説明

複合濾過物品

少なくとも一層の多孔性繊維状濾過層と、少なくとも一層の収着剤固定相微粒子とを含むフィルターエレメントを含む複合フィルター媒体。この固定相微粒子は、50マイクロメートル未満の平均直径を有する有機または無機微粒子、軟質微粒子および破砕モノリシックポリマー微粒子から選択される。微粒子は、例えば、吸着、イオン交換、疎水性結合および親和性結合によって標的分子と結合可能である。この微粒子は、従来のプロセス規模クロマトグラフィ樹脂微粒子を組み入れたフィルター媒体を使用して達成され得る場合よりも高い結合容量を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大規模で、一種または複数の生体高分子を含む溶液からの生体高分子の分離および精製のための物品および方法に関する。精製された生体高分子は有用な治療剤または診断剤である。
【背景技術】
【0002】
生体高分子は生細胞の構成物または産物であって、タンパク質、炭水化物、脂質および核酸が挙げられる。これらの材料の検出および定量化ならびに単離および精製は、長い間、研究者の目標であった。検出および定量化は、診断上、例えば疾病などの様々な生理的条件の指標として重要である。生体高分子の単離および精製は、例えば、特定の生体高分子の欠乏症を有する患者に投与される場合、またはいくつかの薬剤の生体適合性のキャリアとして、および生体臨床医学研究において利用される場合、治療目的のために重要である。酵素などの生体高分子は化学反応を触媒することができる特別な種類のタンパク質であって、工業的に有用であり;酵素は単離され、精製され、次いで甘味料、抗生物質ならびに様々な有機化合物、例えばエタノール、酢酸、リジン、アスパラギン酸および生物学的に有用な製品、例えば抗体およびステロイドの製造のために利用される。
【0003】
生体内のそれらの本来の状態では、これらの生体高分子の構造および相当する生物学的活性は、非常に狭い範囲のpHおよびイオン強度で一般的に維持される。従って、分離および精製操作は、結果として生じる処理された生体高分子が効力を有するように、かかる要因を考慮しなければならない。
【0004】
クロマトグラフィは、生物学的生成物の混合物においてしばしば実行される分離および精製操作である。これは気体または液体である移動相と、固定相との間の溶質の交換に基づく技術である。溶液混合物の様々な溶質の分離は、各溶質と固定相との結合相互作用の変更に基づいて達成される。より強力な結合相互作用は一般的に、移動相の脱結合の影響を受けるときに、相互作用がそれより強力ではない溶質と比較して、より長時間の保持時間をもたらし、この様式において分離および精製が生じ得る。
【0005】
バイオ分離は変性フィルターカートリッジを使用して行われる。米国特許第5,155,144号明細書は、ポリマー媒体内に分散されたジエチルアミノエチルセルロースなどの変性多糖類微粒子、典型的なイオン交換クロマトグラフィ固定相を含むミクロ多孔性シートを開示する。これらのシートはデッドエンドフィルターカートリッジ中にさらに構成され得ることが提案される。
【0006】
廃棄物の再循環を使用して、鉛イオン処理された樹脂を、D−キシロースの分析分離のための2つのステンレス鋼グリット間の一般的に浅いカラムのように評価した(A.M.ウィルヘルム(A.M.Wilhelm)およびJ.P.リバ(J.P.Riba)、J.Chromatog.、1989、484、211−223を参照のこと)。得られた充填床反応器系を評価し、比較的高い系圧および低い流速での生成液体クロマトグラフィ用カラムにおける最終利用に関する粒子の流体力学的条件を決定した。
【0007】
分析的規模で有用な比較的新型のクロマトグラフィ媒体はモノリスである。この種類の媒体は、適切なモノマー、溶媒および開始剤でクロマトグラフィカラムを充填し、そして適所にてポリマー形成反応を実行することによって調製される。多孔性ポリマーのプラグが形成され、これは完全にカラムを充填し、従って慎重なカラム充填の必要性をなくす。モノリシック媒体は、微粒子媒体以上に改善された分離特性を有し得る。しかしながら、重合プロセス間に生じる熱発生および熱伝達の問題のため、大型カラムへの規模拡大には問題がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡潔に言えば、本発明は、少なくとも一層の多孔性繊維状濾過層(例えば、織物または不織物多孔性材料の層)と、標的分子と結合可能な少なくとも一層の収着剤固定相微粒子とを含むフィルターエレメントを含む複合フィルター媒体を提供する。この固定相微粒子は、50マイクロメートル未満の平均直径を有する粒子、軟質ポリマー粒子および破砕モノリシックポリマー粒子の群から選択される。
【0009】
用語「生体高分子」は本願を通して好ましい様式として使用されるが、本明細書において以下に記載されるように、固定相微粒子は他の標的分子を吸着または結合することができてもよいことは理解されるべきである。微粒子は、例えば、吸着、イオン交換、疎水性結合または親和性結合によって生体高分子を結合することができる。この微粒子は、フィルター媒体が組み入れられた従来のプロセス規模のクロマトグラフィ樹脂微粒子を使用して達成され得るよりも高い結合能および/またはより高い捕捉効率ならびに処理量を提供する。
【0010】
大規模バイオ分離プロセス(例えば生物薬剤学的製造プロセスにおいて)は、典型的に大径で行われ、クロマトグラフィカラムに充填され、そして平衡、充填、洗浄、溶出および再生/クリーニングが順番に実行される。タンパク質吸着の動力学的限界(クロマトグラフィ粒子内におけるタンパク質分子の遅い粒子内拡散)のため、これらのカラムは典型的にそれらの平衡容量のフラクションに充填されるのみである。結果として比較的遅いプロセスとなり、処理量も著しく低い。
【0011】
本明細書で使用される場合、「大規模バイオ分離」は、下流への生物薬剤学的製造プロセスの工程として定義されており、ここでは100リットル以上の容積を有するバイオリアクターにおいて製造される生体高分子製品の分離および/または精製が達成される。生体分子製品の分解を防止するため、このバイオ分離は24時間以内の期間で実行されなければならない。バイオリアクターにおいて製造される流体媒体において約1グラム/リットルの典型的な生体高分子濃度を仮定して、これは24時間で少なくとも100gの製品を精製する能力に等しい。
【0012】
小規模の分析精製に関して、小径カラム(例えば約5cm未満の直径を有するカラム)によって提供される壁効果は、サイズ、形状、剛性、多孔性等に関して広範囲にわたる特性を有するクロマトグラフィ樹脂の使用を可能にする。小クロマトグラフィカラムにおいて、クロマトグラフィ樹脂の充填床はカラム壁によって良好に支持されるため、比較的広範囲の特性を有する樹脂を利用することができ、そして樹脂粒子に損傷を生じることなく200psi(1.38MPa)を超える差圧に良好に耐え得る。これらの壁効果はカラムの直径が増加すると減少し、そして20cmより大きい直径ではほとんどなくなる。
【0013】
従って、治療タンパク質の大規模精製のために必要とされる大径カラムによって、経済的に実行可能な処理量を達成するために、クロマトグラフィ粒子に対して厳密な要求がされる。これらのカラムは、適度に低い圧力低下を伴って比較的速い流速を達成可能でなければならない。一般に、適度な処理量を達成するために、200psi(1380kPa)未満、そして好ましくは50psi(345kPa)未満の差圧において、少なくとも150cm/時間の空塔速度(または直線流速)が望ましく、500〜1000cm/時間の流速が好ましい。これらの圧力/流れ必要条件は、有用なクロマトグラフィ樹脂は完全に剛性でなければならず(例えば、カラムにおいて利用される流速で低い圧縮性を有する)、比較的大きい平均粒度(例えば、約50〜150マイクロメートルの粒径以上)でなければならず、そして比較的狭い粒度範囲分布を有するべきである(例えば、チャネリングなどの発生が生じずにカラムに充填することが容易となるように、微粉および大きい粒子を除去するように分類されなければならない)ことを要求する。
【0014】
しかしながら、実際には、直径1cmのカラムにおける圧力/流れ試験は、大型のプロセス規模カラムにおける実際的な有用性を示し得る。例えば、直径1cmのカラムにおいて50psiの特定の流速を支持する樹脂は、典型的に、(同一床高さで)直径10cm以上のカラムにおいて充填される場合にその値の30〜40%の流速のみを支持する。樹脂は、1cm×10cmのカラムで充填される場合、プロセス規模クロマトグラフィバイオ分離に関していずれの有用性も有するように50psi(0.34MPa)において>300cm/時間の流速(4ml/分)、好ましくは50psiにおいて>600cm/時間を支持しなければならないと一般的に考えられる。
【0015】
生物学的分子の精製のために、多種多様なクロマトグラフィ粒子が市販品として入手可能である。これらの樹脂およびそれらの組成物に関する多くの詳細な記載は、「Immobilized Affinity Ligand Techniques」、G.T.ハーマンソン(G.T.Hermanson)、A.K.マルリア(A.K.Mallia)およびP.K.スミス(P.K.Smith)、アカデミック プレス(Academic Press)、NY、1992、1〜41ページに提供される。これらの材料の大部分が分析規模分離に関して有用であるが、選択されたもののみがプロセスまたは大規模において有用であることがわかっている。例えば、天然の多糖類アガロースおよびセルロースをベースとする支持は、親水性、高容量、低い非特異的結合などの所望の特性を有する。プロセス規模において有用であるように、アガロース材料は、適度に高い流速を支持するために必要とされる剛性を達成するために、著しく高レベル(例えば6%以上)で架橋されなければならない。しかしながら、架橋プロセスは容量の低下をもたらす。ポリアクリルアミドをベースとする支持は、良好なpH安定性、優れた化学的安定性、低い非特異的結合および微生物の攻撃に対する耐性という有利な特性を有するが、一般的に非常に軟質であり、そして通常、数cm/時間のみの流速を可能にする。多糖類デキストランおよび合成モノマーの複合材料をベースとするセファクリル支持も小規模精製に関して良好な支持であるが、一般的にそれらの軟質、圧縮性のために低い流速を被る。
【0016】
一実施形態において、本発明は、効率的な大規模バイオ分離のための軟質、圧縮性の固定相の使用を可能にする複合濾過媒体を提供する。かかる複合フィルター媒体は、軟質微粒子を使用して高容量、高処理量および良好な流速を提供する。本明細書で使用される場合、「軟質」とは、適用された力の軸に沿って少なくとも10%変形し得る粒子を指す。球形ビーズに関して、かかる軟質粒子は、粒子の縦横比において少なくとも10%の変化を受ける。例えば、少なくとも50psi(0.34MPa)の圧力下のクロマトグラフィカラム中で1の初期縦横比を有する軟質球形のビーズは、0.9以下の縦横比まで変形する。
【0017】
完全剛性および高圧に耐え得る無機および有機ポリマーをベースとするクロマトグラフィ樹脂を調製することができる。しかしながら、プロセス規模の充填床カラムに関して必要とされる高い直線流速を達成することにおいて、粒度および粒度分布も非常に重要なパラメーターである。小さい粒子(例えば約50マイクロメートル未満の直径の粒子)は分析規模において有利であり得るが、それらは非常に高い背圧(例えば100代〜1000代のpsi)を導く可能性がある。かかる圧力はプロセス規模において許容されないため、これらの粒子の製造は、通常、「微粉」または小さい粒子を除去するための分類または粒子サイジング操作を含む。大きい粒子または特大粒子は除去され、カラムフォーマットにおける均一な充填および流れ分布のために比較的狭い粒度分布が提供される。この分類プロセスは樹脂の産出低下および製造コスト増加をもたらし、そして最終的に生物薬剤学的な最終製品のコスト増加が導かれる。調節細孔ガラスなどの他の剛性マトリックスは非常に脆く、従って大規模において圧力/流れ特性に有害である微粉を発生させる粒子の破砕および粉砕を避けるために非常に注意深く取り扱わなければならない。
【0018】
本発明は、効率的な大規模バイオ分離に関して、50マイクロメートル未満および好ましくは30マイクロメートル未満の平均粒度を有する固定相の使用を可能にする複合濾過媒体を提供することによって当該分野における問題を解決する。かかる複合フィルター媒体は、これらの微粒子を使用して、低い圧力低下を伴って高容量、予想外に高い処理量および良好な流速を提供する。本発明は効率的な大規模バイオ分離のための未分類樹脂の使用も可能にする。
【0019】
もう1つの態様において、本発明は、生体高分子(または関連生体高分子の場合、一種以上の生体高分子)を固定相微粒子に選択的に結合して標的分子:固定相微粒子生成物を形成するように生体高分子と結合可能な固定相微粒子がその上流面上に位置する複合フィルター媒体を含むフィルターカートリッジを含有する分離系を提供する工程を含む生体高分子の分離方法(精製を含み得る)を提供する。好ましくは、フィルターカートリッジはデッドエンドフィルターカートリッジである。使用される方法は、溶質として少なくとも一種の生体高分子を含む溶液を含有する貯蔵器と、好ましくは閉ループアセンブリを形成するポンプおよび関連チューブとを含んでもよく、そしてフィルターカートリッジを通して溶液をポンピングし、任意に生体高分子を遊離するように生体高分子:固定相微粒子生成物結合相互作用を逆転可能である閉ループアセンブリを通して溶出溶液をポンピングする。もう1つの態様において、複合フィルター媒体を含むフィルターカートリッジが提供される。
【0020】
なおもう1つの態様において、フィルターカートリッジとフィルターカートリッジハウジングとを含む分離フィルターアセンブリが提供され、本発明の複合濾過媒体の固定相微粒子は生体高分子を結合することができる。さらに本発明は、他の生体高分子溶質化合物を含有する溶液から生体高分子溶質を分離、精製または濃縮する方法を提供する。この方法は比較的低い圧力で実行され、そして特に大規模なバイオ分離のために適切である。
【0021】
特に本発明の方法は、ポンプおよび溶液貯蔵器に連結された適切なハウジング内に含有される複合フィルター媒体を含む液体フィルターカートリッジを提供する。複合フィルター媒体は、固定相微粒子が多孔性濾過層の上流面に主に置かれるように、液体(一般的に水)中で吸着性、イオン交換性、親和性および疎水性固定相微粒子の少なくとも一種を含むスラリーをポンピングして濾過層を部分的に充填するプロセスによって調製され得る。次いで固定相との結合会合によって重要な生物学的溶質が溶液から分離されるように、分離されるべき生物学的混合物の溶液をフィルターカートリッジを通してポンピングする。一般的に、分離された(すなわち、結合された)生物学的溶質を回収するための手順が実行される。
【0022】
溶出または単離工程の間、次に固定相への結合の逆転をもたらすことが可能な溶液をフィルターカートリッジを通して、好ましくは生物学的溶液混合物の初期容積より小さい溶液容積においてポンピングされる。フィルターエレメント中を通過する溶液から、選択された生体高分子溶質の結合は、吸収または化学的相互作用によって可能である。好ましい結合メカニズムとしては、吸着、イオン交換、疎水性会合および親和性結合が挙げられる。分離工程において、以前結合された生体高分子を単離および精製するために結合を逆転させることができる。
【0023】
本願において:
「生体高分子」は、少なくとも500の分子量を有する細胞の構成物または産物、例えばタンパク質、炭水化物、脂質または核酸を意味し;
「濾過層」は、シングルシートを提供するために組み合わせることができる一層以上の個々の層を含むシート様織物または不織物多孔性材料を意味し;
平均細孔径は1マイクロメートルより大きく、そして50マイクロメートルまでであり;
「複合濾過媒体」または「複合フィルター媒体」は、その上流面に位置する固定相微粒子の層を含む濾過層を意味し;媒体は、最高0.25メガパスカル(MPa)のフィルターカートリッジ圧力において少なくとも0.01cm/分の流動速度を維持することができ、「複合濾過媒体」は、流体通過のために構成されたその上流面上に配置された一層以上の濾過層および収着剤微粒子層を含み;それは濾過/分離/精製操作を達成する分離フィルターアセンブリの実際の構成物であり;
「標的分子」は、本明細書に記載される複合濾過物品が液体供給流または溶液混合物供給流から分離されるように設計される一種以上の化学種を指す。標的分子としては、例えば医薬種、生体高分子、例えば細菌、酵母、哺乳類、植物または昆虫細胞によって発現されたタンパク質および抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、DNA、RNA、鉱物、ならびに人工化学種、例えば合成小有機分子、ペプチドおよびポリペプチド、オリゴ糖および糖変性タンパク質が挙げられる。いくつかの実施形態において、標的分子は一種以上の不純物または廃棄物であり得、タンパク質、無機種、例えば金属、金属イオンまたはイオン、例えば炭酸イオン、硫酸イオン、酸化物イオン、リン酸イオン、重炭酸イオンおよび工業的に一般に見られる他のイオン、住居的および生物学的供給流、小有機分子、例えば限定されないが、染料、殺虫剤、肥料、添加剤、安定剤、プロセス副産物および汚染物質を含むもの、DNA、RNA、リン脂質、ウイルスまたはバイオプロセスからの他の細胞細片が挙げられる。なおさらなる実施形態において、上流の親和性分離プロセスからの浸出配位子、例えば、タンパク質Aまたは他の親和性配位子も標的分子であり得る。他の実施形態において、本明細書に記載される複合濾過物品を使用して、例えば吸着または酵素反応のいずれかを経て、廃棄物または飲料水流から様々な化学種または生物種を除去することができる。
「フィルターカートリッジ」は固定相微粒子が充填され得る濾過デバイスを意味し;
「フィルターカートリッジハウジング」は、フィルターカートリッジのための支持構造を意味し;
「マクロ多孔性」は、乾燥状態においても永久多孔性構造を有する粒子を指す。溶媒と接触時に樹脂は膨張し得るが、多孔性構造を通して粒子の内部への接近を可能にするために膨張は必要でない。
「ゲル型樹脂」または「ゲル」は乾燥状態において永久多孔性構造を有さないが、適切な溶媒によって膨張して粒子の内部への接近を可能にする。マクロ多孔性およびゲル粒子は、Sherrington、Chem.Commun.、2275−2286(1998)にさらに記載される。マクロ多孔性イオン交換樹脂は、典型的に20〜3000オングストロームの径の細孔を有する(すなわち細孔径は、窒素吸着を使用して様々な相対圧力で低温条件下で、または水銀圧入ポロシメトリーによって特徴づけられる)。
「分離フィルターアセンブリ」は、その上流面上に固定相微粒子が位置する複合フィルター媒体を含むフィルターカートリッジ、好ましくはデッドエンドフィルターカートリッジを含有するハウジングを意味し;
「分離系」は、貯蔵器中に含有された少なくとも一種の生体高分子溶質を含む溶液混合物、分離フィルターアセンブリまたはクロマトグラフィカラム、ポンプおよび関連チューブを意味し;
「分離デバイス」は、デバイスを通しての流体通過の少なくとも1つの手段と、デバイス内で固定相微粒子を保持する手段とを含む容器を意味し;
「流動速度」は、フィルタリングエレメント中を通過する液体流の速度を意味し、そして濾過層の断面表面積によって分割される流速と等しい。このように記載されて、液体流の流れを特徴づけることができ、そしてこれは濾過層のサイズに依存しない。流動速度はフィルターを横切る圧力低下にも関与し、すなわち、流動速度の増加は一般的に系圧の増加を意味する。市販フィルターカートリッジの適用において、液体流の最大量を処理する最小サイズのフィルターを提供することは非常に所望である。従って、流速を増加させることによって流動速度を増加させることは望ましい;
「固定相微粒子」は、溶液混合物中の重要な構成物と結合会合を形成することができる不溶性微粒子を意味し;具体的な結合会合としては、吸着、イオン交換、疎水性および親和性相互作用が挙げられる;
「不溶物」は、23℃で100部の溶媒中に1部以下の微粒子が溶解することを意味し;そして
「フィルターカートリッジ圧」は、分離系においてフィルターカートリッジユニットを横切る圧力の、インレットまたは上流とアウトレットまたは下流との間の差異を意味する。
【0024】
本発明のプロセスは、生体高分子の分離のために利用される従来のマクロ多孔性微粒子を含む従来技術のフィルターの問題を解決する。フィルタリングエレメント内に固定相微粒子を含有する従来技術のフィルターは製造の課題を示し、そして限定容量のみを提供する。微粒子のより高い充填は、多孔性の低下およびそれに伴うオペレーティング系圧の増加をフィルタリングエレメントにもたらす。本発明は、比較的低いフィルターカートリッジ圧において微粒子の高い充填容量を提供することによって、従来技術のフィルターのこれらの課題を解決する。
【0025】
図1は、その上流面に不溶性の固定相微粒子12が位置する一層以上の個々の層であり得る表面濾過層11として好ましい不織物ウェブを含む複合濾過媒体10の横断面の略図である。均一な多孔性および明確に画定された孔を有する不織物濾過層11は、粗い上流プレフィルター層13と、次第に微細になる下流多孔性を有する多数の不織物濾過層を含む濾過層14と、下流不織物カバー層15とを含み得る。
【0026】
図2は本発明の好ましい実施形態の図である。フィルターカートリッジを製造するために利用される複合濾過媒体20上のエンボス形状22のパターンのノンプリーツ部分の斜視図が示される。正面の表面積を増加させ、そして表面フィルタリングエレメントをより完全に画定するためにエンボス加工が実行される。明瞭さのため、不溶性固定相微粒子は図から省略される。
【0027】
図3は、本発明の好ましい実施形態の長軸方向に延在する円筒状プリーツフィルターエレメント30の斜視図であり;本発明の好ましい混成放射状プリーツ濾過エレメント30の放射プリーツ32が示され;再び明瞭さのため、固定相微粒子は省略される。
【0028】
図4は、円筒状フィルターカートリッジ40のための内外の補足的な支持部材を例示する斜視図であり、これは本発明の好ましい実施形態である。外部支持構造41、例えば多数の穴を有するスクリムまたはスクリーンは、フィルターエレメントの破裂の可能性を低下させるインワード−アウトの流体流動モードで追加的な支持を提供することができる。同様に、スクリムまたはスクリーンからなる内部支持構造42ならびに多孔性ケーシングまたは類似の構造体は、好ましいインワード−アウトの流体流動状態における高圧適用下でのフィルターエレメント(図示せず)の崩壊を防止する支持を提供することができる。両方の場合で、補足的な支持構造は、通常、必要不可欠なユニットを提供するためにフィルターカートリッジの終片43に取り付けられる。
【0029】
図5は本発明の分離フィルターアセンブリ70の斜視図であり、これは本発明の好ましい実施形態である。フィルターハウジング71はフィルターカートリッジ(図示せず)を含有する。分離ループにおいて、インレットポート72は、好ましいアウトワード−インモードで溶液混合物をフィルターカートリッジに入れる。液体はアウトレットポート73を通して分離フィルターアセンブリ70を出る。好ましいアセンブリにおいて、分離ヘッド74は、張力調節コントロールノブ76を有するネジ付きボルト(図示せず)を利用して、メカニカルクランプ75によってフィルターハウジング71に取り付けられる。単離ループにおいて、インレットポート77は好ましいアウトワード−インモードで脱結合溶液をフィルターカートリッジに入れ、そして得られた溶液はこの時点で所望の生体高分子溶質を含有しており、これはアウトレットポート78を通して分離フィルターアセンブリ70を出る。
【0030】
図6は本発明の分離系80の概略図である。貯蔵器81は、水性固定相微粒子スラリー82および/または生体高分子溶液混合物82を含有し、撹拌装置83によって撹拌が提供される。スラリーまたは溶液82は分離フィルターアセンブリ86(フィルターカートリッジ(図示せず)の濾過層の上流面上に位置する固定相微粒子を含有する)を通してポンプ85によってアウトレットチューブ84からポンピングされ、そしてインレットチューブ87を経て貯蔵器へ戻される(矢印は液体流動方向を示す)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、濾過層の上流面上において生体高分子に結合可能である固定相微粒子を組み入れる複合フィルター媒体を含む分離フィルターアセンブリを含む生体高分子の単離および精製のための物品および方法を提供する。もう1つの実施形態において、本発明は、濾過層の上流面上において生体高分子に結合可能である固定相微粒子を含む分離デバイスを利用する大規模バイオ分離の方法を提供する。固定相微粒子は、50マイクロメートル未満の平均直径を有する有機または無機粒子と、軟質微粒子と、破砕多孔性モノリシック材料とを含んでもよい。
【0032】
分離フィルターアセンブリは、上記複合フィルター媒体を含む液体フィルターカートリッジと、一種または好ましくは二種以上の生体高分子を含む溶液の貯蔵器に連結したフィルターエレメントのための適切なカートリッジハウジングとを含む。フィルターカートリッジは適切なチューブによって溶液が通過可能なポンプに連結される。この溶液は、複合フィルター媒体を通して、微粒子への結合または結合された生体高分子を遊離するための溶出溶液によって分離される選択された生体高分子を含み得、そして貯蔵庫に戻される。そのため得られた溶液は、遊離生体高分子をさらに捕捉して分離を完了するため、または所望であれば結合された生体高分子を溶出するため、複合フィルター媒体を通して繰り返し循環可能である。この物品および方法は大規模なバイオ分離において有用である。
【0033】
特に本発明は、
1)生体高分子と吸着、イオン交換、疎水性または親和性結合が可能である(本明細書に記載の)固定相微粒子がその上流面上に位置する複合フィルター媒体を含むフィルターカートリッジ(好ましくは、デッドエンドフィルターカートリッジ)と、一種または二種以上の生体高分子溶質を含む溶液混合物を収容する貯蔵器と、(好ましくは閉ループ系を形成する)ポンプおよび関連チューブとを含有する分離系を提供する工程と、
2)(任意に再循環を伴って)固定相微粒子への選択された生体高分子の結合を達成するためにフィルターカートリッジアセンブリを通して溶液混合物をポンピングする工程とであって、フィルターエレメントを通してのポンピングが、最高0.34MPa、好ましくは最高0.25MPa)のフィルターカートリッジ圧力において少なくとも0.01cm/分、好ましくは少なくとも0.10cm/分、そしてより好ましくは少なくとも0.30cm/分の流動速度で実行される工程と;
3)任意に、開ループまたはワンパス手順において、選択された吸着、イオン交換、疎水性または親和性結合相互作用によって、固定相微粒子に結合されない望ましくない生体高分子および他の溶質を除去するために適切な液体によって生体高分子:固定相微粒子生成物を洗浄する工程と、
4)任意に、分離および精製された生体高分子を遊離するために生体高分子:固定相微粒子結合相互作用を逆転する脱結合溶液の好ましくは(最初の溶液混合物の容積と比較して)減少された容積をポンピングする工程と、
を含む生体高分子の分離または精製の方法を提供する。
【0034】
液体流の濾過による微粒子の除去は、以下の濾過メカニズムの1つまたは組み合わせを適用することによって達成され、各メカニズムによって操作される液体フィルターカートリッジは現在、市販品として入手可能である。本発明は、濾過層が流動分離系において固定相微粒子を保持するこれらの濾過メカニズムを利用する。
i)表面濾過−この手順は、微粒子を含有する液体流が、大きさを設定された穴または孔の分布を有するフィルターエレメントに直面し、そして微粒子に濾過層を通して湾曲した経路を提供するものである。従来技術においては、微粒子は濾過層内での吸着および/またはエントラップメントによって大部分が除去された。表面濾過は、しばしば系に適用される粗いかまたは第1の濾過手順であり、数百マイクロメートル(直径で最大の寸法)から約1マイクロメートルまでの粒度を有する微粒子を除去するように設計されたものであって、不明確な細孔径のため微粒子の不完全な除去の問題があり、そしてフィルターが充填されるとフィルターカートリッジ圧は一定に迅速に増加する。
ii)表面(ケーキ)濾過−この手順は本発明において好ましく、液体流の処理において表面濾過に続いてしばしば行なわれる。従来技術において、これは明確に画定された細孔径を有するガラスまたはポリマーマイクロファイバーの多層を使用して一般的に実行され、そして微粒子は一般的に濾過層内に浸透しないが、層の上流面上に閉じ込められたままである。約0.1マイクロメートルまでの粒度の微粒子が効率よく充填され得る。高い流動速度は容易に達成可能であり、そしてフィルターがほぼ充満されるまで、比較的多量の微粒子が比較的低い系圧において充填される。本発明において、液体流の多くの逆転によって濾過層の表面上で濾過された粒子を充填または再調整することは都合がよい;このような機会は深層フィルターで存在しない。
iii)膜(スクリーンまたは篩分け)濾過−この濾過メカニズムは、精密に画定された非常に小さい孔が存在することを除いて表面濾過と非常に類似しており、0.05マイクロメートル程度の小さい径の微粒子の充填が可能である。
【0035】
本発明は接線流および「デッドエンド」カートリッジフィルターにおいて使用されてもよい。接線流または放射膜カートリッジフィルターにおいて、フィルタリングエレメントは液体流動と平行して平面に提供され、そして2つの廃棄物または浸透物が生じ:一方は濾過され(またはフィルタリングエレメントを通過させて処理加工される)、そしてもう一方は濾過されない。これらのフィルター配列は低圧で操作され、そして未処理の浸透物が理論的には再生利用され得るが、これらの系は本質的により複雑であり、そしてエレメントを通しての比較的低い流れのため液体流を完全に加工することがより遅く;また、フィルタリングエレメントが生体高分子を保持するためにいくつかの様式において変性される場合、完全な保持はエレメントを通してワンパスで必要とされる。
【0036】
「デッドエンド」フィルターにおいて、全ての液体流はエレメントを通過する必要があり、そして一種の浸透物のみが生じる。フィルタリングエレメント上または内の固定相との相互作用によって分離が生じる分離ユニットを考慮すると、デッドエンドカートリッジフィルターは、非常に広いが浅いカラムと相似している。高い流速で、生体高分子の単一パス保持は比較的低くてもよいが、繰り返し循環することによって生体高分子の廃棄物の高パーセンテージが保持され得る。
【0037】
本発明において有用な表面フィルターカートリッジは米国特許第3,058,594号明細書の標準垂直プリーツフィルターを含み、そして特に好ましくは米国特許第4,842,739号明細書の水平の混成放射状プリーツフィルターを含む。フィルターカートリッジが一般的に垂直に使用され、そして流れが止められた時およびカートリッジが使用間に貯蔵されたときにより高いパーセンテージの粒子が水平プリーツ内に保持されるため、(図3で示されるような)プリーツの水平配列が本発明において好ましい。プリーツの水平配列は一般的に、カートリッジ中へのより多量の濾過層表面領域の充填を可能にし、従って、垂直にプリーツのあるカートリッジの場合よりも微粒子による充填に関してより高い能力が導びかれる。他のフィルターカートリッジ、例えばストリング巻き、樹脂結合、およびスプレースパン深層フィルターも利用されてよいが、一般的に、比較的低い系圧を同時に維持しながら表面式フィルターと同様に多くの微粒子を受け入れる能力に欠ける。
【0038】
標準的な円筒状の垂直プリーツフィルターカートリッジは、フィルターエレメント材料、例えばセルロース、セルロース−ポリエステル、ガラス−セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンおよびセラミックと一緒に様々なサイズでアメテク/US フィルター(Ametek/US Filter)(ペンシルバニア州、ワレンダール(Warrendale,PA))から入手可能であり、そして例えば、1、2、3、5、10、20、30および50マイクロメートルの平均公称細孔径を有する。全ポリプロピレン構成の好ましい円筒状混成水平放射状プリーツ表面式フィルターカートリッジは、様々なサイズで3M フィルトレーション プロダクツ(3M Filtration Products)(ミネソタ州、セントポール(St.Paul,Minn.))から購入可能であり、2、5、10および20マイクロメートルの平均公称細孔径を有する。より小さい規模の分離に対して有用であるより小さい使い捨てカプセルフィルターは、フィルターエレメント材料、例えばポリアミド、例えばアクリルコートナイロンおよびポリプロピレンと一緒に様々なサイズでポール コーポレイション(Pall Corporation)(ニューヨーク州、イーストヒルズ(East Hills,NY))から購入可能であり、例えば1、3および5マイクロメートルの平均公称細孔径を有する。
【0039】
結合(分離工程)および溶出または脱結合(単離工程)相互作用はフィルターカートリッジ製造業者から入手可能なフィルターカートリッジハウジングを使用して実行可能であるが、これらのハウジングは、一般的に1組のみのインレットポートおよびアウトレットポートを有する。結果として、脱結合溶液が導入されるときに、精製された生体高分子の非常に所望の濃度を達成することは難しい。好ましいフィルターカートリッジハウジングは、より小さいサイズのインレットポートおよびアウトレットポートの追加的なセットを有する。このようなより小さいポートのセットは、一般的に非常に減少された溶液の総容積において生体高分子の脱結合を達成するために有利に利用され得るため、精製された生体高分子は同様にプロセスにおいてより濃縮された溶液において得られる。
【0040】
好ましくは、本発明の濾過媒体の組成は、その上流面上に不溶性固定相微粒子がランダムに配置された1以上の不織物層を含む。機械的見地から、そして利用される溶媒に関して、ほぼ例外なく水が利用されるため、そして本質的に上記で明示された濾過層材料の全ては一般的に水中で良好に実行されるため、バイオ分離を実行するときに濾過媒体の組成は重要ではない。有効性、コストおよび不活発性のため、好ましい材料はポリプロピレンである。
【0041】
濾過層の細孔径の選択は、その上流面上に保持される固定相微粒子の粒度範囲に直接依存し、そして一般的に最小の微粒子粒度と一致する。しかしながら、たとえ一部の微粒子が濾過層の細孔径より小さい粒度を有するとしても、有用な複合濾過媒体を得ることができることが決定されている。これらのより小さい微粒子は初期サイクルにおいてフィルタリングエレメントを通過し、その後のサイクルでは微粒子の床が蓄積し、デバイスは深層フィルターの性質を呈し、そしてこれらのより小さい粒子も本発明において除去および利用可能である。しかしながら、時間効率および好ましい表面濾過モードにおいてフィルターカートリッジを利用するため、固定相微粒子の少なくとも95%がフィルターを通して第1のパスにおいて除去される表面フィルターカートリッジユニットを利用することが好ましい。
【0042】
一般的に、公称で平均0.1〜10マイクロメートルで評価されるフィルターカートリッジはこれらの基準を満たし、そして本発明において利用される微粒子のための効率的なフィルタリングエレメントを提供し、そしてまた低いフィルターカートリッジ圧において比較的高い流動速度を送達することができる。それらは存在し得る外来の粒子からのみではなく、高濃縮された生物学的溶液混合物中でしばしば生じる懸濁した生物学的材料によってさえも目詰を受けやすいので、多孔性、非繊維状膜などの0.1マイクロメートル未満の平均細孔径を有する濾過層は一般的に有用でない。
【0043】
本発明の目的のために、固定相微粒子は、以下の相互作用:吸着、イオン交換、疎水性会合および親和性結合の1つまたは組み合わせによって溶液混合物中の生体高分子と結合するか、または強く会合する。本発明において有用な活性収着剤粒子の二種以上をいずれかの割合で予混合することができる。
【0044】
本発明において有用な固定相微粒子の粒度は、利用されるフィルターカートリッジの性質に依存して、小部分、例えば5%未満がサブマイクロメートル(最大平均直径)である分布から、破砕モノリシック微粒子に関しては数ミリメートル程度の大きさまで、軟質微粒子に関しては1000マイクロメートル程度の大きさまで、そして無機および有機微粒子に関しては50マイクロメートル程度の大きさまでの範囲であり得る。
【0045】
軟質固定相微粒子の粒度は、好ましくは直径でサブマイクロメートルから400マイクロメートル、より好ましくは1〜200マイクロメートルおよびの最も好ましくは5〜100マイクロメートルの範囲である。いくつかの例において、広い範囲内に収まる2以上の粒度範囲の微粒子材料を利用することは都合がよいことがわかっている。硬質微粒子または軟質微粒子のいずれも球形状、規則形状または不規則形状を有してよい。破砕モノリシック微粒子は不規則形状を有する。
【0046】
本発明の複合フィルター媒体を使用して、50マイクロメートル未満の硬質微粒子の粒度が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、30、20または10マイクロメートル未満の粒度が使用されてもよい。従来は、かかる「微粉」は、カラムの充填および使用間に遭遇する高圧のため有用ではないと考えられていた。本複合フィルターは、大規模バイオ分離のため、そして典型的に0.34MPa未満の圧力において、かかる微粉の使用を可能にする。特に吸着プロセスにおいて、より小径の粒子がより小さい拡散バリアを有するため、50マイクロメートル未満の粒度が有利に使用され得る。従って、本発明の分離デバイス中への小径粒子の組み入れは、バイオ分離プロセスにおけるより迅速な捕捉動力学および全体的な処理量増加をもたらし得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明において有用な粒子は粒子重量と比較して高い水収着容量を有する。従来は、水膨張性または緩衝液またはpH変化による寸法変化を受ける粒子は、使用間に寸法変化を生じ得るため望ましくないと考えられていた。それが圧力の劇的な変化を導き得る場合、チャネリングを生じ得る場合または流れを制限し得る場合、これは特に充填されたクロマトグラフィカラムにおいて望ましくない。かかる寸法変化は軟質ゲル微粒子の特徴であるが、本発明の分離デバイスにおいて悪影響を生じないことがわかっている。さらに、それと反対に、かかる軟質ゲル微粒子は、従来のクロマトグラフィ粒子より高い容量を有し得ることがわかっている。
【0048】
本発明の重要な特性は、重要な生体高分子との結合相互作用に関与する官能基を比較的高濃度で有する微粒子支持を利用することは一般的により多量の選択された生体高分子を分離し得るということである。支持微粒子によって、利用可能な高濃度の官能基を提供するために、比較的高い表面積が望ましい。好ましくは、微粒子の表面積は少なくとも10m2/g、より好ましくは少なくとも50m2/g、そして最も好ましくは少なくとも100m2/g、さらには5000m2/gまでである(気体吸着測定によって決定される)。軟質またはゲル微粒子によって、官能基の濃度はしばしば架橋密度を低下させることによって増加可能であり、これによって軟質粒子も生じ得る。最適の架橋密度は、微粒子材料の化学組成に依存する。例えば、アガロースをベースとする支持によって、6%未満の架橋密度は、より高い官能基密度および付随するより高い生体高分子容量を有する支持を提供する。アクリルおよびスチレンをベースとする微粒子によって、20%未満の架橋密度は、適切な官能基のより多量の組み入れを可能にする。
【0049】
溶質および固定相微粒子の間の様々な相互作用は、比較的弱い引力、例えば双極子間、イオン−双極子間およびイオン間相互作用を含み得る。本発明で効率的に結合される少なくとも500の分子量を有する生体高分子を製造することは、これらの相互作用のいくつかが生体高分子と固定相との間の比較的大領域の接触において生じ、そして正味の強い引力が生じるということである。
【0050】
吸着分離は、固定相の極性基と生体高分子上の多種多様な極性基との結合会合を利用する。これらの結合会合は一般的に、双極子間およびイオン−双極子間相互作用の形態である。固定相と生体高分子溶質との間の上記結合会合が最大化されて結合がもたらされるように、精製操作の結合段階または分離段階は通常、比較的低イオン強度の緩衝水溶媒から行われる。低イオン強度の緩衝水溶液による洗浄後、一般に利用される溶出溶液は比較的多量の溶解塩および付随する高イオン強度を有するため、固定相と溶解塩との間の相互作用によって固定相から生体高分子が置換され、そして生体高分子は再溶解し、より純粋な形態で分離系から回収可能である。
【0051】
好ましい吸着固定相微粒子は、ヒドロキシアパタイト、アルミナおよび酸化ジルコニウムを含む(米国特許第5,015,373号明細書に開示される通り)。イオン交換分離は、多くの生体高分子がイオン荷電されるという事実を利用する。さらに、これらのイオン荷電された基(例えば、プロトン化アミンおよびカルボキシレート)の多くは、pHの変化によって中性および非荷電になり得る。これによって、それらの等電点に基づく生体高分子の分離のための高感度かつ非常に効果的な技術が提供される。等電点は、電荷の中立性が存在するか、または分子内の負荷電基の数と正荷電基の数が同一である点のpHであるpI値によってしばしば表示される。pHがpIより高く維持される場合、生体高分子を結合するためにアニオン交換樹脂を使用することができ;逆に、pHがpIより低い場合、カチオン交換樹脂は、溶液混合物からの生体高分子の結合および除去をもたらし得る。この技術によって、生体高分子上のアクセス可能または表面電荷の差異がわずかであっても有効な分離をもたらすことができる。不溶化された生体高分子:固定相微粒子生成物の洗浄後、イオン交換固定相微粒子からの結合生体高分子の溶出は、比較的高濃度の塩溶液を導入することによって一般的に行われる。ここでは、塩溶液の相当するイオンが固定相微粒子からの生体高分子と交換されて置換される。あるいは溶出は、溶出溶液のpHの変化によって達成可能である。かかる硬質無機微粒子は、50マイクロメートル未満、好ましくは30マイクロメートル未満の平均粒径を有し得る。
【0052】
微粒子のポリマーマトリックスは様々な物質を含有してもよく、限定されないが、架橋アガロース、架橋ポリスチレン、親水性ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂およびメタクリレートをベースとする樹脂が挙げられる。イオン交換体官能基成分としては、限定されないが、スルホプロピルカチオン交換体、カルボキシメチルカチオン交換体、スルホン酸交換体およびホスホン酸交換体からなるリストから選択されるカチオン交換体が挙げられる。他の実施形態において、イオン交換体成分としては、限定されないが、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)およびジメチルアミノエチル(DMAE)からなるリストから選択されるアニオン交換体が挙げられる。いくつかの実施形態は、カチオン、アニオンおよび疎水性相互作用の組み合せを含み得る。
【0053】
有用なアニオン交換樹脂は、第三級および第四級アンモニウム基を含有するように変性されたアガロース、デキストランおよびセルロースポリマーを特徴とする。カチオン交換樹脂は、カルボキシレートおよびスルホネート基を有するが同一のベースポリマーを特徴とする。
【0054】
有用なイオン交換樹脂は、マイツナー(Meitzner)ら、米国特許第4,501,826号明細書、同第4,382,124号明細書、同第4,297,220号明細書および同第4,224,415号明細書に記載される一般的な技術によって調製され得る。いくつかの実施形態において、より小量の架橋剤が使用されるが、記載されたマクロ多孔性微粒子よりもむしろゲル微粒子を製造するために十分である。架橋剤の量は0.5より大きい膨張度を提供するものであり、そして一般的に100部の全ポリマーを基準にして、20重量部未満である。アクリルアミド型モノマーに基づく有用なイオン交換樹脂は、譲受人の同時係属特許出願、米国特許出願第10/849,700号明細書に開示される。
【0055】
疎水性相互作用および逆相クロマトグラフィは、多くの生体高分子の疎水性を利用する。生体高分子の疎水性部分と固定相微粒子の疎水性官能基との相互作用は、溶液混合物からの生体高分子の結合会合および分離をもたらす。この手順は、一般的に比較的高いイオン強度の水溶液からの結合によって実行される。この様式では、生体高分子は、ほとんど「脱塩された」溶液で開始するにはいくぶん不安定に可溶性であり、そして疎水性固体支持に容易に結合する。溶出は一般的に、イオン強度が低下された(そして生体高分子に対する溶媒効率が増加された)水溶液を利用することによって行われ;あるいは、固定相微粒子との不溶性錯体から生体高分子を除去するための補助溶媒として、アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノールおよびN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒が50重量%までの量で水と一緒に利用されてもよい。
【0056】
有用な疎水性相互作用の固定相微粒子としては、限定されないが、例えばブチル、オクチルおよびフェニル基の包含によって変性されるアガロースをベースとする支持およびアクリル支持が挙げられる。有用な逆相微粒子としては、限定されないが、スチレン−ジビニルベンゼン支持およびオルガノシラン変性シリカ支持が挙げられる。
【0057】
親和性クロマトグラフィは、一般的に、配位子または生物特異性エフェクターを固定相微粒子に共有結合することによって機能する。「鍵と鍵穴」の関係によって生体高分子と相互作用する能力のため、この配位子またはエフェクターは選択される。例えば、タンパク質が分離が望ましい生体高分子である場合、共有結合された配位子またはエフェクターは、しばしば、タンパク質の活性部位(「鍵穴」)に強く結合する基材または抑制剤(「鍵」分子)である。このプロセスの高い選択性は、錯体混合物からの生体高分子のワンステップ精製を可能にする。しばしば溶出はpHの単純な変化によって達成されるが、脱結合溶液および技術は各生体高分子−配位子対に対して特異的であり、そして具体的な説明は製造業者から得ることができる。
【0058】
有用な親和性クロマトグラフィ固定相微粒子は、(相当する生体高分子親和性を有する)配位子をいくつか有するアガロース、セルロースおよびビニルポリマーを含む様々なベースマトリックスを有する。例として、アルギニンおよびベンズアミジン(セリンプロテアーゼ)、シバクロンブルー(アデニルを含有する補助因子、アルブミン、凝固因子、インターフェロンを必要とする酵素)、カルモジュリン(ATPアーゼ、タンパク質キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、神経伝達物質)、ゼラチン(フィブロネクチン)、グルタチオン(ストランスフェラーゼ、グルタチオン依存タンパク質、融合タンパク質)、ヘパリン(成長因子、凝固タンパク質、ステロイドレセプター、限定エンドヌクレアーゼ、リポタンパク質、リパーゼ)、タンパク質AおよびG(IgGおよびサブクラス)、L-リジン(プラスミノゲン、プラスミノゲン活性剤、リボソームRNA)、プロシオンレッド(NADP+依存酵素、カルボキシペプチダーゼG)、コンカナバリンAおよびレクチン(グリコタンパク質、膜タンパク質、グリコ脂質、多糖類)、ならびにDNA(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、T−4ポリヌクレオチドキナーゼ、エキソヌクレアーゼ)が挙げられる。
【0059】
本発明の複合フィルター媒体を使用して、50マイクロメートル未満の固定相粒度が使用されてもよい。従来は、かかる「微粉」は、カラムの充填および使用間に遭遇する高圧のため有用ではないと考えられていた。本複合フィルターは、意外なことに、約50psi(0.34MPa)未満の圧力における大規模バイオ分離のため、かかる微粉の使用を可能にする。さらに、軟質微粒子ゲルが使用されてもよい。従来、軟質微粒子は、ゲル粒子の変形、ならびに得られる高圧および/または低流速のため予備分離に関して有用ではないと考えられていた。
【0060】
好ましい実施形態において、破砕または粉砕モノリシック樹脂が収着剤固定相微粒子として使用されてもよい。従来のモノリシック材料において、要求されるモノマーおよびポロゲンによってクロマトグラフィカラムを充填し、そして現場重合して、樹脂の固体連続プラグを生じる。この手順は、従来、比較的小規模のカラムにおける分離にのみ適用可能であった。
【0061】
出願人は、プラグを生じる適切な容器中でこれらのモノリシック材料を調製し、次いで粉砕して不規則形状粒子を製造することができることを発見した。製造されたこれらの粒子は比較的広い粒度分布(一般的に約0.1〜1000マイクロメートル)を有し、それは本発明の複合フィルターにおいて使用されてよい。このように、モノリシック材料の固有の多孔性および動力学的吸着特性は、大規模なバイオ分離に適応可能である。所望であれば、粉砕された不規則形状粒子をサイズによって分類してもよく、または製造されたまま使用してもよい。従来、規則形状(すなわち、球形)粒子は懸濁液重合によって製造され、粒度範囲を狭めるため、そして/または微粉を除去するために分類された。かかる微粉は、除去されない場合、より大きい粒子間の隙間を充填し、流動を低下させ、そして/または圧力を著しく増加させる。未分類の粉砕モノリシック粒子は微粉のかかる分類または除去を必要とせず、そして十分な流動を維持し、50psi(0.34MPa)を超える高圧を回避しながら、本発明の複合フィルターにおいて使用され得る。
【0062】
ポリマーモノリスは、かかる多孔性モノリシックポリマーの形成が生じるように現場重合のために適切な混合物中に存在するモノマーから製造される。かかる混合物は、例えば、モノマーまたはモノマーの混合物、ポロゲンおよび開始剤の混合物を含む。
【0063】
典型的に、ポリマーモノリスは、親水性基、親水性基の前駆体、イオン化基またはその前駆体、疎水性基またはその前駆体またはそれらの混合物を有する重合モノマー単位を含む。任意にポリマーモノリスは親和性配位子を含有してもよい。上記モノマー単位のいずれの組み合せも本発明の範囲内であるように意図される。
【0064】
親水性基または親水性基への前駆体を有する重合モノマー単位を含む多孔性ポリマーモノリスにおいて、かかるモノマーは一般的に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アセトキシスチレン、クロロメチルスチレン、t−ブトキシカルボニルオキシスチレンおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択されるアクリレート、メタクリレートまたはスチレンである。
【0065】
疎水性基または疎水性基への前駆体を有する重合モノマー単位を含む多孔性ポリマーモノリスにおいて、かかるモノマーは一般的に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、スチレン、スチレン誘導体およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される。疎水性基を含有する好ましいモノマーは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、スチレン、アルキルスチレンまたはそれらの組み合わせである。
【0066】
イオン化基またはイオン化基への前駆体を有する重合モノマー単位を含む多孔性ポリマーモノリスにおいて、かかる重合モノマーは、一般的にアミノ基、カルボン酸基、スルホン酸およびリン酸基(またはその塩)などの官能基を含有し、そして好ましいイオン化モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−3−プロパンスルホン酸、2−(メタクリルオキシ)エチルホスフェート、アミノ酸のアクリルアミド、アミノ酸のメタクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−(ジアルキルアミノ)エチルアクリレート、2−(ジアルキルアミノ)エチルメタクリレート、2−(モルホリノ)エチルアクリレート、2−(モルホリノ)エチルメタクリレート、[2−(メタクリルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2−(メタクリルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムメチルスルフェートおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される。モノリス製造のための好ましいモノマーは、アクリレート、メタクリレートおよびその誘導体である。
【0067】
多孔性ポリマーモノリスは、架橋モノマーをさらに含む。架橋モノマーは、好ましくは、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレート、トリメタクリレート、ジアクリルアミド、ジメタクリルアミドまたはジビニル芳香族モノマーよりなる群から選択されるポリビニルモノマーであり、好ましいポリビニルモノマーは、エチレンジアクリレート、エチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N’−メチレンビス−アクリルアミドまたはピペラジンジアクリルアミド、ジビニルベンゼンまたはジビニルナフタレンである。
【0068】
1つの好ましい実施形態において、多孔性ポリマーモノリスは、モノマーに関して、約10〜約90%の一種以上のモノビニルモノマー、約5〜約90%の一種以上のポリビニールモノマーおよび約0.01〜約2%の開始剤を含む。
【0069】
また本発明の多孔性ポリマーモノリスは、任意に約1%〜約50%の親和性配位子を含んでもよい。配位子は、すでに形成されたモノリス内に共有結合によって固定されるか、またはモノマーの形態で重合前にポリマー混合物に添加される。配位子は生物学的化合物または合成化合物であってもよい。ここでは生物学的親和性配位子は、多糖類、抗体、酵素、レクチン、抗原、細胞表面レセプター、細胞内レセプター、ウィルスコートタンパク質、DNAおよびそれらの混合物よりなる群から選択され、そして合成親和性配位子は、反応性染料、タンニン酸、没食子酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミントリ酢酸、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシドの不活発塩およびそれらの混合物よりなる群から選択される。
【0070】
所望の孔構造を達成するために、重合は一般的にポロゲン材料を含む。それらの機能は、第1に全てのモノマーおよび開始剤を溶解することであり、第2に均一な溶液を形成することであり、そして第3に重合間、相分離プロセスを制御することである。
【0071】
典型的にポロゲン材料は、水、有機溶媒またはそれらの混合物である。ポロゲン有機溶媒は、炭化水素、アルコール、ケトン、アルデヒド、有機酸エステル、エーテル、可溶性ポリマー溶液およびそれらの混合物、例えばシクロヘキサノール、1−ドデカノール、メタノール、ヘキサン、プロパノール、ドデカノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、メチル−t−ブチルエーテル、ジイソプロピルケトン、ブタノールエチルアセテート、酢酸ブチル、ポリ(メチルメタクリレート)およびそれらの混合物よりなる群から選択される。ポロゲン材料は典型的に、約30体積%〜約80体積%、好ましくは約40体積%〜約60体積%の範囲の量で存在する。
【0072】
本発明のモノリスは、現場で開始された重合によって製造される。現場重合は、かかる混合物が型または他の適切な容器内に置かれるときにモノリシック構造へと重合混合物を効果的に重合させるいずれかのプロセスでもまたは手順であってもよい。現場重合プロセスによって多孔性固体モノリスが製造される。かかるプロセスは、加熱、レドックス反応または光開始によって開始されてもよい。
【0073】
様々なモノリシックのポリマー材料は、当該分野において既知である。フレシェ(Frechet)ら、Adv.Matls.、1999、11巻、14号、1169−1181頁およびその中の参照文献、ならびに米国特許第5,453,185号明細書、米国特許第5,334,310号明細書および米国特許第6,887,384号明細書を参照するとよい。重合されたモノリスの形成に関する1つの有用な技術は、米国特許出願公開第2004/0166534号明細書(ロスコエ(Roscoe)ら)に見られる。
【0074】
モノリシックポリマーへの重合の次に、一般的にポロゲン材料の除去が行なわれる。次いで、重合されたモノリスを粉砕または破砕し、約0.1〜1000マイクロメートルの粒度分布を有する不規則形状粒子を得た。細孔径範囲は選択された重合混合物次第であり、特にポロゲン材料の使用次第である。得られた細孔径は一般的に約200マイクロメートル未満、好ましくは100マイクロメートル未満、そしてより好ましくは50マイクロメートル未満である。
【0075】
いずれかの適切な粉砕または破砕技術が使用されてもよく、そして粉砕を促進するためにポリマーをガラス転移温度より低い温度まで冷却してもよい。
【0076】
このようにフィルターカートリッジ、フィルターハウジングおよび固定相微粒子を記載したが、分離系を調製する方法を以下に詳述する。このプロセスは、以下の工程:
i)ハウジングに含有される本発明の複合フィルター媒体を含むフィルターカートリッジと、少なくとも0.01cm/分の流動速度を送達可能であるポンプおよび関連チューブとを含むアセンブリを提供する工程と、
ii)分離フィルターアセンブリ中で循環を受けて生体高分子の分離が実行されるように、貯蔵器中の少なくとも一種の生体高分子溶質を含む生物学的溶液混合物を導入する工程と
を含む。
【0077】
50マイクロメートル未満の平均粒度を有する固定相微粒子、軟質微粒子または破砕モノリシック微粒子を含む複合フィルターによって大規模バイオ分離が可能となり、すなわち、100リットル以上の体積を有するバイオリアクターにおいて製造される生体高分子生成物の分離および/または精製が可能である。多くの実施形態において、1000リットルおよび10,000リットル以上の大規模分離が可能となる。
【0078】
本発明において有用なポンプは、フィルターカートリッジを通して0.01cm/分を超える、好ましくは0.10cm/分を超える、より好ましくは0.30cm/分を超える流動速度を提供する。二種以上の生体高分子溶質を含むスラリーおよび溶液混合物の少なくとも一種がそれを通して流動するポンプおよび関連ガスケットおよびチューブ/パイプは、好ましくは比較的に溶液によって化学的に影響を受けない。好ましいポンプとしては、ペリスタル、ダイヤフラム、ギアおよび遠心駆動ポンプが挙げられ、ここでは溶液と接触している実際のポンプ構成部分はステンレス鋼またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されている。ゴムまたはプラスチックチューブ/パイプのほとんどの種類は水性媒体中で実行される充填および分離に適切であるが、有機溶媒の水性混合物が利用される場合、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、ステンレス鋼およびガラスチューブが好ましく利用される。フィルターハウジングおよび他の分離系とのフィルターカートリッジの接続を連結する好ましいガスケット材料としては、PTFEおよびポリプロピレンが挙げられる。
【0079】
フィルターカートリッジは、以下の工程:
i)ハウジングに含有される本発明の複合フィルター媒体を含むフィルターカートリッジと、少なくとも0.01cm/分の流動速度を送達可能であるポンプおよび関連チューブとを含むアセンブリを提供する工程と、
ii)適切な溶媒中の微粒子のスラリーを提供する工程と、
iii)所望の量の固定相微粒子が充填されるまで、再生利用の様式でフィルターカートリッジを通してスラリーをポンピングする工程と
を含む「湿式」充填技術によって充填され得る。好ましくは、フィルターカートリッジ圧力は約0.15MPa未満、より好ましくは0.10MPa未満、そして最も好ましくは0.05MPa未満である。
【0080】
従来の「乾式」充填製造法とは対照的に、液体キャリアの使用による濾過層上への微粒子の「湿式」充填は、その後溶液混合物に接近可能であるフィルタリングエレメントの領域に微粒子が位置することを保証する。液体キャリアの流動は微粒子の最終的な位置に影響を及ぼさないが、それらの位置が予選択されないという意味で、微粒子は濾過層上にランダムに位置する。上記プロセスによるフィルターカートリッジの充填において、フィルタリングエレメントの比較的均一な部分的充填を達成するために、各充填セッション間に液体中の微粒子の著しく希釈された濃度を利用することは望ましい。(適切に高密度および水に湿潤性である場合、溶媒を使用しないか、または予めスラリー化されて)分割(portionwise)様式で微粒子を貯蔵器に添加することができ、各部分間で貯蔵器内容物の視覚的清澄化が生じる。
【0081】
充填操作の流動速度は、好ましくは少なくとも0.01cm/分、より好ましくは少なくとも0.10cm/分、そして最も好ましくは少なくとも0.30cm/分である。分離段階の間に量および時間に関して効率的に所望の生体高分子を分離することに加えて、微粒子がより良好にプリーツフィルターエレメントの折り目に浸透し、従って、より多くのフィルターエレメントに接近し、そして高充填を促進するように、特に好ましい混成放射状プリーツフィルターカートリッジによる粒子充填段階間の比較的高い流動速度が望ましい。固定相微粒子をスラリー化するために利用される液体は一般的に溶液混合物の溶媒であって、そして一般的に水、好ましくは緩衝水である。疎水性相互作用または逆相固定相微粒子によって、特に溶出工程において、水と組み合わせて有機液体を利用することが必要とされてもよい。有用な有機液体としては、50重量パーセントの量までのメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルおよびN,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0082】
フィルターカートリッジ圧が0.15MPa以下、好ましくは0.10MPa以下、そしてより好ましくは0.05MPa以下に達するまで、微粒子を貯蔵器中に、そして最終的にフィルターエレメントの上流面上に充填する。完全に充填された好ましい混成放射状プリーツフィルターカートリッジのための実際的なフィルターカートリッジ圧限界は約0.25MPaである。約0.05MPaを超えるフィルターカートリッジ圧が達成される時のフィルターカートリッジの適用の原則として、追加的な微粒子のその後の充填によって、次第により高いフィルターカートリッジ圧が生じる。しかしながら、特により低い推奨されるフィルターカートリッジ圧によって、フィルターカートリッジを通る溶液の流動速度は高いままであり、そして本発明の目的のために所望の範囲内である。この様式では、依然としてユニットは、その後の分離および取り扱い操作間に遭遇し得る外来の微粒子に応答することができる。実際の操作に関して、いくつかの微粒子充填能力を確保することによって、フィルタープラグによる閉鎖は防がれ、フィルターカートリッジ寿命は延長され得る。
【0083】
通過する溶液混合物から生体高分子を分離するための分離フィルターアセンブリとして、固定相微粒子充填フィルターカートリッジを利用する準備ができている。分離フィルターアセンブリおよびカートリッジは、図1〜5で図式的に例示される。
【0084】
複合濾過媒体を提供するために微粒子を充填した後、インレットおよびアウトレットチューブ末端部を貯蔵器から除去し(または充填貯蔵器が分離貯蔵器としても機能する場合、取り付けたままにし)、そして生物学的溶液混合物を収容する貯蔵器に取り付ける。生物学的溶液混合物は二種以上の生体高分子溶質を含み得る。所望の生体高分子は、発酵媒体、細胞可溶化液および体液、例えば血液および血液成分、腹水および尿に由来する。
【0085】
最短期間で精製された生体高分子の最大量、すなわち高い処理量を得ることは、通常、望ましい。高い処理量は、しばしば文献において、生産性(または生産率)として、または1時間あたりの時クロマトグラフィ樹脂1リットルあたり精製される生成物の量として定義される。市販品として入手可能なタンパク質A樹脂の典型的な生産性は、ファーナー(Fahrner)ら、Biotechnol.Appl.Biochem.、1999、30、121−128によって、13−23g/L/時間の範囲内であると報告された。本発明の分離系を使用することによって、>25g/L/時間、>40g/L/時間、>70g/L/時間および>100g/L/時間の捕捉効率および/または生産性が達成可能である。溶液混合物が複合濾過媒体を通過し(すなわち流動速度)、そして再生利用される速度は、本発明における機能の重要な基準であると決定される。1つの非常に重要な要因は、主に低圧操作のため、本発明の分離フィルターアセンブリが所定の時間で溶液混合物のより大容積の処理を可能にするということである。本発明の分離フィルターアセンブリの高効率に寄与し得る他の要因は:1)充填されたカラムで利用されるより大きい粒子と比較して、比較的高い表面積および低下された拡散限度を有するより小さい固定相微粒子を利用する能力;2)より高い流動速度における生体高分子溶質および固定相微粒子のより良好な剪断混合;および3)より高い流動速度におけるフィルタリングエレメントのプリーツまたは折り目内に深く含有される、より多量の微粒子への接近;である。少なくとも0.01cm/分の溶液混合物通過の流動速度が好ましく、より好ましくは少なくとも0.10cm/分、そして最も好ましくは少なくとも0.30cm/分である。
【0086】
本発明のフィルターエレメントは、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸および他の生物学的材料を含む様々な生物学的分離において実用性が見られる。分離および精製された高分子は、有用な治療剤および診断剤である。
【0087】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに例示されるが、これらの実施例に記載の特定の材料およびそれらの量、他の条件および詳細は本発明を過度に限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0088】
これらの実施例はあくまで実例を示す目的のためのものであり、そして添付の特許請求の範囲を限定する意味はない。特記されない限り、実施例および他の明細書における全ての部、パーセント、比率等は重量による。特記されない限り、使用される溶媒および他の試薬は、ウィスコンシン州、ミルウォーキーのシグマ−アルドリッチ ケミカル カンパニー(Sigma−Aldrich Chemical Company;Milwaukee,Wisconsin)から得た。
【0089】
試験法
リゾチームに対するカチオン交換容量
0.8×4センチメートルのポリプロピレン使い捨てクロマトグラフィカラム(カリフォルニア州、ヘラクレスのポリ−プレップ カラム、バイオ−ラド ラボラトリーズ(Poly−Prep Column,Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA))を1mlのイオン交換樹脂で充填した。10mLの充填緩衝液、pH7.5の10mM MOPS(4−モルホリノプロパンスルホン酸)の溶液で洗浄することによって、カラム床を平衡化した。次いで、MOPS緩衝液中12mg/mLの濃度を有する30mLのタンパク質溶液(鶏卵白リゾチーム、純度約95%、シグマ ケミカル カンパニー(Sigma Chemical Co.))でカラム床を充填した。全ての緩衝液およびタンパク質溶液を脱イオン水中で調製した。いずれの非結合性リゾチームも30mLのMOPS緩衝液(10mLのフラクションで3回)によって洗浄除去した。最終的に、結合タンパク質をMOPS緩衝液中1M NaClの15mLで溶出した。
【0090】
ヒューレット−パッカード ダイオード アレイ スペクトロフォトメーター(Hewlett−Packard Diode Array Spectrophotometer)、モデル8452Aを使用することによって、280nmでUV吸光度を測定することによって、様々なフラクションに回収されたタンパク質の量を決定した。標準カーブは純粋なリゾチームを使用して調製された。NaCl溶出液中に回収されたタンパク質の量は支持の平衡カチオン交換能力と同等であった。
【0091】
免疫グロブリンG(IgG)に対するカチオン交換容量
脱イオン水中のカチオン交換ビーズの50%v/vスラリーは、ビーズを水と混合し、300相対遠心力(rcf)で20分間遠心分離処理し、次いで総容積が充填ビーズ床の二倍であるように水の量を調節することによって調製された。スラリーを十分に混合し、ビーズ懸濁させ、次いでスラリーの400マイクロリットルの試料をピペットで5ミリリットルの0.45マイクロメートル酢酸セルロース セントレックス(Centrex)MF 遠心ミクロフィルター(ミネソタ州、エーガン(Eagan,MN)のVWRを通して入手可能であるシュライヒャー&シュル(Schleicher & Schuell))に加えた。水を5分間、3000rcfで遠心分離によって除去し、80mM塩化ナトリウムを含有する4mLの50mM酢酸ナトリウム、pH4.5と混合し、そして10分間3000rcfで再び遠心分離した。濾液をデカンテーションした。次いで同一酢酸塩緩衝液中のヒトIgGの4.5mL試料(約7mg/ml)を、ビーズを含有するフィルターに添加した。混合物を一晩回転させることによって混合し、次いで20分間3000rcfで遠心分離によって上澄をビーズから除去した。
【0092】
UV分光法によって、280nmにおける吸光度を出発IgG溶液の吸光度と比較することによって濾液を分析し、この差異を使用してビーズのIgG容量を算出した。評価を三回実行し、平均化した。
【0093】
粒度測定
ホリバ(Horiba)LA−910機器(カリフォルニア州、アービンのホリバ ラボラトリー インストルメンツ(Horiba Laboratory Instruments,Irvine,CA))を使用して、光散乱によって粒度を測定した。
【0094】
圧力/流動特性
コンピュータ制御された試験装置は、1cm×10cmガラスカラム、カラム末端固定具、ポンプ、圧力計およびリン酸緩衝塩水(PBS)を含有する貯蔵器に連結された適切なチューブからなった。カラムに粒子を充填して測定した。ポンプの電源を入れてカラム中の流動を開始し、そして典型的に2ml/分(約150cm/時)で開始した。圧力低下の安定を確実とするために、流動をこの速度で維持し(典型的に5〜15分)、次いで流動速度を2または4ml/分増加によって増加させ、再びカラムを横切って圧力低下を監視した。カラムが不具合になるまで、この手順を続けた。不具合とは、コンピュータが自動的に系をシャットダウンする時点である170psiを超える圧力として定義した。
【0095】
タンパク質A親和性によるヒトIgG容量
ヒトIgG容量に関して試験される粒子をタンパク質Aで充填し、そしてフィルターを通してビーズスラリーをポンピングし、続いて緩衝液交換のため、PBS緩衝液をポンピングすることによってカートリッジフィルター(ポール フィリング マシン カプセル(Pall Filling Machine Capsule)カートリッジ、5マイクロメートル細孔径、300cm2の濾過層面積またはCUNO ベタピュア カプセル(CUNO Betapure Capsule)フィルターカートリッジ、2マイクロメートル細孔径、900cm2の濾過層面積のいずれか)上に充填した。緩衝液をカートリッジフィルターハウジングから排出した後、ヒトIgG溶液(10mM PBS pH7.2中1.0mg/mL、1,500mL総容積)を貯蔵器に充填し、フィルターカートリッジハウジング中にポンピングし、そして再循環のために貯蔵器に戻した。35psi(0.24MPa)未満の圧力低下で、流速は400mL/分であった。280nm波長におけるUV吸光度によるIgG濃度のオンライン監視によって決定されるIgG捕捉速度がゼロ付近に達するまで、溶液を4〜30分間再循環した。インレットチューブを通してフィルターハウジングから溶液を排出し、そしてフィルターカートリッジ中のビーズの洗浄、捕捉されたIgGの溶出および緩衝液交換によって再生した。次いで、カートリッジフィルターの中の再生ビーズは、溶液に残るIgGを捕捉するために使用された。このサイクルを5回繰り返し、そして溶液中の大部分のIgG(93〜99%)を捕捉した。各サイクルにおける捕捉性能および全捕捉速度を記録した。
【0096】
【表1】

【0097】
調製例1
米国特許第5,403,902号明細書に記載されるように、重量で35:65のAMPS/MBAコポリマーを逆相懸濁液重合によって調製した。メカニカルスターラー(撹拌速度450rpm)、窒素インレット、温度計、温度制御装置を有する加熱マントルおよび凝縮器を備えたフラスコに、ポリマー安定剤(0.28グラム)、トルエン(132mL)およびヘプタン(243mL)を添加した。ポリマー安定剤は重量で91.8:8.2のイソオクチルアクリレートおよび2−アクリルアミドイソブチラミドのコポリマーであった(ラスムッセン(Rasmussen)ら、Makromol.Chem.、Macromol.Symp.、54/55、535−550(1992)に記載の通りに調製した)。フラスコ中の非水溶液を撹拌しながら35℃まで加熱し、そして15分間窒素スパージングした。
【0098】
MBA(9.10グラム)、AMPS(9.80グラムの50重量%水溶液)、メタノール(50mL)および脱イオン水(45.1mL)を含有する水溶液を調製した。この第2の溶液を撹拌し、そして30〜35℃で加熱し、MBAを溶解した。さらに撹拌しながら、過硫酸ナトリウム(0.5グラム)を第2の溶液に添加し、過硫酸塩を溶解した。非水溶液を含有する反応フラスコにこの水溶液を添加した。得られた混合物を撹拌し、そして窒素を5分間スパージングした。TMEDA(0.5mL)を添加し、重合を開始した。反応温度は42.5℃まで急速に上昇し、次いでゆっくり低下した。TMEDA添加時間から合計2.5時間、反応混合物を撹拌し、焼結ガラスロートを使用して濾過し、アセトン(5×250mL)で洗浄し、そして真空下の室温で乾燥させ、15.7グラムの無色粒子を得た。
【0099】
調製例2〜3
重量で65:35のAMPS/MBAコポリマー(調製例2)および重量で40:60のAMPS/MBAコポリマー(調製例3)が得られる試薬レベルで、予備実施例1に記載の同一の逆相重合手順に従った。
【0100】
実施例1
調製例2に記載されるように、重量で65:35のAMPS/MBAコポリマーを逆相懸濁液重合によって調製した。リゾチームの平衡カチオン交換能力を測定し、そして160mg/mlであることがわかった。顕微鏡試験は、直径で約10〜200マイクロメートルの範囲の球形粒子を示した。圧力/流動特性を測定する試みによって、最低流速における加圧以上のカラムが得られた。これらの粒子の試料を分類し、約45〜110マイクロメートルの粒度範囲が提供された。この分類された試料の圧力/流動特性は2ml/分(150cm/時間)において20psi(約0.14MPa)の圧力低下を生じるが、3ml/分(約230cm/時間)において不具合を生じる(>170psi=1.17MPa)。
【0101】
分類されたビーズ試料を以下の系において評価した:
フィルターカートリッジ:ポール バーサポア(Pall Versapor)カートリッジ、3マイクロメートル細孔径、1480cm2の濾過層面積
ビーズ:AMPS/MBA(65/35);水和床容積5ml
リゾチーム充填溶液:10mM MOPS pH=7.5中2mg/ml、1000ml
緩衝液:10mM MOPS pH=7.5
(ハウジングおよびチューブの)系容積:450ml
流動:圧力低下が<5psiで1120ml/分。
【0102】
手順:
充填、排出および容積測定を3回行い、そして結果を平均することによって系容積を決定した。具体的なポンプ設定に関して、ストップウォッチおよび目盛付きシリンダーを使用して流速を測定した(ここでも3回実行の平均)。次いで、50mlの緩衝液でビーズのスラリーを製造することによって、ビーズをフィルター上で充填した。
【0103】
このスラリーを2部分で緩衝液の容積(約1000ml)へと添加し、次いでフィルターを通してポンピングし、添加された部分間で緩衝液を清澄化させた。最初の容器の2回のすすぎによって残留ビーズを充填し、すすぎ清澄化後、さらに15分間緩衝液を再循環した。ポンプの電源を切り、ラインをリゾチーム溶液へと移し、そしてポンプを始動して再循環を開始した。溶液を90分間再循環し、そして試料を定期的に取り出し、充填溶液中に残るリゾチームの量(UV吸光度)を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0104】
比較例1
調製例3に記載されるように、重量で40:60のAMPS/MBAコポリマーを逆相懸濁液重合によって調製した。形成されたビーズを分類して、約40〜110マイクロメートルの粒度範囲を提供した。リゾチームに対する平衡能力を測定すると、113mg/mlであった。この分類された試料の圧力/流動特性は10ml/分(760cm/時間)において50psi(0.34MPa)の安定した圧力低下を生じたが、次いでより高い流速において圧力低下のわずかな増加が生じ、最終的に>1000cm/時間で不具合を生じた。またこのビーズを実施例1に記載される系において評価し、そして結果を表1に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
比較例2
調製例2に記載されるように、AMPS(36.4gの50%水溶液)、MBA(9.8g)、DI水(31.8ml)およびイソプロパノール(100ml)から、重量で65:35のAMPS/MBAコポリマーを逆相懸濁液重合によって調製した。リゾチームに対する平衡カチオン交換能力を測定し、そして25mg/mlであることがわかり、またIgGに対する平衡カチオン交換能力は7mg/mlであることがわかった。
【0107】
実施例2
比較例2の水相と同一配合物を有するモノリシック媒体を調製した。MBA(0.993g)、AMPSの50重量%水溶液(3.649g)、脱イオン水(2.88mL)およびイソプロパノール(10mL)を混合し、そしてガラス容器中で撹拌しながら穏やかに加熱した。混合物を完全に溶解した後、それをポリエチレン製ポーチ(約10cm×7cm×壁厚0.15mm)へ移し、そして水(0.3mL)中の過硫酸ナトリウム(0.0512g)の溶液をTMEDA(0.05mL)と一緒に添加した。ポーチを直ちにヒートシールし、次いで一晩室温でオービタルシェーカーで穏やかに振盪した。ポーチを切断して開き、そしてポリマーの塊をフィルターロートに移した。ここでこれを水、次いでアセトンで完全に洗浄し、そして一晩真空下で乾燥させた。乾燥試料を乳鉢および乳棒で簡単に粉砕した。粒度測定値によって非常に広範囲の分布が示され、粒子は1マイクロメートル〜700マイクロメートルの粒度範囲であった。
【0108】
実施例1に記載のカートリッジ系で評価した場合、粉砕モノリスは非常に迅速にリゾチームと結合し、そして15分以内で>46mg/mlの容量を達成した。この材料の迅速な吸収動態および容量の増加は、比較例2と比較して、モノリシック媒体における改善された質量輸送および多孔性によって説明される。
【0109】
実施例3
重合時間が2.5時間から5時間まで延長されたこと以外は、実施例1に記載されるように重量で65:35のAMPS/MBAコポリマーを調製した。この試料をエラトリエーションによって3つの粒度範囲に分類した。すなわち、小留分、中間留分および大留分であった。中間留分を廃棄し、そして小留分および大留分の平均粒度を決定したところ、37.6マイクロメートル(小ビース)および160.0マイクロメートル(大ビーズ)であった。次いで、実施例1に記載のカートリッジ系において、これらの2つの試料を評価した。リゾチーム捕捉の結果を表2に記載する。
【0110】
【表3】

【0111】
実施例4
CM−セファデックス(Sephadex)C50は、小規模タンパク質精製のために有用なイオン交換樹脂である。製造業者は45cm/時間の最大の流速を推奨しており、この樹脂が大規模なカラム使用のためには軟質であることを示す。40℃で一晩混合することによって、試料を10mMリン酸ナトリウム緩衝液中で水和した。沈殿した樹脂10mlを実施例1に記載の分離系に充填し、そして1134ml/分の流速で、充填されたフィルターカプセルを通してウサギIgGの溶液(10mMリン酸塩中0.17mg/ml、pH7.2)を再循環することによってIgG吸着に関して評価した。時間経過に従って採取された試料のUV分析はIgGの急速な吸着を示し、6分で3.9mg/mlの樹脂が吸着し、そして25分以内で4.5mg/mlの平衡吸着が達成された。製造業者によると、有効容量(飽和容量)は7mg/mlであると規定されている。実験の間、流速の変化または圧力増加は観測されなかった。
【0112】
実施例5
調製例1に記載の一般手順に従って、重量で95:5のMBA/VDMコポリマービーズを調製した。有機相はヘプタン(348ml)、安定剤(0.13g)およびVDM(0.72g)からなった。水相は、イソプロパノール(90ml)、水(55ml)、MBA(13.33g)、過硫酸ナトリウム(0.55g)およびTMEDA(0.55ml)からなった。P.R.ジョンソン(P.R.Johnson)ら、J.Chromatogr.A、1994、667、1−9に記載の通り、脱イオン水中の水和容積に関して、そしてミオグロビン結合容積に関して、このビーズ(5A)を評価した。結果を表3に示す。イソプロパノールの容積を125mlまで増加し、そして水を75mlまで増加したこと以外は、同一成分および量を使用して第2のMBA/VDMコポリマーを調製した。このビーズ(5B)も水和容積およびミオグロビン結合容積に関して評価した。結果を表3に記載する。
【0113】
【表4】

【0114】
実施例6〜8
トルエン(188ml)を有機相に添加し、そして水の総量を60mlまで増加したこと以外は、実施例5Aに記載の手順に従って、重量で95:5のMBA/VDMのコポリマービーズを調製した。実施例6に関して、使用されるポリマー安定剤は、重量で92.5:7.5のイソオクチルアクリレートおよびアクリル酸のコポリマー(0.27g)であり、そして撹拌速度は600rpmまで増加され;実施例7に関して、使用されるポリマー安定剤は、重量で90:10のイソオクチルアクリレートおよびアクリル酸のコポリマーであり、そして水酸化ナトリウム(3.7mlの0.1M溶液)を水相に添加し、アクリル酸を中和し;そして実施例8に関して、ポリマー安定剤は、重量で95:5のイソオクチルアクリレートおよびアクリル酸のコポリマー(1.06g)であり、水酸化ナトリウム(0.74mlの1M溶液)を水相に添加し、アクリル酸を中和し、ドデシル硫酸ナトリウム(3mlの10重量%水溶液)を水相に添加し、そして撹拌速度を750rpmに増加した。乾燥後、ビーズを乾燥分類し、32マイクロメートル篩を通過する留分を得た。
【0115】
米国特許第5,907,016号明細書の教示に従って、実施例6〜8からのビーズにタンパク質Aを結合させた。タンパク質A結合手順は:反応前に、全ての溶液を25℃の水浴中で平衡化した。40mLの脱イオン水中で797.2mgの組換えタンパク質A(マサチューセッツ州、ワルサムのレプリゲン コーポレイション(Repligen Corp.,Waltham,MA))を溶解することによって、丸底フラスコ中で溶液を調製した。この溶液に112mlの緩衝液Aを添加した。オーバーヘッドスターラーを使用して混合物を撹拌し、そして11.44gの乾燥ビーズを添加した。撹拌を15分間続けて、次いで304mlの緩衝液Bを添加し、そして撹拌を1時間続いた。焼結ガラスロートを使用してビーズを濾過した。ビーズを反応フラスコに戻し、560mlの3.0Mエタノールアミン、pH9.5を添加し、そして混合物を1時間撹拌した。次いでビーズを濾過し、265mlのリン酸緩衝塩(PBS)、pH7.5で3回、265mlの0.1M炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.5で6回、200mlのPBSで2回、160mlの2%酢酸中2M グアニジンで3回、200mlのPBSで3回、265mlの脱イオン水で6回洗浄し、次いで使用するまで160mlの20%エタノール/脱イオン水中で貯蔵した。
【0116】
さらなる分類後、水和ビーズ容積1mlあたり結合されたタンパク質Aを約6.5〜7.5mg含有するビーズ試料が表4に示される粒度で得られた。上記方法を使用して、ヒトIgG捕捉に関してタンパク質A充填ビーズを試験し、そして結果を表5(実施例6)、表6(実施例7)および表7(実施例8)に示した。全捕捉速度(または捕捉生産性)は、実施例6に関して40g/L/時間;実施例7に関して72g/L/時間、実施例8に関して125g/L/時間であった。比較すると、この系における直径60マイクロメートルのタンパク質A粒子の使用によって約20g/L/時間の捕捉速度が導かれ、標準大規模クロマトグラフィカラムで達成される生産性に非常に類似した。
【0117】
【表5】

【0118】
【表6】

【0119】
【表7】

【0120】
【表8】

【0121】
実施例9
窒素パージングされた封着ガラス小瓶中でモノマー混合物を重合させることによって、実施例2と同一組成のモノリスを調製した。小瓶を一晩33℃で水浴中に置いた。小瓶を壊し;モノリスプラグを水およびアセトンで洗浄し、乳鉢および乳棒で簡単に粉砕し、次いで真空下で乾燥させた。脱イオン水中のこれらの破砕粒子のスラリーを製造し、そしてバイオ−ラド ポリ−プレップ カラム(Bio−Rad Poly−Prep Column)中に1mlの床厚まで充填した。リゾチームの手順をIgGに適応させることによって、IgGに対する平衡カチオン交換能力を測定し、そして35mg/mlであることがわかった。
【0122】
これらの破砕粒子のスラリーを、0.25マイクロメートルのフリットを有する0.35ml、3×50mmのオムニフィット(Omnifit)カラム中に充填し、そしてAKTA エクスプローラー(AKTA Explorer)クロマトグラフィ系(GE ヘルスケア(GE Healthcare))を使用して、ヒトIgGの動的結合容量を測定した。IgG充填緩衝液は、50mM酢酸ナトリウム、80mM塩化ナトリウム、pH4.5中の3.5mg/ml IgGであった。10%突破における動的充填容量を300cm/時間および500cm/時間で決定し、それぞれ20.8および15.3mg/mlであることがわかった。
【0123】
実施例10
1.5mlのイソプロパノールを1.5mlのPEG400と置換したこと以外は、実施例9と同一組成のモノリス。手順および仕上げは実施例9と同一であった。IgGに対する平衡カチオン交換能力は実施例9に関して記載された通りに測定され、そして23mg/mlであることがわかった。
【0124】
実施例11
1.68mlのイソプロパノールを、ポロゲンとして1.68mlの1−オクタノールと置換したこと以外は、実施例9と同一組成のモノリス。手順および仕上げは実施例9と同一であった。IgGに対する平衡カチオン交換能力は実施例9に関して記載された通りに測定され、そして30mg/mlであることがわかった。
【0125】
実施例12
窒素パージングされたバイオ−ラド ポリ−プレップ カラム(Bio−Rad Poly−Prep Column)中、室温で一晩、1mlのモノマー混合物を重合させることによって、実施例10と同一組成のモノリスを調製した。脱イオン水(10ml)をモノリスプラグの上部に添加するが、カラムを通して流動は生じない。わずかな窒素圧をカラムの上部に適用したが、なお流動は生じなかった。フリットを含有するカラムの底部を切断したが、なお流動は生じなかった。最終的に、実施例9に記載される通りにモノリスを洗浄し、破砕および乾燥させた。IgGに対する平衡カチオン交換能力は実施例9に関して記載された通りに測定され、そして31mg/mlであることがわかった。
【0126】
実施例13〜15
5重量%のAMPSモノマーを等量のn−ブチルアクリレートと置換したこと(実施例13)、10重量%のAMPSモノマーを等量のn−ブチルアクリレートと置換したこと(実施例14)および15重量%のAMPSモノマーを等量のn−ブチルアクリレートと置換したこと(実施例15)以外は、実施例10と同一組成のモノリスを調製した。手順および仕上げは実施例9と同一であった。IgGに対する平衡カチオン交換能力は実施例9に関して記載された通りに測定され、そして24mg/ml(実施例13)、16mg/ml(実施例14)および5mg/ml(実施例15)であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】その上流面上に位置する固定相微粒子の層を含む濾過層を含む複合濾過媒体の横断面の概略図。
【図2】本発明の複合濾過媒体のエンボスパターンの斜視図。
【図3】本発明の円筒状プリーツフィルターエレメントの斜視図。
【図4】本発明の円筒状フィルターカートリッジのための支持部材の斜視図。
【図5】本発明の分離フィルターアセンブリの斜視図。
【図6】本発明の分離系の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層の多孔性繊維状濾過層と、標的分子と結合可能な少なくとも一層の固定相微粒子とを含むフィルターエレメントを含む複合フィルター媒体であって、前記固定相微粒子が50マイクロメートル未満の平均直径を有する粒子、軟質ポリマー粒子および破砕モノリシックポリマー粒子の群から選択される複合フィルター媒体。
【請求項2】
前記多孔性繊維状濾過層が1〜50マイクロメートルの範囲の平均公称細孔径を有する織物または不織物多孔性材料である、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項3】
前記固定相微粒子が吸着、イオン交換、疎水性結合および親和性結合によって結合可能な微粒子の群から選択される、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項4】
前記イオン交換微粒子がアニオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂よりなる群から選択される、請求項3に記載の複合フィルター媒体。
【請求項5】
前記親和性クロマトグラフィ固定相微粒子が、標的分子親和性を有する配位子を含むアガロース、セルロース、デキストランおよびビニルポリマーを含む、請求項3に記載の複合フィルター媒体。
【請求項6】
前記固定相微粒子が、50マイクロメートル未満の平均粒径を有する有機または無機微粒子である、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項7】
前記固定相微粒子が30マイクロメートル未満の平均粒度を有する、請求項6に記載の複合フィルター媒体。
【請求項8】
前記粒子の粒度の変異係数が30%より大きい、請求項6に記載の複合フィルター媒体。
【請求項9】
前記フィルターエレメントが上流面と下流面とを含み、前記微粒子層が前記上流面上に配置される、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項10】
前記フィルターエレメントの前記濾過媒体が表面濾過媒体である、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項11】
前記フィルターエレメントの前記濾過媒体が深層濾過媒体である、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項12】
前記破砕モノリシック微粒子が0.1〜1000マイクロメートルの粒度分布を有する、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項13】
50psiの圧力適用下で前記軟質微粒子が粒子の縦横比において少なくとも10%の変化を受ける、請求項1に記載の複合フィルター媒体。
【請求項14】
前記軟質微粒子が50マイクロメートル未満の平均直径を有する、請求項13に記載の複合フィルター媒体。
【請求項15】
前記軟質微粒子が30マイクロメートル未満の平均直径を有する、請求項14に記載の複合フィルター媒体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の複合濾過媒体を含むフィルターエレメントを含むフィルターカートリッジ。
【請求項17】
請求項16に記載のフィルターカートリッジと、溶質として少なくとも一種の標的生体高分子を含む溶液混合物を収容する貯蔵器と、前記少なくとも一種の生体高分子を固定相微粒子に結合して標的分子:固定相微粒子生成物を形成するためにフィルターカートリッジを通して溶液混合物をポンピングするためのポンプおよび関連チューブとを含む生体高分子の大規模分離用の分離系。
【請求項18】
24時間で少なくとも100gの標的生体高分子を精製可能である、請求項17に記載の分離系。
【請求項19】
前記フィルターカートリッジがデッドエンドフィルターカートリッジである、請求項17に記載の分離系。
【請求項20】
前記ポンプおよび関連チューブが閉ループアセンブリを形成し、そして該閉ループアセンブリが溶液混合物の再循環ポンピングを提供する、請求項17に記載の分離系。
【請求項21】
標的分子を遊離するために生体高分子:固定相微粒子生成物相互作用を逆転可能である閉ループアセンブリを通して溶出溶液をポンピングする手段をさらに含む、請求項20に記載の分離系。
【請求項22】
a)標的分子と結合可能な請求項1〜15のいずれか一項に記載の複合フィルター媒体を含むフィルターカートリッジと、溶質として少なくとも一種の標的分子を含む溶液混合物を収容する貯蔵器と、ポンプおよび関連チューブとを含有する分離系を提供する工程と、
b)前記少なくとも一種の生体高分子を固定相微粒子に結合して標的分子:固定相微粒子生成物を形成するために最大50psiの圧力でフィルターカートリッジを通して溶液混合物をポンピングする工程と
を含む溶液混合物からの標的分子の分離方法。
【請求項23】
前記標的分子がタンパク質、炭水化物、脂質および核酸よりなる群から選択される、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−514424(P2008−514424A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534786(P2007−534786)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/035130
【国際公開番号】WO2006/039455
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】