説明

複合管及び複合管接続構造

【課題】簡易に接続でき、かつ、適切に情報を表示可能な複合管及び複合管接続構造を提供する。
【解決手段】複合管10は、外面に標線12(情報)が表示された樹脂製の内管12と、内管12の外周に形成され、接続対象である管継手20に接続可能な外径とされ、内管12に表示された情報を外部から視認可能とする被覆層14と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管と内管を保護する被覆管を備えた複合管、及び、この複合管を接続するための複合管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特に樹脂材により構成された樹脂管を保護するために、予め床下にさや管を敷設しておき、当該さや管に樹脂管を挿入して管を敷設することが行われている。しかしながら、さや管の敷設と樹脂管の敷設を別々に行わなければならず、手間がかかるという問題がある。そこで、特許文献1には、さや管の内面に内管の外面を挟持形態で支持する突条を形成し、さや管と内管とを同時に敷設可能な二重管が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3822693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の二重管は、内管の外側に折り返すようにさや管を捲って内管を露出させ、内管のみを管継手に接続しなければならない。したがって、接続時に手間がかかる。また、さや管を捲って外側へ折り返すため、二重管に情報を表示しにくい。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡易に接続でき、かつ、適切に情報を表示可能な複合管及び複合管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の複合管は、外面に情報が表示された内管と、前記内管の外周に形成され、接続対象である管継手に挿入可能な外径とされ、前記内管に表示された情報を外部から視認可能とする被覆層と、を備えている。
【0007】
本発明の複合管は、内管に情報が表示されているので、被覆層に表示されている場合と比較して、擦れ等により表示が消えたり、見えにくくなったりすることが抑制される。また、被覆層をそのまま接続対象である管継手に挿入して接続できるので、接続作業を簡単に行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の複合管は、前記被覆層と前記内管とが接触配置されていること、を特徴とする。
【0009】
被覆層と内管とを接触配置させることにより、被覆層と内管の間に別部材が配置されていたり、隙間が構成されていたりする場合と比較して、内管の外面に表示された情報を容易に視認することができる。
【0010】
請求項3に記載の複合管は、前記情報が、前記複合管を前記管継手に差し込む差込代を示す標線であること、を特徴とする。
【0011】
このように、差込代を示す標線を内管の外面に表示することにより、被覆層の伸びなどに影響されず、正確な差込代を表示することができる。
【0012】
請求項4に記載の複合管接続構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の複合管と、前記複合管を前記被覆層の外周側から保持する保持部を有し、前記複合管が接続される管継手と、を備えている。
【0013】
上記の複合管接続構造によれば、被覆層が管継手の保持部に保持されて管継手に接続されているので、接続作業を簡単に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の複合管接続構造は、前記保持部が、前記被覆層及び前記内管に食い込んで前記複合管を保持すること、を特徴とする。
【0015】
このように、保持部を内管にまで食い込ませて複合管を保持することにより、確実に複合管を保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る複合管及び複合管接続構造では、容易に接続でき、かつ、適切に情報を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る複合管の一部破断斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る複合管の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る管継手であって、管体を分離した状態を示す半裁断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る管継手であって、管体を途中まで挿入した状態を示す半裁断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る管継手であって、管体を結合した状態を示す半裁断面図である。
【図6】図5に示すロックリングの爪部が複合管に食い込んだ状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る複合管10は、内管12及び被覆層14を備えている。内管12は管状とされ、図1には内管12の筒軸が2点鎖線Sで示されている。内管12の外面には、ユーザーに差込代を示すための標線12Aが表示されている。標線12Aは、筒軸方向に等間隔、すなわち、差込代Lの間隔毎に表示されている。なお、内管12の外面には、情報の一例として、標線12Aの他にも、複合管10の製造者、製造ロット、品種などを表示してもよい。複合管10は、標線12Aの表示された部分で切断して使用される。これにより、複合管10の先端から1つめの標線12Aまでが、差込代として使用される。
【0020】
内管12としては、特に限定されず、ステンレス鋼管、銅管などの金属管でも、ポリブテン管、架橋ポリエチレン管などの樹脂管でも、樹脂管と金属管の複合管でも構成することができる。特に、可とう性合成樹脂で構成することで、後述するロックリング40の爪部42を食い込みやすくすることができる。
【0021】
被覆層14は、内管12の外周を覆うように配置されている。被覆層14は透明、または半透明とされ、内管12の外面の標線12Aは、外部から視認可能とされている。被覆層14は、例えば、熱可塑性エラストマーで構成することができる。被覆層14と内管12との間に隙間は構成されておらず、被覆層14は内管12に密着されている。
なお、複合管10について、給水用の被覆層14には青色の着色を施し、給湯用の被覆層14には赤色の着色を施せば、内管12として共通のものを用いて、給水、給湯用別に複合管10を低コストで製造することができる。
【0022】
被覆層14は、厚みAが0.1mm〜2.0mmの範囲であることが好ましい。厚みが0.1mmよりも薄いと、内管12の保護が不十分となり、2.0mmを超えると、後述するロックリング40の爪部42が貫通しにくくなると共に、標線12Aが見えにくくなり、さらに、不必要に重量が重くなり、コストも高くなるためである。
【0023】
複合管10の内管12の内径は、後述する管継手20の内筒部22Aに外挿可能なサイズとされており、被覆層14の外径は、管継手20の中間部24の内側に挿入可能なサイズとされている。
【0024】
図3には、本実施形態に係る管継手20の、複合管10を挿入する前の半裁断面図が示されている。管継手20及び前述の複合管10で、本発明の実施形態に係る複合管接続構造50が構成される。
【0025】
管継手20は、管状の本体部22と、この本体部22に外挿される管状の中間部24とを備えている。本体部22と中間部24とは一体化され、継手本体26が構成されている。本体部22の先端側(複合管10が挿入される側)には、後端側よりも小径の内筒部22Aが構成されている。内筒部22Aは中間部24の内周側に配置されている。さらに、管継手20は、管状のスリーブ28を備えている。スリーブ28は、中間部24に外挿されている。
【0026】
中間部24及びスリーブ28と内筒部22Aの間には、複合管10が挿入される挿入孔30が構成されている。挿入孔30の内径、すなわち、内筒部22Aの外径は、複合管10の内管12の内径と略同一か僅かに小径とされている。挿入孔30の外径、すなわち、中間部24の内径は、被覆層14の外径と略同一か僅かに大径とされている。
【0027】
スリーブ28の内側には、複合管10を挿入孔30に保持するための保持部としてロックリング40が配置されている。このロックリング40は、全体が環状とされ、断面が90度回転した略V字形をなしている。ロックリング40は、略V字形の開口部40Aが継手本体26の奥側(複合管10の挿入側と逆側)に向かうように配置されている。そして、ロックリング40の開口部40Aが中間部24の先端部24Aと対向し、略V字形の内側面の一部が先端部24Aに当接している。ロックリング40の径方向内側に配置されるV字先端には、爪部42が形成されている。爪部42は、図6に示すように、周方向からみて、V字に沿った方向からV字の外側へ向かう方向に屈曲して延出されている。爪部42の先端部は尖っており、複合管10に食い込みやすい形状となっている。
【0028】
ロックリング40は、V字の内側空間(開口部40A)が潰れるように(V字の両側に延びる部分が互いに近づくように)弾性変形可能とされている。したがって、複合管10の挿入孔30への挿入に伴って、ロックリング40は弾性変形して同心円状に拡径可能となっている。
【0029】
スリーブ28の内壁には、ロックリング40の略V字形の外側面が当接可能なテーパー面28Aが形成されている。このテーパー面28Aは、挿入孔30の入口30A側に向かって縮径するように形成されている。
【0030】
スリーブ28の内周側には、ロックリング40よりも挿入孔30の入口30A側に、管継手20の軸方向に沿って移動可能な解放リング32が内挿されている。この解放リング32は、略筒状とされ、内壁が挿入孔30の一部を構成している。解放リング32の奥側外周には、周方向に突起32Aが形成されており、スリーブ28の内周に形成された小径部28Bに当接することで、解放リング32のスリーブ28からの抜けが防止されている。突起32Aの先端部32Bは先細りとなるテーパー形状とされ、ロックリング40の径方向内側の外周面に沿って配置されている。本体部22には、挿入孔30に面した外周面に2つの周溝22Bが形成されており、これらの周溝22Bにそれぞれゴム製のOリング34が嵌め込まれている。
【0031】
本体部22の周溝22Bよりも奥側で挿入孔30の最奥部には、外径が拡径された壁面23が形成されている。この壁面23に複合管10の先端が当接し、壁面23は複合管10のストッパーになっている。また、本体部22の挿入孔30と反対側には、他の配管が接続される雄ネジ22Cが形成されている。
【0032】
この管継手20では、本体部22は青銅製、中間部24、スリーブ28及び解放リング32は樹脂製、ロックリング40はステンレス製とすることができる。なお、管継手20の各部材はこれらの材質に限定するものではなく、他の材質で構成することもできる。
【0033】
複合管10を管継手20へ接続する際には、被覆層14は剥離せず、内管12に密着させたまま、管継手20の挿入孔30に挿入する。すると、図4に示されるように、複合管10の先端がロックリング40を拡径する。そして、複合管10の外周面がロックリング40の爪部42と摺接しながら複合管10が奥側へ挿入され、複合管10の内周面がOリング34、34に圧接する。複合管10が更に挿入されると、複合管10の先端が本体部22の壁面23に到達する。このとき、複合管10の先端から1つめの標線12Aまでが差し込まれた状態となっている。
【0034】
複合管10の先端が本体部22の壁面23に到達した状態において、複合管10に内圧が作用すると、複合管10が継手本体26から抜ける方向の力を受ける。これによって、複合管10及びロックリング40が挿入孔30から抜ける方向に若干移動し、図5に示されるように、ロックリング40の外周側がスリーブ28のテーパー面28Aに当たる。これによって、図6にも示されるように、ロックリング40の爪部42が複合管10に食い込み、被覆層14を貫通して、内管12の外周に食い込む。この食い込みにより、複合管10と管継手20との接続が保持される。
【0035】
このとき、ロックリング40の爪部42は、継手本体26の奥側に向けて傾斜しているので、複合管10に食い込みやすく、かつ、爪部42が複合管10の抜け出し方向と逆方向を向いており、複合管10が抜けにくい。
【0036】
一方、図5に示す装着状態から複合管10を離脱させる場合には、挿入孔30の入口30A側から専用の治具を差し込んで、解放リング32を奥側に押し込む。これによって、解放リング22の奥側の先端部32Bがロックリング40の爪部42を押し、ロックリング40を拡径させる。その際、解放リング32の先端部32Bがロックリング40の爪部42を押し広げると同時に、爪部42と複合管10の間に入り込み、爪部42の複合管10への食い込みを解除する。この状態で挿入孔30から複合管10を引き抜く(離脱させる)ことができる。
【0037】
本実施形態の複合管10は、被覆層14を取り除くことなく、そのまま接続対象である管継手20に挿入して接続できるので、接続作業を簡単に行うことができる。また、被覆層14の外側から視認可能な標線12Aが内管12に表示されているので、被覆層14に直接表示される場合と比較して、作業中における複合管10の引き摺り等により標線12Aが消えたり見えにくくなったりすることが抑制される。さらに、被覆層14の伸縮により、標線12Aの位置がずれてしまうことを防止することができる。
【0038】
なお、本実施形態の複合管接続構造50では、ロックリング40の爪部42が、被覆層14を貫通して内管12に食い込み、複合管10を保持しているが、ロックリング40の爪部42は必ずしも内管12に食い込む必要はなく、被覆層14にのみ食い込んで複合管10を保持してもよい。本実施形態のように、内管12へ食い込ませることにより、より確実に、複合管10の抜けを防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、ロックリング40で、複合管10を保持する例について説明したが、他の保持部材、例えば、コレット等により、複合管10を外周側から保持する構成としてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、被覆層14と内管12との間に隙間は構成されておらず、被覆層14が内管12に密着されているが、被覆層14と内管12との間に隙間が構成されていても、他の部材が介在していてもよい。本実施形態のように、被覆層14と内管12とを密着させておくことにより、外部からの標線12Aの視認を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
10 複合管
12A 標線
12 内管
14 被覆層
20 管継手
40 ロックリング
42 爪部
50 複合管接続構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に情報が表示された内管と、
前記内管の外周に形成され、接続対象である管継手に接続可能な外径とされ、前記内管に表示された情報を外部から視認可能とする被覆層と、
を備えた複合管。
【請求項2】
前記被覆層と前記内管とが接触配置されていること、を特徴とする請求項1に記載の複合管。
【請求項3】
前記情報は、前記複合管を前記管継手に差し込む差し込み代を示す標線であること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合管。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の複合管と、
前記複合管を前記被覆層の外周側から保持する保持部を有し、前記複合管が接続される管継手と、
を備えた複合管接続構造。
【請求項5】
前記保持部は、前記被覆層及び前記内管に食い込んで前記複合管を保持すること、を特徴とする請求項4に記載の複合管接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225414(P2012−225414A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93148(P2011−93148)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】