複合繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法

【課題】非吸水性重合体から構成され、多孔中空部を有し、軽量性、ふくらみ感、ソフト感に優れた中空繊維とその構造物であり、排水処理や環境面の問題を起こさずに、複合繊維構造物から中空繊維構造物を製造することができる製造方法の提供。
【解決手段】ポリエステル系熱可塑性重合体を海成分1とし、ポリエステル系重合体は、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステルであり、ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分、2.0〜8.0モル%が脂肪族カルボン酸成分、かつグリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とするポリエステル重合体からなり、可塑剤を含有する240℃、せん断速度1000sec−1での見かけ溶融粘度が40〜400Pa・sである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を島成分とし、島成分2が水溶解性である複合繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合繊維及びそれを含む繊維構造物ならびに、該複合繊維から得られる中空繊維及びそれを含む繊維構造物に関する。詳細には軽量性に優れ、かつふくらみ感、ソフト感のある良好な風合を有する中空繊維、特に、多孔状の中空繊維とその繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルやポリアミド等の合成繊維は、その優れた物理的および化学的特性によって、衣料用のみならず産業用にも広く使用されており、工業的に重要な価値を有している。しかしながら、これらの合成繊維は、その単糸繊度に単一な分布を有し、また単糸繊度が大きいことやその横断面形状が単純であることにより、絹、綿、麻等の天然繊維に比較して風合や光沢が単調である。また上記の合成繊維は吸水性に劣り、しかも冷たくて、ぬめり感のある触感を有し品位の低いものであった。そこで合成繊維の上記のような欠点を改良するために、合成繊維の横断面形状を異形化したり、繊維を中空化することが広く行われている。
通常、異形紡糸ノズルまたは中空紡糸ノズルを用いて製造される異形断面繊維や中空繊維は、紡出後、固化するまでの間に溶融状態にある樹脂の表面張力や紡糸時の引き取り張力等によって異形断面が崩れたり、中空部が潰れやすいという課題があり、特に多孔中空形状を発現させようとすると、紡出直後は繊維に多孔状の中空構造が付与されても、多孔状中空部が潰れて消滅したり、該中空部の割合が減少し易く、かかる手法で多孔状の中空部を有する繊維を得ることは実質的に不可能であった。
【0003】
一方、アルカリ易分解性ポリマーを島成分とし、海成分としてはポリアミドやエチレンビニルアルコール系共重合体等の吸水率が3%以上の耐アルカリ性ポリマーを用いて複合繊維とした後、該易分解性ポリマーを熱アルカリ水溶液処理することにより分解除去して多孔中空繊維とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これらの問題点としては、アルカリ分解生成物の排水処理の繁雑さが有り、環境面からも大きな課題を残している。しかも、かかる手法では、アルカリ水溶液が複合繊維の海成分を浸透して島成分を抽出することが必要であるため、海成分としては吸水性を有する重合体を使用しなければならないという重合体の種類の制限があり、さらに、アルカリに弱いポリ乳酸やポリエステルも海成分に使用することが困難であり、かかる手法により海成分がポリ乳酸やポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを主たる骨格とするポリエステルなどからなる多孔中空繊維を製造することは実質的に不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−316977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記の従来技術の課題を解決し、吸水性を殆ど示さない重合体から構成される多孔中空部を有し、軽量性、ふくらみ感、ソフト感等に優れた中空繊維やそれを含む繊維構造物を提供することである。また、かかる中空繊維を排水処理や環境面での問題を起こすことなく製造するための複合繊維を提供することであり、さらに、かかる複合繊維を用いた中空繊維の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、ポリエステル系熱可塑性重合体を海成分とし、該ポリエステル系重合体は、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステルであり、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分、2.0〜8.0モル%が脂肪族カルボン酸成分、かつ該グリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とするポリエステル重合体からなり、可塑剤を含有する240℃、せん断速度1000sec−1での見かけ溶融粘度が40〜400Pa・sである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を島成分とし、該島成分が水溶解性であることを特徴とする複合繊維であり、さらに、ポリエステル系重合体に、下記化学式(I)で表される化合物(A)を0.5モル%〜3.5モル%共重合された上記の複合繊維である。
【0007】
【化1】

【0008】
さらに本発明は、該複合繊維を水で処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を溶解除去することを特徴とする中空繊維の製造方法であり、さらには上記の複合繊維を含む繊維構造物を水で処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を溶解除去することを特徴とする繊維構造物の処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常圧下でのカチオン染料、及び分散染料を用いて染着性が良好な複合繊維を得ることができる。また、本発明により得られる複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を溶解除去することにより、軽量性に優れ、かつふくらみ感、ソフト感のある良好な風合を有する中空繊維、特に、多孔状の中空繊維とその繊維構造物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の複合繊維においては、海成分がジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分であり、2.0〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分であり、かつ該グリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とする共重合ポリエステル重合体で構成され、島成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体で構成されていることが重要であり、かかる条件を満たしていれば、複合繊維の海島の形態は特に制限されるものではない。島数は用途に応じて設定できるが、高い中空率の中空繊維や中空部の数が多い中空繊維を得る場合に本発明の本領が発揮される。
島数の値は特に制限されないが、3〜10個の範囲が好ましく、より好ましくは4〜9個、さらに好ましくは5〜8個とすることが望ましい。島数が3個未満であると、透け防止性が不十分であり、軽量感を増すため中空部面積を大きくすると中空部が潰れやすくなる場合がある。また、島数が10個を越えると繊維化が困難になる。
また、個々の島成分の形状は何ら限定されず、円形でも楕円形でもその他の異形形状でもよい。さらに島成分は、繊維軸方向に連続していても不連続に形成されていてもよい。
本発明の複合繊維の代表例をその横断面図により示すと、例えば、図1〜図3のようなものを挙げることができる。図1の複合繊維は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体からなる小さな島成分2が前記ポリエステル重合体からなる海成分1に包囲された形態のものであり、図2の複合繊維は、繊維断面中央の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体からなる大きな島成分2及び小さな島成分2が前記ポリエステル重合体からなる海成分1に包囲された形態のものであり、図3は繊維断面形状が三角断面になるものである。
【0011】
本発明において、島成分と海成分の複合比率は特に限定されないが、最終的に得られる中空繊維の中空部の数と中空率をどの程度に設定するかに応じて適宜複合比率を変更することができる。しかしながら、島成分の比率が小さすぎると、中空繊維としての軽量化等の効果が十分に発揮されず、一方、中空部の比率が大きすぎると実用性のある繊維物性を持つ中空繊維とすることが困難となるので、好ましくは島:海=2:98〜65:35、さらには5:95〜60:40とすることが好ましい。
また、複合繊維の断面形態は特に制限されず、図1〜図2に示した円形断面の他に例えば、図3に示すような三角形、あるいは図示していないが偏平形、楕円形、四角形〜八角形等の角形、T字形、3〜8葉形等の多葉形等の任意の形状とすることができる。更に、本発明の複合繊維には、蛍光増白剤、安定剤、難燃剤、着色剤等の任意の添加剤を必要に応じて含有することができる。
【0012】
次に、本発明の複合繊維の島成分に使用される水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(以下、単にPVAと略称することもある)について説明する。
本発明で使用されるPVAとは、ポリビニルアルコールのホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、および後反応により官能基を導入した変性ポリビニルアルコールも包含するものである。
【0013】
本発明に用いられるPVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)は200〜600が好ましく、230〜470がより好ましく、250〜450が特に好ましい。重合度が200未満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られず、繊維化しにくい場合がある。重合度が600を越えると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルから重合体を吐出することができない場合がある。また重合度600以下のいわゆる低重合度のPVAを用いることにより、水溶液で複合繊維を溶解するときに溶解速度が速くなるばかりでなく複合繊維が溶解する時の収縮を小さくすることができる。
【0014】
PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再鹸化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に達せられる。
【0015】
本発明に用いられるPVAは、鹸化度が90〜99.99モル%であることが好ましい。より好ましくは93〜99.98モル%、さらに94〜99.97モル%が好ましく、96〜99.96モル%が特に好ましい。鹸化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸ができない場合があり、また後述する共重合モノマーの種類によってPVAの水溶性が低下する場合がある。
一方、鹸化度が99.99モル%よりも大きいPVAは溶解性が低下しやすく又安定に製造することができず、安定した繊維化が困難となる。
【0016】
さらに本発明で使用される好ましいPVAは、ビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率が70〜99.9モル%で、融点が160℃〜230℃で、かつPVA100質量部に対してアルカリ金属イオンがナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量部含有されていることが好ましい。
【0017】
本発明において、ポリビニルアルコールのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基とは、PVAのd6−DMSO溶液での500MHz プロトンNMR(JEOL GX−500)装置、65℃測定による水酸基プロトンのトライアッドのタクティシティを反映するピーク(I)を意味する。
ピーク(I)はPVAの水酸基のトライアッド表示のアイソタクティシティ連鎖(4.54ppm)、ヘテロタクティシティ連鎖(4.36ppm)およびシンジオタクティシティ連鎖(4.13ppm)の和で表されて、全てのビニルアルコールユニットにおける水酸基のピーク(II)はケミカルシフト4.05ppm〜4.70ppmの領域に現れることから、本発明のビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率は、100×(I)/(II)で表されるものである。
【0018】
PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が70モル%未満である場合には、重合体の結晶性が低下し、繊維強度が低くなると同時に、溶融紡糸時に繊維が膠着して巻取り後に巻き出しできない場合がある。また本発明で目的とする水溶性の熱可塑性繊維が得られない場合がある。
PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が99.9モル%より大の場合には、重合体の融点が高いため溶融紡糸温度を高くする必要があり、その結果、溶融紡糸時の重合体の熱安定性が悪く、分解、ゲル化、重合体着色が起こりやすい。
【0019】
また、本発明のPVAがエチレン変性のPVAである場合、下記式を満足することで本発明の効果は更に高くなるものである。
−1.5×Et+100≧モル分率≧−Et+85
ここで、モル分率(単位:モル%)はビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率を表し、Etはビニルアルコール系重合体が含有するエチレン含量(単位:モル%)を表す。
【0020】
従って、本発明に用いられるPVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量は72〜99モル%がより好ましく、74〜97モル%がさらに好ましく、76〜95モル%が特に好ましい。
【0021】
本発明に於いて用いられるポリビニルアルコールの水酸基3連鎖の中心水酸基の量を制御することで、PVAの水溶性、吸湿性など水に関わる諸物性、強度、伸度、弾性率など繊維に関わる諸物性、融点、溶融粘度など溶融紡糸性に関わる諸物性をコントロールできる。これはトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基は結晶性に富み、PVAの特長を発現させるためと思われる。
【0022】
本発明に用いられるPVAの融点(Tm)は160〜230℃であることが好ましく、170〜227℃がより好ましく、175〜224℃がさらに好ましく、180〜220℃が特に好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し、複合繊維の繊維強度が低くなると同時に、該複合繊維の熱安定性が悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を越えると溶融紡糸温度が高くなり、紡糸温度とPVAの分解温度が近づくためにPVAと他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維を安定に製造することができない場合がある。なお、PVAの融点は、DSCを用いて窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
【0023】
本発明に用いられるPVAは、ビニルエステル系重合体のビニルエステル単位を鹸化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
【0024】
また本発明で使用されるPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変成PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、共重合単位を導入した変性ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、アクリル酸およびその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、通常20モル%以下である。
【0025】
これらの単量体の中でも、入手のしやすさなどから、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類に由来する単量体が好ましい。
【0026】
特に、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に0.1〜20モル%存在していることが好ましく、より好ましくは1〜20モル%、さらに4〜15モル%が好ましく、6〜13モル%が特に好ましい。
さらに、α−オレフィンがエチレンである場合において、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用することが好ましい。
【0027】
本発明で使用されるPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
【0028】
本発明で使用されるPVAにおけるアルカリ金属イオンの含有割合は、PVA100質量部に対してナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量部であることが好ましく、0.0003〜0.8質量部がより好ましく、0.0005〜0.6質量部がさらに好ましく、0.0005〜0.5質量部が特に好ましい。アルカリ金属イオンの含有割合が0.0003質量部未満の場合には、十分な水溶性を示さず未溶解物が残る場合がある。またアルカリ金属イオンの含有量が1質量部より多い場合には溶融紡糸時の分解及びゲル化が著しく繊維化することができない場合がある。アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等があげられる。
【0029】
本発明において、特定量のアルカリ金属イオンをPVA中に含有させる方法は特に制限されず、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中において鹸化するに際し、鹸化触媒としてアルカリイオンを含有するアルカリ性物質を使用することによりPVA中にアルカリ金属イオンを配合し、鹸化して得られたPVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含まれるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙げられるが後者のほうが好ましい。
なお、アルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0030】
鹸化触媒として使用するアルカリ性物質としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがあげられる。鹸化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。鹸化触媒は、鹸化反応の初期に一括添加しても良いし、鹸化反応の途中で追加添加しても良い。
鹸化反応の溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどがあげられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜1質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.003〜0.9質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.005〜0.8質量%に制御したメタノールが特に好ましい。洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、水などがあげられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。
洗浄液の量としてはアルカリ金属イオンの含有割合を満足するように設定されるが、通常、PVA100質量部に対して、300〜10000質量部が好ましく、500〜5000質量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
【0031】
本発明においては、繊維物性及び繊維化工程性の点から、使用するPVAに適当な可塑剤を含有させることが必要である。可塑剤含有PVAの240℃、剪断速度1000sec-1での見かけ溶融粘度は40〜400Pa・sであるり、50〜350Pa・sであることがより好ましい。見かけ溶融粘度が40Pa・s未満であると、溶融粘度が低すぎるため、複合ポリマーとの粘度バランスを合わせるのが困難になる。さらに、複合ポリマーの重合度を下げて溶融粘度を落とし、粘度バランスを合わせようとすると、繊維強度の低下を招く。
また、見かけ溶融粘度が400Pa・sを越えると、溶融流動性が悪くなるため、ポリマーがゲル化、分解など熱劣化しやすくなる。
【0032】
PVAに含有させる可塑剤の種類は特に限定されないが、240℃、剪断速度1000sec−1での見かけ溶融粘度における減粘効果が10〜200Pa・sであり、好ましくは20〜180Pa・sでなければならない。減粘効果が10Pa・s未満では、可塑効果がほとんどないため、PVAの溶融流動性が悪くなり、ポリマーが熱劣化しやすくなる。また、減粘効果が200Pa・sを越えると、溶融粘度が低すぎるため、複合ポリマーとの粘度バランスが崩れ、紡糸不可能となる。
240℃、剪断速度1000sec−1での溶融粘度における減粘効果が10〜200Pa・sである可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびそのオリゴマー、ブチレングリコール及びそのオリゴマー、ポリグリセリン誘導体やグリセリン等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したグリセリン誘導体、ソルビトールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した誘導体、ペンタエリスリトール等の多価アルコール及びその誘導体、PO/EOランダム共重合物等が挙げられ、上記の可塑剤を1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の割合でPVAに配合することで曳糸性が向上する。
その中でも、繊維化工程で熱分解が起こりにくく、良好な可塑化性、紡糸性を得るためには、ソルビトールのアルキレンオキサイド付加物、ポリグリセリンアルキルモノカルボン酸エステル、PO/EOランダム共重合物などの可塑剤を1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%配合することが好ましく、特にソルビトール1モルにエチレンオキサイドを1〜30モル付加した化合物が好ましい。
ソルビトール1モルにエチレンオキサイドを1〜30モル付加した化合物について、以下に説明する。エチレンオキサイドの平均付加モル数が1未満では、PVAとの相溶性は問題ないが、分子量が低いため、熱安定性に難がある。また、エチレンオキサイドの平均付加モル数が30を越えると、SP値が低下するため、PVAとの相溶性が悪化し、繊維化工程性に悪影響を及ぼすようになる。なお、付加モル数は平均したものであって、付加モル数に分布があってもよいが、30モル以上の付加物が50質量%以上混入することは好ましくない。
また、PVAに対する含有量であるが、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%配合することが好ましい。含有量が1質量%未満では、可塑化性が不十分であり、30質量%を越えると複合ポリマーとの粘度バランスが崩れ、繊維化工程性が悪化する問題が起こる。
また、該化合物の平均分子量は約200〜1500であることが好ましい。
可塑剤である該化合物をPVAに添加する方法としては、特に制限はないが、二軸押出機を用いてマスターチップ化する方法が、可塑剤を均一分散させるという点で好ましい。
【0033】
本発明の複合繊維の海成分を構成するポリエステル重合体は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、その繰り返し単位の80モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体(以下、テレフタル酸成分と称することもある)であり、且つジカルボン酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体が4.0〜12.0モル%、また脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が2.0〜8.0モル%共重合されている必要がある。
【0034】
シクロヘキサンジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体(以下、シクロヘキサンジカルボン酸成分と称することもある)及び脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体をポリエチレンテレフタレートに共重合した場合、芳香族ジカルボン酸に比べて結晶構造の乱れが小さい特徴を有しているため、高い染着率を確保しながら、耐光堅牢性にも優れた繊維を得ることができる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分を共重合化することによって、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向は低下する。そのため、分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。更に、シクロヘキサンジカルボン酸成分は芳香族ジカルボン酸に比べ結晶構造の乱れが小さいことから、耐光堅牢性にも優れたものとなる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分の共重合量がジカルボン酸成分において4.0モル%未満では、繊維内部における非晶部位の配向度が高くなるため、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分において12.0モル%を超えた場合、染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度など、染色性に関しては良好な品質を確保できるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合、樹脂のガラス転移温度が低いことと繊維内部における非晶部位の配向度が低いことによって高速捲取中に自発伸長が発生し、安定な高速曳糸性を得ることができない。好ましくは5.0〜10.0モル%である。
本発明に用いられるシクロヘキサンジカルボン酸には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の3種類の位置異性体があるが、本発明の効果が得られる点からはどの位置異性体が共重合されていても構わないし、また複数の位置異性体が共重合されていても構わない。また、それぞれの位置異性体について、シス/トランスの異性体があるが、いずれの立体異性体を共重合しても、あるいはシス/トランス双方の位置異性体が共重合されていても構わない。シクロヘキサンジカルボン酸誘導体についても同様である。
【0035】
脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体成分についてもシクロヘキサンジカルボン酸成分と同様に、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向が低下するため、分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。
脂肪族ジカルボン酸成分をポリエチレンテレフタレートに共重合すると、低温セット性にも効果があり、本発明により得られる繊維を織編物にしてから形態安定化のために熱セットする場合、熱セット温度を低くすることが可能となる。ニット用途において低温セット性は好ましい物性であり、ウール、綿、アクリル、ポリウレタン等のポリエステル以外の素材と複合する場合、熱セットに必要な温度をポリエステル以外の素材の物性が低下しない程度に抑えることが可能となる。また、ポリエステル繊維の単独使いにおいても、一般的な現行ニット用設備に対応が可能となり用途拡大が期待できる。
ジカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合量が2.0モル%未満では、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合量が8.0モル%を超えた場合、染着率は高くなるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合には繊維内部における非晶部位の配向度が低くなり、高速捲取中での自発伸長が顕著となり、安定な高速紡糸性を得ることができない。好ましくは3.0〜6.0モル%である。本発明の脂肪族ジカルボン酸成分として好ましく用いられるものとしては、発色性、製糸工程性などの点から、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が例示できる。またこれらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0036】
本発明の複合繊維の海成分を構成するポリエステル重合体に、さらに下記化学式(I)で表される化合物(A)を0.5〜3.5モル%共重合してもよい。
【0037】
【化2】

【0038】
上記式(I)で表されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、又は5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸アルカリ金属塩基を有するジカルボン酸成分;5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、5−エチルトリブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの5−テトラアルキルホスホニウムスルホイソフタル酸などを挙げることができる。上記式(I)で表されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)は1種類のみをポリエステル中に共重合させても、また2種以上を共重合させてもよい。
上記式(I)で表されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)を共重合させることにより、従来のポリエステル繊維に比べて繊維内部構造に非晶部分を保有させることができ、その結果、分散染料及びカチオン染料に対して常圧染色が可能で、かつ堅牢度に優れたポリエステル繊維を得ることができる。
上記式(I)で表されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)の共重合量が1.0モル%未満の場合、カチオン染料で染色したときに鮮明で良好な色調になるカチオン染料可染性ポリエステルを得ることができない。一方、(A)の共重合量が3.5モル%を超えると、ポリエステルの増粘が著しくなって紡糸が困難になり、しかもカチオン染料の染着座席の増加により繊維に対するカチオン染料の染着量が過剰になって、色調の鮮明性がむしろ失われる。染色物の鮮明性および紡糸性等の点から、(A)の共重合量は1.2〜3.0モル%であるのが好ましく、1.5〜2.5モル%であるのがより好ましい。
【0039】
本発明の複合繊維は、上記のようなPVAを島成分とし、前記ポリエステル重合体を海成分とした断面形態を形成することができる紡糸技術であれば特に限定されず、熱溶融時に島成分のPVAと反応、ゲル化しないポリマーの組み合わせの系においては、例えば、混合紡糸による方法が可能であり、島成分となるPVAと海成分となる前記ポリエステル重合体とを、1つの押し出し機で溶融混練し、引き続き同一の紡糸ノズルから吐出させて巻取り、繊維化することができる。
また複合紡糸による方法では、PVAと前記ポリエステル重合体とをそれぞれ別の押し出し機で溶融混練し、引き続き、PVAが島成分となり、前記ポリエステル重合体が海成分となるようにして海島型複合紡糸ノズルから吐出させて巻き取り、繊維化することができる。
【0040】
繊維化条件は、重合体の組合せ、複合断面形態に応じて設定する必要があるが、主に、以下のような点に留意して繊維化条件を決めることが望ましい。
(1)一般的にPVAは高温時での溶融流動性に劣り、また滞留部の存在で自己架橋し、ゲル化し易いポリマーであるので、極力ポリマーの押出しゾーン及びジェットパック(複合紡糸部品の集合体)内部のポリマー流動部で滞留部が生じにくくすることが重要である。
(2)紡糸口金温度は、複合繊維を構成する重合体のうち高い融点を持つ重合体の融点をMpとするときMp〜Mp+80℃が好ましく、せん断速度(γ)1,000〜25,000sec-1、ドラフトV10〜500で紡糸することが好ましい。
(3)複合する重合体の組み合わせから見た場合、紡糸時における口金温度とノズル通過時のせん断速度で測定したときの溶融粘度が近接した重合体を組合せて複合紡糸することが紡糸安定性の面から好ましい。
【0041】
本発明におけるPVAの融点Tmとは、示差走査熱量計(DSC:例えばMettler社製「TA3000」)で観察される主吸熱ピークのピーク温度である。せん断速度(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単孔あたりの重合体吐出量をQ(cm/sec)とするときγ=4Q/πrで計算される。またドラフトVは、引取速度をA(m/分)とするときV=5A・πr/3Qで計算される。
【0042】
本発明の複合繊維を製造するに際して、紡糸口金温度がPVAの融点Tmより低い温度では該PVAが溶融しないために紡糸できない。またTm+80℃を越えるとPVAが熱分解あるいは自己架橋によるゲル化が発生しやすくなるために紡糸性が低下する。また、せん断速度は1,000sec-1よりも低いと断糸しやすく、25,000sec-1より高いとノズルの背圧が高くなり紡糸性が悪くなる。ドラフトは10より低いと繊度むらが大きくなり安定に紡糸しにくくなり、ドラフトが500より高くなると断糸しやすくなる。
【0043】
紡糸ノズルから吐出された糸条は延伸せずにそのまま高速で巻き取るか必要に応じて延伸される。延伸は破断伸度(HDmax)×0.55〜0.9倍の延伸倍率でガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸される。
延伸倍率がHDmax×0.55未満では十分な強度を有する複合繊維が安定して得られず、HDmax×0.9を越えると断糸しやすくなる。延伸は紡糸ノズルから吐出された後に一旦巻き取ってから延伸する場合と、延伸に引き続いて施される場合があるが、本発明においてはいずれでもよい。延伸は通常熱延伸され、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいずれを用いて行ってもよい。
延伸工程において、延伸倍率の絶対値が大きいほど、毛羽発生、断糸しやすくなるため高速紡糸〜低延伸倍率による繊維化条件あるいは公知の高速紡糸・巻取りのみによる手法が好ましい。
【0044】
延伸温度は、複合の組み合わせポリマーに応じて適宜設定されるが、本発明に用いるPVAは結晶化速度が速いため未延伸糸の結晶化がかなり進み、Tg前後では結晶部分の可塑変形が生じにくい。このため、本発明のポリエステル重合体との複合においては熱ローラー延伸などの接触加熱延伸をする場合でも比較的高い温度(70〜100℃程度)を目安に延伸する。また、加熱炉、加熱チューブなどの非接触タイプのヒーターを使用して加熱延伸する場合は、さらに高温で150〜200℃程度の温度条件とすることが好ましい。
【0045】
但し、本発明においては繊維化条件として、紡糸口金温度がTm〜Tm+80℃で、せん断速度(γ)1,000〜25,000sec-1、ドラフト(V)10〜500で紡糸することが重要である。
【0046】
また、本発明における複合繊維断面形状は特に限定されず、紡糸ノズルの形状により真円状にも中空にも異型断面にもできる。繊維化や製織化での工程通過性の点から真円が好ましい。
【0047】
本発明の複合繊維は、製造条件によって島成分であるPVAの水溶解時の複合繊維の収縮挙動を制御することが可能であり、PVA溶解時に該複合繊維が収縮しないか又は収縮量を小さく抑えようとする場合には、該複合繊維に熱処理を施しておくことが望ましい。この熱処理は、延伸を伴う繊維化工程においては、延伸と同時に行ってもよいし、延伸と別個に行う熱処理であってもよい。熱処理温度を高くすると島成分PVAを溶解して得られる中空繊維の最大収縮率を低くすることが可能であるが、逆に島成分PVAの水中溶解温度が高くなる傾向にあるので、該複合繊維の加工工程における最大収縮率とのバランスを見ながら熱処理条件を設定することが望ましく、大凡は島成分PVAのガラス転移点〜(Tm−10)℃の範囲内で条件設定することが好ましい。
【0048】
処理温度がTgより低い場合には十分に結晶化した複合繊維が得られず、例えば、布帛にして熱セットして用いる場合の収縮が大きくなり、布帛の風合いが硬化するため好ましくない。また処理温度が(Tm−10)℃を越える場合には繊維間の膠着が生じ好ましくない。
【0049】
熱処理は延伸後の複合繊維に収縮を加えて行ってもよい。複合繊維に収縮を加えると水中でのPVA溶解までの複合繊維の収縮率が小さくなる。加える収縮は0.01〜5%が好ましく、0.1〜0.5%がより好ましく、1〜4%が特に好ましい。加える収縮が0.01%以下の場合にはPVA溶解時の複合繊維の最大収縮率を小さくする効果が実質的に得られず、加える収縮が5%を超える場合には収縮処理中に複合繊維がたるんで安定に収縮を加えることができない。
【0050】
本発明において、PVAが「水溶性」であるということは、溶解するまでの時間の長短にかかわらず40℃以上の温度で溶解することを意味する。そして、PVAの種類や複合繊維の製造条件を変更することにより、本発明ではPVA島成分の溶解温度が30℃〜100℃となる複合繊維を得ることができるが、実用性及び水溶性のすべての特性のバランスをとるためには、40℃以上の溶解温度を有するPVA島成分からなる複合繊維とすることが好ましい。
【0051】
溶解処理温度はPVAの溶解温度や複合繊維の海成分を構成する本発明のポリエステル重合体のWet状態でのガラス転移点に応じて適宜調整すればよいが、もちろん処理温度は高い程処理時間が短くなる。熱水を用いて溶解する場合、海成分となる本発明のポリエステル重合体のガラス転移点が70℃以上であれば、100℃以上の高温高圧下での熱水処理が最も好ましい。なお、水溶液には通常は軟水が用いられるがアルカリ水溶液、酸性水溶液であってもよいし、界面活性剤等を含んだものであってもよい。
【0052】
本発明には、海成分の熱可塑性重合体に微粒子を添加する方が品質の安定性から好ましい。平均粒径が0.1〜1.2μmの微粒子状不活性物質を0.2〜10重量%含有する。添加する微粒子としては、例えばシリカゾル、微粒子状シリカ、アルミナゾル、微粒子状アルミナ、極微粒子酸化チタン、炭酸カルシウムゾル、微粒子状炭酸カルシウム、分散安定性が良好に改善された変性シリカゾル、あるいはその他ポリエステル繊維の屈折率に近い微粒状不活性物質のコロイド等が用いられる。微粒子を10重量%を越えて添加した場合、繊維化工程性が不良となり適当でない。
【0053】
本発明の複合繊維を熱水処理してPVA成分を溶解除去するに当っては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等を成分とする精練剤、その他の添加剤等を含んで行ってもよい。
また、上記の熱水処理によるPVAの溶解除去は、複合繊維単独に対して行なってもよいし、該複合繊維を含む繊維構造体を構成させた後に熱水処理を施してもよい。
熱水処理時の温度および処理時間は、複合繊維の繊度、複合繊維における島成分の割合、島成分の分布状態、海成分の熱可塑性重合体の比率、種類、繊維構造物の形態等の種々の要件により適宜調節できる。熱水処理温度としては60℃以上、好ましくは80℃以上がよい。
熱水処理の方法としては、熱水液中に複合繊維、繊維構造物を浸漬する方法、或いはそれらに熱水液をパッド、スプレー等の方式で施す方法等を挙げることができる。
【0054】
本発明においてPVAは、上記のような熱水処理により複合繊維から水溶液として除去されるが、かかるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。また溶解除去された該PVAは水溶液の状態で活性汚泥で連続処理すると2日〜1ヶ月でほぼ完全に分解される。生分解性の点から該繊維の鹸化度は90〜99.99モル%が好ましく、92〜99.98モル%がより好ましく、93〜99.97モル%が特に好ましい。また該繊維の1,2−グリコール結合含有量は1.0〜3.0モル%が好ましく、1.2〜2.5モル%がより好ましく、1.3〜1.9モル%が特に好ましい。
PVAの1,2−グリコール結合量が1.0モル%未満の場合には、PVAの生分解性が悪くなるばかりでなく、溶融粘度が高すぎて該複合繊維の紡糸性が悪くなる場合がある。PVAの1,2−グリコール結合含有量が3.0モル%以上の場合にはPVAの熱安定性が悪くなり紡糸性が低下する場合がある。
【0055】
本発明においては、熱水処理によって複合繊維中のPVAが選択的に除去されて、複数個の中空部を有する中空繊維が製造されるものであるが、本発明の特徴は、殆ど水に膨潤しないと考えられている、本発明のポリエステル重合体からなる海成分に完全に包囲されているPVA島成分が熱水処理により奇麗に溶解除去されて中空繊維が形成されることである。複合繊維がステープル繊維など切断面を持っている場合は、繊維の端面からPVAが抜けていくことが考えられるが、本発明においては、実質的に切断面のない長繊維の状態であってもPVAが奇麗に溶解除去されるものであり、かかる事実は従来の常識を覆すものといっても過言ではない。
【0056】
さらに、本発明の最大の特徴は、海成分のポリエステル重合体に特定の変性成分を用いることによって、低温での染色が可能であり、PVA島成分の溶解除去後に形成された中空部が染色工程で変形しにくいため、中空繊維としての軽量性、嵩高性を保持できる。
【0057】
本発明の中空繊維における中空部の面積割合(中空率)は2%以上であることが好ましく、2%よりも低いと軽量性、嵩高性、保温性、ふくらみ感等が十分に発現しない場合がある。
従って、中空部の面積割合を5%以上にするのが好ましい。中空部の面積割合が大き過ぎると繊維強度が不足してくるので、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下の面積割合であることが望まれる。
【0058】
このようにして得られる本発明の中空繊維は、吸水性、保温性、軽量性、柔軟性、不透明性、ふくらみ感のある風合等から特にタフタ、デシン、ジョーゼット、ちりめん、加工糸、ツイルなどの織物、または天竺、スムース、トリコットなどの編物にするのに適している。さらに、衣料用途に限らず、不織布用途、メディカル用途や衛生材料、詰め物材として各種リビング資材にも使用可能であるし、繊維積層体として自動車等の内装材、消音材、防振材として利用可能であり、さらに抄紙することもできる。
【実施例】
【0059】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
【0060】
[PVAの分析方法]
PVAの分析方法は特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。
変性量は変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用いて500MHz プロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から求めた。
アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光法で求めた。
【0061】
1,2-グリコール結合含有量は先に記載した方法で測定した。
本発明のPVAのトライアッド表示による3連鎖の水酸基量の割合は以下の測定により求めた。
PVAを鹸化度99.5モル%以上に鹸化後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間したPVAを用いて、d6−DMSOに溶解した後、500MHz プロトンNMR(JEOL GX−500)装置により65℃測定を行った。PVA中のビニルアルコールユニットの水酸基由来のピークはケミカルシフト4.05ppmから4.70ppmの領域に現れ、この積分値をビニルアルコールユニット量(II)とする。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基はそれぞれアイソタクティシティ連鎖の場合4.5ppm、ヘテロタクティシティ連鎖の場合4.36ppmおよびシンジオタクティシティ連鎖の場合は4.13ppmに現れる。この3者の積分値の和をトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基量(I)とする。
本発明のPVAのビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率は、100×(I)/(II)で表される。
【0062】
[融点]
PVAの融点は、DSC(メトラー社製「TA3000」)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度で表した。
[見かけ溶融粘度及び減粘効果]
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1C PMD−Cを用い、240℃でのPVAポリマー(可塑剤有り及び可塑剤無し)の見かけ溶融粘度を測定する。そして、剪断速度1000sec-1での見かけ溶融粘度をそれぞれ求め、次式より算出する。
減粘効果(Pa・s)
=(可塑剤無しの見かけ溶融粘度)−(可塑剤有りの見かけ溶融粘度)
【0063】
[熱水中でのPVAの除去率]
本発明の複合繊維について、該複合繊維を構成するPVAの熱水中での溶解温度をTα(℃)とする時、(Tα+40)℃の熱水で40分間処理、水洗5分、乾燥後の質量減少率をPVAの除去率とした。なお、Tαは、たとえば、当該PVA単独からなる繊維に2.2mg/デシテックスの荷重を掛け、水中に吊るし、水温を上げていき切断する時の温度として求めることができる。
【0064】
[中空部面積率の測定]
中空繊維の糸の横断面をSEM写真撮影し、その横断面における多孔状の中空部面積および中空繊維全体部面積から算出した
【0065】
[繊維化工程性評価]
100kgの繊維を紡糸する際に、何回断糸するかによって、次のように評価した。
◎:1回以内/100kg
○:2回〜3回/100kg
△:4回〜7回/100kg
×:8回以上/100kg
【0066】
[織物の風合評価]
軽量感
○:軽量感に富む
×:軽量感に欠ける
【0067】
[織物の染色後の発色性評価]
一定の染色条件で染色した織物を10人のパネラーにより官能評価した。その結果を、非常に優れるを2点、優れるを1点、劣るを0点とした。
○:合計点が15点以上
△:合計点が8〜14点
×:合計点が7点以下
【0068】
[エチレン変性PVAの製造]
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.2kg/cm2(5.8×10Pa)となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cm(5.8×10Pa)に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。ついで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加して鹸化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置して鹸化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVAを得た。
得られたエチレン変性PVAの鹸化度は98.5モル%であった。また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対して0.01質量部であった。
また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は8.4モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ330であつた。該精製PVAの1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から前述のとおり求めたところ、それぞれ1.7モル%および83%であつた。
さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社製「TA3000」)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ212℃であった。
次に、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル付加した化合物を二軸押出機を用いて上記で得られた変性PVAに10質量%添加した可塑剤添加変性PVAを作成した。この可塑剤添加変性PVAの240℃、剪断速度1000sec-1での見かけ溶融粘度は130Pa・sであり、減粘効果は70Pa・sであった。
【0069】
実施例1
上記で得られた変性PVAを島成分とし、海成分のポリエステル重合体はジカルボン酸成分のうち90モル%がテレフタル酸であり、且つ1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を5.0モル%、アジピン酸を5.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び平均粒径0.3μmの二酸化チタン0.5質量%とでエステル交換反応及び重縮合反応により作製し、PVAのゾーン最高温度230℃、PVAの溶融滞留が極力生じない複合紡糸部品を用い、紡糸温度260℃、紡糸速度1800m/分で紡出した後、この未延伸糸を83℃の熱ローラー及び140℃の熱プレートに接触させ、延伸倍率2.3倍で延伸することにより、表1に示すような繊維断面及び複合比率を有する83dtex/24fの複合繊維を得た。
【0070】
次いで該複合繊維を経糸及び緯糸として用いて平織物を作成した。その生機密度は95本/25.4mm、緯糸86本/25.4mmであった。該生機織物を炭酸ナトリウムを2g/リットルの割合で含む水溶液中に80℃で30分間浸漬して糊抜きした後、170℃で約40秒間プレセットを行なった。次にイントールMTコンク(アニオン活性剤、明成化学社製)1g/リットルを含む水溶液にて浴比50:1、温度100℃、時間40分間の熱水処理を行なった。十分に水洗して表2に示すPVAの除去率及び中空面積率を有する平織物を得た。軽量感を含む織物の評価結果を表2に示す。さらに染色条件としては下記条件にて実施した。
(染色条件)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/l、ULTRA MT−N2:1.0cc/l
浴比:1/50
染色温度×時間:95〜100℃×40分
【0071】
実施例1
表2からわかるように、本発明の中空繊維からなる織物は軽量感が極めて良好で、ソフトでふくらみのある優れた風合いを有するものであった。
【0072】
実施例2〜8
海成分の共重合種、共重合量、海島複合比率を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様にして繊維化、織物の作成、評価を行なった。いずれの布帛も軽量感、発色性にすぐれ、ソフトでふくらみ感のある風合いを有するものであった(表2参照)。
【0073】
実施例9〜10
表1に示すように、島成分の変性種、変性量を変更すること以外は実施例1と同様にして繊維化、織物の作成、評価を行なった。得られた布帛は軽量感、発色性が良好で、ソフトでふくらみのある優れた風合いを有するものであった(表2参照)。
【0074】
実施例11〜13
表1に示すように、繊維断面、島数、複合比率等を変更すること以外は実施例1と同様にして繊維化、織物の作成、評価を行なった。いずれの布帛も軽量感、発色性に優れ、ふくらみがあり、非常にソフトな張り腰感を有するものであった(表2参照)。
【0075】
比較例1〜2
海成分の共重合量、海島複合比率を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様にして繊維化、織物の作成、評価を行なった。いずれの布帛も発色性が劣るものであった(表2参照)。
【0076】
比較例3〜4
海成分の共重合量を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様にして繊維化、織物の作成、評価を行なった。いずれも繊維化工程性が不調であり、布帛も発色性も劣るものであった(表2参照)。
【0077】
比較例5
表1に示すように、島成分の変性量を変更すること以外は実施例1と同様にして繊維化、織物の作成、評価を行なった。繊維化工程性の劣るものであった(表2参照)。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、軽量性、ドライ感、ふくらみ感等に優れた中空繊維と該繊維を含む繊維構造物を提供することができる。
具体的には、本発明の中空繊維と該繊維を含む繊維構造物は、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途など、多岐に渡って有効に利用することができる。また、資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などにも有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊維断面図
【図2】本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊維断面図
【図3】本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊維断面図
【符号の説明】
【0082】
1:海成分
2:島成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系熱可塑性重合体を海成分とし、該ポリエステル系重合体は、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステルであり、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分であり、2.0〜8.0モル%が脂肪族カルボン酸成分であり、かつ該グリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とするポリエステル重合体からなり、可塑剤を含有する240℃、せん断速度1000sec−1での見かけ溶融粘度が40〜400Pa・sである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を島成分とし、該島成分が水溶解性であることを特徴とする複合繊維。
【請求項2】
請求項1記載のポリエステル系重合体に、下記化学式(I)で表される化合物(A)を0.5モル%〜3.5モル%共重合された請求項1記載の複合繊維。
【化1】

【請求項3】
請求項1記載の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが、炭素数4以下のα-オレフィン単位および/またはビニルエーテル単位を0.1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項1または2記載の複合繊維。
【請求項4】
α-オレフィン単位として4〜15モル%のエチレン単位及び/又はプロピレン単位を含有する請求項3記載の複合繊維。
【請求項5】
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール中の1,2−グリコール結合の含有量が1.0〜3.0モル%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合繊維。
【請求項6】
請求項1記載の可塑剤がソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを1〜30モル付加した化合物であり、島成分中の該化合物の含有量が1〜30質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合繊維。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の複合繊維において、島成分の占有面積が5〜60%、島数が3〜8であることを特徴とする複合繊維。
【請求項8】
請求項7の複合繊維において、0.1〜1.2μmの微粒子を0.2〜10質量%含有する複合繊維。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の複合繊維を含む繊維構造物を水で処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を溶解除去することを特徴とする中空繊維構造物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219385(P2012−219385A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83225(P2011−83225)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】