説明

複合粒子および硬化性組成物

【課題】重合収縮を低減することができる複合粒子および硬化性組成物を提供する。
【解決手段】粒子表面2aに、高分子鎖3がグラフト結合され、高分子鎖3が、2種類のモノマーを共重合させたコポリマーを有し、2種類のモノマーは、当該複合粒子1が分散される重合性モノマーに対する親和性が異なるものであり、高分子鎖3のモノマー組成は、該高分子鎖3の粒子表面2aに結合している基端部側では、前記重合性モノマーに対する親和性の低いモノマーのブロック4とし、前記高分子鎖3の先端部側では、親和性の高いモノマーのブロック5としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子およびそれを含む硬化性組成物に関し、更に詳しくは、例えば、医科歯科用コンポジットレジンや接着剤等の硬化性組成物およびその充填材として使用される複合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
医科歯科分野で骨や歯牙の欠損を修復するため金属補綴物や合成樹脂成型物などが用いられている。それらの生体硬組織への接着には、重合性モノマーを含有する接着剤が多用されている。また、歯科分野では、所謂コンポジットレジンと呼ばれる硬化性組成物が日々臨床にて使用されている。これは未硬化体(重合前)ペーストを、歯牙等の欠損部位に充填した後に光照射等の外的エネルギーを付与することで重合硬化体を得る。
【0003】
一般的にこれらの接着剤やコンポジットレジンには、メチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが使用されている。これら(メタ)アクリル酸誘導体モノマー等のビニルモノマーのラジカル重合は、炭素‐炭素の二重結合が解裂し単結合になることで高分子体を形成し硬化する。ここで、この様に液体モノマーが高分子体(固体)に相変化することで密度が上昇し重合収縮を示す。例えばメチルメタクリレートは、約3%の体積収縮(重合収縮)を示すことで知られている。
【0004】
一般工業における有機ガラス等の製造では、この重合収縮を予め推測した後に形成するので問題はない。たとえ複雑な構造のため予想外の収縮を来たしたとしても事後修整が可能であるために大きな問題とはならない。
【0005】
しかし、医科歯科分野においては、生体が対象であるためにその様な事後修整は困難である。従って可能な限り硬化前後の寸法変化が無い事が要求される。特に歯科分野では、咀嚼や熱膨張収縮等による外的刺激が日常的に最終修復物に加わるため、生体硬組織との重合収縮による間隙は可能な限り少ない事が望ましい。即ち二次う蝕予防の観点からも歯牙と一体化することが望ましい。
【0006】
この重合収縮の問題を解決するために、従来から数々の提案がなされてきた(例えば、特許文献1〜5)。例えば、無機または有機充填材を多量に添加する事で見かけ上の重合収縮を低減させる方法や、添加する充填材の結晶系転移膨張を利用し重合収縮を低減させる方法などがある。しかし、これらは何れも根本的な解決にはなっておらず劇的な重合収縮低減には至っていない。即ち高充填率にすればするほど重合収縮は低下するものの、最終的にはペーストとして臨床にて使用しなければならないために自ずと充填率には限界が存在する。
【0007】
また、充填材の結晶系転移膨張を利用し重合収縮を低減させる方法に至っては、転移のための超音波等外部エネルギーが必須となるために臨床的に煩雑である。すなわち重合による収縮発生開始と同期して相転移を起こさせなければならない等の問題を抱えており、事実上応用困難である。
【0008】
この重合収縮の問題を解決するために、より立体障害の高い末端ビニル系ラジカル重合性モノマーの合成も行われている。しかし、これらのモノマーは、バルキー且つ高分子量であるためにアクリル当量は減少するものの、その立体障害性のため反応性に劣るという欠点が存在する。また、これらの多くのモノマー類は、屈折率が高いため従来の充填材と共存した場合には不透明性を与える。さらに、これらのモノマー類は一般的に高い粘性を有するのでコンポジットレジン等を調製するには希釈用低粘性モノマーが必要となりその重合収縮効果は薄れる。
【0009】
この様なビニルモノマー類によるラジカル重合硬化を利用したコンポジットレジンには、低収縮に対し限界があるとし、新たな重合形態が提案されている。即ちエポキシ環の開環反応をカチオン的に行う反応である。これらの反応は確かに重合収縮の点ではビニルモノマー類によるラジカル重合硬化に比べて有効である。しかし従来使用されてきたメチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに比べて生体安全性に対して疑問が生じる。この問題を解決するために生物学的安全性試験の実施など多くの課題が新たに生じており、地球的規模の環境面からも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−254626
【特許文献2】特開2010−83794
【特許文献3】特開2009−179596
【特許文献4】特開2007−186538
【特許文献5】特開2005−89312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、ビニルモノマー類によるラジカル重合硬化を利用したコンポジットレジン等の硬化性組成物では、低収縮に対して限界がある一方、重合収縮の点ではビニルモノマー類によるラジカル重合硬化に比べて優れているエポキシ環の開環反応をカチオン的に行う新たな重合形態では、生物学的安全性試験が新たに必要になるなどの課題がある。
【0012】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、重合収縮を改善できる複合粒子およびそれを含む硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本件発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、重合硬化する硬化性組成物に充填される充填材としての粒子に着目し、充填材によって重合収縮を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の複合粒子は、粒子の表面に、高分子鎖が結合された複合粒子であって、前記高分子鎖が、少なくとも2種類のモノマーを共重合させたコポリマーを有し、前記少なくとも2種類のモノマーは、当該複合粒子が分散される重合性モノマーに対する親和性が異なるものであり、
前記高分子鎖のモノマー組成は、該高分子鎖の前記粒子の表面に結合している基端部側では、前記重合性モノマーに対する親和性の低いモノマーが前記親和性の高いモノマーに比べて高く、前記高分子鎖の先端部側では、前記親和性の高いモノマーが前記親和性の低いモノマーに比べて高くなっている。
【0015】
前記重合性モノマーは、ラジカル重合性モノマーであるのが好ましく、前記高分子鎖の前記先端部側の前記親和性の高いモノマーからなるコポリマーには、重合性基および疎水結合性基の少なくともいずれか一方が結合しているのが好ましい。
【0016】
この重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アリル基などが挙げられ、また、疎水結合性基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェニル基誘導体などのアリール基が挙げられる。
【0017】
前記ラジカル重合性モノマーは、ビニルモノマーであるのが好ましく、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アリル基を有する化合物であるのがより好ましい。
【0018】
前記コポリマーは、ブロックコポリマーまたはグラジェントコポリマーであるのが好ましい。
【0019】
前記粒子は、二酸化珪素、酸化アルミニウム、および、フルオロアルミノシリケートガラスのうちの少なくとも1種であるのが好ましい。
【0020】
本発明の複合粒子によると、粒子の表面に高分子鎖が結合され、前記高分子鎖が、少なくとも2種類のモノマーを共重合させたコポリマーを有し、高分子鎖のモノマー組成を、高分子鎖の前記粒子の表面に結合している基端部側では、当該複合粒子が分散される重合性モノマーに対する親和性の低いモノマーが高く、高分子鎖の先端部側では、前記親和性の高いモノマーが高くなっているので、当該複合粒子を重合性モノマーに分散させたときには、親和性の低いモノマーの組成比が高い高分子鎖の基端部側は、重合性モノマーが貧溶媒となって、安定化のために高分子鎖が収縮したランダムコイル状態をとる一方、親和性の高いモノマーの組成比が高い高分子鎖の先端部側は、重合性モノマーが親溶媒となって、高分子鎖が伸びた状態となる。
【0021】
そして、重合性モノマーの重合時には、伸びた状態の高分子鎖の先端部側は、該先端部側の前記親和性の高いモノマーからなるコポリマーに結合している重合性基や疎水結合性基によって、隣接する粒子側へ引っ張られ、ランダムコイル状に収縮した高分子鎖の基端部側が伸びることになり、これによって、重合収縮の緩衝機能が発現し、重合収縮を補って低収縮化を図ることができる。
【0022】
また、ビニルモノマー、特に生物学的安全性の確認されたメチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーのラジカル重合時の重合収縮の改善に有効である。
【0023】
本発明の硬化性組成物は、本発明に係る複合粒子および前記重合性モノマーを含んでいる。
【0024】
本発明の硬化性組成物は、医科、歯科用に用いられるのが好ましい。
【0025】
本発明の硬化性組成物によると、医科歯科分野において、生物学的安全性の確認されたメチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマー等を用いたレジン修復材料等として使用することによって、その重合収縮を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、複合粒子が重合性モノマーに分散されたときには、粒子表面に結合された高分子鎖が部分的に収縮した状態をとり、重合時には、この収縮した状態の部分が伸びて重合収縮の緩衝機能が発現し、重合収縮を補って低収縮化を図ることができる。
【0027】
これによって、生物学的安全性の確認されたメチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーなどの重合性モノマーの重合時の重合収縮を改善することができ、例えば、医科歯科分野におけるレジン修復材料などに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の概念を説明するために、複合粒子の一例をイメージ的に示す図である。
【図2】図2は複合粒子の他の例をイメージ的に示す図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の複合粒子及びその製造方法について詳細に説明する。
【0030】
本発明の複合粒子は、粒子の表面に、高分子鎖が結合されたものであって、前記高分子鎖が、少なくとも2種類のモノマーを共重合させたコポリマーを有している。
【0031】
前記少なくとも2種類のモノマーは、当該複合粒子が分散される重合性モノマーに対する親和性が異なるものであって、高分子鎖のモノマー組成は、前記高分子鎖の粒子の表面に結合している基端部側では、前記重合性モノマーに対する親和性の低いモノマーが前記親和性の高いモノマーに比べて高く、高分子鎖の先端部側では、前記親和性の高いモノマーが前記親和性の低いモノマーに比べて高くなっている。
【0032】
ここで、本発明の理解を容易にするために、その基本的な概念を、図1に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本発明を理解し易いように、スケールを無視して複合粒子の一例をイメージ的に示したものであり、図1(a)は、複合粒子を重合性モノマーに分散させた重合前(硬化前)の状態を、図1(b)は、その重合後(硬化後)の状態をそれぞれ示している。
【0034】
この図1の例では、複合粒子1は、粒子2の表面2aに高分子鎖3がグラフト結合されており、この高分子鎖3は、2種類のモノマーを共重合させたブロックコポリマーから構成されている。
【0035】
2種類のモノマーは、複合粒子1が分散される重合性モノマーに対する親和性が異なっている。高分子鎖3は、粒子表面2aに結合している基端部側が、重合性モノマーに対する親和性が低い(非親和性)モノマーのブロック4からなり、粒子表面2から離れた先端部側が、重合性モノマーに対する親和性が高い(親和性)モノマーのブロック5からなる。すなわち、粒子2の表面2aから極性の異なる二極性ブロックコポリマーが伸びている。
【0036】
このような複合粒子1を重合性モノマーに分散させると、高分子鎖3の粒子表面2aに近い基端部側の非親和性のブロック4では、重合性モノマーが貧溶媒となって安定化のために収縮したランダムコイル状態をとる一方、粒子表面2aから離れた先端部側の親和性のブロック5では、重合性モノマーが親溶媒となって、伸びた状態となる。
【0037】
ここで、例えば、コンポジットレジンを想定して説明すると、コンポジットレジン中の重合性モノマーである、メチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが溶媒の役割を果たし、充填材である二酸化珪素等の粒子の表面の第一段階目に、メチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが貧溶媒になる様な高分子(非親和性のブロック4)が結合され、第二段階目に、メチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが親溶媒になる様な高分子(親和性のブロック5)をグラフト結合させたものである。
【0038】
次に、重合性モノマーの重合時には、図1(b)に示すように、粒子表面2aから離れた先端部側の親和性のブロック5は、それに結合している図示しない重合性基および疎水結合性基の少なくともいずれか一方によって、隣接する粒子側へ引っ張られ、それに応じて粒子表面2aに近いランダムコイル状に収縮した非親和性のブロック4が伸びることになり、これによって、重合収縮の緩衝機能が発現し、重合収縮を補って低収縮化を図ることができる。
【0039】
再び、コンポジットレジンを想定して説明すると、コンポジットレジン中のメチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに対して親和性の劣る高分子セグメントが、重合収縮発現時に伸びることで応力緩和を発生する。すなわち、複合粒子は、重合性基および/または疏水結合性基を有するセグメントを、高分子鎖の外郭部位である先端部側に有し、これらのセグメントはコンポジットレジン中のメチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに対して親和性を有する様に設計されているために、溶解した状態である。これに対して、高分子鎖の内郭部位である基端部側のセグメントは、コンポジットレジン中のメチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに対して親和性が劣る様に設計されているために、伸びきらずランダムコイル状に収縮した構造を示す。この部位がコンポジットレジンの重合時に伸びることで緩衝機能を発現させ、重合収縮を補うものである。
【0040】
このように本発明の複合粒子は、重合収縮を充填材からのアプローチで克服した画期的な素材である。
【0041】
因みに、従来の充填材の表面処理では、末端にメタクリロイル基等のラジカル重合性基を有し、他方にはシラノール基と反応可能な例えばメトキシ基を有したシランカップリング剤を反応させていた。これらの官能基は、基本的にプロピル基などで結合されているために全体的には同極性であり分子鎖は、コンポジットレジンのモノマーに対して伸びきった状態であり重合収縮を補填する機能は有していない。
【0042】
本発明の高分子鎖3は、ブロックコポリマーに限らず、図2に示すように、粒子2の表面2aに結合した基端部側は、非親和性のモノマーの比率が高く、表面2から離れて先端部側へ向かうにつれて、その比率が徐々に低くなるグラジェントコポリマーなどであってもよい。すなわち、図1のように、第一段階および第二段階と完全に区切ったブロックポリマーを粒子に結合させるのではなく、段階的にグラフト重合させるモノマーの比率を操作することで、例えば、コンポジットレジン中のメチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに対して段階的に親和性を付与した高分子をグラフトしてもよい。この場合、コンポジットレジンのモノマー相に対して完全に伸びきった状態および/またはランダムコイル状態をとらず、段階的にモノマーに対して伸びた構造を与えることが可能となる。
【0043】
また、本発明の複合粒子の高分子鎖は、2種類のモノマーを共重合させたコポリマーに限らず、3種類以上のモノマーを共重合させたコポリマーから構成されてもよく、高分子鎖の基端部側が、先端部側に比べて非親和性のモノマーの比率が高くなっておればよい。
【0044】
以下、本発明の構成を更に詳細に説明する。
【0045】
本発明の粒子としては、例えば、二酸化珪素、酸化アルミニウム、フルオロアルミノシリケートガラスの内の少なくとも1種類が選択される。ここで、フルオロアルミノシリケートガラスとしては、例えば、二酸化珪素15.0〜35.0wt%,酸化アルミニウム15.0〜35.0wt%,酸化ホウ素0〜20.0wt%,五酸化燐5.0〜10.0wt%,酸化カルシウム0〜10wt%,X線造影性元素酸化物0〜50.0wt%,アルカリ金属酸化物1.0〜10.0wt%,フッ素5.0〜15wt%を含む組成からなるのが好ましい。
【0046】
また、粒子のサイズとしては、好ましくは0.01μm〜100μm、より好ましくは0.1μm〜50μm、さらに好ましくは1μm〜10μmである。また、粒子の形態は球状であっても破砕状であっても差し支えないが、最終的なハンドリング特性を考慮すると、球状が好ましい。
【0047】
粒子の表面に結合されるグラフトポリマーは、少なくとも2種類以上のモノマーから選択される。
【0048】
この少なくとも2種以上のモノマーは、当該複合粒子が分散される重合性モノマー、好ましくはラジカル重合性モノマーの種類に応じて取捨選択する。
【0049】
例えば、医科歯科材料のコンポジットレジン等の硬化性組成物に、当該複合粒子を充填材として使用する場合を想定すると、前記コンポジットレジン等に使用されるラジカル重合性モノマーの種類に応じて取捨選択することになる。
【0050】
本発明の2種以上のモノマーとしては、例えば、次のようなモノマーを挙げることができる。
【0051】
すなわち、メタクリル酸2-アミノエチル 塩酸塩、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチルメタクリラート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル、Butyl methacrylate、tert-ブチルメタクリラート、9H-カルバゾール-9-エチルメタクリラート、3-Chloro-2-hydroxypropyl methacrylate、メタクリル酸シクロヘキシル、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、2-Ethoxyethyl methacrylate、Ethylene glycol dicyclopentenyl ether methacrylate、エチレングリコールメチルエーテルメタクリラート、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリラート、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、Furfuryl methacrylate、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリコシルオキシエチル、Hexyl methacrylate、Hydroxybutyl methacrylate、、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、2-Hydroxypropyl 2-(methacryloyloxy)ethyl phthalate、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-イソシアナトエチル、Isodecyl methacrylate、Lauryl methacrylate、メタクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、2-Methacryloyloxyethyl phosphorylcholine、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムメチルスルファート、メタクリル酸メチル、2-(Methylthio)ethyl methacrylate、mono-2-(Methacryloyloxy)ethyl maleate、mono-2-(Methacryloyloxy)ethyl succinate、メタクリル酸2-N-モルホリノエチル、Pentabromophenyl methacrylate、フェニルメタクリラート、リン酸メタクリル酸2-ヒドロキシエチルエステル、Poly(ethylene glycol) behenyl ether methacrylate、Poly(ethylene glycol) 2,4,6-tris(1-phenylethyl)phenyl ether methacrylate、Poly(propylene glycol) methacrylate、ポリエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、メタクリル酸ステアリル、3-スルホプロピルメタクリラート カリウム塩、TEMPO methacrylate、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、2,4,6-トリブロモフェニルメタクリラート、3-(Trichlorosilyl)propyl methacrylate、メタクリル酸トリエチレングリコールメチルエーテル、2-[(1',1',1'-トリフルオロ-2'-(トリフルオロメチル)-2'-ヒドロキシ)プロピル]-3-ノルボルニルメタクリラート、、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート、3,3,5-Trimethylcyclohexyl methacrylate、(トリメチルシリル)メタクリラート、2-(トリメチルシリルオキシ)エチルメタクリラート、トリフェニルメチルメタクリラート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリラート、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、アクリロイルクロリド、4-アクリロイルモルホリン、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-(4-Benzoyl-3-hydroxyphenoxy)ethyl acrylate、Benzyl 2-propylacrylate、アクリル酸ブチル、アクリル酸tert-ブチル、2-[[(Butylamino)carbonyl]oxy]ethyl acrylate、tert-Butyl 2-bromoacrylate、4-tert-Butylcyclohexyl acrylate、アクリル酸2-カルボキシエチル、2-Carboxyethyl acrylate oligomers anhydrous、2-Chloroethyl acrylate、、2-(Diethylamino)ethyl acrylate、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリラート、Di(ethylene glycol) 2-ethylhexyl ether、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、3-(Dimethylamino)propyl acrylate、ペンタ-/ヘキサ-アクリル酸ジペンタエリスリトール、アクリル酸エチル、2-Ethylacryloyl chloride、2-(ブロモメチル)アクリル酸エチル、エチルcis-(β-シアノ)アクリラート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルアクリラート、エチレングリコールメチルエーテルアクリラート、Ethyl 2-ethylacrylate、、アクリル酸]2-エチルヘキシル、Ethyl 2-propylacrylate、Ethyl 2-(trimethylsilylmethyl)acrylate、Hexyl acrylate、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリラート、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソブチル、イソデシルアクリラート、イソオクチルアクリラート、ラウリルアクリラート、2-アセトアミドアクリル酸メチル、アクリル酸メチル、Methyl α-bromoacrylate、メチル 2-(ブロモメチル)アクリラート、Methyl 3-hydroxy-2-methylenebutyrate、Neopentyl glycol methyl ether propoxylate、オクタデシルアクリラート、Pentabromobenzyl acrylate、Pentabromophenyl acrylate、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリラート、ポリ(プロピレングリコール)アクリラート、3-スルホプロピルアクリラート カリウム塩、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリラート、3,5,5-トリメチルヘキシルアクリラート、2-Acrylamidoglycolic acid monohydrate、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、2-Acrylamido-2-methyl-1-propanesulfonic acid sodium salt、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、N-Acryloylamido-ethoxyethanol、3-Acryloylamino-1-propanol、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-tert-Butylacrylamide、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N-ジフェニルメチルアクリルアミド、N,N'-ヘキサメチレンビス(メタクリルアミド)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N-(トリフェニルメチル)メタクリルアミド、N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]acrylamide、アクリル酸、2-Bromoacrylic acid、2-(ブロモメチル)アクリル酸、2-エチルアクリル酸、メタクリル酸、2-Propylacrylic acid、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、アクリロニトリル、1-Cyanovinyl acetate、2-シアノアクリル酸エチル、メタクリロニトリル、4-アセトキシスチレン、4-Benzhydrylstyrene、4-Benzyloxy-3-methoxystyrene、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、α-ブロモスチレン、4-tert-ブトキシスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,6-Difluorostyrene、3,4-ジメトキシスチレン、2,4-Dimethylstyrene、2,5-Dimethylstyrene、N,N-Dimethylvinylbenzylamine、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、4-(ジフェニルホスフィノ)スチレン、4-Ethoxystyrene、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2-イソプロペニルアニリン、3-Isopropenyl-α,α-dimethylbenzyl isocyanate、4-[N-(Methylaminoethyl)aminomethyl]styrene、メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、3-ニトロスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、スチレン、2-(Trifluoromethyl)styrene、3-(Trifluoromethyl)styrene、4-(トリフルオロメチル)スチレン、2,4,6-Trimethylstyrene、3-ビニルアニリン、4-ビニルアニリン、4-ビニルアニソール、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸、ビニルベンジルクロリド、4-ビニルベンジルクロリド、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、4-ビニルビフェニル、2-ビニルナフタレン、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、Vinyl 4-tert-butylbenzoate、クロロギ酸ビニル、Vinyl cinnamate、Vinyl decanoate、Vinyl neodecanoate、Vinyl neononanoate、ピバル酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、、ビニルトリフルオロアセタート、1,4-ブタンジオールビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、Di(ethylene glycol) vinyl ether、Diethyl vinyl orthoformate、エチレングリコールビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサン、4-ビニル-1-シクロヘキセン、4-ビニル-1-シクロヘキセン、ビニルシクロペンタン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、N-ビニルホルムアミド、1-ビニルナフタレン、、2-ビニルナフタレン、ビニルホスホン酸、N-ビニルフタルイミド、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニル-2-ピロリジノン、ビニルスルホン酸 ナトリウム塩、ビニルトリメチルシランの中から適宜選択される。
【0052】
これらのグラフト重合されるモノマーは、最終的な製品に使用されるコンポジットレジンや即時重合レジン等の硬化性組成物に含まれる重合性モノマーにより適宜選択される。すなわち、一般則として、化合物構造が似ているものは相溶性が増加すると言うことがモノマー選択条件になる。例えば、コンポジットレジンにBis‐フェノールA‐グリシジルメタアクリレートを多く含む組成では特徴的な官能基としてフェニル基が存在するために、親和性の高いグラフトモノマーとしては、例えばスチレン等が選択される。これに対して、非親和性のグラフトモノマーとしてフェニル基の極性を考慮した場合、例えば(ポリ)エチレングリコールモノメタアクリレート等が選択される。
【0053】
また、無機粒子にグラフトされるポリマーの質量平均分子量は、好ましくは1000〜1000000であり、より好ましくは5000〜500000であり、さらに好ましくは10000〜100000である。
【0054】
また、コンポジットレジン中のメチル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートやBis-GMA等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに親和性のあるブロック部のグラフト鎖の繰り返し単位中の割合は、特に限定されないが、好ましくは5〜95%であり、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは40%〜60%である。
【0055】
本発明の複合粒子の製造方法としては、リビングラジカル重合、すなわち原子移動ラジカル重合法(ATRP)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合法(RAFT)、およびニトロキシドを介するリビングラジカル重合としてNitroxide-Mediated radical Polymerization(NMP)等が挙げられる。また、イオン重合法としては、カチオン重合法やアニオン重合法が挙げられる。
【0056】
以下、リビングラジカル重合法による複合粒子の製造方法について説明するが、本発明は、粒子に重合収縮の応力緩衝を有する高分子をグラフトした応力緩衝効果が特徴であるので、以下詳細に説明するポリマーの導入方法であるリビングラジカル重合法に何ら限定されるものでない。
【0057】
原子移動ラジカル重合法(ATRP)を使用して複合粒子の製造を行う場合には、まず重合開始剤の選択が重要となる。単なるアルキルハライドではハロゲンとアルキル基の結合が安定であり、重合開始剤効率が悪く分子量の制御が困難である。すなわち、重合開始剤に使用される炭素原子に結合したハライドはモノマーに付加したハライド(モノマードーマント種)よりも弱い結合を有していなければならない。従って共役系の構造を持つ重合開始剤が必要となる。また、その重合開始剤末端には、シランカップリング能を有するメトキシシランやエトキシシラン等のシランアルコラートが結合している事が必要である。この重合開始剤として、3-(trimethoxysilyl)propyl 2-chloro-2-phenylacetate等が挙げられる。
【0058】
また、ハロゲンをモノマーから受け渡し安定種であるドーマント種から活性種にする等の役割を担う酸化還元触媒の選択も重要な要因となる。
【0059】
この酸化還元触媒として、例えば、ジクロロ(トリストリフェニルフォスフィン)ルテニウム、(テトラキストリストリフェニルフォスフィン)ルテニウムジヒドリド、クロロインデニル(ビストリストリフェニルフォスフィン)ルテニウム、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(ビストリストリフェニルフォスフィン)ルテニウム、ジクロロ(ビストリフェニルフォスフィン)アイロン、ジブロモ(ビストリフェニルフォスフィン)アイロン、ジブロモ(ビストリフェニルフォスフィン)ニッケル、ジブロモビストリブチルフォスフィンニッケル、ヨード(ビストリフェニルフォスフィン)レニウムオキシド等が挙げられる。
【0060】
さらに、重合を効率よく進行させ、且つポリマー分散度を制御するためにアミン化合物の添加も有用である。例えば、トリブチルアミン、ジブチルアミン、モノブチルアミン等が好適であり、使用するモノマーの活性に応じて適宜選択される。
【0061】
重合溶媒としては、モノマーは勿論の事、生成するポリマーを溶解するものでなくてはならない。例えば、グリシジル(メタ)アクリレートモノマーはトルエンに良く溶解するが、グリシジル(メタ)アクリレートポリマーは溶解しない。この場合にはグリシジル(メタ)アクリレートモノマーおよびそのポリマーを良く溶解するアニソール等が選択される。よって、選択される溶媒はグラフトするポリマーによって取捨選択される。
【0062】
次に、より具体的に本発明に係る複合粒子の原子移動リビングラジカル重合を用いた製造方法を説明する。なお、本原子移動リビングラジカル重合は、無機粒子にポリマーを導入する数多くの中の手法の一つであり、何らこの方法に限定されない。
【0063】
まず、無機粒子に3-(trimethoxysilyl)propyl 2-chloro-2-phenylacetate等の共役系ハライド末端重合開始剤をカップリング処理する。または、先に3-(trimethoxysilyl)propan-1-olを無機粒子にカップリングした後に、2-chloro-2-phenylacetic acidを例えばDCCにて縮合しても良いし、より反応性の高い2-chloro-2-phenylacetyl chlorideを反応させても良い。これらの重合開始剤は、ハライドと炭素との結合が弱いほど重合開始剤効率が高いため理想的である。すなわち、1重合開始剤で高分子が1本生成し、理論的には質量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1になる。
【0064】
しかしながら、必ずしも(Mw/Mn)が1になる必要はなく、例えば非共役系の(3-chloropropyl)trimethoxysilane等のアルキルハライドでもよい。
【0065】
次に、上述した重合開始剤がカップリングされた無機粒子およびChloro(indenyl)bis(triphenylphosphine)-ruthenium(II)等の酸化還元触媒を攪拌子を備えたシュレンク管反応容器に充填し、十分に真空脱気とアルゴン置換を繰り返す。次に重合するモノマーに適切な重合溶媒および適宜重合助触媒となるトリブチルアミン等のアルキルアミンを加える。最後に第一段階目で重合するモノマーを加え、加熱することで重合を開始する。
【0066】
第二段階目の重合は第一段階目のモノマー転化率が約90%になった時点でモノマー添加を行う事が好ましい。何故ならば、転化率がそれ以上に進むと系内で反応するモノマーの全体量が低下し、成長末端どうしの結合による停止反応が生じる確率が高まるためである。第二段階目のモノマーに例えばグリシジル(メタ)アクリレート等の反応性モノマーを選択した場合には、その後、例えば(メタ)アクリル酸等を反応させる事で重合性基をグラフトポリマーに導入する事が可能となる。この様な手順で無機粒子に応力緩衝性のポリマーをグラフトする事が可能となる。
【0067】
また、グラジエントポリマーをグラフトする場合には、第一段階目のモノマーと第二段階目のモノマーの混合液の比率を除々に変化させ、幾度にも分けながら添加する事で傾斜的にポリマー中のモノマー比率を増減させる事が可能となる。または、一般的にアクリレート系モノマーとメタアクリレート系のモノマーの重合反応性は後者の方が高いために、グラジエントする第一段階目モノマー種をメタアクリレート系にし、第二段階目モノマー種をアクリレート系にすれば、モノマー添加を幾度にも分けて添加する必要がなくなり、自ずとグラジエントポリマーを生成する。すなわち、1回のモノマー添加による重合操作でグラジエントポリマーを合成する事が可能となる。
【0068】
本発明の複合粒子は、種々の硬化性組成物の充填材に用いることができ、例えば、医科歯科用材料としては、コンポジットレジンや即時重合レジンおよびレジンモディファイドグラスアイオノマーセメント等が考えれれるが、その組成中には、硬化のためのエチレン性不飽和基を含むラジカル硬化性モノマーを必須成分として含有している。これらのエチレン性不飽和重合性化合物は、一つ又は一つより多くのオレフィン性二重結合を含み得る。それらは低分子(モノマー状)又は高分子(オリゴマー状)化合物であってよい。一つの二重結合を含むモノマーの代表的な例は、アルキル又はヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、例えばメチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル及び2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、並びにメチル及びエチルメタクリレートである。一つよりも多くの二重結合を含むモノマーの例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、4,4′−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジビニルエーテル等である。特に好ましいモノマーは代表的にはアルキル−若しくはヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、スチレン、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート又はビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、4,4′−ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート又はテトラアクリレート、好ましくはアクリレート、スチレン、ヘキサメチレングリコール又はビスフェノールAジアクリレート、4,4′−ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパン又はトリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0069】
光重合開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)メチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−i−プロピルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−n−プロピルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、 ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(1−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−n−ペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−n−ヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(2−エチル−ヘキシ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−n−オクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペント−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−n−デシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(4−メチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)メチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)エチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−i−プロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−n−プロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペント−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−(1−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)シクロヘキシルホフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−n−ペンチルホフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−n−ヘキシルホフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−(2−エチル−ヘキシ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−n−オクチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−(2,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−n−オクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)メチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)エチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−i−プロピルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−n−プロピルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−(1−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−n−ペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−n−ヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−(2−エチル−ヘキシ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−n−オクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペント−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)−n−デシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリエチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペント−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−(1−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−n−ペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−n−ヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−(2−エチル−ヘキシ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)−n−オクチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−(1−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−n−ペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−n−ヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−(2−エチル−ヘキシ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−n−オクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペント−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)−n−デシルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−n−ブチルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−n−プロピルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−n−プロピルベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−(1−メチル−プロプ−1−イル)ベンゾイル)−n−オクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−(1−メチル−プロプ−1−イル)ベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−(2−メチル−プロプ−1−イル)ベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペント−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−(2−メチル−プロプ−1−イル)ベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチル−4−n−ブチルベンゾイル)−(2−メチル−プロプ−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチル−4−n−ブチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(2,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチル−4−n−ブチルベンゾイル)−(2,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、カンファーキノン/アルキルアミン混合物等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
先ず、各実施例に共通である粒子表面へ重合開始剤を導入したカップリング粒子の調製について説明する。
【0072】
[重合開始剤カップリング粒子の調製]
攪拌機および還流冷却器を備えた三っ口500mLフラスコに平均粒径10μmの二酸化珪素50gを充填し、メタノール300mL、蒸留水50mL、酢酸10mLおよびシランカップリング剤である3-(trimethoxysilyl)propyl 2-chloro-2-phenylacetate5g(15.0mmol)を順次添加した。得られたサスペンションを攪拌しながら、オイルバスにて還流が開始される温度まで加熱した。その後、カップリング反応を10時間行った。反応終了後のサスペンションは減圧濾過・イオン交換水洗浄を繰り返し、余分な酢酸等を除去した。その後、凍結乾燥を行い乾燥した。収量は51gであった。FT-IRによる本粉末のスペクトルにはアルカンの吸収が明瞭に認められ、カップリング反応による重合開始剤の導入が行われたことを確認した。なお、重合開始剤の理論導入率は0.3mmol/gである。
【0073】
[実施例1(メチルメタアクリレートとグリシジルメタクリレート→メタアクリル酸付加)]
ベーキングを行った3方活栓付500mL容積シュレンク重合管に、上述のカップリング粒子の調製によって調製した重合開始剤導入済二酸化珪素粒子100g(重合開始剤濃度30mmol相当)、重合反応追跡用重合開始剤(ethyl 2-chloro-2-phenylacetate;ECPA)30mmol;6.0g、クロロ(インデニル)(ビストリフェニルフォスフィン)ルテニウム(以下Ru(Ind)Cl(PPh3)2とする)0.6mmol;466mg を精秤し、Anisole(重合溶媒)300mL, tetralin(重合反応追跡用内部標準)10mL,n-Bu3N(重合助触媒)6mmol;1.11g,メチルメタアクリレート(MMA)0.6mol;60.0g の順にアルゴン気流下にて注入した。そのシュレンク重合管を所定温度に加温しRu(Ind)Cl(PPh3)2 を完全に溶解させマグネティック攪拌下にて重合反応を開始した。適宜、反応サスペンションをアルゴン気流下にて抜き取り、1H−NMRにてモノマー転化率を測定した。モノマー転化率が90%になった時点でグリシジルメタクリレート(GMA)0.3mol;42.6gを添加し、再度加熱を続けブロックポリマーの重合を行った。この反応サスペンションも適宜、アルゴン気流下にて抜き取り、1H−NMRにてモノマー転化率を測定した。モノマー転化率が90%になった時点で重合反応を終了し、減圧濾過・アセトン洗浄を繰り返した。得られたアセトンを若干含んだスラリーはイオン交換水にて溶媒置換し、凍結乾燥した。
【0074】
次に、合成した粉末全量を、ヒドロキノンモノメチルエーテルを含む脱水アニソール中300mLに分散し、メタクリル酸モノマー0.45mol;38.7gを添加した。その溶液を60℃に加温し3時間反応させた。反応終了後、減圧濾過・アセトン洗浄を繰り返した。得られたアセトンを若干含んだスラリーはイオン交換水にて溶媒置換し、凍結乾燥した。二酸化珪素にグラフトされたポリマーはフッ化水素にて二酸化珪素を溶解した後に、沈殿精製し1H−NMR、MALDI-TOFMS(Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization - Time of Flight Mass Spectrometry)、GPCにて同定した。
【0075】
すなわち、モノマー転化率の測定は、所定時間毎にシュレンク管よりアルゴンガス気流下にて注射筒にてサンプルを抜き取り、メンブレンフィルターにて濾過後、1H−NMR にてTetralin(内部標準)の2.8ppmのピーク面積を1とした場合のオレフィンのピーク面積を重合開始前の面積で除して減少率を決定した。また、同じサンプルのGPC測定を行うことで、時間と供に重合度が上昇することを確認した。すなわち、重合反応がリビング的に進行している事を確認した。
【0076】
次に反応生成物がブロックポリマーであるかの確認であるが、この確認も1H−NMR を用いて行った。例えばPMMAの末端活性点には塩素が結合しており、隣接するメチレン基のプロトンは他のプロトンと異なる磁場にピークを持つ。このピーク位置はモノマーによって異なり、PMMAの場合には3.7ppmにそのピークを認めた。ブロック化により、そのメチレン基のピークがシフトすることでブロックポリマーになっている事を確認した。更にブロックポリマーの組成比は、以下の手順で行った。すなわち、所定時間毎にシュレンク管よりアルゴンガス気流下にて注射筒にてサンプルを抜き取り、濾過洗浄を行うことでポリマーグラフト化粒子を単離した。次にこの粒子をフッ化水素と反応させることで、二酸化珪素を溶解除去した。得られたグラフトポリマーは分取GPCにて単離しMatrix Assisted Laser Desorption / Ionization - Time of Flight Mass Spectrometry : MALDI-TOFMS)測定を行った。この測定により、グラフト前後での分子量変化を確認し、1分子鎖に異なるモノマーが結合している事を確認した。すなわち、MMAの分子量は100.12であり、このモノマー単独でのポリマーは重合開始剤を無視した場合の質量は必ず100.12の整数倍になる。例えば50量体のポリマーであれば分子量5006となる。このポリマーに分子量142.15のグリシジルメタアクリレートが50量体ブロック重合すれば、そのブロックポリマーは12113.5となる。この分子量はMMAモノマーの整数倍ではなく、明らかにMMAとグリシジルメタアクリレートのブロックポリマーでしか説明がつかない。この手法にて確実にブロックポリマーであると言う事を確認した。また、この解析は1H−NMRによる測定結果と併せて行った。以下に記載する実施例2〜4も同様の手法にてブロック化が行われている事を確認した。
【0077】
[実施例2(トリエチレングリコールモノメタアクリレートとグリシジルメタクリレート→メタアクリル酸付加)]
ベーキングを行った3方活栓付500mL容積シュレンク重合管に、上述のカップリング粒子の調製によって調製した重合開始剤導入済二酸化珪素粒子100g(重合開始剤濃度30mmol相当)、重合反応追跡用重合開始剤(ethyl 2-chloro-2-phenylacetate;ECPA)30mmol;6.0g、クロロ(インデニル)(ビストリフェニルフォスフィン)ルテニウム(以下Ru(Ind)Cl(PPh3)2とする)0.6mmol;466mg を精秤し、Anisole(重合溶媒)300mL, tetralin(重合反応追跡用内部標準)10mL、n-Bu3N(重合助触媒)6mmol;1.11g,トリエチレングリコールモノメタアクリレート(TEGMM)0.2mol;53.3gの順にアルゴン気流下にて注入した。そのシュレンク重合管を所定温度に加温しRu(Ind)Cl(PPh3)2 を完全に溶解させマグネティック攪拌下にて重合反応を開始した。適宜、反応サスペンションをアルゴン気流下にて抜き取り、1H−NMRにてモノマー転化率を測定した。モノマー転化率が90%になった時点でグリシジルメタクリレート(GMA)0.3mol;42.6gを添加し、再度加熱を続けブロックポリマーの重合を行った。この反応サスペンションも適宜、アルゴン気流下にて抜き取り、1H−NMRにてモノマー転化率を測定した。モノマー転化率が90%になった時点で重合反応を終了し、減圧濾過・アセトン洗浄を繰り返した。得られたアセトンを若干含んだスラリーはイオン交換水にて溶媒置換し、凍結乾燥した。次に、合成した粉末全量をヒドロキノンモノメチルエーテルを含む脱水アニソール中300mLに分散し、メタクリル酸モノマー0.45mol;38.7gを添加した。その溶液を60℃に加温し3時間反応させた。反応終了後、減圧濾過・アセトン洗浄を繰り返した。得られたアセトンを若干含んだスラリーはイオン交換水にて溶媒置換し、凍結乾燥した。二酸化珪素にグラフトされたポリマーはフッ化水素にて二酸化珪素を溶解した後に、沈殿精製し実施例1同様に1H−NMR、MALDI-TOF-MS、GPCにて同定した。
【0078】
[実施例3(2-ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンモノマー)]
ベーキングを行った3方活栓付500mL容積シュレンク重合管に粒子調製例1で調製した重合開始剤導入済二酸化珪素粒子100g(重合開始剤濃度30mmol相当)、重合反応追跡用重合開始剤(ethyl 2-chloro-2-phenylacetate;ECPA)30mmol;6.0g、クロロ(インデニル)(ビストリフェニルフォスフィン)ルテニウム(以下Ru(Ind)Cl(PPh3)2とする)0.6mmol;466mg を精秤し、Anisole(重合溶媒)300mL, tetralin(重合反応追跡用内部標準)10mL、n-Bu3N(重合助触媒)6mmol;1.11g,2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(2-HEMA)0.4mol;52.1gの順にアルゴン気流下にて注入した。そのシュレンク重合管を所定温度に加温しRu(Ind)Cl(PPh3)2 を完全に溶解させマグネティック攪拌下にて重合反応を開始した。適宜、反応サスペンションをアルゴン気流下にて抜き取り、1H−NMRにてモノマー転化率を測定した。モノマー転化率が90%になった時点でスチレンモノマー0.4mol;41.7gを添加し、再度加熱を続けブロックポリマーの重合を行った。この反応サスペンションも適宜、アルゴン気流下にて抜き取り、1H−NMRにてモノマー転化率を測定した。モノマー転化率が90%になった時点で重合反応を終了した。反応終了後、減圧濾過・アセトン洗浄を繰り返した。得られたアセトンを若干含んだスラリーはイオン交換水にて溶媒置換し、凍結乾燥した。二酸化珪素にグラフトされたポリマーはフッ化水素にて二酸化珪素を溶解した後に、沈殿精製し実施例1同様に1H−NMR、MALDI-TOF-MS、GPCにて同定した。
【0079】
[実施例4(メチルメタアクリレートとグリシジルアクリレートの重合活性を利用したグラジエント化→メタアクリル酸付加)]
ベーキングを行った3方活栓付500mL容積シュレンク重合管に上述のカップリング粒子の調製によって調製した重合開始剤導入済二酸化珪素粒子100g(重合開始剤濃度30mmol相当)、重合反応追跡用重合開始剤(ethyl 2-chloro-2-phenylacetate;ECPA)30mmol;6.0g、クロロ(インデニル)(ビストリフェニルフォスフィン)ルテニウム(以下Ru(Ind)Cl(PPh3)2とする)0.6mmol;466mg を精秤し、Anisole(重合溶媒)300mL, tetralin(重合反応追跡用内部標準)10mL、n-Bu3N(重合助触媒)6mmol;1.11g,メチルメタアクリレート(MMA)0.6mol;60.0g,グリシジルアクリレート(GA)0.3mol;38.4gの順にアルゴン気流下にて注入した。そのシュレンク重合管を所定温度に加温しRu(Ind)Cl(PPh3)2 を完全に溶解させマグネティック攪拌下にて重合反応を開始した。適宜、反応サスペンションをアルゴン気流下にて抜き取り、1H−NMRにてモノマー転化率を測定した。モノマー転化率が90%になった時点で重合反応を終了し、減圧濾過・アセトン洗浄を繰り返した。得られたアセトンを若干含んだスラリーはイオン交換水にて溶媒置換し、凍結乾燥した。次に、合成した粉末全量をヒドロキノンモノメチルエーテルを含む脱水アニソール中300mLに分散し、メタクリル酸モノマー0.45mol;38.7gを添加した。その溶液を60℃に加温し3時間反応させた。反応終了後、減圧濾過・アセトン洗浄を繰り返した。得られたアセトンを若干含んだスラリーはイオン交換水にて溶媒置換し、凍結乾燥した。二酸化珪素にグラフトされたポリマーはフッ化水素にて二酸化珪素を溶解した後に、沈殿精製し実施例1同様に1H−NMR、MALDI-TOF-MS、GPCにて同定した。
【0080】
次に、現在まで一般的に行われている充填材の下記の表面処理法を比較例1とした。
【0081】
[比較例1]
攪拌機および還流冷却器を備えた三っ口500mLフラスコに平均粒径10μmの二酸化珪素50gを充填し、メタノール300mL、蒸留水50mL、酢酸10mLおよびシランカップリング剤であるKBM-503(信越化学製シランカップリング剤)5gを順次添加した。得られたサスペンションを攪拌しながら、オイルバスにて還流が開始される温度まで加熱した。その後、カップリング反応を10時間行った。反応終了後のサスペンションは減圧濾過・イオン交換水洗浄を繰り返し、余分な酢酸等を除去した。その後、凍結乾燥を行い乾燥した。収量は50gであった。FT-IRによる本粉末のスペクトルにはエチレン性不飽和基の吸収が明瞭に認められ、カップリング反応によるエチレン性不飽和基の導入が行われたことを確認した。このエチレン性不飽和基の理論導入率は0.40mmol/gであった。
【0082】
[歯科用コンポジットレジン(実施例5〜8)調製]
次に、上記実施例1〜4の各複合粒子をそれぞれ含む硬化性組成物としての歯科用コンポジットレジンを下記のようにそれぞれ調製し、実施例5〜8とした。
【0083】
ナトリウムD線光暗室にて、Thinky製AR-100用デスポーザブル100mL容器にBis-GMA59wt%,TEGDMA40wt%,ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819)1wt%の混合溶液を15.0g計量した。その容器に前述した実施例1〜4にて合成した複合粒子を35.0g添加し、回転速度1000rpmにて脱泡練和した。得られたペーストは遮光サンプル容器に移し、重合収縮試験に供した。
【0084】
[歯科用コンポジットレジン(比較例2)調製]
上記比較例1の粒子を含む歯科用コンポジットレジンを下記のように調製し、比較例2とした。
【0085】
ナトリウムD線光暗室にて、Thinky製AR-100用デスポーザブル100mL容器にBis-GMA59wt%,TEGDMA40wt%,ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819)1wt%の混合溶液を15.0g計量した。その容器に前述した比較例1にて調製した粒子を35.0g添加し、回転速度1000rpmにて脱泡練和した。得られたペーストは遮光サンプル容器に移し、重合収縮試験に供した。
【0086】
[重合収縮試験]
上述したコンポジットレジン調製にて作製したコンポジットレジンの硬化前後の密度変化をAnton Paar製密度測定装置DMAGeneration Mにて測定し、重合後の収縮率を算出した。なお、硬化は約0.5mLの各コンポジットレジンに株式会社松風製LED光照射器ブルーショットにて30秒間光照射し硬化させた。試験結果を表1に示す。なお、重合収縮試験は、各実施例5〜8および比較例2について、それぞれ3回行った。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示すように、一般的な従来の充填材を使用した比較例2では、重合収縮率が2%程度であるのに対して、実施例5〜8では、0.2%〜0.3%程度であり、統計的に危険率1%で有意差が認められた。すなわち、重合収縮の低下の効果が認められた。
【0089】
以上のように、この実施形態の複合粒子を充填材として使用することによって、重合収縮を大幅に低下させることができる。したがって、重合収縮を低下させるために、新規な低収縮性モノマーを合成し、その生物学的安全性試験を行う必要もなく、従来より医科歯科用に用いられてきた安全性の確認されたメチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマー類を使用して重合収縮を低下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の複合粒子は、硬化性組成物の充填材として有用であり、特に、医歯科分野におけるコンポジットレジンなどの組成物の重合収縮の低減に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の表面に、高分子鎖が結合された複合粒子であって、
前記高分子鎖が、少なくとも2種類のモノマーを共重合させたコポリマーを有し、前記少なくとも2種類のモノマーは、当該複合粒子が分散される重合性モノマーに対する親和性が異なるものであり、
前記高分子鎖のモノマー組成は、該高分子鎖の前記粒子の表面に結合している基端部側では、前記重合性モノマーに対する親和性の低いモノマーが前記親和性の高いモノマーに比べて高く、前記高分子鎖の先端部側では、前記親和性の高いモノマーが前記親和性の低いモノマーに比べて高くなっている、
ことを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
前記重合性モノマーがラジカル重合性モノマーであり、
前記高分子鎖の前記先端部側の前記親和性の高いモノマーからなるコポリマーには、重合性基および疎水結合性基の少なくともいずれか一方が結合している、
請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記ラジカル重合性モノマーが、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アリル基を有する化合物である、
請求項2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記コポリマーが、ブロックコポリマーまたはグラジェントコポリマーである、
請求項1ないし3のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
前記粒子が、二酸化珪素、酸化アルミニウム、および、フルオロアルミノシリケートガラスのうちの少なくとも1種である、
請求項1ないし4のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載の複合粒子および前記重合性モノマーを含む硬化性組成物。
【請求項7】
当該硬化性組成物が、医科、歯科用に用いられる請求項6に記載の硬化性組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−95690(P2013−95690A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239051(P2011−239051)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(390011143)株式会社松風 (125)
【Fターム(参考)】