説明

複合焼菓子生地

【課題】呈味素材層の厚さが均一でケーキ層との混和がない、均質な積層状焼菓子を得るための複合焼菓子生地、及び該特徴を有する複合焼菓子を簡単に得ることができる複合焼菓子の製造方法を提供すること。
【解決手段】ケーキ生地及び薄板状の呈味素材からなる複合焼菓子生地を使用し、特にケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した積層状構造を有し、ケーキ生地の比重よりも上記呈味素材の比重が大である複合焼菓子生地を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ生地と呈味素材からなる複合焼菓子生地、詳しくは、呈味素材層の厚さが均質でケーキ層との混和がない、均質な積層状焼菓子を得るための複合焼菓子生地、及び該特徴を有する複合焼菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層状焼菓子の代表例としてレイヤーケーキがある。レイヤーケーキとはその名のとおり、積層状構造を有するケーキであるが、一般的にはスポンジケーキとフィリング材が交互に重なった積層状のケーキのことを言う。このレイアーケーキは、見た目に美しく、また同時に数種類の風味を楽しむことができることから広く親しまれているものである。また、「祝い事を重ねる」という意味で結婚式や祝い事の際に好まれるものとしても有名である。
【0003】
このレイヤーケーキの製造方法は一般的には、スポンジケーキを薄くスライスし、ジャムやクリーム等のフィリング材を塗布しながら積層していく方法を採る。すなわち、積層状焼菓子の一般的な製造方法は、焼成したケーキとフィリング材を積層してゆく方法を採る。
しかし、この製造方法は、スポンジケーキを焼成後、冷却し、スライスするまでに長時間かかるため、ケーキが乾燥したり、衛生上の問題も発生する。また、スポンジケーキはソフトで脆い物性であるためあまり薄いスライスは不可能であり、フィリング材の塗布の際にもスポンジケーキは破損しやすいため、層の粗い、大きなサイズのものしか製造できないという問題があった。
【0004】
一方、積層状焼菓子の別の製造方法として、ケーキ生地とフィリング材を積層してから焼成する方法も考えられる。
しかし、ケーキ生地は起泡状態にあるため比重は軽く、しかも焼成中に液状化するのに対し、ジャムやクリーム等のフィリング材は温度に係わらずペースト状で比重も重たいものである。
このため、ケーキ生地にフィリング材を積載して焼成すると、焼成中にフィリング材が底部に沈降してしまったり、ケーキ生地と混和されてマーブル状になってしまったりして、厚さが均質な層状構造にならない。(例えば特許文献1参照)
【0005】
よって、この製造方法の場合、一般的には、バームクーヘンのように、ケーキ生地を一層ずつ焼成し、固めたあと、その上に新しい層としてケーキ生地やフィリング材を積載し、順次焼成していく方法を採る。
しかし、このような方法では非常に手間がかかる上、層同士の密着性が弱くなり、またさらに、層によって焼成回数が異なるため、一体感のある食感が得られなくなってしまうという課題もあった。
【0006】
ところで、ケーキ生地ではなく、パン生地やパイ生地のような伸展性のあるベーカリー生地を使用する場合は、上記のようなフィリング材の沈降や混和の問題もないことから、ベーカリー生地とフィリング材を積層したり、ロールインするなどして製造した積層状生地を焼成することにより簡単に積層状菓子を得ることができ、そのために使用するフィリング材として伸展性を有するシート状に整形したフィリング材が各種開発され、提案されている。(例えば特許文献2、3参照)
しかし、このようなシート状フィリング材は、バッター状で伸展性のないケーキ生地とともに使用することは当然、全く検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−117672号公報
【特許文献2】特開平4−117236号公報
【特許文献3】特開2007−306839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明の目的は、呈味素材層の厚さが均一でケーキ層との混和がない、均質な積層状焼菓子を得るための複合焼菓子生地、及び該特徴を有する複合焼菓子を簡単に得ることができる複合焼菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく種々検討した結果、ケーキ生地とフィリング材を同時に焼成する際に、フィリング材をシート状としてケーキ生地に対する浮力を付与することにより上記課題を解決できることを知見した。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明はケーキ生地及び薄板状の呈味素材からなる複合焼菓子生地を提供するものである。
また、本発明はケーキ生地及び薄板状の呈味素材からなる複合焼菓子生地を、ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した状態となるように配置し、焼成することを特徴とする複合焼菓子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、呈味素材層の厚さが均一でケーキ層との混和がなく、呈味素材層とケーキ生地層との密着性が高く、剥がれが生じにくい積層状焼菓子を簡単に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複合焼菓子生地について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
まず、本発明で使用するケーキ生地について述べる。
上記ケーキ生地としては、例えばカステラ生地、シフォンケーキ生地、シュー生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地、ガレット生地、甘食生地、蒸しケーキ生地、マフィンケーキ生地等の焼成時に流動性のある焼菓子生地があげられる。
【0012】
本発明においては、焼成時に浮きが均質であることから、呈味素材層の不等沈下が防止され、層が波打つことない均質な積層状構造の複合焼菓子が得られる点で、バターケーキ生地、ガレットブルトン生地、甘食生地等の比重が重い生地を使用することが好ましい。
なお、その好ましい比重は0.7〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.0である。
【0013】
上記ケーキ生地には、一般にケーキ生地に使用可能な成分を適宜選択使用することができる。
例えば、穀粉類、油脂類、糖類、乳化剤、増粘安定剤、乳製品、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、ホエープロテインコンセートレート等の乳蛋白、卵及び各種卵加工品等の蛋白質、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、ココアパウダー、カカオマス、チョコレート等のカカオ製品、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、着香料等が挙げられる。
【0014】
上記穀粉類としては、特に限定されるものではないが、小麦粉、薄力粉、中力粉、強力粉、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等をあげることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いるのがよい。本発明では、好ましくは小麦粉、薄力粉、中力粉、強力粉、米粉の中から選ばれた1種または2種以上を用いるのが良い。
【0015】
また、上記油脂類としては、ショートニング、マーガリン、バター等の可塑性油脂組成物や、サラダ油、流動ショートニング、溶かしバター等の流動状〜液体等、いずれの形態であってもよい。上記油脂類に使用される油脂は特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
上記糖類としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、蔗糖、液糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、異性化液糖、ショ糖結合水飴、キャラメル、かえで糖、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ヘミセルロース、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖等が挙げられる。
【0017】
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグルセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン類等が挙げられ、このうち1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、このうち1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
上記乳製品としては生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料等が挙げられる。
【0020】
次に本発明でフィリング材として使用する薄板状の呈味素材について述べる。
上記呈味素材としては、通常、ベーカリー生地に風味を付与するために使用される食品素材であれば特に制限なく使用することができ、例えば、各種呈味成分を含有するフラワーペースト;ジャム、ゼリー、チーズ、モチ、求肥等のゲル化食品;カスタードクリーム、アーモンドクリーム、マロンペースト、あん、チョコペースト、ヌガー、マヨネーズ等のペースト状食品;シュー生地やバターケーキ生地等の塗布可能なベーカリー生地等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、呈味素材層の厚さが均一でケーキ生地層との混和がない、均質な積層状焼菓子が得られる点で、比重が1よりも大であることが好ましい。
なお、その好ましい比重は1.0〜1.5であることが好ましく、より好ましくは1.2〜1.3である。
【0022】
本発明で使用する薄板状の呈味素材とは、上記呈味素材を上記ケーキ生地に積置可能なように、固型の薄板状に整形したものである。すなわち、ペースト状や流動状ではなく、手で持ち上げることが可能な物性であることを要する。
【0023】
上記呈味素材を薄板状にするには、たとえば食品素材の製造時に薄板状に整形する方法、食品素材の製造時にでんぷんやゲル化剤を多く使用して薄板状に整形する方法、あるいは、上記食品素材を薄板状に整形したのち冷凍する方法、さらには、上記食品素材を薄板状に整形したのち乾燥する方法などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、これらの中でも、均質な積層状構造を有する複合積層状生地の製造が容易であること、及び、焼成後にケーキ層との密着性や結着力が高く、剥がれが生じにくいこと、更には、可塑性のあるシート状から軟らかいシート状まで適度の硬さに調整することが可能であり、且つ所望の各種風味を付与することが可能である点において、フラワーペーストを使用するのが好ましい。
【0025】
上記フラワーペーストの組成は特に制限されるものではなく、一般的なものを採用することができるが、よりケーキ層との結着力が高く、剥がれが生じにくくするためには、各成分含量を下記の含有量とすることが好ましい。
(フラワーペーストの組成例)
澱粉類2〜10質量%、好ましくは2.5〜8質量%
油脂5〜45質量%、好ましくは5〜20質量%
糖類8〜30質量%、好ましくは10〜27質量%、さらに好ましくは10〜25質量%
なお、上記澱粉類としては、一般的な小麦粉、コーンスターチの他、各種澱粉から得られる化工澱粉を用いることができる。また、水分含量は30〜85質量%であることが好ましい。
【0026】
また、これらの呈味素材は、それらの中に固形物が存在していても、呈味素材全体の物性が複合積層状生地製造時の障害にならない限りは、問題なく使用可能である。この場合の固形物としては、例えば、果肉、つぶあんに含まれる小豆、チョコチップ、ナッツのダイスカット品、ザラメ糖、グラニュー糖等が挙げられる。
なお、上記薄板状の呈味素材の厚さは、好ましくは2〜20mm、より好ましくは5〜13mmである。
【0027】
上記下限未満であると、焼成中のケーキ生地の流動によりケーキ生地との界面が波打ちしやすくなって均質な積層状焼菓子が得られない。また、上記上限を超えると、ケーキ生地の上に積置した場合焼成中に呈味素材が沈降してしまうおそれがある。
【0028】
次に、本発明の複合焼菓子生地について述べる。
本発明の複合焼菓子生地は、上記ケーキ生地及び薄板状の呈味素材からなるものである。
複合方法については特に限定されず、例えば、ケーキ生地の中に薄板状の呈味素材を分散させた形態、ケーキ生地の下に薄板状の呈味素材を敷いた形態、ケーキ生地の上に薄板状の呈味素材を積載した形態、さらには、それらをロール状に整形した形態、さらにはそのロール状に整形した後一定の厚さにスライスした形態などが挙げられるが、少なくとも、ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した積層状構造を有することが好ましい。
なお、複合焼菓子生地が上記積層状構造を含有するとは、焼成時において、ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した積層状構造を少なくとも1つ含む積層状生地であることを指し、具体的には、ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した2層の積層状生地、該2層の積層状生地の上面にさらにケーキ生地を積載した3層の積層状生地、あるいは、該2層の積層状生地の下面に薄板状の呈味素材を敷いた3層の積層状生地、さらには、上記2種の、3層の積層状生地の上面にさらにケーキ生地や薄板状の呈味素材を積載した積層状生地が挙げられる。なお、上記薄板状の呈味素材とケーキ生地の層数はとくに制限されず、各1層以上であればよいが、好ましくはケーキ生地層は2層以上であることが好ましい。すなわち、薄板状の呈味素材の下面と上面にケーキ生地のある3層構造を少なくとも含有することが好ましい。なお、層数の上限についてはとくに制限がないが、好ましくは上記薄板状の呈味素材とケーキ生地の合計した層数が30層以下、より好ましくは10層以下、さらに好ましくは5層以下とする。
【0029】
ここで、上記積層状構造とする場合、薄板状の呈味素材側から見た場合に、薄板状の呈味素材がケーキ生地を完全に掩蔽する大きさであることが好ましい。そのためのひとつの方法は、ケーキ生地を上面から見た場合の面積より大となるように薄板状の呈味素材を整形し、積載する方法であり、もうひとつの方法は、焼型を使用し、ケーキ生地を充填後、その上面と略同一の形状に整形した薄板状の呈味素材を積載する方法である。こうすることによって、焼成中にケーキ生地の上に板状の呈味素材が浮遊した状態となり、ケーキ生地中に沈降することが防止される。なお、上記焼型は、底部のない形状、すなわちセルクルであってもよい。
【0030】
ここで、上記積層状構造とする場合、上記ケーキ生地と薄板状の呈味素材の質量比は、ケーキ生地100質量部に対し、薄板状の呈味素材が好ましくは25〜100質量部、より好ましくは35〜55質量部である。なお、ここで言う質量比は、薄板状の呈味素材と、その下に直に接するケーキ生地との質量比である。ここで、ケーキ生地100質量部に対し薄板状の呈味素材が25質量部未満であると均質な積層状にならないおそれがある。また、ケーキ生地100質量部に対し薄板状の呈味素材が100質量部超であると、ケーキ生地の膨張力が薄板状の呈味素材の重量に負けてしまい複合焼菓子の中央部が陥没した形態となってしまうおそれがある。
【0031】
また、本発明の複合焼菓子生地において、上記ケーキ生地の比重よりも上記呈味素材の比重が大であることが好ましい。
具体的には、上記ケーキ生地の比重よりも上記呈味素材の比重が0.1以上大であることが好ましく、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上大とする。なお上限は一般的には1.0であるが、好ましくは0.7以下とする。
【0032】
比重差を上記のように設定することにより、波打ちのない均質な積層状焼菓子を得ることができ、特に、上記ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した積層状構造を有する場合、安定的に波打ちのない均質な積層構造とすることができる。
なお、薄板状の呈味素材は、焼成時にケーキ生地の上に積載された状態になっていればよいため、例えば、薄板状の薄板状の呈味素材の上面にケーキ生地を絞り、焼成時に上下反転させてもよい。
さらに、複合焼菓子生地の状態で冷凍することも可能であるし、ケーキ生地及び/又は薄板状の呈味素材を冷凍した状態で複合させてもよい。
【0033】
次に、本発明の複合焼菓子生地の製造方法について述べる。
本発明の複合焼菓子生地は、上記ケーキ生地と薄板状の呈味素材を上記複合方法により複合することによって得ることができる。
なお、ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載する場合は、ケーキ生地は平板上に配置してもよいが、金属製や紙製、シリコン製など各種焼型に配置することが好ましい。次いで、その上面に、薄板状の呈味素材を、好ましくは、上記条件となるようにケーキ生地の上に積載することによって得ることができる。
なお、薄板状の呈味素材は、焼成時にケーキ生地の上に積載された状態になっていればよいため、例えば、薄板状の呈味素材の上面にケーキ生地を絞り、焼成時に上下反転させてもよい。
さらに、複合焼菓子生地の状態で冷凍することも可能であるし、ケーキ生地及び/又は薄板状の呈味素材を冷凍した状態で複合させてもよい。
【0034】
次に、本発明の複合焼菓子について述べる。
本発明の複合焼菓子は、上記複合焼菓子生地を焼成することによって得ることができるが、好ましくは、上記複合焼菓子生地を、ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した状態となるように配置し、焼成する。
【0035】
焼成方法は、通常のべーカリー製品同様、好ましくは120℃〜250℃、より好ましくは160℃〜220℃で行なう。120℃未満であると火抜けが悪く、焼成時間が延びてしまいやすく、その場合、ケーキ生地層部分が、ソフトでしっとりした食感が得られないものとなってしまったり、中央部が陥没してしまったりするおそれがある。また250℃を超えると表面に焦げを生じ、食味が悪くなりやすく、内部も、ソフトでしっとりした食感が得られないものになってしまうおそれがある。
【0036】
なお、本発明の複合焼菓子において、ケーキ生地部分の比容積(cc/g)よりも呈味素材部分の比容積(cc/g)が小であることが好ましい。
具体的には、上記ケーキ生地部分の比容積よりも上記呈味素材部分の比容積が0.1cc/g以上小であることが好ましく、より好ましくは0.5cc/g以上、さらに好ましくは1.0cc/g以上小とする。なお上限は一般的には3.0cc/gであるが、好ましくは2.5cc/g以下とする。
比容積差が上記範囲であることにより、とくに呈味生地層とケーキ層からなる積層状焼菓子の場合、波打ちのない均質な積層状焼菓子とすることができ、特に、上記ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した積層状構造を有する場合、安定的に波打ちのない均質な積層構造とすることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら制限を受けるわけではない。
<薄板状フラワーペーストAの製造>
ヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂12質量部及びハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.06質量部に、キサンタンガム0.2質量部及びローカストビーンガム0.2質量部を添加し油相とした。水30.44質量部、ワキシーコーン由来のリン酸架橋澱粉2.1質量部、コーン由来のリン酸架橋澱粉4.9質量部、小麦粉1質量部、ゼラチン1質量部、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)40質量部、脱脂粉乳3質量部、乾燥全卵5質量部及び香料0.1質量部を混合し水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmの薄板状のカスタード風味フラワーペーストAを得た。この薄板状フラワーペーストAの比重は1.18であり、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は12質量%、糖類含有量は30質量%、水分含有量は40質量%であった。
【0038】
<薄板状フラワーペーストBの製造>
ヨウ素価55のパームオレインのランダムエステル交換油脂25質量部及びハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量部に、キサンタンガム0.01質量部及びペクチン0.3質量部を添加し油相とした。水29.95質量部、馬鈴薯デンプン4質量部、小麦粉3質量部、ゼラチン2質量部、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)27質量部、脱脂粉乳3質量部、乾燥全卵5質量部及び香料0.69質量部を混合し水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmの薄板状カスタード風味フラワーペーストBを得た。この薄板状フラワーペーストBの比重は1.15であり、澱粉類含有量は7質量%、油脂含有量は25質量%、糖類含有量は20質量%、水分含有量は36質量%であった。
【0039】
<カスタードクリームの製造>
雪平なべに牛乳1000質量部と、グラニュー糖200質量部の1/3量とを混合して80℃まで加熱し、牛乳混合物を得た。また、別の容器に、残りのグラニュー糖、卵黄200質量部及び小麦粉60質量部を均一に混合し卵黄混合物を得た。該卵黄混合物に、上記の加熱した牛乳混合物を加え均一に混合し、再度加熱して、ひと煮立ちさせた後、バター50質量部を加えて均一に混合し、加熱を止めて冷却した。これを冷蔵庫で一晩冷却後、裏ごしし、ペースト状のカスタードクリームを得た。このペースト状カスタードクリームの比重は1.08であり、澱粉類含有量は4質量%、油脂含有量は9質量%、糖類含有量は17質量%であった。
【0040】
[実施例1]
マーガリン(油分80質量%、水分17質量%)90質量部に上白糖100質量部を加え、よく混合した後、全卵90質量部を3〜4回に分けて加え、さらに混ぜ合わせた。続いて、よく篩った薄力粉100質量部を加え均一になるように混合し、比重が0.87であるバターケーキ生地を得た。
次に、直径12.0cm、高さ5.5cmの円柱状の紙ケース型に上記バターケーキ生地を100g絞り入れ、さらにその上に直径12cmに打ち抜き整形した上記薄板状フラワーペーストAをゆっくりと積載した。さらに、その上にケーキ生地85gを絞り、本発明の複合焼菓子生地を得た。なお、ケーキ生地と呈味素材の比重差は0.31であった。
得られた複合焼菓子生地は、固定オーブンを使用し、170℃で30分焼成し、上から厚さ1.5cmのケーキ層、厚さ1.0cmの呈味素材層(フィリング層)、厚さ1.5cmのケーキ層の3層構造の積層状焼菓子である本発明の複合焼菓子を得た。得られた複合焼菓子の下層のケーキ生地部分の比容積は2.5cc/g、呈味素材部分の比容積は0.83cc/gであり、比容積差は1.67cc/gであった。
なお、得られた複合焼菓子は、呈味素材層とケーキ層の密着性が高く剥がれが生じにくく、また、呈味素材層の厚さが均質でケーキ層との混和がない均質な積層状を呈していた。
【0041】
[実施例2]
上記薄板状フラワーペーストAに代えて、上記薄板状フラワーペーストBを使用した以外は実施例1と同様の配合、製法で、本発明の複合焼菓子生地、および、複合焼菓子を得た。なお、複合焼菓子生地におけるケーキ生地と呈味素材の比重差は0.28であった。
得られた複合焼菓子は、上から厚さ1.5cmのケーキ層、厚さ1.0cmの呈味素材層(フィリング層)、厚さ1.5cmのケーキ層の3層構造の積層状焼菓子であり、ケーキ生地部分の比容積は2.5cc/g、呈味素材部分の比容積は0.83cc/gであり、比容積差は1.67cc/gであった。
なお、得られた複合焼菓子は、呈味素材層とケーキ層の密着性は実施例1で得られた複合焼菓子より若干劣るものの、呈味素材層の厚さが均質でケーキ層との混和がない、均質な積層状を呈していた。
【0042】
[実施例3]
全卵140質量部と上白糖100質量部を比重が0.40付近まで泡立て、よく篩った薄力粉100質量部を加え、均一になるように混合し、湯煎で温めて液状にしたマーガリン(油分80質量%、水分17質量%)20質量部を加えて混ぜ合わせ、比重が0.51であるスポンジケーキ生地を得た。
上記バターケーキ生地に代えて、上記スポンジケーキ生地を使用した以外は実施例1と同様の配合、製法で、本発明の複合焼菓子生地、および、複合焼菓子を得た。なお、複合焼菓子生地におけるケーキ生地と呈味素材の比重差は0.67であった。
得られた複合焼菓子は、上から厚さ2.0cmのケーキ層、厚さ1.0cmの呈味生地層(フィリング層)、厚さ2.0cmのケーキ層の3層構造の積層状焼菓子であり、ケーキ生地部分の比容積は3.3cc/g、呈味素材部分の比容積は0.83cc/gであり、比容積差は2.47cc/gであった。
なお、得られた複合焼菓子は呈味素材層とケーキ層の密着性が高く剥がれが生じにくく、また、呈味素材層の厚さが均質でケーキ層との混和がないが、若干境界面が波打った積層状を呈していた。
【0043】
[比較例1]
上記薄板状フラワーペーストAを積載する代わりに、上記ペースト状のカスタードクリームを厚さ8mmになるように絞った以外は実施例1と同様の配合、製法で、比較例の複合焼菓子生地、および、複合焼菓子を得た。なお、複合焼菓子生地におけるケーキ生地と呈味素材の比重差は0.21であった。
得られた複合焼菓子は、マーブル状のバターケーキとなってしまい、また、呈味素材部分とケーキ生地部分の境界は渾然とし、あるいは呈味素材部分の周囲に空洞を生じ、均質な積層状構造が得られなかった。また、一部焼き落ちし、外観も好ましくないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーキ生地及び薄板状の呈味素材からなる複合焼菓子生地。
【請求項2】
ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した積層状構造を有することを特徴とする請求項1記載の複合焼菓子生地。
【請求項3】
前記ケーキ生地の比重よりも前記呈味素材の比重が大であることを特徴とする請求項1又は2記載の複合焼菓子生地。
【請求項4】
前記呈味素材がフラワーペーストである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合焼菓子生地。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合焼菓子生地を焼成してなる複合焼菓子。
【請求項6】
ケーキ生地部分の比容積よりも呈味素材部分の比容積が小であることを特徴とする請求項5記載の複合焼菓子。
【請求項7】
ケーキ生地及び薄板状の呈味素材からなる複合焼菓子生地を、ケーキ生地の上面に薄板状の呈味素材を積載した状態となるように配置し、焼成することを特徴とする複合焼菓子の製造方法。
【請求項8】
焼型を使用して焼成することを特徴とする請求項7記載の複合焼菓子の製造方法。