説明

複合粒子、断熱材及びこれらの製造方法

【課題】高温での使用においても優れた断熱性を示す複合粒子、断熱材及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る複合粒子(1)は、平均粒子径が50μm以上であり、25℃における熱伝導率が0.025W/(m・K)以下である第一粒子(10)と、平均粒子径が0.5〜10μmであり、前記第一粒子(10)を被覆する第二粒子(20)と、を含む断熱性粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子、断熱材及びこれらの製造方法に関し、特に、高温での使用における輻射伝熱の防止に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1において、シリカ微粒子等の第1の無機化合物からなる微粒子がリング状又は螺旋状に会合した二次粒子で形成される多孔体により被覆された、炭化珪素等の第2の無機化合物からなるコア粒子を含む、断熱性に優れた多孔体被覆粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−81495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているような、平均粒子径が数nm〜数十nm程度のシリカ微粒子は、断熱性に優れているが、例えば、嵩高いためにそのままでは取扱いにくく、嵩密度を上げるために圧縮する場合には大きな圧力が必要であり、また、発塵が起こりやすい、といった問題があった。
【0005】
そこで、例えば、平均粒子径が数百μm程度で断熱性に優れたシリカ顆粒を使用することが考えられる。このようなシリカ顆粒は、上述のシリカ微粒子に比べて、取り扱いやすく、簡便な圧縮で嵩密度を上げることができ、発塵も起こりにくい。
【0006】
しかしながら、例えば、シリカ顆粒が赤外線透過性である場合には、数百℃以上の高温での使用において、輻射伝熱を十分に防止することができない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、高温での使用においても優れた断熱性を示す複合粒子、断熱材及びこれらの製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る複合粒子は、平均粒子径が50μm以上であり、25℃における熱伝導率が0.025W/(m・K)以下である第一粒子と、平均粒子径が0.5〜10μmであり、前記第一粒子を被覆する第二粒子と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、高温での使用においても優れた断熱性を示す複合粒子を提供することができる。
【0009】
また、前記第一粒子は、赤外線透過性であることとしてもよい。また、前記第一粒子は、波長4μmにおける赤外線透過率が20%以上であることとしてもよい。また、前記第一粒子は、エアロゲル顆粒、粉砕顆粒及び中空粒子からなる群より選択される1種又は2種以上であるであることとしてもよい。また、前記第一粒子は、シリカ粒子であることとしてもよい。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材は、前記いずれかの複合粒子を含むことを特徴とする。本発明によれば、高温での使用においても優れた断熱性を示す断熱材を提供することができる。
【0011】
また、前記断熱材は、100重量部の前記第一粒子に対して、2〜40重量部の前記第二粒子を含むこととしてもよい。また、前記断熱材は、前記複合粒子を収容する外皮材をさらに含むこととしてもよい。また、前記断熱材は、150℃以上の温度で使用されることとしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る複合粒子の製造方法は、平均粒子径が50μm以上であり、25℃における熱伝導率が0.025W/(m・K)以下である第一粒子と、平均粒子径が0.5〜10μmであり、前記第一粒子を被覆する第二粒子と、を乾式混合することを特徴とする。本発明によれば、高温での使用においても優れた断熱性を示す複合粒子の製造方法を提供することができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材の製造方法は、前記いずれかの複合粒子を外皮材に収容することを特徴とする。本発明によれば、高温での使用においても優れた断熱性を示す断熱材の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高温での使用においても優れた断熱性を示す複合粒子、断熱材及びこれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合粒子の一例についての説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る断熱材の一例についての説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る実施例において複合粒子の赤外線透過率をFT−IRにより測定した結果の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る実施例において複合粒子の炭化珪素含有量と赤外線透過率との関係を測定した結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る実施例において複合粒子の熱伝導率を測定した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る複合粒子の一例についての説明図である。図1に示すように、複合粒子1は、第一粒子(以下、「コア粒子10」という。)と、当該コア粒子10を被覆する第二粒子(以下、「被覆粒子20」という。)と、を含む。
【0018】
コア粒子10は、平均粒子径が50μm以上の粒子である。コア粒子10の平均粒子径は、例えば、100μm以上とすることもでき、400μm以上とすることもできる。コア粒子10の平均粒子径がこのような範囲であることにより、例えば、当該コア粒子10は、平均粒子径が数nm〜数十nmのシリカ超微粒子に比べて、取り扱いやすく、簡便な圧縮で嵩密度を上げることができ、発塵も起こりにくいという利点を有することとなる。コア粒子10の平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置により測定することができる。
【0019】
また、コア粒子10の平均粒子径は、例えば、後述する被覆粒子20の平均粒子径の10倍以上とすることができ、100倍以上とすることが好ましい。コア粒子10の平均粒子径が被覆粒子20のそれに対してこのような範囲の倍率であることにより、例えば、当該コア粒子10を当該被覆粒子20で簡便に且つ効率よく被覆することができる。
【0020】
コア粒子10の平均粒子径の上限は、特に限られないが、当該平均粒子径は、例えば、2000μm以下とすることができる。すなわち、コア粒子10の平均粒子径は、例えば、50〜2000μmとすることができ、100〜2000μmとすることができ、400〜2000μmとすることもできる。
【0021】
コア粒子10は、また、25℃における熱伝導率が0.025W/(m・K)以下の粒子である。コア粒子10の25℃における熱伝導率は、例えば、0.020W/(m・K)以下とすることもでき、0.015W/(m・K)以下とすることもできる。
【0022】
このように、コア粒子10は、それ自身が単独で優れた断熱性を有する粒子である。コア粒子10の熱伝導率は、例えば、嵩密度が100〜150kg/mに調整された当該コア粒子10の粉体を試料として用いるGHP(guarded hot plate)法により測定することができる。
【0023】
コア粒子10は、赤外線透過性であることとしてもよい。すなわち、この場合、コア粒子10は、赤外線を透過させる透明性を有する粒子である。したがって、コア粒子10は、単独では高温での輻射伝熱を十分に防止できないこととなる。このような場合、後述の被覆粒子20を使用することによる輻射伝熱防止効果が特に顕著なものとなる。
【0024】
コア粒子10は、波長4μmにおける赤外線透過率が20%以上であることとしてもよい。コア粒子10の赤外線透過率は、例えば、フーリエ変換赤外分光装置により測定することができる。具体的に、コア粒子10は、例えば、90重量部のKBr粉末と10重量部の当該コア粒子10との乾式混合粉体をプレス成形して得られた、密度2g/cm、厚さ200μmの円板試料を用いたKBr(臭化カリウム)法によるFT−IR(フーリエ変換赤外分光法)において、波長4μmにおける赤外線透過率が20%以上である粒子である。
【0025】
コア粒子10は、400℃における熱伝導率が0.08W/(m・K)以上であることとしてもよい。コア粒子10の400℃における熱伝導率は、例えば、0.1W/(m・K)以上であってもよく、0.15W/(m・K)以上であってもよい。また、コア粒子10の400℃における熱伝導率は、例えば、0.08〜0.3W/(m・K)とすることができ、0.10〜0.25W/(m・K)とすることができ、0.15〜0.25W/(m・K)とすることもできる。
【0026】
コア粒子10は、上述の特性を備えた粒子であれば特に限られず、任意の無機粒子又は有機粒子とすることができる。コア粒子10は、例えば、エアロゲル顆粒とすることができる。
【0027】
エアロゲル顆粒は、上述のコア粒子10としての特性を備えたものであれば特に限られず、任意の無機エアロゲル顆粒又は有機エアロゲル顆粒とすることができる。ただし、高温での使用における安定性等の観点から、コア粒子10は、無機エアロゲル顆粒であることが好ましい。
【0028】
無機エアロゲル顆粒としては、例えば、シリカエアロゲル顆粒、アルミナエアロゲル顆粒、ジルコニアエアロゲル顆粒からなる群より選択され1種又は2種以上を用いることができる。中でも、断熱性、高温での安定性、コスト等の観点から、シリカエアロゲル顆粒を特に好ましく用いることができる。なお、エアロゲル顆粒は、エアロゲル原料(例えば、シリカのゲル)の超臨界乾燥等の公知の方法により製造することができる。
【0029】
また、コア粒子10としては、例えば、フュームドシリカ等のナノ粒子を圧縮して成形し、得られた成形体を粉砕して得られる粉砕顆粒や、天然の火山ガラス等のガラス材料を急速に加熱して発泡させることにより得られる微小な中空粒子(発泡中空粒子)を用いることができる。すなわち、コア粒子10は、例えば、エアロゲル顆粒、粉砕顆粒及び中空粒子からなる群より選択される1種又は2種以上とすることができる。
【0030】
また、コア粒子10としては、高温での使用における安定性等の観点から、無機粒子を用いることが好ましい。無機粒子としては、上述の無機エアロゲル顆粒を好ましく用いることができるが、これに限られず、上述のコア粒子10としての特性を備えた任意の無機粒子を用いることができる。すなわち、例えば、フュームドシリカ等の無機ナノ粒子やガラス材料等の無機材料から得られた上述の粉砕顆粒や中空粒子を用いることができる。したがって、コア粒子10は、例えば、無機エアロゲル顆粒、無機粉砕顆粒及び無機中空粒子からなる群より選択される1種又は2種以上とすることができる。
【0031】
また、無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子からなる群より選択される1種又は2種以上を好ましく用いることができる。中でも、断熱性、高温での安定性、コスト等の観点から、シリカ粒子を好ましく用いることができる。
【0032】
シリカ粒子としては、上述のシリカエアロゲル顆粒を特に好ましく用いることができるが、これに限られず、上述のコア粒子10としての特性を備えた任意のシリカ粒子を用いることができる。すなわち、例えば、フュームドシリカ等のシリカナノ粒子やガラス材料等のシリカ材料から得られた上述の粉砕顆粒や中空粒子を用いることができる。したがって、シリカ粒子は、例えば、シリカエアロゲル顆粒、シリカ粉砕顆粒及びシリカ発泡中空粒子からなる群より選択される1種又は2種以上とすることができる。
【0033】
コア粒子10の形状は、上述の特性を損なわない範囲であれば特に限られない。すなわち、コア粒子10は、例えば、表面に凹凸のあるいびつな粒子(例えば、エアロゲル顆粒等の多孔性粒子)とすることができ、また、表面が円滑な球状粒子とすることもできる。
【0034】
被覆粒子20は、平均粒子径が0.5〜10μmの粒子である。被覆粒子20の平均粒子径は、例えば、1〜5μmとすることが好ましく、1〜4μmであることが特に好ましい。被覆粒子20の平均粒子径がこのような範囲であることにより、当該被覆粒子20は、いわゆるミー散乱によって、比較的高温での輻射伝熱を効果的に防止することができる。
【0035】
すなわち、被覆粒子20は、輻射伝熱をもたらす赤外線の波長と同程度の平均粒子径を有し、好ましくは当該波長の半分程度の平均粒子径を有する。具体的に、例えば、ウィーンの式:λmax=2898/(273+t)(λmaxはピーク波長(μm)、tは温度(℃)):によれば、温度が100〜1000℃におけるピーク波長は、およそ2〜8μmと算出される。したがって、例えば、被覆粒子20の平均粒子径が、このピーク波長の約半分に相当する1〜4μmであれば、当該被覆粒子20によるミー散乱によって、100〜1000℃における輻射伝熱を効果的に防止することができる。
【0036】
被覆粒子20は、上述のようにミー散乱に適した平均粒子径を有する粒子であれば特に限られない。すなわち、被覆粒子20は、例えば、コア粒子10に比べて断熱性に劣る粒子であってもよい。
【0037】
この場合、被覆粒子20は、例えば、25℃における熱伝導率が、コア粒子10のそれより大きな粒子となる。具体的に、被覆粒子20の25℃における熱伝導率は、例えば、270W/(m・K)以上とすることができる。
【0038】
もちろん、被覆粒子20は、コア粒子10と同等以上の断熱性を有する粒子であってもよい。ただし、被覆粒子20としてコア粒子10より断熱性に劣る粒子を用いることにより、コストを低減することができ、工業的な量産に適した複合粒子1及び断熱材を実現することができる。
【0039】
被覆粒子20は、上述のようにミー散乱に適した平均粒子径を有する粒子であれば特に限られず、任意の無機粒子又は有機粒子とすることができる。ただし、高温での使用における安定性等の観点から、被覆粒子20は、無機粒子であることが好ましい。無機粒子としては、例えば、炭化珪素粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子からなる群より選択される1種又は2種以上を好ましく用いることができる。
【0040】
そして、複合粒子1は、上述したいずれかのコア粒子10と、上述したいずれかの被覆粒子20と、を含む断熱性の粒子である。すなわち、図1に示す例において、複合粒子1は、被覆粒子20によって被覆されたコア粒子10からなる断熱性粒子である。個々のコア粒子10の表面は、多数の被覆粒子20により被覆されている。
【0041】
被覆粒子20は、コア粒子10の表面の全部を被覆することが好ましい。ただし、被覆粒子20による輻射伝熱の防止効果が得られる範囲であれば、コア粒子10の表面の一部を当該被覆粒子20で被覆することとしてもよい。
【0042】
コア粒子10に対する被覆粒子20の量は、複合粒子1が所望の断熱性を有することのできる範囲であれば特に限られない。すなわち、複合粒子1は、例えば、個々のコア粒子10の表面の全部又は一部を1層の被覆粒子20で被覆するために必要な量又はそれより多い量の当該被覆粒子20を含むことができる。特に、複合粒子1は、個々のコア粒子10の表面の全部を1層の被覆粒子20で被覆するために必要な量又はそれより多い量の当該被覆粒子20を含むことが好ましい。なお、個々のコア粒子10の表面の全部を1層の被覆粒子20で被覆するために必要な量は、例えば、当該コア粒子10の平均粒子径及び当該被覆粒子20の平均粒子径等の幾何学的条件に基づいて理論的に算出することができる。
【0043】
また、図1に示すように、コア粒子10を被覆している被覆粒子20は、その本来の形状(コア粒子10を被覆する前の形状)を維持している。したがって、コア粒子10を被覆している被覆粒子20は、その本来の平均粒子径及び形状に基づくミー散乱によって、輻射伝熱を効果的に防止することができる。
【0044】
このような複合粒子1は、平均粒子径が50μm以上であり、25℃における熱伝導率が0.025W/(m・K)以下であるコア粒子10と、平均粒子径が0.5〜10μmであり、当該コア粒子10を被覆する被覆粒子20と、を乾式混合する方法により製造することができる。
【0045】
すなわち、上述したいずれかのコア粒子10と、上述したいずれかの被覆粒子20と、を乾式混合することにより、当該コア粒子10を当該被覆粒子20により被覆して、複合粒子1を製造することができる。
【0046】
コア粒子10の平均粒子径と被覆粒子20の平均粒子径とが上述の関係にあることにより、バインダーを用いることなく、乾式混合するだけで、当該コア粒子10の表面に当該被覆粒子20を簡便に且つ効率よく付着させることができる。特に、上述のとおり、コア粒子10の平均粒子径が、被覆粒子20の平均粒子径の10倍以上である場合、好ましくは100倍以上である場合には、当該被覆粒子20による当該コア粒子10の被覆を効率よく達成することができる。
【0047】
このような乾式混合により得られる複合粒子1において、被覆粒子20は、バインダーを介することなく、コア粒子10の表面に直接付着することにより、当該コア粒子10を被覆する。特に、エアロゲル顆粒等、多孔性の表面を有するコア粒子10を用いる場合には、当該表面への被覆粒子20の付着を効率よく行うことができる。
【0048】
また、図1に示すように、乾式混合によって、被覆粒子20を、その本来の粒状形状を維持したまま、コア粒子10に付着させることができる。乾式混合の方法は、コア粒子10と被覆粒子20とを乾燥状態で混合することにより当該コア粒子10を当該被覆粒子20で被覆できる方法であれば特に限られず、例えば、所定の回転混合装置内に当該コア粒子10と被覆粒子20とを投入して撹拌する方法を好ましく用いることができる(例えば、上記特許文献1参照)。
【0049】
本実施形態に係る断熱材は、上述した複合粒子1を含む。すなわち、断熱材は、例えば、複合粒子1を含む断熱性の粉体材料とすることができる。
【0050】
この断熱性粉体材料からなる断熱材に含まれるコア粒子10と被覆粒子20との比率は、当該断熱材が全体として所望の断熱性を有する範囲であれば特に限られない。すなわち、この断熱材は、例えば、個々のコア粒子10の表面の全部又は一部を1層の被覆粒子20で被覆するために必要な量又はそれより多い量の当該被覆粒子20を含むことができる。
【0051】
特に、断熱材は、個々のコア粒子10の表面の全部を1層の被覆粒子20で被覆するために必要な量又はそれより多い量の当該被覆粒子20を含むことが好ましい。ただし、例えば、被覆粒子20の断熱性がコア粒子10のそれに劣る場合には、当該被覆粒子20の含有量が過剰となることにより、断熱材が全体として十分な断熱性を備えることができないことがある。
【0052】
したがって、断熱材は、被覆粒子20による輻射伝熱防止効果が十分に得られ、且つ当該断熱材が全体として所望の断熱性を備えることのできる範囲で、当該被覆粒子20を含むことが好ましい。
【0053】
すなわち、断熱材は、例えば、100重量部のコア粒子10に対して、2〜40重量部の被覆粒子20を含む。100重量部のコア粒子10に対する被覆粒子20の含有量は、例えば、2〜35重量部であることが好ましく、15〜35重量部であることがより好ましい。
【0054】
断熱材がコア粒子10及び被覆粒子20をこのような比率で含むことにより、当該被覆粒子20の断熱性が当該コア粒子10より低い場合であっても、当該断熱材は優れた断熱性を有することができる。なお、断熱材は、コア粒子10を被覆していない被覆粒子20をさらに含むことができ、この場合、当該被覆粒子20は、例えば、複合粒子1の間に存在することとなる。
【0055】
また、上述の断熱材を構成する断熱性粉体材料は、全体として所望の断熱性を備えることができる範囲で、さらに他の材料を含むこともできる。すなわち、断熱材は、例えば、繊維材料をさらに含むことができる。この場合、断熱材は、複合粒子1の間に分散された繊維材料を含む。
【0056】
繊維材料としては、無機繊維又は有機繊維を用いることができ、高温での使用における安定性等の観点から、無機繊維を用いることが好ましい。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維を用いることができる。
【0057】
ただし、複合粒子1の優れた断熱性を活かすため、断熱性粉体材料からなる断熱材は、当該複合粒子1を主成分として含むことが好ましい。すなわち、この断熱性粉体材料に含まれる複合粒子1の量は、例えば、40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。また、断熱性粉体材料からなる断熱材の嵩密度は、例えば、100kg/m以上とすることが好ましく、120kg/m以上とすることがより好ましい。
【0058】
また、図2に示すように、断熱材2は、複合粒子1と、当該複合粒子1を収容する外皮材30をさらに含むこととしてもよい。すなわち、この場合、断熱材2は、例えば、複合粒子1を含む断熱性粉体材料と、当該断熱性粉体材料を収容する外皮材30と、を含む。
【0059】
外皮材30は、複合粒子1を収容することのできる材料であれば特に限られない。すなわち、外皮材30は、例えば、無機材料及び/又は有機材料のシートとすることができ、高温での使用における安定性等の観点から、無機材料のシートとすることが好ましい。
【0060】
無機材料シートとしては、例えば、無機繊維シートを好ましく用いることができる。無機繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等の無機繊維の織布又は不織布(クロス、フェルト、ブランケット、ペーパー等)を用いることができる。
【0061】
また、有機材料シートとしては、例えば、多孔性樹脂シートを用いることができる。多孔性樹脂シートとしては、例えば、延伸法により多孔化された樹脂シートを好ましく用いることができる。具体的に、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂又はポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂の多孔性シートを好ましく用いることができ、耐熱性が比較的高い多孔性PTFEシートを特に好ましく用いることができる。
【0062】
外皮材30が可とう性のシートから構成される場合、断熱材2は、薄く、複合粒子1に基づく優れた断熱性を有することに加えて、例えば、柔軟性を有することができる。したがって、この場合、断熱材2は、例えば、構造物の湾曲した表面に沿って変形させて施工することができる。
【0063】
外皮材30の形状は、複合粒子1を収容できるものであれば特に限られない。すなわち、外皮材30は、例えば、図2に示すように、袋状に形成される。この袋状の外皮材30は、内部に複合粒子1を保持したまま密封することができる。
【0064】
また、外皮材30は、複合粒子1の漏出等による発塵の発生を効果的に抑制できるものが好ましい。すなわち、外皮材30は、例えば、複合粒子1の漏出を防止するよう、繊維密度が調整された無機繊維シートや孔径が調整された多孔性樹脂シートとすることができる。
【0065】
なお、断熱材2は、外皮材30を複数含むこととしてもよい。すなわち、この場合、断熱材2は、例えば、複合粒子1を収容する第一の外皮材30と、さらに当該第一の外皮材30を収容する第二の外皮材30と、を含むことができる。複数の外皮材30は、同一種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
【0066】
このような外皮材30を含む断熱材2は、複合粒子1を当該外皮材30に収容することにより製造することができる。すなわち、例えば、まず、袋状に形成された外皮材30と、複合粒子1を含む断熱性粉体材料と、を準備し、次いで、当該外皮材30に当該断熱性粉体材料を入れ、最後に、当該外皮材30を密封する。
【0067】
外皮材30への複合粒子1の収容時には、当該複合粒子1の嵩密度を上げることが好ましい。すなわち、例えば、複合粒子1を含む断熱性粉体材料を収容した外皮材30を減圧下でパッキングすることにより、当該複合粒子1の嵩密度を簡便に且つ効率よく増加させることができる。
【0068】
また、外皮材30を密封する方法は特に限られないが、例えば、当該外皮材30が無機繊維シートである場合には縫合により、また、当該外皮材30が有機材料シートである場合には熱融着により、当該外皮材30の開口部を閉じることができる。
【0069】
このような複合粒子1及び断熱材2は、低温において主にコア粒子10の特性に基づく優れた断熱性を示すことに加えて、高温においても、当該コア粒子10の優れた断熱性(特に固体伝熱及び気体伝熱の防止)と、被覆粒子20による輻射伝熱防止効果と、によって優れた断熱性を示す。
【0070】
したがって、複合粒子1及び断熱材2は、例えば、150℃以上の温度で好ましく使用することができる。この使用温度は、例えば、200℃以上とすることもでき、350℃以上とすることもできる。より具体的に、使用温度は、例えば、150〜700℃とすることができ、200〜700℃とすることもでき、350〜700℃とすることもできる。なお、複合粒子1及び断熱材2は、より低い温度でも好ましく使用することができる。すなわち、複合粒子1及び断熱材2は、例えば、50℃以上の温度(より具体的には、例えば、50〜700℃)で使用することもできる。
【0071】
このような複合粒子1及び断熱材2の施工場所としては、例えば、装置、配管構造、建物等の構造物が挙げられる。具体的に、例えば、高温に晒される半導体製造装置、高温流体が流通する配管構造、原子力施設が挙げられる。
【0072】
断熱材2が、上述の複合粒子1を含む断熱性粉体材料である場合、当該断熱材2は、例えば、構造物に形成された所定の形状の間隙に充填されて、当該構造物における断熱に使用される。
【0073】
また、断熱材2が上述の外皮材30を有する場合、当該断熱材2は、例えば、構造物の表面に貼り付けられ又は巻きつけられて、当該構造物における断熱に使用される。特に、外皮材30が、可とう性のシートである場合、断熱材2は、例えば、狭い空間に配置され且つ湾曲した表面を有する構造物(例えば、半導体製造装置)において、当該表面に対応する形状に柔軟に変形しつつ施工することができる。
【0074】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0075】
[断熱材の製造]
コア粒子10として、シリカエアロゲルの顆粒(TLD301、cabot社製)を用いた。このシリカエアロゲル顆粒(以下の実施例において単に「エアロゲル顆粒」という。)は、平均粒子径が1000μm(粒子径範囲は700μm〜1200μm)であり、25℃における熱伝導率が0.013W/(m・K)であった。また、このエアロゲル顆粒は、透明性が高く、赤外線透過性の粒子であった。被覆粒子20としては、炭化珪素の粒子(シナノランダム、信濃電気製錬株式会社製)を用いた。この炭化珪素粒子の平均粒子径は、2.3μmであった。
【0076】
そして、エアロゲル顆粒と炭化珪素粒子とを所定の比率で乾式混合することにより、当該炭化珪素粒子により被覆された当該エアロゲル顆粒(複合粒子1)からなる断熱性粉体材料を得た。100重量部のエアロゲル顆粒に対する炭化珪素粒子の添加比率は、2.5重量部、5.0重量部、10重量部、20重量部又は40重量部の5種類とした。
【0077】
また、比較のため、炭化珪素粉体を添加しない、エアロゲル顆粒からなる断熱性粉体材料も準備した。なお、乾式混合により得られた、炭化珪素粒子に被覆されたエアロゲル顆粒(すなわち、複合粒子1)は、不透明な粒子であった。
【0078】
[赤外線透過率の測定]
上述のようにして得られた複合粒子1を含む断熱性粉体材料の赤外線透過率を測定した。測定法としては、KBr(臭化カリウム)法によるFT−IR(フーリエ変換赤外分光法)を用いた。すなわち、まず、90重量部のKBr粉末に対して10重量部のエアロゲル顆粒(複合粒子1の場合には当該複合粒子1に含まれるエアロゲル顆粒)が添加されるように、KBr粉末と複合粒子1又はエアロゲル顆粒とを乾式混合し、混合粉体を得た。次いで、この混合粉体を、粒子径が50μm以下となるまで粉砕した。そして、粉砕後の混合粉体をプレス成形することにより、密度2g/cm、厚さ200μmの円板試料を作製した。この円板試料をFT−IRによる測定に用いた。
【0079】
図3には、FT−IRによる測定結果を示す。図3において、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過率(%)を示す。そして、図3には、エアロゲル顆粒のみを用いた場合(AG)、及びエアロゲル顆粒に2.5重量部、5.0重量部、10重量部、20重量部又は40重量部の炭化珪素粒子を添加した場合(AG/SiC(2.5)、AG/SiC(5.0)、AG/SiC(10)、AG/SiC(20)、AG/SiC(40))のそれぞれについて得られた結果を示す。
【0080】
また、図4には、図3に示す測定結果に基づき、炭化珪素粒子の添加率(重量部)と波長4μmにおける赤外線透過率(%)との関係を示す。図4において、横軸は、エアロゲル顆粒体100重量部に対する炭化珪素粉末の添加率(SiC添加率)(重量部)を示し、縦軸は、波数2500cm−1(波長λ=4μm)における透過率(%)を示す。なお、上述したウィーンの式によれば、波数2500cm−1(波長λ=4μm)は、450℃での放射におけるピーク波長である。
【0081】
図3及び図4に示すように、エアロゲル顆粒に対する炭化珪素粒子の添加率が増加するにつれて、断熱性粉体材料の赤外線透過率が顕著に低下することが確認された。特に、炭化珪素粒子の添加率が20重量部を超えることにより、断熱性粉体材料の赤外線透過率は、当該炭化珪素粒子を添加しない場合(エアロゲル顆粒のみの場合)の10%以下に低減された。なお、エアロゲル顆粒単独の赤外線透過率は33%であった。
【実施例2】
【0082】
[断熱材の製造]
コア粒子10及び被覆粒子20として、上述の実施例1で使用したものと同じエアロゲル顆粒及び炭化珪素粒子を用いた。そして、エアロゲル顆粒と炭化珪素粒子とを所定の比率で、且つ当該エアロゲル顆粒体の密度が0.1g/cmとなるように乾式混合することにより、当該炭化珪素粒子により被覆された当該エアロゲル顆粒(複合粒子1)からなる断熱性粉体材料を得た。100重量部のエアロゲル顆粒に対する炭化珪素粒子の添加比率は、2.5重量部、5.0重量部、16.7重量部、25.9重量部又は33.3重量部の5種類とした。
【0083】
また、比較のため、炭化珪素粉体を添加しない、エアロゲル顆粒からなる断熱性粉体材料も準備した。なお、乾式混合により得られた、炭化珪素粒子に被覆されたエアロゲル顆粒(すなわち、複合粒子1)は、上述の実施例1と同様、不透明な粒子であった。
【0084】
[熱伝導率の測定]
上述のようにして得られた複合粒子1を含む断熱性粉体材料の熱伝導率を測定した。測定法としては、GHP法を用いた。すなわち、まず、ガラス繊維クロスからなる袋に断熱性粉体材料子を詰め込んだ。そして、断熱性粉体材料を収容したガラス繊維袋を平板で挟み込み、GHP法により熱伝導率を測定した。なお、測定時における断熱性粉体材料の密度は約100kg/mであった。断熱性粉体材料の熱伝導率は、当該断熱性粉体材料を収容したガラス繊維袋の熱伝導率から、予め測定された当該ガラス繊維袋の熱伝導率を差し引くことにより算出した。
【0085】
図5には、熱伝導率の測定結果を示す。図5において、横軸は測定時の温度(℃)を示し、縦軸は熱伝導率(W/(m・K)を示す。そして、図5には、エアロゲル顆粒のみを用いた場合(AG)、及びエアロゲル顆粒に2.5重量部、5.0重量部、16.7重量部、25.9重量部又は33.3重量部の炭化珪素を添加した場合(AG/SiC(2.5)、AG/SiC(5.0)、AG/SiC(16.7)、AG/SiC(25.9)、AG/SiC(33.3))のそれぞれについて得られた結果を示す。
【0086】
図5に示すように、炭化珪素粒子を添加していない断熱性粉体材料(エアロゲル顆粒のみからなる断熱性粉体材料)の熱伝導率は、温度が上昇するにつれて急激に増加した。これに対し、炭化珪素粒子を添加することにより、断熱性粉体材料の熱伝導率は、当該炭化珪素粒子を添加しない場合に比べて低減された。この炭化珪素粒子の添加による熱伝導率の低減効果は、100℃でも確認され、200℃以上で顕著であり、300℃でより顕著であり、400℃で特に顕著であった。
【0087】
ここで、本実施例で使用したエアロゲル顆粒の各粒子の表面全体を1層の炭化珪素粒子で被覆するために必要な当該炭化珪素粒子の添加量は、理論的には5.7重量部と算出された。この点、図5に示すように、炭化珪素粒子の添加量がこの理論量を超えている場合(添加量が16.7重量部以上の場合)には、特に顕著な熱伝導率の低減効果が得られた。特に、炭化珪素粒子の添加量が20重量部を超える場合(添加量が25.9重量部及び33.3重量部の場合)には、極めて顕著な熱伝導率の低減効果が得られた。
【0088】
また、炭化珪素粒子の添加による熱伝導率の低減効果は、当該炭化珪素粒子の添加量が増加するにつれて単調に高まるのではなく、当該炭化珪素粒子の添加量を所定の範囲内(例えば、100重量部のエアロゲル顆粒に対して15〜35重量部)とすることにより、最も高い熱伝導率の低減効果が得られる傾向が確認された。
【符号の説明】
【0089】
1 複合粒子、2 断熱材、10 コア粒子、20 被覆粒子、30 外皮材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が50μm以上であり、25℃における熱伝導率が0.025W/(m・K)以下である第一粒子と、
平均粒子径が0.5〜10μmであり、前記第一粒子を被覆する第二粒子と、
を含む
ことを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
前記第一粒子は、赤外線透過性である
ことを特徴とする請求項1に記載された複合粒子。
【請求項3】
前記第一粒子は、波長4μmにおける赤外線透過率が20%以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された複合粒子。
【請求項4】
前記第一粒子は、エアロゲル顆粒、粉砕顆粒及び中空粒子からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された複合粒子。
【請求項5】
前記第一粒子は、シリカ粒子である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された複合粒子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された複合粒子を含む
ことを特徴とする断熱材。
【請求項7】
100重量部の前記第一粒子に対して、2〜40重量部の前記第二粒子を含む
ことを特徴とする請求項6に記載された断熱材。
【請求項8】
前記複合粒子を収容する外皮材をさらに含む
ことを特徴とする請求項6又は7に記載された断熱材。
【請求項9】
150℃以上の温度で使用される
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載された断熱材。
【請求項10】
平均粒子径が50μm以上であり、25℃における熱伝導率が0.025W/(m・K)以下である第一粒子と、平均粒子径が0.5〜10μmであり、前記第一粒子を被覆する第二粒子と、を乾式混合する
ことを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれかに記載された複合粒子を外皮材に収容する
ことを特徴とする断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6807(P2012−6807A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146242(P2010−146242)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】