説明

複合紡糸混繊フィラメントミシン糸

【課題】本発明の目的は、フィラメントの光沢を残しつつ均一な縫目を形成することが可能で、且つ高強力、高モジュラスであり、染色性に優れ、高速縫製性の良好な複合紡糸混繊フィラメントミシン糸に関するものである。
【解決手段】芯成分がエチレンナフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルで、鞘成分がエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる芯鞘型複合フィラメントAと、フィラメントAの鞘成分と同じポリエステルからなるフィラメントBとが紡糸工程で混繊されてなる混繊糸であって、下記要件を満足することを特徴とする複合紡糸混繊フィラメントミシン糸。
a)フィラメントAとフィラメントBとの混繊比率(重量比率)が70:30〜90:10であること。
b)フィラメントAの芯成分ポリエステルが、特定のリン化合物を、ポリマーを構成するジカルボン酸のモル数に対して0.1〜300ミリモル%含むこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントの光沢を残しつつ均一な縫目を形成することが可能で、且つ高強力、高モジュラスであり、染色性に優れ、高速縫製性の良好な複合紡糸混繊フィラメントミシン糸に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラメントミシン糸は紡績糸からなるミシン糸に比べて光沢があり、縫目が均一で且つ、ミシン糸強度が高いことから、各種縫製に使用されているが、解撚が起こり易いバック縫い及び千鳥縫いにおける可縫性は紡績糸ミシン糸に比べて劣るという欠点を有している。その対策として伸度差の異なる2種のフィラメントが芯鞘構造(2層構造)を形成し、鞘側の高伸度糸によりループまたはゆるみを形成させて可縫性を改善した混繊フィラメントミシン糸の開発が進められており、中でも混繊性に優れ且つコスト的にも安くすることができる紡糸混繊フィラメントミシン糸が注目をあつめている。
【0003】
特許文献1では芯側フィラメントにポリエチレンナフタレートフィラメントを使用し高強力、高モジュラスを保ち、鞘側フィラメントにポリエチレンテレフタレートを使用する紡糸混繊フィラメントミシン糸が提示されているが、かかる技術では芯側のポリエチレンナフタレートフィラメントと鞘側のポリエチレンテレフタレートの飽和染色温度が異なるため、ミシン糸として満足する染色性が出せないという問題や、またポリエチレンナフタレートは高強度、高モジュラスであるが紡糸及び延伸工程で生じる粗大な結晶成長を抑制することが困難であり剛直性が高く、特にミシン目の屈曲の激しい縫製ではミシン針による糸切れが問題となり、著しく縫製での工程通過性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−146307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、本発明の目的は、フィラメントの光沢を残しつつ均一な縫目を形成することが可能で、且つ高強力、高モジュラスであり、染色性に優れ、高速縫製性の良好な複合紡糸混繊フィラメントミシン糸を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合紡糸混繊フィラメントミシン糸は、芯成分が主たる繰り返し単位がエチレンナフタレートであるポリエステルで、鞘成分が主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる芯鞘型複合フィラメントAと、フィラメントAの鞘成分と同じポリエステルからなるフィラメントBとが紡糸工程で混繊されてなる混繊糸であって、下記要件を満足することを特徴とする複合紡糸混繊フィラメントミシン糸であり、
a)フィラメントAとフィラメントBとの混繊比率(重量比率)が70:30〜90:10であること。
b)フィラメントAの芯成分であるポリエステルが、フェニルホスフィン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスホン酸又はその誘導体であるリン化合物を、ポリマーを構成するジカルボン酸のモル数に対して0.1〜300ミリモル%含むこと。
【0007】
フィラメントBの伸度がフィラメントAより10%以上高いことが好ましく、更に、複合紡糸混繊ミシン糸の10%LASEが4.0cN/dtex以上、強度が5.5cN/dtex以上、伸度が15%以上、熱水収縮率が4.0%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合紡糸混繊フィラメントミシン糸は、芯成分が特定のリン化合物を含むエチレンナフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルで、鞘成分がエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルである芯鞘型複合フィラメントAと、鞘成分と同一のポリエチレンテレフタレートからなるフィラメントBとの紡糸混繊糸とすることにより、染色性、美観性を有し、且つ(特に剛直性が改善されたことにより)高速縫製性に優れた高強力、高モジュラスフィラメントミシン糸とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で使用した紡糸混繊用芯鞘複合紡糸口金の模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の複合紡糸混繊フィラメントミシン糸は、芯成分が主たる繰り返し単位がエチレンナフタレートであるポリエステルで鞘成分が主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる芯鞘型複合フィラメントA(単にフィラメントAと呼ぶことがある)と、フィラメントAより10%以上高い伸度を有しフィラメントAの鞘成分ポリマーと同じポリエステルであるフィラメントBとが紡糸工程で混繊され、AとBとの混繊比率(重量比率)が70:30〜90:10であり、芯鞘型複合フィラメントAの芯成分ポリエステルがフェニルホスフィン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスホン酸又はその誘導体であるリン化合物を、ポリマーを構成するジカルボン酸のモル数に対して0.1〜300ミリモル%含むポリマー組成物であることを特徴とする。
【0011】
ここで芯鞘型複合フィラメントAの芯成分ポリエステルとしては、好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80%以上、特には90%以上含むポリエチレンナフタレートであることが好ましい。
【0012】
上記の芯成分ポリエステルは、樹脂チップの極限粘度として、公知の溶融重合や固相重合を行うことにより0.60〜1.20の範囲にすることが好ましい。樹脂チップの極限粘度が低すぎる場合には溶融紡糸後の繊維を高強度化させることが困難となる。また極限粘度が高すぎると固相重合時間が大幅に増加し、生産効率が低下するため工業的観点から好ましくない。さらには0.65〜1.0の範囲であることが好ましい。
【0013】
芯鞘型複合フィラメントAの芯成分ポリエステルが、下記一般式(1)で表されるリン化合物を含有することにより、ポリマー組成物の結晶性が向上し、溶融し、紡糸口金から吐出する段階で、微小結晶を多数形成する。そしてこの微小結晶が、紡糸及び延伸工程で生じるポリエステル繊維の粗大な結晶成長を抑制し結晶を微分散化させ、繊維の剛直性を下げることによって、縫製時の糸切れを少なくすることができる。
【0014】
また、微小結晶を多数形成させるためには、下記一般式(1)で表されるリン化合物のRがベンジル基であることが、さらにはフェニル基であることが好ましく、本発明に使用するリン化合物がフェニルホスフィン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスホン酸又はその誘導体であることが好ましい。特にはフェニルホスホン酸およびその誘導体であることが最適である。
【0015】
【化1】

[上の式中、Rは炭素数1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基であり、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、Xは、水素原子または−OR基であり、Xが−OR基である場合、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、であり、RとRは同一であっても異なっていても良い。]
【0016】
また上記芯成分ポリエステルのリン化合物含有量としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分のモル数に対して0.1〜300ミリモル%であることが好適である。リン化合物の量が不十分であると微小結晶の結晶性向上効果が不十分になる傾向にあり、多すぎる場合には紡糸時の異物欠点が発生するために製糸性が低下する傾向にある。リン化合物の含有量はポリエステルを構成するジカルボン酸成分のモル数に対して1〜100ミリモル%の範囲がより好ましく、10〜80ミリモル%の範囲がさらに好ましい。
【0017】
また、前記芯鞘型複合フィラメントAの芯成分及び鞘成分のポリマー中には、各種の添加剤、たとえば二酸化チタンなどの艶消剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤、耐衝撃剤の添加剤、または補強剤としてモンモリナイト、ベントナイト、ヘクトライト、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、板状ベーマイト、あるいはカーボンナノチューブなどの添加剤が含まれていてもよいことはいうまでもない。
【0018】
芯鞘型複合フィラメントAの鞘成分ポリエステル及びフィラメントBのポリエステルにおいては、樹脂チップの極限粘度として、公知の溶融重合を行うことにより0.40〜0.70の範囲にすることが好ましい。樹脂チップの極限粘度が0.40未満の場合には溶融紡糸後の繊維を高強度化させることが困難となる。また極限粘度が0.70を超える場合はフィラメントAとフィラメントBとの伸度差が少なくなり、混繊糸の鞘側の高伸度糸(フィラメントB)のループまたはゆるみを形成させるのが困難になる。極限粘度としては、さらには0.55〜0.65の範囲であることが好ましい。
【0019】
本発明の複合紡糸混繊フィラメントミシン糸は芯鞘型複合フィラメントAと、該フィラメントAより10%以上高い伸度を有しフィラメントAの鞘側ポリマーと同じポリエステルであるフィラメントBとが紡糸工程で混繊され、フィラメントAとフィラメントBとの混繊比率(重量比率)が70:30〜90:10であることが必要である。
上記の構成とすることにより、芯鞘2層構造を有し、鞘側の高伸度糸によりループまたはゆるみを形成させて可縫性を改善した混繊フィラメントミシン糸とすることができる。
【0020】
本発明の複合紡糸混繊フィラメントミシン糸の10%LASEは4.0cN/dtex以上、強度が5.5cN/dtex以上、伸度が15%以上、熱水収縮率が4.0%以下であることが好ましい。10%LASEは高い方が好ましく、4.0cN/dtex以上、好ましくは5.0〜7.0cN/dtexであり、強度は5.5cN/dtex以上、好ましくは5.5〜7.5cN/dtexである。伸度は15%以上が必要であり、15%未満では縫製時での糸切れやが発生するなどして工程通過性が著しく悪くなる。これらの物性を同時に達成することにより、可縫性に優れ、且つ、高い耐久性を持つミシン糸が可能となる。
【0021】
熱水収縮率は4.0%以下であることが好ましく、これによりミシン糸の高い寸法安定性を得ることができる。
かかる特性のミシン糸を得るための具体的な製造法について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0022】
前記した2種類のポリエステルを図1で示すような紡糸混繊用芯鞘複合紡糸口金を用いて、溶融紡糸混繊して複合紡糸混繊フィラメントミシン糸とし、続いて延伸を施すことにより上記物性を有する原糸が得られる。
【0023】
紡糸工程で一旦未延伸糸として巻き取り改めて延伸する工程としては、紡糸速度が600〜1200m/分、より好ましくは800〜1000m/分である。紡糸後に延伸倍率として3.0〜10倍、より好ましくは3〜7倍に延伸することが好ましい。
【0024】
このように低速にて紡糸し、高倍率に延伸することによってより高強度の延伸繊維を得ることが可能である。従来は例え低速で紡糸したとしても高倍率延伸時に結晶の欠点に起因する強度の弱い部分が存在するため、高倍率延伸時に断糸が起こることが多かった。しかし本発明ではリン化合物の配合により延伸時の結晶化において微細結晶が均一に形成されるため、延伸欠点が発生しにくく、高倍率に延伸でき、繊維を高強度化することが可能となったものである。延伸工程で、芯側のフィラメントAと鞘側のフィラメントB(高伸度糸)との伸度差により鞘側のフィラメントBがループまたはゆるみを形成し、可縫性の改善された混繊フィラメントミシン糸とすることができる。
【0025】
本発明の混繊フィラメントミシン糸の延伸方法としては、引取りローラーから一旦巻き取って、いわゆる別延伸法で延伸してもよく、あるいは引取りローラーから連続的に延伸工程に未延伸糸を供給する、いわゆる直接延伸法で延伸しても構わない。また延伸条件としては1段ないし多段延伸であり、延伸負荷率としては60〜95%であることが好ましい。延伸負荷率とは繊維が実際に断糸する張力に対する、延伸を行う際の張力の比である。
【0026】
上記延伸糸をミシン糸として用いることができるが、通常延伸後に例えば1000T/MのS撚りを施した後、数本あわせて、700T/M等のZ撚りを施し、チーズに巻き取り、公知の方法で染色処理をおこない、乾燥後シリコーン系油剤を塗布してミシン糸とすることが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各特性値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度IVf
樹脂あるいは繊維をフェノールとオルトジクロロベンゼンとの混合溶媒(容量比6:4)に溶解し、35℃でオストワルド型粘度計を用いて測定して求めた。
(2)原糸の強度、伸度
原糸の強度および伸度はJIS−L1017に準拠し、オリエンテック社製のテンシロンを用いてサンプル長25cm、伸長速度30cm/minで測定し、サンプル破断した時の強度と伸度である。10%LASEは上記の測定時のサンプルが10%伸長した時の応力を測定した。
(3)熱水収縮率(BWS)
枠周1.125mの検尺機で捲数20回のカセを作り、0.022cN/dtexの荷重を掛けて、スケール板に吊るして初期のカセ長L0を測定する。その後、このカセを100℃の熱水浴中で30分間処理後、放冷し再びスケール板に吊るし収縮後の長さLを測定し次式で沸水収縮率を計算する。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%)
(4)本縫高速直線可縫性
本縫い1本針ミシンを用いて、4000rpmの速度、ミシン針#14でT/Rサージ4枚を1分間縫製し、ミシン糸の切断の有りもしくは単糸切れ多発で外観不合格の場合を(×)、単糸切れが発生するも極僅かで実用上問題ない場合を(○)、単糸切れが全く発生しない場合を(◎)として評価した。
【0028】
[実施例1]
[フィラメントA芯成分ポリエステルの作製]:
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部とエチレングリコール50重量部との混合物に酢酸マンガン四水和物0.030重量部、酢酸ナトリウム三水和物0.0056重量部を攪拌機、蒸留搭及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、150℃から245℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを反応器外に留出させながら、エステル交換反応を行い、引き続いてエステル交換反応が終わる前にリン化合物としてフェニルホスホン酸(PPA)を0.03重量部(50ミリモル%)を添加した。その後、反応生成物に三酸化二アンチモン0.024重量部を添加して、攪拌装置、窒素導入口、減圧口及び蒸留装置を備えた反応容器に移し、305℃まで昇温させ、30Pa以下の高真空下で縮合重合反応を行い、常法に従ってチップ化して極限粘度0.65のポリエチレンナフタレート樹脂チップを得た。このチップを65Paの真空度下、120℃で2時間予備乾燥した後、同真空下240℃で10〜13時間固相重合を行い、表1に記載した固有粘度のポリエチレンナフタレート樹脂チップを得た。
【0029】
[フィラメントA鞘成分ポリエステルの作製]:
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール66部、酢酸、マンガン4水塩0.03部(テレフタル酸ジメチルに対して0.024モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下4時間かけて140℃から230℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。続いて得られた生成物に正リン酸の56%水溶液、0.03部(テレフタル酸ジメチルに対して0.033モル%)及び三酸化アンチモン0.04部(0.027モル%)を添加して重合缶に移した。次いで1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて230℃から280℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度280℃で固有粘度0.60の樹脂チップを得た。
【0030】
[本発明の紡糸混繊フィラメントミシン糸の作製]:
製糸化は以下の通り行った。上記の乾燥樹脂チップを紡糸設備にて常法で溶融し、ギヤポンプを経て紡糸ヘッドに供給した。溶融ポリマーは、ノズル孔径0.2mmの円形紡糸孔を24個有する図1で示すような紡糸混繊用芯鞘複合紡糸口金から吐出され、通常のクロスフロー型紡糸筒からの冷却風で冷却・固化し、紡糸油剤を付与しつつ、800m/分の紡速にて巻き取りつつ、オイリングローラーにて油剤を付着させながら、未延伸糸を得た。その後、加熱されたホットローラーにて予熱後、スリットヒーター220℃で加熱しながら3.8倍で延伸し、0.03倍のリラックス処理を施した後、巻き取り、84dtex−24filの延伸糸を得た。得られた延伸糸は強度6.2cN/dtex、伸度20%、10%LASE5.2cN/dtex、熱水収縮率3.2%であった。
【0031】
[評価用ミシン糸の作製]:
上記延伸糸に1000T/MのS撚りを施した後、3本あわせて、700T/MのZ撚りを施しミシン糸とした後、チーズに巻き取り、150℃、40分の染色処理をおこない、乾燥後シリコーン系油剤を3%塗布してミシン糸とした。
得られたポリエチレンナフタレート、混繊フィラメントミシン糸、評価用ミシン糸の性能を表1に示す。
【0032】
[実施例2]
実施例1において、ポリエチレンナフタレートの作製の際、固相重合を実施しなかったこと以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンナフタレート、混繊フィラメントミシン糸、評価用ミシン糸の性能を表1に示す。
【0033】
[実施例3]
実施例1において、ポリエチレンナフタレートの作製の際、フェニルホスホン酸(PPA)の代わりに、フェニルホスフィン酸(PPI)80ミリモル%を使用したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンナフタレート、混繊フィラメントミシン糸、評価用ミシン糸の性能を表1に示す。
【0034】
[実施例4]
実施例1において、ポリエチレンナフタレートの作製の際、フェニルホスホン酸(PPA)の代わりに、フェニルホスフィン酸(PPI)100ミリモル%を使用したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンナフタレート、混繊フィラメントミシン糸、評価用ミシン糸の性能を表1に示す。
【0035】
[比較例1]
実施例1において、ポリエチレンナフタレートの作製の際、リン化合物を含有させないこと以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンナフタレート、混繊フィラメントミシン糸、評価用ミシン糸の性能を表1に示す。剛直性が高く、本縫高速直線可縫性は不良であった。
【0036】
[比較例2]
実施例1において、ポリエチレンナフタレートの作製の際、リン化合物としてフェニルホスフィン酸の代わりに正リン酸を40mmol%添加したこと以外は、実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンナフタレート、混繊フィラメントミシン糸、評価用ミシン糸の性能を表1に示す。本縫高速直線可縫性は不良であった。
【0037】
[比較例3]
実施例1において、ポリエチレンナフタレートの作製の際、フェニルホスホン酸を350ミリモルとしたこと以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンナフタレート、混繊フィラメントミシン糸、評価用ミシン糸の性能を表1に示す。強度が低下し本縫高速直線可縫性は不良であった。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
フィラメントの光沢を残しつつ均一な縫目を形成することが可能で、且つ高強力、高モジュラスであり、染色性に優れ、高速縫製性の良好な衣料用複合紡糸混繊フィラメントミシン糸として有用である。
【符号の説明】
【0040】
1:フィラメントA鞘側及びフィラメントB側ポリマー配管
2:フィラメントA芯側ポリマー配管
3:フィラメントB側ポリマー計量ギアポンプ
4:フィラメントA鞘側ポリマー計量ギアポンプ
5:フィラメントA芯側ポリマー計量ギアポンプ
6:フィラメントB側紡糸パック及び口金
7:フィラメントA側紡糸パック及び口金
8:紡糸パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分が主たる繰り返し単位がエチレンナフタレートであるポリエステルからなり、鞘成分が主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる芯鞘型複合フィラメントAと、フィラメントAの鞘成分と同じポリエステルからなるフィラメントBとが紡糸工程で混繊されてなる混繊糸であって、下記要件を満足することを特徴とする複合紡糸混繊フィラメントミシン糸。
a)フィラメントAとフィラメントBとの混繊比率(重量比率)が70:30〜90:10であること。
b)フィラメントAの芯成分であるポリエステルが、フェニルホスホン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスフィン酸又はその誘導体であるリン化合物を、ポリマーを構成するジカルボン酸のモル数に対して0.1〜300ミリモル%含むこと。
【請求項2】
フィラメントBの伸度がフィラメントAより10%以上大きい請求項1記載の複合紡糸混繊フィラメントミシン糸。
【請求項3】
複合紡糸混繊ミシン糸の10%LASEが4.0cN/dtex以上、強度が5.5cN/dtex以上、伸度が15%以上、熱水収縮率が4.0%以下である請求項1記載の複合紡糸混繊フィラメントミシン糸。

【図1】
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【公開番号】特開2011−1664(P2011−1664A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147541(P2009−147541)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】