説明

複合粒子粉末並びに該複合粒子粉末を用いた着色組成物及び樹脂組成物

【課題】 本発明は、発色性及び着色力に優れると共に、ブリーディングが抑制された複合粒子粉末、及び、該複合粒子粉末を溶媒中もしくはゴム・樹脂組成物中に分散してなる、着色組成物及び樹脂組成物に関するものである。
【解決手段】 樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子末の粒子表面に染料が付着している複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末及び該複合粒子粉末を用いた水系塗料用着色組成物、溶剤系塗料用着色組成物及び樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色性及び着色力に優れると共に、ブリーディングが抑制された複合粒子粉末、及び、該複合粒子粉末を溶媒中もしくはゴム・樹脂組成物中に分散してなる、着色組成物及び樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料は、一般に耐光性、耐熱性及び耐ブリード性等の堅牢度が劣るにもかかわらず、その色の鮮やかさと着色力の高さから、各種塗料、印刷インク、化粧品、ゴム・樹脂組成物等の着色剤として広く用いられている。
【0003】
このような染料の有する欠点を改良する技術として、これまでに、樹脂粒子を染料で染色する方法が提案されている(特許文献1乃至3)。
【0004】
また、白色無機粒子表面にアルコキシシランなどの糊剤を介して有機顔料を付着させる方法が提案されている(特許文献4)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−269310号公報
【特許文献2】特開平11−295926号公報
【特許文献3】特開2004−161824号公報
【特許文献4】特開2002−356625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塗料及び樹脂組成物の分散性、分散安定性及び耐光性を改善することができ、高彩度であって且つ着色力に優れるとともに、ブリーディングが抑制された複合粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0007】
即ち、前出特許文献1には、有機溶剤中にポリエステル樹脂と有機溶剤に可溶な染料とを混合した後、イオン交換水を加えて蒸留し水分散体を作製する方法が記載されているが、高濃度に染色することが困難であるため着色力が不十分であると共に、染料の特色である彩度が低下し易く、また、殊に、有機溶剤中ではブリーディングを起こし易い等の問題があった。
【0008】
前出特許文献2には、水系溶媒中にビニル系樹脂粒子と染料粒子とを分散させた分散液を樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱することによって樹脂粒子を着色する方法が記載されているが、その処理を水系媒体中で行うため、濾過・乾燥等の工程を経るために工程が煩雑になると共に、染料を水系媒体中で微粒子化することが困難であり、そのため、均一な着色処理が難しく、十分な発色性及び着色力を得ることが困難であると共に、ブリーディングの抑制も不十分である。
【0009】
前出特許文献3には、樹脂粒子と染料を超臨界流体中で混合させた後、減圧することで樹脂粒子を染色する方法が記載されているが、染色できる染料が油溶性に限られていると共に、殊に有機溶剤中におけるブリーディングの抑制も不十分である。
【0010】
前出特許文献4には、白色無機粒子表面にアルコキシシラン等の糊剤を介して有機顔料を付着させる方法が記載されているが、付着させる有機顔料に起因して、高彩度且つ高着色力を有する着色材を得ることは困難である。また、無機粒子粉末は比重が高いことが知られており、殊に、通常比重が1〜1.7の範囲にある塗料中では沈降しやすく、分散安定性に問題を抱えている。
【0011】
そこで、本発明は、塗料及び樹脂組成物の分散性、分散安定性及び耐光性を改善することができ、高彩度であって着色力に優れるとともに、ブリーディングが抑制された複合粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0013】
即ち、本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に染料が付着している複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末である(本発明1)。
【0014】
また、本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に染付けレーキが付着している複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末である(本発明2)。
【0015】
また、本発明は、本発明1又は2の複合粒子粉末を水及び/又は水溶性溶剤に分散してなることを特徴とする水系塗料用着色組成物である(本発明3)。
【0016】
また、本発明は、本発明1又は2の複合粒子粉末を溶剤に分散してなることを特徴とする溶剤系塗料用着色組成物である(本発明4)。
【0017】
また、本発明は、本発明1又は2の複合粒子粉末を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物である(本発明5)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る複合粒子粉末は、高彩度であり、且つ着色力が優れていると共に、ブリーディングが抑制されているので、塗料及び樹脂組成物の着色用複合粒子粉末として好適である。また、本発明の複合粒子粉末は、着色力も高く、更に、芯粒子を選択することにより、従来に比べて染料及び染付けレーキの色域の拡大が可能となる。更に、本発明における製造方法によれば、油溶性染料、水溶性染料等にかかわらず、樹脂粒子表面に染料及び染付けレーキを強固に付着することができるので、工業的にも有利である。
【0019】
本発明に係る塗料用着色組成物は、分散性、耐光性及び貯蔵安定性に優れた塗料を得ることができるので、塗料用着色組成物として好適である。
【0020】
本発明に係る樹脂組成物は、分散性及び耐光性に優れた樹脂組成物として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0022】
先ず、本発明に係る複合粒子粉末について述べる。
【0023】
本発明に係る複合粒子粉末は、芯粒子粉末である樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されており、該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に染料もしくは染付けレーキが付着している複合粒子からなる。
【0024】
本発明における樹脂粒子としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれをも用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、フッ化樹脂、繊維素系樹脂等を用いることができ、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリヤ樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等を用いることができる。樹脂粒子は要求される特性や用途に応じて選択すればよいが、好ましくはアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂である。
【0025】
樹脂粒子の粒子形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状及び不定形等のいずれの形状であってもよい。得られる複合粒子粉末を塗料又は樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、球形度(平均粒子径/平均最短径)(以下、「球形度」という。)が1.0以上2.0未満の球状又は粒状が好ましく、より好ましくは球形度が1.0〜1.5である。
【0026】
樹脂粒子粉末の粒子サイズは、特に制限はなく、得られる複合粒子粉末の用途に応じて適宜選べばよいが、樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による均一な被覆処理及び染料もしくは染付けレーキによる均一な付着処理を考慮すると、好ましくは平均粒子径が0.01μm〜1cmである。
【0027】
殊に、得られる複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜300μm、より好ましくは0.015〜200μm、更により好ましくは0.02〜100μmである。この場合、平均粒子径が300μmを超えると、得られる複合粒子が粗大粒子となり、着色力が低下するため好ましくない。
【0028】
樹脂粒子粉末のBET比表面積値は、樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による均一な被覆処理及び染料もしくは染付けレーキによる均一な付着処理を考慮すると、0.0004〜700m/gが好ましい。
【0029】
殊に、得られた複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末のBET比表面積値は、好ましくは0.01〜700m/g、より好ましくは0.02〜500m/g、更により好ましくは0.04〜400m/gである。この場合、BET比表面積値が0.01m/g未満となると、得られる複合粒子が粗大粒子となり、着色力が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明における樹脂粒子粉末の水分量は、0.1〜10.0%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜9.0%である。水分量が0.1%未満の場合には、樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆処理が困難となる。
【0031】
本発明における樹脂粒子粉末の色相は、できる限り彩度が低いことが好ましく、L値は70.00以上が好ましく、より好ましくは75.00以上であり、C値が18.00以下、好ましくは15.00以下、より好ましくは12.00以下、更により好ましくは9.00以下である。L値、C値が上記範囲外の場合には、彩度が低いとは言い難く、高彩度で発色性に優れた複合粒子粉末を得ることが困難となる。
【0032】
本発明における樹脂粒子粉末の耐光性は、後述する評価方法により、ΔE値の下限値は通常5.0を超え、上限値は12.0、好ましくは11.0、より好ましくは10.0である。
【0033】
本発明における表面改質剤としては、樹脂粒子の粒子表面へ染料もしくは染付けレーキを付着できるものであれば何を用いてもよく、好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤であり、より好ましくはアルコキシシラン、シラン系カップリング剤、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤である。
【0034】
有機ケイ素化合物としては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0035】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0036】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0037】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0038】
表面改質剤の被覆量は、表面改質剤被覆樹脂粒子粉末に対して各表面改質剤が含有する金属の元素換算で0.02〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.03〜4.0重量%、最も好ましくは0.05〜3.0重量%である。0.02重量%未満の場合には、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.01重量部以上の染料もしくは染付けレーキを付着させることが困難である。表面改質剤を5.0重量%まで用いることによって、樹脂粒子粉末100重量部に対して染料もしくは染付けレーキを0.01〜500重量部付着させることができるため、必要以上に被覆する意味がない。
【0039】
本発明における染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、ナフトール染料、硫化染料、バット染料、分散染料、反応染料、油溶性染料等の染料を用いることができる。
【0040】
また、本発明における染付けレーキとしては、上記染料を沈殿剤で不溶化したものを用いることができる。
【0041】
具体的には、アマランス、エリスロシン、ニューコクシン、フロキシンB、ローズベンガル、アシッドレッド、タートラジン、サンセットエローFCF、ファストグリーンFCF、ブリリアントブルーFCF、インジコカルミン、リソールルビンB、ローダミンB、ローダミンBアセテート、ローダミンBステアレート、テトラクロルテトラブロムフルオレセイン、テトラブロムフルオレセイン、スダンIII、ヘリンドンピンクCN、ファーストアシッドマゲンタ、エオシンYS、エオシンYSK、フロキシンBK、ローズベンガルK、ジブロムフルオレセイン、オレンジII、ジードフルオレセイン、エリスロシン黄NA、フルオレセイン、ウラニン、ウラニンK、キノリンイエローWS、キノリンイエローSS、アリザリンシアニングリーンF、キニザリングリーンSS、ピラニンコンク、ライトグリーンSF黄、インジゴ、パテントブルーNA、パテントブルーCA、カルバンスレンブルー、アルファズリンFG、レゾルシンブラウン、アリズリンパープルSS、ビオラミンR、薬用スカーレット、ポンソーSR、ポンソーR、ポンソーSX、オイルレッドXO、ファストレッドS、オレンジI、オレンジSS、ポーラエロー5G、ナフトールエローS、エローAB、エローOB、メタニルエロー、ファストライトエロー3G、ナフトールグリーンB、ギネアグリーンB、スダンブルーB、アリズロールパープル、ナフトールブルーブラック、アルカリブルー、ターコイズブルー、アリザリン、ベーシックフラビン、オーラミン、ローダミン6G、アストラフロキシン、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ビクトリアブルーBO、ビクトリアブルーB、ベイシックシアニン、ダイアモンドグリーン、マラカイトグリーン、マゼンタ、キニザリン、チオフラビン、フタレイン等の公知の染料及びこれらをアルミニウム、バリウム、ジルコニウム等でレーキ化した染付けレーキを用いることができる。また、これら染料及び染付けレーキは、所望の色相に応じて、単独で用いても、混合して用いても構わない。
【0042】
染料及び染付けレーキの付着量は、樹脂粒子粉末の表面積によっても異なるが、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.01〜500重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜400重量部、更により好ましくは0.1〜300重量部である。0.01重量部未満の場合には、高彩度且つ着色力の優れた複合粒子粉末を得ることが困難となる。また、500重量部を超える場合には、均一性の高い染料もしくは染付けレーキの付着層を形成することが困難となる。
【0043】
本発明に係る複合粒子の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子である樹脂粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有している。
【0044】
本発明に係る複合粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状及び不定形等のいずれの形状であってもよい。本発明に係る複合粒子粉末を塗料又は樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、球形度が1.0以上2.0未満の球状又は粒状が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。
【0045】
本発明に係る複合粒子粉末の粒子サイズは、特に制限はなく、用途に応じて適宜選べばよいが、好ましくは平均粒子径が0.01μm〜1cmである。
【0046】
殊に、本発明に係る複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜300μm、より好ましくは0.015〜200μm、更により好ましくは0.02〜100μmである。平均粒子径が300μmを超える場合、粒子サイズが大きすぎるため、着色力が低下し、塗料及び樹脂組成物等の着色材としては好ましくない。
【0047】
本発明に係る複合粒子粉末のBET比表面積値は、特に制限はなく、用途に応じて適宜選べばよいが、好ましくは0.0004〜700m/gである。
【0048】
殊に、本発明に係る複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末のBET比表面積値は0.01〜700m/gが好ましく、より好ましくは0.02〜500m/g、更により好ましくは0.04〜400m/gである。BET比表面積値が0.01m/g未満の場合、粗大粒子となって着色力が低下し、塗料及び樹脂組成物等の着色材としては好ましくない。BET比表面積値が700m/gを超える場合には、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中への分散が困難となる。
【0049】
本発明に係る複合粒子粉末の彩度の変化率は、粒子表面に付着させた染料もしくは染付けレーキ単体の彩度に対して20%以下が好ましく、より好ましくは18%以下、更により好ましくは16%以下である。
【0050】
本発明に係る複合粒子粉末の着色力は、後述する評価方法により102%以上が好ましく、より好ましくは106%以上、更により好ましくは110%以上である。
【0051】
本発明に係る複合粒子粉末の耐光性は、後述する評価方法において、ΔE値で10.0以下が好ましく、より好ましくは9.0以下、更により好ましくは8.0以下である。
【0052】
本発明に係る複合粒子粉末の耐ブリード性は、後述する評価方法において、水系、溶剤系、いずれもの場合も、94%以上が好ましく、より好ましくは95%以上、更により好ましくは96%以上である。
【0053】
次に、本発明に係る複合粒子粉末を配合した水系塗料用着色組成物及び溶剤系塗料用着色組成物(以下、「塗料用着色組成物」という。)について述べる。
【0054】
塗料用着色組成物としては、本発明に係る複合粒子粉末及び溶剤からなり、必要により、分散剤、樹脂等が配合される。
【0055】
水系塗料用着色組成物の溶剤としては、水と水系塗料用に通常使用されているエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤とを混合して使用することができる。
【0056】
溶剤系塗料用着色組成物の溶剤としては、溶剤系塗料用に通常使用されている大豆油、トルエン、キシレン、シンナー、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0057】
本発明に係る塗料用着色組成物中における複合粒子粉末の配合割合は、溶剤100重量部に対して1〜200重量部の範囲で使用することができ、好ましくは3〜150重量部、より好ましくは5〜100重量部である。
【0058】
本発明に係る塗料用着色組成物は、分散安定性がΔE値で1.2以下が好ましく、より好ましくは1.0以下である。耐光性は、後述する評価方法において、塗膜の耐光性がΔE値で10.0以下が好ましく、より好ましくは9.0以下である。
【0059】
本発明に係る塗料用着色組成物は、各種用途に応じて、樹脂、溶剤、必要により油脂、消泡剤、体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等を配合し、希釈・分散することにより、塗料として用いられる。
【0060】
水系塗料用樹脂としては、水系塗料用や水性インクに通常使用されている水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等を用いることができる。溶剤系塗料用樹脂としては、溶剤系塗料用や油性印刷インクに通常使用されているアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ガムロジン、ライムロジン等のロジン系樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン変性樹脂、石油樹脂等を用いることができる。
【0061】
油脂としては、あまに油、きり油、オイチシカ油、サフラワー油等の乾性油を加工したボイル油を用いることができる。
【0062】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0063】
本発明に係る水系塗料用着色組成物を用いて得られた水系塗料を塗膜にした場合には、光沢度は70〜110%が好ましく、より好ましくは75〜110%であり、塗膜の耐光性ΔE値は10.0以下が好ましく、より好ましくは9.0以下である。
【0064】
また、本発明に係る溶剤塗料用着色組成物を用いて得られた溶剤系塗料を塗膜にした場合には、光沢度は75〜110%が好ましく、より好ましくは80〜110%であり、塗膜の耐光性ΔE値は10.0以下が好ましく、より好ましくは9.0以下である。
【0065】
次に、本発明に係る複合粒子粉末を用いて着色した樹脂組成物について述べる。
【0066】
本発明に係る複合粒子粉末を用いて着色した樹脂組成物は、目視観察による分散状態は、後出評価法による3、4又は5が好ましく、より好ましくは4又は5、更により好ましくは5であり、樹脂組成物の耐光性ΔE値は10.0以下が好ましく、より好ましくは9.0以下であることが好ましい。
【0067】
本発明に係る樹脂組成物中における複合粒子粉末の配合割合は、樹脂100重量部に対して0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.05〜150重量部、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0068】
本発明に係る樹脂組成物における構成基材としては、複合粒子粉末と周知の熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0069】
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン、天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0070】
添加剤の量は、複合粒子粉末と樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0071】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂原料と複合粒子粉末とをあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、樹脂組成物中に複合粒子粉末を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0072】
次に、本発明に係る複合粒子粉末の製造法について述べる。
【0073】
本発明に係る複合粒子粉末は、樹脂粒子粉末と表面改質剤とを混合し、樹脂粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、次いで、表面改質剤によって被覆された樹脂粒子粉末と染料もしくは染付けレーキとを混合することによって得ることができる。
【0074】
樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆に当たって、樹脂粒子粉末の粒子表面の水分量を、好ましくは0.1〜10.0%、より好ましくは0.3〜9.0%の範囲となるよう、予め乾燥もしくは調湿しておくことが好ましい。水分量を0.1〜10.0%の範囲にコントロールすることにより、より効率的に樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆を行うことができる。
【0075】
樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆は、樹脂粒子粉末と表面改質剤又は表面改質剤の溶液とを機械的に混合攪拌したり、樹脂粒子粉末に表面改質剤の溶液又は表面改質剤を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。
【0076】
樹脂粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌、染料もしくは染付けレーキと粒子表面に表面改質剤が被覆されている樹脂粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができ、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0077】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
【0078】
樹脂粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌時における条件は、樹脂粒子粉末の粒子表面に表面改質剤ができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm、好ましくは98〜1470N/cm、より好ましくは147〜980N/cm、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0079】
樹脂粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を被覆した後、染料もしくは染付けレーキを添加し、混合攪拌して表面改質剤被覆樹脂粒子表面に染料もしくは染付けレーキを付着させる。必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。
【0080】
染料もしくは染付けレーキは、少量ずつを時間をかけながら、殊に5分〜24時間、好ましくは5分〜20時間程度をかけて添加するか、もしくは、樹脂粒子粉末100重量部に対して5〜25重量部の染料もしくは染付けレーキを、所望の添加量となるまで分割して添加することが好ましい。
【0081】
混合攪拌時における条件は、染料もしくは染付けレーキが均一に付着するように、線荷重は19.6〜1960N/cm、好ましくは98〜1470N/cm、より好ましくは147〜980N/cm、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0082】
乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜80℃が好ましく、より好ましくは50〜70℃であり、加熱時間は、10分〜6時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0083】
なお、表面改質剤としてアルコキシシラン及びフルオロアルキルシランを用いた場合には、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物となって被覆されている。
【実施例】
【0084】
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0085】
粒子の平均粒子径は、100μm未満の粒子サイズのものは、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影を行い、そこに示された粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。100μm〜5mm程度の粒子サイズのものは、光学顕微鏡を用いて写真撮影を行い、そこに示された粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0086】
球形度は、平均粒子径(平均最長径)と平均最短径との比で示した。
【0087】
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
【0088】
樹脂粒子粉末の水分量は、「微量水分測定装置AQ−6」(平沼産業株式会社製)を用いて測定した。
【0089】
樹脂粒子粉末、染料、染付けレーキ及び複合粒子粉末の色相は、試料粉体を1.96×10Pa(2000Kg/cm)の圧力で加圧成形を行い、平板状の被測定試料を作製し、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数で示した。
【0090】
複合粒子粉末の彩度の変化率は、上記で得られた複合粒子粉末の彩度C値と該複合粒子粉末を作製するための用いた染料単体又は染付けレーキ単体の彩度Cs値から、下記数1に従って求めた。
【0091】
<数1>
彩度の変化率=((Cs値)−(C値))/(Cs値)×100
【0092】
樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆されている表面改質剤の被覆量は、各表面改質剤に含有されている金属について、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0093】
複合粒子粉末に付着している染料又は染付けレーキの被覆量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用い、下記手順で炭素量を測定することにより求めた。
あらかじめ、芯粒子である樹脂粒子粉末の単位重量当たりの炭素量を測定しておき、次いで、複合粒子粉末の炭素量を測定し、単位重量当たりの炭素量の変化量から、染料又は染付けレーキの付着量を求めた。
【0094】
複合粒子粉末の着色力は、まず下記に示す方法に従って作製した原色エナメルと展色エナメルのそれぞれを、キャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布して塗布片を作製し、該塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いてL値を測色し、その差をΔL値とした。
【0095】
次いで、複合粒子粉末の標準試料として、複合粒子粉末を作製するために用いた染料又は染付けレーキを上記と同様にして原色エナメルと展色エナメルの塗布片を作製し、各塗布片のL値を測色し、その差をΔLs値とした。
【0096】
得られた複合粒子粉末のΔL値と標準試料のΔLs値を用いて下記数2に従って算出した値を着色力(%)として示した。
【0097】
<数2>
着色力(%)=100+{(ΔLs値−ΔL値)×10}
【0098】
原色エナメルの作製:
上記試料粉体3gとアミノアルキッド樹脂16g及びシンナー10gとを配合して3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで60分間混合分散した後、アミノアルキッド樹脂50gを追加し、更に5分間ペイントシェーカーで分散させて、原色エナメルを作製した。
【0099】
展色エナメルの作製:
上記原色エナメル12gとアミラックホワイト(二酸化チタン分散アミノアルキッド樹脂)40gとを配合し、ペイントシェーカーで15分間混合分散して、展色エナメルを作製した。
【0100】
樹脂粒子粉末、染料、染付けレーキ及び複合粒子粉末の耐光性は、前述の着色力を測定するために作製した原色エナメルを、冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して塗膜を形成し、得られた測定用塗布片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、下記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0101】
<数3>
ΔE値=((ΔL値)+(Δa値)+(Δb値)1/2
ΔL値: 比較する試料の紫外線照射有無のL値の差
Δa値: 比較する試料の紫外線照射有無のa値の差
Δb値: 比較する試料の紫外線照射有無のb値の差
【0102】
染料、染付けレーキ及び複合粒子粉末の水に対する耐ブリード性は、各試料粉体1gと精製水50mlを三角フラスコに入れ、60分間超音波分散を行った後、回転数10,000rpmで15分間遠心分離を行い、分取した上澄み液の380〜720nmの光透過率を、「自記光電分光光度計UV−2100」(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、この範囲における光透過率の最小値で示した。
【0103】
染料、染付けレーキ及び複合粒子粉末の溶剤に対する耐ブリード性は、各試料粉体1gとエタノール50mlを三角フラスコに入れ、60分間超音波分散を行った後、回転数10,000rpmで15分間遠心分離を行い、分取した上澄み液の380〜720nmの光透過率を、「自記光電分光光度計UV−2100」(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、この範囲における光透過率の最小値で示した。
【0104】
塗料用着色組成物の分散安定性は、各塗料用着色組成物をキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布して塗布片を作製し、得られた塗膜のL値、a値及びb値と、該塗料用着色組成物を25℃において1週間静置して得られた各塗料用着色組成物をキャストコート紙上に塗布、乾燥して得られた塗膜のL値、a値及びb値を「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定し、下記数4に従って得られたΔE値で示した。
【0105】
<数4>
ΔE値=((ΔL値)+(Δa値)+(Δb値)1/2
ΔL値: 比較する試料の放置前後のL値の差
Δa値: 比較する試料の放置前後のa値の差
Δb値: 比較する試料の放置前後のb値の差
【0106】
塗料用着色組成物の耐光性は、各塗料用着色組成物をキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布して塗布片を作製し、測定用塗布片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、前記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0107】
塗料用着色組成物を用いて得られた塗料からなる塗膜の光沢度は、後述する処方によって調製した各塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して塗膜を形成して得られた測定用塗布片を「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角60°の時の光沢度で示した。光沢度が高いほど、複合粒子粉末を配合した塗料の分散性が優れていることを示す。
【0108】
塗料用着色組成物を用いて得られた塗料からなる塗膜の色相は、前述の塗膜の光沢度を測定するために作製した測定用塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数で示した。
【0109】
塗料用着色組成物を用いて得られた塗料からなる塗膜の耐光性は、前述の塗膜の光沢度を測定するために作製した測定用塗布片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、前記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0110】
複合粒子粉末を用いて着色した樹脂組成物の色相は、後述する処法によって作製した着色樹脂プレートを、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数で示した。
【0111】
また、各樹脂組成物の耐光性は、前述の樹脂組成物の色相を測定するために作製した樹脂プレートの半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、前記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0112】
複合粒子粉末の樹脂組成物への分散性は、得られた着色樹脂プレート表面における未分散の凝集粒子の個数を目視により判定し、5段階で評価した。5が最も分散状態が良いことを示す。
5: 未分散物認められず、
4: 1cm当たり1個以上5個未満、
3: 1cm当たり5個以上10個未満、
2: 1cm当たり10個以上50個未満、
1: 1cm当たり50個以上。
【0113】
<実施例1−1:複合粒子粉末の製造>
予め調湿を行った芯粒子粉末(種類:ポリメチルメタクリレート(PMMA)、粒子形状:球状、平均粒子径5.07μm、球形度:1.03、BET比表面積値:1.03m/g、水分量:0.6%、L値:96.84、C値:0.3、耐光性ΔE値:5.31、)5.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、次いで、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:TSF484:GE東芝シリコーン株式会社製)50gを、エッジランナーを稼動させながらポリメチルメタクリレート粒子粉末に添加し、294N/cmの線荷重で20分間混合攪拌を行った。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
【0114】
次に、染料A(種類:ブリリアントブルーFCF(Alレーキ)、BET比表面積値:34.7m/g、L値:35.76、a値:−18.65、b値:−40.71、C値:44.78、耐光性ΔE値:16.36、耐ブリード性(水系):77.1%、耐ブリード性(溶剤系):76.0%)500gを、エッジランナーを稼動させながら60分かけて添加し、更に294N/cmの線荷重で60分間、混合攪拌を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆の上に染料Aを付着させた後、乾燥機を用いて60℃で60分間加熱処理を行い、複合粒子粉末を得た。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
【0115】
得られた複合粒子粉末は、平均粒子径が5.07μm、球形度が1.03の球状粒子粉末であった。粒子径のBET比表面積値は3.16m/g、色相のうちL値は40.18、a値は−15.31、b値は−34.74、C値は37.96、彩度の変化率は15.2%、着色力は113%、耐光性ΔE値は5.88、耐ブリード性(水系)は99.2%、耐ブリード性(溶剤系)は99.3%であった。メチルハイドロジェンポリシロキサンの被覆量はSi換算で0.41重量%であり、付着している染料Aの量は、C換算で5.11重量%(樹脂粒子粉末100重量部に対して約10重量部に相当する)であった。
【0116】
電子顕微鏡写真観察の結果、染料Aがほとんど認められないことから、染料Aのほぼ全量がメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆に付着していることが認められた。
【0117】
<実施例2−1:複合粒子粉末を含む水系着色組成物の製造>
前記複合粒子粉末と水及び水系溶剤等とを下記配合割合で3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いでペイントシェーカーで90分間混合分散し、水系着色組成物を作製した。
【0118】
複合粒子粉末 57.9重量部、
消泡剤(商品名:ノプコ8034:サンノプコ株式会社製) 0.5重量部、
水 22.4重量部、
ブチルセロソルブ 19.2重量部。
【0119】
得られた水系着色組成物の分散安定性はΔE値で0.85、耐光性はΔE値で6.20であった。
【0120】
<参考例2−1:水系着色組成物を用いた水系塗料の製造>
前記水系着色組成物と水溶性アルキッド樹脂等の塗料構成基材を下記割合で3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いでペイントシェーカーで90分間混合分散して水系塗料を得た。
【0121】
水系着色組成物 21.4重量部、
水溶性アルキッド樹脂 55.2重量部、
(商品名:S−118:大日本インキ化学工業株式会社製)
水溶性メラミン樹脂 12.6重量部、
(商品名:S−695:大日本インキ化学工業株式会社製)
消泡剤(商品名:ノプコ8034:サンノプコ株式会社製) 0.1重量部、
水 9.1重量部、
ブチルセロソルブ 1.6重量部。
【0122】
次いで、前記水系塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して得られた塗膜の光沢度は88%、色相のうちL値は47.96、a値は−15.48、b値は−33.12、C値は36.56、耐光性はΔE値で6.09であった。
【0123】
<実施例3−1:複合粒子粉末を含む溶剤系着色組成物の製造>
前記複合粒子粉末とシンナーとを下記割合で配合して3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで90分間混合分散し、溶剤系着色組成物を作製した。
【0124】
複合粒子粉末 23.0重量部、
シンナー 77.0重量部。
【0125】
得られた溶剤系着色組成物の分散安定性はΔE値で0.86、耐光性はΔE値で6.24であった。
【0126】
<参考例3−1:溶剤系着色組成物を用いた溶剤系塗料の製造>
前記溶剤系着色組成物とアミノアルキッド樹脂等の塗料構成基材を下記割合で3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いでペイントシェーカーで90分間混合分散して溶剤系塗料を得た。
【0127】
溶剤系着色組成物 16.5重量部、
アミノアルキッド樹脂 83.5重量部。
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
【0128】
次いで、前記溶剤系塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して得られた塗膜の光沢度は90%、色相のうちL値は47.91、a値は−15.52、b値は−33.48、C値は36.90、耐光性はΔE値で6.13であった。
【0129】
<実施例4−1:樹脂組成物の製造>
前記複合粒子粉末2.5gとポリ塩化ビニル樹脂粉末103EP8D(日本ゼオン株式会社製)47.5gとを秤量し、これらを100mlポリビーカーに入れ、スパチュラでよく混合して混合粉末を得た。
【0130】
得られた混合粉末にステアリン酸カルシウムを0.5g加えて混合し、160℃に加熱した熱間ロールのクリアランスを0.2mmに設定した後、前記混合粉末を少しずつロールにて練り込んで樹脂組成物が一体となるまで混練を続けた後、樹脂組成物をロールから剥離して着色樹脂プレート原料として用いた。
【0131】
次に、表面研磨されたステンレス板の間に上記樹脂組成物を挟んで180℃に加熱したホットプレス内に入れ、98MPaの圧力で加圧成形して厚さ1mmの着色樹脂プレートを得た。得られた着色樹脂プレートの分散状態は5であり、色相はL値が48.35、a値が−14.89、b値が−33.03、C値が36.23、耐光性ΔE値は6.18であった。
【0132】
前記実施例1−1〜4−1及び参考例2−1〜3−1に従って複合粒子粉末、水系着色組成物、水系塗料、溶剤系塗料、溶剤系着色組成物及び樹脂組成物を作製した。各製造条件及び得られた複合粒子粉末、水系着色組成物、水系塗料、溶剤系塗料、溶剤系着色組成物及び樹脂組成物の諸特性を示す。
【0133】
芯粒子1〜8:
芯粒子粉末として表1に示す特性を有する樹脂粒子粉末を用意した。
【0134】
【表1】

【0135】
染料及び染付けレーキ:
染料及び染付けレーキとして表2に示す諸特性を有する染料及び染付けレーキを用意した。
【0136】
【表2】

【0137】
実施例1−2〜1−8、比較例1−1:
表面改質剤による被覆工程における添加物の種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間、染料及び染付けレーキの付着工程における染料又は染付けレーキの種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間を種々変化させた以外は、前記実施例1−1と同様にして複合粒子粉末を得た。
【0138】
なお、実施例1−3では、芯粒子粉末100重量部に対して、エッジランナーを稼動させながら、染料C:100重量部を240分かけて添加した。実施例1−4では、芯粒子粉末100重量部に対して、エッジランナーを稼動させながら、染料D:200.0重量部を25重量部づつ2回に分けて添加した。
【0139】
このときの製造条件を表3に、得られた複合粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0140】
【表3】

【0141】
【表4】

【0142】
実施例1−2〜1−8の各実施例で得られた複合粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、染料及び染付けレーキがほとんど認められないことから、染料もしくは染付けレーキのほぼ全量が表面改質剤被覆に付着していることが確認された。
【0143】
<水系着色組成物>
実施例2−2〜2−8、比較例2−1〜2−7:
着色粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして水系着色組成物を得た。
【0144】
このときの製造条件及び得られた水系着色組成物の諸特性を表5に示す。
【0145】
【表5】

【0146】
<水系塗料>
参考例2−2〜2−8、比較参考例2−1〜2−7:
水系着色組成物の種類を種々変化させた以外は、前記参考例2−1と同様にして水系塗料を得た。
【0147】
得られた水系塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して得られた塗膜の諸特性を表6に示す。
【0148】
【表6】

【0149】
<溶剤系着色組成物>
実施例3−2〜3−8、比較例3−1〜3−7:
着色粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例3−1と同様にして溶剤系着色組成物を得た。
【0150】
このときの製造条件及び得られた溶剤系着色組成物の諸特性を表7に示す。
【0151】
【表7】

【0152】
<溶剤系塗料>
参考例3−2〜3−8、比較参考例3−1〜3−7:
溶剤系着色組成物の種類を種々変化させた以外は、前記参考例3−1と同様にして水系塗料を得た。
【0153】
得られた溶剤系塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して得られた塗膜の諸特性を表8に示す。
【0154】
【表8】

【0155】
<樹脂組成物>
実施例4−2〜4−8、比較例4−1〜4−7:
着色粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例4−1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0156】
このときの製造条件及び得られた樹脂組成物の諸特性を表9に示す。
【0157】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に染料が付着している複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末。
【請求項2】
樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に染付けレーキが付着している複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の複合粒子粉末を水及び/又は水溶性溶剤に分散してなることを特徴とする水系塗料用着色組成物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の複合粒子粉末を溶剤に分散してなることを特徴とする溶剤系塗料用着色組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の複合粒子粉末を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−206681(P2006−206681A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18420(P2005−18420)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】