説明

複合粒子、樹脂組成物及び接続構造体

【課題】導電性材料又は熱伝導性材料などの用途に用いることができる新規な複合粒子、並びに該複合粒子を用いた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る複合粒子1は、樹脂粒子2と、樹脂粒子2中に埋め込まれており、樹脂粒子2の粒子径の1/2よりも小さい平均粒子径を有する複数の錫ドープ酸化インジウム粒子3とを備える。本発明に係る樹脂組成物は、複合粒子1と、バインダー樹脂とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料又は熱伝導性材料として用いることができる新規な複合粒子、並びに該複合粒子を用いた樹脂組成物及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、及び異方性導電シート等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、ペースト、インク又は樹脂中に導電性粒子が分散されている。上記異方性導電材料は、例えば、ガラス基板及びプリント基板等の基板の電極間を電気的に接続するために用いられている。
【0003】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆している導電層とを有する導電性粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−073681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上記異方性導電材料を含め、様々な用途に用いることが可能な新規な粒子の開発が望まれている。
【0006】
また、従来の金属のみにより形成された金属粒子を含む異方性導電材料、又は特許文献1に記載のような基材粒子の表面を導電層により被覆した導電性粒子を含む異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。このような方法で電極間を電気的に接続可能な新規な粒子を提供することは有用である。また、このような電極間の電気的な接続に用いられる粒子には、透明性が求められることもある。
【0007】
一方で、従来の導電性粒子では、大気中の腐食性ガスによって導電層の腐食が生じることがある。さらに、複数の導電性粒子の衝突などによって、導電層に割れが生じることもある。
【0008】
本発明の目的は、導電性材料又は熱伝導性材料などの用途に用いることができる新規な複合粒子、並びに該複合粒子を用いた樹脂組成物及び接続構造体を提供することである。
【0009】
本発明の限定的な目的は、透明性が求められる透明導電性材料又は透明熱伝導性材料などの用途に用いることができる新規な複合粒子、並びに該複合粒子を用いた樹脂組成物及び接続構造体を提供することである。
【0010】
本発明の他の限定的な目的は、電極間の電気的な接続に用いることができる複合粒子、並びに該複合粒子を用いた樹脂組成物及び接続構造体を提供することである。
【0011】
本発明のさらに限定的な目的は、ITO粒子の腐食が生じ難い複合粒子、並びに該複合粒子を用いた樹脂組成物及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、樹脂粒子と、該樹脂粒子中に埋め込まれており、該樹脂粒子の粒子径の1/2よりも小さい平均粒子径を有する複数の錫ドープ酸化インジウム粒子とを備える、複合粒子が提供される。
【0013】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、複合粒子は透明粒子である。
【0014】
本発明に係る複合粒子の他の特定の局面では、上記樹脂粒子中において、複数の上記錫ドープ酸化インジウム粒子が偏在しており、上記錫ドープ酸化インジウム粒子の存在個数が、上記樹脂粒子の中心側よりも上記樹脂粒子の外表面側の方で多い、複合粒子が提供される。
【0015】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、上記錫ドープ酸化インジウム粒子の全個数のうちの60%以上が、上記樹脂粒子の外表面から上記樹脂粒子の中心までの3/10の距離の外側の領域内に存在する。
【0016】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、上記樹脂粒子中に、上記錫ドープ酸化インジウム粒子が500個以上埋め込まれている。
【0017】
本発明に係る複合粒子の他の特定の局面では、上記錫ドープ酸化インジウム粒子の平均粒子径が、上記樹脂粒子の粒子径の1/5以下である。
【0018】
本発明に係る複合粒子のさらに他の特定の局面では、上記錫ドープ酸化インジウム粒子の平均粒子径が2μm以下である。
【0019】
本発明に係る樹脂組成物は、本発明に従って構成された複合粒子と、バインダー樹脂とを含む。
【0020】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、該樹脂組成物は異方性導電材料である。
【0021】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備えており、該接続部が本発明に従って構成された複合粒子により形成されているか、又は該複合粒子とバインダー樹脂とを含む樹脂組成物により形成されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る複合粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子中に埋め込まれており、該樹脂粒子の粒子径の1/2よりも小さい平均粒子径を有する複数の錫ドープ酸化インジウム粒子とを備えるので、導電性材料又は熱伝導性材料などの用途に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る複合粒子を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る複合粒子を用いた接続構造体を示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0025】
(複合粒子)
図1に、本発明の一実施形態に係る複合粒子を断面図で示す。
【0026】
図1に示すように、複合粒子1は、樹脂粒子2と、樹脂粒子2中に埋め込まれた複数のITO粒子3とを備える。ITO粒子3の平均粒子径は、樹脂粒子2の粒子径の1/2よりも小さい。ITO粒子3は、導電性粒子である。ITO粒子3は、錫ドープ酸化インジウム粒子である。
【0027】
本実施形態の主な特徴は、樹脂粒子2中に複数のITO粒子3が埋め込まれていることである。このような構成の採用によって、複合粒子1の導電性又は熱伝導性を高めることができる。このため、複合粒子1を導電性材料又は熱伝導性材料として用いることができる。
【0028】
また、本実施形態では、樹脂粒子2、ITO粒子3及び複合粒子1はいずれも透明であり、透明粒子である。樹脂粒子は、透明であることが好ましく、透明粒子であることが好ましい。ITO粒子は、一般に透明であり、透明であることが好ましく、透明粒子であることが好ましい。複合粒子は、透明であることが好ましく、透明粒子であることが好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、「透明」とは、樹脂粒子、ITO粒子及び複合粒子に光を照射したときに、光が透過することをいう。本明細書において、「透明」には半透明も含まれる。
【0030】
複合粒子1が透明粒子であると、透明性が求められる用途に好適に用いることができ、透明導電性材料又は透明熱伝導性材料の用途に好適に用いることができる。例えば、タッチパネルに用いられる導電性粒子などとして、複合粒子1を好適に用いることができる。
【0031】
また、本実施形態では、樹脂粒子2中において、複数のITO粒子3は偏在している。ITO粒子3の存在個数は、樹脂粒子2の中心C側よりも樹脂粒子2の外表面2a側の方で多い。但し、本発明に係る複合粒子では、樹脂粒子中において、複数のITO粒子は偏在していなくてもよい。
【0032】
本実施形態の他の特徴は、樹脂粒子2中に複数のITO粒子3が埋め込まれており、しかも樹脂粒子2中において複数のITO粒子3が偏在しており、ITO粒子3の存在個数が、樹脂粒子2の中心C側よりも樹脂粒子2の外表面2a側の方で多いことである。このような構成の採用によって、複合粒子1の外表面1a近傍における導電性及び熱伝導性を高めることができる。このため、複合粒子1を導電性材料又は熱伝導性材料としてより一層好適に用いることができる。
【0033】
また、例えば、電極間に複合粒子1を配置して、電極間で複合粒子1を圧縮した場合に、外表面1a近傍に比較的多く存在するITO粒子3により電気的な接続を果たすことができる。さらに、外表面1a近傍に比較的多く存在するITO粒子3が圧縮前に距離を隔てていても、圧縮時にITO粒子3同士を近づかせて接触させることができる。この結果、複合粒子を介して、電極間を電気的に接続させることができる。
【0034】
また、複合粒子1の中心C部分には、樹脂粒子2の樹脂が比較的多く存在するので、複合粒子1の柔軟性を高めることができる。
【0035】
さらに、基材粒子の表面を導電層で被覆した従来の導電性粒子では、大気中の腐食性ガスによって、導電層の腐食が生じることがある。これに対し、本実施形態に係る複合粒子1では、たとえITO粒子3が上記腐食性ガスにより腐食しやすかったとしても、ITO粒子3が樹脂粒子2中に埋め込まれていることによってITO粒子3と上記腐食性ガスとの接触が妨げられる。このため、ITO粒子3の腐食を防ぐことができる。さらに、基材粒子の表面を導電層で被覆した従来の導電性粒子では、複数の導電性粒子の衝突などにより、導電層の割れが生じることがある。これに対して、本実施形態に係る複合粒子1では、ITO粒子3が樹脂粒子2中に埋め込まれているので、更にITO粒子3は粒子状であるので、導電層の割れが大きな問題とはならない。
【0036】
ITO粒子3の全個数のうちの60%以上が、樹脂粒子2の外表面2aから樹脂粒子2の中心Cまでの3/10の距離の外側の領域内に存在することが好ましい。言い換えれば、樹脂粒子2の外表面2aから樹脂粒子2の中心Cまでの距離をDとしたときに、樹脂粒子2の外表面2aから中心Cに向かって0〜0.3Dの距離の領域内に、ITO粒子3の全個数のうちの60%以上が存在することが好ましい。
【0037】
なお、ITO粒子3が樹脂粒子2の外表面2aから樹脂粒子2の中心Cまでの3/10の距離の外側の領域内に存在か否かは、ITO粒子3の中心を基準として、該ITO粒子3の中心が上記外側の領域内に存在するか否かで判断される。
【0038】
複合粒子1では、複数のITO粒子3は、接触していてもよく、接触していなくてもよい。複数のITO粒子3は、接触しているか、又は複合粒子1が圧縮されたときに、複数のITO粒子3が接触するように樹脂粒子2中に埋め込まれていることが好ましい。少なくとも複合粒子1の粒子径の10%圧縮変位したときに、複数のITO粒子3が接触するように、複数のITO粒子3が樹脂粒子2中に埋め込まれていることが好ましい。2つの電極間で複合粒子1を圧縮したときに、複数のITO粒子3が接触し、電極間が電気的に接続されることが好ましい。
【0039】
樹脂粒子2の外表面2aから樹脂粒子2の中心Cまでの3/10の距離の外側の領域内に存在するITO粒子3の全個数中の割合は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0040】
ITO粒子3の全個数のうちの55%以上が、樹脂粒子2の外表面2aから樹脂粒子2の中心Cまでの1/5の距離の外側の領域内に存在することが好ましい。言い換えれば、樹脂粒子2の外表面2aから樹脂粒子2の中心Cまでの距離をDとしたときに、樹脂粒子2の外表面2aから中心Cに向かって0〜0.2Dの距離の領域内に、ITO粒子3の全個数のうちの55%以上が存在することが好ましい。
【0041】
樹脂粒子2の外表面2aから樹脂粒子2の中心Cまでの1/5の距離の外側の領域内に存在するITO粒子3の全個数中の割合は、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0042】
樹脂粒子の中心側よりも樹脂粒子の外表面側の方でITO粒子の存在個数が多いように、樹脂粒子中においてITO粒子を偏在させる方法としては、マイクロカプセル化方法、並びにヘテロ凝集法等が挙げられる。
【0043】
上記樹脂粒子中に、上記錫ドープ酸化インジウム粒子は、100個以上埋め込まれていることが好ましく、500個以上埋め込まれていることがより好ましい。
【0044】
上記樹脂粒子は、樹脂により形成されている。上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルスルホン等が挙げられる。圧縮により複合粒子を適度に変形させることができるので、上記樹脂粒子は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体により形成されていることが好ましい。
【0045】
上記樹脂粒子の粒子径は、1〜100μmの範囲内であることが好ましい。樹脂粒子の粒子径は、より好ましくは2μm以上、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは5μm以下である。樹脂粒子の粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、複合粒子を導電性材料又は熱伝導性材料としてより一層好適に用いることができ、更に複合粒子を電極間の接続により一層好適に用いることができ、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。樹脂粒子の平均粒子径が100μm以下であると、電極間の間隔を狭くすることができる。
【0046】
上記ITO粒子の平均粒子径は、50μm以下であることが好ましい。上記ITO粒子の平均粒子径は、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは4μm以下、特に好ましくは2μm以下である。上記ITO粒子の粒子径は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.1μm以上である。
【0047】
上記ITO粒子の平均粒子径は、上記樹脂粒子の粒子径の1/3以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましく、1/10以上であることが好ましい。ITO粒子の平均粒子径と樹脂粒子の粒子径とが好ましい上記関係を満たすことで、複合粒子の導電性及び熱伝導性が高くなり、複合粒子の柔軟性が高くなり、更に複合粒子を電極間の接続に用いることができ、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。上記ITO粒子の最大粒子径は、上記樹脂粒子の粒子径の1/2よりも小さいことが好ましい。
【0048】
上記ITO粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。ITO粒子の平均粒子径は、任意のITO粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0049】
図2に、本発明の他の実施形態に係る複合粒子を断面図で示す。
【0050】
図2に示すように、複合粒子11は、樹脂粒子12と、樹脂粒子12中に埋め込まれた複数のITO粒子13とを備える。ITO粒子13の平均粒子径は、樹脂粒子12の粒子径の1/2よりも小さい。複合粒子11では、樹脂粒子12中において、複数のITO粒子13が偏在しておらず、複数のITO粒子13はほぼ全体に均一に存在している。このように、複数のITO粒子は、樹脂粒子中において必ずしも偏在していなくてよい。但し、導電性及び熱伝導性を高める観点からは、複数のITO粒子は樹脂粒子中において偏在していることが好ましい。
【0051】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、上記複合粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る樹脂組成物は、異方性導電材料であることが好ましい。
【0052】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、一般的には絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0054】
上記樹脂組成物は、複合粒子及びバインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤又は難燃剤等の各種添加剤を含有してもよい。さらに、異方性導電材料は、複合粒子以外の導電性粒子を含んでいてもよい。
【0055】
上記バインダー樹脂中に複合粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に複合粒子を分散させる方法としては、例えば、バインダー樹脂中に複合粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、複合粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、バインダー樹脂中へ添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びにバインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、複合粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0056】
本発明に係る樹脂組成物は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。本発明に係る複合粒子を含む異方性導電材料が、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合には、該複合粒子を含むフィルム状の接着剤に、複合粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されてもよい。
【0057】
本発明に係る樹脂組成物における複合粒子の含有量は特に限定されない。熱伝導性、導電性及び導通信頼性を高める観点からは、樹脂組成物100体積%中、複合粒子の含有量は0.01〜20体積%の範囲内であることが好ましい。
【0058】
(接続構造体)
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備える。該接続部が上記複合粒子により形成されているか、又は該複合粒子とバインダー樹脂とを含む樹脂組成物により形成されている。
【0059】
図3は、本発明の一実施形態に係る複合粒子を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0060】
図3に示す接続構造体21は、第1の接続対象部材22と、第2の接続対象部材23と、第1,第2の接続対象部材22,23とを電気的に接続している接続部24とを備える。接続部24は、複合粒子1と、バインダー樹脂25とを含む樹脂組成物により形成されている。なお、図示の便宜上、図3では、複合粒子1は、略図で示されている。
【0061】
第1の接続対象部材22は上面22aに、複数の電極22bを有する。第2の接続対象部材23は下面23aに、複数の電極23bを有する。電極22bと電極23bとが、複合粒子1を介して積層され、電気的に接続されている。本実施形態では、樹脂粒子2中の複数のITO粒子3が接触している。第1,第2の接続対象部材は、電気的接続対象部材であることが好ましい。
【0062】
第1,第2の接続対象部材22,23として、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0063】
接続構造体21の製造方法は特に限定されない。接続構造体21の製造方法の一例として、第1の接続対象部材22と第2の接続対象部材23との間に、上記樹脂組成物を配置して、積層体を得た後、該積層体を加熱し、加圧する方法が挙げられる。この加圧により複合粒子1が圧縮させて、複合粒子1において樹脂粒子2中に埋め込まれた複数のITO粒子3を接触させることができる。
【0064】
上記積層体を加熱する際の温度は、120〜220℃程度である。上記積層体を加圧する際の圧力は9.8×10〜4.9×10Pa程度である。
【0065】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0066】
(実施例1)
図1に示す複合粒子を作製した。
【0067】
錫ドープ酸化インジウムにより形成された複数のITO粒子(平均粒子径1μm、透明粒子)を用意した。
【0068】
3重量%ポリビニルアルコール水溶液800重量部に、表面処理したITO粒子5重量部と、ジビニルベンゼン100重量部と、過酸化ベンゾイル2重量部とを加え、ホモジナイザーにて撹拌して粒度調整を行った。その後、撹拌しながら窒素気流下にて80℃まで昇温して15時間反応を行い、複合粒子を得た。得られた複合粒子を熱イオン交換水及びメタノールにて洗浄した後、分級操作を行うことにより透明粒子である複合粒子を得た。得られた複合粒子における樹脂粒子の平均粒子径は10μmであった。また、得られた複合粒子において、樹脂粒子中にITO粒子は、樹脂粒子1個当たり平均で500個以上埋め込まれていた。
【0069】
(参考例1)
ITO粒子を表面処理した銅粉(平均粒子径0.5μm、銅粒子)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。また、得られた複合粒子において、樹脂粒子中に銅粒子は、樹脂粒子1個当たり平均3,500個以上埋め込まれていた。
【0070】
(評価)
(1)ITO粒子又は銅粒子の存在状態
ITO粒子又は銅粒子の全個数のうち、樹脂粒子の外表面から樹脂粒子の中心までの3/10の距離の外側の領域(0〜0.3D)内に存在するITO粒子又は銅粒子の個数割合を数えた。
【0071】
また、ITO粒子又は銅粒子の全個数のうち、樹脂粒子の外表面から樹脂粒子の中心までの1/5の距離の外側の領域(0〜0.2D)内に存在するITO粒子又は銅粒子の個数の割合を数えた。
【0072】
(2)接続抵抗
接続構造体の作製:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1009」)10重量部と、アクリルゴム(重量平均分子量約80万)40重量部と、メチルエチルケトン200重量部と、マイクロカプセル型硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「HX3941HP」)50重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニングシリコーン社製「SH6040」)2重量部とを混合し、得られた複合粒子を含有量が3体積%となるように添加し、分散させ、樹脂組成物を得た。
【0073】
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
【0074】
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)が設けられたガラス基板(幅3cm、長さ3cm)のアルミニウム電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じアルミニウム電極が設けられた2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。なお、ポリイミドフィルムにアルミニウム電極が直接形成されている2層フレキシブルプリント基板を用いた。
【0075】
接続抵抗:
上記接続構造体の作製で得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。接続抵抗を下記の判定基準で判定した。
【0076】
〔接続抵抗の判定基準〕
○:接続抵抗が2.0Ω以下
×:接続抵抗が2.0Ωを超える
【0077】
結果を下記の表1に示す。
【0078】
【表1】

【符号の説明】
【0079】
1…複合粒子
1a…外表面
2…樹脂粒子
2a…外表面
3…ITO粒子
11…複合粒子
12…樹脂粒子
13…ITO粒子
21…接続構造体
22…第1の接続対象部材
22a…上面
22b…電極
23…第2の接続対象部材
23a…下面
23b…電極
24…接続部
25…バインダー樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子と、
前記樹脂粒子中に埋め込まれており、前記樹脂粒子の粒子径の1/2よりも小さい平均粒子径を有する複数の錫ドープ酸化インジウム粒子とを備える、複合粒子。
【請求項2】
透明粒子である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記樹脂粒子中において、複数の前記錫ドープ酸化インジウム粒子が偏在しており、
前記錫ドープ酸化インジウム粒子の存在個数が、前記樹脂粒子の中心側よりも前記樹脂粒子の外表面側の方で多い、請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記錫ドープ酸化インジウム粒子の全個数のうちの60%以上が、前記樹脂粒子の外表面から前記樹脂粒子の中心までの3/10の距離の外側の領域内に存在する、請求項3に記載の複合粒子。
【請求項5】
前記樹脂粒子中に、前記錫ドープ酸化インジウム粒子が500個以上埋め込まれている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項6】
前記錫ドープ酸化インジウム粒子の平均粒子径が、前記樹脂粒子の粒子径の1/5以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記錫ドープ酸化インジウム粒子の平均粒子径が2μm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合粒子と、バインダー樹脂とを含む、樹脂組成物。
【請求項9】
異方性導電材料である、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合粒子により形成されているか、又は該複合粒子とバインダー樹脂とを含む樹脂組成物により形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−216294(P2012−216294A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78971(P2011−78971)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】