説明

複合発電プラントの給電可能時間演算システム

【課題】給電可能時間の誤差を考慮して、オペレータがガスタービン、排熱回収ボイラ及び蒸気タービンを順次起動していく手順を決定することを支援する複合発電プラントの給電可能時間演算システムを提供する。
【解決手段】複合発電プラントの給電可能時間演算システムは、蒸気タービンロータ温度検出手段と、複合発電プラントの標準的な運転開始条件となる数式モデル及び複合発電プラントの過去の運転開始データを含む運転開始条件データベースを記憶する記憶手段と、蒸気タービンロータ温度検出手段から取得した蒸気タービンロータの温度情報に基づいて数式モデルから標準的な給電可能時間を演算すると共に、蒸気タービンロータの温度情報に基づいて運転開始条件データベースから給電可能時間の誤差を演算する演算手段と、標準的な給電可能時間及び給電可能時間の誤差を表示する表示手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と空気とをガスタービンで燃焼し、発生した燃焼ガスにより発電すると共に、前記ガスタービンから排出された排気ガスを排熱回収ボイラに送って蒸気を生成し、生成された前記蒸気を蒸気タービンに送って発電する複合発電プラントの給電可能時間演算システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複合発電プラントは、ガスタービンを使って発電した後、その排熱を利用して蒸気を生成し、生成された蒸気を蒸気タービンに送って発電機を駆動する。
【0003】
特許文献1では、ガスタービンエンジン、蒸気タービン、並びにユーザ入力デバイス及び出力デバイスを含むコンピュータ制御システムを備えた複合サイクル発電システムの起動期間を予報する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2011−069356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した複合発電プラントにて、複合発電プラントは、電力需要に応じて起動と停止を繰り返すような運転形態をとることがある。特許文献1に記載の複合サイクル発電システムの起動期間を予報する方法では、コンピュータ制御システムが、所望時間及び現在値に基づいて予報起動時間を生成するアルゴリズムを実行し、複合サイクル発電システムが、予報起動時間にて起動されたときの所望時間に給電可能負荷であるよう予測されるようにする段階と、前記コンピュータシステムが、予報起動時間を出力デバイスに出力する段階と、を含む。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の複合サイクル発電システムの起動期間を予報する方法では、所望時間に対して、いつ複合サイクル発電システムを起動すればよいかを推定する予報起動時間を提示するのみで、状況によっては現時点で予報起動時間を過ぎてしまう
おそれがある。
【0007】
また、複合発電プラントは、ガスタービン、排熱回収ボイラ及び蒸気タービンを備え、複合発電プラントが停止している状態から、ガスタービン、排熱回収ボイラ及び蒸気タービンを順次起動していく手順により起動モードが異なる。起動モードが異なると、複合発電プラントは、給電可能時間も変化する。また、各起動モードにおける給電可能時間の誤差も考慮して、オペレータは、起動モードを決定する必要がある。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、給電可能時間の誤差を考慮して、オペレータがガスタービン、排熱回収ボイラ及び蒸気タービンを順次起動していく手順を決定することを支援する複合発電プラントの給電可能時間演算システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、複合発電プラントの給電可能時間演算システムは、燃料と空気とをガスタービンで燃焼し、発生した燃焼ガスにより発電すると共に、前記ガスタービンから排出された排気ガスを排熱回収ボイラに送って蒸気を生成し、生成された前記蒸気を蒸気タービンに送って発電する複合発電プラントが停止後に起動して、前記複合発電プラントの外部に電力を供給するまでの給電可能時間を演算するコンピュータシステムであって、前記蒸気タービンの蒸気タービンロータの温度を検出する蒸気タービンロータ温度検出手段と、前記複合発電プラントの標準的な運転開始条件となる数式モデル及び前記複合発電プラントの過去の運転開始データを含む運転開始条件データベースを記憶する記憶手段と、前記蒸気タービンロータ温度検出手段から取得した前記蒸気タービンロータの温度情報に基づいて前記数式モデルから標準的な給電可能時間を演算すると共に、前記蒸気タービンロータの温度情報に基づいて前記運転開始条件データベースから給電可能時間の誤差を演算する演算手段と、前記演算手段で演算した前記標準的な給電可能時間及び前記給電可能時間の誤差を表示する表示手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成により、給電可能時間の誤差を考慮して、オペレータがガスタービン、排熱回収ボイラ及び蒸気タービンを順次起動していく手順を決定することを支援することができる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記給電可能時間の誤差は、最短の給電可能時間及び最長の給電可能時間であることが好ましい。
【0012】
これにより、オペレータは、最長の給電可能時間を考慮して、電力需要に合わせて複合発電プラントの起動を実行することができる。オペレータは、最短の給電可能時間を考慮して複合発電プラントの起動を実行することにより、消費する燃料を抑制することができる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記蒸気タービンの蒸気タービン翼の温度を検出する蒸気タービン翼温度検出手段をさらに含み、前記演算手段は、前記蒸気タービン翼温度検出手段から前記蒸気タービン翼の温度情報を取得し、前記蒸気タービンロータの温度情報及び前記蒸気タービン翼の温度情報に基づいて前記運転開始条件データベースから給電可能時間の誤差を演算することが好ましい。
【0014】
この構成により、蒸気タービン翼の温度情報を含めて演算することで、演算する給電可能時間の誤差の精度を高めることができる。
【0015】
本発明の望ましい態様として、前記記憶手段は、前記ガスタービン、前記排熱回収ボイラ及び前記蒸気タービンを順次起動していく手順が異なる複数の起動モードを記憶し、前記演算手段は、前記起動モード毎に前記標準的な給電可能時間及び前記給電可能時間の誤差を演算することが好ましい。
【0016】
この構成により、給電可能時間の誤差を考慮して、起動モードを決定することを支援することができる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記表示手段は、前記起動モード毎の前記標準的な給電可能時間及び前記給電可能時間の誤差を一覧できるように表示することが好ましい。
【0018】
この構成により、オペレータが起動モード同士の比較をすることを支援することができる。その結果、複数の起動モードにおける給電可能時間の誤差を考慮して、オペレータがガスタービン、排熱回収ボイラ及び蒸気タービンを順次起動していく手順を決定することを支援することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、給電可能時間の誤差を考慮して、オペレータがガスタービン、排熱回収ボイラ及び蒸気タービンを順次起動していく手順を決定することを支援する複合発電プラントの給電可能時間演算システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、複合発電プラントの給電可能時間演算システムを表す概略構成図である。
【図2】図2は、蒸気タービンを説明する説明図である。
【図3】図3は、制御装置を説明する説明図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る複合発電プラントの給電可能時間演算システムの動作手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、起動モードを説明するための説明図である。
【図6】図6は、蒸気タービンロータの冷却曲線を示す説明図である。
【図7】図7は、給電可能時間演算システムの演算を説明する説明図である。
【図8】図8は、実施形態1に係る複合発電プラントの給電可能時間について表示する表示画面の一例を示す説明図である。
【図9】図9は、実施形態2に係る複合発電プラントの給電可能時間演算システムの動作手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施形態2に係る給電可能時間演算システムの演算を説明する説明図である。
【図11】図11は、実施形態3に係る複合発電プラントの給電可能時間演算システムの動作手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、実施形態3に係る複合発電プラントの給電可能時間について表示する表示画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
(実施形態1)
図1は、複合発電プラントの給電可能時間演算システムを表す概略構成図である。図1に示すように、複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、ガスタービン11と、排熱回収ボイラ20と、煙突21と、蒸気タービン22と、復水器26と、復水ポンプ27と、発電機16及び発電機24と、制御装置80とを含む。制御装置80は、ガスタービン11と、排熱回収ボイラ20と、蒸気タービン22と、を少なくとも制御できるコンピュータシステムである。
【0023】
ガスタービン11は、圧縮機12と燃焼器13とタービン14とを含む。ガスタービン11は、タービン軸15を介して発電機16を連結している。発電機16は、例えばサイリスタモータであって、ガスタービン起動用モータとして機能すると共に、ガスタービン起動後の発電機として機能する。そして、ガスタービン11における圧縮機12の入口側には、フィルタ17を有する吸気管18が連結される一方、タービン14の出口側には排気管19が連結されている。
【0024】
ガスタービン11の排気管19は、排熱回収ボイラ20を介して煙突21に連結されている。この排熱回収ボイラ20は、例えば、高圧ボイラと中圧ボイラと低圧ボイラとを有しており、ガスタービン11からの排気ガスにより各ボイラでそれぞれ蒸気を発生させることができる。
【0025】
蒸気タービン22は、排熱回収ボイラ20で発生した蒸気が配管23により供給されることで駆動し、連結された発電機24を運転することができる。そして、この蒸気タービン22に供給された蒸気は配管25により復水器26に送られて凝縮された後、復水ポンプ27により排熱回収ボイラ20に送られるようになっている。
【0026】
図2は、蒸気タービンを説明する説明図である。図2に示すように、蒸気タービン22は、蒸気タービンロータ41と、基礎台44と、軸受45とを含む。蒸気タービンロータ41は、蒸気タービン翼42を備え、車室43に挿通されて設置される。基礎台44は、例えば柱状で、車室43の前後にコンクリートを打設して形成される。軸受45は、基礎台44頂部に台板46を水平に敷設し、この台板46上に固定設置されている。また、軸受45は、蒸気タービンロータ41を前後から支持している。
【0027】
複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、蒸気タービンロータ温度検出手段である温度計31を備え、温度計31が蒸気タービンロータの温度TAを検出する。後述する実施形態2のように、複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、蒸気タービン翼温度検出手段である温度計32を備え、蒸気タービン翼の温度TBを検出することがより好ましい。制御装置80は、温度計31及び温度計32が取得した蒸気タービンロータの温度TAの情報及び蒸気タービン翼の温度TBの情報を取得することができる。
【0028】
図1に示すように、上述したガスタービン11では、吸気管18を通して圧縮機12に取り込まれた空気が圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。この圧縮空気が燃焼器13に送られ、圧縮空気に対して所定量の燃料が供給されることで、燃焼器13は、燃料を燃焼する。そして、燃焼器13で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン14に送られて複数の静翼及び動翼を通過することでタービン軸15を駆動回転し、発電機16を回転駆動して発電を行う。
【0029】
タービン14から排出された排気ガスは、排気管16を通って排熱回収ボイラ20に送られる。そして、排熱回収ボイラ20は、高温・高圧の排気ガスにより蒸気を生成する。排熱回収ボイラ20で生成された蒸気は、配管23を通って蒸気タービン22に送られる。この蒸気は、蒸気タービン22を駆動することで発電機24を回転駆動して発電を行う。また、蒸気タービン22に供給された蒸気は、配管25により復水器26に送られる。そして、復水器26は、蒸気を凝縮する。凝縮された水は、復水ポンプ27により排熱回収ボイラ20に戻される。
【0030】
以上説明したように、複合発電プラントは、燃料と空気とをガスタービン11で燃焼し、発生した燃焼ガスにより発電すると共に、ガスタービン11から排出された排気ガスを排熱回収ボイラ20に送って蒸気を生成し、生成された蒸気を蒸気タービン22に送って発電する。この複合発電プラントは、電力需要に応じて起動と停止を繰り返すような運転形態をとることがある。
【0031】
制御装置80は、複合発電プラントが停止後に起動して複合発電プラントの外部に電力を供給するまでの給電可能時間を演算するコンピュータシステムである。また、制御装置80は、ガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22を順次起動していく手順である起動モードに従って、複合発電プラントの起動制御を行うことができる。
【0032】
図3は、制御装置を説明する説明図である。図3に示す制御装置80は、入力処理回路81と、入力ポート82と、処理部90と、記憶部94と、出力ポート83と、出力処理回路84と、表示装置85、キーボード等の入力装置86とを含んでいる。処理部90は、演算手段であって、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)91と、RAM(Random Access Memory)92と、ROM(Read Only Memory)93とを含んでいる。
【0033】
処理部90と、記憶部94と、入力ポート82及び出力ポート83とは、バス87、バス88、バス89を介して接続される。バス87、バス88及びバス89により、処理部90のCPU91は、記憶部94と、入力ポート82及び出力ポート83と相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。
【0034】
入力ポート82には、入力処理回路81が接続されている。入力処理回路81には、温度計31または温度計32からのデータisが接続されている。そして、データisは、入力処理回路81に備えられるノイズフィルタやA/Dコンバータ(Analog to Digital Converter)等により、処理部90が利用できる信号に変換されてから、入力ポート82を介して処理部90へ送られる。これにより、処理部90は、必要な情報を取得することができる。
【0035】
出力ポート83には、出力処理回路84が接続されている。出力処理回路84には、表示装置85や、外部出力用の端子が接続されている。出力処理回路84は、表示装置制御回路、配電盤等の制御信号回路、信号増幅回路等を備えている。出力処理回路84は、処理部90が算出した給電可能時間等を、表示手段である表示装置85に表示させる表示信号として出力したり、ガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22へ伝達する指示信号idとして出力したりする。表示装置85は、表示手段であって、例えば液晶表示パネルやCRT(Cathode Ray Tube)等を用いることができる。
【0036】
記憶部94は、複合発電プラントの給電可能時間演算システム1の動作手順を含むコンピュータプログラム等が記憶されている。ここで、記憶部94は、RAMのような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ハードディスクドライブあるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。ここで、RAM92又は記憶部94は、記憶手段である。
【0037】
上記コンピュータプログラムは、処理部90へすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、複合発電プラントの給電可能時間演算システム1の動作手順を実行するものであってもよい。また、この制御装置80は、コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、複合発電プラントの給電可能時間演算システム1の動作手順を実行するものであってもよい。
【0038】
また、複合発電プラントの給電可能時間演算システム1の動作手順は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション、あるいはプラント制御用コンピュータ等のコンピュータシステムで実行することによって実現することもできる。また、このプログラムは、ハードディスク等の記録装置、フレキシブルディスク(FD)、ROM、CD−ROM、MO、DVD、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0039】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線網を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0040】
制御装置80は、RAM92又は記憶部94に、後述する過去の運転開始データDを含む運転開始条件データベースB及び複合プラントの標準的な運転開始条件である数式モデルを記憶している。また、制御装置80は、RAM92又は記憶部94に、後述する、ガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22を順次起動していく手順である複数の起動モードを記憶している。
【0041】
次に、図1〜図4を用いて、複合発電プラントの給電可能時間演算システム1の動作について手順を説明する。図4は、本実施形態に係る複合発電プラントの給電可能時間演算システムの動作手順を示すフローチャートである。
【0042】
図4に示すように、制御装置80は、入力手段である入力装置86を介してオペレータの起動モードの選択を受け付ける(ステップS11)。図5は、起動モードを説明するための説明図である。図5には、複合発電プラントの起動モードとして、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCが例として記載されている。また、図5において、複合発電プラントの出力を縦軸、時間を横軸として、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCにおける複合発電プラントの出力変動が記載されている。
【0043】
制御装置80は、RAM92又は記憶部94に、図5に示すような、ガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22を順次起動していく手順である起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCを記憶している。
【0044】
起動モードMAにおいて、制御装置80は、ガスタービン11を起動した起動時点GTSの後、タービン軸15を駆動回転し、発電機16を回転駆動して発電を行う。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン11からの排気ガスにより蒸気を発生させる。制御装置80は、起動時点STAで蒸気タービン22を起動する。蒸気タービン22は、発電機24を回転駆動して発電を行う。複合発電プラントの出力が外部へ給電可能な給電可能出力Qとなった場合、複合発電プラントの起動が完了する。
【0045】
なお、起動モードMAにおいて、給電可能出力Qとなった場合、ガスタービン11を起動した起動時点GTSから標準的に経過する標準給電可能時間をTmamとする。起動モードMAにおいて、給電可能出力Qとなる時間に誤差ΔTmaがある場合、出力曲線MAminに沿って起動時点GTSから最短で給電可能となる最短給電可能時間をTmasとする。起動モードMAにおいて、給電可能出力Qとなる時間に誤差ΔTmaがある場合、出力曲線MAmaxに沿って起動時点GTSから最長で給電可能となる最長給電可能時間をTmalとする。
【0046】
起動モードMBにおいて、制御装置80は、ガスタービン11を起動した起動時点GTSの後、タービン軸15を駆動回転し、発電機16を回転駆動して発電を行う。起動モードMBでは、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン11からの排気ガスにより蒸気を発生させると共に、燃料を燃焼し排熱回収ボイラ20で生成された蒸気の量を起動モードMAよりも多くする。制御装置80は、起動時点STAよりも早い起動時点STBで蒸気タービン22を起動する。蒸気タービン22は、発電機24を回転駆動して発電を行う。複合発電プラントの出力が外部へ給電可能な給電可能出力Qとなった場合、複合発電プラントの起動が完了する。
【0047】
なお、起動モードMBにおいて、給電可能出力Qとなった場合、起動時点GTSから標準的に経過する標準給電可能時間をTmbmとする。起動モードMBにおいて、給電可能出力Qとなる時間に誤差ΔTmbがある場合、出力曲線MBminに沿って起動時点GTSから最短で給電可能となる最短給電可能時間をTmbsとする。起動モードMBにおいて、給電可能出力Qとなる時間に誤差ΔTmbがある場合、出力曲線MBmaxに沿って起動時点GTSから最長で給電可能となる最長給電可能時間をTmblとする。
【0048】
起動モードMCにおいて、制御装置80は、ガスタービン11を起動した起動時点GTSの後、燃焼器を作動して昇速するときの燃料投入量を起動モードMAよりも多くする。タービン軸15を駆動回転し、発電機16を回転駆動して発電を行う。起動モードMBと同様に、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン11からの排気ガスにより蒸気を発生させると共に、燃料を燃焼し排熱回収ボイラ20で生成された蒸気の量を起動モードMAよりも多くする。制御装置80は、起動時点STBよりも早い起動時点STCで蒸気タービン22を起動する。蒸気タービン22は、発電機24を回転駆動して発電を行う。複合発電プラントの出力が複合発電プラントの外部へ給電可能な給電可能出力Qとなった場合、複合発電プラントの起動が完了する。
【0049】
なお、起動モードMCにおいて、給電可能出力Qとなった場合、起動時点GTSから標準的に経過する標準給電可能時間をTmcmとする。起動モードMCにおいて、給電可能出力Qとなる時間に誤差ΔTmcがある場合、出力曲線MCminに沿って起動時点GTSから最短で給電可能となる最短給電可能時間をTmcsとする。起動モードMCにおいて、給電可能出力Qとなる時間に誤差ΔTmcがある場合、出力曲線MCmaxに沿って起動時点GTSから最長で給電可能となる最長給電可能時間をTmclとする。
【0050】
例えば、制御装置80は、ステップS11においてオペレータが入力装置86を介して起動モードMAを選択した場合、RAM92又は記憶部94に記憶する起動モードMAの情報をRAM92のワークエリアに読み込む。
【0051】
次に、制御装置80は、処理をステップS12に進める。図2に示す温度計31は、蒸気タービンロータの温度TAを検出する。そして、制御装置80は、蒸気タービンロータの温度TAの情報を取得する(ステップS12)。
【0052】
上述したように、制御装置80は、図5に示す起動時点STAで蒸気タービン22を起動する。図6は、蒸気タービンロータの冷却曲線を示す説明図である。図6に示すように、複合発電プラント停止により、蒸気タービンロータが冷却されている。また、複合発電プラント停止している冷却期間TSの長さに応じて、ガスタービン11を起動した起動時点GTSの時点における蒸気タービンロータの温度は変化する。そして、蒸気タービンロータの温度は、冷却曲線X1に沿って冷却されていくことになる。冷却曲線X1は季節や気候条件によって冷却曲線X2または冷却曲線X3で示すように変動し必ずしも一定とは限らず、図5に示す誤差ΔTmaが生じるおそれがある。
【0053】
また、複合発電プラントは、ガスタービン11の排熱を利用するため、ガスタービン11を起動して蒸気タービン22を起動するまでにタイムラグTPを要する。起動時点STAが変化すると、図5に示す給電可能出力Qとなるまでの給電可能時間に影響を及ぼす。このため、制御装置80は、起動モードMAにおける給電可能時間の誤差ΔTmaも考慮して、オペレータが起動モードを決定することを支援する必要がある。
【0054】
次に、制御装置80は、ステップS12において取得した蒸気タービンロータの温度TAの情報に基づいて、給電可能時間の演算を処理する(ステップS13)。図7は、給電可能時間演算システムの演算を説明する説明図である。
【0055】
制御装置80は、RAM92又は記憶部94から過去の運転開始データDを含む運転開始条件データベースBをRAM92のワークエリアに読み込む。また、制御装置80は、RAM92又は記憶部94から標準的な運転開始条件である数式モデルFをRAM92のワークエリアに読み込む。数式モデルFは、起動モードMAにおける標準的な運転開始条件の下で、給電可能時間Tを演算する演算式の情報を含む。処理部90のCPU91は、例えば、蒸気タービンロータ温度TAの情報を数式モデルFに与え、給電可能時間Tとして、図5に示す起動時点GTSから標準的に経過する標準給電可能時間Tmamを演算することができる。
【0056】
また、制御装置80は、蒸気タービンロータ温度TAの情報を運転開始条件データベースBに与える。ここで、過去の運転開始データDは、季節、気候条件等の変動要素毎に上述した誤差ΔTmaを記録した実績データである。このため、処理部90のCPU91は、蒸気タービンロータ温度TAの情報を運転開始条件データベースBに与え、起動する季節の情報から給電可能時間Tとして、図5に示す最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを演算することができる。
【0057】
または、制御装置80が複合発電プラントのおかれている気候条件、例えば大気温度、湿度、気圧等の情報を取得する。そして、処理部90のCPU91は、この気候条件における蒸気タービンロータ温度TAの情報を運転開始条件データベースBに与え、給電可能時間Tとして、図5に示す最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを演算することができる。
【0058】
次に、制御装置80は、ステップS13において演算した給電可能時間を表示装置85に表示させる(ステップS14)。図8は、実施形態1に係る複合発電プラントの給電可能時間について表示する表示画面の一例を示す説明図である。図8に示すように、表示装置85は、起動モードMAにおける標準給電可能時間Tmam及び給電可能時間の誤差ΔTmaとして最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを表示装置85の表示画面W1に表示させる。
【0059】
表示装置85は、表示画面W1に、演算根拠の異なる標準給電可能時間Tmam並びに最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを表示することで、オペレータが演算結果を比較し判断することができる。制御装置80は、起動モードMAにおける標準給電可能時間Tmam及び給電可能時間の誤差ΔTmaを演算し、表示装置85が表示画面W1にΔTmaを表示してもよい。制御装置80は、蒸気ロータ温度、例えばTa1を表示装置85の表示画面W1に表示させてもよい。
【0060】
制御装置80は、起動モードMAにおける給電可能時間の誤差ΔTmaとして最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを表示装置85の表示画面W1に表示させる。これにより、オペレータは、起動モードMAで複合発電プラントの起動を実行した場合に、標準給電可能時間Tmam、最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを把握することができる。
【0061】
また、オペレータは、最長給電可能時間Tmalを考慮して、電力需要に合わせて複合発電プラントの起動を実行することができる。また、オペレータは、最短給電可能時間Tmasを考慮して複合発電プラントの起動を実行することにより、消費する燃料を抑制することができる。このため、制御装置80は、起動モードにおける給電可能時間の誤差ΔTmaを考慮して、オペレータが起動モードを決定することを支援することができる。
【0062】
次に、制御装置80は、オペレータが起動モードMAで複合発電プラントの起動を実行した場合(ステップS15、Yes)、処理をステップS16に進める。制御装置80は、起動モードMAの情報に従って、ガスタービン11と、排熱回収ボイラ20と、蒸気タービン22と、を少なくとも制御し、複合発電プラントの起動制御を開始する(ステップS16)。
【0063】
制御装置80は、オペレータが起動モードMAで複合発電プラントの起動を実行しない場合(ステップS15、No)、処理をステップS11に戻す。ステップS11において、制御装置80は、例えばオペレータの起動モードMBの選択を受け付ける。以後、制御装置80は、上述したように処理を進める。
【0064】
これにより、オペレータは、起動モードMBで複合発電プラントの起動を実行した場合に、標準給電可能時間Tmbm、最短給電可能時間Tmbs及び最長給電可能時間Tmblを把握することができる。なお、ステップS11において、制御装置80は、例えばオペレータの起動モードMCの選択を受け付けても同様の処理をすることができる。上述したように、RAM92又は記憶部94は、図5に示すような、ガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22を順次起動していく手順である起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCを記憶する。そして、処理部90は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎に標準給電可能時間Tmam、Tmbm、Tmcm及び給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb、ΔTmcを演算することができる。このため、実施形態1の複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb、ΔTmcを考慮して、オペレータが起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCのいずれか1つを決定することを支援することができる。
【0065】
以上説明したように、実施形態1の複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、複合発電プラントが停止後に起動して複合発電プラントの外部に電力を供給するまでの給電可能時間を演算するコンピュータシステムであって、蒸気タービンロータ温度検出手段である温度計31と、記憶手段であるRAM92又は記憶部94と、演算手段である処理部90と、表示手段である表示装置85を含む。そして、温度計31は、蒸気タービン22の蒸気タービンロータの温度TAを検出する。また、RAM92又は記憶部94は、複合発電プラントの標準的な運転開始条件となる数式モデルF及び複合発電プラントの過去の運転開始データDを含む運転開始条件データベースBを記憶する記憶手段とを記憶する。また、処理部90は、温度計31から取得した蒸気タービンロータの温度情報TAに基づいて数式モデルFから標準的な給電可能時間Tmamを演算する。また処理部90は、蒸気タービンロータの温度情報TAに基づいて運転開始条件データベースBから給電可能時間の誤差ΔTmaを演算する。表示装置85は、処理部90で演算した標準的な給電可能時間及び給電可能時間の誤差ΔTmaを表示する。
【0066】
この構成により、給電可能時間の誤差ΔTmaを考慮して、オペレータがガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22を順次起動していく手順を決定することを支援することができる。例えば、オペレータは、上述した起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCのいずれか1つを入力手段である入力装置86により選択することができる。
【0067】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係る複合発電プラントの給電可能時間演算システムの動作手順を示すフローチャートである。図10は、実施形態2に係る給電可能時間演算システムの演算を説明する説明図である。実施形態2に係る給電可能時間演算システム1は、制御装置が蒸気タービンロータ温度TA及び蒸気タービン翼温度TBを取得する。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0068】
図9に示すように、制御装置80は、上述したステップS11と同様に、入力装置86を介してオペレータの起動モードの選択を受け付ける(ステップS21)。制御装置80は、ステップS21においてオペレータが入力装置86を介して起動モードMAを選択した場合、RAM92又は記憶部94に記憶する起動モードMAの情報をRAM92のワークエリアに読み込む。
【0069】
次に、制御装置80は、処理をステップS22に進める。ステップS22において、図2に示す温度計31は、蒸気タービンロータの温度TAを検出する。また、温度計32は、蒸気タービン翼の温度TBを検出する。制御装置80は、蒸気タービンロータの温度TA及び蒸気タービン翼の温度TBの情報を取得する(ステップS22)。
【0070】
次に、制御装置80は、ステップS22において取得した蒸気タービンロータの温度TA及び蒸気タービン翼の温度TBの情報に基づいて、給電可能時間の演算を処理する(ステップS23)。上述した図6に示すように、複合発電プラント停止により、蒸気タービンロータが冷却されている。また、冷却期間TSの長さに応じて、ガスタービン11を起動した起動時点GTSの時点における蒸気タービンロータの温度が変化する。そして、蒸気タービンロータの温度は冷却曲線X1に沿って、冷却されていくことになる。
【0071】
冷却曲線X1は、蒸気タービン翼の温度TBが高い場合、冷却曲線X2で示すように、蒸気タービンロータの温度が上振れするおそれがある。また、冷却曲線X1は、蒸気タービン翼の温度TBが低い場合、冷却曲線X3で示すように、蒸気タービンロータの温度が下振れするおそれがある。このように、蒸気タービン翼の温度TBの温度は、図5に示す給電可能時間の誤差ΔTmaを生じさせるおそれがある。
【0072】
制御装置80は、RAM92又は記憶部94から過去の運転開始データDを含む運転開始条件データベースB、複合発電プラントの標準的な運転開始条件である数式モデルFをRAM92のワークエリアに読み込む。処理部90のCPU91は、例えば、蒸気タービンロータ温度TAの情報を数式モデルFに与え、給電可能時間Tとして、図5に示す起動時点GTSから標準的に経過する標準給電可能時間Tmamを演算することができる。処理部90のCPU91は、蒸気タービンロータ温度TA及び蒸気タービン翼の温度TBの情報を数式モデルFに与え、給電可能時間Tとして、図5に示す起動時点GTSから標準的に経過する標準給電可能時間Tmamを演算してもよい。
【0073】
また、制御装置80は、蒸気タービンロータ温度TAの情報を運転開始条件データベースBに与える。ここで、過去の運転開始データDは、蒸気タービン翼の温度TBの変動要素毎に上述した誤差ΔTmaを記録した実績データである。このため、処理部90のCPU91は、給電可能時間Tとして、図5に示す最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを演算することができる。
【0074】
次に、制御装置80は、ステップS23において演算した給電可能時間を表示装置85に表示させる(ステップS24)。図8と同様に、表示装置85は、起動モードMAにおける給電可能時間、つまりTmam、最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを表示装置85の表示画面W1に表示する。
【0075】
これにより、オペレータが、起動モードMAで複合発電プラントの起動を実行した場合に、標準給電可能時間Tmam、最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを把握することができる。このため、制御装置80は、起動モードにおける給電可能時間の誤差ΔTmaを考慮して、オペレータが起動モードを決定することを支援することができる。
【0076】
次に、制御装置80は、オペレータが起動モードMAで複合発電プラントの起動を実行した場合(ステップS25、Yes)、処理をステップS26に進める。制御装置80は、起動モードMAの情報に従って、ガスタービン11と、排熱回収ボイラ20と、蒸気タービン22と、を少なくとも制御し、複合発電プラントの起動制御を開始する(ステップS26)。
【0077】
制御装置80は、オペレータが起動モードMAで複合発電プラントの起動を実行しない場合(ステップS25、No)、処理をステップS21に戻す。ステップS21において、制御装置80は、入力装置86を介して例えばオペレータの起動モードMBの選択を受け付ける。以後、制御装置80は、上述したように処理を進める。
【0078】
これにより、オペレータは、起動モードMBで複合発電プラントの起動を実行した場合に、標準給電可能時間Tmbm、最短給電可能時間Tmbs及び最長給電可能時間Tmblを把握することができる。なお、ステップS21において、制御装置80は、例えばオペレータの起動モードMCの選択を受け付けても同様の処理をすることができる。
【0079】
以上説明したように、実施形態2の複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、複合発電プラントが停止後に起動して複合発電プラントの外部に電力を供給するまでの給電可能時間を演算するコンピュータシステムであって、蒸気タービンロータ温度検出手段である温度計31と、蒸気タービン翼温度検出手段である温度計32と、記憶手段であるRAM92又は記憶部94と、演算手段である処理部90と、表示手段である表示装置85を含む。そして、温度計32は、蒸気タービン22の蒸気タービン翼の温度TBを検出する。また、処理部90は、上述した蒸気タービンロータの温度情報TAに基づいて数式モデルFから標準的な給電可能時間Tmamを演算する。また処理部90、温度計32から蒸気タービン翼の温度情報TBを取得し、蒸気タービンロータの温度情報TA及び蒸気タービン翼の温度情報TBに基づいて運転開始条件データベースBから給電可能時間の誤差ΔTmaを演算する。表示装置85は、処理部90で演算した標準的な給電可能時間及び給電可能時間の誤差ΔTmaを表示する。
【0080】
実施形態2の複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、蒸気タービンロータの温度情報TAに基づいて演算した標準的な給電可能時間Tmamと、蒸気タービン翼の温度情報TBを含めて演算した給電可能時間の誤差ΔTmaを比較することができる。このため、オペレータは、蒸気タービン翼の温度が蒸気タービンロータの温度に与える影響を考慮して、給電可能時間を想定し、複合発電プラントを起動することができる。また、蒸気タービン翼の温度情報TBを含めて演算することで、演算する給電可能時間の誤差ΔTmaの精度を高めることができる。
【0081】
(実施形態3)
図11は、実施形態3に係る複合発電プラントの給電可能時間演算システムの動作手順を示すフローチャートである。図12は、実施形態3に係る複合発電プラントの給電可能時間について表示する表示画面の一例を示す説明図である。実施形態3に係る給電可能時間演算システム1は、制御装置80が可能な起動モード毎の給電可能時間を予め演算し、オペレータに起動モード毎の給電可能時間を一覧として表示して、起動モードの選択を支援する。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0082】
図2に示す温度計31は、蒸気タービンロータの温度TAを検出する。また、制御装置80は、蒸気タービンロータの温度TAの情報を取得する(ステップS31)。次に、制御装置80は、ステップS31において取得した蒸気タービンロータの温度TAに基づいて、可能な起動モード毎の給電可能時間の演算を処理する(ステップS32)。
【0083】
例えば、可能な起動モードには、図5に示す起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCがあり、処理部90のCPU91は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎に、給電可能時間の演算を処理する。
【0084】
図7に示すように、制御装置80は、RAM92又は記憶部94から過去の運転開始データDを含む運転開始条件データベースBをRAM92のワークエリアに読み込む。また、制御装置80は、RAM92又は記憶部94から標準的な運転開始条件である数式モデルFをRAM92のワークエリアに読み込む。処理部90のCPU91は、例えば、蒸気タービンロータ温度TAの情報を数式モデルFに与え、給電可能時間Tとして、図5に示す起動時点GTSから標準的に経過する標準給電可能時間としてTmam、Tmbm及びTmcmを演算する。
【0085】
また、制御装置80は、蒸気タービンロータ温度TAの情報を運転開始条件データベースBに与える。処理部90のCPU91は、蒸気タービンロータ温度TAの情報を運転開始条件データベースBに与え、起動する季節の情報から給電可能時間Tとして、図5に示すTmas、Tmal、Tmbs、Tmbl、Tmcs及びTmclを演算することができる。
【0086】
または、制御装置80が複合発電プラントのおかれている気候条件、例えば大気温度、湿度、気圧等の情報を取得する。そして、処理部90のCPU91は、この気候条件における蒸気タービンロータ温度TAの情報を運転開始条件データベースBに与え、給電可能時間Tとして、図5に示すTmas、Tmal、Tmbs、Tmbl、Tmcs及びTmclを演算することができる。
【0087】
上述したように、RAM92又は記憶部94は、図5に示すような、ガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22を順次起動していく手順である起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCを記憶している。そして、処理部90は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎に標準給電可能時間Tmam、Tmbm、Tmcm及び給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb、ΔTmcを演算することができる。
【0088】
次に、制御装置80は、ステップS32において演算した給電可能時間を表示装置85に表示させる(ステップS33)。図12に示すように、表示装置85は、起動モードMAにおける給電可能時間、標準給電可能時間Tmam、最短給電可能時間Tmas及び最長給電可能時間Tmalを表示装置85の表示画面W2に表示する。また、表示装置85は、起動モードMBにおける給電可能時間、標準給電可能時間Tmbm、最短給電可能時間Tmbs及び最長給電可能時間Tmblを表示装置85の表示画面W2に表示する。また、表示装置85は、起動モードMCにおける給電可能時間、標準給電可能時間Tmcm、最短給電可能時間Tmcs及び最長給電可能時間Tmclを表示装置85の表示画面W2に表示する。なお、制御装置80は、蒸気ロータ温度、例えばTa1を表示装置85の表示画面W2に表示させてもよい。
【0089】
表示画面W2において、表示装置85は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎の標準的な給電可能時間Tmam、Tmbm及びTmcmを一覧できるように表示する。表示画面W2において、表示装置85は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎の最短給電可能時間Tmas、Tmbs及びTmcs並びに最短給電可能時間Tmal、Tmbl及びTmclを一覧できるように表示する。または表示装置85は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎の給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb及びΔTmcを一覧できるように表示してもよい。
【0090】
これにより、オペレータが、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCで複合発電プラントの起動を実行した場合において、最短給電可能時間Tmas、最短給電可能時間Tmbs及び最短給電可能時間Tmcsを比較することができる。また、オペレータが、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCで複合発電プラントの起動を実行した場合において、最長給電可能時間Tmal、最長給電可能時間Tmbl及び最長給電可能時間Tmclを比較することができる。このため、制御装置80は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCにおける給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb、ΔTmcを考慮して、標準的な給電可能時間Tmam、Tmbm及びTmcmを比較して、オペレータが起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCのいずれか1つを決定することを支援することができる。
【0091】
次に、制御装置80は、オペレータが選択した起動モード起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCのいずれか1つを受け付ける(ステップS34)。ステップS34において、制御装置80は、オペレータが入力装置86を介して起動モードMAを選択した場合、RAM92又は記憶部94に記憶する起動モードMAの情報をRAM92のワークエリアに読み込む。次に、制御装置80は、起動モードMAの情報に従って、ガスタービン11と、排熱回収ボイラ20と、蒸気タービン22と、を少なくとも制御し、複合発電プラントの起動制御を開始する(ステップS35)。
【0092】
以上説明したように、実施形態3の複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、複合発電プラントが停止後に起動して複合発電プラントの外部に電力を供給するまでの給電可能時間を演算するコンピュータシステムであって、表示装置85が起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎の標準的な給電可能時間Tmam、Tmbm及びTmcmと、給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb、ΔTmcを一覧できるように表示する。また、表示装置85は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎の標準的な給電可能時間Tmam、Tmbm及びTmcm並びに給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb及びΔTmcを一覧できるように表示する。例えば、表示装置85は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMC毎の標準的な給電可能時間Tmam、Tmbm及びTmcm並びに給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb及びΔTmcを同一の表示仮面W2に表示する。
【0093】
この構成により、オペレータが起動モード同士の比較をすることを支援することができる。その結果、実施形態3の複合発電プラントの給電可能時間演算システム1は、起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCにおける給電可能時間の誤差ΔTma、ΔTmb、ΔTmcを考慮して、オペレータがガスタービン11、排熱回収ボイラ20及び蒸気タービン22を順次起動していく手順を決定することを支援することができる。そして、オペレータは、例えば、上述した起動モードMA、起動モードMB及び起動モードMCのいずれか1つを入力手段である入力装置86により選択することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 給電可能時間演算システム
11 ガスタービン
12 圧縮機
13 燃焼器
14 タービン
15 タービン軸
16 発電機(起動モータ)
20 排熱回収ボイラ
22 蒸気タービン
24 発電機
31 温度計
32 温度計
41 蒸気タービンロータ
42 蒸気タービン翼
85 表示装置
86 入力装置
90 処理部
94 記憶部
D 運転開始データ
F 数式モデル
TA 蒸気タービンロータ温度
TB 蒸気タービン翼温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気とをガスタービンで燃焼し、発生した燃焼ガスにより発電すると共に、前記ガスタービンから排出された排気ガスを排熱回収ボイラに送って蒸気を生成し、生成された前記蒸気を蒸気タービンに送って発電する複合発電プラントが停止後に起動して、前記複合発電プラントの外部に電力を供給するまでの給電可能時間を演算するコンピュータシステムであって、
前記蒸気タービンの蒸気タービンロータの温度を検出する蒸気タービンロータ温度検出手段と、
前記複合発電プラントの標準的な運転開始条件となる数式モデル及び前記複合発電プラントの過去の運転開始データを含む運転開始条件データベースを記憶する記憶手段と、
前記蒸気タービンロータ温度検出手段から取得した前記蒸気タービンロータの温度情報に基づいて前記数式モデルから標準的な給電可能時間を演算すると共に、前記蒸気タービンロータの温度情報に基づいて前記運転開始条件データベースから給電可能時間の誤差を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算した前記標準的な給電可能時間及び前記給電可能時間の誤差を表示する表示手段と、
を含むことを特徴とする複合発電プラントの給電可能時間演算システム。
【請求項2】
前記給電可能時間の誤差は、最短の給電可能時間及び最長の給電可能時間である請求項1に記載の複合発電プラントの給電可能時間演算システム。
【請求項3】
前記蒸気タービンの蒸気タービン翼の温度を検出する蒸気タービン翼温度検出手段をさらに含み、
前記演算手段は、前記蒸気タービン翼温度検出手段から前記蒸気タービン翼の温度情報を取得し、前記蒸気タービンロータの温度情報及び前記蒸気タービン翼の温度情報に基づいて前記運転開始条件データベースから給電可能時間の誤差を演算する請求項1または請求項2に記載の複合発電プラントの給電可能時間演算システム。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記ガスタービン、前記排熱回収ボイラ及び前記蒸気タービンを順次起動していく手順が異なる複数の起動モードを記憶し、
前記演算手段は、前記起動モード毎に前記標準的な給電可能時間及び前記給電可能時間の誤差を演算する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合発電プラントの給電可能時間演算システム。
【請求項5】
前記表示手段は、前記起動モード毎の前記標準的な給電可能時間及び前記給電可能時間の誤差を一覧できるように表示する請求項4に記載の複合発電プラントの給電可能時間演算システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−104411(P2013−104411A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250906(P2011−250906)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】