説明

複合紡績糸

【課題】 伸縮性、着衣快適性を有すると共に、シャリ感や涼感性などの特性も併せ持つ織編物を作製しうる複合紡績糸を提供する。
【解決手段】 ポリウレタン弾性繊維からなる芯層を、天然竹繊維を含む鞘層で被覆してなり、天然竹繊維の混用比率が40〜97質量%である複合紡績糸。本発明の複合紡績糸の製造方法としては、合撚、シングルカバリング、ダブルカバリングなどの手段が一般的であるが、精紡機を用いることによっても本発明の複合紡績糸を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然竹繊維使いの複合紡績糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然竹繊維使いの紡績糸が知られている。例えば、特許文献1には、竹を解繊、分繊して得た分繊維と、綿とからなる混紡糸が開示されている。また、特許文献2には、解繊させた竹材を一定の繊維長に揃えることで得た竹繊維と、綿と、ポリエステル短繊維とからなる混紡糸が開示されている。
【0003】
これらの混紡糸からなる織物は、麻の感覚に近いシャリ感や涼感性などの機能を有しており、衣料や寝具などの分野で好適に使用できる。
【特許文献1】特開2005−307413号公報
【特許文献2】特開2006−152503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の混紡糸からなる織物は、伸縮性に乏しく、身体の動きに十分追従しうるだけの着衣快適性を有していないのが実情である。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、伸縮性、着衣快適性を有すると共に、シャリ感や涼感性などの特性も併せ持つ織編物を作製しうる複合紡績糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、ポリウレタン弾性繊維が織編物の伸縮性及び着衣快適性に、天然竹繊維がシャリ感及び涼感性に寄与しうるであろうとの考えの下に、芯層にポリウレタン弾性繊維を、鞘層に天然竹繊維を含有させたところ、これらの特性を同時に満足する織編物を容易に作製しうる紡績糸が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリウレタン弾性繊維からなる芯層を、天然竹繊維を含む鞘層で被覆してなり、天然竹繊維の混用比率が40〜97質量%であることを特徴とする複合紡績糸を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、伸縮性、着衣快適性を有すると共に、シャリ感や涼感性などの特性も併せ持つ織編物を作製しうる複合紡績糸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の複合紡績糸は、ポリウレタン弾性繊維からなる芯層を、天然竹繊維を含む鞘層で被覆してなる糸である。ポリウレタン弾性繊維を用いることにより、織編物に伸縮性、着衣快適性を付与でき、天然竹繊維を用いることにより、織編物にシャリ感、涼感性を付与できる。この内、ポリウレタン弾性繊維は、複合紡績糸中の芯層、鞘層の何れに配されていても上記の特性を織編物に付与しうるが、天然竹繊維は、鞘層に配された場合のみ上記の特性を織編物に付与しうる。したがって、本発明においては、ポリウレタン弾性繊維は芯層へ、天然竹繊維は鞘層へ配置されなければならないのである。
【0011】
本発明に使用されるポリウレタン弾性繊維としては、市販のポリウレタン弾性繊維が使用でき、具体的には、旭化成せんい(株)製「ロイカ(登録商標)」、オペロンテックス(株)製「ライクラ(登録商標)」、東洋紡績(株)製「エスパ(登録商標)」、日清紡績(株)製「モビロン(登録商標)」、富士紡ホールディングス(株)製「フジボウスパンデックス(登録商標)」などがあげられる。
【0012】
一方、本発明における天然竹繊維は、所謂竹レーヨン繊維とは相違する。つまり、天然竹繊維は、真竹、孟宗竹など天然に生育する竹を裁断した後、圧縮、解繊し、必要に応じて漂白、不純物の除去を行い得るものである。天然竹繊維は、断面中央長手方向に中空部を有しており、織編物にシャリ感や涼感性を付与することができる。天然竹繊維の単糸繊度としては、0.9〜20.0dtexであることが好ましく、2.0〜10.0dtexであることがより好ましい。単糸繊度が0.9dtex未満であると、繊維の強度が低下する傾向にあり、さらに織編物の張り・腰感も低下する傾向にあるため好ましくない。一方、20.0dtexを超えると、紡績性が著しく低下し、さらに織編物の風合いも硬くなる傾向にあるため好ましくない。また、天然竹繊維の平均繊維長としては、20〜200mmであることが好ましく、30〜150mmであることがより好ましい。平均繊維長がこの範囲であると、紡績性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0013】
上記の天然竹繊維は複合紡績糸の鞘層に含まれるものであるが、鞘層中に含まれる天然竹繊維以外の繊維としては、綿、麻、羊毛、カシミヤ、絹などの天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維、ジアセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、アクリルなどの合成繊維などがあげられる。これら天然竹繊維以外の繊維の形態としては、通常、短繊維が好ましく、平均繊維長としては、紡績性の観点から上記天然竹繊維と同等程度が好ましい。
【0014】
本発明の複合紡績糸における天然竹繊維の混用比率としては、40〜97質量%であることが必要であり、40〜90質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。天然竹繊維の混用比率が40質量%未満であると、織編物のシャリ感及び涼感性が損なわれる。一方、85質量%を超えると、シャリ感が強くなりすぎ、かえって風合いを損ねることになる。
【0015】
次に、本発明の複合紡績糸の製造方法としては、合撚、シングルカバリング、ダブルカバリングなどの手段が一般的であるが、精紡機を用いることによっても本発明の複合紡績糸を得ることができる。具体的に精紡機を用いる製法としては、まず、天然竹繊維を含む粗糸をリング精紡機に導入してドラフト域を通過させ、同時に外部からドラフト域の最終点たるフロントローラーへポリウレタン弾性繊維からなる糸条(以下、ポリウレタン弾性糸と記す)を引き入れる。次いで同ローラーにおいて2糸を重ね合わせ、加撚することにより複合紡績糸を得る。
【0016】
本発明の複合紡績糸は、優れた伸縮性を織編物に付与しうるものである。具体的に織物の場合、本発明の複合紡績糸が配されている方向の伸縮性としては、JIS L1096 8.14.1B法(定荷重法)によって測定される伸長率が、10.0%以上であることが好ましい。伸長率が10.0%未満であると、身体の動きに織物が追随し難くなり、着衣快適性が低下すると共に、肌刺し感が強くなる傾向にある。つまり、天然竹繊維は、従来公知の天然繊維と比べて一般に繊度が太いため、織編物の肌刺し感を増加させる傾向にあるが、織物に伸縮性を付与すると、身体の動きに織物が追随し、身体と織物とが擦れる機会が減るため、肌刺し感が低減するのである。
【0017】
本発明の複合紡績糸を用いた織編物は、織機、編機などを用いて当該複合紡績糸を製織編することにより得ることができる。なお、織編物を構成する糸は、全て複合紡績糸である必要はなく、複合紡績糸を一部に用いさえすればよく交織、交編など任意に行ってよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、織編物の伸長率は、JIS L1096 8.14.1B法(定荷重法)に、伸長回復率は、JIS L1096 8.14.2B−1法(定荷重法)にそれぞれ準じて測定した。
【0019】
(実施例1)
まず、単糸繊度4.2dtex、平均繊維長90mmの天然竹繊維からなる粗糸と、繊度44dtexのポリウレタン弾性糸(オペロンテックス(株)製、「ライクラ(登録商標)」)とを用意した。
【0020】
そして、上記の粗糸をリング紡績機に導入し、所定の倍率でドラフトしつつフロントローラーへ送り出した。さらに、それと同時に外部からポリウレタン弾性糸を2.5倍で延伸しながら共通のフロントローラーへ導入し、2糸を重ね合わせ後、撚数20.8回/2.54cmで加撚し、30番手(英式綿番手)の本発明の複合紡績糸を得た。得られた複合紡績糸は、芯層にポリウレタン弾性繊維を、鞘層に天然竹繊維を配しており、被覆性に優れる糸であった。複合紡績糸における天然竹繊維の混用比率は、80質量%であった。
【0021】
次に、得られた複合紡績糸を85℃で20分間スチームセットした後、経糸に綿30番手を用い、緯糸に上記複合紡績糸を用いて、2/2ツイル組織の生機を製織した。そして、この生機を糊抜、精練、漂白した後、ピンテンターにて180℃で1分間プレセットした。さらに、シルケット加工、染色を経て、ピンテンターにて160℃で1分間ファイナルセットし、織物を得た。
【0022】
得られた織物の経糸密度は154本/2.54cm、緯糸密度は70本/2.54cmであった。また、同織物の緯糸方向の伸長率は、25.0%であり、緯糸方向の伸長回復率は、70.0%であった。
【0023】
さらに、官能評価に基づき、同織物の着衣快適性、シャリ感及び涼感性について評価したところ、何れの特性にも優れていた。
【0024】
(実施例2)
粗糸及びポリウレタン弾性糸の太さを変更する以外は、実施例1と同様にして38番手(英式綿番手)の本発明の複合紡績糸を得た。得られた複合紡績糸は、芯層にポリウレタン弾性繊維を、鞘層に天然竹繊維を配しており、被覆性に優れる糸であった。複合紡績糸における天然竹繊維の混用比率は、82質量%であった。
【0025】
次に、得られた複合紡績糸を85℃で20分間スチームセットした後、釜径76cm、針密度28本/2.54cmのシングル丸編機にて天竺組織の生機を編成し、糊抜、精練、漂白、プレセット、シルケット加工、染色、ファイナルセットを経て、編物を得た。
【0026】
得られた編物の密度は44ウェール/2.54cm、50コース/2.54cmであった。また、同編物の伸長率は、140.0%であり、伸長回復率は、80.0%であった。
【0027】
さらに、官能評価に基づき、同編物の着衣快適性、シャリ感及び涼感性について評価したところ、何れの特性にも優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン弾性繊維からなる芯層を、天然竹繊維を含む鞘層で被覆してなり、天然竹繊維の混用比率が40〜97質量%であることを特徴とする複合紡績糸。


【公開番号】特開2008−69482(P2008−69482A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249386(P2006−249386)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(599089332)ユニチカテキスタイル株式会社 (53)
【Fターム(参考)】