説明

複合粒子およびその製造方法

【課題】 無機粒子が重合体粒子の表面に強固に付着してなる複合粒子、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体を調製した後、前記水溶性高分子を不溶化させて、前記重合体粒子の表面に前記無機粒子を付着させることによって、重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子の表面に無機粒子が付着してなる、複合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子を高機能化する手段の一つとして、母粒子の表面に子粒子を付着させた複合粒子が提案されている。例えば、母粒子および子粒子として、重合体粒子および無機粒子を用いることによって、有機化合物としての特性および無機粒子としての特性の双方を有する高機能粒子が得られる。
【0003】
重合体粒子と無機粒子とを複合化することによって、安定性、耐熱性、難燃性、耐薬品性、電気伝導性などの各種特性が向上するが、上記特性を安定して発現させるためには、一度付着した子粒子が、脱落しにくいことが好ましい。
【0004】
子粒子を母粒子の表面に強固に付着させる手段として、例えば特許文献1には、静電的相互作用を用いて付着強度を確保する方法が開示されている。具体的には、帯電した母粒子と、反対に帯電した子粒子とを混合することによって、母粒子の表面を子粒子で被覆する。しかしながら、剪断力が加わる条件下においては、母粒子の表面に付着した子粒子が脱落しやすい。
【0005】
また、特許文献2には、重合体粒子の表面にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのカップリング剤を介して無機粒子を化学的に付着させ、その後、有機ケイ素化合物または有機金属化合物を重縮合させる方法が開示されている。しかしながら、有機ケイ素化合物や有機金属化合物などといった高価な材料を用いると、複合粒子の製造コストが上昇してしまう。
【特許文献1】特公平6−40951号公報
【特許文献2】特開2001−152133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、無機粒子が重合体粒子の表面に強固に付着してなる複合粒子を製造する方法を提供することである。また、本発明の目的は、無機粒子が重合体粒子の表面に強固に付着してなる複合粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子の製造方法であって、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体を調製する段階と、前記水溶性高分子を不溶化させて、前記重合体粒子の表面に前記無機粒子を付着させる段階とを含む、複合粒子の製造方法である。
【0008】
また本発明は、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子であって、前記無機粒子は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール変性物とアルデヒド化合物との反応生成物によって、前記重合体粒子表面に付着している、複合粒子である。
【0009】
また本発明は、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子であって、下記式1で算出される無機粒子の固着率が20%以上であり、
【0010】
【数1】

【0011】
(式中、Aは、複合粒子を10質量%含む懸濁液を、直径92mmの容器の内部において、羽根サイズが直径40mmである撹拌羽根を用いて、前記撹拌羽根の先端周速度が5.2m/sの条件で3分間撹拌して、重合体粒子の表面から無機粒子を脱落させた後における、重合体粒子に付着してなる無機粒子の複合粒子に対する質量比(質量%)であり、Bは、重合体粒子の表面から無機粒子を脱落させる前における、重合体粒子に付着してなる無機粒子の複合粒子に対する質量比(質量%)である。)
前記質量比Bが1質量%以上である、複合粒子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る複合粒子は、無機粒子が重合体粒子に強固に付着している。このため、各種用途に適用された場合に、複合粒子の特性が安定して発現する。また、本発明の製造方法は、比較的簡便であり、複合粒子を製造する際の作業性を向上させ、コストを削減する上でも有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1は、重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子の製造方法であって、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体を調製する段階と、前記水溶性高分子を不溶化させて、前記重合体粒子の表面に前記無機粒子を付着させる段階とを含む、複合粒子の製造方法である。
【0014】
まず、原料として用いられる、重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子について説明する。
【0015】
重合体粒子は、複合粒子において母粒子として機能する粒子である。本発明の重合体粒子は、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる。二重結合を有する重合性単量体の種類については、重合後に形成された重合体粒子が、母粒子として使用可能な限り、特に限定されない。
【0016】
二重結合を有する重合性単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルトルエン(メチルスチレン)、クロルスチレン、ビニルベンジルアルキルエーテル、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンタジエニル、アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル、アクリル酸トリシクロデシル、アクリル酸トリシクロデシロキシエチル、アクリル酸トリシクロデシロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸フェニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジオクチルアクリルアミド、N−モノブチルアクリルアミド、N−モノオクチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロニトリル、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、アミノメチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニル、メタクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸トリシクロデシロキシエチル、メタクリル酸トリシクロデシロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジブチルメタクリルアミド、N,N−ジオクチルメタクリルアミド、N−モノブチルメタクリルアミド、N−モノオクチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、メタクリロニトリル、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノメチルメタクリレート、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸などが挙げられる。ただし、これらに限定されるわけではない。また、2種以上の重合性単量体を使用して、共重合体からなる母粒子を使用してもよい。必要に応じて、重合体は架橋されてもよい。
【0017】
複合粒子を製造する際にどの重合体粒子を使用するかは、複合粒子の使用用途に応じて決定されるとよい。つまり、複合粒子に求められる特性に応じて、所望する特性が得られやすい重合体粒子を選択するとよい。子粒子の選択に関しても同様である。
【0018】
重合体粒子の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜100μmの範囲内であり、より好ましくは0.5〜80μmの範囲内であり、さらに好ましくは1〜30μmの範囲内である。重合体粒子の平均粒径は、単量体の配合量、単量体の種類、重合開始剤の配合量、重合条件、重合後に得られる固形物の粉砕などの様々なファクターを用いて制御可能である。重合体の平均分子量や分子量分布は、特に限定されない。該重合体粒子の合成方法に制限はない。乳化重合、ソープフリー重合、懸濁重合、分散重合は、容易に粒子を合成する方法として好ましい。
【0019】
無機粒子は、複合粒子において子粒子として機能する粒子である。無機粒子は、炭化水素成分以外の成分からなる粒子であり、子粒子として母粒子に付着可能であれば、特に限定されない。
【0020】
無機粒子の具体例としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、マイカ、アルミナ、セリア、酸化亜鉛、酸化鉄、窒化珪素、炭化珪素などが挙げられる。金、銀、銅、鉄、アルミニウムなどの金属粒子、炭酸カルシウム、蓚酸カルシウム、硫酸バリウムなどの塩が用いられてもよい。2種以上の無機粒子が併用されてもよい。また、無機粒子は、2種以上の材料からなる複合材料であってもよい。
【0021】
無機粒子の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは母粒子として用いられる重合体粒子の平均粒径の0.2〜0.00002倍であることが好ましい。具体的には、無機粒子の平均粒径は、好ましくは0.001〜2μmの範囲内であり、より好ましくは0.001〜1μmの範囲内であり、さらに好ましくは0.005〜0.2μmの範囲内であり、特に好ましくは0.01〜0.2μmの範囲内である。
【0022】
無機粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、板状、鱗片状、棒状、繊維状、房状等の無機粒子が用いられる。また、場合によっては、無機粒子に加えて、他の粒子が子粒子として併用されてもよい。
【0023】
本発明においては、複合粒子を製造する際に、水溶性高分子が用いられる。水溶性高分子とは、水に溶ける高分子を意味する。水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール変性物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ゼラチン、アラビアゴム、寒天、カラジーナン、ペクチン、デンプン、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。ポリビニルアルコール変性物とは、ポリビニルアルコールを他の化合物で変性して得られる化合物を意味し、例えば、ポリビニルアルコールのシラノール変性物、ポリビニルアルコールのエポキシ変性物、ポリビニルアルコールのアセトアセチル変性物、ポリビニルアルコールのアミノ変性物、ポリビニルアルコールのアンモニウム変性物、ポリビニルアルコールのスルホン酸変性物、ポリビニルアルコールのカルボン酸変性物などが挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法は、複合粒子を製造する際に、母粒子として作用する重合体粒子、および子粒子として作用する無機粒子に加えて、水溶性高分子を含む液体を準備する。そして、水溶性高分子を不溶化することによって、無機粒子を重合体粒子の表面に付着させる。このようなプロセスを採用することによって、比較的簡便に、無機粒子を重合体粒子に強固に付着させることできる点が、本発明の特徴の1つである。
【0025】
水溶性高分子の不溶化に必要な処理は、水溶性高分子の化学構造に応じて異なるが、水酸基を有する水溶性高分子は、アルデヒド化合物と反応させることによって、比較的容易に不溶化する。したがって、不溶化処理のしやすさを考慮すると、水溶性高分子は、水酸基を有する高分子であることが好ましい。水酸基を有する高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール変性物、ゼラチン、アラビアゴム、寒天、カラジーナン、デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。水酸基の含有量に関しては特に限定されないが、水酸基とアルデヒド化合物との反応による不溶化を効率的に進行させるには、水酸基が、水溶性高分子の繰り返し単位中に含有されていることが好ましい。
【0026】
重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体を調製する際に、どのような手順でこれらの材料を配合するかについては、特に限定されない。例えば、重合体粒子、無機粒子、水溶性高分子を、それぞれ別に準備し、これらを水中で混合して、これらの材料を含む液体を得る。水溶性高分子の存在下で二重結合を有する重合性単量体を重合して重合体粒子を作製し、重合時に用いられた水溶性高分子をそのまま用いても良い。水溶性高分子の存在下で重合を進行させた場合、無機粒子の重合体粒子への付着量が多くなる傾向がある。つまり、得られた複合粒子における無機粒子の付着度合いを示す被覆率を、高めることができる。重合時に用いられた水溶性高分子の利用形態としては、水溶性高分子および重合体粒子を含む重合反応液に、無機粒子を添加する形態が挙げられる。重合時に用いられた水溶性高分子の他の利用形態としては、作製された重合体粒子を濾別し、濾別された重合体粒子の表面に残存する水溶性高分子が利用される形態であってもよい。
【0027】
重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体における溶媒としては、特に限定されないが、水が用いられる。必要に応じて、アルコールなどの他成分が配合されてもよい。
【0028】
重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子の配合量については、特に限定されない。重合体粒子と無機粒子との配合比は、複合粒子の用途や各粒子の大きさを考慮して決定されればよい。水溶性高分子の配合量についても特に限定されないが、通常は、粒子に対して0.1〜10質量%程度配合される。
【0029】
重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体を調製した後、液体中の水溶性高分子を不溶化させる。不溶化処理の方法は、水溶性高分子の種類によって異なる。水溶性高分子として水酸基を有する高分子が用いられた場合には、水酸基を有する高分子をアルデヒド化合物と反応させることによって、水溶性高分子の不溶化が可能である。
【0030】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、酢酸アルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒドなどが挙げられる。これら以外のアルデヒド化合物が用いられてもよい。
【0031】
アルデヒド化合物の使用量は、水溶性高分子の種類および配合量に応じて調整され、無機粒子の重合体粒子への付着が充分に進行する程度の量であれば、特に限定されない。通常は、水酸基数に対して0.1〜2倍量のアルデヒド化合物が使用される。
【0032】
アルデヒド化合物の配合方法については、特に限定されない。アルデヒド化合物の水溶液を用いて、アルデヒド化合物を添加してもよい。可能であれば、重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体中にアルデヒド化合物の前駆体を配合し、アルデヒド化合物の生成反応を進行させてもよい。
【0033】
水溶性高分子を不溶化させた後は、必要に応じて、反応系を加熱保持して、複合粒子の生成を進行させる。生成した複合粒子は、反応液から取り出される。複合粒子を反応液から取り出す方法としては、濾別する方法や、遠心分離機等の分離機を用いる方法が挙げられる。
【0034】
反応液から取り出した後の複合粒子は、必要に応じて洗浄、乾燥される。乾燥後に、複合粒子の特性向上を目的として、加熱処理を施してもよい。必要に応じて、さらに、所望する粒度になるように、粉砕器を用いて粉砕処理を施してもよい。
【0035】
無機粒子の重合体粒子への付着形態は、無機粒子および重合体粒子の配合量や、無機粒子および重合体粒子の物性によって影響される。付着形態は特に限定されないが、例えば、重合体粒子の表面に、無機粒子が膜状に配置している態様や、重合体粒子の表面のところどころに、無機粒子が付着している態様が挙げられる。
【0036】
本発明の第2は、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子であって、前記無機粒子は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール変性物とアルデヒド化合物との反応生成物によって、前記重合体粒子表面に付着している、複合粒子である。
【0037】
重合体粒子は、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる。重合性単量体の具体例や、重合体粒子の粒径などについては、本発明の第1について説明したため、ここでは説明を省略する。無機粒子についても、本発明の第1について説明したため、ここでは説明を省略する。
【0038】
無機粒子は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール変性物とアルデヒド化合物との反応生成物によって、重合体粒子の表面に付着する。つまり、本発明の第1において説明したように、水溶性高分子であるポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール変性物を、アルデヒド化合物を用いて不溶化させ、この際に生成する反応生成物によって、無機粒子を重合体粒子の表面に付着する。本発明の第2の無機粒子は、このような処理によって重合体粒子の表面に付着してなる。アルデヒド化合物の種類や水溶性高分子の不溶化法については、本発明の第1に準ずるため、ここでは説明を省略する。
【0039】
本発明の第3は、二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子であって、下記式1で算出される無機粒子の固着率が20%以上であり、前記質量比Bが1質量%以上である、複合粒子である。
【0040】
【数2】

【0041】
式中、Aは、複合粒子を10質量%含む懸濁液を、直径92mmの容器の内部において、羽根サイズが直径40mmである撹拌羽根を用いて、前記撹拌羽根の先端周速度が5.2m/sの条件で3分間撹拌して、重合体粒子の表面から無機粒子を脱落させた後における、重合体粒子に付着してなる無機粒子の複合粒子に対する質量比(質量%)である。簡単に説明すると、Aは、剪断力を付与した後に、依然として重合体粒子の表面に付着している無機粒子の、複合粒子に対する質量比である。本願においてAは、「剪断力付与後の無機粒子付着率」とも記載する。Bは、重合体粒子の表面から無機粒子を脱落させる前における、重合体粒子に付着してなる無機粒子の複合粒子に対する質量比(質量%)である。本願においてBは、「剪断力付与前の無機粒子付着率」とも記載する。
【0042】
固着率が高いことは、無機粒子が重合体粒子の表面から脱落しにくいことを意味する。固着率は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子であって、高い固着率を有している粒子は、無機粒子が重合体粒子表面から脱落しにくく、特性が安定して発現するため、各種用途において、非常に有用である。
【0043】
また、剪断力付与前の無機粒子付着率Bが高いことは、重合体粒子の表面に、より多くの無機粒子が付着していることを示す。無機粒子付着率Bが高いほど、無機粒子に起因して発現する複合粒子の特性が高まる。剪断力付与前の無機粒子付着率Bは、1質量%以上であり、好ましくは1.2質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上である。
【0044】
本発明における固着率は、後述する測定方法によって算出される数値である。固着率の算出方法の概要を説明すると、固着率は、複合粒子に剪断力を付与して、付着強度の低い無機粒子を脱落させ、剪断力を付与した後も重合体粒子の表面に付着している無機粒子の質量を測定し、剪断力付与前の無機粒子付着率(B)に対する剪断力付与後の無機粒子付着率(A)の割合として、算出される。なお、以下の説明に従って測定された固着率が、測定装置や測定方法によって異なる値となる場合には、実施例で採用した測定装置および測定方法によって決定される値を、本願における固着率とする。
【0045】
以下、固着率の測定方法について、詳細に説明する。
【0046】
まず、固着率を測定される複合粒子を準備する。複合粒子は、測定に先立ち、メンブランフィルターで濾過し、重合体粒子に付着していないフリーの無機粒子を除去しておくとよい。メンブランフィルターは、固着率を測定する複合粒子の平均粒径や分布を考慮した上で、目的とする複合粒子が分離可能なメンブランフィルターを選択すればよい。
【0047】
次に、この状態、即ち、複合粒子に剪断力を加えて重合体粒子の表面から無機粒子を脱落させる前における、剪断力付与前の無機粒子付着率(B)を測定する。剪断力付与前の無機粒子付着率(B)は、複合粒子の質量に対する比(質量%)として算出される。剪断力付与前の無機粒子付着率(B)は、熱処理法を用いて測定可能である。
【0048】
熱処理法の一実施態様について説明する。まず、空気雰囲気下、複合粒子を700℃にまで加熱して1時間保持することによって、複合粒子を燃焼させる。そして、残存した灰分の質量から、複合粒子表面に付着していた無機粒子の質量を算出する。その質量から、剪断力付与前の無機粒子付着率(B)を算出する。ただし、統計的に信頼できる測定方法によって、剪断力付与前の無機粒子付着率(B)を算出できるのであれば、他の方法が用いられてもよい。
【0049】
剪断力付与前の無機粒子付着率(B)を求めるのに用いた複合粒子と同じ複合粒子を含む懸濁液に、剪断力を付与し、付着強度の低い無機粒子を、重合体粒子の表面から脱落させる。剪断力を付与する際の、処理条件は、以下の通りである。
【0050】
剪断力を付与する際に使用される懸濁液における複合粒子の固形分濃度は、懸濁液の質量に対して10質量%である。例えば、225gのイオン交換水に25gの複合粒子を投入する。懸濁液は、直径92mmの容器において、剪断力が付与される。例えば、直径92mmの500mLビーカーが用いられる。剪断力付与に際しては、羽根サイズが直径40mmの撹拌羽根が用いられる。ここでいう直径とは、撹拌羽根を回転させた際における、回転半径の2倍値を意味する。例えば、幅40mmの板状の撹拌羽根を備えたディスパーが用いられる。撹拌羽根は、容器の底面から羽根の最下端までの高さが10mmになるように設置する。撹拌時の温度は、例えば室温(25℃程度)である。
【0051】
撹拌羽根を先端周速度が5.2m/sとなる速度で、3分間撹拌させて、懸濁液に剪断力を加える。このようにして剪断力を付与することによって、付着強度の低い無機粒子は、重合体粒子の表面から脱落する。攪拌羽根の先端周速度は、下記式2により求められる。
【0052】
【数3】

【0053】
撹拌羽根の羽根サイズが40mm、先端周速度が5.2m/sである場合には、撹拌回転数は約2500rpmである。
【0054】
剪断力を付与して、付着強度の低い無機粒子を脱落させた後、重合体粒子に付着している無機粒子の、複合粒子の質量に対する質量比として算出される、剪断力付与後の無機粒子付着率(A)を算出する。剪断力付与後の無機粒子付着率(A)は、剪断力付与前の無機粒子付着率(B)と同様、熱処理法によって算出可能である。
【0055】
熱処理法により剪断力付与後の無機粒子付着率(A)を算出する一実施態様について説明する。まず、剪断力を付与し終えた懸濁液を濾別して、複合粒子を得て、複合粒子を十分に水洗する。その後、80℃で6時間乾燥させる。乾燥後、固形物を粉砕器を用いて解砕する。空気雰囲気下、複合粒子を700℃にまで加熱して1時間保持することによって、複合粒子を燃焼させる。そして、残存した灰分の質量から、複合粒子表面に付着していた無機粒子の質量を算出する。その質量から、剪断力付与後の無機粒子付着率(A)を算出する。ただし、統計的に信頼できる測定方法によって、剪断力付与後の無機粒子付着率(A)を算出できるのであれば、他の方法が用いられてもよい。例えば、遠心分離法を用いて剪断力付与後の無機粒子付着率(A)を算出することも可能である。
【0056】
算出された剪断力付与後の無機粒子付着率(A)、および剪断力付与前の無機粒子付着率(B)から、式1に基づき固着率が算出される。
【実施例】
【0057】
<実施例1>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた3000mLの四つ口フラスコに、イオン交換水1200g、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノールN−08」)3.2gを添加・溶解させた。次に、二重結合を有する重合性単量体としてスチレン320g、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、商品名「ナイパーBW」、水25%含有)を加えた。分散機(回転数:5000rpm)を用いてフラスコの内容物を分散させ、75℃で2時間加熱し、さらに90℃で2時間加熱して、スチレンの重合反応を進行させた。得られた固形物を濾別し、十分に水洗した。重合体粒子の平均粒径を粒度分布測定装置(コールター・カウンター、マルチサイザーII型(Beckman Coulter,Inc)を用いて測定した結果、平均粒径は8.9μmであった。
【0058】
次に、得られた重合体粒子を、イオン交換水1200gおよび水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA:株式会社クラレ製、商品名「クラレポバールPVA−205」)4gが添加された四つ口フラスコに分散させて、均一な分散液とした。その後、無機粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名「スノーテックスZL」、固形分40%)40gを添加し、重合体粒子(ポリスチレン:PS)、無機粒子(コロイダルシリカ)、および水溶性高分子(ポリビニルアルコール)を含む液体を得た。
【0059】
この液体に、10%硫酸水溶液10g、およびアルデヒド化合物としてグルタルアルデヒド溶液36gを添加し、さらに80℃で2時間加熱した。得られた固形分を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器で解砕し、ポリスチレン粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる複合粒子300gを得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、3.8質量%であった。得られた複合粒子における無機粒子の付着度合いを示す被覆率を、以下の式より算出したところ、58.0%であった。結果を表1に示す。
【0060】
【数4】

【0061】
上記式において、rは無機粒子半径、nは無機粒子数、Rは重合体粒子半径、Nは重合体粒子数である。
【0062】
<実施例2>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた3000mLの四つ口フラスコに、イオン交換水1200g、水溶性重合体としてポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名「クラレポバールPVA−205」)4gを添加・溶解させた。なお、ポリビニルアルコールは、重合反応における分散剤としても作用する。次に、二重結合を有する重合性単量体としてスチレン320g、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、商品名「ナイパーBW」、水25%含有)9.6gを加えた。分散機(回転数:7000rpm)を用いてフラスコの内容物を分散させ、75℃で2時間加熱し、さらに90℃で2時間加熱して、スチレンの重合反応を進行させた。無機粒子添加前の重合体粒子の平均粒径を粒度分布測定装置(コールター・カウンター、マルチサイザーII型(Beckman Coulter,Inc)を用いて測定した結果、平均粒径は9.8μmであった。
【0063】
その後、無機粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名「スノーテックスZL」、固形分40%)40gを添加して、重合体粒子(ポリスチレン:PS)、無機粒子(コロイダルシリカ)、および水溶性高分子(PVA:ポリビニルアルコール)を含む液体を得た。
【0064】
この液体に、10%硫酸水溶液10g、およびアルデヒド化合物としてグルタルアルデヒド溶液36gを添加し、さらに90℃で1時間加熱した。得られた固形物を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器で解砕し、ポリスチレン粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる複合粒子300gを得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、3.3質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は69.0%であった。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例3>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた3000mLの四つ口フラスコに、イオン交換水1200g、水溶性重合体としてポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名「クラレポバールPVA−205」)4gを添加・溶解させた。なお、ポリビニルアルコールは、重合反応における分散剤としても作用する。次に、二重結合を有する重合性単量体としてスチレン320g、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、商品名「ナイパーBW」、水25%含有)9.6gを加えた。分散機(回転数:7000rpm)を用いてフラスコの内容物を分散させ、無機粒子として酸化アルミニウム粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名「酸化アルミニウムC」)16gを添加した後、75℃で2時間加熱し、さらに90℃で2時間加熱して重合反応を進行させた。これにより、重合体粒子(ポリスチレン:PS)、無機粒子(酸化アルミニウム)、および水溶性高分子(PVA:ポリビニルアルコール)を含む液体を得た。重合体粒子の平均粒径を、実施例1で用いた粒度分布測定装置で測定した結果、平均粒径は9.8μmであった。
【0066】
この液体に、10%硫酸水溶液10g、およびアルデヒド化合物としてグルタルアルデヒド溶液7.5gを添加し、さらに90℃で1時間加熱した。得られた固形物を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器で解砕し、ポリスチレン粒子の表面に酸化アルミニウム粒子が付着してなる複合粒子300gを得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、1.3質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は76.0%であった。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例4>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた3000mLの四つ口フラスコに、イオン交換水1200g、水溶性重合体としてポリビニルアルコール変性品(株式会社クラレ製、商品名「KL−506」)8gを添加・溶解させた。なお、ポリビニルアルコール変性品は、重合反応における分散剤としても作用する。次に、二重結合を有する重合性単量体としてスチレン320g、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、商品名「ナイパーBW」、水25%含有)9.6gを加えた。分散機(回転数:7000rpm)を用いてフラスコの内容物を分散させ、75℃で2時間加熱し、さらに90℃で2時間加熱して、スチレンの重合反応を進行させた。重合体粒子の平均粒径を、実施例1で用いた粒度分布測定装置で測定した結果、平均粒径は8.6μmであった。
【0068】
その後、無機粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名「スノーテックスZL」、固形分40%)60gを添加して、重合体粒子(ポリスチレン:PS)、無機粒子(コロイダルシリカ)、および水溶性高分子(PVA:ポリビニルアルコール)を含む液体を得た。
【0069】
この溶液に、10%硫酸水溶液10g、およびアルデヒド化合物としてホルムアルデヒド溶液7.5gを添加し、さらに90℃1時間加熱した。得られた固形物を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器を用いて解砕し、ポリスチレン粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる複合粒子300gを得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、4.7質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は70.3%であった。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例5>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた3000mLの四つ口フラスコに、イオン交換水1200g、水溶性重合体としてポリビニルアルコール変性品(株式会社クラレ製、商品名「KM−118」)8gを添加・溶解させた。なお、ポリビニルアルコール変性品は、重合反応における分散剤としても作用する。次に、二重結合を有する重合性単量体としてスチレン320g、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、商品名「ナイパーBW」、水25%含有)9.6gを加えた。分散機(回転数:7000rpm)を用いてフラスコの内容物を分散させ、75℃で2時間加熱し、さらに90℃で2時間加熱して、スチレンの重合反応を進行させた。重合体粒子の平均粒径を、実施例1で用いた粒度分布測定装置で測定した結果、平均粒径は11.4μmであった。得られた固形物を濾別し、水分を含有した重合粒子ケーキ440g(湿潤度33%)を得た。この重合粒子ケーキの表面には、水溶性重合体であるポリビニルアルコールが残存していた。
【0071】
重合体粒子ケーキを水1000mLに分散させ、無機粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名「スノーテックスZL」、固形分40%)40gを添加して、重合体粒子(ポリスチレン:PS)、無機粒子(コロイダルシリカ)、および水溶性高分子(PVA:ポリビニルアルコール)を含む液体を得た。
【0072】
この溶液に、10%硫酸水溶液10g、およびアルデヒド化合物としてグルタルアルデヒド溶液36gを添加し、さらに90℃で1時間加熱、撹拌した。得られた固形物を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器で解砕し、ポリスチレン粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる複合粒子300gを得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、4.2質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は83.2%であった。結果を表1に示す。
【0073】
<比較例1>
グルタルアルデヒド溶液を添加しない以外は、実施例1と同様の操作により、複合粒子を得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、0.5質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は7.4%であった。結果を表1に示す。
【0074】
<比較例2>
グルタルアルデヒド溶液を添加しない以外は、実施例2と同様の操作により、複合粒子を得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、0.4質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は6.5%であった。結果を表1に示す。
【0075】
<比較例3>
グルタルアルデヒド溶液を添加しない以外は、実施例3と同様の操作により、複合粒子を得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、0.3質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は17.0%であった。結果を表1に示す。
【0076】
<比較例4>
ホルムアルデヒド溶液を添加しない以外は、実施例4と同様の操作により、複合粒子を得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、0.7質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は10.0%であった。結果を表1に示す。
【0077】
<比較例5>
グルタルアルデヒド溶液を添加しない以外は、実施例5と同様の操作により、複合粒子を得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、0.6質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は11.5%であった。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すように、重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む溶液を調製し、この溶液にアルデヒド化合物を加える製法を用いることによって、無機粒子を効率的に重合体粒子に付着させることが可能である。また、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子や、グルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物は、比較的安価な材料である。つまり、本発明の製法を用いることによって、簡便かつ低コストで、複合粒子を製造することが可能である。
【0080】
水溶性高分子を投入するタイミングについては、実施例1〜5に示したように特に限定されない。実施例1のように、重合体粒子を別途作製し、これに、水溶性高分子および無機粒子を混合してもよい。実施例2〜4のように、水溶性高分子の存在下で重合体粒子を合成し、重合後の溶液中に含まれる水溶性高分子が利用されてもよい。実施例5のように、水溶性高分子の存在下で重合体粒子を合成し、濾別された重合体粒子の表面に残存する水溶性高分子が利用されてもよい。これら以外の手順を採用することも勿論可能である。
【0081】
<実施例6>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた3000mLの四つ口フラスコに、イオン交換水1200g、および水溶性高分子としてポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名「クラレポバールPVA−205」)4gを添加・溶解させた。次に、二重結合を有する重合性単量体としてスチレン320g、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、商品名「ナイパーBW」、水25%含有)9.6gからなる混合物を加えた。分散機(回転数:7000rpm)を用いてフラスコの内容物を分散させ、75℃で2時間加熱し、さらに90℃で2時間加熱して、スチレンの重合反応を進行させた。無機粒子添加前の重合体粒子の平均粒径を粒度分布測定装置(コールター・カウンター、マルチサイザーII型(Beckman Coulter,Inc)を用いて測定した結果、平均粒径は9.8μmであった。
【0082】
その後、無機粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名「スノーテックスZL」、固形分40%)40gを添加して、重合体粒子(ポリスチレン)、無機粒子(コロイダルシリカ)、および水溶性高分子(PVA:ポリビニルアルコール)を含む液体を得た。
【0083】
この液体に、10%硫酸水溶液10g、およびアルデヒド化合物としてグルタルアルデヒド溶液36gを添加し、さらに90℃で1時間加熱した。得られた固形物を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器で解砕し、ポリスチレンの表面にシリカが付着してなる複合粒子300gを得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、3.3質量%であった。
【0084】
製造した複合粒子の固着率を、以下の手順により評価した。
【0085】
500mLのビーカー(直径(φ)92mm)に得られた複合粒子25gとイオン交換水225gを入れた。羽根サイズが直径(φ)40mmである撹拌羽根を備えた高速ディスパーを、ビーカーの底面から羽根の最下端までの高さが10mmになるように設置し、回転速度2500rpmで3分間撹拌し、剪断力を付与した。このようにして剪断力を付与することによって、付着強度の低い無機粒子を、重合体粒子から脱落させた。
【0086】
撹拌時の条件をまとめると、複合粒子の懸濁液中の濃度が10質量%、容器の直径が92mm、羽根サイズが40mm、撹拌羽根の先端周速度が5.2m/s、撹拌時間が3分間である。
【0087】
脱落処理を行った複合粒子を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器を用いて解砕した。複合粒子の剪断力付与後の無機粒子付着率Aを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、1.4質量%であった。これらの結果から固着率を算出したところ、42%であった。結果を表2に示す。
【0088】
<実施例7>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた3000mLの四つ口フラスコに、イオン交換水1200g、水溶性重合体としてポリビニルアルコール変性品(株式会社クラレ製、商品名「C506」)4gとポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名「クラレポバールPVA−205」)4gを添加・溶解させた。なお、ポリビニルアルコールおよびその変性品は、重合反応における分散剤としても作用する。次に、二重結合を有する重合体単量体としてスチレン320g、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、商品名「ナイパーBW」、水25%含有)9.6gを加えた。分散機(回転数:7000rpm)を用いてフラスコの内容物を分散させ、75℃で2時間加熱し、さらに90℃で2時間加熱して、スチレンの重合反応を進行させた。重合体粒子の平均粒径を、実施例1で用いた粒度分布測定装置で測定した結果、平均粒径は7.8μmであった。得られた固形物を濾別し、水分を含有した重合粒子ケーキ440g(湿潤度33%)を得た。この重合粒子ケーキの表面には、水溶性重合体であるポリビニルアルコールが残存していた。
【0089】
重合体粒子ケーキを水1000mLに分散させ、無機粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名「スノーテックスZL」、固形分40%)80gを添加して、重合体粒子(ポリスチレン:PS)、無機粒子(コロイダルシリカ)、および水溶性高分子(PVA:ポリビニルアルコール)を含む液体を得た。
【0090】
この溶液に、10%硫酸水溶液10g、およびアルデヒド化合物としてグルタルアルデヒド溶液36gを添加し、さらに90℃で1時間加熱、撹拌した。得られた固形分を濾別し、十分に水洗した後、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、固形物を小型粉砕器で解砕し、ポリスチレン粒子の表面にシリカ粒子が付着した複合粒子300gを得た。得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bを、熱重量分析により、複合粒子を700℃まで加熱して複合粒子を燃焼させた際の灰分の質量から求めたところ、6.8質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は94.1%であった。
【0091】
実施例6と同一の手順により、剪断力付与後の無機粒子付着率Aを求めたところ、2.3質量%であった。これらの結果から固着率を算出したところ、34%であった。結果を表2に示す。
【0092】
<比較例6>
グルタルアルデヒド溶液を添加しない以外は、実施例6と同様の操作により、複合粒子を得た。実施例6と同一の手順により、得られた複合粒子の剪断力付与前の無機粒子付着率Bおよび剪断力付与後の無機粒子付着率Aを求めたところ、それぞれ0.4質量%および0.3質量%であった。また、得られた複合粒子の被覆率は6.5%であった。これらの結果から固着率を算出したところ、75%であった。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表2に示すように、本発明の製法を用いることによって、これまでの複合粒子と比較して非常に固着率の高い複合粒子が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の複合粒子は、例えば、塗料用艶消し剤、光拡散剤、レオロジーコントロール剤、カラム充填剤、IC用充填剤、フィルム用コーティング剤、ワックス用添加剤、抗体、導電性粒子、化粧品、トナー用粒子、トナー用添加剤等として利用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子の製造方法であって、
二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、無機粒子、および水溶性高分子を含む液体を調製する段階と、
前記水溶性高分子を不溶化させて、前記重合体粒子の表面に前記無機粒子を付着させる段階と、
を含む、複合粒子の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性高分子は水酸基を有する高分子であり、前記水溶性高分子をアルデヒド化合物と反応させることによって、前記水溶性高分子を不溶化させる、請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項3】
前記重合体粒子は、前記水溶性高分子の存在下において重合されてなる、請求項1または2に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項4】
二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子であって、
前記無機粒子は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール変性物とアルデヒド化合物との反応生成物によって、前記重合体粒子表面に付着している、複合粒子。
【請求項5】
二重結合を有する重合性単量体を重合して得られる重合体粒子、および前記重合体粒子の表面に付着してなる無機粒子からなる複合粒子であって、
下記式1で算出される無機粒子の固着率が20%以上であり、
【数1】

(式中、Aは、複合粒子を10質量%含む懸濁液を、直径92mmの容器の内部において、羽根サイズが直径40mmである撹拌羽根を用いて、前記撹拌羽根の先端周速度が5.2m/sの条件で3分間撹拌して、重合体粒子の表面から無機粒子を脱落させた後における、重合体粒子に付着してなる無機粒子の複合粒子に対する質量比(質量%)であり、Bは、重合体粒子の表面から無機粒子を脱落させる前における、重合体粒子に付着してなる無機粒子の複合粒子に対する質量比(質量%)である。)
前記質量比Bが1質量%以上である、複合粒子。

【公開番号】特開2006−52332(P2006−52332A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235241(P2004−235241)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】