿自動搬送装置120の原稿搬送経路23に原稿を送り込み且つ当該原稿を原稿搬送経路23にて搬送するための各種ローラを指す。具体的には、ピックアップローラ24、捌きローラ25、レジストローラ対27、搬送ローラ対28、排紙ローラ対29が原稿搬送部200に相当する。
【0073】
図5における用紙搬送部160は、画像形成装置110のシート搬送路Sに用紙を送り込み且つ当該用紙をシート搬送路Sにて搬送させるための各種ローラを指す。具体的には、搬送ローラ12a〜12d、ピックアップローラ11a,11b、レジストローラ13が用紙搬送部160に相当する。
【0074】
また、図5における転写部170は、シート搬送路Sにて搬送されている用紙へ画像を印刷するための各種装置を指す。具体的には、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、帯電器5、クリーナユニット4、定着ユニット7、転写ローラ10、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ローラ64が転写部170に該当する。
【0075】
図5の表示部190は、複合機100の操作パネル(不図示)に形成されているディスプレィを指すものであり、複合機100を操作するために必要な操作情報や出力画像のプレビュー等を表示するためのものである。また、前記のディスプレィにはタッチパネルが構成されている。
【0076】
操作部180は、前記の操作パネルに形成されている各種入力キー、および、前記タッチパネルを指すものであり、複合機100に対する各種コマンドを利用者に入力させるためのものである。なお、操作部180には、各種ジョブを開始させるためのジョブ開始キーが含まれている。つまり、このジョブ開始キーは、少なくとも、スキャナ部191による読取処理(複写ジョブ,ファイリングジョブ)の開始指示、および、印刷処理(複写ジョブ,プリントジョブ)の開始指示のために用いられる。
【0077】
制御部150は、複合機100を制御するためのコンピュータであり、接続されている各種ハードウェアを制御して複合機100に各種ジョブを実行させるようになっている。例えば、制御部150は、操作部180から複写ジョブの開始命令を入力すると、原稿搬送部200、スキャナ部191、用紙搬送部160、転写部170を制御して、原稿から画像データを読み取ると共に当該画像データの画像を用紙に印刷する複写ジョブを複合機100に実行させるようになっている。また、制御部150は、操作部180からプリントジョブの開始命令を入力すると、用紙搬送部160および転写部170を制御して、複合機100の記憶装置(不図示)に格納されているジョブデータに含まれている画像データの画像を用紙に印刷するプリントジョブを複合機100に実行させるようになっている。なお、前記の記憶装置に格納されているジョブデータは、複合機100に接続されている端末装置から送られてきたものである。さらに、制御部150は、操作部180からファイリングジョブの開始命令を入力すると、原稿搬送部200およびスキャナ部191を制御して、原稿から画像データを読み取ると共に当該画像データを所定のファイルに変換して保存するファイリングジョブを複合機100に実行させるようになっている。
【0078】
また、本実施形態では、制御部150は、第1通信装置123を制御して、原稿トレイ21に載置されている状態の電子ペーパEから無線通信によって画像データを読み取る電子ペーパ読取処理(第2読取処理)を実行するようになっている。さらに、制御部150は、第2通信装置133を制御して、手差トレイ82に載置されている状態の電子ペーパEへ無線通信によって画像データを記録する記録処理を実行するようになっている。
【0079】
なお、制御部150は、第1通信装置123を電子ペーパ読取処理専用として用い、第2通信装置133を記録処理専用として用いる。すなわち、制御部150は、第1通信装置123によって電子ペーパ読取処理を行うが記録処理を行わず、第2通信装置133によって記録処理を行うが電子ペーパ読取処理を行わない。それゆえ、原稿トレイ21は、電子ペーパ読取処理に使用する電子ペーパEを載置するための載置部として用いられるが、記録処理に使用する電子ペーパEを載置するための載置部としては用いられず、手差トレイ82は、記録処理に使用する電子ペーパEを載置するための載置部として用いられるが、電子ペーパ読取処理に使用する電子ペーパEを載置するための載置部として用いられない。
【0080】
(処理の流れについて)
つぎに、制御部150の処理の流れを図6〜図8に基づいて説明する。まずは図6に基づいて説明する。
【0081】
まず、第1通信装置123・第2通信情報133によって電子ペーパEの識別情報が読み出されず、第1反射型センサ124の出力および第2反射型センサ134の出力がいずれも紙媒体を示すロー信号である場合(つまり、原稿トレイ21の最も下側の載置物および手差トレイ82の最も下側の載置物が紙媒体である場合)、制御部150はジョブ開始キーの押下を待機し続ける(S1およびS2がNO,S3およびS4がYES,S5がNO)。そして、ジョブ開始キーが押されると(S5にてYES)、制御部150は、複写ジョブ,プリントジョブ,ファイリングジョブのうち、利用者に指定されているジョブを実行し(S6)、処理を終了する。
【0082】
また、原稿トレイ21および手差トレイ82において載置物が無い場合、または、原稿トレイ21および手差トレイ82の一方に載置物が無いが他方に紙媒体のみが載置されている場合も、制御部150は、ジョブ開始キーの押下を待機し続け、ジョブ開始キーが押されると、利用者に指定されているジョブが実行されるようになっている。なお、制御部150は、原稿トレイ21に載置物があるか否かを原稿トレイ用の入紙検知センサ(不図示)を用いて検出し、手差トレイ82に載置物があるか否かを手差トレイ用の入紙検知センサ(不図示)を用いて検出するようになっている。
【0083】
これに対し、制御部150は、原稿トレイ21に載置物があり、第1通信装置123が原稿トレイ21の載置物から識別情報を読み取った場合、複合機100を電子ペーパ読取モードへ移行させる(S1にてYES,S7)。また、制御部150は、手差トレイ82に載置物があり、第2通信装置133が手差トレイ82の載置物から識別情報を読み取った場合、複合機100を記録モードへ移行させるようになっている(S2にてYES,S8)。S7の電子ペーパ読取モードおよびS8の記録モードの各々については後に詳述する。
【0084】
なお、原稿トレイ21の載置物が電子ペーパEであり、電子ペーパEが第1通信装置123の通信圏内にある場合(電子ペーパEが原稿トレイ21に正しい向きで載置されている場合)、第1通信装置123は電子ペーパEの識別情報を読み取るようになっている。それゆえ、S1にて識別情報を読み取ったと判定される場合とは、原稿トレイ21の載置物が電子ペーパEであり、且つ電子ペーパEが第1通信装置123の通信圏内にある状況である。これに対し、S1にて識別情報を読み取っていないと判定される場合とは、原稿トレイ21の載置物が電子ペーパEでないか、原稿トレイ21の載置物が電子ペーパEであるものの電子ペーパEが第1通信装置123の通信圏内にない状況である(電子ペーパEが原稿トレイ21に誤った向きで載置されている)。
【0085】
また、手差トレイ82の載置物が電子ペーパEであり、電子ペーパEが第2通信装置133の通信圏内にある場合(電子ペーパEが手差トレイ82に正しい向きで載置されている場合)、第2通信装置133は電子ペーパEの識別情報を読み取るようになっている。それゆえ、S2にて識別情報を読み取ったと判定される場合とは、手差トレイ82の載置物が電子ペーパEであり、電子ペーパEが第2通信装置133の通信圏内にある状況である。また、S2にて識別情報を読み取っていないと判定される場合とは、手差トレイ82の載置物が電子ペーパEでないか、手差トレイ82の載置物が電子ペーパEであるものの電子ペーパEが第2通信装置133の通信圏内にない状況である(例えば電子ペーパEが誤った向きで手差トレイ82に載置されている)。
【0086】
さらに、制御部150は、原稿トレイ21に載置物があり、第1通信装置123・第2通信情報133によって電子ペーパEの識別情報が読み出されず、第1反射型センサ124の出力が紙媒体以外の媒体を示すハイ信号になった場合、エラー画像を表示部190に表示し、処理を終了する(S3にてNO,S9)。S9にて表示されるエラー画像は、エラーを示す画像であれば限定されないが、一例としては、原稿トレイ21上の載置物に対して処理を行えない事を示すエラーメッセージがあげられる。
【0087】
なお、S3にてNOの場合とは、原稿トレイ21の載置物が紙媒体および電子ペーパEのいずれでもない状況、または、原稿トレイ21の載置物が電子ペーパEであるものの電子ペーパEが第1通信装置123の通信圏内にないため電子ペーパ読取モード(S7)へ移行できない状況である(誤った向きで電子ペーパEを原稿トレイ21に載置した場合、原稿トレイ21の載置物が電子ペーパEであっても、電子ペーパEが前記通信圏内からはずれることがある)。
【0088】
また、制御部150は、手差トレイ82に載置物があり、第1通信装置123・第2通信情報133によって電子ペーパEの識別情報が読み出されず、第2反射型センサ134の出力が紙媒体以外の媒体を示すハイ信号になった場合、エラー画像を表示部190に表示し、処理を終了する(S4にてNO,S10)。S10にて表示されるエラー画像は、エラーを示す画像であれば限定されないが、一例としては、手差トレイ82上の載置物に対して処理を行えない事を示すエラーメッセージがあげられる。
【0089】
なお、S4にてNOの場合とは、手差トレイ82の載置物が紙媒体および電子ペーパEのいずれでもない場合、または、手差トレイ82の載置物が電子ペーパEであるものの電子ペーパEが第2通信装置133の通信圏内にないため記録モード(S8)へ移行できない状況である(誤った向きで電子ペーパEを手差トレイ82に載置した場合、手差トレイ82の載置物が電子ペーパEであっても、電子ペーパEが前記通信圏内からはずれることがある)。
【0090】
つぎに、図6のS7の電子ペーパ読取モードへ移行した後の処理の流れを図7に基づいて説明する。図7は、図6のS7のサブルーチンである。
【0091】
図7の電子ペーパ読取モードへ移行すると、制御部150は、電子ペーパ読取処理の実行を利用者に予告する予告画像を表示部190に表示させる(S11)。なお、S11の予告画像は、ジョブ開始キーを押した場合に電子ペーパ読取処理が行われることを予告する画像であれば限定されないが、本実施形態では「電子ペーパ読取」というメッセージを表示する。
【0092】
そして、制御部150は、操作部180のジョブ開始キーの押下を待機する(S12にてNO)。ジョブ開始キーがおされると(S12にてYES)、制御部150は、原稿トレイ21に載置されている状態の電子ペーパEに表示されている画像の画像データを読み取る処理(電子ペーパ読取処理)を第1通信装置123に実行させる(S13)。具体的に、第1通信装置123は、電子ペーパEの記憶部102にて記憶されている画像データを無線通信によって読み取っていることになる。その後、制御部150は、電子ペーパ読取処理終了を示すメッセージを表示部190に表示させ(S14)、電子ペーパ読取モードを終了する。
【0093】
つぎに、図6のS8の記録モードへ移行した後の処理の流れを図8に基づいて説明する。図8は、図6のS8のサブルーチンである。
【0094】
図8の記録モードへ移行すると、制御部150は、記録処理の実行を利用者に予告する予告画像を表示部190に表示させる(S21)。なお、S21の予告画像は、ジョブ開始キーを押した場合に記録処理が行われることを予告する画像であれば限定されないが、本実施形態では「電子ペーパ記録」というメッセージを表示する。
【0095】
そして、制御部150は、操作部180のジョブ開始キーの押下を待機する(S22にてNO)。また、この待機期間において、電子ペーパEに記録させる画像データを利用者に選択させる。例えば、複合機100に記憶されているプリントジョブのジョブデータの中から、電子ペーパEに記録させる画像データを利用者に選択させるようになっていてもよいし、画像読取装置90によって原稿から読み取られ且つ複合機100に記憶されている画像データの中から、電子ペーパEに記録させる画像データを利用者に選択させるようになっていてもよい。
【0096】
ジョブ開始キーが押されると(S22にてYES)、制御部150は、手差トレイ82に載置されている状態の電子ペーパEに画像データを記録する処理(記録処理)を第2通信装置133に実行させる(S23)。この記録処理により、電子ペーパEの記憶部102には第2通信装置133から無線通信で送られてきた画像データが書き込まれ、且つ、電子ペーパEの液晶表示部104には当該画像データの画像が表示されることになる。その後、制御部150は、電子ペーパ記録終了を示すメッセージを表示部190に表示させ(S24)、電子ペーパ読取モードを終了する。
【0097】
なお、制御部150は、S7の電子ペーパ読取モードの期間中は原稿搬送部200の駆動を禁止し、S8の記録モードの期間中は用紙搬送部160の駆動を禁止している。これにより、S7の電子ペーパ読取モードの期間中に、原稿トレイ21に載置されている電子ペーパEが原稿搬送経路23に送り込まれることはないし、S8の記録モードの期間中に、手差トレイ82に載置されている電子ペーパEがシート搬送路Sに送り込まれることはない。
【0098】
また、制御部150は、S3にてNOと判定された場合は原稿搬送部200の駆動を禁止し、S4にてNOと判定された場合は用紙搬送部160の駆動を禁止している。これにより、原稿トレイ21上に紙以外の媒体が載置されている場合、当該媒体が原稿搬送経路23に送り込まれるという事態の発生を抑制でき、手差トレイ82上に紙以外の媒体が載置されている場合、当該媒体がシート搬送路Sに送り込まれるという事態の発生を抑制できる。
【0099】
以上示したように、本実施形態の複合機100は、利用者によって電子ペーパEが載置される原稿トレイ21と、原稿トレイ21とは異なる位置にあり、利用者によって電子ペーパEが載置される手差トレイ82と、原稿トレイ21に載置されている状態の電子ペーパEから無線通信にて画像データを読み取る電子ペーパ読取処理(第2読取処理)を実行する第1通信装置123と、手差トレイ82に載置されている状態の電子ペーパEに対して無線通信にて画像データを記録する記録処理を実行する第2通信装置133とを備えている。この構成によれば、原稿トレイ21に電子ペーパEを載置すれば電子ペーパ読取処理が実行され、手差トレイ82に電子ペーパEを載置すれば前記記録処理が実行されるようになっている。つまり、本実施形態の複合機100によれば、電子ペーパEの載置する位置に応じて実行される処理内容が定まっているため、前記処理内容を選択するための選択コマンド(電子ペーパ読取処理および記録処理のいずれかを選択するためのコマンド)を利用者から受け付ける必要がない。言い換えると、本実施形態の構成によれば、利用者の所望する処理内容に対応するトレイに電子ペーパEを載置するだけで処理内容が選択されたことになるため、前記選択コマンドを入力する工程が不要になる。よって、本実施形態の構成によれば、電子ペーパ読取処理および記録処理の両方を実行できる複合機において入力作業の手間を軽減することができるという効果を奏する。
【0100】
また、本実施形態において、制御部(モード制御部)150は、原稿トレイ21に電子ペーパEが載置されると複合機100を電子ペーパ読取モードに移行させ、手差トレイ82に電子ペーパEが載置されると複合機100を記録モードに移行させている。そして、電子ペーパ読取モード(図7)とは、複合機150が電子ペーパ読取処理の開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると第1通信装置123が電子ペーパ読取処理を実行するようになっているモードであり、前記記録モード(図8)とは、複合機150が前記記録処理の開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると第2通信装置133が前記記録処理を実行するようになっているモードである。それゆえ、電子ペーパ読取処理または記録処理を行う場合の利用者の作業手順は、処理内容に応じて決められたトレイに電子ペーパEを載置し、処理開始タイミングにて処理開始の指示を入力するという手順になり、決められた載置場所に原稿または用紙を載置して処理開始の指示を入力するという通常のジョブ(原稿読取または印刷)を行う場合の作業手順と類似することになる。よって、本実施形態の構成によれば、利用者にとって使い勝手が良いというメリットがある。
【0101】
さらに、本実施形態において、第1通信装置123は、原稿トレイ21に電子ペーパEが載置されると、電子ペーパEの識別情報を電子ペーパEから読み出すようになっており、第2通信装置133は、手差トレイ82に電子ペーパEが載置されると、電子ペーパEの識別情報を電子ペーパEから読み出すようになっている。そして、制御部150は、第1通信装置123が前記識別情報を読み出した場合に複合機150を電子ペーパ読取モード(S7、図7)に移行させ、第2通信装置133が前記識別情報を読み出した場合に複合機150を記録モード(S8、図8)に移行させるようになっている。つまり、制御部150は、第1通信装置123が前記識別情報を読み出した事をもって原稿トレイ21に電子ペーパEが載置された事を認識し、複合機150を電子ペーパ読取モードに移行させ、第2通信装置133が前記識別情報を読み出した事をもって手差トレイ82に電子ペーパEが載置された事を認識し、複合機150を記録モードに移行するようになっている。それゆえ、原稿トレイ21または手差トレイ82に電子ペーパEが載置されていないのに電子ペーパ読取モードや記録モードに移行してしまうといった事態を抑制できる。
【0102】
また、本実施形態では、画像読取装置90の読取処理(第1読取処理)にて用いられる原稿を載置するための原稿トレイ21は、電子ペーパ読取処理用の電子ペーパEの載置部として流用され、画像形成装置110の印刷処理にて用いられる用紙を載置するための手差トレイ(用紙トレイ)82は、記録処理用の電子ペーパEの載置部として流用されている。つまり、本願発明の構成によれば、読取処理に利用される媒体を原稿トレイに載置させ、画像書込(印刷,記録)に利用される媒体を用紙トレイに載置させており、処理の種類毎に媒体の載置場所を共通化していることになる。したがって、利用者からすれば、携帯型表示媒体の載置場所が分かり易く、使い勝手が良いという利点がある。
【0103】
さらに、制御部(搬送制御部)150は、電子ペーパ読取モード(S7)では原稿搬送部200を動作させず、記録モード(S8)では用紙搬送部160を動作させないようになっている。それゆえ、原稿トレイ21に載置された電子ペーパEが原稿搬送経路23に送り込まれる事態、および、手差トレイ82に載置された電子ペーパEがシート搬送路Sに送り込まれるという事態を抑制できるため、原稿搬送経路23やシート搬送路Sにて電子ペーパEが詰まってガイドやセンサ等が傷つき破損するという問題の発生を抑制できる。
【0104】
また、原稿トレイ21または手差トレイ82上における電子ペーパEの置き方が適切でなければ、第1通信装置123・第2通信装置133は電子ペーパEから識別情報を読み出せず、S7の電子ペーパ読取モードやS8の記録モードに移行できない。このようなケースでは、原稿トレイ21または手差トレイ82上に電子ペーパEが載置されているにも拘わらず印刷処理やスキャナ部191による読取処理が開始される危険性があり、原稿搬送部200や用紙搬送部160が誤って駆動し、電子ペーパEが原稿搬送経路23やシート搬送路Sに送り込まれてしまうという不都合が生じる虞がある。
【0105】
そこで、本実施形態では、複合機100は、原稿トレイ上21の載置物から反射する反射光に応じて、前記載置物が紙媒体であるか否かを示す信号を出力する第1反射型センサ124と、手差トレイ上82の載置物から反射する反射光に応じて、前記載置物が紙媒体であるか否かを示す信号を出力する第2反射型センサ134とを備えている。そして、制御部(第1表示制御部)150は、原稿トレイ21上の載置物が紙媒体でないことを示す信号を第1反射型センサ124が出力し、且つ、第1通信装置123が原稿トレイ21上の載置物から前記識別情報を読み出せない場合、表示部190にエラーを示す画像を表示するようになっている。また、制御部(第2表示制御部)150は、手差トレイ82上の載置物が紙媒体でないことを示す信号を第2反射型センサ134が出力し、且つ、第2通信装置133が手差トレイ82上の載置物から前記識別情報を読み出せない場合も、表示部190にエラーを示す画像を表示するようになっている。これにより、原稿トレイ21や手差トレイ82に電子ペーパEが載置されている状況で電子ペーパEから識別情報を読み出せずに電子ペーパ読取モード(S7)や記録モード(S8)に移行できない場合、その旨を利用者に知らせることができるため、電子ペーパEが原稿搬送経路23やシート搬送路Sに誤って送り込まれてしまうという不都合の発生を抑制できる。
【0106】
さらに、本実施形態の制御部(第3表示制御部)150は、電子ペーパ読取モードに移行すると、電子ペーパ読取処理の実行を利用者に予告する画像を表示部190に表示させ(S11)、記録モードに移行すると、記録処理の実行を利用者に予告する画像を表示部190に表示させるようになっている(S21)。それゆえ、電子ペーパ読取モードまたは記録モードに移行後、ジョブ開始キーを押した場合に実行される処理内容(電子ペーパ読取処理、記録処理)を利用者に予め通知できるため、利用者が意図しない処理が実行されることを抑制できる。
【0107】
また、本実施形態の複合機100は、印刷処理の開始指示を受け付けるためのキーであり、且つ、スキャナ部191による読取処理の開始指示を受け付けるためのキーでもあるジョブ開始キー(指示入力キー)を備えている。そして、このジョブ開始キーは、電子ペーパ読取モードでは、電子ペーパ読取処理の開始指示を受け付けるためのキーとして機能し(S12)、記録モードでは、記録処理の開始指示を受け付けるためのキーとして機能している(S22)。この構成によれば、印刷処理、記録処理、電子ペーパ読取処理、スキャナ部191による読取処理において、処理開始の指示を入力するためのキーが共用されることになる。したがって、記録処理や電子ペーパ読取処理における作業手順は通常のジョブ(原稿読取または印刷)を行う場合の作業手順により類似することになり、利用者にとって使い勝手が良いというメリットがある。
【0108】
また、以上の実施例では言及がないが、(1)原稿トレイ21に電子ペーパEを載置して電子ペーパ読取モードに移行させた後に手差トレイ82に電子ペーパE´を載置しても、電子ペーパ読取モードが維持され、記録モードには移行せず、(2)手差トレイ82に電子ペーパEを載置して記録モードに移行させた後に原稿トレイ21に電子ペーパE´を載置しても、記録モードが維持され、電子ペーパ読取モードには移行しないようになっている。
【0109】
これに対し、原稿トレイ21に電子ペーパEを載置して電子ペーパ読取モードに移行させた後に手差トレイ82に電子ペーパE´を載置した場合、または、手差トレイ82に電子ペーパE´を載置して記録モードに移行させた後に原稿トレイ21に電子ペーパEを載置した場合、電子ペーパ読取モードまたは記録モードから電子ペーパ複写モード(表示媒体複写モード)に移行するようになっていてもよい。この電子ペーパ複写モードとは、複合機150が電子ペーパ複写ジョブの開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると前記電子ペーパ複写ジョブが行われるようになっているモードである。また、電子ペーパ複写ジョブ(表示媒体複写ジョブ)とは、第1通信装置123が電子ペーパEから画像データを読み取る処理と、電子ペーパEから読み取られた画像データを第2通信装置133が電子ペーパE´に記録する処理とを含むジョブである。つまり、原稿トレイ21に電子ペーパE(第1携帯型表示媒体)が載置され、且つ手差トレイ82に電子ペーパE´(第2携帯型表示媒体)が載置されると、制御部150は複合機100を電子ペーパ複写モードに移行させる。そして、電子ペーパ複写モードにおいて、ジョブ開始ボタンが押された場合、制御部150は、まず、原稿トレイ21の電子ペーパEから画像データを読み取る処理を第1通信装置123に行わせる。その後、制御部150は、原稿トレイ21の電子ペーパEから読み取られた画像データを手差トレイ82の電子ペーパE´に記録する処理を第2通信装置133に行わせる。これにより、原稿トレイ21に載置される電子ペーパに記録されている画像を、手差トレイ82に載置される電子ペーパに複写することが可能になる。
【0110】
なお、本実施形態では、第1通信装置123および第2通信装置133との間で画像データを送受信する携帯型表示媒体として電子ペーパを用いたが、当該携帯型表示媒体は、画像を表示するものであり当該画像の画像データを無線通信にて受信且つ送信可能になっている携帯可能な媒体であればよく、電子ペーパに限定されるものではない。このような携帯型表示媒体としては、電子ペーパの他、電子ブック端末、スマートフォン、携帯情報端末が挙げられる。また、本実施形態の複合機100では、携帯型表示媒体を搬送路に送り込まず、トレイ上の携帯型表示媒体に対して画像データの書き込みおよび読み取りを行うものであることから、携帯型表示媒体にフレキシブル性は要求されない。
【0111】
また、本実施形態では、原稿トレイ21を、電子ペーパ読取処理の対象となる電子ペーパを載置する読取用載置部として利用しているが、読取用載置部は原稿トレイ21に限定されるものではない。例えば、原稿台92、中間トレイ33、第1排紙トレイ22等の原稿載置箇所を前記読取用載置部として利用してもよい。但し、この場合、第1通信装置123の設置箇所を、前記読取用載置部の場所に応じて適宜変更する必要がある。
【0112】
さらに、本実施形態では、手差トレイ82を、記録処理の対象となる電子ペーパを載置する記録用載置部として利用しているが、記録用載置部は手差トレイ82に限定されるものではない。例えば、給紙トレイ81や第2排紙トレイ91等の用紙載置場所を、前記記録用載置部として利用してもよい。但し、この場合、第2通信装置133の設置箇所を、前記記録用載置部の場所に応じて適宜変更する必要がある。
【0113】
また、特許文献3,4における無線通信手段(電子ペーパと通信を行う手段)は、本実施形態のような近接無線転送装置ではなく、通信範囲が広いものである。したがって、特許文献3,4において、画像形成装置内にライタの他にリーダを備えても、電子ペーパを画像形成装置に近づけた場合にリーダとライタとの両方が電子ペーパと通信可能になるため、読取処理または記録処理のいずれかを選択する選択コマンドを利用者に入力させなければならず、本実施形態の構成よりも手間が生じることになる。
【0114】
また、本願明細書の「複合機」は、印刷機能とスキャン機能とを備えているものを指し、所謂「複写機」も複合機に含まれる。
【0115】
なお、以上の実施形態は、原稿トレイ21において原稿1枚若しくは電子ペーパ1枚が載置されている場合の処理例、および、手差トレイ82おいて用紙1枚若しくは電子ペーパ1枚が載置されている場合の処理例を説明したものである。
【0116】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、用紙へ画像を印刷する機能と原稿から画像を読み取る機能とを有する複合機に利用できる。
【符号の説明】
【0118】
21 原稿トレイ(読取用載置部)
23 原稿搬送経路(原稿搬送路)
82 手差トレイ(記録用載置部,用紙トレイ)
90 画像読取装置(原稿読取装置)
100 複合機
110 画像形成装置(印刷装置)
123 第1通信装置(読取用通信装置)
124 第1反射型センサ
133 第2通信装置(記録用通信装置)
134 第2反射型センサ
150 制御部(モード制御部、搬送制御部、第1表示制御部、第2表示制御部、第3表示制御部)
160 用紙搬送部
180 操作部
190 表示部
200 原稿搬送部
E 電子ペーパ(携帯型表示媒体)
S シート搬送路(用紙搬送路)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙へ画像を印刷する印刷処理と、撮像素子によって原稿から画像を読み取る第1読取処理とを行うものであり、さらに、画像を表示するものであって当該画像の画像データを無線通信にて受信且つ送信可能になっている携帯型表示媒体との間で無線通信を行う複合機において、
利用者によって前記携帯型表示媒体が載置される読取用載置部と、
前記読取用載置部とは異なる位置にあり、利用者によって前記携帯型表示媒体が載置される記録用載置部と、
前記読取用載置部に載置されている状態の携帯型表示媒体から無線通信にて画像データを読み取る第2読取処理を実行する読取用通信装置と、
前記記録用載置部に載置されている状態の携帯型表示媒体に対して無線通信にて画像データを記録する記録処理を実行する記録用通信装置とを備えることを特徴とする複合機。
【請求項2】
前記読取用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると前記複合機を読取モードに移行させ、前記記録用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると前記複合機を記録モードに移行させるモード制御部を備え、
前記読取モードとは、前記複合機が前記第2読取処理の開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると前記読取用通信装置が第2読取処理を実行するようになっているモードであり、
前記記録モードとは、前記複合機が前記記録処理の開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると前記記録用通信装置が前記記録処理を実行するようになっているモードであることを特徴とする請求項1に記載の複合機。
【請求項3】
前記読取用通信装置は、前記読取用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると、前記携帯型表示媒体の識別情報を前記携帯型表示媒体から読み出すようになっており、
前記記録用通信装置は、前記記録用載置部に前記携帯型表示媒体が載置されると、前記携帯型表示媒体の識別情報を前記携帯型表示媒体から読み出すようになっており、
前記モード制御部は、前記読取用通信装置が前記識別情報を読み出した場合に前記複合機を前記読取モードに移行させるようになっており、前記記録用通信装置が前記識別情報を読み出した場合に前記複合機を前記記録モードに移行させるようになっていることを特徴とする請求項2に記載の複合機。
【請求項4】
利用者によって前記原稿が載置される原稿トレイと、前記原稿トレイの原稿を所定の原稿搬送路に送り込み且つ前記原稿搬送路において前記原稿を搬送する原稿搬送部とを有しており、前記原稿搬送路において搬送されている状態の原稿に対して前記第1読取処理を行う原稿読取装置と、
利用者によって前記用紙が載置される用紙トレイと、前記用紙トレイの用紙を所定の用紙搬送路に送り込み且つ前記用紙搬送路において前記用紙を搬送する用紙搬送部とを有しており、前記用紙搬送路において搬送されている状態の用紙に対して前記印刷処理を行う印刷装置とを備え、
前記原稿トレイは前記読取用載置部として流用され、前記用紙トレイは前記記録用載置部として流用されることを特徴とする請求項3に記載の複合機。
【請求項5】
前記原稿搬送部および前記用紙搬送部を制御する搬送制御部を備え、
前記搬送制御部は、前記読取モードでは前記原稿搬送部を動作させず、前記記録モードでは前記用紙搬送部を動作させないことを特徴とする請求項4に記載の複合機。
【請求項6】
表示部と、
前記原稿トレイ上の載置物から反射する反射光に応じて、前記載置物が紙媒体であるか否かを示す信号を出力する第1反射型センサと、
前記載置物が紙媒体でないことを示す信号が前記第1反射型センサから出力され、且つ、読取用通信装置が前記載置物から前記識別情報を読み出せない場合、前記表示部にエラーを示す画像を表示する第1表示制御部とを備えることを特徴とする請求項5に記載の複合機。
【請求項7】
表示部と、
前記用紙トレイ上の載置物から反射する反射光に応じて、前記載置物が紙媒体であるか否かを示す信号を出力する第2反射型センサと、
前記載置物が紙媒体でないことを示す信号が前記第2反射型センサから出力され、且つ、読取用通信装置が前記載置物から前記識別情報を読み出せない場合、前記表示部にエラーを示す画像を表示する第2表示制御部とを備えることを特徴とする請求項5に記載の複合機。
【請求項8】
表示部と、
前記複合機が前記読取モードに移行すると、前記第2読取処理の実行を利用者に予告する画像を前記表示部に表示させ、前記複合機が前記記録モードに移行すると、前記記録処理の実行を利用者に予告する画像を前記表示部に表示させる第3表示制御部とを備えることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の複合機。
【請求項9】
前記印刷処理の開始指示を受け付けるためのキーであり、且つ、前記第1読取処理の開始指示を受け付けるためのキーでもある指示入力キーを備え、
前記指示入力キーは、前記読取モードでは、前記第2読取処理の開始指示を受け付けるためのキーとして機能し、前記記録モードでは、前記記録処理の開始指示を受け付けるためのキーとして機能することを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の複合機。
【請求項10】
前記読取用載置部に第1携帯型表示媒体が載置され且つ前記記録用載置部に第2携帯型表示媒体が載置されている場合、前記複合機を表示媒体複写モードに移行させるモード制御部を備え、
前記表示媒体複写モードとは、前記複合機が表示媒体複写ジョブの開始指示を受け付けることの可能な状態であり、当該開始指示が受け付けられると前記表示媒体複写ジョブが行われるようになっているモードであり、
前記表示媒体複写ジョブとは、前記読取用通信装置が前記第1携帯型表示媒体から画像データを読み取る処理と、第1携帯型表示媒体から読み取られた画像データを前記記録用通信装置が前記第2携帯型表示媒体に記録する処理とを含むジョブであることを特徴とする請求項1に記載の複合機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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