説明

複合糸、防音カーペット、及び繊維製品

【課題】吸音性、消臭性、抗アレルゲン性、抗菌性、および制電性をも兼備した複合糸、吸音カーペット、及び繊維製品を提供すること。
【解決手段】フタロシアニン繊維12を含む糸と導電性繊維を含む糸13とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸14によって鞘部を構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた抗アレルゲン効果、消臭効果、抗菌効果、及び静電効果を有する複合糸、防音カーペット、及び繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車床面にはフェルト層や不織布層を有して吸音性能に優れる床カーペットが敷かれている。
【0003】
一方、この床カーペット上に載置される自動車用マットは、一般に不織基布にパイルを打ち込んだタフト用基材と、このタフト用基材裏面に形成したバッキング層とから構成されていた。
【0004】
ところが、自動車用マットにおけるバッキング層は、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなり、遮音層として機能するようになっていたので、この自動車用マットを床カーペット上に載置した場合、風切り音などの車外からの騒音は、自動車用マットのバッキング層によって跳ね返されてしまい、車外からの騒音についての十分な対策がなされていなかった。
【0005】
また、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマットについても同様に、タフト用基材裏面のバッキング層が遮音層となっていて、カーペット上面から伝播する騒音については、これを跳ね返してしまい、十分な防音対策がなされていなかった。
【0006】
本発明者は、このような事情に鑑み鋭意研究の結果、さらに優れた吸音性能を有する吸音カーペットを提供している。この吸音カーペットは、「タフト用基材の裏面側にバッキング層を形成した吸音カーペットであって、該吸音カーペットに、その表裏を貫通する多数の貫通孔を形成したことを特徴とする吸音カーペット」を要旨とするものである(特許文献1の第1〜3頁、図1〜3参照)。
【特許文献1】特開2002−238730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記カーペットの表裏を貫通する多数の貫通孔を形成した吸音効果を有する吸音カーペットをさらに改良し、車室内には、人体から出る汗や体臭、食べ物のかす等から発生する臭い、またペットがいる場合には、その体臭や尿の臭いといった悪臭があり、これらがカーペット等に付着し易く、しかも車室内の環境は、適度な湿度と温度が保たれるため、雑菌が繁殖しやすいことから、悪臭の除去が大きな課題として取り上げられていること、また、近年、アレルギー患者の急増に伴い、そのアレルゲン対策が求められているが、車中でのアレルゲン除去も考慮し、これらの課題を解決すべく、吸音性に加え、消臭性、抗アレルゲン性、抗菌性、および制電性をも兼備した吸音カーペットについて、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至ったのである。
【0008】
すなわち本発明は、吸音性、消臭性、抗アレルゲン性、抗菌性、および制電性をも兼備した複合糸を提供し、さらにこの複合糸を用いた自動車や列車、航空機などの乗り物の床面に敷設されるカーペットやマット、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入口に敷設される床面用マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、玄関マットなどに適用されるタフト用基材、或いは壁紙などの表層材といった繊維製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を構成したことを特徴とする複合糸をその要旨とするものである。
【0010】
請求項2〜6は、請求項1記載の複合糸を用いたことを特徴とするものであり、請求項2〜5記載の発明は、繊維基材の裏面側に表裏を貫通する多数の貫通孔を形成したバッキング層を形成した防音カーペットにおいて、フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を設けた複合糸を構成素材としたことを特徴とする防音カーペットをその要旨とするものである。
【0011】
また請求項6記載の発明は、フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を構成した複合糸を構成素材としたことを特徴とする繊維製品をその要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を構成した糸、またはそれを用いた繊維製品であることから、消臭性、抗アレルゲン性、抗菌性、および制電性といった効果が効果的に発現し、しかもこれらの性能を発揮するフタロシアニン繊維を含む糸及び導電性繊維を含む糸が芯部として、天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる鞘部をなす糸によって覆われていることから、クリーニング等によっても容易に脱落することが無く、上記の性能が長期にわたり持続される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の複合糸、防音カーペット、及び繊維製品を図面に従って詳細に説明する。まず、本発明の複合糸について説明する。図1及び図2に示すように、本発明の複合糸11は、フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を構成したことに特徴づけられたものである。
【0014】
フタロシアニン繊維を含む糸とは、フタロシアニン繊維を複数本束ねて加撚することで得られる糸である。この糸の太さや長さは任意であり、使用する用途や使用状態により適宜決定することができる。
【0015】
フタロシアニン繊維としては、フタロシアニン化合物またはその誘導体が含む繊維であるならば特に限定されない。フタロシアニン化合物としては、下記化学式1で表されるものであり、式中のMは、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、ニッケル、銅、タングステンからから選択される金属である。
【化1】

【0016】
フタロシアニン化合物またはその誘導体を含ませる繊維としては、天然繊維、合成繊維、半合成繊維または再生繊維のいずれでも良い。その含有形態としては、フタロシアニン化合物またはその誘導体が繊維表面に付着している形態、繊維内部にフタロシアニン化合物またはその誘導体が含有している形態などを挙げることができる。
【0017】
導電性繊維を含む糸とは、炭素繊維、金属繊維、導電性セラミック繊維などの無機繊維、合成繊維を主材とし、この繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属をメッキしたメッキ繊維、繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属を練り込んだもの、あるいは繊維成分中に導電性を有する樹脂を含ませた繊維などの導電性繊維を複数本束ねて加撚することで得られる糸である。この糸の太さや長さは任意であり、使用する用途や使用状態により適宜決定することができる。
【0018】
上記フタロシアニン繊維を含む糸12と導電性繊維を含む糸13を該複合糸11の芯部とし、この芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸14を撚り合わせるなどして該複合糸の鞘部が構成されている。
【0019】
糸14を構成する繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、再生繊維は、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0020】
本発明の複合糸11は、上記のように、フタロシアニン繊維を含む糸12と導電性繊維を含む糸13を芯部とし、この芯部周りが、天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸14からなる鞘部で取り囲まれていることから、空気や水分とともに悪臭物質やアレルゲン物質が鞘部の糸14を通り抜けて芯部を構成するフタロシアニン繊維を含む糸12と接触することで、悪臭物質やアレルゲン物質が吸着除去されるようになっている。また、この糸12の持つ抗菌作用により糸12上において雑菌の繁殖は阻止されることになる。
【0021】
また、複合糸11に含まれる導電糸の導電性能により、該糸11によって静電気の吸着除去も行われることになる。
【0022】
次に、上述の複合糸を吸音カーペットについて説明する。このカーペットは、自動車や列車、航空機などの乗り物の床面に敷設されるカーペットやマット、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入口に敷設される床面用マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、玄関マットなどに適用されるものであり、優れた吸音性を有するものである。
【0023】
図3には、自動車の車室内の床面上に敷設するマットに適用した例を示した。
図3に示すように、この防音カーペット20は、繊維基材21の裏面側に表裏を貫通する多数の貫通孔23を形成したバッキング層22を形成したものである。
【0024】
繊維基材21は、この繊維基材21は不織布、織物、編物、フェルトなどからなり、この繊維基材21内には、上述の複合糸(図示しない)が含まれていて、空気や水分とともに悪臭物質やアレルゲン物質が繊維基材21内の複合糸(図示しない)と接触することにより、詳しくは図1及び図2に示すように該複合糸11の鞘部の糸14を通り抜けて芯部を構成するフタロシアニン繊維を含む糸12と接触することで、悪臭物質やアレルゲン物質が吸着除去されるようになっている。また、この糸12の持つ抗菌作用により糸12上において雑菌の繁殖が阻止されることになっている。繊維基材21内の複合糸(図示しない)に含まれる導電糸13の導電性能により、静電気の吸着除去も行われることになる。
【0025】
この繊維基材21にはパイル糸が打ち込まれている。図3に示す例では、このパイル糸に図1及び図2に示す複合糸11を用いている。このため、パイル糸として適用されている複合糸11が繊維基材21内に含まれる複合糸(図示しない)とともに、消臭性、抗アレルゲン性、抗菌性、および制電性といった効果を発揮し、かつ導電糸13の導電性能により、静電気の吸着除去も行われるようになっている。
【0026】
この繊維基材21裏面にはSBRよりなる層24を設けて前記複合糸11からなるパイル糸の抜け止めがなされている。SBRよりなる層24は、パイル糸の抜け止めという機能を果たせばよく、繊維基材21裏面に全面に設けるのではなく、例えばストライプ状やネット状、ドット状など、部分的に設けるのが、音の通過を可能とするため好ましい。
【0027】
このカーペット20にあっては、前記繊維基材21のSBRよりなる層24側に不織布層25(吸音不織布)を介してバッキング層22を形成している。バッキング層22は、前記SBRよりなる層24の下側(不織布層25)側面にオレフィン系連続気泡型発泡層からなる。
【0028】
バッキング層22は表裏を貫通する多数の貫通孔23を有している。この貫通孔23により、当該吸音カーペット20に当たった音は、繊維基材21からバッキング層22へと通り抜け、この通過の過程で吸音がなされるようになっている。
【0029】
本発明の複合糸は、上述の吸音カーペット(マット)のほか、建物の室内などに貼り付けられる壁紙などの表層材といった繊維製品に使用することができ、これにより、吸音性に加えて、消臭性、抗アレルゲン性、抗菌性、および制電性を発揮し、快適な室内環境をもたらすことができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の複合糸を示す要部拡大図である。
【図2】同じく複合糸の拡大断面図である。
【図3】本発明の複合糸を用いた防音カーペットを示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0031】
11・・・複合糸
12・・・フタロシアニン繊維を含む糸
13・・・導電性繊維を含む糸
14・・・鞘部を構成する糸
20・・・防音カーペット
21・・・繊維基材
22・・・バッキング層
23・・・貫通孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を構成したことを特徴とする複合糸。
【請求項2】
繊維基材の裏面側に表裏を貫通する多数の貫通孔を形成したバッキング層を形成した防音カーペットにおいて、フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を設けた複合糸を構成素材としたことを特徴とする防音カーペット。
【請求項3】
複合糸を繊維基材の構成素材としたことを特徴とする請求項2記載の防音カーペット。
【請求項4】
複合糸を繊維基材に打ち込まれるパイル糸として用いたことを特徴とする請求項2又は3記載の防音カーペット。
【請求項5】
バッキング層中に複合糸が含まれていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の防音カーペット。
【請求項6】
フタロシアニン繊維を含む糸と導電性繊維を含む糸とによって芯部を構成し、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる糸によって鞘部を構成した複合糸を構成素材としたことを特徴とする繊維製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−297721(P2007−297721A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124060(P2006−124060)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】