説明

複合積層板および複合積層板を用いた一体成形品ならびにそれらの製造方法

【課題】複合積層板の製造方法に関するものであり、特に電磁波遮蔽性を維持したまま無線通信性能を劣化せず、意匠性に優れた部分的に電波透過領域を有した複合積層板の製造方法とこれを用いた一体成形品を提供する。
【解決手段】導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材(2a)と、第1の基材と異なる第2の基材(2b)とを隣接するように積層し、さらに熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート(2c)を少なくとも厚み方向の表層に(2a)、(2b)を挟み込むように積層し、加熱溶融プレス含浸させた後、型内で冷却して賦形することにより一体化成形した複合積層板(1C)の外周の少なくとも一部を囲うように、熱可塑性樹脂(1D)を用い射出成形して得られることを特徴とする複合積層板(1C)を有する一体成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合積層板および複合積層板を用いた一体成形品ならびにそれらの製造方法に関するものであり、特に電磁波遮蔽性を維持したまま無線通信性能を劣化せず、意匠性に優れた部分的に電波透過領域を有した複合積層板および複合積層板を用いた一体成形品ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話に代表される無線通信機能を内蔵した製品の高機能化が進み、急速にオフィスや一般家庭へと普及した。これらの製品の多くは無線通信用のアンテナが実装されるが、携帯性や意匠性の観点から筺体内部にアンテナが配されるケースが大半である。
【0003】
一般的な電子機器筐体に必要な特性として電磁波遮蔽性能(EMI)が挙げられる。これはある機器が動作することによって発せられる電波により、他の機器の動作や人体に影響を与えることを防ぐための指標として用いられている。電子機器は何の対策も施さなければ近くにある他の機器の放射電磁波、雷、太陽の活動などの影響で、機能低下や誤作動、停止、記録消失などのトラブルを生じる場合があり、また、電子機器自身の発する電磁波によって他機器の動作や近くにいる人間の健康に悪影響を与えてしまう場合があることも一般に論じられている。そのため電子機器の筐体材料としては電磁波遮蔽性能の高い導電性プラスチックや金属などが使用されているが、特に携行が容易であるノートパソコンや携帯電話などの小型電子機器向けの筐体材料については、電磁波遮蔽性能に加え堅牢性と軽量性に優れる炭素繊維強化プラスチックやマグネシウム合金などが選定される場合が多い。
【0004】
このような電子機器筐体を構成する筺体全面に電磁波遮蔽性能が高い材料、例えば炭素繊維強化プラスチックやマグネシウム合金などの金属を選定した場合、平均アンテナ利得の低下や偏った電波指向性の発現などが生じ、無線通信性能が劣化するという機能的な問題が生じていた。
【0005】
特許文献1には、電磁波遮蔽効果を持つ筐体の一部分に別成形基材である絶縁体基材をはめ込み、基材に含まれる熱可塑樹脂の溶融温度よりも高い温度で加熱プレス成形して一体化する製造方法が開示されており、一部に絶縁体基材を使用することにより電波透過領域をもった筐体を作製できるようにはなったが、絶縁体基材を別成形するため製造工程が追加され、量産性の面で課題が残った。
【0006】
特許文献2には、電磁波遮蔽効果を持つ繊維強化熱硬化性樹脂材料を金型に配置した後、絶縁体部材を射出成形することにより強固な接合強度を持って接合させ、かつ量産性を確保する手法であるアウトサート射出成形接合技術が開示されており、接合強度と量産性を確保した成形技術が確立されたが、無線通信性能を得るための電波透過領域に使用する絶縁部材料は一般的に成形収縮率が大きいため、電波透過領域を大きく確保すると射出成形後に成形収縮率差から筐体に反りや変形を生じやすいという課題が残った。このような技術課題に対し、絶縁部材の材料設計指針が明確に記載された文献は存在しない。
【0007】
このように、従来技術では電磁波遮蔽効果を持つ筐体の天面基材にも、絶縁部材料にも熱可塑性樹脂を用い、かつ効果的に反りや変形を防止し、意匠性に優れ、量産性を確保した複合積層板を用いた電子機器筐体の製造方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−93213号公報
【特許文献2】特開2008−34823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の背景に鑑み、効果的に反りや変形を防止し、意匠性に優れ、量産性を確保した、複合積層板および複合積層板を用いた一体成形品ならびにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、前記課題を達成することができる、次の部分的に電波透過領域を有した複合積層板の製造方法とこれを用いた一体成形品を見出した。
(1)導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材(2a)と第1の基材と異なる第2の基材(2b)とを突き合わせ接合した複合基材を、少なくとも複数積層した基材積層体の層間の少なくとも一部に、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート(2c)を挟入した成形前積層体を形成し、前記成形前積層体を内部に配置した成形型を加熱溶融プレスによりマトリックス樹脂を前記複合基材内に含浸させた後、前記成形型内で冷却することにより一体化成形した複合積層板(1C)の製造方法。
(2)隣接する前記複合基材の境界部分の一部が重なり合うように積層することを特徴とした(1)に記載の複合積層板(1C)の製造方法。
(3)前記加熱溶融プレスにおいて、前記成形前積層体温度を融点以上の温度で加熱溶融プレスしたのち、固化温度以下になるまで冷却する間、圧力を保持することを特徴とした(1)または(2)に記載の複合積層板(1C)の製造方法。
(4)前記第1の強化基材(2a)にマトリックス樹脂が含浸した電磁波遮蔽領域となる成形材(1A)のKEC法により測定される電磁波遮蔽性が周波数1GHz帯において10〜80dBとなる材料を使用することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
(5)前記第2の基材(2b)にマトリックス樹脂が含浸した電波透過領域となる成形材(1B)のKEC法により測定される電磁波遮蔽性が周波数1GHz帯において0〜10dBとなる材料を使用することを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
(6)前記電磁波遮蔽領域となる成形材(1A)の繊維重量含有率(Wf)が5%から80%であることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
(7)前記電波透過領域となる成形材(1B)は強化繊維を含むことができ、強化繊維が非導電繊維であるガラス繊維、アラミド繊維、化学繊維、強化フィラーから選択される少なくとも1種を含む、(1)から(6)のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
(8)前記電波透過領域となる成形材(1B)の繊維重量含有率(Wf)の範囲が0%から80%であることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
(9)(1)から(3)のいずれかに記載の前記複合積層板(1C)の周縁部の少なくとも一部に接合部となるスロープ形状を設けた後に、前記周縁部の少なくとも一部を覆うように熱可塑性樹脂(1D)を射出成形して一体化することを特徴とする一体成形品の製造方法。
(10)(1)から(9)のいずれかに記載の前記複合積層板(1C)の層間に、コア層(11E)として樹脂フィルム、シート、発泡体から選択される1種以上を積層することを特徴とする一体成形品の製造方法。
(11)電気・電子機器筐体、家電機器筐体のいずれかの用途に用いること特徴とする(9)または(10)に記載の一体成形品の製造方法。
(12)導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材(2a)と第1の基材と異なる第2の基材(2b)とを突き合わせ接合した複合基材を、少なくとも複数積層した基材積層体の層間の少なくとも一部に、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート(2c)を挟入した成形前積層体に、加熱溶融プレスによりマトリックス樹脂を含浸させ、該マトリックス樹脂を冷却して一体化成形した複合積層板(1C)。
(13)前記成形前積層体の一部を折り曲げて立ち壁の一部とする(12)に記載の複合積層板(1C)。
(14)(12)または(13)のいずれかに記載の前記複合積層板(1C)の周縁部の少なくとも一部にスロープ形状を有する接合部を設けるとともに、前記周縁部の少なくとも一部を覆うように熱可塑性樹脂(1D)を射出成形して一体化することを特徴とする一体成形品。
(15)別成形した小部品(14F)の絶縁材料を、熱可塑性樹脂(1D)とともに一体成形されたことを特徴とする(14)に記載の一体成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合積層板および一体成形品の製造方法は、電磁波遮蔽性を維持したまま無線通信性能を劣化させず、効果的に反りや変形を防止し、意匠性に優れながら量産性を確保し従来技術以上に短時間で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明における複合積層板の製造方法を用いた一体成形品の一例を示す斜視図とその接合部の部分断面図および(b)部分断面の一部の拡大図である。
【図2】本発明における複合積層板の製造方法の一形態を説明する工程図であり、それぞれ(a)積層工程、(b)プレス成形工程、(c)得られた複合積層板の模式断面図、である。
【図3】(a)導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材(3a)と第1の基材と異なる第2の基材(3b)の境界部分における積層方法を示した模式断面図、および(b)同一平面内に突合せた状態を示す正面図である。
【図4】(a)導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材(4a)と第1の基材と異なる第2の基材(4b)の境界部分における積層方法を示した図、および(b)一部(4L)を重ね合わせた正面図である。
【図5】(a)プレス成形した際の温度履歴を、縦軸に温度、横軸に時間を取って各工程を示した図および(b)温度履歴の測定方法を示す模式図である。
【図6】(a)電磁波遮蔽領域となる成形材(6A)により電波透過領域となる成形材(6B)の周囲を囲うように積層した場合におけるゆがみの生じた複合積層板の斜視図、(b)その一部を切断することにより内部ひずみが開放された複合積層板の模式図である。
【図7】アウトサート射出成形するにあたり、複合積層板の外周端部にアウトサート樹脂との接合部形状を設けるようにスロープ加工の一形態を示した図である。
【図8】(a)本発明における複合積層板を有する成形品の複合積層板と小部品の外周の少なくとも一部を囲うように、複合積層板(8C)と小部品(8F)の絶縁材料を同時に金型内にインサートして、これらの外周の少なくとも一部を囲うように、熱可塑性樹脂(8D)を用いアウトサート成形をする一例を説明するための工程を模式的に表した断面図および(b)この工程で得られた成形品の一部断面斜視図である。
【図9】電界シールド性(KEC法)の測定方法を説明するための概略図である。
【図10】(a)得られた複合積層板の斜視図、(b)接合部の段差の測定方法を説明するための概略図と(c)測定した粗さ曲線図の一例である。
【図11】(a)本発明の別の態様に係る複合積層板の一部をカットした斜視図、(b)複合積層板(11C)の積層構成において、コア層(11E)として樹脂フィルムを選択した場合の積層例を示した拡大断面図である。
【図12】(a)筐体形状の立ち壁の一部を同時に一体化成形した複合積層板の外周の少なくとも一部を囲うように、熱可塑性樹脂(12D)を用いアウトサート成形をする一例を説明するための工程を模式的に表した断面図、(b)この工程で得られた成形品の斜視図および(c)この工程で得られた成形品の一部断面斜視図である。
【図13】(a)筐体形状の立ち壁の一部を同時に一体化成形した複合積層板の外周の少なくとも一部を囲うように、熱可塑性樹脂(13D)を用いアウトサート成形した成形品の斜視図および(b)成形品の一部をカットした斜視図である。
【図14】複合積層板と別成形しておいた小部品(14F)の絶縁材料を同時に金型内にインサートして、これらの外周の少なくとも一部を囲うように、熱可塑性樹脂(14D)を用い射出成形して得られることを特徴とする複合積層板を有する一体成形品の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な態様を、図面を用いて説明する。なお、本発明は図面に記載された構成に限定されるものではない。
【0014】
図1や図2に示すように、本発明に用いられる複合積層板1Cは、少なくとも、導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2a、第1の基材と異なる第2の基材2b、および熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cから構成される。以下に、本発明の製造方法について、これらの構成要素と、好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の製造方法に係る、構成要素を詳細に説明する。
【0016】
導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2aは、例えば分散媒体に強化繊維束を投入し、強化繊維を分散媒体中に分散させた後、分散媒体を除去して強化繊維をシート状に引き揃える工程により得られる。導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2aと後述する熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cを含浸した複合積層板は、繊維補強効果により寸法安定性と剛性に優れているばかりか、導電性繊維を用いていることにより、電磁波遮蔽材として機能し、導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2aと後述する熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cで形成される領域は、高い電波遮断性能を有する電磁波遮蔽領域となる。
【0017】
本発明に係るシート状抄紙の目付けは特に制限されるものではないが、好ましくは30〜300g/mのシート抄紙であり、この目付け時の厚みは15〜170μmとなる。より好ましくは75〜200g/m、厚みは40〜120μm、さらに好ましくは100〜150g/m、厚みは55〜90μmとした抄紙である。抄紙の目付けが小さすぎると、狙いの繊維重量含有量(Wf)にするために、細かい調整はできるが、積層に多くの抄紙枚数を必要とすることになり成形時の取り扱い性が低下する。また、反対に抄紙の目付けが大きいと、狙いの繊維重量含有量(Wf)にするために、少ない積層枚数で成形可能になるが、抄紙が厚いため成形の際に溶融した樹脂が含浸し難くなる。これをふまえ、成形時の取り扱い性のバランスから、目付けは100〜150g/mとすることが例示できる。
【0018】
第1の基材と異なる第2の基材2bは、絶縁性繊維を用いているか、または樹脂のみを用いることにより、電波透過材として機能し、第1の基材と異なる第2の基材2bと後述する熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cで形成される領域は低い電波遮断性能を有するので、電波透過領域となる。
【0019】
導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2aで強化繊維として用いる導電性繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維や、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維(黒鉛繊維を含む)が例示できる。これらの繊維には、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などの表面処理が施されていても良い。また、これらの導電性繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの導電性繊維の中でも、筺体の軽量性や剛性を効率的に高めることができる炭素繊維を用いるのが好ましい。
【0020】
第1の基材と異なる第2の基材2bで強化繊維として用いる絶縁性繊維としては、例えば、ガラス繊維や、アラミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレンなどの有機繊維や、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機繊維が例示できる。これらの繊維には、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などの表面処理が施されていても良い。また、これらの絶縁性繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの導電性繊維の中でも、特に電波透過性、比剛性、コストの観点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
【0021】
導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2aと第1の基材と異なる第2の基材2bに含浸させマトリックス樹脂として用いる熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cである前記熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。熱可塑性樹脂成分としては、耐熱性、耐薬品性の観点からPPSが、成形品外観、寸法安定性の観点からポリカーボネートやスチレン系樹脂が、成形品の強度や耐衝撃性の観点からポリアミドが好ましく用いられる。マトリックスには、用途等に応じ、熱可塑性樹脂に加えて、耐衝撃性向上のために、ゴム成分などの他のエラストマーを含有しても良いし、種々の機能を与えるために、他の充填材や添加剤を含有してもよい。かかる充填材や添加剤としては、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0022】
また、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cは、厚みは特に制限されるものではないが、好ましくは30〜1000μmのシート厚みであり、より好ましくは50〜600μm、さらに好ましくは100〜300μmとしたマトリックス樹脂シートである。
【0023】
樹脂シートについても抄紙と同様の理由により、好ましい厚みが決定される。厚みが薄すぎると、狙いの繊維重量含有量(Wf)にするために、細かい調整や含浸性が向上するが、積層に多くのマトリックス樹脂シート枚数を必要とすることになり成形時の取り扱い性が低下する。また、反対に厚みが厚いと、狙いの繊維重量含有量(Wf)にするために、少ない積層枚数で成形可能になるが、抄紙に完全に含浸しなかった樹脂リッチ層ができした樹脂が含浸し難くなる。これをふまえ、成形時の取り扱い性のバランスから、目付けは100〜150g/mとすることが例示できる。
【0024】
本発明の複合積層板に用いられる好ましい製造方法は、導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2aと、第1の基材と異なる第2の基材2bとを突き合わせ接合した複合基材を、少なくとも複数積層した基材積層体の層間の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cを積層した成形前積層体を形成し、一対の成形型内に成形前積層体を配置し、成形型をプレス機によって加熱溶融させながら圧力を加えることにより、シート状だったマトリックス樹脂を成形前積層体内に含浸させた後、成形型内で冷却して賦形することにより一体化成形することにより複合積層板2Cを得る方法である。
【0025】
図1に本発明により得られる複合積層板の製造方法の一例を示す。本発明により得られる複合積層板2Cは、導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材2aに熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cが含浸した電磁波遮蔽領域となる成形材1Aと、第1の基材と異なる第2の基材2bに熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cが含浸した電波透過領域となる成形材1Bで構成され、電磁波遮蔽領域となる成形材1Aと電波透過領域となる成形材1Bの間には接合部1ABが形成されている。
【0026】
第1の強化基材2aと第1の基材と異なる第2の基材2bとを突き合わせ接合した複合基材は、基材同士を面内方向に突合せ接合するだけでも十分な強度は得られる。複合基材の積層方法は、図2のように、突き合わせ接合した箇所を厚さ方向に揃えてもよいし、さらに表面外観における平滑性を高めるために、より好ましい形態としては、図4に示すように、接合部1ABが互い違いに重ね合わさるようにするとよい。互い違いに重ね合わさることより、成形後の接合部に形成される溝深さが浅くなり表面状態がより平滑に保つことができる。
【0027】
図4に示すように、重ね合わさる領域長をオーバーラップ長4Lとしたとき、オーバーラップ長の上限には特に制限はないが、オーバーラップ長4Lは製造する成形品の大きさに合わせて変更することが好ましい。オーバーラップさせる方向の成形品長さに対して1%から10%の長さであることが好ましく、より好ましくは1%から5%である。1%未満であると、大型基材では問題にならないことも考えられるが、本発明のようなノートパソコン程度の筐体サイズである場合では、重ね合わせる際にオーバーラップ長が短すぎて、重ね合わせることが困難となる。また10%を超える場合については、筐体サイズで考えた場合、筐体天面内で広範囲にわたって、オーバーラップ領域が作製されるため外観が低下する恐れがある。オーバーラップがあることにより、溝深さが浅くなり表面状態がより平滑に保たれる傾向にあり、より強固な接合部を形成することができる。また、表面の平滑性、接合強度、生産性のバランスから10%以下とすることが例示できる。
【0028】
また、第2の基材3bの配置方法は特に制限はないが、図3または図4に示すように、第1の強化基材3aが第1の基材と異なる第2の基材3bの外周の少なくとも一部を覆うように配置されている状態が好ましい。例えば、第1の基材と異なる第2の基材3bが樹脂のみの場合や、第1の基材と異なる第2の基材3bの強化繊維が第1の強化基材3aに比較して大きい繊維径の繊維を選択した場合、もしくは繊維重量含有率(Wf)が低い場合には、成形圧力により第1の基材と異なる第2の基材3bが流れて形状を大きく崩れるおそれがあり、これを防止するためである。
【0029】
このような基材積層体は、上記の積層方法に限定されるものではなく、必要に応じて、複合基材以外の他の基材を本発明の目的を損なわない範囲で積層してもよいし、同様に電波透過領域となる成形材1Bの位置や領域サイズについても限定されるものではなく、必要に応じて位置を変更したり、二箇所以上に分割したり、そのサイズを変更しても良い。また、電波透過領域となる成形材1Bの無い(電磁波遮蔽領域となる成形材1Aのみ)層を設けてもよい。
【0030】
また、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート3cを厚み方向に積層する方法は、前記のように少なくとも厚み方向の表層に、第1の強化基材3a、第1の基材と異なる第2の基材3b、または複合基材からなる基材積層体を挟み込むように積層することであるが、より好ましくは、第1の強化基材3a、第1の基材と異なる第2の基材3b、複合基材の任意の層間にも熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート3cを挟入して積層し、成形前積層体とすることである。厚み方向にむらのない、同等の体積含有率を目標に成形するのであれば、マトリックス樹脂を含浸させる位置を、基材成形体の厚み方向に数箇所に分割して、第1の強化基材3a、第1の基材と異なる第2の基材3b、または複合基材の層間に熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート3cを配置した方が、流動抵抗の高い厚み方向への含浸距離が短くなるため、各基材へ溶融したマトリックス樹脂をより含浸させやすくするために有効である。さらに好ましくは、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート3cを基材積層体の層間に、厚み方向にほぼ等間隔に配置すると、複合成形板2C全体として均一な体積含有率となるように成形することができる。
【0031】
その他、積層方法の応用例を例示すると、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート3cとして流動性の異なる樹脂を複数用意し、表層に流動性の良い樹脂を用いることにより、箱型筐体の立ち壁形状までも一度に成形することも可能となる。また、加飾フィルムなどを最表層に用いることで、良外観の複合積層板も成形可能となる。このように複合積層板は積層方法を変更することで、あらゆる応用が可能である。
【0032】
次に前記のようにして得た成形前積層体を、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cの融点以上の温度で加熱プレス成形し、その後、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cの熱可塑性樹脂の溶融温度よりも低い温度で圧力を固化温度以下になるまで保持し、冷却プレス成形して複合積層板2Cを成形する。
【0033】
ここでプレス成形とは、加工機械および型、工具等を用いて金属、プラスチック材料、セラミックス材料などに例示される各種材料に、曲げ、剪断、圧縮等の変形を与えて成形体を得る方法である。本発明では、得られる製品の意匠性の観点から、予め成形前積層体を熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cの熱可塑性樹脂の溶融温度よりも高い温度に加熱し熱可塑性樹脂を溶融、軟化させた状態にした後に、熱可塑性樹脂の溶融温度未満の温度でプレス成形する、いわゆるコールドプレス法を選択するものである。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cの熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合、融点をTmとしたとき、Tm以上、好ましくは、Tm+5℃〜Tm+65℃の範囲に成形前積層体を加熱する。ここで結晶性樹脂とは、示査走査熱量計(DSC)により測定した結晶化ピークが実質的に存在するものをいう。結晶化ピークが複数存在する場合は最も高いものがTmとして選択される。熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cの熱可塑性樹脂が非結晶性樹脂の場合、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cの融点をTとしたとき、T+120℃〜T+170℃、好ましくはT+120℃〜T+150℃の範囲に成形前積層体を加熱する。ここで非結晶性樹脂とは、示査走査熱量計(DSC)により測定した結晶化ピークが実質的に存在しないものをいう。ガラス転移点が複数存在する場合は最も高いものがTとして選択される。
【0034】
成形型の下面となる下型の上に成形前積層体を配置し、加熱して熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cの熱可塑性樹脂を溶融、含浸させ、熱可塑性樹脂が溶融、軟化している状態で、次いで上型を閉じて型締を行い、その後加圧して、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cに含まれる熱可塑性樹脂の固化温度以下になるまで冷却する。これにより、表面粗さが均一な意匠面の複合積層板を製造できる。
【0035】
前記の方法で作製した複合積層板は、収縮率の差や板の剛性の違いから図6に示すようなゆがみを生じる場合がある。この場合には、複合積層板中の第1の基材と異なる電波透過領域となる成形材6Bが一部残るように切断することにより、電波透過領域となる成形材6Bの収縮率の違いによって複合積層板に生じたゆがみ変形を解放することが可能である。
【0036】
ただし、各々の繊維と樹脂の組み合わせにおいて、ゆがみを生じさせない繊維重量含有率(Wf)値が存在する。適正なWfを選択して成形し、ゆがみを生じない場合にはこの限りではない。この時、繊維重量含有率(Wf)の計算は、w:繊維重量、wre:樹脂重量を用いて次式により決定される。
Wf=w/(wre+w)×100(%)
【0037】
前記のようにして得られた複合積層板1Cをそのまま電子機器筺体として用いてもよいが、成形した複合積層板を射出成形型にインサートした上で型締めを行い、複合積層板外周の少なくとも一部を覆うように熱可塑性樹脂1Dをアウトサート射出成形し一体化することにより、例えば筐体形状のボスやリブなど詳細形状の部位を付与することができる。
【0038】
また、接合強度を効果的に向上するため、アウトサート射出成形前に複合積層板の外周端部に接合部形状を設けるように加工しておくことが好ましい。好ましいスロープ形状を図7に示す。
【0039】
図7は、複合積層板のスロープ加工実施例の縦断面斜視図である。
【0040】
図7に示す射出成形品IMA7は、一方の熱可塑性樹脂部材7A(本発明の1Aに相当)と他方の熱可塑性樹脂部材7B(本発明の1Bに相当)からなる。
【0041】
射出成形品IMA7は、熱可塑性樹脂部材7Bの長手方向の一方側の側端面SEAに対し、熱可塑性樹脂部材7Aを形成する樹脂が射出成形されることにより、熱可塑性樹脂部材7Aに熱可塑性樹脂部材7Bが接合され、双方の部材が一体化した射出成形品である。側端面SEBと熱可塑性樹脂部材7Aの長手方向の一方側の側端面SEAとは、互いに接合され、接合面JABが形成されている。
【0042】
射出成形品IMA7の縦断面LCS7と接合面JABとの交わりにより描かれる接合線JL7は、射出成形品の表面FS7から内側に延び内側に終端を有する第1の接合線分7a、射出成形品の裏面BS7から内側に延び内側に終端を有する第2の接合線分7b、および、第1の接合線分7aの前記終端と第2の接合線分7bの前記終端とを結ぶ第3の接合線分7abから形成されている。射出成形品において、第3の接合線分7abは、表面FS7の法線の方向、あるいは、裏面BS7の法線の方向に対し傾斜している。
【0043】
射出成形品IMA7において、第1の接合線分7aの方向は、表面FS7の法線に対し傾斜し、また、第2の接合線分7bの方向は、裏面BS7の法線に対し傾斜している。
【0044】
第1の接合線分7a、第2の接合線分7b、および、第3の接合線分7abは、直線であることが好ましいが、成形性を考慮して必要に応じて、射出成形品の厚み方向、すなわち、法線方向に、緩やかに曲折していても良い。また、第3の接合線分7abは、法線に対する角度が異なる複数のサブ線分の組み合わせから形成されていても良い。この場合の接合線分7abの法線に対する角度は、各サブ線分の法線に対する角度の平均値とする。
【0045】
射出成形品IMA7において、表面FS7の法線の方向と裏面BS7の法線の方向とは、一致していても、異なっていても良い。射出成形品において、第1の接合線分7aの方向は、表面FS7の法線に実質的に平行であり、第2の接合線分7bの方向は、裏面BS7の法線に対し傾斜していても良い、あるいは、第1の接合線分7aの方向は、表面FS7の法線に対し傾斜し、第2の接合線分7bの方向は、裏面BS7の法線に実質的に平行であっても良い。
【0046】
第1の接合線分7aの方向が、表面FS7の法線に実質的に平行であり、第2の接合線分7bの方向が、裏面BS7の法線に対し傾斜している場合、第2の接合線分7bの傾斜角度は、第3の接合線分7abの傾斜角度と異なるように選定される。これにより、接合面JABに、法線に対する角度が異なる3種類の接合面が形成される。すなわち、接合面JABは、角度の異なる2種類のスロープ面と直立面で形成される。
【0047】
第2の接合線分7bの方向が、裏面BS7の法線に実質的に平行であり、第1の接合線分7aの方向が、表面FS7の法線に対し傾斜している場合、第1の接合線分7aの傾斜角度は、第3の接合線分7abの傾斜角度と異なるように選定される。これにより、接合面JABに、法線に対する角度が異なる3種類の接合面が形成される。すなわち、接合面JABは、角度の異なる2種類のスロープ面と直立面で形成される。
【0048】
第1の接合線分7aの方向が、表面FS7の法線に対し傾斜し、第2の接合線分7bの方向が、裏面BS7の法線に対し傾斜し、かつ、これらの傾斜角度が異なっている場合、これらの傾斜角度は、第3の接合線分7abの傾斜角度とも異なるように選定される。これにより、接合面JABに、法線に対する角度が異なる3種類の接合面が形成される。すなわち、接合面JABは、角度の異なる3種類のスロープ面で形成される。
【0049】
第1の接合線分7aの方向が、表面FS7の法線に対し傾斜し、第2の接合線分7bの方向が、裏面BS7の法線に対し傾斜し、かつ、これらの傾斜角度が同じ場合、これらの傾斜角度は、第3の接合線分7abの傾斜角度とも異なるように選定される。これにより、接合面JABに、法線に対する角度が異なる2種類の接合面が形成される。すなわち、接合面JABは、同じ角度を有する2つのスロープ面とこれらとは角度の異なる1つのスロープ面で形成される。
【0050】
接合面JABが表面FS7あるいは裏面BS7と交わって形成される幅方向接合線WJL7は、射出成形品IMA7においては、直線で描かれている。しかしながら、幅方向接合線WJL7は、曲線を描いていても良い。
【0051】
本射出成形品において、一方の熱可塑性樹脂部材7Aと他方の熱可塑性樹脂部材7Bとは、法線方向において、互いに重なり合わない領域を有していることが好ましい。図7に、互いに重なり合わない領域7A1および7B1が示される。互いに重なり合わない領域が存在することにより、それぞれの樹脂部材の特性が、それぞれの互いに重なり合わない領域において、最大限に発現される。これにより、射出成形品の更なる薄肉化が可能となる。互いに重なり合わない領域が存在しない、すなわち、一方の熱可塑性樹脂部材7Aおよび他方の熱可塑性樹脂部材7Bのいずれかが射出成形品の表裏いずれかに偏って存在する場合、一方の熱可塑性樹脂部材7Aと他方の熱可塑性樹脂部材7Bとの成形収縮差により、射出成形品の反りが増大する場合がある。
【0052】
本射出成形品において、第3の接合線分の法線に直角方向に対する鋭角をなす側の角度(スロープ角度)が最大となる縦断面における射出成形品の厚み7t0が、0.5乃至3.0mmであることが好ましい。
【0053】
本射出成形品において、スロープ角度が最大となる縦断面において、第1の接合線分が位置する接合面における射出成形品の厚みを7t1、第3の接合線分が位置する接合面における射出成形品の厚みを7t2、第2の接合線分が位置する接合面における射出成形品の厚みを7t3、第3の接合線分を法線方向に投影したときの長さをL7としたとき、次に示す式(1)乃至(4)を同時に満たすことが好ましい。
0.7>7t1/7t0>0.1 ・・・(1)
0.8>7t2/7t0≧0 ・・・(2)
0.7>7t3/7t0>0.1 ・・・(3)
1.0>7t2/L7≧0 ・・・(4)
【0054】
なお、7t2の値は、(7t0−7t1−7t3)の値に等しい関係にある。
【0055】
(7t1/7t0)および(7t3/7t0)の各値が0.7を上回ると、第1の接合線分および第2の接合線分の長さが長くなりすぎ、熱可塑性樹脂部材を形成する樹脂を射出成形したときに、射出圧力に基づく応力集中が発生しやすく、接合強度が低下することがある。
【0056】
(7t1/7t0)および(7t3/7t0)の各値が0.1を下回るか、(7t2/7t0)の値が0.8を上回ると、両部材の接合面と金型面の交点がシャープエッジとなり、射出圧力がエッジの先端に集中するため、射出成形中にバリが発生しやすくなる。
【0057】
(7t2/7t0)の値が0.1を下回ると、第3の接合線分の傾斜が実質的に無くなり、接合面の面積を大きくすることができないため、接合強度が低下することがある。
【0058】
0.8>7t2/7t0>0.1の関係が満足されていることが、より好ましい。また、1.0>7t2/L7≧0の関係が満足されることにより、樹脂不足(ドロップ)の低減と接合強度の維持が図られる。
【0059】
第1の接合線分と第3の接合線分との境界部や第2の接合線分と第3の接合線分との境界部には、これらの境界部により形成されるシャープエッジを避けるためや、接合部の強度補強のために、適宜曲面部が設けられていると良い。曲面部の半径Rは、0.1乃至1.5mmであることが好ましい。
【0060】
接合面には、リブや突起などの凸部、あるいは、孔や溝などの凹部が、必要に応じて、射出成形性を損なわない範囲で、設けられていても良い。
【0061】
本射出成形品において、一方の熱可塑性樹脂部材7Aの他方の熱可塑性樹脂部材7B側に接合面を介して突出している部分を含む表面あるいは裏面が、意匠面であることが好ましい。あらかじめ金型に配置される熱可塑性樹脂部材の第3の接合線分からなるスロープが意匠面側に張り出しており、後から射出成形される熱可塑性樹脂部材が意匠面とは反対側の面に配置されるようにすると、後から射出される樹脂の射出圧力によって、あらかじめ金型に配置されている熱可塑性樹脂部材が、金型の意匠面形成面に押し付けられながら後から射出される樹脂と一体成形されるので、意匠面側の各部材の面位置が揃い、意匠面に現れる各部材間の幅方向接合線およびその近傍部分がより平滑になる。
【0062】
本射出成形品において、第1の接合線分7aと熱可塑性樹脂部材7Aの表面FS7の法線がなす角度をR1、第2の接合線分7bと熱可塑性樹脂部材7Bの裏面BS7の法線がなす角度をR2としたときに、10°<R1≦90°、および、10°<R2≦90°の関係が同時に満足されていることが好ましい。20°<R1<40°、および、20°<R2<40°の関係が同時に満足されていることがより好ましい。
【0063】
角度R1および角度R2が90°を越えると表面あるいは裏面における幅方向接合線およびその近傍に、バリが発生する。角度R1および角度R2が10°以下では、樹脂の流動が阻害されるためにショートショットが発生して、表面あるいは裏面の平滑性が損なわれ、強度が低下することがある。
【0064】
アウトサート射出成形する熱可塑性樹脂1Dには、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cと同様の熱可塑性樹脂を含んでいることが好ましい。好ましい形態として同様の熱可塑性樹脂は、3乃至100%含まれていることである。熱可塑性樹脂1Dは、さらに好ましくは熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cと同様のものとすることである。熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cと同様にすることにより、電磁波遮蔽領域となる成形材1A、電波透過領域となる成形材1Bと熱可塑性樹脂1Dの接合強度を良好なものとすることができるためである。強化物については特に制限はなく、熱可塑性樹脂のみでも強化繊維樹脂を用いることもできる。熱可塑性樹脂1Dに使用する強化繊維は、前記の導電性繊維であっても、絶縁性繊維でも良い。繊維含有量は5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%である。一般的に強化繊維が5重量%未満では、成形品の力学特性の向上効果が少なく、70重量%を超えると射出成形などの成形加工の際に流動性が低下する場合がある。
【0065】
本発明のアウトサート射出成形は具体的には、図8に示すように、前記の製造方法で成形した部分的に電波透過領域を有した繊維強化プラスチック製複合積層板を、射出成形金型キャビティ側に配置した上で型締めを行い、熱可塑性樹脂8Dを射出成形機からスクリューで射出して、スプルーおよびランナーを経由して、複合積層板の外周上に射出成形して、複合積層板と、熱可塑性樹脂8Dで成形した部位を一体化させて一体成形品とする。
【0066】
また、本発明の立ち壁とは、図1の筐体形状成形品中の筐体天面となる複合積層板との角度が90度となるように形成された外枠部分である。本発明では、熱可塑性樹脂1Dで複合積層板外縁にアウトサート成形することにより形成することと複合積層板をプレス成形する際に同時に成形することを例示した。
【0067】
立ち壁の厚みは、0.5〜3.0mmであることが好ましい。より好ましくは1〜2mmである。厚みが薄すぎると強度が不足したり、射出成形の際に最薄部に樹脂が到達しなかったりすることによりショートショットやガス溜り等の成形不良の原因となる。成形品の大きさや、成形性強度の面から厚みは適宜変更しても良い。
【0068】
また、立ち壁の厚みは、筐体天面を形成する複合積層板と同程度の厚みであることが望ましい。厚みは一方の天面側端部と他方の端部で異なる厚みであっても良い。立ち壁の長さは、5〜10mmであることが好ましい。また各々の四辺が異なる長さであっても良い。
【0069】
前記のようにして成形した本発明の複合積層板の電磁波遮蔽性は、電磁波遮蔽領域となる成形材1Aは良好な電磁波遮蔽性能を有し、具体的には、KEC法により測定される電界シールド性が周波数1GHz帯において10〜80dBとなる。また、電波透過領域となる成形材1Bは良好な電波透過性能を有し、具体的には、KEC法により測定される電界シールド性が周波数1GHz帯において0〜10dBとなる。複合積層板を有する一体成形品において、電磁波遮蔽領域の電界シールド性や電波透過領域それぞれの部位における電界シールド性は、各部位を形成する電磁波遮蔽領域となる成形材1Aや電波透過領域となる成形材1Bを単一で使用した参照成形体により測定する。具体的には複合積層板を有する一体成形品を製造する場合と同一の積層枚数を積層して単一の成形材料基材を用いた成形前駆体を形成し、複合積層板を有する一体成形品を製造する場合と同一の成形プロセス条件で成形し、成形品厚みを同一相当とした参照成形体について電界シールド性を測定する。ここでいう厚みの同一相当とは、目標厚み±0.05mmである。材料厚みがこの範囲であれば電磁波遮蔽性に明確な優位差が見られないことが多い。図9に電界シールド性の測定装置示した。
【0070】
電磁波遮蔽領域となる成形材1Aにおける導電性繊維の繊維重量含有量(Wf)の好ましい形態は、その重量当たり、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは15〜60質量%の割合で含有されていることである。5重量%を下回ると得られる製品の剛性が不足し変形しやすくなることがあり、また80質量%を上回ると熱可塑性樹脂の流動性が著しく低下しプレス成形が困難となる場合がある。
【0071】
電波透過領域となる成形材1Bにおける絶縁性繊維の繊維重量含有量Wfの好ましい形態は、その重量当たり、好ましくは0〜80重量%、より好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%の割合で含有されていることである。
【0072】
さらに、電磁波遮蔽領域となる成形材1Aおよび電波透過領域となる成形材1Bに含有される強化繊維の重量平均繊維長は好ましくは1〜15mm、より好ましくは1.5〜10mm、さらに好ましくは2〜6.5mmであるようにする。強化繊維の重量平均繊維長が1mmを下回ると得られる製品の剛性が不足し変形しやすくなることがあり、強化繊維の重量平均繊維長が15mmを上回ると、プレス後の外観に繊維浮き等の不良が発生しやすくなる場合がある。
【0073】
本発明の複合積層板1Cは、電磁波遮蔽領域となる成形材1A、電波透過領域となる成形材1B、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート2cに加え、さらに図11に示すようにコア層11Eを有することもできる。本発明において、コア層とは、フィルム、シート、発泡体から選択される1種以上である。
【0074】
材料力学上、曲げ剛性は積層部材の表層側における剛性の影響が、コア層の剛性の影響に比べ極めて大きいため、表層は電磁波遮蔽領域となる成形材1A層および電波透過領域となる成形材1B層で、コア層11Eは発泡材や軽量樹脂シートなどのコア部材層で構成することにより、積層部材の軽量化を図りつつ、剛性も確保することができる。
【0075】
コア層となるフィルム、シート、発泡体は、表層側の成形材との接着力が確保されるのであれば特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または金属などを用いることができる。さらに、コア層に強化繊維を含んだフィルム、シートを用いてもよい。
【0076】
コア層を構成する熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。熱可塑性樹脂成分としては、耐熱性、耐薬品性の観点からPPSが、成形品外観、寸法安定性の観点からポリカーボネートやスチレン系樹脂が、成形品の強度や耐衝撃性の観点からポリアミドが好ましく用いられる。
【0077】
コア層を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂などを使用することができる。さらに耐衝撃性向上等のために、前記熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂またはその他のエラストマーもしくはゴム成分等を添加した樹脂を用いてもよい。コア層を構成する熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂には、用途等に応じ、樹脂に加えて、耐衝撃性向上のために、ゴム成分などの他のエラストマーを含有しても良いし、種々の機能を与えるために、他の充填材や添加剤を含有してもよい。かかる充填材や添加剤としては、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0078】
コア層を構成するマトリックスに含まれる強化繊維としては、例えばアルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系等の炭素繊維や黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維等が使用できる。これらの強化繊維は単独で用いても、また、2種以上併用しても良い。強化繊維は必ずしもコア層内全体にわたって連続している必要はなく、途中で分断されていても特に問題はない。
【0079】
または、本発明の製造方法で作製される成形品には、応用形態をとることが可能である。前記の応用形態を図12、図13および図14に示す。図12には加熱溶融プレス含浸した後、型内で冷却して賦形する際に筐体形状の立ち壁の一部を同時に一体化成形した複合積層板の外周の少なくとも一部を囲うように、(1D)熱可塑性樹脂を用い射出成形して得られることを特徴とする複合積層板1Cを有する一体成形品を、また、図14には一体化成形した複合積層板14Aと別成形しておいた小部品14Fの絶縁材料を同時に金型内にインサートして、これらの外周の少なくとも一部を囲うように、熱可塑性樹脂1Dを用い射出成形して得られることを特徴とする複合積層板1Cを有する一体成形品の形態を示した。
【0080】
前記の筐体形状の立ち壁の一部を同時に一体化成形した複合積層板は板の一部を折り曲げて成形する応用を加えることにより可能となる。折り曲げ加工をする際には、立ち壁を賦形する金型部に勾配を持たせることにより、立ち壁部に効果的に成形圧力を加えられる。
【0081】
前記の小部品14Fの絶縁材料の成形方法は、特に制限はなく、具体例としては、一般工業的に用いられている射出成形、プレス成形、引き抜き成形、RTM成形、オートクレーブ成形、ハンドレイアップ成形や旋盤加工、フライス盤加工等の機械加工成形などでもよい。これらの中でも生産性の観点から射出成形法が好適である。
【0082】
小部品14Fの絶縁材料は、特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または金属などを用いることができる。さらに、小部品14Fの絶縁材料に強化繊維を用いてもよい。
【0083】
小部品14Fの絶縁材料を構成する熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。熱可塑性樹脂成分としては、耐熱性、耐薬品性の観点からPPSが、成形品外観、寸法安定性の観点からポリカーボネートやスチレン系樹脂が、成形品の強度や耐衝撃性の観点からポリアミドが好ましく用いられる。
【0084】
小部品14Fの絶縁材料を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂などを使用することができる。さらに耐衝撃性向上等のために、前記熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂またはその他のエラストマーもしくはゴム成分等を添加した樹脂を用いてもよい。コア層を構成する熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂には、用途等に応じ、樹脂に加えて、耐衝撃性向上のために、ゴム成分などの他のエラストマーを含有しても良いし、種々の機能を与えるために、他の充填材や添加剤を含有してもよい。かかる充填材や添加剤としては、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0085】
小部品14Fの絶縁材料を構成するマトリックスに含まれる強化繊維としては、例えばポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維等が使用できる。これらの強化繊維は単独で用いても、また、2種以上併用しても良い。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を制限するものではない。
【0087】
[電界シールド性の測定方法(KEC法)]
図9は、電界シールド性の測定装置の概略縦断面図である。図9において、電界シールド性の測定装置9bは、金属管9fからなる測定筐体からなる。金属管9fの内部空間は、外界から遮蔽されている。金属管9fの内部空間には、信号発信用アンテナ9cと信号受信用アンテナ9eが設けられている。金属管9fは、両アンテナの間に、測定試料9aをその外側から挿入可能とされている。測定試料9aは、測定試料厚み9dを有する。
【0088】
金属管9fにより遮蔽された空間において信号発信用アンテナ9cと信号受信用アンテナ9eの間に、測定試料9aを挿入し、試料の有無による電界の強度を測定する。
測定装置9bにより、測定試料9aの有無による電界の強度が測定される。測定試料が無い場合の空間の電界強度をE[V/m]とし、測定試料が有る場合の空間の電界強度をE[V/m]として、遮蔽効果を次の式で求める。測定された値の符号は、正方向がシールド効果を有する方向である。
電界シールド性(シールド効果)=−20log10/E[dB]
【0089】
[繊維強化プラスチック成形体における接合部の段差]
複数の成形材料基材が接合されてなる繊維強化プラスチック成形体の接合部において、表面粗さ測定器を用いて、接合部を横切るように表面粗さ計測定ヘッド10aを走査し、成形体表面の粗さを測定(測定方法はJISB0633(2001)に準拠)して、図10に例示されるような方法により、Y方向変位(単位:μm)−測定ストローク(単位:mm)の粗さ曲線10eを得る。測定条件として、測定ストロークは20mm、測定速度0.3mm/s、カットオフ値0.3mm、フィルタ種別はガウシアン、傾斜補正無し、が選択される。接合部は測定ストロークの中間点である10mmの部分にセットする。ここで、接合部の段差10fとは、得られた粗さ曲線における最大の山頂のY方向変位と最小の谷底のY方向変位との差をいう。なお本実施例では、表面粗さ測定器として、(株)東京精密製サーフコム480Aを用い、接合部を垂直に横切るように表面粗さ計測定ヘッド10aを走査した。
【0090】
(参考例1)
東レ(株)製“トレカ(登録商標)”T700S−24Kの炭素繊維連続束を、カートリッジカッターでカットし、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。これに界面活性剤を添加し撹拌した後、抄紙機に流し込み、吸引により脱水し、その後乾燥し炭素繊維からなる不織材料を得た。次にこの不織材料を製品外寸サイズにカットした後、不織材料3枚、ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”(登録商標)CM1001(融点:225℃、ガラス転移温度47℃、結晶性樹脂)製の樹脂フィルム4層をサンドイッチ状に挟み込み、温度260℃、圧力5MPaでプレスした後、冷却することで厚み1.0mmの電磁波遮蔽領域となる成形材1Aを得た。電磁波遮蔽領域となる成形材1Aにおける炭素繊維の含有率は35重量%であった。得られた参照成形体はKEC法における電界シールド性が1GHz帯において35dBであった。
【0091】
(参考例2)
炭素繊維連続束を、日東紡製ガラスチョップドストランドCS13C―897に変えた以外は、参考例1と同様の方法で製造することで厚み1.0mmの電波透過領域となる成形材1Bを得た。得られた参照成形体は、KEC法における電界シールド性が1GHz帯において2dBであった。
【0092】
(参考例3)
炭素繊維からなる不織材料とガラス繊維からなる不織材料を隣り合うように、同様の重量繊維含有率Wfになるように積層し、樹脂フィルム4層をサンドイッチ状に挟み込み、温度260℃、圧力5MPaでプレスした後、冷却することで厚み1.0mmの電磁波遮蔽領域となる成形材1Aと電波透過領域となる成形材1Bからなる複合積層板1Cを得た。
【0093】
得られた複合積層板1Cの電磁波遮蔽領域となる成形材1Aと電波透過領域となる成形材1Bとの接合部の段差を表面粗さ測定器にて測定したところ、段差は10μmであった。
【0094】
(実施例1)
東レ(株)製“トレカ(登録商標)”T700S−24Kの炭素繊維連続束を、カートリッジカッターでカットし、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。これに界面活性剤を添加し撹拌した後、抄紙機に流し込み、吸引により脱水し、その後乾燥し炭素繊維からなる不織材料を得た。
【0095】
日東紡(株)製ガラスチョップドストランドCS13C―897に界面活性剤を添加し撹拌した後、抄紙機に流し込み、吸引により脱水し、その後乾燥しガラスチョップドストランドからなる不織材料を得た。
【0096】
次に、これらの不織材料を製品外寸サイズにカットした後、炭素繊維からなる不織材料とガラス繊維からなる不織材料を隣り合うように積層し、炭素繊維からなる不織材料が重量繊維含有率Wf25%、ガラス繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf30%になるように、ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”(登録商標)CM1001(融点:225℃、ガラス転移温度47℃、結晶性樹脂)製の樹脂フィルムをサンドイッチ状に挟み込み、成形前積層体を得た。
【0097】
加熱プレス(温度260℃、圧力5MPa)にて溶融含浸させた後、冷却プレス(温度100℃、圧力5MPa)することで厚み1.45mmの複合積層板1Cを得た。
【0098】
次に、得られた複合積層板をRoland社製NC加工機MDX−540にて筐体天面の形状に切削加工した。この際に複合積層板の外周端部にはアウトサート樹脂との接合スロープ形状を設けるように加工した。
【0099】
以上のようにして得た複合積層板を、射出成形金型キャビティ側に配置した上で型締めを行い、熱可塑性樹脂1Dを、複合積層板の外周上に射出成形して、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品とした。
【0100】
接合部曲げ強度は成形した一体成形品から、切り出して曲げ試験を行い、筐体稜線の反りは、定盤上に置いた成形品に定規を当てて測定した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0101】
(実施例2)
成形前積層体の炭素繊維からなる不織材料とガラス繊維からなる不織材料を、隣り合うように積層する際に、接合部が5mmオーバーラップするように積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0102】
(実施例3)
成形前積層体の炭素繊維からなる不織材料とガラス繊維からなる不織材料を、隣り合うように積層する際に、接合部が10mmオーバーラップするように積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0103】
(実施例4)
成形前積層体を得る際に、ガラス繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf50%になるように、積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0104】
(実施例5)
成形前積層体を得る際に、ガラス繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf80%になるように、積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0105】
(実施例6)
成形前積層体を得る際に、炭素繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf7%になるように、積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0106】
(実施例7)
成形前積層体を得る際に、炭素繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf60%になるように、積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0107】
(実施例8)
成形前積層体を得る際に、電波透過領域となる成形材1Bとなるガラス繊維からなる不織材料の代わりに樹脂フィルムを使用する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0108】
(実施例9)
成形前積層体を得る際に、中央にコア層となる樹脂フィルムN66シート(厚みt=0.5mm)を積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0109】
(比較例1)
東レ(株)製“トレカ(登録商標)”T700S−24Kの炭素繊維連続束を、カートリッジカッターでカットし、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。これに界面活性剤を添加し撹拌した後、抄紙機に流し込み、吸引により脱水し、その後乾燥し炭素繊維からなる不織材料を得た。次にこの不織材料を製品外寸サイズにカットした後、炭素繊維からなる不織材料が重量繊維含有率Wf25%になるように、ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”(登録商標)CM1001(融点:225℃、ガラス転移温度47℃、結晶性樹脂)製の樹脂フィルム4層をサンドイッチ状に挟み込み、温度260℃、圧力5MPaでプレスした後、冷却することで厚み1.45mmの電磁波遮蔽領域となる成形材1Aを得た。
【0110】
次に、得られた成形材を、射出成形金型キャビティ側に配置した上で型締めを行い、熱可塑性樹脂1Dを、複合積層板1Cの外周上に射出成形して、成形材1Aと熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品とした。
【0111】
また、日東紡(株)製ガラスチョップドストランドCS13C―897に界面活性剤を添加し撹拌した後、抄紙機に流し込み、吸引により脱水し、その後乾燥しガラスチョップドストランドからなる不織材料を得た。次にこの不織材料を製品外寸サイズにカットした後、炭素繊維からなる不織材料が重量繊維含有率Wf50%になるように、ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”(登録商標)CM1001(融点:225℃、ガラス転移温度47℃、結晶性樹脂)製の樹脂フィルム4層をサンドイッチ状に挟み込み、温度260℃、圧力5MPaでプレスした後、冷却することで厚み1.45mmの電波透過領域となる成形材1Bを得た。
【0112】
次に一体成形品の一部をNC加工機にて切り抜き、成形材1Bを一体成形品の切り抜き部にはめこむことで成形前前駆体を得た。
【0113】
その後、成形前駆体を、その表面温度が235℃になるまで遠赤外線ヒーターを具備したオーブン中で加熱する。下型として雄金型と、上型として雌金型を具備する成形型の表面温度を85℃に温調し、型開きし、加熱された成形前駆体をセットしてキャビティの厚みが1.45mmとなるまで型締めしてプレス成形を行い成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0114】
(比較例2)
成形前積層体を得る際に、ガラス繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf50%になるように積層し、含浸樹脂に液状の熱硬化性エポキシ樹脂を使用して、加熱プレス(温度160℃、圧力2MPa)にて熱硬化させること以外は実施例1と同様にして、厚み1.45mmの複合積層板1Cを得た。
【0115】
次に、得られた複合積層板をRoland社製NC加工機MDX−540にて筐体天面の形状に切削加工した。この際に複合積層板の外周端部にはアウトサート樹脂との接合スロープ形状を設けるように加工した。
【0116】
以上のようにして得た複合積層板を、射出成形金型キャビティ側に配置した上で型締めを行い、熱可塑性樹脂1Dを、複合積層板1Cの外周上に射出成形して、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品とした。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0117】
(比較例3)
成形前積層体を得る際に、炭素繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf90%になるように、積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0118】
(比較例4)
成形前積層体を得る際に、ガラス繊維からなる不織材料を重量繊維含有率Wf90%になるように、積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0119】
(比較例5)
成形前積層体を得る際に、樹脂フィルムをプライムポリマー(株)製プライムポリプロJ105G樹脂製の樹脂フィルムを積層する他は実施例1と同様にして、複合積層板1Cと、熱可塑性樹脂1Dで成形した部位を一体化させて一体成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0120】
以上の特性評価結果を、まとめて表1および表2に記載した。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明により、電波遮断性能と無線通信性能とを両立させ、かつ表面意匠性に優れた電子機器筺体を製造できるので、前記機能的な両立が必要な分野に制限無く利用可能であり、例えば自動車の内蔵部品を構成する一部品などにも利用できるが、とりわけノートパソコンや携帯電話などの小型電子機器向けの筐体を製造するにあたり好適に利用できる。また本発明の一体成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、または自動車の部品、内部部材および筐体などの各種部品・部材に極めて有用である。
【符号の説明】
【0124】
1A 電磁波遮蔽領域となる成形材
1B 電波透過領域となる成形材
1C 複合積層板
1D 熱可塑性樹脂
1AB 基材AとBの接合部
2a 導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材
2b 第1の基材と異なる第2の基材
2c 熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート
2d プレス定盤
2A 電磁波遮蔽領域となる成形材
2B 電波透過領域となる成形材
2C 複合積層板
3a 導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材
3b 第1の基材と異なる第2の基材
3c 熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート
4a 導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材
4b 第1の基材と異なる第2の基材
4c 熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート
4L オーバーラップ長
5a 加熱工程
5b 含浸工程
5c 冷却工程
5d 温度履歴カーブ
5e 温度データ収集装置
5f 強化基材複合材
5g プレス成形機
5t 時間軸
5t1 溶融温度
5t2 固化温度
5T 温度軸
6A 電磁波遮蔽領域となる成形材
6B 電波透過領域となる成形材
IMA7 射出成形品
7A 一方の熱可塑性樹脂部材
7B 他方の熱可塑性樹脂部材
7a 第1の接合線分
7b 第2の接合線分
7ab 第3の接合線分
L7 第3の接合線分を法線方向に投影したときの長さ
JL7 縦断面LCS7と接合面JABとの交わりにより描かれる接合線
WJL7 幅方向接合線
7A1 一方の熱可塑性樹脂部材7A側の7A7B両部材が互いに重なり合わない領域
7B1 他方の熱可塑性樹脂部材7B側の7A7B両部材が互いに重なり合わない領域
7t0 射出成形品の厚み
7t1 第1の接合線分が位置する接合面における射出成形品の厚み
7t2 第3の接合線分が位置する接合面における射出成形品の厚み
7t3 第2の接合線分が位置する接合面における射出成形品の厚み
R1 第1の接合線分7aと熱可塑性樹脂部材Aの表面FS7の法線がなす角度
R2 第2の接合線分7bと熱可塑性樹脂部材7Bの裏面BS7の法線がなす角度
SEA 一方側の側端面
SEB 他方側の側端面
JAB 接合面
LCS7 縦断面
FS7 射出成形品の表面
BS7 射出成形品の裏面
8A 電磁波遮蔽領域となる成形材
8B 電波透過領域となる成形材
8C 複合積層板
8D 熱可塑樹脂
8F 小部品
8a 射出成形機金型
8b 射出成形機ノズル
9a 測定試料
9b 電界シールド性の測定装置
9c 信号発信用アンテナ
9d 測定試料厚み
9e 信号受信用アンテナ
9f 金属管
10A 電磁波遮蔽領域となる成形材
10B 電波透過領域となる成形材
10a 表面粗さ計測定ヘッド
10b 測定開始点
10c 測定終了点
10d 走査方向
10e 粗さ曲線
10f 段差
10L 測定ストローク
10XL X方向ストローク軸
10YL Y方向変位軸
11A 電磁波遮蔽領域となる成形材
11B 電波透過領域となる成形材
11C 複合積層板
11D 熱可塑樹脂
11E コア層
11AB 基材AとBの接合部
12A 電磁波遮蔽領域となる成形材
12B 電波透過領域となる成形材
12D 熱可塑樹脂
12AB 基材AとBの接合部
13A 電磁波遮蔽領域となる成形材
13B 電波透過領域となる成形材
13D 熱可塑樹脂
13AB 基材AとBの接合部
14A 電磁波遮蔽領域となる成形材
14B 電波透過領域となる成形材
14D 熱可塑樹脂
14DB 基材DとBの接合部
14DF 基材DとFの接合部
14F 小部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材(2a)と第1の基材と異なる第2の基材(2b)とを突き合わせ接合した複合基材を、少なくとも複数積層した基材積層体の層間の少なくとも一部に、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート(2c)を挟入した成形前積層体を形成し、前記成形前積層体を内部に配置した成形型を加熱溶融プレスによりマトリックス樹脂を前記複合基材内に含浸させた後、前記成形型内で冷却することにより一体化成形した複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項2】
隣接する前記複合基材の境界部分の一部が重なり合うように積層することを特徴とした請求項1に記載の複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項3】
前記加熱溶融プレスにおいて、前記成形前積層体温度を融点以上の温度で加熱溶融プレスしたのち、固化温度以下になるまで冷却する間、圧力を保持することを特徴とした請求項1または2に記載の複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項4】
前記第1の強化基材(2a)にマトリックス樹脂が含浸した電磁波遮蔽領域となる成形材(1A)のKEC法により測定される電磁波遮蔽性が周波数1GHz帯において10〜80dBとなる材料を使用することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項5】
前記第2の基材(2b)にマトリックス樹脂が含浸した電波透過領域となる成形材(1B)のKEC法により測定される電磁波遮蔽性が周波数1GHz帯において0〜10dBとなる材料を使用することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項6】
前記電磁波遮蔽領域となる成形材(1A)の繊維重量含有率(Wf)が5%から80%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項7】
前記電波透過領域となる成形材(1B)は強化繊維を含むことができ、強化繊維が非導電繊維であるガラス繊維、アラミド繊維、化学繊維、強化フィラーから選択される少なくとも1種を含む、請求項1から6のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項8】
前記電波透過領域となる成形材(1B)の繊維重量含有率(Wf)の範囲が0%から80%であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の複合積層板(1C)の製造方法。
【請求項9】
請求項1から3のいずれかに記載の前記複合積層板(1C)の周縁部の少なくとも一部に接合部となるスロープ形状を設けた後に、前記周縁部の少なくとも一部を覆うように熱可塑性樹脂(1D)を射出成形して一体化することを特徴とする一体成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の前記複合積層板(1C)の層間に、コア層(11E)として樹脂フィルム、シート、発泡体から選択される1種以上を積層することを特徴とする一体成形品の製造方法。
【請求項11】
電気・電子機器筐体、家電機器筐体のいずれかの用途に用いること特徴とする請求項9または10に記載の一体成形品の製造方法。
【請求項12】
導電性の不連続強化繊維を有するシート状抄紙である第1の強化基材(2a)と第1の基材と異なる第2の基材(2b)とを突き合わせ接合した複合基材を、少なくとも複数積層した基材積層体の層間の少なくとも一部に、熱可塑性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂シート(2c)を挟入した成形前積層体に、加熱溶融プレスによりマトリックス樹脂を含浸させ、該マトリックス樹脂を冷却して一体化成形した複合積層板(1C)。
【請求項13】
前記成形前積層体の一部を折り曲げて立ち壁の一部とする請求項12に記載の複合積層板(1C)。
【請求項14】
請求項12または13のいずれかに記載の前記複合積層板(1C)の周縁部の少なくとも一部にスロープ形状を有する接合部を設けるとともに、前記周縁部の少なくとも一部を覆うように熱可塑性樹脂(1D)を射出成形して一体化することを特徴とする一体成形品。
【請求項15】
別成形した小部品(14F)の絶縁材料を、熱可塑性樹脂(1D)とともに一体成形されたことを特徴とする請求項14に記載の一体成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−75447(P2013−75447A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217022(P2011−217022)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】