説明

複合粒子および被覆複合粒子

本発明は、リード粒子に薬物が付着した複合粒子において、該リード粒子に糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有させることを特徴とする該複合粒子の凝集抑制方法等を提供する。また、糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物として核酸または薬物と付着競合剤を分散または溶解して含有させて、該リード粒子に薬物としての該核酸または該薬物と該付着競合剤を付着させる工程を含む、リード粒子に薬物としての該核酸または該薬物が付着した複合粒子の製造方法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子および被覆複合粒子ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医薬品、食品、農薬、動物用薬等において、被覆粒子の製造方法に関して多くの技術の開示が行われている。粒子(被覆される粒子)の被覆層による被覆は、例えば外的因子から受ける影響を抑制するため、外的因子の影響を選択的に受け入れ、それをトリガーとして粒子に変化を起こすため等、粒子に機能を付与する目的で行われている。
【0003】
しかしながら、例えば小型の粒子を被覆層で被覆する場合、粒子間のファンデンワールス力や静電気力、被覆層成分や液滴の架橋による力等によって粒子どうしが凝集し、好ましくない大きさで被覆粒子が得られることがある。好ましくない大きさの被覆粒子としては、例えば経肺投与用微粒子や静脈注射用微粒子において、気管や血管を閉塞させたり、生体の異物除去作用により排泄されたりしやすい大きさの被覆粒子等があげられる。
【0004】
一方、核酸の細胞内への送達手段として、カチオニックリポソームやカチオニックポリマーを用いる方法が知られている。しかし、該方法では、核酸を含有するカチオニックリポソームやカチオニックポリマーを静脈内に投与後、血中から速やかに核酸が除去されてしまい、標的組織が肝臓や肺以外の場合、例えば腫瘍部位等の場合には核酸を標的組織に送達することができず、十分な作用の発現を可能とするに至っていない。そこで、核酸が血中で速やかに除去されるという問題点を解決した核酸封入リポソーム(リポソーム内に核酸を封入したリポソーム)が報告されている(特表2002−508765号公報、特表2002−501511号公報、“バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)”,2001年,第1510巻,p.152−166および特許文献1参照)。特表2002−508765号公報では、核酸等を含有する粒子の製造方法として、例えば、カチオン性脂質をクロロホルムに予め溶解し、次いでオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の水溶液とメタノールを加え混合後、遠心分離することでクロロホルム層にカチオン性脂質/ODNの複合体を移行させ、さらに該クロロホルム層を取り出し、これにポリエチレングリコール化リン脂質と中性の脂質と水を加え油中水型(W/O)エマルジョンを形成し、逆相蒸発法で処理してODN内包リポソームを製造する方法が報告され、特表2002−501511号公報およびバイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Act)では、ODNを、pH3.8のクエン酸水溶液に溶解し、脂質(エタノール中)を加え、エタノール濃度を20vol%まで下げてODN内包リポソームを調製し、サイジングろ過し、透析によって過剰のエタノールを除去した後、試料をさらにpH7.5にて透析してリポソーム表面に付着したODNを除去してODN内包リポソームを製造する方法が報告され、それぞれ核酸等の有効成分を封入したリポソームを製造している。
【0005】
これらに対して特許文献1では、液体中で微粒子を脂質膜で被覆する方法で核酸等の有効成分を封入したリポソームを製造することが報告されている。該方法においては、微粒子が分散し、かつ脂質が溶解した極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、微粒子が脂質膜で被覆されており、液体中において被覆が行われ、例えば静脈注射用微粒子等に好適な大きさの被覆微粒子が、すぐれた効率で製造されており、また、該特許文献1では微粒子の例として薬物複合体が例示されている。該薬物複合体は、リード粒子(後記のリード粒子と同義)と薬物の複合粒子である。該複合粒子を被覆した被覆複合粒子の粒子径は、被覆される複合粒子に応じて異なり、ODNを、リード粒子であるカチオニックリポソームに付着させて製造した複合粒子を被覆して得られた被覆複合粒子は、粒子径が小さく、注射剤として使用可能であること、該被覆複合粒子は、静脈内に投与した場合、高い血中滞留性を示し、腫瘍組織に多く集積したことが報告されている。
【0006】
また一方で、siRNAは近年、アンチセンス医薬より効果的な薬剤として注目を集めている[“バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochemical and Biophysical Research Communication)”,2002年,第296巻,p.1000−1004参照]。これまでのところ、siRNAの血中動態については十分な報告がなされていないが、siRNAはアンチセンス医薬と同じく、血中から速やかに消失し、標的組織に移行しないことが予想され、標的組織への移行性を高めるために、何らかのキャリアーの開発が望まれる[“バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)”,1996年,第1281巻,p.139−149、“ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J.Controlled Release)”,1996年,第41巻,p.121−130参照]。
【特許文献1】国際公開第02/28367号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制方法、その製造方法等を提供することにある。また、本発明の目的は、凝集抑制された複合粒子を被覆層で被覆した被覆複合粒子の製造方法、該製造方法によって製造できる被覆複合粒子等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の(1)〜(47)に関する。
(1)リード粒子に薬物が付着した複合粒子において、該リード粒子に糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有させることを特徴とする該複合粒子の凝集抑制方法。
(2)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である前記(1)記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(3)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である前記(1)記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(4)リード粒子に薬物が付着した複合粒子が、リード粒子が分散した液中に、薬物を分散または溶解して含有させて該リード粒子に薬物を付着させることにより得られる複合粒子である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(5)リード粒子に薬物が付着した複合粒子が、リード粒子に薬物が静電的に付着した複合粒子である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(6)リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつリード粒子である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(7)リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(8)薬物が、核酸である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(9)薬物としての核酸が、遺伝子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質である前記(8)記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(10)リード粒子に薬物が付着した複合粒子が、リード粒子に薬物および付着競合剤が付着した複合粒子である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(11)リード粒子に薬物および付着競合剤が付着した複合粒子が、リード粒子が分散した液中に、薬物および付着競合剤を分散または溶解して含有させて該リード粒子に薬物および付着競合剤を付着させることにより得られる複合粒子である前記(10)記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(12)リード粒子に薬物および付着競合剤が付着した複合粒子が、リード粒子に薬物および付着競合剤が静電的に付着した複合粒子である前記(10)または(11)記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(13)付着競合剤が、脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチドおよび高分子から選ばれる1つ以上の物質である前記(10)〜(12)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
(14)付着競合剤が、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸およびデキストランフルオレセインアニオニックから選ばれる1つ以上の物質である前記(10)〜(12)のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【0009】
(15)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有する、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制剤。
(16)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である前記(15)記載の複合粒子の凝集抑制剤。
(17)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である前記(15)記載の複合粒子の凝集抑制剤。
【0010】
(18)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物として核酸を分散または溶解して含有させて、該リード粒子に薬物としての該核酸を付着させる工程を含む、リード粒子に薬物としての該核酸が付着した複合粒子の製造方法。
(19)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物および付着競合剤を分散または溶解して含有させて、該リード粒子に該薬物および該付着競合剤を付着させる工程を含む、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の製造方法。
(20)付着競合剤が、脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチドおよび高分子から選ばれる1つ以上の物質である前記(19)記載の複合粒子の製造方法。
(21)付着競合剤が、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸およびデキストランフルオレセインアニオニックから選ばれる1つ以上の物質である前記(19)記載の複合粒子の製造方法。
(22)薬物が、核酸である前記(19)〜(21)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
(23)薬物としての核酸が、遺伝子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質である前記(18)または(22)記載の複合粒子の製造方法。
(24)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である前記(18)〜(23)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
(25)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である前記(18)〜(23)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
(26)リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつリード粒子である前記(18)〜(25)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
(27)リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子である前記(18)〜(25)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
(28)前記(18)〜(27)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法によって製造できる複合粒子。
【0011】
(29)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子、
および該リード粒子に付着した薬物としての核酸を含有する複合粒子。
(30)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子、
該リード粒子に付着した薬物、
および該リード粒子に付着した付着競合剤を含有する複合粒子。
(31)付着競合剤が、脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチドおよび高分子から選ばれる1つ以上の物質である前記(30)記載の複合粒子。
(32)付着競合剤が、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸およびデキストランフルオレセインアニオニックから選ばれる1つ以上の物質である前記(30)記載の複合粒子。
(33)薬物が、核酸である前記(30)〜(32)のいずれかに記載の複合粒子。
(34)薬物としての核酸が、遺伝子、DNA、RNA、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質である前記(29)または(33)記載の複合粒子。
(35)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である前記(29)〜(34)のいずれかに記載の複合粒子。
(36)糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である前記(29)〜(34)のいずれかに記載の複合粒子。
(37)リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつリード粒子である前記(29)〜(36)のいずれかに記載の複合粒子。
(38)リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子である前記(29)〜(36)のいずれかに記載の複合粒子。
【0012】
(39)前記(28)〜(38)のいずれかに記載の複合粒子が分散し、かつ被覆層成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する工程、
次いで、液A中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、複合粒子を被覆層成分からなる被覆層で被覆する工程を含む被覆複合粒子の製造方法。
(40)液Aを調製する工程が、前記(28)〜(38)のいずれかに記載の複合粒子が分散した極性有機溶媒を含む液(液B)を調製する工程、
液B中の極性有機溶媒と同一または異なった極性有機溶媒を含む溶媒に被覆層成分を溶解させた液(液C)を調製する工程、
および液Bと液Cを混合する工程を含む工程である前記(39)記載の被覆複合粒子の製造方法。
(41)被覆層が脂質膜である前記(39)または(40)記載の被覆複合粒子の製造方法。
(42)被覆層が水溶性高分子誘導体を含有する被覆層である前記(41)記載の被覆複合粒子の製造方法。
(43)前記(39)〜(42)のいずれかに記載の被覆複合粒子の製造方法によって製造できる被覆複合粒子。
【0013】
(44)前記(28)〜(38)のいずれかに記載の複合粒子および該複合粒子を被覆する被覆層からなる被覆複合粒子であって、
該被覆層を構成する被覆層成分が、該複合粒子が不溶でかつ分散できる濃度範囲で極性溶媒を含む溶媒に、相対的に極性溶媒の濃度が高いときには溶解し、低いときには析出または集合する成分である被覆複合粒子。
(45)被覆層が脂質膜である前記(44)記載の被覆複合粒子。
(46)被覆層が水溶性高分子誘導体を含有する被覆層である前記(45)記載の被覆複合粒子。
(47)被覆複合粒子の平均粒子径が300nm以下である前記(44)〜(46)のいずれかに記載の被覆複合粒子。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制方法、その製造方法等が提供され、また凝集抑制された複合粒子を被覆層で被覆した被覆複合粒子の製造方法、該製造方法によって製造できる被覆複合粒子等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における複合粒子とは、少なくともリード粒子と薬物を含有し、薬物がリード粒子に付着している粒子のことである。
【0016】
前記薬物(以下薬物A)は、本発明における複合粒子においてリード粒子に付着する薬物、好ましくはリード粒子に静電的に付着する薬物であり、薬物分子内の電荷や、分子内分極等によるカチオンまたはアニオンへの静電的引力を生じるものを包含する。例えば蛋白質、ペプチド、核酸、低分子化合物、糖類、高分子化合物等の薬理学的活性を有する物質等があげられ、好ましくは、核酸があげられ、より好ましくは、遺伝子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド(ODN)、プラスミドおよびsiRNAがあげられ、さらに好ましくは、プラスミドおよびsiRNAがあげられる。
【0017】
蛋白質またはペプチドとしては、例えばブラジキニン、アンジオテンシン、オキシトシン、バソプレシン、アドレノコルチコトロピン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、コレシストキニン、β−エンドルフィン、メラノサイト阻害因子、メラノサイト刺激ホルモン、ガストリンアンタゴニスト、ニューロテンシン、ソマトスタチン、ブルシン、シクロスポリン、エンケファリン、トランスフェリン、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、ウリカーゼ、カルボキシペプチダーゼ、グルタミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、サイモポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、トリプシンインヒビター、リゾチーム、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子、神経成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、内皮細胞成長因子、フィブロブラスト(繊維芽細胞)成長因子、グリア細胞成長因子、サイモシン、特異抗体(例えば、抗EGF受容体抗体等があげられる)等があげられる。
【0018】
核酸としては、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、センスオリゴヌクレオチド等のODN、遺伝子、DNA、RNA、プラスミド、siRNA等があげられ、該核酸は、核酸の構造中のリン酸部、エステル部等に含まれる酸素原子等が、例えば硫黄原子等の他の原子に置換された誘導体を包含する。なお、siRNAとは、短い二本鎖RNAのことである。
【0019】
低分子化合物としては、例えばイプシロン−アミノカプロン酸、塩酸アルギニン、L−アスパラギン酸カリウム、トラネキサム酸、硫酸ブレオマイシン、硫酸ビンクリスチン、セファゾリンナトリウム、セファロチンナトリウム、シチコリン、シタラビン、硫酸ゲンタマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸アミカシン等があげられる。
【0020】
糖類としては、例えばコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム、デキストランフルオレセイン等があげられる。
【0021】
高分子化合物としては、例えばポリエチレンスルホン酸ナトリウム、ジビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(DIVEMA)、スチレン無水マレイン酸共重合体−ネオカルチノスタチン結合体(SMANCS)等があげられる。
【0022】
本発明におけるリード粒子とは、例えば、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子のことであり、好ましくはリポソームを構成成分とする微粒子があげられる。本発明におけるリード粒子は、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を2つ以上組み合わせた複合体を構成成分としていてもよく、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等と他の化合物(例えば糖、脂質、無機化合物等)とを組み合わせた複合体を構成成分としていてもよい。
【0023】
リード粒子の構成成分としての薬物(以下薬物B)は、後記のリード粒子を分散させる溶媒中で粒子の形態をとる薬物、前記他の化合物と複合体を形成して後記のリード粒子を分散させる溶媒中で粒子の形態をとる薬物等を包含する。例えば脂質性薬物、高分子薬物、金属薬物等があげられ、具体的には、シスプラチン、ビタミンD、ビタミンE、レンチナン等があげられる。
【0024】
脂質集合体またはリポソームは、例えば脂質および/または界面活性剤等によって構成され、脂質としては、単純脂質、複合脂質または誘導脂質のいかなるものであってもよく、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド類、ステロール類等があげられ、好ましくはリン脂質があげられる。また、脂質としては、例えば界面活性剤(後記の界面活性剤と同義)、高分子(後記の高分子と同義、具体的にはデキストラン等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリエチレングリコール等)等の脂質誘導体もあげられ、好ましくはポリエチレングリコール化リン脂質があげられる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。
【0025】
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(具体的には大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルエタノールアミン(具体的にはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン等)、グリセロリン脂質(具体的にはホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン等)、スフィンゴリン脂質(具体的にはスフィンゴミエリン、セラミドホスホエタノールアミン、セラミドホスホグリセロール、セラミドホスホグリセロリン酸等)、グリセロホスホノ脂質、スフィンゴホスホノ脂質、天然レシチン(具体的には卵黄レシチン、大豆レシチン等)、水素添加リン脂質(具体的には水素添加ホスファチジルコリン等)等の天然または合成のリン脂質があげられる。
【0026】
グリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等があげられる。
スフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等があげられる。
スフィンゴイド類としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン、それらの誘導体等があげられる。誘導体としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン等の−NHを−NHCO(CHCH(式中、xは0〜18の整数を表し、中でも6、12または18が好ましい)に変換したもの等があげられる。
【0027】
ステロール類としては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロール、3β−[N−(N’N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)等があげられる。
【0028】
その他、脂質としては、例えば、N−[1−(2,3−ジオレオイルプロピル)]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレオイルプロピル)]−N,N−ジメチルアミン(DODAP)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシプロピル)]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシプロピル)]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシプロピル)]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)等もあげられる。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(具体的にはプルロニックF68等)、ソルビタン脂肪酸(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール等)、グリセリン脂肪酸エステル等があげられる。
【0030】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアシルサルコシン、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜22の脂肪酸ナトリウム等があげられる。具体的にはドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等があげられる。
【0031】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アシルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アミン誘導体等があげられる。具体的には塩化ベンザルコニウム、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、N−アルキルポリアルキルポリアミン塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルポリオキシエチレンアミン、N−アルキルアミノプロピルアミン、脂肪酸トリエタノールアミンエステル等があげられる。
【0032】
両性界面活性剤としては、例えば3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸等があげられる。
【0033】
リポソームにおいては、これら脂質および界面活性剤は、単独でまたは組み合わせて用いられ、好ましくは組み合わせて用いられる。組み合わせて用いる場合の組み合わせとしては、例えば水素添加大豆ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、EPCとDOTAPの組み合わせ、EPC、DOTAPおよびポリエチレングリコール化リン脂質の組み合わせ、EPC、DOTAP、コレステロールおよびポリエチレングリコール化リン脂質の組み合わせ等があげられる。
【0034】
また、リポソームは、必要に応じて、例えばコレステロール等のステロール類等の膜安定化剤、例えばトコフェロール等の抗酸化剤等を含有していてもよい。
【0035】
脂質集合体としては、例えば球状ミセル、球状逆ミセル、ソーセージ状ミセル、ソーセージ状逆ミセル、板状ミセル、板状逆ミセル、ヘキサゴナルI、ヘキサゴナルIIおよび脂質2分子以上からなる会合体等があげられる。
【0036】
エマルジョン粒子としては、例えば脂肪乳剤、非イオン性界面活性剤と大豆油からなるエマルジョン、リピッドエマルジョン、リピッドナノスフェアー等の水中油型(O/W)エマルジョンや水中油中水型(W/O/W)エマルジョン粒子等があげられる。
【0037】
高分子としては、例えばアルブミン、デキストラン、キトサン、デキストラン硫酸、DNA等の天然高分子、例えばポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド−アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸等の合成高分子、およびそれらの塩等があげられる。
ここで、高分子における塩は、例えば金属塩、アンモニウム塩、酸付加塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、アンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、アミノ酸付加塩としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン等の付加塩があげられる。
【0038】
金属コロイドとしては、例えば金、銀、白金、銅、ロジウム、シリカ、カルシウム、アルミニウム、鉄、インジウム、カドミウム、バリウム、鉛等を含む金属コロイドがあげられる。
【0039】
微粒子製剤としては、例えばマイクロスフェアー、マイクロカプセル、ナノクリスタル、リピッドナノパーティクル、高分子ミセル等があげられる。
【0040】
また、好ましくは、リード粒子は、薬物Aと静電的に逆の電荷をもつ。ここで、薬物Aと静電的に逆の電荷とは、薬物分子内の電荷、分子内分極等に対して静電的引力を生じる電荷、表面分極等を包含する。リード粒子が薬物Aと静電的に逆の電荷をもつには、好ましくは、リード粒子は、薬物Aと静電的に逆の電荷をもつ荷電物質を含有し、より好ましくは、リード粒子は、薬物Aと静電的に逆の電荷をもつ脂質(後記のカチオン性脂質またはアニオン性脂質)を含有する。
【0041】
リード粒子に含有される荷電物質は、カチオン性を呈するカチオン性物質とアニオン性を呈するアニオン性物質とに分類されるが、カチオン性の基とアニオン性の基の両方をもつ両性の物質であっても、pHや、他の物質との結合等により相対的な陰性度が変化するので、その時々に応じてカチオン性物質またはアニオン性物質に分類され得る。これら荷電物質は、前記リード粒子の構成成分として用いても、該リード粒子の構成成分に加えて用いても構わない。
【0042】
カチオン性物質としては、例えば前記のリード粒子の定義で例示したもののうちのカチオン性物質[具体的には、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤(前記と同義)、カチオン性高分子等]、等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド等があげられる。
【0043】
カチオン性脂質としては、例えばDOTAP、DOTMA、DOSPA、DMRIE、DORIE、DC−Chol等があげられる。
【0044】
カチオン性高分子としては、例えばポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン、ポリフェクト(polyfect)、キトサン等があげられる。
【0045】
等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ペプシン、リボヌクレアーゼT1等があげられる。
【0046】
アニオン性物質としては、例えば前記のリード粒子の定義で例示したもののうちのアニオン性物質[具体的には、アニオン性脂質、アニオン性界面活性剤(前記と同義)、アニオン性高分子等]、等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド、核酸等があげられる。
【0047】
アニオン性脂質としては、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等があげられる。
【0048】
アニオン性高分子としては、例えばポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド−アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸、デキストランフルオレセインアニオニック等があげられる。
【0049】
等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ヒストン、プロタミン、リボヌクレアーゼ、リゾチーム等があげられる。
【0050】
アニオン性物質としての核酸としては、例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等があげられ、生理活性を示さないものであれば、どのような長さ、配列のものであってもよい。
【0051】
本発明においてリード粒子に含有される糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤としては、好ましくは、糖脂質、または水溶性高分子の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体があげられ、具体的には、例えばポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられる。また、より好ましくは、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられる。本発明における糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体および脂肪酸誘導体ならびに界面活性剤は、分子の一部がリード粒子の構成成分と例えば疎水性親和力、静電的力等で結合する性質をもち、他の部分がリード粒子の製造時の溶媒と例えば親水性親和力、静電的力等で結合する性質をもつ、2面性をもつ物質であるのが好ましい。以下、糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を凝集抑制物質と表す。
【0052】
糖、ペプチドおよび核酸から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばショ糖、ソルビトール、乳糖等の糖、例えばカゼイン由来ペプチド、卵白由来ペプチド、大豆由来ペプチド、グルタチオン等のペプチド、例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等の核酸等と、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質等または例えばステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの等があげられる。
【0053】
糖の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えば前記リード粒子の定義の中であげたグリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等があげられる。
【0054】
水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ポリグリセリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ−L−リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等またはそれらの誘導体と、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質、または例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体、ポリグリセリン誘導体等の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられ、さらに好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられる。
【0055】
ポリエチレングリコール誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール化脂質[具体的にはポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン(より具体的には1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](PEG−DSPE)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル(CREMOPHOR EL)等]、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル類(具体的にはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール化脂質があげられる。
【0056】
ポリグリセリン誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリグリセリン化脂質(具体的にはポリグリセリン−ホスファチジルエタノールアミン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル等があげられ、より好ましくは、ポリグリセリン化脂質があげられる。
【0057】
界面活性剤としては、例えば前記リード粒子の定義の中であげた界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられ、好ましくは、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられる。
【0058】
本発明における付着競合剤としては、例えば薬物Aと静電的に同じ電荷をもつ物質等があげられ、分子内の電荷、分子内分極等によるカチオンまたはアニオンへの静電的引力によりリード粒子に静電的に付着する物質を包含し、例えば脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチド、高分子等があげられる。脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチドおよび高分子としては、例えば前記荷電物質の定義の中であげたカチオン性脂質、アニオン性脂質、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチド、カチオン性高分子、アニオン性高分子等があげられ、好ましくは前記荷電物質の定義の中であげたカチオン性高分子、アニオン性高分子等があげられ、より好ましくはデキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸、デキストランフルオレセインアニオニック、ポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン、ポリフェクト(polyfect)、キトサン等から選ばれる1つ以上の物質があげられる。付着競合剤は、リード粒子に静電的に付着することが好ましく、リード粒子に付着してもリード粒子を凝集させるような架橋を形成しない大きさの物質であるか、分子内にリード粒子との付着に反発して該リード粒子の凝集を抑制する部分をもつ物質であることが好ましい。また、特に、前記薬物Aが、分子量5000以上の大きな薬物(例えば遺伝子、DNA、RNA、プラスミド、siRNA等)である場合に、リード粒子にさらに付着競合剤を付着させることは、本発明の最も好ましい形態の1つである。
【0059】
本発明の凝集抑制剤は、本発明における凝集抑制物質を含有し、該凝集抑制物質の凝集抑制作用を阻害しなければその他にいかなる物質を含有していてもよい。
【0060】
本発明においてリード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制は、該リード粒子に凝集抑制物質を含有させることにより行うことができるが、具体的には、例えば凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物Aを分散または溶解して含有させて該リード粒子に薬物を付着させることによって行われ、該複合粒子の製造中における該複合粒子の凝集および/または製造後における該複合粒子の凝集が抑制される。また、好ましくは、薬物Aを分散または溶解して含有させる際、さらに付着競合剤を含有させ、付着競合剤を薬物とともに該リード粒子に付着させることで複合粒子の凝集がより抑制される。
【0061】
より具体的には、本発明の凝集抑制方法は、例えば凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液を製造する工程およびリード粒子が分散した液中に、薬物Aを分散または溶解して含有させる工程(例えばリード粒子が分散した液中に、薬物Aを加えて分散または溶解する工程、リード粒子が分散した液中に、薬物Aが分散または溶解した液を加える工程等)を含む、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の製造方法において実施することができる。ここで、リード粒子が分散した液中に、薬物Aを分散または溶解して含有させる工程により得られる複合粒子としては、具体的には、例えばカチオン性脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子が分散した液中に、薬物としての核酸を分散または溶解させて含有させ、カチオン性脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子に薬物としての核酸が付着して形成される複合粒子、同様に、カチオン性脂質を含有する脂質集合体を構成成分とする微粒子に薬物としての核酸が付着して形成される複合粒子、ポリ−L−リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子を構成成分とする微粒子に薬物としての核酸が付着した複合粒子、ホスファチジン酸等のアニオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体を構成成分とする微粒子に蛋白質が付着した複合粒子、スチレンマレイン酸等のアニオン性高分子を含有する高分子を構成成分とする微粒子に蛋白質が付着した複合粒子、ポリ−L−リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子を構成成分とする微粒子に蛋白質が付着した複合粒子、カチオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体を構成成分とする微粒子に蛋白質が付着した複合粒子等があげられる。また、リード粒子が分散した液中に、薬物Aを分散または溶解して含有させる工程が、薬物Aが分散または溶解した液に、さらに付着競合剤を含有させて、これをリード粒子が分散した液中に加える工程であることが好ましく、この場合、リード粒子に、薬物Aと付着競合剤が共に付着して複合粒子が製造され、複合粒子の製造中における該複合粒子の凝集も、製造後における該複合粒子の凝集もより抑制される。
【0062】
凝集抑制物質を含有するリード粒子は、公知の製造方法またはそれに準じて製造することができ、リード粒子に凝集抑制物質が含有されていればいかなる製造方法で製造されたものであってよい。例えば、リード粒子の1つである凝集抑制物質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子の製造には、公知のリポソームの調製方法が適用できる。公知のリポソームの調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[“ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)”,1965年,第13巻,p.238−252参照]、エタノール注入法[“ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)”,1975年,第66巻,p.621−634参照]、フレンチプレス法[“エフイービーエス・レターズ(FEBS Lett.)”,1979年,第99巻,p.210−214参照]、凍結融解法[“アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch.Biochem.Biophys.)”,1981年,第212巻,p.186−194参照]、逆相蒸発法[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)”,1978年,第75巻,p.4194−4198参照]、pH勾配法(例えば特許第2572554号公報、特許第2659136号公報等参照)等があげられる。リポソームの製造の際にリポソームを懸濁させる溶液としては、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を用いることができる。また、リポソームの製造の際には、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の抗酸化剤、例えばグリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等の添加も可能である。また、脂質等を例えばエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒留去した後、生理食塩水等を添加、振とう撹拌し、リポソームを形成させることによってもリポソームを製造することができる。
【0063】
また、例えば非イオン性界面活性剤(前記と同義)、カチオン性界面活性剤(前記と同義)、アニオン性界面活性剤(前記と同義)、高分子、ポリオキシエチレン誘導体等によるリポソーム表面改質も任意に行うことができ、これらの表面改質リポソームも本発明におけるリード粒子の構成成分として用いられる[ラジック(D.D.Lasic)、マーティン(F.Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”,(米国),シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc),1995年,p.93−102参照]。高分子としては、例えばデキストラン、プルラン、マンナン、アミロペクチン、ヒドロキシエチルデンプン等があげられる。ポリオキシエチレン誘導体としては、例えばポリソルベート80、プルロニックF68、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、PEG−DSPE等があげられる。リポソーム表面改質は、リード粒子に糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有させる方法の1つとしても用いることができる。
【0064】
リポソームの平均粒子径は、所望により自由に選択できる。平均粒子径を調節する方法としては、例えばエクストルージョン法、大きな多重膜リポソーム(MLV)を機械的に粉砕(具体的にはマントンゴウリン、マイクロフルイダイザー等を使用)する方法[ミュラー(R.H.Muller)、ベニタ(S.Benita)、ボーム(B.Bohm)編著,“エマルジョン・アンド・ナノサスペンジョンズ・フォー・ザ・フォーミュレーション・オブ・ポアリー・ソラブル・ドラッグズ(Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs)”,ドイツ,サイエンティフィック・パブリッシャーズ・スチュットガルト(Scientific Publishers Stuttgart),1998年,p.267−294参照]等があげられる。
【0065】
また、リード粒子を構成する例えば薬物B、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等から選ばれる2つ以上を組み合わせた複合体の製造方法は、例えば水中で薬物Bと脂質や高分子等とを混合するだけの製造方法でもよく、この際、必要であればさらに整粒工程や無菌化工程等を加えることもできる。また、複合体形成を例えばアセトン、エーテル等種々の溶媒中で行うことも可能である。
【0066】
本発明のリード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制方法において、リード粒子全体に対する凝集抑制物質の割合は、重量比で1:0.9〜1:0.01が好ましく、1:0.7〜1:0.1がより好ましく、1:0.6〜1:0.2がさらに好ましく、1:0.5〜1:0.3が最も好ましい。
【0067】
リード粒子の大きさとしては、平均粒子径が10nm〜300nmであるのが好ましく、50nm〜150nmであるのがより好ましく、50nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
【0068】
リード粒子を分散させる溶媒は、リード粒子が溶解しない溶媒であり、複合粒子の製造工程において、薬物Aがリード粒子に付着するのを妨げない溶媒であるのが好ましい。リード粒子を分散させる溶媒としては、例えば水等を含有する溶媒があげられ、好ましくは、水があげられる。一方、リード粒子としては、例えば水等に分散するリード粒子が好ましい。リード粒子を製造する際に用いた溶媒が水の場合、同じ液中でリード粒子の製造に引き続いて、複合粒子の製造を行うことが可能である。
【0069】
凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液中に薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤を分散または溶解して含有させる工程において、該リード粒子が分散した液中に薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤が分散または溶解した液を加える場合、薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤が分散または溶解した液に使用される溶媒は、該リード粒子が分散した液と、薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤が分散または溶解した液とを混合した後の混合液中で、薬物Aが該リード粒子に付着するのを妨げない溶媒であれば、いかなるものを用いても構わない。薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤を分散または溶解させる溶媒としては、例えば水等を含有する溶媒があげられ、好ましくは、水があげられる。一方、薬物Aおよび付着競合剤としては、例えば水等に溶解または分散する薬物Aおよび付着競合剤がそれぞれ好ましく、水に溶解する薬物Aおよび付着競合剤がそれぞれより好ましい。
【0070】
リード粒子のリード粒子が分散する液に対する割合は、リード粒子に薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤が付着できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLが好ましく、0.1〜500mg/mLがより好ましい。また、凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液中に薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤を分散または溶解して含有させる工程において、該リード粒子が分散した液中に薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤が分散または溶解した液を加える場合、薬物Aと付着競合剤の総量の薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤が分散または溶解した液に対する割合は、リード粒子に薬物Aまたは薬物Aと付着競合剤が付着できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLが好ましく、0.1〜400mg/mLがより好ましい。リード粒子に対する薬物Aと付着競合剤の総量の割合は、重量比で1:1〜1000:1が好ましく、2:1〜200:1がより好ましい。
【0071】
本発明の複合粒子は、凝集抑制物質を含有するリード粒子、ならびに該リード粒子に付着した薬物としての核酸、または該リード粒子に付着した薬物および該リード粒子に付着した付着競合剤を含有する複合粒子であり、本発明の複合粒子における各構成成分の定義は、前記各定義と同義である。
【0072】
本発明の複合粒子の製造方法は、凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物としての核酸または薬物と付着競合剤を分散または溶解して含有させることによって、該リード粒子に該核酸または該薬物と該付着競合剤を付着させる工程を含む製造方法である。凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物としての核酸を分散または溶解して含有させることによって、該リード粒子に該核酸を付着させる工程を含む製造方法は、前記本発明のリード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制方法の説明において、薬物を核酸として、同様の方法で実施することができる。凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物と付着競合剤を分散または溶解して含有させることによって、該リード粒子に該薬物と該付着競合剤を付着させる工程を含む製造方法は、前記本発明のリード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制方法の説明中、付着競合剤を使用した場合の説明で記載したのと同様の方法で実施することができる。
【0073】
本発明における複合粒子および本発明の複合粒子の大きさは平均粒子径が50nm〜300nmであるのが好ましく、50nm〜200nmであるのがより好ましく、50nm〜150nmであるのがさらに好ましい。
【0074】
また、本発明における複合粒子および本発明の複合粒子の製造工程に続いて、荷電物質または荷電物質の分散または溶解した液を加えて、該複合粒子に、荷電物質を付着させて、多重複合粒子を得ることもできる。例えば、水中でカチオン性物質と凝集抑制物質でリード粒子であるリポソームを構成成分とする微粒子を調製し、その後、薬物Aとして例えば核酸を(好ましくは付着競合剤とともに)添加し、さらに例えばアニオン性物質を添加して、多重複合粒子とすることが可能である。また、本発明における複合粒子および本発明の複合粒子は、被覆複合粒子とすることも可能である。
【0075】
本発明の被覆複合粒子は、少なくとも本発明の複合粒子と該複合粒子を被覆する被覆層からなる被覆複合粒子であり、例えば、該被覆層を構成する被覆層成分が、該複合粒子が不溶でかつ分散できる濃度範囲で極性溶媒を含む溶媒に、相対的に極性溶媒の濃度が高いときには溶解し、低いときには析出または集合する成分である被覆複合粒子等である。
【0076】
本発明の被覆複合粒子における被覆層を構成する被覆層成分としては、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質、界面活性剤、高分子等があげられ、好ましくは、前記リード粒子の定義の中であげた脂質および界面活性剤から選ばれる1つ以上の物質があげられ、より好ましくは、被覆層が脂質膜となる脂質および界面活性剤から選ばれる1つ以上の物質があげられ、さらに好ましくはリン脂質があげられる。
【0077】
また、被覆層が脂質膜である場合に用いられる脂質として、例えば合成脂質等もあげられる。合成脂質としては、例えばフッ素添加ホスファチジルコリン、フッ素添加界面活性剤、臭化ジアルキルアンモニウム等があげられ、これらは単独でまたは他の脂質等と組み合わせて用いられてもよい。また、被覆層が脂質膜である場合には、被覆層が水溶性高分子誘導体を含有することが好ましい。水溶性高分子誘導体としては、例えば前記凝集抑制物質の定義において例示した水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体等があげられ、好ましくは前記凝集抑制物質の定義において例示したポリエチレングリコール化リン脂質等があげられる。また、水溶性高分子誘導体としては、分子の一部が本発明における凝集抑制物質または付着競合剤と、例えば親水性親和力、静電的力等で結合する性質をもち、他の部分が他の被覆層成分と例えば疎水性親和力、静電的力等で結合する性質をもつ、2面性をもつ物質が好ましく、これらを使用することにより、本発明の複合粒子の被覆の効率が高まる。被覆層成分全体に対する水溶性高分子誘導体の割合が、重量比で1:0.5〜1:0.01であるのが好ましく、1:0.25〜1:0.01であるのがより好ましく、1:0.15〜1:0.02であるのがさらに好ましい。
【0078】
本発明の被覆複合粒子は、例えば本発明の複合粒子が分散し、かつ被覆層成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する工程、次いで、液A中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、複合粒子を被覆層で被覆する工程を含む製造方法によって製造でき、この場合、該被覆複合粒子は懸濁液(液D)の形態で得られる。液Aにおける溶媒は、複合粒子が溶解せず、被覆層成分が溶解する溶媒であり、液A中の極性有機溶媒の割合を減少させた液Dでは、複合粒子は溶解せず、被覆層成分は溶解しないか、または集合している。液A中の溶媒が、極性有機溶媒単独である場合、例えば該極性有機溶媒と混合可能な極性有機溶媒以外の溶媒を含む溶媒(液E)を、好ましくは徐々に加えることで、相対的に該極性有機溶媒の割合を減少させることができる。ここで、液Eは、極性有機溶媒以外の溶媒を含む溶媒であり、極性有機溶媒も含んでいてもよい。また、液A中の溶媒が、極性有機溶媒と極性有機溶媒以外の溶媒との混合液である場合、例えば極性有機溶媒と混合可能な極性有機溶媒以外の溶媒を含む溶媒(液F)を加えること、および/または、蒸発留去、半透膜分離、分留等によって、選択的に極性有機溶媒を取り除くことで、極性有機溶媒の割合を減少させることができる。ここで、液Fは、極性有機溶媒以外の溶媒を含む溶媒であり、極性有機溶媒も液Aにおける極性有機溶媒の割合より低ければ含んでいてよい。極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類等があげられ、好ましくはエタノールがあげられる。極性有機溶媒以外の溶媒としては、例えば、水、液体二酸化炭素、液体炭化水素、ハロゲン化炭素、ハロゲン化炭化水素等があげられ、好ましくは水があげられる。また、液A、液Eおよび液Fは、イオン、緩衝成分等を含んでいてもよい。
【0079】
極性有機溶媒と極性有機溶媒以外の溶媒の組み合わせは、相互に混合可能である組み合わせであるのが好ましく、液Aおよび液D中の溶媒ならびに液Eおよび液Fに対する、前記複合粒子および前記被覆層成分の溶解度等を考慮して選択できる。一方、前記複合粒子については、液Aおよび液D中の溶媒ならびに液Eおよび液Fのいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、また極性有機溶媒および極性有機溶媒以外の溶媒のいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、被覆層成分は、液D中の溶媒および液Fに対しての溶解度が低いことが好ましく、液A中の溶媒および液Eに対しての溶解度が高いことが好ましく、また極性有機溶媒に対しての溶解度が高いことが好ましく、極性有機溶媒以外の溶媒に対する溶解度が低いことが好ましい。ここで、複合粒子の溶解度が低いとは、複合粒子に含有されるリード粒子、薬物Aおよび付着競合剤等の各成分の、該溶媒中における溶出性が小さいことであり、各成分の個々の溶解度が高くても各成分間の結合等によって各成分の溶出性が小さくなっていればよい。例えば、リード粒子に含まれる成分のいずれかの液A中の溶媒に対する溶解度が高い場合でも、付着競合剤の液A中の溶媒に対する溶解度が低ければ、複合粒子中の他の成分の溶出が抑制され、複合粒子の液A中の溶媒に対する溶解度を低くすることが可能である。すなわち、複合粒子中の他の成分の液A中の溶媒に対する溶解度より、液A中の溶媒に対する溶解度が低い付着競合剤を選択的に用いる場合には、付着競合剤は、被覆複合粒子の製造において、複合粒子の他の成分の溶出を抑制し、製造性と歩留まりを向上させる効果も備えている。
【0080】
液Aにおける極性有機溶媒の割合は、本発明の複合粒子が溶解せずに存在し、該複合粒子を被覆する被覆層成分が溶解するという条件さえ満たしていれば特に限定されるものではなく、用いる溶媒や複合粒子、被覆層成分の種類等により異なるが、好ましくは30vol%以上、より好ましくは60〜90vol%である。また、液Dにおける極性有機溶媒の割合は、被覆層成分が本発明の複合粒子表面で被覆層を形成しうる割合であれば特に限定されるものではないが、好ましくは50vol%以下である。
【0081】
液Aを調製する工程としては、前記複合粒子が溶解しなければ、前記極性有機溶媒、前記複合粒子および前記被覆層成分、または前記極性有機溶媒、前記複合粒子、前記被覆層成分および前記極性有機溶媒以外の溶媒をいかなる順に加えて液Aを調製する工程でもかまわず、好ましくは、本発明の複合粒子が分散した極性有機溶媒を含む液(液B)を調製し、液B中の極性有機溶媒と同一または異なった極性有機溶媒を含む溶媒に被覆層成分を溶解させた液(液C)を調製し、液Bと液Cを混合して調製する工程があげられる。液Bと液Cを混合して液Aを調製する際には、徐々に混合することが好ましい。
【0082】
例えば被覆層が脂質膜である本発明の被覆複合粒子の好ましい製造方法としては、以下の方法があげられる。
(工程1)本発明の複合粒子を極性有機溶媒含有水溶液、好ましくはエタノール等のアルコール類を含有する水溶液に分散(懸濁)させる。
(工程2)上記極性有機溶媒含有水溶液と同一または異なった極性有機溶媒含有水溶液、好ましくは同一の極性有機溶媒含有水溶液または極性有機溶媒に脂質膜となる脂質および/または界面活性剤(脂質膜を構成する成分)を溶解する。このとき、さらに水溶性高分子誘導体(例えば、ポリエチレングリコール修飾脂質誘導体等)を添加してもよく、ここで添加する水溶性高分子誘導体の量は特に限定されるものではない。
(工程3)工程1で得られた液と工程2で得られた液を混合する。
(工程4)工程3で得られた混合液に少しずつ水を添加するか、該混合液を透析するかまたは該混合液から極性有機溶媒を留去し、該混合液中の極性有機溶媒の相対的割合を減少させ、脂質膜で被覆された被覆複合粒子を、懸濁液の形態で得る。
【0083】
用いる複合粒子の種類や、用いる被覆層成分の種類によらず基本的には前記と同様な方法で本発明の被覆複合粒子を製造することができる。リード粒子がリポソームを構成成分とする微粒子であって、被覆層成分が脂質および/または界面活性剤であって、被覆層が脂質膜である被覆複合粒子は、その構成から狭義のリポソームと分類され、リード粒子がリポソームを構成成分とする微粒子以外で、被覆層成分が脂質および/または界面活性剤であって、被覆層が脂質膜である被覆複合粒子は、広義のリポソームと分類される。本発明において、リード粒子の構成成分も被覆複合粒子もリポソームであることがより好ましい。
【0084】
本発明の被覆複合粒子の製造方法において用いられる本発明の複合粒子の液Aおよび液Bに対する割合は、該複合粒子を被覆層成分で被覆できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLが好ましく、0.1〜500mg/mLがより好ましい。また、用いられる被覆層成分(例えば脂質等)の液Aおよび液Cに対する割合は、本発明の複合粒子を被覆できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLが好ましく、0.1〜400mg/mLがより好ましい。本発明の複合粒子に対する被覆層成分の割合は、重量比で1:0.1〜1:1000が好ましく、1:1〜1:10がより好ましい。
【0085】
また、本発明の被覆複合粒子および本発明の被覆複合粒子の製造方法によって得られる被覆複合粒子の大きさは、平均粒子径が350nm以下であるのが好ましく、300nm以下であるのがより好ましく、200nm以下であるのがさらに好ましい。具体的には、例えば注射可能な大きさであるのが好ましい。
【0086】
さらに、上記で得られる被覆複合粒子に抗体等の蛋白質、糖類、糖脂質、アミノ酸、核酸、種々の低分子化合物、高分子化合物等の物質による修飾を行うこともでき、これらで得られる被覆複合粒子も本発明の被覆複合粒子に包含される。例えば、ターゲッティングに応用するため、上記で得られる被覆複合粒子に対して、さらに抗体等の蛋白質、ペプチド、脂肪酸類等による脂質膜表面修飾を行うこともでき[ラジック(D.D.Lasic)、マーティン(F.Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”,(米国),シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc.),1995年,p.93−102参照]、また、リード粒子の構成成分であるリポソームのときと同様に例えば非イオン性界面活性剤(前記と同義)、カチオン性界面活性剤(前記と同義)、アニオン性界面活性剤(前記と同義)、高分子(前記と同義)、ポリオキシエチレン誘導体(前記と同義)等による表面改質も任意に行うことができ、これら脂質膜表面修飾または表面改質されたものも本発明の被覆複合粒子に包含される。
【0087】
本発明の被覆複合粒子は、例えば血液成分等の生体成分、消化管液等に対する薬剤の安定化、副作用の低減、腫瘍等の標的臓器への薬剤集積性の増大、経口や経粘膜での薬剤の吸収の改善等を目的とする製剤として使用できる。
【0088】
本発明の被覆複合粒子を製剤として使用する場合、上述の方法により調製した被覆複合粒子の懸濁液をそのまま例えば注射剤等の形態として用いることも可能であるが、該懸濁液から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して使用することも、該懸濁液、または例えばマンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトース、グリシン等の賦形剤を加えた該懸濁液を凍結乾燥して使用することもできる。
【0089】
注射剤の場合、前記の被覆複合粒子の懸濁液または前記の溶媒を除去または凍結乾燥した被覆複合粒子に、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を混合して注射剤を調製することが好ましい。また、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、EDTA等の抗酸化剤、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等を添加して注射剤を調製することも可能である。また、例えばグリセリン等の凍結保存剤を加えて凍結保存することもできる。
【0090】
また、本発明の被覆複合粒子は、適当な賦形剤等と共に造粒、乾燥する等して例えばカプセル剤、錠剤、顆粒剤等の経口用製剤に加工してもよい。
【0091】
次に、実施例により、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0092】
なお、本実施例において用いたODNは、ホスホロチオエート型、20mer、5’末FITC標識、5’ACTAGTGGCTAGCGAATCTC3’、タカラバイオ社である。
【0093】
また、本実施例において用いたプラスミドは、
CAGプロモーターに連結したβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含む8.5kbのプラスミド(以下、pCAG−LacZ)、またはCAGプロモーターに連結したRLuc遺伝子を含む6.1kbのプラスミド(以下、pCAG−RLuc)である。
【0094】
pCAG−Rlucプラスミドは、次の方法で調製した。
プラスミドpRL−null vector[プロメガ(Promega)社製]1μgを30μLのバッファー(pH7.5)[Universal Buffer H;50mmol/Lトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、6.6mmol/L塩化マグネシウム、10mmol/Lジチオスレイトールおよび100mmol/L塩化ナトリウム、宝酒造社製、以下同様]に溶解し、10単位の制限酵素Sal IとEcoR Iを加えて37℃で2時間消化反応を行った。得られた反応溶液をアガロースゲル電気泳動に付した後、3.3kbpのDNA断片を精製キット[QIAEX II Gel Extraction Kit、クアゲン(QIAGEN)社製、以下同様]を用いて回収した。
次に国際公開第01/33957号パンフレットに記載のプラスミドpBSKS(+)CAG promoter1μgを30μLのバッファー(pH7.5)に溶解し、制限酵素Sal IとEcoR Iを加えて37℃で2時間消化反応を行った、得られた反応溶液をアガロースゲル電気泳動に付した後、1.7kbpのCAGプロモーターを含むDNA断片を精製キットを用いて回収した。
上記で得られた、プラスミドpRL−null vector由来のSal I−EcoR I断片(3.3Kbp)0.1μgおよびプラスミドpBSKS(+)CAG promoter由来のSal I−EcoR I断片(1.7kbp)0.1μgをT4リガーゼ緩衝液[66mmol/Lトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、10mmol/L塩化マグネシウム、1mmol/Lジチオスレイトールおよび0.1mmolアデノシン三リン酸、宝酒造社製]30μLに溶解し、T4 DNAリガーゼ100単位(宝酒造社製)を加え、16℃で16時間連結反応を行った。
得られた反応液を用いて大腸菌DH5α(東洋紡社製)をコーエンらの方法[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)”,1972年,第69巻,p.2110−2114参照]によって形質転換し、アンピシリン耐性株を得た。この形質転換株から公知の方法に従ってpCAG−Rlucプラスミドを単離した。
【0095】
また、本実施例において用いたsiRNAは、5’末をFITC標識したセンス配列5’
CUGGAUCGUAAGAAGGCAGdT.dT3’とアンチセンス配列5’
CUGCCUUCUUACGAUCCAGdTdT3’とからなるsiRNAである。
【実施例1】
【0096】
DOTAP[アバンティー(Avanti)社製、以下同様]/PEG−DSPE(日本油脂製、以下同様)/蒸留水を30mg/6mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製、以下同様)に4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製、以下同様)に10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製、以下同様)に24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、15mg/mLのODN水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例2】
【0097】
DOTAP/PEG−DSPE/蒸留水を30mg/9mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、15mg/mLのODN水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例3】
【0098】
DOTAP/PEG−DSPE/蒸留水を30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、15mg/mLのODN水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例4】
【0099】
DOTAP/PEG−DSPE/蒸留水を30mg/18mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、15mg/mLのODN水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例5】
【0100】
DOTAP/PEG−DSPE/蒸留水を30mg/24mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、15mg/mLのODN水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例6】
【0101】
DOTAP/ポリオキチエチレン硬化ヒマシ油[HCO−60、日本油脂製]/蒸留水を30mg/24mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、15mg/mLのODN水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【0102】
比較例1
DOTAP/蒸留水を30mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、15mg/mLのODN水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例7】
【0103】
実施例1と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、8mg/mLのpCAG−RLucプラスミド水溶液0.005mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例8】
【0104】
実施例2と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、8mg/mLのpCAG−RLucプラスミド水溶液0.005mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例9】
【0105】
実施例3と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、8mg/mLのpCAG−RLucプラスミド水溶液0.005mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例10】
【0106】
実施例4と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、8mg/mLのpCAG−RLucプラスミド水溶液0.005mLを添加して複合粒子を調製した。
【実施例11】
【0107】
実施例5と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、8mg/mLのpCAG−RLucプラスミド水溶液0.005mLを添加して複合粒子を調製した。
【0108】
比較例2
比較例1と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.02mLに、8mg/mLのpCAG−RLucプラスミド水溶液0.005mLを添加して複合粒子を調製した。
【0109】
試験例1
実施例1〜11および比較例1〜2で得られた各複合粒子について、複合粒子の平均粒子径を動的光散乱(DLS)測定装置(NanoZS、マルバーン社製)で測定した。
結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
実施例1〜11で調製された複合粒子では、平均粒子径が300nm以下であったので凝集が抑制されたと考えられるのに対し、比較例1および2で調製された複合粒子では、平均粒子径が300nmより大きくなった。
【実施例12】
【0112】
DOTAP/PEG−DSPE[アバンティー(Avanti)社製、以下同様]/蒸留水を30mg/12mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.04mLに、2mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【0113】
比較例3
DOTAP/蒸留水を30mg/mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.04mLに、2mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.01mLを添加して複合粒子を調製した。
【0114】
試験例2
実施例12および比較例3で調製された各複合粒子の凝集物の生成を目視で観察した。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
表2からわかるように、実施例12で調製された複合粒子ではプラスミドを添加しても凝集物の生成が認められなかったのに対し、比較例3で調製された複合粒子では凝集物の生成が認められた。
【実施例13】
【0117】
実施例12と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.5mLに、0.5mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.25mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、被覆層成分のEPC[日本油脂製;以下同様]/PEG−DSPEを120mg/25mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.25mLを添加し、次に蒸留水23mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例14】
【0118】
実施例12と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.5mLに、3mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.25mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液から、実施例13と同様に被覆複合粒子の調製を経て、製剤を得た。
【実施例15】
【0119】
実施例12と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.5mLに、2mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.125mLを、および6mg/mLのデキストラン硫酸(メルク社製、以下同様)水溶液0.125mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液から、実施例13と同様に被覆複合粒子の調製を経て、製剤を得た。
【実施例16】
【0120】
実施例12と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.5mLに、1mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.125mLおよび12mg/mLのデキストラン硫酸水溶液0.125mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液から、実施例13と同様に被覆複合粒子の調製を経て、製剤を得た。
【実施例17】
【0121】
実施例12と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.5mLに、1mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.125mLおよび3mg/mLのデキストラン硫酸水溶液0.125mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液を、実施例13と同様に被覆複合粒子の調製を経て、製剤を得た。
【実施例18】
【0122】
実施例12と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.5mLに、1mg/mLのpCAG−LacZプラスミド水溶液0.125mLおよび3mg/mLのデキストランフルオレセインアニオニック(モレキュラープローブス社製)水溶液0.125mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液から、実施例13と同様に被覆複合粒子の調製を経て、製剤を得た。
【0123】
試験例3
実施例13〜18で得られた各製剤について、被覆微粒子の平均粒子径を動的光散乱(DLS)測定装置(A model ELS−800、大塚電子製)で測定した。結果を表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
実施例13〜18で得られたいずれの製剤おいても、平均粒子径が350nm以下であったので、被覆複合粒子の製造工程中に複合粒子の凝集が抑制されたと考えられる。
【0126】
試験例4
実施例13および実施例15〜17で得られた各製剤における、プラスミドおよびEPCの仕込み量に対する回収率を以下のように求めた。
各製剤を水で10倍希釈し、この希釈液200μLに10w/v%トライトンエックス−100(TritonX−100、和光純薬製、以下同様)水溶液200μLを加え、2μg/mLエチジウムブロマイド(和光純薬社製)水溶液200μL、さらに生理食塩水1400μLを加えた。蛍光光度計(日立、F−4500)を使用して、励起波長580nmおよび蛍光波長615nmでの蛍光を測定することにより、各製剤中のプラスミドを定量した。また、製剤中のEPCを、リン脂質Cテストワコー(和光純薬製、以下同様)による酵素法により定量した。プラスミドおよびEPCの回収率は、それぞれ下記式(1)および(2)で算出した。結果を表4に示す。
【0127】
【数1】

【0128】
【表4】

【0129】
表4からわかるように、実施例13および15〜17で得られた製剤では、いずれもプラスミドの回収率が50%以上と高く、被覆用脂質による複合粒子の被覆が良好である。また、付着競合剤を含有する実施例15〜17で得られた製剤では、EPCの回収率もおよそ50%以上と高く、被覆用脂質による複合粒子の被覆が効率よくもあり、より好ましい。
【実施例19】
【0130】
実施例12と同様にリード粒子を調製した。得られたリード粒子の懸濁液0.5mLに、2mg/mLのsiRNA水溶液0.125mLおよび6mg/mLのデキストラン硫酸水溶液0.125mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、被覆層成分のEPC/PEG−DSPEを120mg/25mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.25mLを添加し、次に蒸留水23mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加し、次に、120重量部のEPCに対し50重量部のPEG−DSPE(複合粒子懸濁液の4vol%)を少量のエタノールに溶解して混合し、70℃で2分間加温して、製剤を得た。
【0131】
試験例5
実施例19で得られた製剤における被覆微粒子の平均粒子径をDLS測定装置(A model ELS−800、大塚電子製)で測定した。結果を表5に示す。
【0132】
【表5】

【0133】
なお、実施例19で得られた製剤おいて、平均粒子径が350nm以下であったので、被覆複合粒子の製造工程中に複合粒子の凝集が抑制されたと考えられる。
【0134】
試験例6
実施例19で得られた製剤における、siRNAおよびEPCの仕込み量に対する回収率を以下のように求めた。
製剤を水で20倍希釈し、この希釈液50μLに10w/v%Triton X−100水溶液50μLを加え、さらに生理食塩水400μLを加えた。蛍光マイクロプレートリーダー(ワラック(WALLAC)、アルボエスエックス1420マルチラベルカウンター(ARVOTMSX 1420 Multilabel counter))を使用して、励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光を測定することにより、製剤中のsiRNAを定量した。また、製剤中のEPCを、リン脂質Cテストワコー(和光純薬製)による酵素法により定量した。siRNAおよびEPCの回収率は、それぞれ下記式(3)および(4)で算出した。結果を表6に示す。
【0135】
【数2】

【0136】
【表6】

【0137】
表6からわかるように、実施例19で得られた製剤では、siRNAの回収率が50%以上と高く、被覆用脂質による複合粒子の被覆が良好であり、EPCの回収率も50%以上と高く、被覆用脂質による複合粒子の被覆が効率よくもあった。
【実施例20】
【0138】
実施例3と同様にリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.25mLに、15mg/mLのODN水溶液0.125mLを添加して複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPCを120mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例21】
【0139】
実施例20と同様に複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPC/PEG−DSPE(日本油脂製、以下同様)を120mg/10mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。
得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、PBSを添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例22】
【0140】
実施例20と同様に複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPC/PEG−DSPEを120mg/25mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。
得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、PBSを添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例23】
【0141】
実施例20と同様に複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPC/PEG−DSPEを120mg/50mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。
得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、PBSを添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例24】
【0142】
実施例3と同様にリード粒子を調製した。
得られたリード粒子の懸濁液0.25mLに、2mg/mLのpCAG−RLucプラスミド水溶液0.0625mL、および20mg/mLのデキストラン硫酸水溶液0.0625mLを添加して複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPCを120mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例25】
【0143】
実施例24と同様に複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPC/PEG−DSPEを120mg/10mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。
得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例26】
【0144】
実施例24と同様に複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPC/PEG−DSPEを120mg/25mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。
得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加して再懸濁して製剤を得た。
【実施例27】
【0145】
実施例24と同様に複合粒子を調製した。
得られた複合粒子の懸濁液に、エタノール0.5mLを加え、さらに被覆層成分のEPC/PEG−DSPEを120mg/50mg/mLになるようにエタノールに溶解した溶液0.125mLを添加し、次に蒸留水11.5mLを徐々に加え、エタノールの濃度が5vol%以下になるよう調整し被覆複合粒子を調製した。
得られた被覆複合粒子の懸濁液を超遠心(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加して再懸濁して製剤を得た。
【0146】
試験例7
実施例20〜27で得られた各製剤について、被覆微粒子の平均粒子径をDLS測定装置(NanoZS、マルバーン社製)で測定した。結果を表7に示す。
【0147】
【表7】

【0148】
実施例20〜27で得られた製剤おいて、平均粒子径が350nm以下であったので、被覆複合粒子の製造工程中に複合粒子の凝集が抑制されたと考えられる。
【0149】
試験例7
実施例20〜27で得られた各製剤における、EPCの仕込み量に対する回収率を試験例4と同様に求めた。結果を表8に示す。
【0150】
【表8】

【0151】
表8からわかるように、実施例20〜27で得られた製剤では、EPCの回収率がいずれも高く、被覆用脂質による複合粒子の被覆が効率よく行われていた。また、被覆層成分全体に対する水溶性高分子誘導体の割合が、重量比で1:0.25〜1:0.01である実施例21、22、25および26で得られた製剤は、被覆微粒子の平均粒子径がより小さくかつEPCの回収率がより高く、より好ましかった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明により、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制方法、その製造方法等が提供され、また凝集抑制された複合粒子を被覆層で被覆した被覆複合粒子の製造方法、該製造方法によって製造できる被覆複合粒子等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード粒子に薬物が付着した複合粒子において、該リード粒子に糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有させることを特徴とする該複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項2】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である請求項1記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項3】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である請求項1記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項4】
リード粒子に薬物が付着した複合粒子が、リード粒子が分散した液中に、薬物を分散または溶解して含有させて該リード粒子に薬物を付着させることにより得られる複合粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項5】
リード粒子に薬物が付着した複合粒子が、リード粒子に薬物が静電的に付着した複合粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項6】
リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつリード粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項7】
リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項8】
薬物が、核酸である請求項1〜7のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項9】
薬物としての核酸が、遺伝子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質である請求項8記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項10】
リード粒子に薬物が付着した複合粒子が、リード粒子に薬物および付着競合剤が付着した複合粒子である請求項1〜9のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項11】
リード粒子に薬物および付着競合剤が付着した複合粒子が、リード粒子が分散した液中に、薬物および付着競合剤を分散または溶解して含有させて該リード粒子に薬物および付着競合剤を付着させることにより得られる複合粒子である請求項10記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項12】
リード粒子に薬物および付着競合剤が付着した複合粒子が、リード粒子に薬物および付着競合剤が静電的に付着した複合粒子である請求項10または11記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項13】
付着競合剤が、脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチドおよび高分子から選ばれる1つ以上の物質である請求項10〜12のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項14】
付着競合剤が、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸およびデキストランフルオレセインアニオニックから選ばれる1つ以上の物質である請求項10〜12のいずれかに記載の複合粒子の凝集抑制方法。
【請求項15】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有する、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の凝集抑制剤。
【請求項16】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である請求項15記載の複合粒子の凝集抑制剤。
【請求項17】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である請求項15記載の複合粒子の凝集抑制剤。
【請求項18】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物として核酸を分散または溶解して含有させて、該リード粒子に薬物としての該核酸を付着させる工程を含む、リード粒子に薬物としての該核酸が付着した複合粒子の製造方法。
【請求項19】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子が分散した液中に、薬物および付着競合剤を分散または溶解して含有させて、該リード粒子に該薬物および該付着競合剤を付着させる工程を含む、リード粒子に薬物が付着した複合粒子の製造方法。
【請求項20】
付着競合剤が、脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチドおよび高分子から選ばれる1つ以上の物質である請求項19記載の複合粒子の製造方法。
【請求項21】
付着競合剤が、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸およびデキストランフルオレセインアニオニックから選ばれる1つ以上の物質である請求項19記載の複合粒子の製造方法。
【請求項22】
薬物が、核酸である請求項19〜21のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項23】
薬物としての核酸が、遺伝子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質である請求項18または22記載の複合粒子の製造方法。
【請求項24】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である請求項18〜23のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項25】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である請求項18〜23のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項26】
リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつリード粒子である請求項18〜25のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項27】
リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子である請求項18〜25のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項28】
請求項18〜27のいずれかに記載の複合粒子の製造方法によって製造できる複合粒子。
【請求項29】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子、
および該リード粒子に付着した薬物としての核酸を含有する複合粒子。
【請求項30】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有するリード粒子、
該リード粒子に付着した薬物、
および該リード粒子に付着した付着競合剤を含有する複合粒子。
【請求項31】
付着競合剤が、脂質、界面活性剤、核酸、蛋白質、ペプチドおよび高分子から選ばれる1つ以上の物質である請求項30記載の複合粒子。
【請求項32】
付着競合剤が、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸およびデキストランフルオレセインアニオニックから選ばれる1つ以上の物質である請求項30記載の複合粒子。
【請求項33】
薬物が、核酸である請求項30〜32のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項34】
薬物としての核酸が、遺伝子、DNA、RNA、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質である請求項29または33記載の複合粒子。
【請求項35】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体である請求項29〜34のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項36】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が、ポリエチレングリコール化脂質、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルから選ばれる1つ以上の物質である請求項29〜34のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項37】
リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつリード粒子である請求項29〜36のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項38】
リード粒子が、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質を含有するリポソームを構成成分とする微粒子である請求項29〜36のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項39】
請求項28〜38のいずれかに記載の複合粒子が分散し、かつ被覆層成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する工程、
次いで、液A中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、複合粒子を被覆層成分からなる被覆層で被覆する工程を含む被覆複合粒子の製造方法。
【請求項40】
液Aを調製する工程が、請求項28〜38のいずれかに記載の複合粒子が分散した極性有機溶媒を含む液(液B)を調製する工程、
液B中の極性有機溶媒と同一または異なった極性有機溶媒を含む溶媒に被覆層成分を溶解させた液(液C)を調製する工程、
および液Bと液Cを混合する工程を含む工程である請求項39記載の被覆複合粒子の製造方法。
【請求項41】
被覆層が脂質膜である請求項39または40記載の被覆複合粒子の製造方法。
【請求項42】
被覆層が水溶性高分子誘導体を含有する被覆層である請求項41記載の被覆複合粒子の製造方法。
【請求項43】
請求項39〜42のいずれかに記載の被覆複合粒子の製造方法によって製造できる被覆複合粒子。
【請求項44】
請求項28〜38のいずれかに記載の複合粒子および該複合粒子を被覆する被覆層からなる被覆複合粒子であって、
該被覆層を構成する被覆層成分が、該複合粒子が不溶でかつ分散できる濃度範囲で極性溶媒を含む溶媒に、相対的に極性溶媒の濃度が高いときには溶解し、低いときには析出または集合する成分である被覆複合粒子。
【請求項45】
被覆層が脂質膜である請求項44記載の被覆複合粒子。
【請求項46】
被覆層が水溶性高分子誘導体を含有する被覆層である請求項45記載の被覆複合粒子。
【請求項47】
被覆複合粒子の平均粒子径が300nm以下である請求項44〜46のいずれかに記載の被覆複合粒子。

【国際公開番号】WO2005/092389
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−511425(P2006−511425)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004241
【国際出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】