説明

複合粒子、光学シート、及び、複合粒子の製造方法

【課題】ポリアミド樹脂からなる被覆層を有しつつも製造時に有機溶剤の使用を抑制させ得る複合粒子、並びに、有機溶剤の使用を抑制させつつポリアミド樹脂からなる被覆層を有する複合粒子を製造する製造方法とを提供し、ひいては環境に優しい光学シートの製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】樹脂粒子の表面にポリアミド樹脂からなる被覆層が設けられている複合粒子であって、前記樹脂粒子が、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーが重合されてなる樹脂粒子であり、且つ、前記ポリアミド樹脂が水溶性ポリアミド樹脂であることを特徴とする複合粒子などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子の表面にポリアミド樹脂からなる被覆層が設けられている複合粒子、樹脂バインダー中に光散乱用の粒子が分散されてなる光拡散層を有する光学シート、及び、表面にポリアミド樹脂からなる被覆層が設けられている複合粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド樹脂は「ナイロン」などの商品名で広く知られており、その繊維は、滑り性に優れ、ソフトな質感を有することから、ストッキングなどの肌着の素材として広く使用されている。
また、ポリアミド樹脂で形成された球状の粒子をメークアップ化粧料などに配合して肌に対する滑らかな感触を付与することが試みられたりしている。
【0003】
ところで、近年、アクリル系樹脂などの屈折率の高い樹脂などからなる光散乱用の球状の樹脂粒子を透明樹脂バインダー中に分散させた光拡散層を有する光学シートがフラットパネルディスプレイなどに利用されている。
この種の光学シートは、バインダーを有機溶剤に溶解させた溶液中に光散乱用の樹脂粒子を分散させて前記光拡散層を形成させるための塗料(以下「光拡散層形成用塗料」ともいう)を作製し、該光拡散層形成用塗料を基体に塗布、乾燥するような方法で作製されたりするために、その表面に前記樹脂粒子を大きく突出させた状態となっている場合がある。
そのような場合には樹脂粒子が突出する部分において引っ掛かりを生じやすく、光学シートに擦過傷などを発生させやすくなってしまう。
このようにして光学シートに傷を発生させると、フラットパネルディスプレイに画像欠陥などの大きな欠陥を発生させるおそれを有するため、光学シートの表面に滑り性を付与することが従来求められている。
【0004】
このことに対して下記特許文献1には、無機粒子や樹脂粒子の表面にポリアミド樹脂を被覆した複合粒子について記載されている。
すなわち、光学シートに利用する光拡散用の樹脂粒子に対してポリアミド樹脂からなる被覆層を形成させて光学シートに滑り性を付与することで上記のような問題の解消を図ることが考えられる。
しかし、下記特許文献1においては、重合することによってポリアミド樹脂となるモノマーを有機溶剤に溶解させた溶液中に基体となる樹脂粒子を分散させた状態で前記モノマーの重合を行って前記樹脂粒子の表面にポリアミド樹脂からなる被覆層を形成させているために複合粒子を製造する過程において多くの有機溶剤が使用されている。
従って、このような複合粒子を製造しようとすると作業環境を悪化させ易く、局所排気や溶剤回収に多大な手間を発生させるおそれを有する。
そのようなことから従来の方法で製造された複合粒子を光拡散用の粒子として採用しようとすると光学シートの全ての製造過程を通じての有機溶剤使用量やエネルギー消費量を増大させてしまい易く、得られる光学シートを環境に優しいものとすることが困難となる。
【0005】
なお、樹脂粒子の表面にポリアミド樹脂からなる被覆層を形成させて当該ポリアミド樹脂が有する滑り性等の特性を複合粒子に付与することについては光拡散用の粒子に用いられる場合のみに行われるものではない。
即ち、ポリアミド樹脂からなる被覆層を有しつつも有機溶剤の使用を抑制させて製造することが容易な複合粒子については、当該複合粒子が光拡散用の粒子として利用させる際にのみ求められるものではなく、広く一般的に求められるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−258829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、ポリアミド樹脂からなる被覆層を有しつつも有機溶剤の使用を抑制させて製造することが容易な複合粒子とその製造方法とを提供し、ひいては環境に優しい光学シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決させるための複合粒子に係る本発明は、樹脂粒子の表面にポリアミド樹脂からなる被覆層が設けられている複合粒子であって、前記樹脂粒子が、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーが重合されてなる樹脂粒子であり、且つ、前記ポリアミド樹脂が水溶性ポリアミド樹脂であることを特徴としている。
【0009】
また、上記のような課題を解決させるための光学シートに係る本発明は、バインダー中に光散乱用の粒子が分散されてなる光拡散層を有する光学シートであって、前記光散乱用の粒子が上記のような複合粒子であることを特徴としている。
【0010】
さらに、上記のような課題を解決させるための複合粒子の製造方法に係る本発明は、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーと、該モノマーを吸収可能な種粒子とを用い、水を分散媒としたシード重合法によって前記モノマーを重合させて樹脂粒子を形成させるのに際して前記分散媒中に水溶性ポリアミド樹脂を存在させることにより前記モノマーが重合されてなる樹脂粒子の表面に前記水溶性ポリアミド樹脂からなる被覆層が設けられている複合粒子を形成させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、上記のように被覆層を水溶性ポリアミド樹脂で形成させることから、例えば、有機溶剤を用いることなく前記水溶性ポリアミド樹脂を水に溶解させて被覆層を形成させ得る。
従って、本発明によれば、ポリアミド樹脂からなる被覆層を有しつつも有機溶剤の使用を抑制させて容易に製造可能な複合粒子、並びに、有機溶剤の使用を抑制させつつポリアミド樹脂からなる被覆層を有する複合粒子を製造する製造方法が提供され、環境に優しい光学シートの製造方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の複合粒子を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
【図2】実施例1の複合粒子の断面を撮影した透過型電子顕微鏡(TEM)写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本実施形態に係る複合粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面に設けられた被覆層とを有しており、前記樹脂粒子が、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーが重合されてなる樹脂粒子であり、且つ、当該複合粒子の表面を形成する前記被覆層には前記ポリアミド樹脂として水溶性ポリアミド樹脂が用いられている。
なお、この「(メタ)アクリル」との用語については、本明細書においては「アクリル」及び「メタクリル」の両方を含む概念で用いている。
【0014】
本実施形態に係る複合粒子は、その利用範囲の広さからその形状が球状であることが好ましく、平均粒子径が1μm以上50μm以下であることが好ましい。
本実施形態に係る複合粒子は、平均粒子径が1μm以上30μm以下であることがより好ましく、変動計数(CV値)が15%以下であることが好ましい。
また、滑り性やソフト感といった観点からは、前記被覆層の平均厚みが0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましく、被覆層を形成している前記水溶性ポリアミド樹脂のガラス転移温度(Tg)が50℃以下であることが好ましい。
なお、この「平均粒子径」、「CV値」については、〔実施例〕に記載している方法によって求めることができる。
【0015】
上記のような形状の整った複合粒子が得られやすい点においては、前記樹脂粒子をシード重合法によって形成させることが好ましく、環境に優しい製造方法によってこのような複合粒子を作製させる上においては水を分散媒としたシード重合を実施することが好ましい。
即ち、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーと、該モノマーを吸収可能な種粒子とを用い、水を分散媒としたシード重合法によって前記モノマーを重合させて樹脂粒子を形成させるとともに、該樹脂粒子をシード重合法で形成させるのに際して前記分散媒中に水溶性ポリアミド樹脂を存在させることにより前記樹脂粒子の表面に前記水溶性ポリアミド樹脂からなる被覆層を設けさせることが重要な要素となる。
【0016】
以下に、前記シード重合法において用いられる種粒子について説明する。
前記種粒子としては、シード重合させる前記モノマーを吸収可能なものであれば特にその種類が限定されるものではないが、前記モノマーとして(メタ)アクリル系モノマーが採用されるような場合であれば、前記種粒子には、ラジカル重合の可能な(メタ)アクリル系モノマーの重合体を採用することが好ましい。
例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体の重合体が好ましく用いられ、特に(メタ)アクリル酸およびその誘導体の重合体が好ましく用いられ得る。
【0017】
また、シード重合させる前記モノマーがスチレン系モノマーである場合には、前記種粒子にもラジカル重合の可能なスチレン系モノマーの重合体を採用することが好ましい。
例えば、スチレン、α―メチルスチレンなどの重合体を種粒子として採用することが好ましい。
【0018】
前記種粒子の重量平均分子量は、大きすぎると、前記モノマーや油溶性重合開始剤の吸収が進行しにくく粒度の揃った樹脂粒子が得られにくいために、5000以上100000以下であることが好ましい。
【0019】
前記種粒子の分子量を調整するためには、前記モノマーによって種粒子を作製させる際に連鎖移動剤を用いればよい。
この連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0020】
前記種粒子は、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、乳化重合など種々の方法で調製することができるが、特に、ソープフリー乳化重合により製造することが好ましい。
種粒子を含有する懸濁液を前記ソープフリー乳化重合によって作製する場合には、通常、前記モノマーとともに重合開始剤が用いられる。
ここで使用される重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等を挙げることができるが、重合の際に使用される水を主成分とした分散媒に可溶な重合開始剤であればこれに限られるものではない。
この重合開始剤は、通常、ソープフリー乳化重合の際に使用されるモノマー100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下となる割合で使用される。
【0021】
また、上記のようにソープフリー乳化重合で種粒子を調製するのに代えて一般的な乳化重合により種粒子を含有する懸濁液を作製することができる。
この場合には上記モノマーより選択される任意のモノマーを、分散媒に乳化剤と共に混合して乳化させ、重合開始剤を加えて重合させる方法を採用することができる。
【0022】
ここで使用される乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルのようなポリエチレングリコールアルキルエーテル等を挙げることができる。
この乳化剤は、通常、使用されるモノマー100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下となる割合で使用される。
【0023】
こうして形成される種粒子は、通常、0.05μm以上1μm以下の平均粒子径とすることができ、0.2μm以上0.8μm以下の平均粒子径のものを採用することが好ましい。
また、こうして得られた種粒子の粒子径の変動計数(CV値)は、通常、10%以下とされ、5%以下であることが好ましい。
この種粒子が上記のようなCV値を有しているのが好ましいのは、該種粒子の粒子径の分布が揃っているほど、得られる球状の樹脂微粒子の粒子径を均一にさせやすいためである。
【0024】
前記樹脂粒子は、種粒子にモノマーを吸収させて膨潤させた後に該モノマーを重合させる一般的なシード重合法を採用して形成させることができ、本実施形態に係る複合粒子は、水を分散媒に用いて当該シード重合を実施するとともに当該分散媒中に水溶性ポリアミド樹脂を含有させておくことによって形成させることができる。
【0025】
より具体的には、以下a)からd)の工程を順に実施することで複合粒子を作製することができる。
a)前記モノマー、該モノマーの重合を開始させるための重合開始剤、及び、アニオン性界面活性剤が水に分散されている乳化液を作製する乳化液作製工程。
b)前記乳化液と前記種粒子とを含む第一の混合液を作製して前記種粒子に前記モノマーを吸収させる第一混合液作製工程。
c)前記第一の混合液と前記水溶性ポリアミド樹脂を含んだ第二の混合液を作製し、該第二の混合液中において前記種粒子を前記水溶性ポリアミド樹脂で包囲させた状態とする第二混合液作製工程。
d)前記第二の混合液中において前記種粒子に吸収されているモノマーを重合させて前記複合粒子を作製する重合工程。
【0026】
本実施形態において使用される前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。
【0027】
また、上記に加えてエチレンオキシドジアクリレート、エチレンオキシドジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレンオキシドジアクリレート、テトラエチレンオキシドジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート及びその異性体などのエチレン性不飽和基を2つ以上有するアクリル系モノマーなども採用が可能である。
【0028】
また、前記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン等が挙げられる。
【0029】
前記樹脂粒子を形成させるためのモノマーとしては、上記のようなスチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種のみを採用しても良く、複数混合して採用しても良い。
さらには、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーとともに当該モノマーに重合可能な別のモノマーを用いて樹脂粒子を形成させてもよい。
このような別のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ以上有するモノマーを挙げることができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。
【0030】
前記重合開始剤としては、通常、油溶性の重合開始剤を採用することができ、該油溶性重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物があげられる。
【0031】
前記シード重合を実施する際の分散媒は、水単独で構成させても良いが、界面活性剤を加えて前記乳化液や前記第一の混合液の安定化を図ってもよい。
また、要すれば、水に可溶なメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのような低級アルコールを本発明の効果が著しく損なわれない範囲において前記分散媒に含有させることも可能ではあるが、廃液処理等の観点からは、これらの低級アルコールは分散媒に含有させないことが好ましい。
【0032】
前記界面活性剤としては、アニオン系のもの、カチオン系のもの、及びノニオン系のものの何れのものを1種単独、又は、複数混合して用いることができる。
アニオン系のものとしては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等を用いることができる。
また、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等を用いることができる。
さらに、ノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を用いることができる。
これらの界面活性剤は、通常、その合計量が、前記モノマー100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合となるように使用される。
【0033】
前記種粒子を前記乳化液に加えた後は、通常、室温下で暫く攪拌して前記第一の混合液における分散状態を調整することが好ましい。
そのことによって、モノマーを一様に種粒子に吸収させやすくなる。
この時の種粒子へのモノマーの吸収状況は、例えば、光学顕微鏡で第一の混合液を観察することによって容易に確認できる。
【0034】
こうして、種粒子がモノマーを吸収して成長(膨潤)した後、成長した種粒子の分散を安定化するために分散安定剤を加えてもよい。
本実施形態においては、前記水溶性ポリアミド樹脂をさらに含有する第二の混合液を作製することからこの水溶性ポリアミド樹脂を分散安定剤として機能させることができる。
例えば、水溶性ポリアミド樹脂を溶解させた水と前記第一の混合液とを混合したりして第二の混合液を作製した際には、モノマーを吸収した種粒子と分散媒との界面に水溶性ポリアミド樹脂を存在させやすくなり、前記種粒子を前記水溶性ポリアミド樹脂で包囲させた状態にさせることができる。
そして、この水溶性ポリアミド樹脂によって種粒子の分散状態が安定化されることになる。
【0035】
なお、本明細書における水溶性ポリアミド樹脂とは、常温(例えば、20℃)の水に対して溶解性を示すポリアミド樹脂を意図しており、このような水溶性ポリアミド樹脂としては、カプロラクタムと、2−アミノエチルピペラジンアジペートおよび/またはポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物などを採用することができる。
例えば、市販品であれば、東レ(株)より市販の、商品名「AQ−ナイロン A−70」、「同 A−90」(カプロラクタムと2−アミノエチルピペラジンアジペートとの共重縮合物)、「AQ−ナイロン P−70」(カプロラクタムとポリエチレングリコールジアンモニウムアジペート共重縮合物)、および、「AQ−ナイロン T−70」(カプロラクタムと2−アミノエチルピペラジンアジペートおよびポリエチレングリコールジアンモニウムアジペート共重縮合物)を採用することができる。
このような水溶性ポリアミド樹脂は、通常、モノマー100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で用いられ、1質量部以上5質量部以下の割合で用いられることが好ましい。
水溶性ポリアミド樹脂の量が上記のような割合であることが好ましいのは、上記のような割合を超えて含有させると、後述するように複合粒子を乾燥状態で取り出す際に余分な水溶性ポリアミド樹脂によって複合粒子どうしが付着しやすくなって凝集塊を形成させやすくなるためである。
また、上記のような割合未満では、モノマーを吸収した種粒子の分散状態を安定化させる効果が十分に発揮されなかったり、樹脂粒子の表面を被覆するのに十分な量とならい結果、複合粒子に十分な滑り性が発揮されなくなったりするおそれを有するためである。
【0036】
本実施形態においては、このような水溶性ポリアミド樹脂で包囲させた種粒子に吸収されているモノマーを前記第二の混合液を加熱するなどして重合させることができるものではあるが、過度に重合が進行すると目的とする複合粒子以外にモノマーどうしの重合物からなる微粒子が形成されるおそれを有する。
このようなことから重合がある程度進行した時点で第二の混合液に重合禁止剤を添加することが好ましい。
この重合禁止剤としては、例えば、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類などの水溶性の重合禁止剤が採用可能である。
この重合禁止剤は、例えば、第二の混合液に含まれている水100質量部に対して0.01質量部以上0.1質量部以下の割合で用いられる。
【0037】
なお、前記加熱によってモノマーの重合を行う場合は、重合温度は30〜100℃程度にするのが好ましく、40〜80℃程度にするのがさらに好ましい。
また、この温度を保持する時間としては、0.1〜20時間程度が好ましい。
【0038】
モノマーの重合を完了させた後は、前記第二の混合液を噴霧乾燥機などにかけることによって複合粒子を乾燥させて取り出すことができる。
そして、取り出した複合粒子に凝集が生じているようであれば、これを粉砕して個々の複合粒子とすればよく、さらに必要に応じて分級して粒度の調整を図ってもよい。
【0039】
上記のように本実施形態に係る複合粒子は、有機溶剤の使用を抑制しつつポリアミド樹脂からなる被覆層を形成させ得ることから環境に優しい製造方法によって作製容易なものであるといえる。
また、このことによって光学シートも環境に優しいものとすることができる。
【0040】
次に、この光学シートとその製造方法とについて説明する。
本実施形態の光学シートは、基体上に光拡散層としての塗膜を備えており、バインダー中に光散乱用の粒子が分散されて前記光拡散層が形成されている。
【0041】
前記基体としては、光学的に透明で耐光性、耐熱性、耐溶剤性を備えていることが好ましい。
該基体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、シクロポリオレフィンポリマー、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂材料、透明なガラスシートなどの無機材料などから適宜選択して採用できる。
【0042】
この内では、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる基体を採用することが好ましい。
また、その厚さは特に限定されるものではないが、加工のしやすさ、ハンドリング性、および、その用途を考慮して数μm〜500μm程度であることが好ましく、10〜200μm程度であることがより好ましい。
【0043】
なお、本明細書における“透明”との概念には、いわゆる“半透明”である場合も含まれる。
また、透明とは、所望する波長の光(可視光領域、赤外領域、紫外領域の光)に対して透明であることを意味し、必ずしも全波長の光に対して透明であることを要さない。
本実施形態においては、透明なフィルムの中でもヘイズが5%以下のフィルムを前記基体として採用することが好ましい。また、本実施形態においては、前記基体として、少なくとも可視光全域においてヘイズ5%以下となるフィルムを採用することが好ましい。
【0044】
前記光拡散層を形成するバインダーは、前記複合粒子を基体に結合させる役割をも果たすものである。
このバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステルなどの樹脂や、これら樹脂がウレタン系架橋剤などで架橋された樹脂が挙げられる。
また、このバインダーも基体と同様に透明であることが好ましい。
【0045】
前記光拡散層における前記バインダーと前記複合粒子との割合は特に限定されるものではないが、光拡散性能を考慮すればバインダー100質量部に対する前記複合粒子の割合が20〜500質量部とされることが好ましく、30〜300質量部とされることがより好ましい。
【0046】
前記光拡散層の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
例えば、バインダーを溶解させることができる溶媒で溶解させて適当な粘度の溶液を作製し、これに複合粒子を加えて、光拡散層形成用塗料とし、この光拡散層形成用塗料を基体上に塗布する方法が挙げられる。
なお、バインダーを溶媒に溶解させる工程は、必ずしも実施する必要はなく、予めバインダーが溶媒に溶解されている市販の溶液を購入して用いても良い。
また、前記光拡散層形成用塗料には、ウレタン架橋剤のような架橋剤を含有させても良く、レベリング剤、表面改質剤、脱泡剤、顔料等の着色剤など、公知の各種添加剤を含有させてもよい。
【0047】
前記光拡散層形成用塗料は、例えば、バインダー溶液と光拡散用の複合粒子とを、サンドミル、ボールミル、アトライター、高速回転撹拌装置、三本ロールなど公知の混合装置で混合して作製することができる。
【0048】
バインダーを溶解するための溶媒は、バインダーを溶解可能で、複合粒子や基体に対して著しい悪影響を与えないものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ) 、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ) 、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、アセトン、アニソール等を採用することができる。
これらの溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
なお、光拡散層形成用塗料には、バインダーを溶液の形で含有させる必要はなく、バインダーが水とエマルジョンを形成可能なポリマーであれば、このエマルジョンをバインダー溶液に代えて採用してもよく、バインダーとして、常温硬化型ポリマー、熱硬化型ポリマー、紫外線、放射線などの活性エネルギー線硬化型ポリマーを採用して溶媒を用いることなく光拡散層形成用塗料を作製することもできる。
なお、このような反応硬化型の液状ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーンゴムなどが挙げられる。
【0050】
光拡散層形成用塗料の基体への塗工方法は、特に限定されず、例えば、スプレー法、バーコート法、ドクターブレード法、ロールコート法、スピンコート法またはディッピング法など、公知の方法を採用することができる。
これらの方法によって光拡散層形成用塗料を基体に塗工した後、前記溶媒を乾燥除去することによって、前記光拡散層形成用塗料の乾燥塗膜からなる光拡散層が前記基体に積層された光学シートを形成させることができる。
【0051】
このような光学シートにおいては、光拡散層の表面に複合粒子を突出させやすいものの本実施形態においては、この複合粒子の表面が水溶性ポリアミド樹脂によって被覆されていることから滑り性に優れ、擦過傷等を生じにくい。
しかも、先述のように、この光学シートに光拡散用の粒子として利用する複合粒子を有機溶剤の使用を抑制しつつ作製することができる点において当該光学シートの製造方法は環境に優しいものであるといえる。
【0052】
なお、本実施形態においては、基体と光拡散層との積層構造を有する光学シートを例示しているが、例えば、離型処理された樹脂フィルムに光拡散層形成用塗料を塗布、乾燥して光拡散層を形成させた後に前記樹脂フィルムを剥離させたような、基体を備えていない、光拡散層のみのシートも本発明の光学シートとして意図する範囲のものである。
また、ここでは詳述されてはいないが、複合粒子や光学シートに係る技術事項として従来公知の事項については、それらを本発明に適宜採用することが可能なものである。
【実施例】
【0053】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
(種粒子の製造方法)
反応容器内に純水630gとメタクリル酸メチル108gとジオクチルスルホコハク酸ナトリウム11gとを投入して窒素パージを行い55℃まで昇温した。
その後、過硫酸カリウム0.54gを純水100gに溶解したものを添加して再び窒素パージを行った。
その後、55℃で12時間重合を行い、平均粒子径0.75μmの種粒子をスラリーの状態で得た。
【0055】
(種粒子の粒径測定方法)
種粒子の粒度分布はベックマンコールター社製の粒度測定器(LS230型)で測定した。
具体的には種粒子0.1gと0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mlを試験管に投入し、ヤマト科学社製タッチミキサー(商品名「TOUCHMIXER MT−31」)で2秒間混合した後、試験管を市販の超音波洗浄器(ヴェルボクリーア社製、商品名「ULTRASONIC CLEANER VS−150」を用いて10分間振動させ、前記種粒子予備分散させた。
この種粒子を分散させた液をベックマンコールター社製の粒度測定器(LS230型)にて超音波発振させながら測定した。
なお、このときの光学モデルは作製した粒子の屈折率にあわせた。
【0056】
(シード重合条件)
(実施例1)
メタクリル酸ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとの混合モノマー80gに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解させて、重合性単量体成分を作製した。
これとは別に、純水80gにアニオン性界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.8gを加えた水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌し乳化液を作製した。
攪拌機および温度計を備えた容量1Lの反応容器にこの乳化液を入れ、種粒子を含んだ前記スラリーを8.9g添加し第一の混合液を作製した。
この第一の混合液を、前記攪拌機を用いて120rpmで4時間攪拌し、その間に、種粒子にモノマーを吸収させて該種粒子を膨潤させた。
膨潤終了後に純水240gと水溶性ポリアミド含有樹脂(東レ社製、商品名「AQナイロン T−70」水溶性ポリアミド樹脂50質量%含有)1.6gとを第一の混合液に添加して第二の混合液を作製した。
この第二の混合液を70℃で12時間重合を行い、平均粒子径3μmの粒度の揃った複合粒子を得た。
【0057】
走査型電子顕微鏡(SEM)によってこの実施例1の複合粒子を観察した様子を図1に、同複合粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した様子を図2に示す。
これらの図からもわかるように、実施例1の複合粒子は、粒度が揃っており、表面に比較的均一な被覆層(図2黒色部)が形成されている。
【0058】
(実施例2)
メタクリル酸ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとの混合モノマー80gに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解させて、重合性単量体成分を作製した。
これとは別に、純水80gにアニオン性界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.8gを加えた水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌し乳化液を作製した。
攪拌機および温度計を備えた容量1Lの反応容器にこの乳化液を入れ、種粒子を含んだ前記スラリーを8.9g添加し第一の混合液を作製した。
この第一の混合液を、前記攪拌機を用いて120rpmで4時間攪拌し、その間に、種粒子にモノマーを吸収させて該種粒子を膨潤させた。
膨潤終了後に純水240gと水溶性ポリアミド含有樹脂(東レ社製、商品名「AQナイロン T−70」水溶性ポリアミド樹脂50質量%含有)6.4gとを第一の混合液に添加して第二の混合液を作製した。
この第二の混合液を70℃で12時間重合を行い、平均粒子径3μmの粒度の揃った複合粒子を得た。
【0059】
(実施例3)
メタクリル酸ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとの混合モノマー80gに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解させて、重合性単量体成分を作製した。
これとは別に、純水80gにアニオン性界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.8gを加えた水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌し乳化液を作製した。
攪拌機および温度計を備えた容量1Lの反応容器にこの乳化液を入れ、種粒子を含んだ前記スラリーを8.9g添加し第一の混合液を作製した。
この第一の混合液を、前記攪拌機を用いて120rpmで4時間攪拌し、その間に、種粒子にモノマーを吸収させて該種粒子を膨潤させた。
膨潤終了後に純水240gと水溶性ポリアミド樹脂(東レ社製、商品名「AQナイロン A−90」100%水溶性ポリアミド樹脂)0.8gとを第一の混合液に添加して第二の混合液を作製した。
この第二の混合液を70℃で12時間重合を行い、平均粒子径3μmの粒度の揃った複合粒子を得た。
【0060】
(実施例4)
メタクリル酸ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとの混合モノマー80gに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解させて、重合性単量体成分を作製した。
これとは別に、純水80gにアニオン性界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.8gを加えた水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌し乳化液を作製した。
攪拌機および温度計を備えた容量1Lの反応容器にこの乳化液を入れ、種粒子を含んだ前記スラリーを8.9g添加し第一の混合液を作製した。
この第一の混合液を、前記攪拌機を用いて120rpmで4時間攪拌し、その間に、種粒子にモノマーを吸収させて該種粒子を膨潤させた。
膨潤終了後に純水240gと水溶性ポリアミド樹脂(東レ社製、商品名「AQナイロン A−90」100%水溶性ポリアミド樹脂)3.2gとを第一の混合液に添加して第二の混合液を作製した。
この第二の混合液を70℃で12時間重合を行い、平均粒子径3μmの粒度の揃った複合粒子を得た。
【0061】
(実施例5)
アクリル酸ブチル28gとメタクリル酸ブチル28gとの合計56gを、メタクリル酸ブチル56gに代えて用いたこと以外は実施例2と同様の製造方法で複合粒子を作製し、平均粒子径3μmの粒度の揃った複合粒子を得た。
【0062】
(比較例1)
メタクリル酸ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとの混合モノマー80gに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解させて、重合性単量体成分を作製した。
これとは別に、純水80gにアニオン性界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.8gを加えた水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌し乳化液を作製した。
攪拌機および温度計を備えた容量1Lの反応容器にこの乳化液を入れ、種粒子を含んだ前記スラリーを8.9g添加し第一の混合液を作製した。
この第一の混合液を、前記攪拌機を用いて120rpmで4時間攪拌し、その間に、種粒子にモノマーを吸収させて該種粒子を膨潤させた。
膨潤終了後に純水240gとポリビニルアルコール樹脂3.2gとを第一の混合液に添加して第二の混合液を作製した。
この第二の混合液を70℃で12時間重合を行い、平均粒子径3μmの粒度の揃った複合粒子を得た。
【0063】
(評価)
得られた複合粒子の平均粒子径、CV値を以下のようにして求めた。
(平均粒子径)
孔径50〜400μmの細孔に電解質溶液を満たし、電解質溶液を重合体粒子集合体が通過する際の電界質溶液の導電率変化から体積を求め、平均粒子径を計算した。
具体的には、測定した平均粒子径は、ベックマンコールター社製の「コールターマルチザイザーII」によって測定した体積平均粒子径である。
なお、測定に際してはCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTERMULTISIZER(1987)に従って、測定する集合体の粒子径に適合したアパチャーを用いてキャリブレーションを行った。
【0064】
具体的には、市販のガラス製の試験管に粒子0.1gと0.1%ノニオン系界面活性剤溶液10mlを投入し、ヤマト科学社製タッチミキサーTOUCHMIXERMT−31で2秒間混合した後、これを本体備え付けの、ISOTON2(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。
次に「マルチサイザーII」本体にアパチャーサイズ、Current,Gain,PolarityをCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って入力し、manualで測定した。
測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、集合体を10万個測定した点で測定を終了した。
【0065】
(CV値)
変動係数(CV値)は、粒子径の標準偏差(σ)、及び、平均粒子径(x)を次の式に代入することにより算出される値である。
CV値(%)=( σ / x )× 100

なお、CV値が15%以下であれば十分単分散な状態であるといえる。
【0066】
実施例、比較例の複合粒子について、平均粒子径、及び、CV値を測定した結果を下記表1に示す。
【表1】

【0067】
(光学シートの製造事例)
(製造例1)
実施例1の複合粒子14質量部に対して、アクリル系バインダー(三菱レイヨン社製、商品名「ダイヤナールLR−102」)140質量部を混合し、そこにトルエンとメチルエチルケトンを1:1の割合で含有する混合溶媒を260質量部添加し、これを遠心攪拌機により3分間攪拌を行った後、3時間放置した。
その後、硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTKA−100」)30質量部添加して、再び遠心攪拌機により3分間攪拌を行って光拡散層形成用塗料を作製した。
光学シートの基体となるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム上に前記光拡散層形成用塗料を75μmのコーターを用いて塗工し、70℃に保った乾燥機に入れて1時間乾燥を行い、光学シートを作製した。
このようにして形成させた光拡散層の光学特性評価を行うためにヘイズメーター(日本電色社製)を使用してPETフィルムごと全光線透過率を測定した。
【0068】
(製造例2)
実施例2の複合粒子14質量部に対して、アクリル系バインダー(三菱レイヨン社製、商品名「ダイヤナールLR−102」)140質量部を混合し、そこにトルエンとメチルエチルケトンを1:1の割合で含有する混合溶媒を260質量部添加し、これを遠心攪拌機により3分間攪拌を行った後、3時間放置した。
その後、硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTKA−100」)30質量部添加して、再び遠心攪拌機により3分間攪拌を行って光拡散層形成用塗料を作製した。
光学シートの基体となるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム上に前記光拡散層形成用塗料を75μmのコーターを用いて塗工し、70℃に保った乾燥機に入れて1時間乾燥を行い、光学シートを作製した。
このようにして形成させた光拡散層の光学特性評価を行うためにヘイズメーター(日本電色社製)を使用してPETフィルムごと全光線透過率を測定した。
【0069】
(製造例3)
比較例1の複合粒子14質量部に対して、アクリル系バインダー(三菱レイヨン社製、商品名「ダイヤナールLR−102」)140質量部を混合し、そこにトルエンとメチルエチルケトンを1:1の割合で含有する混合溶媒を260質量部添加し、これを遠心攪拌機により3分間攪拌を行った後、3時間放置した。
その後、硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTKA−100」)30質量部添加して、再び遠心攪拌機により3分間攪拌を行って光拡散層形成用塗料を作製した。
光学シートの基体となるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム上に前記光拡散層形成用塗料を75μmのコーターを用いて塗工し、70℃に保った乾燥機に入れて1時間乾燥を行い、光学シートを作製した。
このようにして形成させた光拡散層の光学特性評価を行うためにヘイズメーター(日本電色社製)を使用してPETフィルムごと全光線透過率を測定した。
【0070】
(製造例4)
被覆層等の設けられていないポリアミド樹脂粒子(平均粒径:5μm)14質量部に対して、アクリル系バインダー(三菱レイヨン社製、商品名「ダイヤナールLR−102」)140質量部を混合し、そこにトルエンとメチルエチルケトンを1:1の割合で含有する混合溶媒を260質量部添加し、これを遠心攪拌機により3分間攪拌を行った後、3時間放置した。
その後、硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTKA−100」)30質量部添加して、再び遠心攪拌機により3分間攪拌を行って光拡散層形成用塗料を作製した。
光学シートの基体となるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム上に前記光拡散層形成用塗料を75μmのコーターを用いて塗工し、70℃に保った乾燥機に入れて1時間乾燥を行い、光学シートを作製した。
このようにして形成させた光拡散層の光学特性評価を行うためにヘイズメーター(日本電色社製)を使用してPETフィルムごと全光線透過率を測定した。
【0071】
以下に、製造例1から製造例4までの光学シートに対して傷つき性の評価を行った結果と全光線透過率の評価結果とを示す。
なお、傷つき性については、摩擦堅牢度試験機を用いて、光学シートの光拡散層表面を布で20回往復研磨を行った時のフィルムの傷つき具合を目視で観察して評価した。
その上で、線傷が3本以下の傷が見られる場合を「○」、線傷が4本以上9本以下の傷が見られる場合を「△」、線傷が10本以上の場合を「×」として判定した。
【0072】
【表2】

【0073】
以上のように、本発明によれば、滑り性に優れた光学シートを得ることができる。
しかも、単なるポリアミド樹脂粒子を使用した製造例4に比べて、実施例1、2の複合粒子を用いる方が滑り性に優れた光学シートが得られていることがわかる。
これは、単なるポリアミド樹脂粒子が内部まで柔軟となっている一方で実施例1、2の複合粒子が被覆されている水溶性ポリアミド樹脂に比べて硬度の高い樹脂で内部が形成されていることに起因するものと思われる。
即ち、硬質な樹脂粒子によって複合粒子の変形が抑制されることで、光学フィルムの表面に接する相手材との間を点接触に近い状態にすることができるためであると考えられる。
また、先に示したように、この光学シートに用いる光拡散用の粒子は、有機溶剤の使用を抑制しつつ製造することが容易であることから、当該光学シートもそのすべての製造過程における有機溶剤の使用量を削減することができ、環境に優しい製品であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子の表面にポリアミド樹脂からなる被覆層が設けられている複合粒子であって、
前記樹脂粒子が、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーが重合されてなる樹脂粒子であり、且つ、前記ポリアミド樹脂が水溶性ポリアミド樹脂であることを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
球状に形成されており、平均粒子径が1μm以上30μm以下で、CV値が15%以下であり、且つ、前記被覆層の平均厚みが0.05μm以上0.5μm以下である請求項1記載の複合粒子。
【請求項3】
バインダー中に光散乱用の粒子が分散されてなる光拡散層を有する光学シートであって、
前記光散乱用の粒子が請求項1又は2に記載の複合粒子であることを特徴とする光学シート。
【請求項4】
スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの内の1種以上のモノマーと、該モノマーを吸収可能な種粒子とを用い、水を分散媒としたシード重合法によって前記モノマーを重合させて樹脂粒子を形成させるのに際して前記分散媒中に水溶性ポリアミド樹脂を存在させることにより前記モノマーが重合されてなる樹脂粒子の表面に前記水溶性ポリアミド樹脂からなる被覆層が設けられている複合粒子を形成させることを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項5】
前記モノマー、該モノマーの重合を開始させるための重合開始剤、及び、アニオン性界面活性剤を水に分散させた乳化液を作製する乳化液作製工程、前記乳化液と前記種粒子とを含む第一の混合液を作製して前記種粒子に前記モノマーを吸収させる第一混合液作製工程、前記第一の混合液と前記水溶性ポリアミド樹脂を含んだ第二の混合液を作製し、該第二の混合液中において前記種粒子を前記水溶性ポリアミド樹脂で包囲させた状態とする第二混合液作製工程、前記第二の混合液中において前記種粒子に吸収されているモノマーを重合させて前記複合粒子を作製する重合工程を実施する請求項4記載の複合粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−171974(P2012−171974A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32073(P2011−32073)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】