説明

複合粒子水性分散液の貯蔵安定性を改善する方法

本発明の主題は、複合粒子水性分散液及びそれを含有する水性配合物の貯蔵安定性を改善する方法を提供することであった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明の主題は、ポリマー及び微細の無機固体から構成された粒子(複合粒子)の水性分散液の貯蔵安定性を改善する方法において、水性媒中に分散した複合粒子(複合粒子−分散液)の製造の前、製造の間及び/又は製造の後に、この水性分散媒質に一般式
【化1】

[式中、
1〜R3:−C1〜C10−アルコキシ、
−非置換又は置換したC1〜C30−アルキル、
−非置換又は置換したC5〜C15−シクロアルキル、
−非置換又は置換したC6〜C10−アリール、
−非置換又は置換したC7〜C12−アラルキル、
4:CH2−[CHR5]φ−[O−CH2CH2x−[O−CH2−CH(CH3)]y−O−Z、
5:水素、C1〜C4−アルキル、
Z:水素、C1〜C4−アルキル、
n:0〜5の整数、
φ:0〜5の整数、
x:1〜30の整数、
y:0〜30の整数、
この場合、基R1〜R3の少なくとも1つはC1〜C10−アルコキシである]
の有機シラン化合物Iを添加することを特徴とする方法である。
【0002】
同様に、本発明の主題は、本発明の方法により得られる複合粒子水性分散液並びにかかる複合粒子水性分散液を含有する水性配合物である。
【0003】
複合粒子水性分散液は一般に知られている。これらは、水性分散媒中の分散相として、互いに組み合わさった複数のポリマー鎖からなるポリマーコイル、いわゆるポリマーマトリックス及び微細な無機固体から構成された粒子を分散分布させて含有する流動系である。この複合粒子の直径は、特に10〜5000nmの範囲内である。
【0004】
複合粒子及び複合粒子水性分散液の形でのその製造方法並びにその使用は当業者に公知であり、例えば刊行物US−A3,544,500、US−A4,421,660、US−A4,608,401、US−A4,981,882、EP−A104498、EP−A505230、EP−A572128、GB−A2227739、WO0118081、WO0129106、WO03000760並びにLongら著, Tianjin Daxue Xuebao 1991 , 4, 第10頁〜第15頁、Bourgeat-Lamiら著, Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1996, 242, 第105頁〜第122頁、Paulkeら著, Synthesis Studies of Paramagnetic Polystyrene Latex Particles in Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers, 第69頁〜第76頁, Plenum Press, New York, 1997、Armesら著, Advanced Materials 1999, 11 , No.5, 第408頁〜第410頁に開示されている。
【0005】
この複合粒子水性分散液又はそれを含有する水性配合物の欠点は、長期貯蔵の際に、特に≧40℃の温度の場合、粘度増大ないしはゲル化を示しうることである。このために、この複合粒子水性分散液又はそれを含有する水性配合物の加工が困難になる。極端な場合には、この複合粒子水性分散液又はそれを含有する水性配合物は加工のために使用することができないことすらありうる。
【0006】
複合粒子水性分散液の安定化のためには以下の技術水準から出発する。
【0007】
WO 05083015は、複合粒子水性分散液をヒドロキシ基含有アルキルアミノ化合物の添加により安定化することを開示する。
【0008】
出願番号08155200.2を有する予備公開されていないヨーロッパ特許出願においては、複合粒子水性分散液の貯蔵安定性を両性イオン化合物の添加により改善することが提案される。
【0009】
本発明の課題は、複合粒子水性分散液及びそれを含有する水性配合物の貯蔵安定性を改善するための代替的な又はより効率的な方法を提供することであった。
【0010】
これに応じて、冒頭に定義された方法を見出した。
【0011】
この刊行物の範囲においては、この場合に、「複合粒子水性分散液の製造の前」とは、重合反応の開始前の任意の時間点でのシラン化合物Iの添加、「複合粒子水性分散液の製造の間」とは、重合反応の間の任意の時間点でのシラン化合物Iの添加、そして、「複合粒子水性分散液の製造の後」とは、重合反応の終了後の任意の時間点でのシラン化合物Iの添加であって、水性分散媒への添加を意味する。この場合に、水性分散媒を重合反応の終了後になお少量(全モノマー量に対して≦5質量%、好ましくは≦2質量%、特に好ましくは≦1質量%)の未反応エチレン性不飽和モノマー、いわゆる残留モノマーを含有できることは当業者にとっては勿論である。
【0012】
本発明の方法にとって特に好ましいのは、シラン化合物Iを複合粒子水性分散液の水性分散媒に複合粒子水性分散液の製造後に添加する場合である。この場合、「複合粒子水性分散液の製造の後」の意味は、その製造の際に他の配合物構成成分に加え、複合粒子水性分散液、そして別個に少なくとも1のシラン化合物Iを添加する水性配合物の製造をも含むことは勿論である。
【0013】
この場合に、シラン化合物Iは水性媒に、複合粒子水性分散液の製造の前、製造の間及び/又は製造の後に、別個の単一流として又は他の成分と混合して不連続的に1以上の分量で又は連続的に変わらないか又は変化する流量で計量供給されることができる。
【0014】
少なくとも1のシラン化合物Iを含有する複合粒子水性分散液又はそれを含有する水性配合物がpH値≧4、≧5、≧6又は≧7を有し、かつ≦10、≦11、≦12又は≦13を有する場合が好ましい。好ましくはpH値を、≧7かつ≦11の範囲内に調節する。特に好ましくは、複合粒子水性分散液は、シラン化合物Iの添加に先立ち既にpH値を≧7かつ≦11の範囲内に有する。このpH値の測定を本発明により20〜25℃(室温)で検定されたpHメーターを用いて行う。
【0015】
この場合に、一般式(I)の有機シラン化合物中、置換基R1〜R3は次のものである:
−C1〜C10−アルコキシ、特にメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ又はイソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、特に好ましくはメトキシ及びエトキシ、
−非置換又は置換したC1〜C30−アルキル、しかし特に非置換アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル及びその異性体又は置換したアルキル、例えば1又は複数のアミノ−、アセトキシ−、ベンゾイル−、ハロゲン−、シアノ−、グリシジルオキシ−、ヒドロキシ−、イソシアナト−、メルカプト−、フェノキシ−、ホスファート−又はイソチオシアナト基で置換したアルキル、
−非置換又は置換した(相応する置換基はC1〜C30−アルキルを参照)C5〜C15−シクロアルキル、しかし特にシクロペンチル又はシクロヘキシル、
−非置換又は置換した(相応する置換基はC1〜C30−アルキルを参照)C6〜C10−アリール、しかし特にフェニル、ハロゲンフェニル又はクロロスルホニルフェニル、又は
−非置換又は置換した(相応する置換基はC1〜C30−アルキルを参照)C7〜C12−アラルキル、しかし特にベンジル、
その際、基R1〜R3の少なくとも1はC1〜C10−アルコキシである。好ましくは、基R1〜R3の少なくとも2は、特に好ましくは基R1〜R3の全ては、C1〜C10−アルコキシであり、その際、メトキシ−及び/又はエトキシ基が特に好ましい。基R1〜R3のうち単に1又は2がC1〜C10−アルコキシである場合には、残っている基は好ましくはC1〜C10-アルキルである。
【0016】
さらに、有機シラン化合物I中次のことが当てはまる:
5:水素、C1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、その際水素が特に好ましい、
Z:水素、C1〜C4−アルキル、例えばR5について記載のもの、その際水素又はメチルが特に好ましい、
n:0〜5の整数、好ましくは0〜1、特に好ましくは0、
φ:0〜5、好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは2、
x:1〜30、好ましくは3〜20、特に好ましくは6〜15の整数、及び
y:0〜30、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5の整数。
【0017】
重要であるのは更に、置換基R4において構造要素−[O−CH2CH2x−[O−CH2−CH(CH3)]y−はx個のエチレンオキシ単位から構成されるブロック及びy個のプロピレンオキシ単位から構成されるブロックでも、同様にx個のエチレンオキシ単位及びy個のプロピレンオキシ単位から構成されるコポリマー単位でもあることである。この場合に、プロピレンオキシ単位−[O−CH2−CH(CH3)]はその異性体構造−[O−CH(CH3)−CH2]をも含むことが当業者にとっては勿論のことである。
【0018】
特に好ましくは、R1〜R3がメトキシ又はエトキシ、R5が水素、Zが水素又はメチル、n及びyが数0、φが数2、そしてxが数≧3及び≦20であるシラン化合物Iであり、その際、3−[メトキシ−{トリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシランであってエトキシル化度6〜9を有するもの、3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシランであってエトキシル化度9〜12を有するもの、及び/又は3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシランであってエトキシル化度12〜15を有するものが特に好ましい。
【0019】
本発明の方法においてシラン化合物Iの量は好ましくは、複合粒子水性分散液の全量に対してそのつど0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。この場合、シラン化合物Iの全量を、複合粒子の製造前に水性分散媒に添加してよい。少なくとも一部分量のシラン化合物Iを、複合粒子の製造前に、この水性媒に添加し、そしてその残っている残量を、複合粒子の製造の間か又は製造の後にこの水性媒に添加することも可能である。しかしながら、シラン化合物Iの全量を、複合粒子水性分散液又はそれを含有する水性配合物に添加することが好ましい。しかしながら、シラン化合物Iの部分量を複合粒子水性分散液に添加し、そしてシラン化合物Iの残っている残量を、この複合粒子水性分散液を含有する水性配合物に添加することも可能である。
【0020】
本発明の方法は、WO03000760号に開示された方法により製造された複合粒子水性分散液に好ましく好適であり、この刊行物はその範囲において本出願において参照をもって開示されたものとする。この方法は、少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーが水性媒中に分散分布し、少なくとも1つのラジカル重合開始剤を用いて少なくとも1の分散分布された微細の無機固体及び少なくとも1つの分散剤の存在でラジカル水性エマルション重合の方法により重合し、その際、
a)少なくとも1の無機固体の水性分散液に対して出発固体濃度≧1質量%で、その製造1時間後になお90質量%よりも多くの当初分散された固体を分散した形で含み、かつ、その分散された固体粒子が質量平均直径≦100nmを有することにより特徴付けられる少なくとも1の無機固体の安定な水性分散液を使用し、
b)少なくとも1の無機固体の分散された固体粒子が標準塩化カリウム水溶液中で分散剤の添加開始前の水性分散媒のpH値に相当するpH値で0とは異なる電気泳動移動度を示し、
c)固体粒子水性分散液に少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーの添加開始前に少なくとも1のアニオン分散剤、カチオン分散剤及び非イオン分散剤が混合され、
d)その後に少なくとも1つのモノマーの全体量の中、固体粒子水性分散液の0.01〜30質量%が添加され、少なくとも90%の変換率になるまで重合され、
及び
e)引続き、少なくとも1つのモノマーの残量が重合条件下で消費の程度に応じて連続的に添加されることにより特徴付けられる。
【0021】
本発明の方法は、出願番号09157984.7を有する、出願人の1人により提出された優先権の基礎となるヨーロッパ特許出願により開示された方法により製造された複合粒水性子分散液にも同様に好ましく好適であり、この刊行物はその範囲において本出願において参照をもって開示されたものとする。この方法は、少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーが水性媒中に分散分布し、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて少なくとも1の分散分布された微細の無機固体及び少なくとも1の分散助剤の存在下でラジカル水性エマルション重合の方法によりラジカル水性エマルション重合の方法により重合し、その際、
a)エチレン性不飽和モノマーの全量(全モノマー量)に対して、平均粒径≦100nmを有する無機固体1〜1000質量%及びラジカル重合開始剤0.05〜2質量%を使用し、
b)少なくとも部分量の無機固体を水性重合媒質中で固体水性分散液の形で装入し、これに続き、
c)得られる固体水性分散液に全体で全モノマー量の≧0.01質量%かつ≦20質量%及びラジカル重合開始剤の全量の≧60質量%を計量供給し、この計量供給されたエチレン性不飽和モノマーを重合条件下でモノマー変換率≧80質量%まで重合し(重合工程1)、これに続き、得られた重合混合物に
d)場合によって残っている無機固体の残量、場合によって残っているラジカル重合抑開始剤の残量及び残っているエチレン性不飽和モノマーの残量を重合条件下で計量供給し、モノマー変換率≧90質量%まで重合する(重合工程2)ことにより特徴付けられる。
【0022】
WO03000760に開示される方法には、安定な水性分散液を形成する全種の微細の無機固体が好適であり、この水性分散液は、出発固体濃度が少なくとも1の無機固体の水性分散液に対して≧1質量%の場合、その製造1時間後になお、撹拌又は振盪なしに、当初分散した固体の90質量%より多くを分散した形で含有し、かつその分散した固体が直径≦100nmを有し、更に、分散剤の添加開始前の水性反応媒質のpH値に相当するpH値で0でない電気泳動移動度を示す。
【0023】
出発固体濃度及び一時間後の固体濃度の定量的測定並びに粒子直径測定は、超遠心分離分析法によって行う(S.E.ハーディングら著、生物化学及びポリマー科学における超遠心分析、ロイヤルソサエティー・オブ・ケミストリー、ケンブリッジ、英国、1992年、第10章、Eight−Cell−AUC−マルチプレクサーを用いるポリマー分散液の分析(S.E.Harding et al., Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science, Royal Society of Chemistry, Cambridge, Great Britain 1992, Chapter 10, Analysis of Polymer Dispersions with an Eight-Cell-AUC-Multiplexer):高分解粒径分布及び密度勾配テクニック、W.メヒトル著、147〜175頁(High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques, W. Maeschtle, Seiten 147 bis 175)を参照のこと)。粒子直径で挙げられた値は、いわゆるd50値に相当する。
【0024】
電気泳動移動度を測定する方法は、当業者に公知である(例えば、R.J.ハンター著、現代コロイド科学への招待、第8.4章、第241〜248頁、オックスフォード大学出版、オックスフォード、1993年(R.J. Hunter, Introduction to modern Colloid Science, Kapitel8.4, Seiten 241 bis 248, Oxford University Press, Oxford, 1993)並びにK.オカ及びK.フルサワ 界面における電気的現象、界面活性剤科学シリーズ、第76巻、第151〜232頁、マーセルデッカー、ニューヨーク(K. Oka und K. Furusawa, in Electrical Phenomena at Interfaces, Surfactant Science Series, Vol.76, Kapitel8, Seiten 151 bis 232, Marcel Dekker, NewYork, 1998)を参照のこと)。この水性反応媒質中に分散された固体粒子の電気泳動移動度は、市販の電気泳動装置、例えばMalvern Instruments Ltd.社製のZetasizer3000を用いて、20℃及び1バール(absolut)で測定される。このために、この固体粒子水性分散液を、pH中性の10ミリモーラー(mM)の塩化カリウム水溶液(標準塩化カリウム溶液)で希釈して、この固体粒子濃度を約50mg/l〜約100mg/lにする。分散剤の添加開始前の水性反応媒質が有するpH値への前記測定試料の調節は、通常の無機酸、例えば希釈された塩酸若しくは硝酸又は塩基、例えば希釈された苛性ソーダ液若しくは苛性カリ液を用いて行なわれる。分散された固体粒子の電場での移動は、いわゆる電気泳動光散乱法を用いて検出される(例えば、B.R.ヴァーレ及びW.H.フライガーレ著、ケミカルフィジクスレタース、1971年、第12巻、第81〜85頁(B.R.Ware und W.H. Flygare, Chem. Phys. Lett. 1971,12,Seiten 81 bis 85)を参照のこと)。この場合、この電気泳動移動度の符号は、分散された固体粒子の移動方向により定義され、すなわち、分散された固体粒子がカソードに移動した場合には、その電気泳動移動度は正であり、これに対し、この固体粒子がアノードに移動した場合には、その電気泳動移動度は負である。
【0025】
分散した固体粒子の電気泳動移動度に特定の範囲内で影響を及ぼすか又はこれを調節するのに好適なパラメータは、水性反応媒質のpH値である。分散された固体粒子のプロトン化又は脱プロトン化により、電気泳動移動度は、酸性pH範囲(pH値7未満)においては正の方向に変化され、アルカリ性範囲(pH値7を上廻る)においては負の方向に変化される。WO 03000760号明細書に開示された方法に適したpH範囲は、ラジカル的に開始される水性エマルション重合を実施できるpH範囲内である。このpH範囲は通常pH1〜12、特にpH1.5〜11、しばしばpH2〜10である。
【0026】
水性反応媒質のpH値は、市販の酸、例えば希釈された塩酸、硝酸若しくは硫酸又は塩基、例えば希釈された苛性ソーダ液又は苛性カリ液を用いて調節されてよい。特に、pH調節のために使用される酸量又は塩基量の部分量又は全体量を、少なくとも1の微細の無機固体前に水性反応媒質に添加することは好ましい。
【0027】
WO 03000760号明細書に開示された方法に関連して好ましいのは、分散された固体粒子が前記のpH条件下で
−負符号を有する電気泳動移動度を有し、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー100質量部当たり少なくとも1つのカチオン分散剤0.01〜10質量部、有利に0.05〜5質量部、殊に有利に0.1〜3質量部、少なくとも1つの非イオン分散剤0.01〜100質量部、有利に0.05〜50質量部、殊に有利に0.1〜20質量部及び少なくとも1つのアニオン分散剤が使用され、この場合この量は、カチオン分散剤に対するアニオン分散剤の当量比が1を上廻るように定められるか、又は
−正符号を有する電気泳動移動度を有し、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー100質量部当たり少なくとも1つのアニオン分散剤0.01〜10質量部、有利に0.05〜5質量部、殊に有利に0.1〜3質量部、少なくとも1つの非イオン分散剤0.01〜100質量部、有利に0.05〜50質量部、殊に有利に0.1〜20質量部及び少なくとも1つのカチオン分散剤が使用され、この場合この量は、アニオン分散剤に対するカチオン分散剤の当量比が1を上廻るように定められる場合である。
【0028】
カチオン分散剤に対するアニオン性分散剤の当量比は、使用されるアニオン分散剤のモル数にこのアニオン分散剤1モル当たりに含まれるアニオン性基の数を乗じ、それを、使用されるカチオン分散剤のモル数にこのカチオン分散剤1モル当たりに含まれるカチオン性基の数を乗じた数で除した商と理解される。これと同じことがカチオン分散剤とアニオン分散剤との当量比に当てはまる。
【0029】
WO03000760により使用される少なくとも1のアニオン分散剤、カチオン分散剤及び非イオン分散剤の全量が、水性固体分散液中に装入されてよい。しかしながら、単に上述の分散剤の部分量を固体水性分散液中に装入し、残っている残量をラジカルエマルション重合の間に連続的にか又は不連続的に添加することも可能である。しかしながら、方法の本質は、ラジカルにより開始したエマルション重合の前及び間に、微細の固体の電気泳動の符号に応じて上述のアニオン分散剤とカチオン分散剤との当量比を維持することである。従って、上述のpH条件下で電気泳動移動度が負の符号を示す無機固体粒子を使用する場合には、カチオン分散剤に対するアニオン分散剤の当量比は、エマルション重合全体の間に1より大きくなければならない。相応して、電気泳動移動度が正符号を有する無機固体粒子の場合には、アニオン分散剤に対するカチオン分散剤の当量比は、エマルション重合全体に亘って1より大きくなければならない。この当量比が≧2、≧3、≧4、≧5、≧6、≧7、又は≧10であるならば有利であり、その際、当量比が2〜5の範囲内であれば特に有利である。
【0030】
両方の前述した明示的に開示された方法並びに一般に複合粒子の製造に使用可能な微細無機固体には、金属、金属化合物、例えば金属酸化物及び金属塩が適しているが、しかし、半金属化合物及び非金属化合物も適している。微細の金属粉末としては、貴金属コロイド、例えばパラジウム、銀、ルテニウム、白金、金及びロジウム並びにこれらを含有する合金が使用されてよい。微細の金属酸化物としては、例として、二酸化チタン(例えば、Sachtleben Chemie GmbH社のHombitec(R)商標として市販されている)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)(例えば、Nyacol Nano Technology Inc.社のNyacol(R)SN商標として市販されている)、酸化アルミニウム(例えば、Nyacol Nano Technology Inc.社のNyacol(R)AL商標として市販されている)、酸化バリウム、酸化マグネシウム、種々の酸化鉄、例えば酸化鉄(II)(ウスタイト)、酸化鉄(III)(ヘマタイト)及び酸化鉄(II/III)(マグネタイト)、酸化クロム(III)、酸化アンチモン(III)、酸化ビスマス(III)、酸化亜鉛(例えば、Sachtleben Chemie GmbH社のSachtotec(R)商標として市販されている)、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化銅(II)、酸化イットリウム(III)(例えば、Nyacol Nano Technology Inc.社のNyacol(R)YTTRIA商標として市販されている)、酸化セリウム(IV)(例えば、Nyacol Nano Technology Inc.社のNyacol(R)CEO2商標として市販されている)の非晶質及び/又はその種々の結晶変態並びにそのヒドロキシオキシド、例えばヒドロキシチタン酸化物(IV)、ヒドロキシジルコニウム酸化物(IV)、ヒドロキシアルミニウム酸化物(例えば、Sasol GmbH社のDisperal(R)商標として市販されている)及びヒドロキシ鉄酸化物(III)の非晶質及び/又はその種々の結晶変態が挙げられる。以下の非晶質及び/又はその種々の結晶構造で存在する金属塩を、本発明による方法において原則的に使用することができる:硫化物、例えば硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、二硫化鉄(II)(黄鉄鉱)、硫化スズ(II)、硫化スズ(IV)、硫化水銀(II)、硫化カドミウム(II)、硫化亜鉛、硫化銅(II)、硫化銀、硫化ニッケル(II)、硫化コバルト(II)、硫化コバルト(III)、硫化マンガン(II)、硫化クロム(III)、硫化チタン(II)、硫化チタン(III)、硫化チタン(IV)、硫化ジルコニウム(IV)、硫化アンチモン(III)、硫化ビスマス(III)、水酸化物、例えば水酸化スズ(II)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸鉛(IV)、炭酸塩、例えば炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ジルコニウム(IV)、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(III)、オルトリン酸塩、例えばオルトリン酸リチウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛、オルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸アルミニウム、オルトリン酸スズ(III)、オルトリン酸鉄(II)、オルトリン酸鉄(III)、メタリン酸塩、例えばメタリン酸リチウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸アルミニウム、ピロリン酸塩、例えばピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸亜鉛、ピロリン酸鉄(III)、ピロリン酸スズ(II)、リン酸塩アンモニウム、例えばリン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸亜鉛アンモニウム、ヒドロキシアパタイト[Ca5{(PO43OH}]、オルトケイ酸塩、例えばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、例えばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、例えばアルミニウムケイ酸ナトリウム及びマグネシウムケイ酸ナトリウム、特に自然に離層した形、例えばOptigel(R)SH(Rockwood Specialties Inc.社の商標)、Saponit(R)SKS-20及びHektorit(R)SKS21(Hoechst AG社の商標)並びにLaponite(R)RD及びLaponite(R)GS(Rockwood Specialties Inc.社の商標)、アルミン酸塩、例えばアルミン酸リチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸亜鉛、ホウ酸塩、例えばメタホウ酸マグネシウム、オルトホウ酸マグネシウム、シュウ酸塩、例えばシュウ酸カルシウム、シュウ酸ジルコニウム(IV)、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸亜鉛、シュウ酸アルミニウム、酒石酸塩、例えば酒石酸カルシウム、アセチルアセトナート、例えばアルミニウムアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、サリチル酸塩、例えばサリチル酸アルミニウム、クエン酸塩、例えばクエン酸カルシウム、クエン酸鉄(II)、クエン酸亜鉛、パルミチン酸塩、例えばパルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸塩、例えばラウリン酸カルシウム、リノール酸塩、例えばリノール酸カルシウム、オレイン酸塩、例えばオレイン酸カルシウム、オレイン酸鉄(II)又はオレイン酸亜鉛。
【0031】
主として使用可能な半金属化合物としては、非晶質及び/又は種々の結晶構造で存在する二酸化ケイ素が挙げられる。相応して好適な二酸化ケイ素は市販されており、例えばAerosil(R)(Evonik Industries AG社の商標)、Levasil(R)(H.C.Starck GmbH社の商標)、Ludox(R)(DuPont社の商標)、Nyacol(R)、Bindzil(R)(Akzo−Nobel社の商標)、Nalco(R)(Nalco Chemical Company社の商標)及びSnowtex(R)(Nissan Chemical Industries,Ltd.の商標)として関連付けてよい。好適な非金属化合物は、例えばコロイドで存在するグラファイト又はダイヤモンドである。
【0032】
微細の無機固体としては、20℃及び1バール(absolut)での水中での溶解度が1g/l以下、好ましくは0.1g/l以下、特に好ましくは0.01g/l以下である微細の無機固体が特に好適である。二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫(IV)、酸化イットリウム(III)、酸化セリウム(IV)、ヒドロキシアルミニウム酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、オルトケイ酸塩、例えばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、例えばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、例えば特に自然に離層した形のアルミニウムケイ酸ナトリウム及びマグネシウムケイ酸ナトリウム、例えばOptigel(R)SH、Saponit(R)SKS-20及びHektorit(R)SKS21並びにLaponite(R)RD及びLaponite(R)GS、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛及び硫化亜鉛を含む群から選択された化合物が特に好ましい。ケイ素含有化合物、例えば熱分解法ケイ酸及び/又はコロイドケイ酸、二酸化ケイ素ゾル及び/又は層状ケイ酸塩が特に好ましい。特に、これらのケイ素含有化合物は負の符号の電気泳動移動度を有する。
【0033】
有利には、市販の化合物のAerosil(R)商標、Levasil(R)商標、Ludox(R)商標、Nyacol(R)商標及びBindzil(R)商標(二酸化ケイ素)、Disperal(R)商標(ヒドロキシアルミニウム酸化物)、Nyacol(R)AL商標(酸化アルミニウム)、Hombitec(R)商標(二酸化チタン)、Nyacol(R)SN商標(酸化錫(IV))、Nyacol(R)YTTRIA商標(酸化イットリウム(III))、Nyacol(R)CEO2商標(酸化セリウム(IV))及びSachtotec(R)商標(酸化亜鉛)を前述の方法並びに一般に複合粒子水性分散液の製造において使用することもできる。
【0034】
複合粒子の製造に使用可能な微細の無機固体は、水性反応媒質中に分散した固体粒子が粒子直径≦100nmを有するように入手される。分散された粒子が粒子直径0nmを上廻るが90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下又は10nm以下及びその間の全ての値を有するような微細の無機固体は、成果を収めて使用される。50nm以下の粒子直径を有する微細の無機固体を使用するのが有利である。この粒子直径の測定は、超遠心分離分析方法により行なわれる。
【0035】
微細の固体の入手法は、当業者には原則的に知られており、例えば沈殿反応又は気相中の化学反応によって実施される(これに関しては、E. Matijevic著, Chem. Mater. 1993, 5, 第412頁〜第426頁; Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, A 23巻, 第583頁〜第660頁, Verlag Chemie, Weinheim, 1992; D. F. Evans, H. Wennerstroem著, The Colloidal Domain, 第363頁〜第405頁, Verlag Chemie, Weinheim, 1994及びR. J. Hunter著, Foundations of Colloid Science, 第I巻, 第10頁〜第17頁, Clarendon Press, Oxford, 1991を参照のこと)。
【0036】
安定な固体分散液の製造は、しばしば、水性媒質中での微細の無機固体の合成の際に直接にか、又は代替的に、微細の無機固体の水性媒質中への分散導入によって実施される。これは、微細の無機固体の製造経路に依存して、例えば沈降二酸化ケイ素又は熱分解法二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の場合には直接達成されるか、又は適した補助装置、例えば分散機又は超音波ソノトロードを利用して達成される。
【0037】
両方の前述の明示的に開示した方法による複合粒子水性分散液の製造のためには、有利には、水性固体分散液が、出発固体濃度が微細の無機固体の水性分散液に対して1質量%以上の場合、その製造の1時間後になお、若しくは沈殿した固体の撹拌又は振盪により、更に撹拌又は振盪せずに、当初分散した固体の90質量%を上回る固体を分散した形で含有し、かつその分散した固体粒子が100nm以下の直径を有する微細の無機固体が好適である。通常、出発固体濃度は、60質量%以下である。しかしながら、有利には、微細の無機固体の水性分散液に対してそのつど55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であり、かつ2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上及びその間の全ての値の出発固体濃度を使用してもよい。複合粒子水性分散液の製造の際に、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー100質量部に対して、特に1〜1000質量部、一般的には5〜300質量部、有利には10〜200質量部の少なくとも1種の微細の無機固体を使用する。
【0038】
両方の前述した明示的に開示された複合粒子水性分散液を製造する場合には、微細の無機固体粒子並びにモノマーの液滴及び形成された複合粒子を水相中に分散分布させて維持する分散剤が併用され、こうして生じた複合粒子水性分散液の安定性が保証される。分散剤としては、ラジカル水性エマルション重合の実施のために通常使用される保護コロイドも、乳化剤も考慮される。
【0039】
適した保護コロイドは、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg- Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961 , 第411頁〜第420頁に詳細に記載されている。
【0040】
好適な中性保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、セルロース誘導体、デンプン誘導体及びゼラチン誘導体である。
【0041】
アニオン性保護コロイド、すなわち分散性に作用する成分が少なくとも1価の負電荷を有する保護コロイドとしては、例えばポリアクリル酸及びポリメタクリル酸並びにそのアルカリ金属塩、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−スチレンスルホン酸及び/又は無水マレイン酸を含有するコポリマー及びそのアルカリ金属塩並びに高分子化合物、例えばポリスチレンのスルホン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0042】
適したカチオン性保護コロイド、即ち分散性に作用する成分が少なくとも1価の正電荷を有する保護コロイドは、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミン基を含有するアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを含有するホモポリマー及びコポリマーの窒素でプロトン化した誘導体及び/又は窒素でアルキル化した誘導体である。
【0043】
勿論、乳化剤及び/又は保護コロイドからの混合物を使用することもできる。しばしば分散剤として、相対分子量が保護コロイドとは異なって通常1500未満である乳化剤のみが使用される。勿論、界面活性剤物質の混合物が使用される場合、個々の成分は互いに相溶性でなければならず、このことは、疑わしい場合には、わずかな予備試験を手がかりにして検査することができる。好適な乳化剤の概要は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart 1961, 第192頁〜第208頁に見出される。
【0044】
一般に使用される非イオン乳化剤は、例えばエトキシ化されたモノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール及びトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)並びにエトキシ化された脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。この例は、BASF社製のLutensol(R)A商標(C1214−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:3〜8)、Lutensol(R)AO商標(C1315−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜30)、Lutensol(R)AT商標(C1618−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:11〜80)、Lutensol(R)ON商標(C10−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜11)及びLutensol(R)TO商標(C13−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜20)である。
【0045】
通常のアニオン性乳化剤は、例えば、アルキルスルファート(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシ化されたアルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)の硫酸半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、及び、エトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
【0046】
更なるアニオン性乳化剤として、更に、一般式II
【化2】

[式中、R1及びR2は、H原子又はC4〜C24−アルキルを意味し、同時にはH原子ではなく、A及びBは、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであってよい]
の化合物が有効であることが証明された。一般式Iにおいては、R1及びR2は、好ましくは6〜18個、特に6、12及び16個のC原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又は−Hを表わし、その際、R1及びR2は両方同時にH原子ではない。A及びBは、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムであることが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。A及びBがナトリウムであり、R1が12個のC原子を有する分枝鎖アルキル基であり、かつR2がH原子であるか又はR1である化合物Iが特に有利である。特に、50〜90質量%のモノアルキル化生成物の含量を有する工業用混合物、例えばDowfax(R)2A1(Dow Chemical Company社の商標)が使用される。この化合物Iは、例えば米国特許第4269749号明細書の記載から一般的に公知であり、かつ市販されている。
【0047】
適切なカチオン活性乳化剤は、通常C6〜C18アルキル基、−アラルキル基、又は複素環基を有する第1級、第2級、第3級又は第4級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩並びにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩である。例として、ドデシルアンモニウムアセタート又はこの相応の塩酸塩、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの塩化物又は酢酸塩、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルファート並びにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド並びにジェミニ界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドが挙げられる。更なる多数の例は、H. Stache著, Tensid-Taschenbuch, Carl-Hanser-Verlag, Muenchen, Wien, 1981及びMcCutcheon's, Emulsifiers & Detergents, MC Publishing Company, Glen Rock, 1989に見出される。
【0048】
しばしば、複合粒子水性分散液の製造のために、複合粒子水性分散液の全量に対してそのつど0.1〜10質量%、しばしば0.5〜7.0質量%、特に1.0〜5.0質量%の分散剤が使用される。乳化剤を使用することが好ましい。
【0049】
複合粒子の製造のために、エチレン性不飽和モノマーとしては、とりわけ、特に簡単にラジカル重合可能なモノマー、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン又はビニルトルエン、ビニルアルコールと1〜18個のC原子を有するモノカルボン酸とのエステル、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニル−n−ブチレート、ビニルラウレート及びビニルステアレート、好ましくは3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸と、一般的には1〜12個、好ましくは1〜8個、特に好ましくは1〜4個のC原子を有するアルカノールとのエステル、例えば特にアクリル酸−及びメタクリル酸メチル−、−エチル−、−n−ブチル−、−イソブチル及び−2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチルエステル又はマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル並びにC4-8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン及びイソプレンが挙げられる。前記のモノマーは通常、本発明による方法により重合されるべきモノマーの全量に対して一般に50質量%以上、80質量%以上又は90質量%以上の含量を占める主モノマーを形成する。通常、前記モノマーは水中で標準条件[20℃、1atm=1.013bar(absolut)]で中程度ないしわずかな溶解度を有するにすぎない。
【0050】
通常、ポリマーマトリックスの皮膜の内部強度を高めるモノマーは、一般に、少なくとも1個のエポキシ基、ヒドロキシ基、N−メチロール基又はカルボニル基を有するか又は少なくとも2個の非共役エチレン性不飽和二重結合を有する。このための例は、2個のビニル基を有するモノマー、2個のビニリデン基を有するモノマー並びに2個のアルケニル基を有するモノマーである。この場合、2価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に有利であり、このカルボン酸のうちアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。この種の2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリラート及び−ジメタクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート、1,2−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−ブチレングリコールジアクリラート、1,4−ブチレングリコールジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリラート、1,2−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート並びにジビニルベンゼン、ビニルメタクリラート、ビニルアクリラート、アリルメタクリラート、アリルアクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリラート、トリアリルシアヌラート又はトリアリルイソシアヌラートである。これと関連して、メタクリル酸−C1−C8−ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸−C1−C8−ヒドロキシアルキルエステル、例えばn−ヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、又はn−ヒドロキシブチルアクリラート及びn−ヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート、又はn−ヒドロキシブチルメタクリラート並びに例えばジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリラートないしアセチルアセトキシエチルメタクリラートといった化合物も特に重要である。エポキシド基含有モノマーの例はグリシジル−アクリルアート及び−メタクリラートである。本発明によれば、前述のモノマーは、重合されるべきモノマーの全量に対して5質量%までの量で重合導入させる。
【0051】
しばしば、前述したモノマーの他に更に、少なくとも1のケイ素含有官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(シランモノマー)、例えばビニルアルコキシシラン、例えば特にビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(3−メトキシプロポキシ)シラン及び/又はビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、アクリルオキシシラン、例えば特に2−(アクリルオキシエトキシ)トリメチルシラン、アクリルオキシメチルトリメチルシラン、(3−アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び/又は(3−アクリルオキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリルオキシシラン、例えば特に(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン及び/又は(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジエチルオキシシランを使用することも好ましくあってよい。本発明により特に好ましくは、アクリルオキシシラン及び/又はメタクリルオキシシラン、特にメタクリルオキシシラン、例えば好ましくは(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン及び/又は(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシランである。シランモノマーの量は、そのつど全モノマー量に対して≧0.01質量%及び≦10質量%、好ましくは≧0.1質量%及び≦5質量%、特に好ましくは≧0.1質量%及び≦2質量%である。
【0052】
この他に、モノマーとして、付加的に、少なくとも1個の酸基及び/又はそれに相応するアニオンを含有するエチレン性不飽和モノマーX(WO03000760中のモノマーA)か、又は少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−複素環基及び/又は窒素でプロトン化又はアルキル化されたそのアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーY(WO03000760中のモノマーB)が使用されてよい。全モノマー量に対して、モノマーX又はモノマーYの量は10質量%までであり、しばしば0.1〜7質量%、特に0.2〜5質量%である。
【0053】
モノマーXとしては、少なくとも1個の酸基を有するエチレン性不飽和モノマーが使用される。この場合、酸基は、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基及び/又はホスホン酸基であってよい。モノマーXの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸並びにn−ヒドロキシアルキルアクリレート及びn−ヒドロキシアルキルメタクリレートの燐酸モノエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレート又はn−ヒドロキシブチルメタクリレートの燐酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、少なくとも1個の酸基を有する前述のエチレン性不飽和モノマーのアンモニウム塩及びアルカリ金属塩を使用することもできる。アルカリ金属としては、ナトリウム及びカリウムが特に好ましい。この例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩並びにヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシブチルアクリラート及びヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのリン酸モノエステルのモノ−及びジ−アンモニウム塩、−ナトリウム塩、及び−カリウム塩である。
【0054】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸を使用することが好ましい。
【0055】
モノマーYとしては、少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−複素環式基及び/又は窒素上でプロトン化又はアルキル化されたそのアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーが使用される。
【0056】
少なくとも1個のアミノ基を含有するモノマーYの例は、2−アミノエチルアクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、3−アミノプロピルアクリラート、3−アミノプロピルメタクリラート、4−アミノ−n−ブチルアクリラート、4−アミノ−n−ブチルメタクリラート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)TBAEMAとして市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)ADAMEとして市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)MADAMEとして市販されている)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート及び3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラートである。
【0057】
少なくとも1個のアミド基を含有するモノマーYの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミドであるが、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムも挙げられる。
【0058】
少なくとも1個のウレイド基を含有するモノマーYの例は、N,N’−ジビニルエチレン尿素及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリラート(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)100として市販されている)である。
【0059】
少なくとも1個のN−複素環式基を含有するモノマーYの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール及びN−ビニルカルバゾールである。
【0060】
次の化合物:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−第三ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレートを使用することは、好ましい。
【0061】
水性反応媒質のpH値に依存して、前記の窒素含有モノマーYの一部又は全体量は、窒素でプロトン化された第4級アンモニウム形で存在していてよい。
【0062】
窒素上に4級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーYとしては、例として、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)ADAMQUAT MC80として市販されている)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)MADQUAT MC75として市販されている)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)ADAMQUAT BZ80として市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えば、Arkema Inc.社のNorsocryl(R)MADQUAT BZ75として市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド及び3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリドが挙げられる。前述の塩化物の代わりに、相応する臭化物及び硫化物を使用してよいことは勿論である。
【0063】
2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド及び2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリドが使用されることは、好ましい。
【0064】
前述のエチレン性不飽和モノマーの混合物を使用してもよいことは勿論である。
【0065】
ラジカル重合の開始のためには、ラジカル水性エマルション重合を開始することができる全てのラジカル重合開始剤(ラジカル開始剤)が考慮される。この場合、ラジカル重合開始剤は原則的にペルオキシドであってもアゾ化合物であってもよい。勿論、レドックス開始剤系も考慮される。ペルオキシドとしては、原則的に、無機ペルオキシド、例えば過酸化水素又はペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノアルカリ金属塩又はジアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノナトリウム塩、モノカリウム塩及びジナトリウム塩、ジカリウム塩又はアンモニウム塩又は有機ペルオキシド、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンチルヒドロペルオキシド又はクミルヒドロペルオキシド、並びにジアルキルペルオキシド又はジアリールペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド又はジクミルペルオキシドが使用される。アゾ化合物としては、主に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩(AIBA、Wako Chemicals社のV−50に相当)が使用される。レドックス開始剤系のための酸化剤としては、主として前述のペルオキシドが挙げられる。相応する還元剤としては、酸化数が低い硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウム及び/又は亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウム及び/又は亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム及び/又はメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、例えばホルムアルデヒドスルホキシル酸カリウム及び/又はホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、脂肪族スルフィン酸のアルカリ金属塩、特にカリウム塩及び/又はナトリウム塩、及びアルカリ金属硫化水素、例えば硫化水素カリウム及び/又は硫化水素ナトリウム、多価金属塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾイン及び/又はアスコルビン酸並びに還元糖類、例えばソルボース、グルコース、フルクトース及び/又はジヒドロキシアセトンを使用することができる。本発明によりレドックス開始剤系が使用される場合には、しばしば酸化剤及び還元剤が並行して計量供給されるか又は好ましくは相応する酸化剤の全量が装入され、還元剤だけが計量供給される。ラジカル開始剤の全量は、レドックス開始剤系では、酸化剤及び還元剤の全量から構成される。しかし、ラジカル開始剤として好ましくは、無機及び有機のペルオキシド、特に無機のペルオキシドが、しばしば水溶液の形で使用される。特にラジカル開始剤として好ましくはナトリウムペルオキソジスルファート、カリウムペルオキソジスルファート、アンモニウムペルオキソジスルファート、過酸化水素及び/又はtert−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0066】
ヨーロッパ特許出願番号09157984.7によれば、全体として使用されるラジカル開始剤の量は、そのつど全モノマー量に対して0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、特に好ましくは0.3〜1.0質量%である。他の製造方法によれば、このラジカル開始剤の量は全モノマー量に対して5質量%までであることができる。
【0067】
本発明に本質的であるのは、ヨーロッパ特許出願番号09157984.7の教示によれば、水性固体分散液に、方法工程c)において、全体として全モノマー量の≧0.01質量%及び≦20質量%、≧60質量%、好ましくは≧70質量%、並びに≦90質量%又は≦100質量%、特に好ましくは≧75質量%及び≦85質量%のラジカル重合開始剤の全量が計量供給され、この計量供給されたエチレン性不飽和モノマーは重合条件下でモノマー変換率≧80質量%、好ましくは≧85質量%、特に好ましくは≧90質量%まで重合される。
【0068】
この場合に、水性重合媒質へのラジカル開始剤の添加は、ヨーロッパ特許出願番号09157984.7の方法工程c)において重合条件下で行われる。しかしながらまた、ラジカル開始剤の部分量又は全体量を、装入されたモノマーを含む水性重合媒質に重合反応を開始させるには適していない条件、例えば低温で添加し、そしてその後水性重合混合物中で重合条件を調整することも、可能である。
【0069】
方法工程c)においては、ラジカル開始剤又はその成分の添加は不連続的に1以上の分量において、又は連続的に変わらないか又は変化する流量で行われることができる。
【0070】
モノマー変換率の測定は当業者に原則的に慣用であり、例えば反応熱量測定により行われる。
【0071】
ヨーロッパ特許出願番号 09157984.7の方法工程c)において使用されるモノマーの量が変換率≧80質量%まで重合された後(重合工程1)、続く方法工程d)においてこの場合によって残っている残量、すなわち、無機固体の≦90質量%、≦80質量%、≦70質量%、≦60質量%、好ましくは≦50質量%、≦40質量%、≦30質量%、≦20質量%又は≦10質量%、この場合によって残っている残量、すなわち、ラジカル重合開始剤の≦40質量%、≦30質量%、又は好ましくは≧15質量%及び≧25質量%及びこの残っている残量、すなわち、エチレン性不飽和モノマーの≧80質量%及び≦99.99質量%、好ましくは≧85質量%及び≦99質量%、特に好ましくは≧85質量%及び≦95質量%が重合条件下で計量供給され、モノマー変換率≧90質量%まで重合される(重合工程2)。この場合に、方法工程c)及びd)へと、このそれぞれの成分の計量供給が別個の単一流として又は混合して不連続的に1以上の分量において又は連続的に変わらないか又は変化する流量で計量供給されることができる。ラジカル開始剤又はエチレン性不飽和モノマーを方法工程c)及びd)において相違させることも勿論できる。
【0072】
この場合にこの刊行物の範囲において重合条件とは一般的に、ラジカル開始水性エマルション重合が充分な重合速度で進行する温度及び圧力であると理解されるべきである。この条件はとりわけ、使用するラジカル開始剤に依存する。好ましくは、ラジカル開始剤の種類及び量、重合温度及び重合圧力は方法工程c)及びd)において、使用されるラジカル開始剤が十分な半値時間を有し、この場合常に、十分な開始ラジカルが、重合反応を開始させるか又は維持させるために提供されるよう選択される。
【0073】
微細の無機固体の存在下でのラジカル水性重合反応のための反応温度としては、一般に0〜170℃の全範囲が考慮される。この場合に通常、≧50℃及び≦120℃、しばしば≧60℃及び≦110℃、大抵は≧70℃及び≦100℃という温度が適用される。ラジカル水性エマルション重合は、1atm(absolut)より小さい、これと同じ又はこれより大きい圧力で実施してよく、この重合温度は100℃を超過してよく、かつ最大170℃であってよい。易揮発性モノマー、例えばエチレン、ブタジエン又は塩化ビニルを、高められた圧力下で重合させることは、好ましい。この場合、圧力は1.2、1.5、2.5、10、15バール又は更に高い値をとることができる。エマルション重合を低圧で実施する場合には、950mbar、特に900mbar、有利には850mbar(absolut)の圧力に調節される。ラジカル水性重合を1atm(absolut)で不活性ガス雰囲気下で、例えば窒素又はアルゴン下で実施することは、有利である。
【0074】
水性反応媒体は、原則的に、わずかな程度で、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、しかしまたアセトン等をも含むことができる。しかし、有利には、重合反応は、このような溶剤の不在下に行なわれる。
【0075】
複合粒子水性分散液を製造する方法においては、前述の成分の他に、任意に、ラジカル連鎖移動化合物も使用し、重合により得られるポリマーの分子量を減らすか又は調節してもよい。この場合、主として、脂肪族及び/又は芳香脂肪族のハロゲン化合物、例えば、塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、ヨウ化n−ブチル、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジル、有機チオ化合物、例えば第1級、第2級又は第3級脂肪族チオール、例えばエタンチオール、n−プロパンチオール、2−プロパンチオール、n−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、n−ペンタンチオール、2−ペンタンチオール、3−ペンタンチオール、2−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−2−ブタンチオール、n−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、3−ヘキサンチオール、2−メチル−2−ペンタンチオール、3−メチル−2−ペンタンチオール、4−メチル−2−ペンタンチオール、2−メチル−3−ペンタンチオール、3−メチル−3−ペンタンチオール、2−エチルブタンチオール、2−エチル−2−ブタンチオール、n−ヘプタンチオール及びその異性体化合物、n−オクタンチオール及びその異性体化合物、n−ノナンチオール及びその異性体化合物、n−デカンチオール及びその異性体化合物、n−ウンデカンチオール及びその異性体化合物、n−ドデカンチオール及びその異性体化合物、n−トリデカンチオール及びその異性体化合物、置換チオール、例えば2−ヒドロキシエタンチオール、芳香族チオール、例えばベンゼンチオール、オルト−、メタ−、又はパラ−メチルベンゼンチオール、並びにPolymerhandbook 第3版, 1989, J.Brandrup und E.H.Immergut, John Weley & Sons, 第II章, 第133頁〜第141頁に記載されている他の全種の硫黄化合物を使用するが、また脂肪族及び/又は芳香族アルデヒド、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及び/又はベンズアルデヒド、不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸、非共役二重結合を有するジエン、例えばジビニルメタン又はビニルシクロヘキサン又は容易に引抜き可能な水素原子を有する炭化水素、例えばトルエンも使用する。しかし、支障のない前述のラジカル連鎖移動化合物の混合物を使用することも可能である。任意に使用されるラジカル連鎖移動化合物の全量は、重合すべきモノマーの全量に対して通常5質量%以下、有利には3質量%以下、特に1質量%以下である。
【0076】
本発明により使用される複合粒子水性分散液は、通常、全固体含量1〜70質量%、特に5〜65質量%、有利には10〜60質量%を有する。
【0077】
本発明により、水性分散液の形で使用される複合粒子は通常は、平均粒子直径≧10及び≦1000nm、しばしば≧50及び≦500nm、並びにしばしば≧100及び≦250nmを有する。複合粒子の平均粒径の測定は、準弾性光散乱の方法により行われる(DIN−ISO 13321)。
【0078】
本発明により使用される複合粒子は、種々の構造を有していてよい。この場合、複合粒子は、1種又は複数種の微細の固体粒子を含有し得る。微細の固体粒子は、ポリマーマトリックスにより完全に包囲されていることができる。しかし、一部の微細の固体粒子をポリマーマトリックスにより包囲させる一方で、他の部分をそのポリマーマトリックスの表面上に配置させることも可能である。勿論、微細の固体粒子の大部分がポリマーマトリックスの表面上に結合されていることも可能である。
【0079】
特に、複合粒子が皮膜化可能なポリマーから構成されており、その最低皮膜形成温度が≦150℃、好ましくは≦100℃、特に好ましくは≦50℃である複合粒子分散液を使用する。この0℃未満の最低皮膜形成温度は測定不可能であるので、最低皮膜形成温度の下限値はガラス転移温度によってのみ記載することができる。しばしば、この最低皮膜形成温度又はガラス転移温度は≧−50℃又は−≧30℃、しばしば≧−10℃である。好ましくは、最低皮膜形成温度又はガラス転移温度は≧−40℃及び≦100℃の範囲に、好ましくは≧−30℃及び≦50℃の範囲に、特に好ましくは≧−30℃及び≦20℃の範囲にある。この最低皮膜形成温度の測定は、DIN53787若しくはISO2115により実施し、かつガラス転移温度の測定は、DIN53765(示差走査熱分析、20K/分、中点値測定)により実施する。
【0080】
本発明の方法により得られる複合粒子水性分散液は、シラン化合物Iを含有しない複合粒子水性分散液に対して顕著により高い貯蔵安定性を有する。
【0081】
本発明の複合粒子分散液は、特に水性配合物の製造、並びに接着剤、例えば圧感接着剤、建築用接着剤又は工業用接着剤、バインダー、例えば紙塗工用、分散着色剤用又はプラスチックフィルム印刷のためのインク及び印刷塗料用のバインダーの製造、フリース材料の製造並びに例えば下塗りの際の保護層及び防湿層の製造のための原料として好適である。更に、本発明の方法により得られる複合粒子分散液は、セメント配合物及びモルタル配合物の改変に利用することもできる。本発明の方法により得られる複合粒子水性分散液は、原則的に、医学診断並びに他の医学用途に使用することもできる(例えば、K.モスバフ、L.アンデルソン著、ネイチャー誌、1977年、270号、259〜261頁(K. Mosbach und L. Andersson, Nature, 1977, 270, Seiten 259 bis 261);P.L.クロニック著、サイエンス誌、1978年、200号、1074〜1076頁(P.L.Kronick, Science 1978, 200, Seiten 1074 bis 1076);US−A4157323号を参照のこと)。有利には、本発明の複合粒子分散液は、水性被覆剤、例えば分散着色剤、塗料又は下塗剤の製造に好適である。
【0082】
この場合に重要であるのは、複合粒子水性分散液並びに少なくとも1のシラン化合物Iの他に、まだ更なる配合物成分、例えば分散剤、殺生物剤、増粘剤、消泡剤、顔料及び/又は充填剤を含有する水性配合物も顕著に高められた貯蔵安定性を有し、このようにして、より長期間後にも確実に加工されることができることであり、そのために、シラン化合物Iは、複合粒子水性分散液を含有する水性配合物の貯蔵安定性の改善のためにも使用されることができる。
【0083】
これに応じて、本発明の好ましい実施態様は、複合粒子水性分散液を含有する水性配合物の貯蔵安定性を改善する方法において、複合粒子水性分散液の添加の前、間及び/又は後に、この水性配合物媒質にシラン化合物Iを添加することを特徴とする方法でもある。この場合に、この刊行物の範囲においては、「複合粒子水性分散液の添加の前」とは混合装置中への複合粒子水性分散液の添加前の任意の全ての時間点、「複合粒子水性分散液の添加の間」とは混合装置中への複合粒子水性分散液の添加の間の任意の全ての時間点、「複合粒子水性分散液の添加の後」とは混合装置中への複合粒子水性分散液の添加の後の全ての時間点を意味し、この中で水性配合物は製造される。
【0084】
実施例
I. 複合粒子水性分散液の製造
複合粒子分散液1(KD1)
還流冷却器、温度計、機械的撹拌機並びに計量供給装置を備えた2lの四口フラスコ中に、20〜25℃(室温)で、かつ1atm(1.013bar absolut)で窒素雰囲気下で撹拌しつつ(毎分200回転)、416.6gのNyafol(R)2040を添加し、次いで2.5gのメタクリル酸と12gの水酸化ナトリウム10質量%水溶液とからの混合物を5分以内で添加した。次いで、この撹拌された反応混合物に、15分にわたって、10.4gの非イオン性界面活性剤Lutensol(R)AT18(BASF AG社の商標、平均18個のエチレンオキシド単位を有するC1618−脂肪アルコールエトキシレート)20質量%水溶液と、108.5gの脱イオン水とからの混合物を添加した。引続き、この反応混合物に、60分間で、脱イオン水100g中に溶解されたN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド(CATB)0.83gを計量供給した。その後に、この反応混合物を80℃の反応温度に加熱した。
【0085】
並行して、供給物1としてメチルメタクリレート117.5g、n−ブチルアクリレート130g及び3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.5gからなるモノマー混合物を製造し、並びに供給物2としてペルオキソ二硫酸ナトリウム2.5g、水酸化ナトリウムの10質量%の水溶液7g及び脱イオン水100gからなる開始剤溶液を製造した。
【0086】
次いで、この反応温度で、撹拌された反応混合物に、5分にわたって、2本の別個の供給管を介して21.1gの供給物1及び57.1gの供給物2を添加した。その後、この反応混合物を反応温度で1時間に亘って撹拌した。引続き、この反応混合物に、Dowfax(R)2A1の45質量%水溶液0.92gを添加した。次に、この反応混合物に、供給物1及び供給物2の残分を、同時に開始して2時間に亘って連続的に計量供給した。次いで、この反応混合物をさらに1時間に亘って反応温度で撹拌し、引続きこの反応混合物を室温に冷却した。
【0087】
こうして得られた複合粒子水性分散液は、この複合粒子水性分散液の全質量に対して41.8質量%の固体含有率を有していた。
【0088】
約3cmの内径を有する開放アルミニウムるつぼ中の複合粒子水性分散液約1gを乾燥箱中で150℃で質量が一定になるまで乾燥させることにより、固体含有率を一般に測定した。固体含有率を測定するために、それぞれ2つの別々の測定を実施し、相応する平均値を得た。
【0089】
複合粒子の粒径の測定を一般に、準弾性光散乱(DIN−ISO 13321)の方法に応じてMalvern Instruments Ltd社のHigh Performance Particle Sizer (HPPS)を用いて行った。平均粒径106nmが算出された。
【0090】
複合粒子分散液2(KD2)
還流冷却器、温度計、機械的撹拌機並びに計量供給装置を備えた2l四口フラスコ中に、室温でかつ雰囲気圧力で窒素雰囲気下で撹拌しつつ(毎分200回転)、416.6gのNalco(R) 1144(平均粒子直径14nmを有する40質量%のコロイド二酸化ケイ素、Nalco社の商標)を添加し、次いで10.8gの非イオン界面活性剤Luten−sol(R) AT 18の20質量%水溶液、これに続き215.0gの脱イオン水215.0gを5分以内で添加した。引き続きこの装入混合物を70℃に加熱した。
【0091】
並行して、供給物1として、12.6gのメチルメタクリラート、18.8gのn−ブチルアクリラート及び1.5gのメタクリル酸からなるモノマー混合物を、供給物2として、2.9gの(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランを、供給物3として、2.1gのペルオキソ二硫酸ナトリウム、5.4gの水酸化ナトリウム10質量%水溶液及び脱イオン水93.0gからなる開始剤溶液を、供給物4として、87.3gのメチルメタクリラート及び130.9gのn−ブチルアクリラートからなるモノマー混合物を製造した。
【0092】
引き続き、この撹拌した装入混合物に70℃で90分以内に別個の供給管を介して供給物2のうち0.9gを連続的に添加した。この場合にこの反応混合物を45分間供給物2の開始後に反応温度85℃に加熱した。供給物2の開始1時間前に、この反応混合物を120分間の時間間隔の内に、2個の別個の供給管を介して同時に開始して、供給物1の全量及び供給物3のうち158.8gを連続的な流量でもって計量供給した。これに続き、この反応混合物に120分間の時間間隔の内に別個の供給管を介して同時に開始して、供給物4の全量及び供給物2の残っている残量並びに135分間の時間間隔のうちに供給物3の残っている残量を連続的な流量でもって計量供給した。引き続き、この得られる複合粒子水性分散液を更なる1時間反応温度で撹拌し、この後に室温に冷却した。
【0093】
このようにして得られた複合粒子水性分散液は、半透明、低粘性であり、かつ42.1質量%の固体含有率を有した。複合粒子の平均粒径は113nmと測定された。
【0094】
II. 複合粒子水性分散液の貯蔵安定性
貯蔵安定性の検査のために、前述の複合粒子分散液KD1及びKD2を脱イオン水を用いて固体含有率40.0質量%に希釈し、そのつど70gの希釈した複合粒子分散液を0.28g(複合粒子水性分散液の固体含有率に対して0.5質量%に相応)の及び0.56gの(複合粒子水性分散液の固体含有率に対して1.0質量%に相応)、第1表に挙げられるシラン化合物Iの50質量%水溶液と混合し、均質に混合し、引き続き、閉鎖した100mlのサンプルバイアル中に70℃で貯蔵し、毎日視覚によりゲル化(強力な粘度増加;「はちみつのようにどろっとしている」)を検査した。第1表に、この種々のシラン化合物Iについて得られたゲル化時間(日数)を列記する。60日後にこの試験を中断した。
【0095】
第1表:日数における、シラン化合物で安定化した複合粒子水性分散液KD1及びKD2のゲル化時間
【表1】

1)シラン1=3−[メトキシ−{トリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、ABCR GmbH & Ko. KG社が注文番号ABCR SIM6492.7で提供可能
2)シラン2=3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、エトキシル化度6〜9個のエチレンオキシ単位、ABCR GmbH & Ko. KG社が注文番号ABCR SIM6492.72で提供可能
3)シラン3=3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、エトキシル化度9〜12個のエチレンオキシ単位、ABCR GmbH & Ko. KG社が注文番号ABCR SIM6493.4で提供可能
4)シラン4=3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、エトキシル化度12〜15個のエチレンオキシ単位、Evonik社が商標名Dynasylan(R) 4144で提供可能。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び微細の無機固体から構成された粒子(複合粒子)の水性分散液の貯蔵安定性を改善する方法において、水性媒質中に分散した複合粒子(複合粒子−分散液)の製造の前、製造の間及び/又は製造の後に、この水性分散媒に一般式
【化1】

[式中、
1〜R3:−C1〜C10−アルコキシ、
−非置換又は置換したC1〜C30−アルキル、
−非置換又は置換したC5〜C15−シクロアルキル、
−非置換又は置換したC6〜C10−アリール、
−非置換又は置換したC7〜C12−アラルキル、
4:CH2−[CHR5]φ−[O−CH2CH2x−[O−CH2−CH(CH3)]y−O−Z、
5:水素、C1〜C4−アルキル、
Z:水素、C1〜C4−アルキル、
n:0〜5の整数、
φ:0〜5の整数、
x:1〜30の整数、
y:0〜30の整数、
この場合、基R1〜R3の少なくとも1つはC1〜C10−アルコキシである]
の有機シラン化合物Iを添加することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シラン化合物Iを、複合粒子水性分散液の製造後に、この複合粒子水性分散液の水性分散媒に添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シラン化合物Iを含有する複合粒子水性分散液のpH値が≧7かつ≦11であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シラン化合物I中、R1〜R3はメトキシ又はエトキシ、R5は水素、Zは水素又はメチル、n及びyは0の数、φは2の数、そしてxは≧3かつ≦20の数であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記シラン化合物Iの量が、複合粒子水性分散液の全量に対して0.01〜10質量%であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
複合粒子水性分散液を、少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーを水性媒質中で分散分布して、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて少なくとも1の分散分布した微細の無機固体及び少なくとも1の分散剤の存在下で、ラジカル水性エマルション重合の方法に応じて重合する方法に応じて製造し、その際、
a)少なくとも1の無機固体の水性分散液に対して出発固体濃度≧1質量%で、その製造1時間後になお90質量%よりも多くの当初分散された固体を分散した形で含み、かつ、その分散された固体粒子が質量平均直径≦100nmを有することにより特徴付けられる少なくとも1の無機固体の安定な水性分散液を使用し、
b)分散剤添加の開始前の水性分散媒のpH値に相応するpH値で標準塩化カリウム水溶液中の少なくとも1の無機固体の分散された固体粒子が、0とは異なる電気泳動移動度を示し、
c)水性固体粒子分散液に、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーの添加開始前に少なくとも1のアニオン分散剤、カチオン分散剤及び非イオン分散剤を混合し、
d)その後に少なくとも1つのモノマーの全体量の中、水性固体粒子分散液の0.01〜30質量%が添加され、少なくとも90%の変換率になるまで重合され、
かつ
e)引続き、少なくとも1つのモノマーの残量が重合条件下で消費の程度に応じて連続的に添加される
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
複合粒子水性分散液を、少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーを水性媒質中で分散分布して、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて少なくとも1の分散分布した微細の無機固体及び少なくとも1の分散助剤の存在下で、ラジカル水性エマルション重合の方法に応じて重合する方法に応じて製造し、その際、
a)エチレン性不飽和モノマーの全量(全モノマー量)に対して、平均粒径≦100nmを有する無機固体1〜1000質量%及びラジカル重合開始剤0.05〜2質量%を使用し、
b)少なくとも部分量の無機固体を水性重合媒中で水性固体分散液の形で装入し、これに続き、
c)得られる水性固体分散液が全体で全モノマー量の≧0.01質量%かつ≦20質量%及びラジカル重合開始剤の全量の≧60質量%を計量供給し、この計量供給されたエチレン性不飽和モノマーを重合条件下でモノマー変換率≧80質量%まで重合し(重合工程1)、これに続き、得られた重合混合物に
d)場合によって残っている無機固体の残量、場合によって残っているラジカル重合開始剤の残量及び残っているエチレン性不飽和モノマーの残量を重合条件下で計量供給し、モノマー変換率≧90質量%まで重合する(重合工程2)ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
微細の無機固体が、ケイ素含有化合物であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
微細の無機固体が、熱分解法ケイ酸及び/又はコロイドケイ酸及び/又はシリカートであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シラン化合物Iが、3−[メトキシ−{トリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、エトキシル化度:6〜9、3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン:エトキシル化度9〜12及び/又は3−[メトキシ−{ポリ−(エチレンオキシ)}]−プロピルトリメトキシシラン、エトキシル化度;12〜15であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法により得られる複合粒子水性分散液。
【請求項12】
請求項11に記載の複合粒子水性分散液を含有する水性配合物。
【請求項13】
複合粒子水性分散液の貯蔵安定性の改善のためのシラン化合物Iの使用。
【請求項14】
複合粒子水性分散液含有水性配合物の貯蔵安定性の改善のためのシラン化合物Iの使用。
【請求項15】
複合粒子水性分散液を含有する水性配合物の貯蔵安定性を改善する方法において、複合粒子水性分散液の添加の前、間及び/又は後に、この水性配合物媒質にシラン化合物Iを添加することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2012−528908(P2012−528908A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513591(P2012−513591)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057608
【国際公開番号】WO2010/139679
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】