説明

複合粒子粉末及びその製造法、並びに該複合粒子粉末を用いた塗料及び樹脂組成物

【課題】 本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、流動性、着色力及び耐光性に優れた複合粒子粉末、及び、該複合粒子粉末を配合してなる、分散性、耐光性及び貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物に関するものである。
【解決手段】 樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料が付着している複合粒子粉末は、樹脂粒子粉末と表面改質剤とを混合攪拌して樹脂粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を被覆させた後、有機顔料を添加し、混合攪拌して前記表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料を付着させて得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、流動性、着色力及び耐光性に優れた複合粒子粉末、及び、該複合粒子粉末を配合してなる、分散性、耐光性及び貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機顔料は、色相が鮮明であることから、塗料用、印刷インク用、化粧品用、ゴム・樹脂組成物用等の着色剤として汎用されているが、一般的に、隠蔽力が小さく、耐光性が劣るため、有機顔料によって着色された塗膜や樹脂組成物もまた、耐光性に劣るものであった。
【0003】
また、一般に、有機顔料の比重は1.3〜2.5であり、通常塗料に用いられる溶剤の比重は0.8〜1.3であることから、長期保存時、比重差による色分かれが生じることがある。更に、有機顔料は通常不定形もしくは粒状であり、流動性が悪いため、取り扱いが困難で、作業性が悪いものであった。
【0004】
近年、前記塗料ビヒクル中や樹脂組成物中への分散性及び分散安定性の改善はもとより、流動性、着色力及び耐光性等の着色剤としての着色粒子粉末の諸特性向上が強く要求されている。
【0005】
これまでに、ポリアミド樹脂やポリエチレン樹脂といった樹脂粉体表面に有機顔料をメカノケミカル的に処理する方法(特許文献1)や、白色無機粒子表面にアルコキシシランなどの糊剤を介して有機顔料を付着させる方法(特許文献2)が提案されている。
【0006】
また、樹脂粒子の周囲を有機顔料が覆った着色材をインクジェット用記録液に用いることが提案されている(特許文献3乃至4)。
【0007】
【特許文献1】特公平7−30263号公報
【特許文献2】特開2002−356625号公報
【特許文献3】特開平9−157559号公報
【特許文献4】特開2002−256194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、塗料の貯蔵安定性を改善することのできる複合粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0009】
即ち、前出特許文献1には、ポリアミド樹脂やポリエチレン樹脂といった樹脂粉体表面に有機顔料をメカノケミカル的に処理する方法が記載されているが、メカノケミカル的な方法では、核となる粒子表面への付着力が十分ではなく、そのため、脱離した有機顔料等によって均一な分散が阻害されるなどの問題を有している。
【0010】
また、前出特許文献2には、白色無機粒子表面にアルコキシシラン等の糊剤を介して有機顔料を付着させる方法が記載されているが、無機粒子粉末は比重が高いことが知られており、殊に、通常比重が1〜1.7の範囲にある塗料中では沈降しやすく、貯蔵安定性に問題を抱えている。
【0011】
また、前出特許文献3乃至4には、樹脂粒子の周囲を有機顔料が覆った着色材をインクジェット用記録液に用いることが記載されているが、有機顔料の分散液と樹脂粒子の分散液とを水溶液中で単に混合攪拌しているだけであり、核となる樹脂粒子表面への有機顔料の付着力が十分ではなく、そのため、脱離した有機顔料等によって均一な分散が阻害されるなどの問題を有している。
【0012】
そこで、本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、塗料の貯蔵安定性を改善することのできる複合粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0014】
即ち、本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料が付着している複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末である(本発明1)。
【0015】
また、本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料が付着している平均粒子径が0.01〜300μmの複合粒子からなることを特徴とする複合粒子(本発明2)。
【0016】
また、本発明は、樹脂粒子粉末と表面改質剤とを混合攪拌して樹脂粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を被覆させた後、有機顔料を添加し、混合攪拌して前記表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料を付着させることを特徴とする本発明1の複合粒子粉末の製造法である(本発明3)。
【0017】
また、本発明は、本発明2の複合粒子粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料である(本発明4)。
【0018】
また、本発明は、本発明2の複合粒子粉末を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物である(本発明5)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る複合粒子粉末は、樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、流動性、着色力及び耐光性に優れており、貯蔵安定性に優れた塗料を得ることができるので、塗料及び樹脂組成物の着色用複合粒子粉末として好適である。
【0020】
本発明に係る塗料及び樹脂組成物は、有機顔料の脱離が抑制され、た複合粒子粉末を着色顔料として用いることから、分散性、耐光性及び貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0022】
先ず、本発明に係る複合粒子粉末について述べる。
【0023】
本発明に係る複合粒子粉末は、芯粒子粉末である樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されており、該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料が付着している複合粒子からなる。
【0024】
本発明における樹脂粒子としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれをも用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、フッ化樹脂、繊維素系樹脂等を用いることができ、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリヤ樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等を用いることができる。樹脂粒子は要求される特性や用途に応じて選択すればよいが、好ましくはアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂である。
【0025】
本発明における樹脂粒子粉末の比重は、通常0.8〜2.5である。
【0026】
樹脂粒子の粒子形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状及び不定形等のいずれの形状であってもよい。得られる複合粒子粉末を塗料又は樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、球形度(平均粒子径/平均最短径)(以下、「球形度」という。)が1.0以上2.0未満の球状又は粒状が好ましく、より好ましくは球形度が1.0〜1.5である。
【0027】
樹脂粒子粉末の粒子サイズは、特に制限はなく、得られる複合粒子粉末の用途に応じて適宜選べばよいが、樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による均一な被覆処理及び有機顔料による均一な付着処理を考慮すると、好ましくは平均粒子径が0.01μm〜1cmである。
【0028】
殊に、得られる複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜300μm、より好ましくは0.015〜200μm、更により好ましくは0.02〜100μmである。この場合、平均粒子径が300μmを超えると、得られる複合粒子が粗大粒子となり、着色力が低下するため好ましくない。
【0029】
樹脂粒子粉末のBET比表面積値は、樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による均一な被覆処理及び有機顔料による均一な付着処理を考慮すると、0.0004〜700m/gが好ましい。
【0030】
殊に、得られた複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末のBET比表面積値は、好ましくは0.01〜700m/g、より好ましくは0.02〜500m/g、更により好ましくは0.04〜400m/gである。この場合、BET比表面積値が0.01m/g未満となると、得られる複合粒子が粗大粒子となり、着色力が低下するため好ましくない。
【0031】
本発明における樹脂粒子粉末の色相は、できる限り無色であることが好ましく、L値が70.00以上であり、より好ましくは75.00以上であり、C値が18.00以下、好ましくは15.00以下、より好ましくは12.00以下、更により好ましくは9.00以下である。L値、C値が上記範囲外の場合には、色相が無色を呈しているとは言い難く、鮮明な色相を有する複合粒子粉末を得ることが困難となる。
【0032】
本発明における樹脂粒子粉末の表面電荷は、通常−100〜+100μC/gの範囲にある。
【0033】
本発明における樹脂粒子粉末の流動性は、形状等によっても異なるが、一般的には55以上を有している。殊に、粒子形状が球状のものは、高い流動性を有しており、その場合、60以上である。
【0034】
本発明における樹脂粒子粉末の耐光性は、後述する評価方法により、ΔE値の下限値は通常5.0を超え、上限値は12.0、好ましくは11.0、より好ましくは10.0である。
【0035】
本発明における表面改質剤としては、樹脂粒子の粒子表面へ有機顔料を付着できるものであれば何を用いてもよく、好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤、低分子あるいは高分子界面活性剤等の一種又は二種以上であり、より好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤である。
【0036】
樹脂粒子の粒子表面への有機顔料の付着強度を考慮すれば、表面改質剤は、表面改質剤被覆後の樹脂粒子の表面電荷が、有機顔料とは反対の電荷となるものを用いることが好ましい。
【0037】
有機ケイ素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0038】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0039】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0040】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0041】
低分子系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩等が挙げられる。高分子系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。
【0042】
表面改質剤被覆後の樹脂粒子の表面電荷は、処理に用いる有機顔料とは反対の電荷で、且つ、絶対値として10μC/g以上を有していることが好ましい。樹脂粒子の粒子表面への有機顔料の付着強度を考慮すれば、表面電荷は絶対値として高い方が好ましく、より好ましくは20μC/g以上、更に好ましくは30μC/g以上である。
【0043】
表面改質剤の被覆量は、表面改質剤被覆後の樹脂粒子の表面電荷が、有機顔料とは反対の電荷で、且つ、絶対値として10μC/g以上となるよう処理することが好ましく、具体的には、表面改質剤被覆樹脂粒子粉末に対して各表面改質剤が含有する金属の元素換算で0.02〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.03〜4.0重量%、最も好ましくは0.05〜3.0重量%である。
【0044】
0.02重量%未満の場合には、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.001重量部以上の有機顔料を付着させることが困難である。表面改質剤を5.0重量%まで用いることによって、樹脂粒子粉末100重量部に対して有機顔料を0.001〜1000重量部付着させることができるため、必要以上に被覆する意味がない。
【0045】
本発明における有機顔料としては、一般に、塗料、樹脂組成物及びゴム組成物の着色剤として用いられている赤色系有機顔料、青色系有機顔料、黄色系有機顔料、緑色系有機顔料、橙色系有機顔料、褐色系有機顔料及び紫色系有機顔料等の各種有機顔料粒子粉末を使用することができる。
【0046】
各種有機顔料の中で、赤色系有機顔料としては、ブリリアントカーミン、パーマネントレッド等のアゾ系顔料、縮合アゾレッド等の縮合アゾ顔料及びジアミノアントラキノニルレッド、キナクリドンレッド、チオインジゴレッド、ペリレンレッド、ペリノンレッド、イソインドリンレッド、ジケトピロロピロールレッド等の縮合多環系顔料を用いることができる。青色系有機顔料としては、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー等のフタロシアニン系顔料、インダンスロンブルー、インジゴブルー等の縮合多環系顔料及びアルカリブルーを用いることができる。黄色系有機顔料としては、ハンザエロー等のモノアゾ系顔料、ベンジジンエロー、パーマネントエロー等のジスアゾ系顔料、縮合アゾイエロー等の縮合アゾ顔料及びアントラピリミジンイエロー、イソインドリノンイエロー、イソインドリンイエロー、キノフタロンイエロー等の縮合多環系顔料を用いることができる。緑色系有機顔料としては、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料を用いることができる。橙色系有機顔料としては、パーマネントオレンジ、リソールファストオレンジ、ピラゾロンオレンジ、バルカンファストオレンジ等のアゾ系顔料及びキナクリドン、ペリノンオレンジ、イソインドリノンオレンジ、イソインドリンオレンジ、ジケトピロロピロールオレンジ等の縮合多環系顔料を用いることができる。褐色系有機顔料としては、パーマネントブラウン、パラブラウン、ベンズイミダゾロンブラウン等のアゾ系顔料及びチオインジゴブラウン等の縮合多環系顔料を用いることができる。紫色系有機顔料としては、ファストバイオレット等のアゾ系顔料及び無置換キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等の縮合多環系顔料を用いることができる。本発明に用いられる有機顔料としては、以上に例示した顔料に限られるものではない。
【0047】
有機顔料の付着量は、樹脂粒子粉末の表面積によっても異なるが、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.001〜1000重量部が好ましく、より好ましくは0.005〜800重量部、更により好ましくは0.01〜600重量部である。0.001重量部未満の場合には、着色能を持たない樹脂粒子の割合が高すぎるため、鮮明な色相を有する複合粒子粉末を得ることが困難となる。また、1000重量部を超える場合には、均一性の高い有機顔料の付着層を形成することが困難となると共に、有機顔料の付着量が多いため有機顔料が脱離しやすくなり、その結果、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中における分散性が低下する。
【0048】
本発明に係る複合粒子の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子である樹脂粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有している。
【0049】
本発明に係る複合粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状及び不定形等のいずれの形状であってもよい。本発明に係る複合粒子粉末を塗料又は樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、球形度が1.0以上2.0未満の球状又は粒状が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。
【0050】
本発明に係る複合粒子粉末の粒子サイズは、特に制限はなく、用途に応じて適宜選べばよいが、好ましくは平均粒子径が0.01μm〜1cmである。
【0051】
殊に、本発明に係る複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜300μm、より好ましくは0.015〜200μm、更により好ましくは0.02〜100μmである。平均粒子径が300μmを超える場合、粒子サイズが大きすぎるため、着色力が低下し、塗料及び樹脂組成物等の着色材としては好ましくない。平均粒子径が0.01μm未満の場合には、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中への分散が困難となる場合がある。
【0052】
本発明に係る複合粒子粉末のBET比表面積値は、特に制限はなく、用途に応じて適宜選べばよいが、好ましくは0.0004〜700m/gである。
【0053】
殊に、本発明に係る複合粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末のBET比表面積値は0.01〜700m/gが好ましく、より好ましくは0.02〜500m/g、更により好ましくは0.04〜400m/gである。BET比表面積値が0.01m/g未満の場合、粗大粒子となって着色力が低下し、塗料及び樹脂組成物等の着色材としては好ましくない。BET比表面積値が700m/gを超える場合には、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中への分散が困難となる。
【0054】
本発明に係る複合粒子粉末の比重は、0.8〜2.5が好ましく、より好ましくは0.9〜2.4であり、更により好ましくは1.0〜2.3である。殊に、本発明に係る複合粒子粉末を塗料又は樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、一般的に、塗料又は樹脂組成物の構成基材として用いられる溶剤及び/又は樹脂の比重が0.9〜1.8であることから、この範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.7である。
【0055】
本発明に係る複合粒子粉末の着色力は、後述する評価方法により105%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、更により好ましくは115%以上である。
【0056】
本発明に係る複合粒子粉末の流動性は、60以上である。殊に、粒子形状が球状のものは、65以上を有しており、好ましくは70以上である。
【0057】
本発明に係る複合粒子粉末の耐光性は、後述する評価方法において、ΔE値で5.0以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。
【0058】
本発明に係る複合粒子粉末の有機顔料の脱離の程度は、後出評価方法における目視観察において、5、4又は3が好ましく、より好ましくは5又は4であり、更により好ましくは5である。有機顔料の脱離の程度が3未満の場合には、脱離した有機顔料により塗料ビヒクル中や樹脂組成物中での均一な分散が阻害される場合があるとともに、脱離した部分の樹脂粒子の色相が粒子表面に現れるため、均一な色相を得ることが困難となる。
【0059】
次に、本発明に係る複合粒子粉末を配合した塗料について述べる。
【0060】
本発明に係る複合粒子粉末を配合した塗料は、貯蔵安定性がΔE値で1.2以下が好ましく、より好ましくは1.0以下である。塗膜にした場合には、光沢度は75〜110%、好ましくは80〜110%であり、塗膜の耐光性ΔE値は5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下である。
【0061】
本発明に係る複合粒子粉末を配合した水系塗料は、貯蔵安定性がΔE値で1.2以下が好ましく、より好ましくは1.0以下である。塗膜にした場合には、光沢度は70〜110%、好ましくは75〜110%であり、塗膜の耐光性ΔE値は5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下である。
【0062】
本発明に係る塗料中における複合粒子粉末の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対して0.5〜100重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリングを考慮すれば、好ましくは1.0〜100重量部である。
【0063】
塗料構成基材としては、樹脂、溶剤、必要により油脂、消泡剤、体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0064】
樹脂としては、溶剤系塗料用や油性印刷インクに通常使用されているアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ガムロジン、ライムロジン等のロジン系樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン変性樹脂、石油樹脂等を用いることができる。水系塗料用としては、水系塗料用や水性インクに通常使用されている水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0065】
溶剤としては、溶剤系塗料用に通常使用されている大豆油、トルエン、キシレン、シンナー、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0066】
水系塗料用溶剤としては、水と水系塗料用に通常使用されているエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤とを混合して使用することができる。
【0067】
油脂としては、あまに油、きり油、オイチシカ油、サフラワー油等の乾性油を加工したボイル油を用いることができる。
【0068】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0069】
次に、本発明に係る複合粒子粉末を用いて着色した樹脂組成物について述べる。
【0070】
本発明に係る複合粒子粉末を用いて着色した樹脂組成物は、目視観察による分散状態は、後出評価法による3、4又は5、好ましくは4又は5、より好ましくは5であり、樹脂組成物の耐光性ΔE値は5.0以下、好ましくは4.0以下であることが好ましい。
【0071】
本発明に係る樹脂組成物中における複合粒子粉末の配合割合は、樹脂100重量部に対して0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.05〜150重量部、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0072】
本発明に係る樹脂組成物における構成基材としては、複合粒子粉末と周知の熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0073】
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン、天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0074】
添加剤の量は、複合粒子粉末と樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0075】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂原料と複合粒子粉末とをあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、樹脂組成物中に複合粒子粉末を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0076】
次に、本発明に係る複合粒子粉末の製造法について述べる。
【0077】
本発明に係る複合粒子粉末は、樹脂粒子粉末と表面改質剤とを混合し、樹脂樹脂粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、次いで、表面改質剤によって被覆された樹脂粒子粉末と有機顔料とを混合することによって得ることができる。
【0078】
樹脂粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆は、樹脂粒子粉末と表面改質剤又は表面改質剤の溶液とを機械的に混合攪拌したり、樹脂粒子粉末に表面改質剤の溶液又は表面改質剤を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。添加した表面改質剤は、ほぼ全量が樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆される。
【0079】
樹脂粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌、有機顔料と粒子表面に表面改質剤が被覆されている樹脂粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができ、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0080】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
【0081】
樹脂粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌時における条件は、樹脂粒子粉末の粒子表面に表面改質剤ができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm、好ましくは98〜1470N/cm、より好ましくは147〜980N/cm、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0082】
表面改質剤の添加量は、表面改質剤被覆後の樹脂粒子の表面電荷が、有機顔料とは反対の電荷で、且つ、絶対値として10μC/g以上となるよう処理することが好ましく、具体的には、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.15〜45重量部が好ましい。0.15〜45重量部の添加量により、表面改質剤被覆後の樹脂粒子の表面電荷を、有機顔料とは反対の電荷で、且つ、絶対値として10μC/g以上とすることができると共に、樹脂粒子粉末100重量部に対して有機顔料を0.001〜1000重量部付着させることができる。
【0083】
樹脂粒子の粒子表面への有機顔料の付着強度を考慮して、樹脂粒子の表面電荷を有機顔料とは反対の表面電荷に制御するために、樹脂粒子の粒子表面もしくは表面改質剤被覆後の樹脂粒子表面を表面電荷調整剤によって処理してもよい。
【0084】
表面電荷調整剤による処理は、前記表面改質剤処理の場合と同様に、樹脂粒子粉末もしくは表面改質剤被覆後の樹脂粒子粉末と表面電荷調整剤又は表面電荷調整剤を含む溶液とを機械的に混合攪拌すればよい。
【0085】
表面電荷調整剤としては、正帯電させるものとして、アルキルトリメチル4級アンモニウム塩、アルキルベンジルジメチル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、ニグロシン、アニリンブラック等のアジン化合物、イミダゾール類金属錯体、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等を用いることができる。負帯電させるものとしては、サリチル酸二量体等のサリチル酸類金属錯体、有機ホウ素塩類、アゾ系クロム金属錯体等のモノアゾ染料金属錯体、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のケイ素化合物を用いることができる。
【0086】
その他にも、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリエーテルエステルアミド、第4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート共重合体、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カルボベタイン−グラフト共重合体等の高分子型帯電防止剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸塩共重合体、オレフィン−マレイン酸塩共重合体等の界面活性剤及びシラン系、チタネート系及びアルミネート系のカップリング剤等を用いることができる。これらの帯電性は、それぞれの化合物が有する極性基のイオン性もしくは処理量によって、正帯電性付与、負帯電性付与を使い分ければよい。
【0087】
表面電荷調整剤による処理量は、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.15〜45重量部の範囲である。該処理によって得られる表面電荷調整後の樹脂粒子の表面電荷が、有機顔料の電荷とは反対の電荷で、且つ、絶対値として10μC/g以上を有していることが好ましく、より好ましくは20μC/g以上、更により好ましくは30μC/g以上となるよう処理すればよい。
【0088】
樹脂粒子粉末の粒子表面に表面改質剤又は表面改質剤及び表面電荷調整剤を被覆して樹脂粒子の粒子表面の表面電荷を調整した後、有機顔料を添加し、混合攪拌して表面改質剤被覆樹脂粒子表面に有機顔料を付着させる。必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。
【0089】
有機顔料は、少量ずつを時間をかけながら、殊に5分〜24時間、好ましくは5分〜20時間程度をかけて添加するか、もしくは、樹脂粒子粉末100重量部に対して5〜25重量部の有機顔料を、所望の添加量となるまで分割して添加することが好ましい。
【0090】
混合攪拌時における条件は、有機顔料が均一に付着するように、線荷重は19.6〜1960N/cm、好ましくは98〜1470N/cm、より好ましくは147〜980N/cm、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0091】
有機顔料の添加量は、樹脂粒子粉末100重量部に対して1〜1000重量部であり、好ましくは1〜800重量部、より好ましくは1〜600重量部である。有機顔料の添加量が上記範囲外の場合には、目的とする複合粒子粉末が得られない。
【0092】
乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜80℃が好ましく、より好ましくは50〜70℃であり、加熱時間は、10分〜6時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0093】
なお、表面改質剤としてアルコキシシラン及びフルオロアルキルシランを用いた場合には、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物となって被覆されている。
【0094】
<作用>
本発明においては最も重要な点は、樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に、該表面改質剤被覆樹脂粒子表面に有機顔料が付着している複合粒子粉末は、樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、流動性、着色力及び耐光性に優れているという事実である。
【0095】
本発明において、樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されている理由については、通常、樹脂粒子は電荷を有しているものであるが、本発明においては樹脂粒子の表面電荷を有機顔料の電荷とは反対の電荷に制御することにより、有機顔料が樹脂粒子の粒子表面に強固に結合するためと、本発明者は考えている。
【0096】
また、本発明に係る複合粒子の流動性が優れている理由について、本発明者は、上記理由により、一般的に、不定形で流動性の悪い有機顔料が樹脂粒子の粒子表面に強固に付着していることによるものと考えている。
【0097】
そして、前記複合粒子を配合した塗料は、貯蔵安定性が優れているという事実である。
【0098】
本発明に係る塗料の貯蔵安定性が優れている理由について、本発明者は、本発明に係る複合粒子粉末の場合、粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、複合粒子粉末の比重が、一般的な塗料の比重である1〜1.7の範囲にあることによるものと考えている。
【実施例】
【0099】
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0100】
粒子の平均粒子径は、100μm未満の粒子サイズのものは、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影を行い、そこに示された粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。100μm〜5mm程度の粒子サイズのものは、光学顕微鏡を用いて写真撮影を行い、そこに示された粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。また、5mm以上の粒子サイズのものは、ノギスを用いて100個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0101】
球形度は、平均粒子径(平均最長径)と平均最短径との比で示した。
【0102】
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
【0103】
樹脂粒子粉末及び複合粒子粉末の比重は、「マルチボリューム 密度計 1305型」(マイクロメリティクス社製)を用いて求めた。
【0104】
樹脂粒子粉末及び複合粒子粉末の各表面電荷は、「ブローオフ粉体帯電量測定装置 MODEL TB 200」(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。
【0105】
樹脂粒子粉末、有機顔料及び複合粒子粉末の流動性は、「パウダテスタ」(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、安息角(度)、圧縮度(%)、スパチュラ角(度)、凝集度の各粉体特性値を測定し、該各測定値を同一基準の数値に置き換えた各々の指数を求め、各々の指数を合計した流動性指数で示した。流動性指数が100に近いほど、流動性が優れていることを意味する。
【0106】
樹脂粒子粉末、有機顔料及び複合粒子粉末の色相は、試料0.5gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数で示した。なお、C値は彩度を表し、下記数1に従って求めることができる。
【0107】
<数1>
値=((a値)+(b値)1/2
【0108】
樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆されている表面改質剤の被覆量は、各表面改質剤に含有されている金属について、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0109】
複合粒子粉末に付着している有機顔料の被覆量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用い、次の様な手順で炭素量を測定することにより求めた。あらかじめ、芯粒子である樹脂粒子粉末の単位重量当たりのカーボン量を測定しておき、次いで、複合粒子粉末のカーボン量を測定し、単位重量当たりのカーボン量の変化量から、有機顔料の付着量を求めた。
【0110】
複合粒子粉末に付着している有機顔料の脱離の程度は、下記方法により、目視によって5段階で評価した。5が複合粒子の粒子表面からの有機顔料の脱離量が少ないことを示す。
【0111】
被測定粒子粉末2gとエタノール20mlを50mlの三角フラスコに入れ、60分間超音波分散を行った後、回転数10,000rpmで15分間遠心分離を行い、被測定粒子粉末と溶剤部分とを分離した。得られた被測定粒子粉末を60℃で5時間乾燥させ、電子顕微鏡写真に示される視野の中に存在する、脱離して再凝集した有機顔料の個数を目視で観察し、樹脂粒子粉末と有機顔料を、表面改質剤を介さず単に混合しただけの混合粒子粉末の電子顕微鏡写真と比較して5段階で評価した。
【0112】
1:樹脂粒子粉末と有機顔料を、表面改質剤を介さず単に混合した場合と同程度。
2:複合粒子粉末100個当たりに30個以上50個未満。
3:複合粒子粉末100個当たりに10個以上30個未満。
4:複合粒子粉末100個当たりに5個以上10個程度。
5:複合粒子粉末100個当たりに5個未満。
【0113】
複合粒子粉末の着色力は、まず下記に示す方法に従って作製した原色エナメルと展色エナメルのそれぞれを、キャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布して塗布片を作製し、該塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いてL値を測色し、その差をΔL値とした。
【0114】
次いで、複合粒子粉末の標準試料として、複合粒子粉末と同様の割合で有機顔料と樹脂粒子粉末とを単に混合した混合粒子粉末を用いて、上記と同様にして原色エナメルと展色エナメルの塗布片を作製し、各塗布片のL値を測色し、その差をΔLs値とした。
【0115】
得られた複合粒子粉末のΔL値と標準試料のΔLs値を用いて下記数2に従って算出した値を着色力(%)として示した。
【0116】
<数2>
着色力(%)=100+{(ΔLs値−ΔL値)×10}
【0117】
原色エナメルの作製:
上記試料粉体3gとアミノアルキッド樹脂16g及びシンナー10gとを配合して3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで60分間混合分散した後、アミノアルキッド樹脂50gを追加し、更に5分間ペイントシェーカーで分散させて、原色エナメルを作製した。
【0118】
展色エナメルの作製:
上記原色エナメル12gとアミラックホワイト(二酸化チタン分散アミノアルキッド樹脂)40gとを配合し、ペイントシェーカーで15分間混合分散して、展色エナメルを作製した。
【0119】
樹脂粒子粉末、有機顔料及び複合粒子粉末の耐光性は、前述の着色力を測定するために作製した原色エナメルを、冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して塗膜を形成し、得られた測定用塗布片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、下記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0120】
<数3>
ΔE値=((ΔL値)+(Δa値)+(Δb値)1/2
ΔL値: 比較する試料の紫外線照射有無のL値の差
Δa値: 比較する試料の紫外線照射有無のa値の差
Δb値: 比較する試料の紫外線照射有無のb値の差
【0121】
複合粒子粉末を用いた溶剤系塗料及び水系塗料の色相は、後述する処方によって調製した各塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して塗膜を形成して得られた測定用塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数で示した。また、複合粒子粉末を用いて着色した樹脂組成物の色相は、後述する処法によって作製した着色樹脂プレートを、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて前記と同様にして測定した。
【0122】
塗膜の光沢度は、前記測定用塗布片を「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角60°の時の光沢度で示した。光沢度が高いほど、複合粒子粉末を配合した塗料の分散性が優れていることを示す。
【0123】
各塗料を用いた塗膜の耐光性は、前述の塗料の色相を測定するために作製した測定用塗布片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、前記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0124】
また、各樹脂組成物の耐光性は、前述の樹脂組成物の色相を測定するために作製した樹脂プレートの半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、前記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0125】
塗料の貯蔵安定性は、後述する処方によって調製した各塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS−G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して製造した塗膜のL値、a値及びb値と、該塗料を25℃において1週間静置して得られた塗料を冷間圧延鋼板に塗布、乾燥して製造した塗膜のL値、a値及びb値を測定し、下記数4に従って得られたΔE値で示した。
【0126】
<数4>
ΔE値=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
ΔL値: 比較する塗膜の静置前後のL値の差
Δa値: 比較する塗膜の静置前後のa値の差
Δb値: 比較する塗膜の静置前後のb値の差
【0127】
複合粒子粉末の樹脂組成物への分散性は、得られた着色樹脂プレート表面における未分散の凝集粒子の個数を目視により判定し、5段階で評価した。5が最も分散状態が良いことを示す。
5: 未分散物認められず、
4: 1cm当たり1個以上5個未満、
3: 1cm当たり5個以上10個未満、
2: 1cm当たり10個以上50個未満、
1: 1cm当たり50個以上。
【0128】
<実施例1−1:複合粒子粉末の製造>
芯粒子粉末(種類:ポリメチルメタクリレート(PMMA)、粒子形状:球状、平均粒子径5.07μm、球形度:1.03、BET比表面積値1.03m/g、比重1.2、表面電荷+61μc/g、流動性77、L値96.8、C値0.3、耐光性ΔE値5.31)7.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、次いで、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(電荷:+、商品名:TSL8331:GE東芝シリコーン株式会社製)70.0gを、エッジランナーを稼動させながら上記樹脂粒子粉末に添加し、196N/cmの線荷重で20分間混合攪拌を行った。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
【0129】
次に、有機顔料B−1(種類:ピグメントブルー(フタロシアニン系顔料)、粒子形状:粒状、平均粒子径:83nm、BET比表面積値:81.6m/g、比重:1.58、表面電荷:−、L値:24.41、a値:6.01、b値:−12.63、流動性:24、耐熱性:196℃、耐光性ΔE値:10.68)3,500gを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に196N/cmの線荷重で60分間、混合攪拌を行い、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン被覆の上に有機顔料B−1を付着させた後、乾燥機を用いて60℃で60分間加熱処理を行い、複合粒子粉末を得た。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
【0130】
得られた複合粒子粉末は、平均粒子径が5.08μm、球形度が1.03の球状粒子粉末であった。BET比表面積値は4.2m/g、比重は1.32、流動性は79、色相のうちL値は27.83、a値は5.36、b値は−14.64、着色力は120%、耐光性ΔE値は2.14、有機顔料の脱離の程度は5であった。γ−アミノプロピルトリエトキシシランの被覆量はSi換算で0.126重量%であり、付着している有機顔料B−1の量は、C換算で22.15重量%(樹脂粒子粉末100重量部に対して約50重量部に相当する)であった。
【0131】
電子顕微鏡写真観察の結果、有機顔料B−1がほとんど認められないことから、有機顔料B−1のほぼ全量がγ−アミノプロピルトリエトキシシラン被覆に付着していることが認められた。
【0132】
<実施例2−1:複合粒子粉末を含む溶剤系塗料の製造>
前記複合粒子粉末10gとアミノアルキッド樹脂及びシンナーとを下記割合で配合して3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで90分間混合分散し、ミルベースを作製した。
【0133】
複合粒子粉末 3.8重量部、
アミノアルキッド樹脂 20.3重量部、
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
シンナー 12.7重量部。
【0134】
前記ミルベースを用いて、下記割合となるようにアミノアルキッド樹脂を配合し、ペイントシェーカーで更に15分間混合分散して、複合粒子粉末を含む溶剤系塗料を得た。
【0135】
ミルベース 36.7重量部、
アミノアルキッド樹脂 63.3重量部。
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
【0136】
得られた溶剤系塗料の貯蔵安定性はΔE値で0.81であった。
【0137】
次いで、前記溶剤系塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して得られた塗膜の光沢度は96%、色相はL値が27.85、a値が5.39、b値が−14.67、耐光性ΔE値は2.50であった。
【0138】
<実施例3−1:複合粒子粉末を含む水系塗料の製造>
前記複合粒子粉末7.62gと水溶性アルキッド樹脂等とを下記割合で3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いでペイントシェーカーで90分間混合分散し、ミルベースを作製した。
【0139】
複合粒子粉末 12.4重量部、
水溶性アルキッド樹脂 9.0重量部、
(商品名:S−118:大日本インキ化学工業株式会社製)
消泡剤(商品名:ノプコ8034:サンノプコ株式会社製) 0.1重量部、
水 4.8重量部、
ブチルセロソルブ 4.1重量部。
【0140】
前記ミルベースを用いて、塗料組成を下記割合で配合してペイントシェーカーで更に15分間混合分散して、複合粒子粉末を含有する水系塗料を得た。
【0141】
ミルベース 30.4重量部、
水溶性アルキッド樹脂 46.2重量部、
(商品名:S−118:大日本インキ化学工業株式会社製)
水溶性メラミン樹脂 12.6重量部、
(商品名:S−695:大日本インキ化学工業株式会社製)
消泡剤(商品名:ノプコ8034:サンノプコ株式会社製) 0.1重量部、
水 9.1重量部、
ブチルセロソルブ 1.6重量部。
【0142】
得られた水系塗料の貯蔵安定性はΔE値で0.84であった。
【0143】
次いで、前記水系塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して得られた塗膜の光沢度は93%、色相はL値が27.80、a値が5.44、b値が−14.65、耐光性ΔE値は2.55であった。
【0144】
<実施例4−1:樹脂組成物の製造>
前記複合粒子粉末2.5gとポリ塩化ビニル樹脂粉末103EP8D(日本ゼオン株式会社製)47.5gとを秤量し、これらを100mlポリビーカーに入れ、スパチュラでよく混合して混合粉末を得た。
【0145】
得られた混合粉末にステアリン酸カルシウムを0.5g加えて混合し、160℃に加熱した熱間ロールのクリアランスを0.2mmに設定した後、前記混合粉末を少しずつロールにて練り込んで樹脂組成物が一体となるまで混練を続けた後、樹脂組成物をロールから剥離して着色樹脂プレート原料として用いた。
【0146】
次に、表面研磨されたステンレス板の間に上記樹脂組成物を挟んで180℃に加熱したホットプレス内に入れ、98MPa(1トン/cm)の圧力で加圧成形して厚さ1mmの着色樹脂プレートを得た。得られた着色樹脂プレートの分散状態は5であり、色相はL値が29.01、a値が5.38、b値が−14.61、耐光性ΔE値は2.21であった。
【0147】
前記実施例1−1〜4−1に従って複合粒子粉末、溶剤系塗料、水系塗料及び樹脂組成物を作製した。各製造条件及び得られた複合粒子粉末、溶剤系塗料、水系塗料及び樹脂組成物の諸特性を示す。
【0148】
芯粒子1〜10:
芯粒子粉末として表1に示す特性を有する樹脂粒子粉末を用意した。なお、PMMAは、ポリメチルメタクリレートの略である。
【0149】
【表1】

【0150】
有機顔料:
有機顔料として表2に示す諸特性を有する有機顔料を用意した。
【0151】
【表2】

【0152】
実施例1−1〜1−11、比較例1〜2:
表面改質剤による被覆工程における添加物の種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間、有機顔料の付着工程における有機顔料の種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間を種々変化させた以外は、前記実施例1−1と同様にして複合粒子粉末を得た。
【0153】
なお、実施例1−3では、芯粒子粉末100重量部に対して、エッジランナーを稼動させながら、有機顔料R−1:150.0重量部を25重量部づつ8回に分けて添加した。実施例1−6では、芯粒子粉末100重量部に対して、有機顔料Y−1:150重量部を150分かけて添加した。
【0154】
このときの製造条件を表3に、得られた複合粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0155】
【表3】

【0156】
【表4】

【0157】
実施例1−2〜1−11の各実施例で得られた複合粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、有機顔料がほとんど認められないことから、有機顔料のほぼ全量が表面改質剤被覆に付着していることが確認された。
【0158】
<溶剤系塗料>
実施例2−1〜2−8、比較例3〜4:
粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして溶剤系塗料を得た。
【0159】
このときの製造条件、得られた塗料の諸特性及び塗膜の諸特性を表5に示す。
【0160】
【表5】

【0161】
<水系塗料>
実施例3−1〜3−8、比較例5〜6:
複合粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例3−1と同様にして水系塗料を得た。
【0162】
このときの製造条件、得られた水系塗料の諸特性及び塗膜の諸特性を表6に示す。
【0163】
【表6】

【0164】
<樹脂組成物>
実施例4−1〜4−8、比較例7〜8:
複合粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例4−1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0165】
このときの製造条件及び得られた樹脂組成物の諸特性を表7に示す。
【0166】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明に係る複合粒子粉末は、樹脂粒子粉末の粒子表面からの有機顔料の脱離が抑制されていると共に、流動性、着色力及び耐光性に優れており、貯蔵安定性に優れた塗料を得ることができるので、塗料及び樹脂組成物の着色用複合粒子粉末として好適である。
【0168】
本発明に係る塗料及び樹脂組成物は、有機顔料の脱離が抑制された複合粒子粉末を着色顔料として用いることから、分散性、耐光性及び貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料が付着している複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末。
【請求項2】
樹脂粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料が付着している平均粒子径が0.01〜300μmの複合粒子からなることを特徴とする複合粒子粉末。
【請求項3】
樹脂粒子粉末と表面改質剤とを混合攪拌して樹脂粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を被覆させた後、有機顔料を添加し、混合攪拌して前記表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面に有機顔料を付着させることを特徴とする請求項1記載の複合粒子粉末の製造法。
【請求項4】
請求項2記載の複合粒子粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料。
【請求項5】
請求項2記載の複合粒子粉末を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−104362(P2006−104362A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294371(P2004−294371)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】